説明

両面をハロゲン化銀処理された写真用印画紙のための支持体材料

【課題】本発明の課題は、単層又は複数層の写真乳剤層を有する両面コーティングのための支持体材料を提供することである。
【解決手段】
ハロゲン化銀を含む写真記録層を両面コーティングするための支持体材料であって、前記支持体材料は、写真集を作るために、少なくとも1つの原紙を備えており、前記原紙は前記原紙の両面に配置された合成樹脂層と、前記合成樹脂層の原紙に向いていない側にある機能層とを有しており、前記機能層は、少なくとも1つの水溶性結合剤と、多価アルコールと、無機酸の塩と、合成樹脂粒子とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、写真を高品質再生(Wiedergabe)するハロゲン化銀印画材料(Silberhalogenid-Aufsichtsmaterial)のための支持体材料に関する。本発明、特に、個々のページの前面と背面とに写真を含むことができる写真集の写真を生成するための支持体材料に関する。
【背景技術】
【0002】
写真集は、デジタル画像データを使用する場合、個別に作成することができる。各ページは、デジタル露光技術(digitale Belichtungstechniken)によって、感光性写真用印画紙のシート又はウェブ(Bahnen)に露光され、写真現像後に1冊の本に製本される。これはユーザーにとって、個々の画像の写真アルバムへの貼り付け及びラベル付け(Beschriften)の手間が省かれることになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
公知の写真用印画紙は、片面に画像表示するために考えられ、画像生成するハロゲン化銀を含む層は、支持体材料の片面だけに塗布され、そして、露光及び処理された後で、画像は片面だけに再生される。カラー画像の好ましい生成方法のために用いられる支持体材料は、通常、両面に合成樹脂をコーティングされた紙である。このような支持体材料の特性と製法は、例えば、Science and Technology of Photographie、初版、KELLER,Karlheinz.Weinheim編集、VCH Verlagsgesellschaft mbH発行、1993年、69〜74ページに開示されている。
【非特許文献1】Science and Technology of Photographie
【特許文献】
【0004】
従来型の片面に画像を記載する写真用印画紙を使用する写真集の製作では、次のシート又はウェブと背面同士に貼り付けることによって行うことができ、その方法と装置は、例えば欧州特許出願公開第1955866号明細書に開示されている。しかしながら、この貼り付けは、製本の際に複雑な追加工程を増やすことになる。しかもこれにより得られる本のページは、使用される写真用印画紙の2倍を超える厚さとなり、これが望ましくない場合がほとんどである。本のページの厚さを減じるために用いられる特に薄い写真用印画紙は、その剛性が少ないため、通常の写真露光及び現像機器では、しばしば搬送上の障害を生じるという欠点がある。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1955866号明細書
【0005】
写真集のページを生成するためのその他のデジタル印刷技術、例えばトナーを用いるインクジェット印刷又は電子写真印刷が公知である。従来は、このような印刷技術によって生成された画像ページは、例えば、光沢、手触り、寿命のいくつかの特性が、感光性材料を用いて生成される写真画像ページと異なり、そのため需要が少なかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、単層又は複数層の写真乳剤層を有する両面コーティングのための支持体材料であって、写真乳剤のコーティング、画像の露光、及び湿式化学的現像の後で、従来型の片面に画像形成可能な支持体材料に匹敵する画像印象(Bildeindruck)を両面で得ることのできる前記支持体材料を提供することである。
【0007】
更に、支持体材料の両面に写真乳剤層の良好な固着(Haftung)が得られることが好ましい。
【0008】
支持体材料は、巻き取られた状態で粘着(verkleben)してはならず、また表面相互間で強い接着傾向(Adhaesionsneigung)を示してはならない。
【0009】
本発明による支持体材料は、その後の追加加工、特に引出し展開(Abrollen)の際に、静電気を帯電してはならない。なぜなら、その結果生じる放電プロセスによって、写真乳剤層が損傷(schaedigen)及び黒化(schwaerzen)する恐れがあるからである。
【0010】
最後に、支持体材料は、高い白色度と高い不透明度(Opazitaet)を有することができる。それは、片面に画像表示される支持体材料に匹敵する画像印象を得るため、そして、背面に表示された画像が透けて見える(Durchscheinen)のを防止するためである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題は、ハロゲン化銀を含む写真記録層で両面をコーティングするための支持体材料(ein Traegermaterial fuer die beidseitige Beschichtung mit fotografischen silberhalogenidhaltigen Aufzeichnungsschichten)によって解決される。前記支持体材料は少なくとも1枚の原紙(Basispapier)を含み、前記原紙は、両面に形成された合成樹脂層と、前記合成樹脂層の原紙に向いていない側にある機能層(Funktionsschichten auf der dem Basispapier abgewandten Seiten der Kunstharzschichten)とを有するものであり、この場合、前記機能層は、少なくとも1つの水溶性結合剤、多価アルコール、無機酸の塩、合成樹脂分散系粒子(Teilchen einer Kunstharzdispersion)を含む。
【0012】
本発明は、両面に単層又は複数層の感光性画像記録層(einer oder mehreren lichtempfindlichen Bildaufzeichnungsschichten)をコーティングすることができ、そして、例えば写真集を製作するために、高品質の両面画像表示可能なページ(hochwertiger beidseitig bebilderter Seiten)を生成することのできる支持体材料を提供することにある。前記支持体材料は、感光層のコーティング、露光、湿式化学的現像(nasschemischen fotografischen Entwicklung)、及び写真集とするまで追加加工といった後続のプロセス全体において、ウェブとしてもシートとしても、材料表面相互間で粘着又は強い接着を生じることなく取り扱うことができ、静電気の帯電(Aufladungen)及び放電(Entladungen)が防止される。しかしながら、同時に、写真乳剤層の良好な固着は保証される。
【0013】
本発明による支持体材料からは、写真乳剤層の両面コーティング、両面露光及び湿式化学的現像の後で、従来型支持体の片面画像に匹敵するような画像印象の画像が両面で得られる。前記支持体材料は、工業的製造条件下で巻き取り(Aufrollen)及び引出し展開する際で、表面相互間に粘着及び障害となる接着を生じない。前記支持体材料は、写真乳剤を更にコーティングする際、写真乳剤層の損傷や黒化を生じる静電気帯電を示さない。本発明の支持体材料両面に塗布された写真乳剤の固着は、確実に行われる。
【0014】
例えば、押し出し(Extrusion)によって塗布された合成樹脂層は、光沢画像の生成に用いられる支持体材料の場合には2μm未満、又は艶消し画像の生成に用いられる支持体材料の場合には15μm未満の、DIN4768によるRz値として測定される表面粗さ(Rauhigkeit)を有することができる。
【0015】
合成樹脂層の両面に塗布された機能層は、少なくとも1つの水溶性ポリマー、水混和性(wassermischbar)多価アルコール、無機酸の塩、合成樹脂粒子(Kunstharz-Partikel)を含む。この粒子は、平均粒径2μm〜20μmとすることができる。これらは、110℃を超える溶融領域を有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の目的のために、用語「未処理紙(Rohpapier)」とは、コーティングされていない紙、又は表面サイジングされた(oberflaechengeleimt)紙として理解される。これは、漂白パルプを用いて製造することができる。
【0017】
未処理紙は、パルプ繊維に加えて、サイズ剤(例えば、アルキルケテンダイマー、脂肪酸及び/又は脂肪酸塩、エポキシ化脂肪酸アミド、アルケニル又はアルキル無水コハク酸)、湿潤強度剤(例えば、ポリアミンポリアミドエピクロロヒドリン)、乾燥強度剤(例えば、アニオン性、カチオン性、又は両性のポリアミド)、デンプン、蛍光増白剤、顔料、染料、消泡剤、その他の製紙業において公知の助剤(Hilfsmittel)を含むことができる。未処理紙は、表面サイジングされたものとすることができる。このために適当なサイズ剤としては、例えばポリビニルアルコール又は酸化デンプンである。この未処理紙は、長網抄紙機又はヤンキー抄紙機(円網抄紙機)で製造することができる。この未処理紙の坪量(Flaechengewicht)は50〜250g/m、特に50〜150g/mであることができる。未処理紙は、非圧縮又は圧縮(カレンダー化;geglaettet)した形態で使用することができる。密度0.8〜1.05g/cm、特には0.95〜1.02g/cmを有する未処理紙が特に好ましい。
【0018】
特に好ましいのは、鉱物性充填剤を含む未処理紙である。未処理紙中に使用されることが見込まれる充填剤としては、例えば、カオリン、自然形態にある(in seiner natuerlichen Form)炭酸カルシウム(例えば、石灰岩、大理石、又はドロマイト石)、沈降炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、タルク、シリカ、酸化アルミニウム、及びそれらの混合物を挙げることができる。このような未処理紙は、充填剤を含まない未処理紙よりも不透明度が高く、このため、片面に生じた写真画像について、他方の面から前記画像を観察する場合に、透けて見えるのを防止できるのは有利なことである。
【0019】
本発明における原紙とは、両面を熱可塑性樹脂(例えば、ポリオレフィン又はポリオレフィン混合物)によってコーティングされた未処理紙のことである。未処理紙への樹脂層の塗布(Aufbringen)は、押し出しによって実施することができる。
【0020】
本発明のその他の実施態様では、未処理紙と、未処理紙の両面に配置された合成樹脂層の少なくとも一方との間に、親水性結合剤を含むもう1つの層を配置することができる。このために、薄膜形成デンプン(例えば、熱可塑性デンプン、特に、トウモロコシデンプン又はヒドロキシプロピル化デンプン)が特に適当である。ブルックフィールド粘度が50〜600mPas(25%溶液、50℃/毎分100回転(Upm))、特に100〜400mPas、好ましくは200〜300mPasの範囲にある低粘性デンプン溶液を使用することが好ましい。このブルックフィールド粘度は、ISO2555により測定される。結合剤は、合成ラテックスを含まないものが好ましい。合成結合剤を含まないことにより、材料廃棄物の再利用が、事前の準備なしに可能となる。
【0021】
本発明のその他の実施態様では、親水性結合剤を含むもう1つの層において、少なくとも1つの顔料を含む。顔料は、金属の酸化物、ケイ酸塩、炭酸塩、硫化物と硫酸塩の硫酸塩の群から選択することができる。特に適しているのは、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、及び/又は硫酸バリウムである。
【0022】
顔料粒子の少なくとも70%が1μm未満のサイズである狭い粒度分布を有する顔料が特に好ましい。本発明の効果を達成するためには、顔料の総量に対する、狭い粒度分布を有する顔料の割合が、少なくとも5重量%、特に10〜90重量%であることが好ましい。特に良好な結果が得られるのは、顔料総量に対する前記顔料の割合が30〜80重量%の場合である。
【0023】
本発明によると、狭い粒度分布を有する顔料とは、顔料粒子の少なくとも約70重量%が約1μm未満のサイズを有し、そして、これらの顔料粒子の40〜80重量%において、最も大きい粒度(直径)を有する顔料と最も小さい粒度を有する顔料との差が約0.4μm未満である粒度分布を有する顔料として理解されたい。約0.7μmのd50%値を有する炭酸カルシウムが特に有利である。
【0024】
本発明の或る実施態様によると、炭酸カルシウムとカオリンとを含む顔料混合物を用いることができる。炭酸カルシウム/カオリンの量比は、30:70〜70:30が好ましい。
【0025】
もう1つの層における結合剤/顔料の量比は、0.1〜2.5、好ましくは0.2〜1.5、特に好ましくは0.9〜1.3であることができる。
【0026】
親水性結合剤を含む層は、好ましくは、追加のポリマー(例えば、ポリアミドコポリマー及び/又はポリビニルアミンコポリマー)を含むことができる。ポリマーは、顔料の質量に基づく、0.4〜5重量%の量で用いることができる。或る好ましい実施態様によると、ポリマーの量は、0.5〜1.5重量%である。
【0027】
親水性結合剤を含む層は、未処理紙の片面又は両面に、直接配置することができる。この層は、個別の層又は複数層として、未処理紙上に形成することができる。コーティング用素地(Beschichtungsmasse)は、製紙業において通常用いられる全ての付与機器(Auftragsaggregaten)で、インライン又はオフラインで塗布することができる。この場合、量は、乾燥後の層当たりの付与重量(Auftragsgewicht)が多くても20g/m、特に8〜17g/mとなるように選択されるか、又は特に好ましい実施態様の場合で2〜6g/mとなるように選択される。
【0028】
この追加層は、例えば、カレンダー加工又はフェロタイピング(Ferrotyping)の機械的方法で更に平滑化することができ、前記層は、キャストコーティング(Cast Coating)によって塗布することもできる。
【0029】
合成樹脂層は、押し出しによって未処理紙の両面に塗布することができる。本発明の或る実施態様によると、両面の合成樹脂層が同一のポリマーを含むことができる。本発明の更にその他の実施態様では、両面の合成樹脂層に用いられるポリマーが、それぞれ異なる。
【0030】
未処理紙の両面に配置された合成樹脂層は、温度40℃、空気相対湿度(relative Luftfeuchtigkeit)90%で測定される、層厚さ30μmのとき最大150g/m×24時間の水蒸気透過性(Wasserdampfdurchlaessigkeit)を有するポリマーを含むことが好ましい。
【0031】
ポリマーは、熱可塑性ポリマーであるのが好ましい。適当な熱可塑性ポリマーとしては、例えば、ポリオレフィン、特に低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン/αオレフィンコポリマー(LLDPE)、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン、及びこれらの混合物である。しかしながら、その他の熱可塑性ポリマー、例えば(メタ)アクリル酸エステルホモポリマー、(メタ)アクリル酸エステルコポリマー、ビニルポリマー例えばポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、及び/又はポリカーボネートも使用することができる。
【0032】
特に好ましいのは、低密度ポリエチレン(LDPE)、又は低密度ポリエチレン(LDPE)と高密度ポリエチレン(HDPE)とからなるポリエチレン混合物であり、この場合、LD/HDの量比は9:1〜1:9、特に9:1〜9:3とすることができる。
【0033】
本発明の或る好ましい実施態様によると、未処理紙の各面は、密度0.910〜0.930g/cmとメルトフローインデックス1〜20g/10分とを有する低密度ポリエチレン(ポリマー層に対する)を少なくとも50重量%、特に少なくとも80重量%含むポリマー層でコーティングされる。
【0034】
本発明の或る好ましい実施態様によると、原紙の片面又は両面の合成樹脂層が、白色顔料(例えば、二酸化チタン)を更に含む。片面又は両面の合成樹脂層が白色顔料を含むことにより、有利には、支持体材料の不透明度を上げることができ、そして、生成される写真画像の鮮明度を改良することができる。片面又は両面の合成樹脂層は、その他の助剤(例えば、蛍光増白剤、染料、及び分散剤)を更に含むことができる。
【0035】
前面及び背面のポリマー層の付与重量は、それぞれ、5〜50g/m、好ましくは20〜50g/m、又は、特に好ましくは30〜50g/mとすることができる。
【0036】
本発明の或る実施態様では、支持体材料が光沢画像の生成に用いられる場合、DIN4768に従ってRz値として測定される、2μm未満の値の表面粗さを、対応する組織構造を持つ冷却シリンダーを用いて生じさせる。この場合、好ましくは表面粗さが0.80μm〜1.90μm、特に好ましくは1.00μm〜1.70μmであり、特に粗さ分布が均一な場合には、Rzの標準偏差が0.050μm〜0.120μm、好ましくは0.060μm〜0.100μmである。
【0037】
本発明のその他の実施態様では、支持体材料が艶消し画像の生成に用いられる場合、DIN4768に従ってRz値として測定される、2μm〜15μmの値の表面粗さを、対応する組織構造の冷却シリンダーを用いて生じさせることができる。
【0038】
原紙の少なくとも片面、好ましくは両面に、機能層が塗布される。この機能層は、静電気防止作用及びブロッキング防止特性(Antiblocking-Eigenschaften)を有するように、そして、合成樹脂面に対する銀塩乳剤の固着を促進するように形成されている。この機能層は、少なくとも1種類の水溶性ポリマー、水混和性多価アルコール、無機酸の塩、及び合成樹脂微粒子を含む。
【0039】
本発明の機能層における水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコール、デンプン、又はその他の水溶性ポリマーであることができる。特に好ましいのはゼラチンである。
【0040】
水混和性多価アルコールは、グリコール(例えば、エチレングリコール又はプロピレングリコール)、あるいはその他の多価アルコールであることができ、特に好ましいのはグリセリンである。
【0041】
無機酸の塩は、或る好ましい実施態様によると、アルカリ金属塩化物、又はアルカリ金属硝酸塩(特に好ましくは、硝酸ナトリウム、又は硝酸リチウム)であることができる。
【0042】
合成樹脂粒子は、110℃を超える溶融領域を有する合成樹脂であることができる。合成樹脂粒子は、2μm〜20μm、好ましくは4μm〜10μmの平均粒径を有することができる。或る好ましい実施態様では、合成樹脂粒子はポリエチレンを含む。
【0043】
機能層は、合成樹脂粒子から得られる合成樹脂分散系及び前述の機能層の構成要素(Bestandteile)に加えて、その他の助剤(例えば、湿潤剤又は増粘剤)を含むことのできるコーティング液(Beschichtungsfluessigkeit)から生成される。コーティング液は、溶媒として好ましくは水を主成分として含む。
【0044】
機能層の両面での付与は、製紙業において通常用いられる全ての付与機器により、インライン又はオフラインで実施することができる。乾燥後の層当たりの付与量(Auftragsmenge)は、最大2.0g/m、特に100mg/m〜1g/mである。
【0045】
有利な方法として、未処理紙に合成樹脂層を塗布する前に又は合成樹脂層に機能層を塗布する前に、未処理紙表面又は原紙表面を、コロナ放電照射又は気体プラズマで処理する。
【0046】
下記の実施例は、本発明を更に説明するためのものである。
【実施例】
【0047】
原紙Aを製造するため、ユーカリパルプ製の未処理紙を用いた。叩解(mahlen)のため、パルプを約5%の水性分散系(高濃度パルプ;Dickstoff)とし、リファイナーを用いて、叩解度(Mahlgrad)36°SRまで叩解した。平均繊維長さは0.64mmであった。低濃度パルプ(Dunnstoff)中のパルプ繊維濃度は、パルプ分散系の質量の1重量%であった。低濃度パルプに添加剤、例えば、0.48重量%の中性サイズ剤アルキルケテンダイマー(AKD)と、0.36重量%の湿潤強度剤ポリアミンポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(Kymere(商標))と、10重量%の天然CaCOとを添加した。これらの示される量は、パルプ質量(Zellstoffmasse)に対する量である。pH値を約7.5に調整された低濃度パルプを、ヘッドボックス(Stoffauflauf)から抄紙機のスクリーン(Sieb)へ導入し、そこでは、抄紙機のワイヤーセクション(Siebpartie)中で、ウェブの脱水を伴うシート形成を実施した。ウェブ重量に対する含水量60重量%まで、紙ウェブをプレスセクション(Pressenpartie)中で更に脱水した。抄紙機の乾燥セクション(Trockenpartie)では、加熱された乾燥シリンダーを用いて、更なる乾燥を実施した。これにより得られる原紙は、坪量160g/mと水分約7%とを有していた。
【0048】
未処理紙は両面に、スチレンアクリレート結合剤からなるコーティング素地(Streichmasse)と、炭酸カルシウム50重量%及びカオリン50重量%からなる顔料混合物とを、両面ともそれぞれ15g/mの付与重量で塗布され、乾燥され、続いてカレンダー装置によって平滑化された。こうして得られた材料を以下に原紙Aと呼ぶ。
【0049】
原紙Bは、原紙Aの形態の未処理紙と同じ方法で、ユーカリパルプから製造された未処理紙である。しかしながら、原紙Bの場合、完成後の未処理紙ウェブが乾燥質量に基づく10重量%のTiOを含む量で、二酸化チタンをパルプ分散系中に追加的に含む。この未処理紙は、そのまま、更なるコーティング素地を塗布せずに、原紙Bとして、後続の押し出しコーティング(Extrusionsbeschichtung)のために用いられた。
【0050】
原紙A及びBの両面に、低密度ポリエチレン(LDPE、0.923g/cm)90重量%と、二酸化チタン(ルチル)10重量%とからなるポリエチレン・二酸化チタン混合物を、付与重量約20g/m、速度約250m/分で、ラミネータ―中にコーティングした。冷却シリンダーは、両面に生じる表面が、DIN4768によるRz値として測定される1.2μmの表面粗さRzを有し、このとき標準偏差0.08μmであるものを選択した。得られた材料を以下にA1及びB1と呼ぶ。これらは、高光沢表面(hochglaenzende Oberflaeche)を示すものである。
【0051】
原紙A及びBに、同じ方法で、同じポリエチレン・二酸化チタン混合物を押し出しコーティングした。しかしながら、この場合、冷却シリンダーは、両面に生じる表面が、11.2μmの表面粗さRzを有し、このとき標準偏差1.3μmであるものを選択した。得られた材料を以下にA2及びB2と呼ぶ。これらは、艶消し組織構造化された(matt strukturiert)表面を有する。
【0052】
得られた押し出しコーティング済み材料の表面を、コロナ放電照射後、コーティング素地a、b、c、dでコーティングして、乾燥させた。その際、付与重量は、乾燥後全てのケースで、各材料の両表面の各々で0.5g/mであった。
【0053】
コーティング素地a〜dの組成(Zusammensetzung)を以下の表1に記載する。アクリレート分散系としてはCarboset(商標)GA1161及びGA1339(Lubrizol社製造)の混合物、そしてPEワックス分散系としてはLubaprint(商標)VP 760/D(ドイツ国、Rottweil市、L.P.Bader社製造)を使用した。量表示は全て、使用された固形物(Feststoff)の量である。
【表1】

得られた支持体材料に対して、下記の表2に記載する試験を行った:
【表2】

試験結果を、下記の表3にまとめた。
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化銀を含む写真記録層を両面コーティングするための支持体材料であって、
前記支持体材料は少なくとも1つの原紙を備えており、
前記原紙は、前記原紙の両面に配置された合成樹脂層と、前記合成樹脂層の原紙に向いていない側にある機能層とを有しており、
前記機能層は、少なくとも1つの水溶性結合剤と、多価アルコールと、無機酸の塩と、合成樹脂粒子とを含む、前記支持体材料。
【請求項2】
水溶性結合剤がゼラチンであることを特徴とする、請求項1に記載の支持体材料。
【請求項3】
多価アルコールがグリセリンであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の支持体材料。
【請求項4】
合成樹脂粒子がポリオレフィン粒子であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の支持体材料。
【請求項5】
ポリオレフィン粒子の溶融領域が110℃を上回ることを特徴とする、請求項4に記載の支持体材料。
【請求項6】
合成樹脂粒子の平均粒径が2μm〜20μmであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の支持体材料。
【請求項7】
合成樹脂粒子の平均粒径が4μm〜10μmであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の支持体材料。
【請求項8】
機能層が、各面で0.1g/m〜1g/mの付与重量を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の支持体材料。
【請求項9】
プラスチック層が、Rzとして測定される0.80μm〜3.0μmの表面粗さを有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の支持体材料。
【請求項10】
プラスチック層が、Rzとして測定される6.0μm〜15.0μmの表面粗さを有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の支持体材料。
【請求項11】
プラスチック層が低密度ポリエチレン(LDPE)を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の支持体材料。
【請求項12】
プラスチック層が白色顔料を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の支持体材料。
【請求項13】
原紙が無機顔料を充填剤として有する未処理紙を含むことを特徴とする、請求項1に記載の支持体材料。
【請求項14】
無機顔料が二酸化チタン、炭酸カルシウム、又はカオリンであることを特徴とする、請求項13に記載の支持体材料。
【請求項15】
原紙が、未処理紙の質量に基づく2重量%〜15重量%の充填剤含有量を有する未処理紙であることを特徴とする、請求項13に記載の支持体材料。

【公開番号】特開2012−58735(P2012−58735A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198831(P2011−198831)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(591010561)フェリックス シェラー ユニオール フォト― ウント スペチアルパピーレ ゲー エム ベー ハー ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (8)
【氏名又は名称原語表記】Felix Schoeller jr. Foto−und Spezialpapiere GmbH & Co. KG
【Fターム(参考)】