説明

両面アーク溶接のアーク長制御方法と溶接装置

【課題】母材の両面のアーク長、あるいは非消耗電極式溶接の入熱量を安定して制御する消耗電極式溶接と非消耗電極式溶接を用いた両面アーク溶接方法と装置を提案すること。
【解決手段】溶接中は非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)と予め設定した一定値である消耗電極側のアーク電圧値(Vgma-const)の和(Vall)の値を出力電圧値(Vout)とすることにより消耗電極アーク1のアーク長が一定値となるように制御し、溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値により予め設定した非消耗電極側の基準アーク電圧値(Vgta-const)を補正し、この補正アーク電圧値と非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)との比較により、非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整して非消耗電極アーク6のアーク長が一定値となるように制御する両面アーク溶接方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消耗電極溶接と非消耗電極溶接を組合わせた両面アーク溶接法に係り、特に両側のアーク長を安定して自動制御するのに好適なアーク長制御方法とそれを用いた溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
消耗電極式ガスシールドアーク溶接法は、直流あるいは交流の溶接電源に接続された電極(消耗電極式ではワイヤ)と被溶接材である母材との間でアークを発生させ、その発熱により溶接ワイヤおよび母材を溶融させることにより溶接する方法である。この溶接法では電極ワイヤの溶融速度とワイヤの送給速度の平衡が何らかの原因でくずれると、次のような不具合がある。すなわち、アーク長が短くなるとワイヤの突っ立ち(スタッビング)が生じたり、逆にアーク長が長くなると、給電部材に溶着(バーンバック)してしまい、アークが消滅して溶接不可能となる。このため、消耗電極式ガスシールドアーク溶接法ではアーク長を一定に保つ自動制御手段が不可欠になる。
【0003】
一般に消耗電極式アーク溶接における電極先端と溶融池表面の距離を見かけのアーク長Laとすると、見かけのアーク長Laの変化は次式で示される。
dLa/dt=Vm−Vf (1)
ここで、Vm:ワイヤ溶融速度、Vf:ワイヤ送給速度である。
【0004】
ワイヤの溶融速度Vmは、ワイヤの材質、ワイヤ径及びシールドガスの種類や突出し長さ(給電部とワイヤ先端の距離)が定まると、あとは主として電流に依存する。したがって、アーク長の変化に応じて電流を自動的に増減させる方法が、アーク長を一定にするのに効果的である。
【0005】
実際の溶接装置でワイヤ溶融速度Vmを制御する手段としては、大別すると以下の2通りの方法がある。
その第一の方法は、消耗電極式ガスシールドアーク溶接でよく用いられる定電圧特性の溶接電源のもつ自己制御作用を利用する方法である。図3は消耗電極式溶接で使用する定電圧特性電源のアーク長自己制御特性を示すグラフである。
【0006】
一定のアーク長La1,La2(La1<La2)に対するアーク特性は、図3に示すように電流に対して電圧が緩やかに上昇する特性となる。このアーク特性に交差する溶接電源の特性Sが設定されているとすると、何らかの原因でアーク長が長さLa1から長さLa2に長くなった場合に、アーク電圧のわずかな増加により電源特性上の動作点はP1からP2に移動し、電流は△Iだけ急減する。このため、ワイヤの溶融速度Vmが減少し、ワイヤの送給速度が一定の場合は、アーク長が短くなって長さLa1に戻り、動作点もP1に復帰する。
【0007】
次に第二の方法は、電流をアーク長に応じてフィードバック制御する方法である。最近の消耗電極式ガスシールドアーク溶接ではパルス電流を使用することが多く、この場合は定電流特性の溶接電源が使用されることが多い。つまり、周期的に脈動するパルス電流による溶滴移行の安定化を図るために、電流値は予め設定された値に定電流化されている。このため、定電圧特性によるアーク長の自己制御作用は期待できない。
【0008】
図4は消耗電極トーチ5と母材18の間にワイヤ2を供給して消耗電極アーク1を発生させる消耗電極式溶接において、パルスアーク溶接におけるアーク長制御方法を示す説明図である。定電流特性の溶接電源の場合は、見かけのアーク長の変化にほぼ比例するアーク電圧を検出し、この値を設定した基準電圧と比較して、パルス周波数あるいはパルス幅を増減させる方法が適用されている。
【0009】
図4(a)はパルス周波数変調式でパルス幅Tpを一定とし、周期T(T1、T2・・・)を変更させて平均電流を増減させる方法である。図4(b)はパルス幅変調式で周期Tを一定とし、パルス幅Tpを変更させて平均電流を増減させる方法である。
【0010】
すなわち、図4のアーク長制御方法は、検出したアーク電圧が基準電圧より低い場合はアーク長が短くなっているので電流値を増加させ、逆に検出したアーク電圧が基準電圧より高い場合はアーク長が長くなっているので電流値を減少させてアーク長の長さが一定になるように制御する方法である。
【0011】
定電圧特性の溶接電源を使用している場合は、溶接電源からの出力電圧は一定になり、アース側の抵抗値変動は電圧変動を引起こすので、アーク電圧が変動し、アーク長が変動する。また、定電流特性の溶接電源を使用している場合は、アーク長を制御するためにアーク電圧を測定するが、アース側の抵抗値変動は電圧変動を引起こすので、測定したアーク電圧が実際のアーク電圧+変動電圧になり、その測定値によりアーク長が制御されるのでアーク長が変動してしまう。アーク長の変動は、ビード幅の変動、アンダーカット等の溶接欠陥を引起こしたり、スパッタの発生が多くなるトラブルを引起こす。
【0012】
また、消耗電極式ガスシールドアーク溶接においては、アースケーブルの工作物への設置方法が重要である。自動溶接機ではこのアース設置を自動で行うことが考案されており、例えば特許第2500841号の発明のようにアース板を工作物に押し付けて密着させる方法が採用されている。しかし工作物によっては表面の粗さが粗いもの、あるいは塗装されているものがあり、接触部の抵抗値が変動し、溶接条件が工作物毎に変動してしまうという問題が発生してしまう場合があった。また、工作物が長尺である場合は、例えば特開平10−166152号公報記載の発明のようにアース板と工作物を接触させて摺動させる方法が採用されている。しかしこの場合も、工作物によっては表面の粗さが粗いもの、あるいは塗装されているものがあり、接触部の抵抗値が変動してしまうこと又はアース板の損耗が激しい場合もあり、その影響により接触部の抵抗値が変動してしまうという問題が発生してしまう場合があった。
【0013】
さらに、消耗電極式ガスシールドアーク溶接において工作物へのアースケーブルの設置位置が不適当であると、溶接電流によって形成される磁界や被溶接材を流れるアース電流によって形成さられる磁界と溶接電流との電磁作用によって溶接時に溶接アークがローレンツ力(電磁力)の負荷方向に偏向(この現象を一般に磁気吹きと称する)することが知られている。この磁気吹き現象が激しい時は、スパッタの多発や溶け込み不良、ビードの蛇行及びビード形状の不良等の溶接欠陥が生じる場合があり、特開2001−300728号公報等で提示されているような対策が必要になる場合がある。
【0014】
前記アース側の抵抗値変動による影響を受けない溶接法の一つにYuming Zhangにより両面アーク溶接法(米国特許第5,990,446号明細書)が開発されている。
この溶接法は、溶接対象物の両側にそれぞれ溶接トーチを設置し、溶接電源1台により2つのアークを発生させて溶接を行う方法である。この溶接法の長所は両面から同時に溶接を行うため、母材に対する溶け込みが深くなり、適正な条件で施工を行なえば、母材の貫通溶接が可能になること、溶接で発生する母材の片側への角変形を低減できること、またアース線の設置が無くなることが挙げられる。
【0015】
特にアース線の設置が無くなると、上記したアース設置に関するトラブルが無くなる。米国特許第5,990,446号明細書記載の溶接法として、非消電極のプラズマ溶接とTIG溶接の組合せと、消耗電極と非消耗電極の組合せの溶接法が提案されている。
【0016】
非消耗電極式ガスシールドアーク溶接法は、直流あるいは交流の定電流特性の溶接電源に接続されたタングステン電極と母材との間でアークを発生させ、その発熱により母材を溶接する方法、またワイヤを添加する場合はワイヤを溶融させることにより溶接する方法である。この非消耗電極式溶接ではタングステン電極の消耗はわずかで、タングステン電極先端と母材の距離が見かけのアーク長になり、タングステン電極先端と母材の距離の変動がアーク長の変動になる。
【0017】
一定のアーク長La1、La2(La1<La2)に対するアーク特性は、図3に示すように電流に対して電圧が緩やかに上昇する特性となる。非消耗電極式溶接では、定電流特性の溶接電源を使用するため、アーク長La1のP1ポイントはアーク長が変動してLa2になると、P3ポイントに移動し、電圧が上昇することになる。従ってアーク電圧を測定し、予め設定した基準電圧と比較して測定電圧が基準電圧になるようにタングステン電極(溶接トーチ)をスライダー等で上下移動させることにより、アーク長の一定制御を行うことができる。
【特許文献1】特許第2500841号
【特許文献2】特開2001−300728号公報
【非特許文献1】「Welding of austenitic stainless steel using double sided are welding process」 Materials Science and Technology、October 2001 Vol.17 P1280-1284
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
消耗電極溶接トーチと非消耗電極溶接トーチと定電圧式直流電源からなり、消耗電極溶接トーチと非消耗電極溶接トーチを母材を挟んで設置し、消耗電極溶接トーチのワイヤと定電圧式直流電源のプラス極を接続し、非消耗電極溶接トーチのタングステン電極と定電圧式直流電源のマイナス極を接続し、母材の両側からアークを発生させて溶接を行う両面アーク溶接方法において、直流電源からの出力電圧値Voutは、給電ケーブル内の電圧降下や電極給電部の電圧降下が無視できるとすると、消耗電極溶接のアーク電圧値Vgmaと非消耗電極溶接のアーク電圧値Vgtaの和になる。
Vout=Vgma+Vgta (2)
【0019】
非消耗電極溶接のアーク長が一定、つまり非消耗電極溶接のアーク電圧値Vgtaが一定ならば、定電圧式直流電源の自己制御作用により消耗電極式溶接のアーク長は一定に保持される。しかし、非消耗電極溶接のアーク長が変化してしまう場合は、消耗電極溶接のアーク長はその影響を受けてアーク長が一定にならないという問題があった。
【0020】
また、非消耗電極溶接のアーク長はアーク電圧を測定し、予め設定した基準電圧と比較して測定電圧が基準電圧になるようにタングステン電極(溶接トーチ)を上下移動させることによりアーク長の一定制御を行う方法が発明されているが、この方法は定電流特性の溶接電源を使用して電流値が一定の時に成り立つ方法であり、定電圧特性の電源で電流値が変動している場合には、この方法を適用することができないという問題があった。
【0021】
さらに溶接の入熱量Q(J/cm)は電流A(A)と電流V(V)の積を溶接速度S(cm/min)で割ったものであり、式(3)で求められる。
Q=60×A×V/S (3)
【0022】
一般に定電流特性の電源を用いる非消耗電極溶接では電流が一定で、溶接速度が一定ならば、アーク長制御を行うことにより入熱量も一定にしていることになる。しかし、上記溶接法では電圧でアーク長を制御しても電流値が変動しているため、入熱量が一定にならないという問題があった。
【0023】
同様に、消耗電極溶接トーチと非消耗電極溶接トーチと定電流式直流電源からなり、消耗電極溶接トーチと非消耗電極溶接トーチを母材を挟んで設置し、消耗電極溶接トーチのワイヤと該定電流式直流電源のプラス極を接続し、該非消耗電極溶接トーチのタングステン電極と該定電流式直流電源のマイナス極を接続し、母材の両側からアークを発生させて溶接を行う両面アーク溶接方法において、消耗電極式溶接のアーク長制御は、非消耗電極アーク電圧値により平均電流値を増減させることにより行うことができる。しかし、非消耗電極式溶接では定電流特性の溶接電源を使用しているにもかかわらず電流値が変動しているので定電圧特性の溶接電源を使用する両面アーク溶接方法と同様の問題があった。
【0024】
本発明の課題は、母材の両面のアーク長、あるいは非消耗電極式溶接の入熱量を安定して制御する消耗電極式溶接と非消耗電極式溶接を用いた両面アーク溶接方法と装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記本発明の課題は、次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、ワイヤ2を備えた消耗電極溶接トーチ5とタングステン電極7を備えた非消耗電極溶接トーチ8と前記トーチ5,8間に設けられる定電圧式直流電源14を備え、消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8を母材18を挟んで設置し、消耗電極溶接トーチ5のワイヤ2と定電圧式直流電源14のプラス極を接続し、非消耗電極溶接トーチ8のタングステン電極7と定電圧式直流電源14のマイナス極を接続し、母材18の両側からそれぞれアーク1,6を発生させて溶接を行う両面アーク溶接方法において、母材18と定電圧式直流電源14のマイナス極間の電圧を測定する非消耗電極アーク電圧測定回路11と、前記トーチ5,8への給電量を測定する電流センサ16と、該電流センサ16の検出値に基づき溶接電流を測定する溶接電流測定回路17を設け、さらに非消耗電極アーク電圧測定回路11での非消耗電極アーク電圧の測定値に基づき定電圧式直流電源14の電圧値を指示する電圧値指示回路15を設け、溶接のスタート時は予め設定した消耗電極側のアーク電圧値(Vgma-const)と非消耗電極側のアーク電圧値(Vgta-const)の和(Vall-const)を定電圧式直流電源14の出力電圧値(Vout)の基準アーク電圧の設定値として出力し、溶接中は非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)と前記予め設定した一定値である消耗電極側のアーク電圧値(Vgma-const)の和(Vall)の値を出力電圧値(Vout)とすることにより消耗電極アーク1のアーク長が一定値となるように制御し、溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値により予め設定した非消耗電極側の基準アーク電圧値(Vgta-const)を補正し、この補正アーク電圧値と非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)との比較により、非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整して非消耗電極アーク6のアーク長が一定値となるように制御する両面アーク溶接方法である。
【0026】
請求項2記載の発明は、ワイヤ2を備えた消耗電極溶接トーチ5とタングステン電極7を備えた非消耗電極溶接トーチ8と前記トーチ5,8間に設けられる定電圧式直流電源14を備え、消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8を母材18を挟んで設置し、消耗電極溶接トーチ5のワイヤ2と定電圧式直流電源14のプラス極を接続し、非消耗電極溶接トーチ8のタングステン電極7と定電圧式直流電源14のマイナス極を接続し、母材18の両側からそれぞれアーク1,6を発生させて溶接を行う両面アーク溶接方法において、母材18と定電圧式直流電源14のマイナス極間の電圧を測定する非消耗電極アーク電圧測定回路11と、前記トーチ5,8への給電量を測定する電流センサ16と、該電流センサ16の検出値に基づき溶接電流を測定する溶接電流測定回路17を設け、さらに非消耗電極アーク電圧測定回路11での非消耗電極アーク電圧の測定値に基づき定電圧式直流電源14の電圧値を指示する電圧値指示回路15を設け、溶接のスタート時は予め設定した消耗電極側のアーク電圧値(Vgma-const)と非消耗電極側のアーク電圧値(Vgta-const)の和(Vall-const)を定電圧式直流電源14の出力電圧値(Vout)の基準アーク電圧の設定値として出力し、溶接中は非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)と前記予め設定した一定値である消耗電極側のアーク電圧値(Vgma-const)の和(Vall)の値を出力電圧値(Vout)とすることにより消耗電極アーク1のアーク長が一定値となるように制御し、非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)と溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値の積である電力値と予め設定してある非消耗電極側の溶接時の電力値との比較により、非消耗電極側の溶接時の電力値が前記設定電力値になるように、非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整して非消耗電極アーク6のアーク長を制御する両面アーク溶接方法である。
【0027】
請求項3記載の発明は、ワイヤ2を備えた消耗電極溶接トーチ5とタングステン電極7を備えた非消耗電極溶接トーチ8と前記トーチ5,8間に設けられる定電流式直流電源20を備え、消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8を母材18を挟んで設置し、消耗電極溶接トーチ5のワイヤ2と定電流式直流電源20のプラス極を接続し、非消耗電極溶接トーチ8のタングステン電極7と定電流式直流電源20のマイナス極を接続し、母材18の両側からそれぞれアーク1,6を発生させて溶接を行う両面アーク溶接方法において、母材18と定電流式直流電源20のマイナス極間の電圧を測定する非消耗電極アーク電圧測定回路11と、母材18と定電流式直流電源20のプラス極間の電圧を測定する消耗電極アーク電圧測定回路22と、前記トーチ5,8への給電量を測定する電流センサ16と、該電流センサ16の指示電流値に基づき溶接電流を測定する溶接電流測定回路17を設け、さらに消耗電極アーク電圧測定回路22で測定した消耗電極アーク電圧値(Vgma)に基づき定電流式直流電源20の電流値を指示する電流値指示回路21を設け、消耗電極アーク電圧測定回路22で測定した消耗電極アーク電圧値(Vgma)を電流値指示回路21で予め設定してある消耗電極アーク1の基準電圧値(Vgma-const)と比較して定電流式直流電源20からの出力電流値を調整することで消耗電極アーク1のアーク長が一定値となるように制御し、溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値により予め設定した非消耗電極側の基準アーク電圧値(Vgta-const)を補正し、この補正アーク電圧値と非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)との比較により、非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整して非消耗電極アーク6のアーク長が一定値となるように制御する両面アーク溶接方法である。
【0028】
請求項4記載の発明は、ワイヤ2を備えた消耗電極溶接トーチ5とタングステン電極7を備えた非消耗電極溶接トーチ8と前記トーチ5,8間に設けられる定電流式直流電源20を備え、消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8を母材18を挟んで設置し、消耗電極溶接トーチ5のワイヤ2と定電流式直流電源20のプラス極を接続し、非消耗電極溶接トーチ8のタングステン電極7と定電流式直流電源20のマイナス極を接続し、母材18の両側からそれぞれアーク1,6を発生させて溶接を行う両面アーク溶接方法において、母材18と定電流式直流電源20のマイナス極間の電圧を測定する非消耗電極アーク電圧測定回路11と、母材18と定電流式直流電源20のプラス極間の電圧を測定する消耗電極アーク電圧測定回路22と、前記トーチ5,8への給電量を測定する電流センサ16と、該電流センサ16の検出値に基づき溶接電流を測定する溶接電流測定回路17を設け、さらに消耗電極アーク電圧測定回路22での消耗電極アーク電圧の測定値に基づき定電流式直流電源20の電流値を指示する電流値指示回路21を設け、消耗電極アーク電圧測定回路22で測定した消耗電極アーク電圧値(Vgma)を電流値指示回路21で予め設定してある消耗電極アーク1の基準電圧値(Vgma-const)と比較して定電流式直流電源20からの出力電流値を調整することで消耗電極アーク1のアーク長が一定値となるように制御し、非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)と溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値の積である電力値と予め設定してある非消耗電極の電力値との比較により、非消耗電極側の溶接時の電力値が前記設定電力値になるように、非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整して非消耗電極アーク6のアーク長を制御する両面アーク溶接方法である。
【0029】
請求項5記載の発明は、ワイヤ2を備えた消耗電極溶接トーチ5とタングステン電極7を備えた非消耗電極溶接トーチ8と前記トーチ5,8間に設けられる定電圧式直流電源14を備え、消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8を母材18を挟んで設置し、消耗電極溶接トーチ5のワイヤ2と定電圧式直流電源14のプラス極を接続し、非消耗電極溶接トーチ8のタングステン電極7と定電圧式直流電源14のマイナス極を接続し、母材18の両側からそれぞれアーク1,6を発生させて溶接を行う両面アーク溶接装置において、前記定電圧式直流電源14は、溶接のスタート時の定電圧式直流電源14の出力電圧を消耗電極側のアーク電圧値(Vgma-const)と非消耗電極側のアーク電圧値(Vgta-const)の和(Vall-const)を出力電圧値 (Vout)の設定値として出力し、溶接中は非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)と予め設定した消耗電極側のアーク電圧値(Vgma-const)の和(Vall)を出力電圧値(Vout)にすることで消耗電極アーク1のアーク長がが一定値となるように制御する構成を備え、さらに母材18と定電圧式直流電源14のマイナス極間の電圧を測定する非消耗電極アーク電圧測定回路11と、前記トーチ5,8への給電量を測定する電流センサ16と、該電流センサ16の検出値に基づき溶接電流を測定する溶接電流測定回路17と、非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定したの非消耗電極アーク電圧値(Vgta)に基づき定電圧式直流電源14の電圧値を指示する電圧値指示回路15と、溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値により予め設定した非消耗電極側のアーク電圧値(Vgta-const)を補正し、この補正アーク電圧値と非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)との比較により、非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整して非消耗電極アーク6のアーク長が一定値となるように制御する非消耗電極アーク長調整回路10と、該非消耗電極アーク長調整回路10により作動されるスライダー9とを設けた両面アーク溶接装置である。
【0030】
請求項6記載の発明は、ワイヤ2を備えた消耗電極溶接トーチ5とタングステン電極7を備えた非消耗電極溶接トーチ8と前記トーチ5,8間に設けられる定電圧式直流電源14を備え、消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8を母材18を挟んで設置し、消耗電極溶接トーチ5のワイヤ2と定電圧式直流電源14のプラス極を接続し、非消耗電極溶接トーチ8のタングステン電極7と定電圧式直流電源14のマイナス極を接続し、母材18の両側からそれぞれアーク1,6を発生させて溶接を行う両面アーク溶接装置において、前記定電圧式直流電源14は、溶接のスタート時の定電圧式直流電源14の出力電圧を消耗電極側のアーク電圧値(Vgma-const)と非消耗電極側のアーク電圧値(Vgta-const)の和(Vall-const)を出力電圧値 (Vout)の設定値として出力し、溶接中は非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)と予め設定した消耗電極側のアーク電圧値(Vgma-const)の和(Vall)を出力電圧値(Vout)にすることで消耗電極アーク1のアーク長が一定値となるように制御する構成を備え、さらに母材18と定電圧式直流電源14のマイナス極間の電圧を測定する非消耗電極アーク電圧測定回路11と、前記トーチ5,8への給電量を測定する電流センサ16と、該電流センサ16の検出値に基づき溶接電流を測定する溶接電流測定回路17と、非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)と溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値の積である電力値と予め設定してある非消耗電極の電力値との比較により、非消耗電極側の溶接時の電力値が前記設定電力値になるように、非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整して非消耗電極アーク6のアーク長を制御する非消耗電極アーク長調整回路10と、非消耗電極アーク長調整回路10により作動されるスライダー9とを設けた両面アーク溶接装置である。
【0031】
請求項7記載の発明は、ワイヤ2を備えた消耗電極溶接トーチ5とタングステン電極7を備えた非消耗電極溶接トーチ8と前記トーチ5,8間に設けられる定電流式直流電源20を備え、消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8を母材18を挟んで設置し、消耗電極溶接トーチ5のワイヤ2と定電流式直流電源20のプラス極を接続し、非消耗電極溶接トーチ8のタングステン電極7と定電流式直流電源20のマイナス極を接続し、母材18の両側からそれぞれアーク1,6を発生させて溶接を行う両面アーク溶接装置において、母材18と定電流式直流電源20のマイナス極間の電圧を測定する非消耗電極アーク電圧測定回路11と、前記トーチ5,8への給電量を測定する電流センサ16と、該電流センサ16の検出値に基づき溶接電流を測定する溶接電流測定回路17と、母材18と定電流式直流電源20のプラス極間の電圧を測定する消耗電極アーク電圧測定回路22と、該消耗電極アーク電圧測定回路22での消耗電極アーク電圧の測定値(Vgma)に基づき、予め設定してある基準電圧と比較して定電流式直流電源20からの消耗電極アーク出力電流値を指示する電流値指示回路21と、溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値により、予め設定した非消耗電極側のアーク電圧値(Vgta-const)を補正し、得られた補正アーク電圧値と非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)との比較により、非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整して非消耗電極アーク6のアーク長が一定値となるように制御する非消耗電極アーク長調整回路10と、非消耗電極アーク長調整回路10により作動されるスライダー9とを設けた両面アーク溶接装置である。
【0032】
請求項8記載の発明は、ワイヤ2を備えた消耗電極溶接トーチ5とタングステン電極7を備えた非消耗電極溶接トーチ8と前記トーチ5,8間に設けられる定電流式直流電源20を備え、消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8を母材18を挟んで設置し、消耗電極溶接トーチ5のワイヤ2と定電流式直流電源20のプラス極を接続し、非消耗電極溶接トーチ8のタングステン電極7と定電流式直流電源20のマイナス極を接続し、母材18の両側からそれぞれアーク1,6を発生させて溶接を行う両面アーク溶接装置において、母材18と定電流式直流電源20のマイナス極間の電圧を測定する非消耗電極アーク電圧測定回路11と、前記トーチ5,8への給電量を測定する電流センサ16と、該電流センサ16の検出値に基づき溶接電流を測定する溶接電流測定回路17と、母材18と定電流式直流電源20のプラス極間の電圧を測定する消耗電極アーク電圧測定回路22と、該消耗電極アーク電圧測定回路22で測定した消耗電極アーク電圧値(Vgma)に基づき、予め設定してある基準電圧と比較して定電流式直流電源20からの消耗電極アーク出力電流値を指示する電流値指示回路21と、非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)と溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値との積である電力値と予め設定してある非消耗電極の電力値との比較により、非消耗電極側の溶接時の電力値が前記設定電力値になるように、非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整して非消耗電極アーク6のアーク長を制御する非消耗電極アーク長調整回路10と、非消耗電極アーク長調整回路10により作動されるスライダー9とを設けた両面アーク溶接装置である。
【0033】
(作用)
請求項1及び請求項5記載の消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8と定電圧式直流電源14からなる両面アーク溶接方法と装置によれば、定電圧式直流電源14の出力電圧を溶接開始時には予め設定した消耗電極側のアーク電圧値(Vgma-const)と非消耗電極側のアーク電圧値(Vgta-const)の和を定電圧式直流電源14の出力で出力電圧値(Vout)の基準アーク電圧の設定値(Vall-const)として出力し、溶接中は母材18と定電圧式直流電源14のマイナス極間の電圧を測定する非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)と前記予め設定した消耗電極側のアーク電圧値(Vgma-const)の和(Vall)を出力電圧値(Vout)とすることにより消耗電極アーク1の電圧は一定になり定電圧特性の溶接電源のもつ自己制御作用により消耗電極アーク1のアーク長は一定になる。また、溶接中に溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値により、予め設定した非消耗電極側のアーク電圧値(Vgta-const)を図3に示すアーク特性に従った補正を行い、この補正した非消耗電極アーク電圧値と非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)との比較により非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整することにより非消耗電極側のアーク6の長さが一定値となるように制御することができる。
【0034】
請求項2及び請求項6記載の消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8と定電圧式直流電源14からなる両面アーク溶接方法と装置によれば、溶接のスタート時は予め設定した消耗電極側のアーク電圧値(Vgma-const)と非消耗電極側のアーク電圧値(Vgta-const)の和(Vall-const)を定電圧式直流電源14の出力電圧値(Vout)の基準アーク電圧の設定値として出力し、溶接中は非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)と前記予め設定した一定値である消耗電極側のアーク電圧値(Vgma-const)の和(Vall)の値を出力電圧値(Vout)とすることにより消耗電極アーク1のアーク長が一定値となるように制御し、非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)と溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値の積である電力値と予め設定してある非消耗電極側の溶接時の電力値との比較により、非消耗電極側の溶接時の電力値が前記設定電力値になるように、非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整して非消耗電極アーク6のアーク長を制御する。こうして、電流値が変動しても電圧値を制御するので非消耗電極の電力量(入熱量)を一定にすることができる。
【0035】
また、請求項3及び請求項7記載の消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8と定電流式直流電源20からなる両面アーク溶接方法と装置によれば、消耗電極アーク電圧測定回路22で測定した消耗電極アーク電圧値(Vgma)を電流値指示回路21で予め設定してある消耗電極アーク1の基準電圧と比較して定電流式直流電源20からの消耗電極アーク出力電流値を調整することで消耗電極アーク1のアーク長が一定値となるように制御し、溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値により、予め設定した非消耗電極側のアーク電圧値(Vgta-const)を図3に示すアーク特性に従った補正を行い、この補正した非消耗電極アーク電圧値と非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)との比較により非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整することにより非消耗電極7のアーク長が一定値となるように制御することができる。
【0036】
請求項4及び請求項8記載の消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8と定電流圧式直流電源20からなる両面アーク溶接方法と装置によれば、消耗電極アーク電圧測定回路22で測定した消耗電極アーク電圧値(Vgma)を電流値指示回路21で予め設定してある消耗電極アーク1の基準電圧と比較して定電流式直流電源20からの消耗電極アーク出力電流値を調整することで消耗電極アーク1のアーク長が一定値となるように制御し、また、非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)と溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値の積である電力値と予め設定してある非消耗電極側の溶接時の電力値との比較により、非消耗電極側の溶接時の電力値が前記設定電力値になるように、非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整して非消耗電極アーク6のアーク長を制御する。こうして、電流値が変動しても電圧値を制御するので非消耗電極の電力量(入熱量)を一定にすることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の請求項1、2及び請求項5,6記載の定電圧式直流電源14及び請求項3、4及び請求項7、8記載の定電流式直流電源20からなる両面アーク溶接方法と装置によれば、消耗電極式溶接と非消耗電極式溶接を用いた両面アーク溶接において、両面のアーク長、あるいは非消耗電極式溶接の電力量(入熱量)を安定して制御することができるので、消耗電極式溶接と非消耗電極式溶接を用いた両面アーク溶接を安定して行うことができる。これによりアース線を設置しない両面溶接を安定して行うことが可能になり、また両面から同時に溶接することにより溶接後の変形が少ない溶接を行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施例を挙げ、図面を用いてさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0039】
図1は本発明の両面アーク溶接法におけるアーク長制御方法の第一の実施例を示す概要図である。
被溶接材である母材18を挟んで消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8を対向させる。消耗電極溶接トーチ5には、消耗電極になるワイヤ2が送給モータ3に取り付けられた送給ローラ4により送給される。一方、非消耗電極溶接トーチ8には非消耗のタングステン電極7が取り付けられている。また、定電圧式直流電源パワー回路14の正極と消耗電極溶接トーチ5のワイヤ2を消耗電極給電ケーブル13で接続し、前記電源パワー回路14の負極と非消耗電極溶接トーチ8のタングステン電極7を非消耗電極給電ケーブル12で接続する。
【0040】
定電圧式直流電源パワー回路14には電圧値指示回路15が接続されていて、定電圧式直流電源パワー回路14からの出力電圧を制御している。定電圧式直流電源パワー回路14によりワイヤ2とタングステン電極7間に電圧が印加されて、ワイヤ2の先端からの消耗電極アーク1とタングステン電極7の先端からの非消耗電極アーク6が母材18に向かってそれぞれ発生する。図1では母材18が左方向に移動している状態を示し、溶接ビード19が形成される。
【0041】
なお、消耗電極アーク1は消耗電極溶接トーチ5から、また、非消耗電極アーク6は非消耗電極溶接トーチ8から母材18側にそれぞれ吹きだすアルゴンガス、二酸化炭素又はアルゴンガスと二酸化炭素の混合ガスなどのシールドガスにより空気からは遮断されている。
【0042】
母材18と非消耗電極給電ケーブル12間には非消耗電極アーク電圧測定回路11を設け、非消耗電極(タングステン電極7)のアーク電圧を測定する。また、溶接電流が流れる回路に電流センサ16と電流測定回路17を設けて電流を測定する。そして、非消耗電極溶接トーチ8はスライダー9に取り付けられていて、非消耗電極溶接トーチ8を上下に移動させ、母材18とタングステン電極7の先端の距離に相当するアーク長を変更できるようになっている。
【0043】
なお、スライダー9は非消耗電極アーク長調整回路10の制御信号により動作するようになっている。また、電圧値指示回路15と非消耗電極アーク長調整回路10は、非消耗電極アーク電圧測定回路11により測定した非消耗電極アーク電圧値を取り込めるようになっている。そして、非消耗電極アーク長調整回路10は、電流測定回路17により測定した電流値を取り込めるようになっている。
【0044】
電圧値指示回路15には、予め基準とする消耗電極アーク1のアーク電圧値Vgma-constと非消耗電極アーク6のアーク電圧値Vgta-constを入力しておく。電圧値指示回路15から消耗電極アーク1のアーク電圧値Vgma-constと非消耗電極アーク6のアーク電圧値Vgta-constの和が基準アーク電圧値Vall-constとして定電圧式直流電源パワー回路14に指示され、定電圧式直流電源パワー回路14はワイヤ2とタングステン電極7間に出力電圧を印加して消耗電極アーク1と非消耗電極アーク6が形成されて溶接がスタートする。
【0045】
消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8の位置が一定で溶接が進行し、母材18と消耗電極溶接トーチ5の距離、及び母材18と非消耗電極溶接トーチ8の距離が変動すると、まずタングステン電極7の先端と母材18間の距離にあたる非消耗電極アーク6のアーク長が変動する。
【0046】
前記(2)式のように、定電圧式直流電源パワー回路14からの出力電圧値Voutは、給電ケーブル内の電圧降下や電極給電部の電圧降下が無視できるとすると、消耗電極溶接のアーク電圧値Vgmaと非消耗電極溶接のアーク電圧値Vgtaの和になる。
【0047】
溶接のスタート時は、出力電圧値Voutが基準アーク電圧値V all-constになっているので、非消耗電極溶接のアーク電圧値Vgtaが変動すると、消耗電極溶接のアーク電圧値Vgmaも変動する。つまり非消耗電極アーク6のアーク長が短くなると、消耗電極アーク1のアーク長は長くなり、非消耗電極アーク6のアーク長が長くなると、消耗電極アーク1のアーク長は短くなる。
【0048】
そこで、溶接スタート後は、非消耗電極アーク6のアーク電圧値Vgtaを非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定し、電圧値指示回路15で非消耗電極アーク電圧値Vgtaと予め設定した基準消耗電極アーク電圧値Vgma-const の和を新基準アーク電圧値Vall-constとして定電圧式直流電源パワー回路14に指示値を出して、定電圧式直流電源パワー回路14より新基準アーク電圧値Vallを出力するようにする。
【0049】
この制御により非消耗電極アーク6のアーク電圧値Vgtaが変動しても、消耗電極溶接トーチ5のワイヤ2と母材18間の電圧は基準消耗電極アーク電圧値Vgma-constになり、定電圧式直流電源パワー回路14の定電圧特性のもつ自己制御作用により消耗電極アーク1のアーク長は一定になる。
【0050】
また、従来方法として非消耗電極アーク6のアーク長制御は、非消耗電極アーク電圧測定回路11で非消耗電極アーク電圧値Vgta を測定し、非消耗電極アーク長調整回路10で予め設定した基準アーク電圧値Vgta-constと測定アーク電圧値Vgtaと比較して測定アーク電圧値Vgtaが基準アーク電圧値Vgta-constになるように、非消耗電極トーチ8をスライダー9で上下に移動させることによりアーク長の一定制御が行われてきた。しかしこの制御方法は、定電流特性の溶接電源を使用して電流値が変動しない場合に適用できるが、本溶接法の両面アーク溶接法のように電流値が変動する場合には入熱量が一致にならず、溶接ビードが不均一になり、安定しなくなる。
【0051】
そこで、あくまでアーク長を一定にする場合には、電流センサ16と電流測定回路17で溶接電流を測定し、非消耗電極アーク長調整回路10で測定した溶接電流値により予め設定した非消耗電極の基準アーク電圧値Vgta-constを図3に示すアーク特性に従い補正し、この補正した非消耗電極のアーク電圧値Vgta-constと非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値Vgtaの比較により非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さをスライダー9で調整することにより非消耗電極7のアーク長を一定制御することができる。
【0052】
さらに、溶接時の入熱量は(3)式で示されるが、溶接速度が一定ならば入熱量は電流と電圧の積である電力値に比例する。非消耗電極溶接でアーク長の一定制御を行った場合、アーク電圧はほぼ一定になるので入熱量は電流に比例することになる。本溶接法の両面アーク溶接では電流値が変動しているので、非消耗電極溶接側の入熱量も変動していることになる。しかし被対称溶接物が薄い板厚である場合などは、溶接ビードを一定にするために入熱量を一定にしたほうがよい。
【0053】
そこで、非消耗電極アーク電圧測定回路11で非消耗電極アーク電圧値Vgtaを測定し、電流センサ16と溶接電流測定回路17で溶接電流値を測定し、非消耗電極アーク長調整回路10でアーク電圧値と電流値の積である電力値を求め、予め設定した電力値との比較により、前記両電力値が同じになるように、非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さをスライダー9により調整することにより入熱量を一定にすることができる。
【0054】
具体的には、アーク電圧値と電流値の積である電力値が設定電力値より大きければ、アーク長が短くなるように溶接トーチ8を移動させることによりアーク電圧が減少するのでアーク電圧値と電流値の積である電力値が設定電力値に近づくことになる。
【0055】
このように定電圧式直流電源14からなる両面アーク溶接により、両面のアーク長、あるいは非消耗電極式溶接の入熱量を安定して制御することができるので、消耗電極式溶接と非消耗電極式溶接を用いた両面アーク溶接を安定して行うことができる。これによりアース線を設置しない両面溶接を安定して行うことが可能になり、また両面から同時に溶接することにより溶接後の変形が少ない溶接を行うことができるようになる。
【実施例2】
【0056】
本発明の他の実施例を図2に示す。図2は、本発明の両面アーク溶接のアーク長制御方法の第二の実施例を示す概要図である。
被溶接材である母材18を挟んで消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8を対向させる。消耗電極溶接トーチ5には、消耗電極になるワイヤ2が送給モータ3に取り付けられた送給ローラ4により送給される。非消耗電極溶接トーチ8には非消耗のタングステン電極7が取り付けられている。
【0057】
定電流式直流電源パワー回路20の正極と消耗電極溶接トーチ5のワイヤ2を消耗電極給電ケーブル13で接続し、前記電源パワー回路20の負極と非消耗電極溶接トーチ8のタングステン電極7を非消耗電極給電ケーブル12で接続する。
【0058】
定電流式直流電源パワー回路20には電流値指示回路21が接続されていて、定電流式直流電源パワー回路20からの出力電流を制御している。母材18と消耗電極給電ケーブル13間には消耗電極アーク電圧測定回路22を設け、消耗電極のアーク電圧値Vgmaを測定する。電流値指示回路21は、消耗電極アーク電圧測定回路22により測定した消耗電極アーク電圧値Vgmaを取り込めるようになっている。母材18と非消耗電極給電ケーブル12間には非消耗電極アーク電圧測定回路11を設け、非消耗電極のアーク電圧値Vgtaを測定する。
【0059】
また、溶接電流が流れる回路に電流センサ16と電流測定回路17を設け、電流を測定する。そして、非消耗電極溶接トーチ8はスライダー9に取り付けられていて、非消耗電極溶接トーチ8を上下に移動させ、母材18とタングステン電極7先端の距離に相当するアーク長を変更できるようになっている。
【0060】
なお、スライダー9は非消耗電極アーク長調整回路10の制御信号により動作するようになっている。そして、非消耗電極アーク長調整回路10は、非消耗電極アーク電圧測定回路11により測定した非消耗電極アーク電圧値と電流測定回路17により測定した電流値を取り込めるようになっている。
【0061】
消耗電極溶接のアーク長制御は、消耗電極アーク電圧測定回路22で測定した消耗電極アーク電圧値Vgmaを電流値指示回路21で予め設定してある基準非消耗電極アーク電圧値V gma-constと比較し、両電圧差がゼロになるように定電流式直流電源パワー回路20からの出力電流値を調整することにより行う。具体的には測定した消耗電極アーク電圧値Vgmaが基準値より低ければ出力電流値を上げて消耗電極アーク長を長くし、逆に測定した消耗電極アーク電圧値Vgmaが基準値より高ければ出力電流値を下げて消耗電極アーク長を短くする。
【0062】
また、溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値により、非消耗電極側の基準アーク電圧値Vgta-constを補正し、この補正基準アーク電圧値と非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値Vgtaとの比較により、非消耗電極7のアーク8のアーク長が一定値になるように非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整する。
【0063】
また、非消耗電極7の電力値(入熱量)を一定値にするためには実施例1の場合と同様に非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値V gtaと溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値の積である電力値と予め設定してある電力値との比較により、前記両電力値が同じになるように、非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整して非消耗電極7のアーク長を制御することもできる。
【0064】
このように定電流式直流電源20からなる両面アーク溶接は、両面のアーク長、あるいは非消耗電極式溶接の入熱量を安定して制御することができるので、消耗電極式溶接と非消耗電極式溶接を用いた両面アーク溶接を安定して行うことができる。これによりアース線を設置しない両面溶接を安定して行うことが可能になり、また両面から同時に溶接することにより溶接後の変形が少ない溶接を行うことができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の定電圧式直流電源14及び定電流式直流電源20からなる両面アーク溶接方法と装置によれば、母材18の両面のアーク長、あるいは非消耗電極式溶接の入熱量を安定して制御することができるので、消耗電極式溶接と非消耗電極式溶接を用いた両面アーク溶接を安定して行うことができるため、溶接後の変形が少ない溶接を広範囲の技術分野で行うことができるようになる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の両面アーク溶接のアーク長制御方法の第一の実施形態を示す概要図である。
【図2】本発明の両面アーク溶接のアーク長制御方法の第二の実施形態を示す概要図である。
【図3】消耗電極式溶接で使用する定電圧特性電源のアーク長自己制御特性を示すグラフである。
【図4】消耗電極式溶接のパルスアーク溶接におけるアーク長制御方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1 消耗電極アーク 2 ワイヤ
3 送給モータ 4 送給ローラ
5 消耗電極溶接トーチ 6 非消耗電極アーク
7 タングステン電極 8 非消耗電極溶接トーチ
9 スライダー 10 非消耗電極アーク長調整回路
11 非消耗電極アーク電圧測定回路 12 非消耗電極給電ケーブル
13 消耗電極給電ケーブル 14 定電圧式直流電源パワー回路
15 電圧値指示回路 16 電流センサ
17 電流測定回路 18 母材
19 溶接ビード 20 定電流式直流電源パワー回路
21 電流値指示回路 22 消耗電極アーク電圧測定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤ2を備えた消耗電極溶接トーチ5とタングステン電極7を備えた非消耗電極溶接トーチ8と前記トーチ5,8間に設けられる定電圧式直流電源14を備え、消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8を母材18を挟んで設置し、消耗電極溶接トーチ5のワイヤ2と定電圧式直流電源14のプラス極を接続し、非消耗電極溶接トーチ8のタングステン電極7と定電圧式直流電源14のマイナス極を接続し、母材18の両側からそれぞれアーク1,6を発生させて溶接を行う両面アーク溶接方法において、
母材18と定電圧式直流電源14のマイナス極間の電圧を測定する非消耗電極アーク電圧測定回路11と、前記トーチ5,8への給電量を測定する電流センサ16と、該電流センサ16の検出値に基づき溶接電流を測定する溶接電流測定回路17を設け、
さらに非消耗電極アーク電圧測定回路11での非消耗電極アーク電圧の測定値に基づき定電圧式直流電源14の電圧値を指示する電圧値指示回路15を設け、
溶接のスタート時は予め設定した消耗電極側のアーク電圧値(Vgma-const)と非消耗電極側のアーク電圧値(Vgta-const)の和(Vall-const)を定電圧式直流電源14の出力電圧値(Vout)の基準アーク電圧の設定値として出力し、溶接中は非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)と前記予め設定した一定値である消耗電極側のアーク電圧値(Vgma-const)の和(Vall)の値を出力電圧値(Vout)とすることにより消耗電極アーク1のアーク長が一定値となるように制御し、
溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値により予め設定した非消耗電極側の基準アーク電圧値(Vgta-const)を補正し、この補正アーク電圧値と非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)との比較により、非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整して非消耗電極アーク6のアーク長が一定値となるように制御することを特徴とする両面アーク溶接方法。
【請求項2】
ワイヤ2を備えた消耗電極溶接トーチ5とタングステン電極7を備えた非消耗電極溶接トーチ8と前記トーチ5,8間に設けられる定電圧式直流電源14を備え、消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8を母材18を挟んで設置し、消耗電極溶接トーチ5のワイヤ2と定電圧式直流電源14のプラス極を接続し、非消耗電極溶接トーチ8のタングステン電極7と定電圧式直流電源14のマイナス極を接続し、母材18の両側からそれぞれアーク1,6を発生させて溶接を行う両面アーク溶接方法において、
母材18と定電圧式直流電源14のマイナス極間の電圧を測定する非消耗電極アーク電圧測定回路11と、前記トーチ5,8への給電量を測定する電流センサ16と、該電流センサ16の検出値に基づき溶接電流を測定する溶接電流測定回路17を設け、
さらに非消耗電極アーク電圧測定回路11での非消耗電極アーク電圧の測定値に基づき定電圧式直流電源14の電圧値を指示する電圧値指示回路15を設け、
溶接のスタート時は予め設定した消耗電極側のアーク電圧値(Vgma-const)と非消耗電極側のアーク電圧値(Vgta-const)の和(Vall-const)を定電圧式直流電源14の出力電圧値(Vout)の基準アーク電圧の設定値として出力し、溶接中は非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)と前記予め設定した一定値である消耗電極側のアーク電圧値(Vgma-const)の和(Vall)の値を出力電圧値(Vout)とすることにより消耗電極アーク1のアーク長が一定値となるように制御し、
非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)と溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値の積である電力値と予め設定してある非消耗電極側の溶接時の電力値との比較により、非消耗電極側の溶接時の電力値が前記設定電力値になるように、非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整して非消耗電極アーク6のアーク長を制御することを特徴とする両面アーク溶接方法。
【請求項3】
ワイヤ2を備えた消耗電極溶接トーチ5とタングステン電極7を備えた非消耗電極溶接トーチ8と前記トーチ5,8間に設けられる定電流式直流電源20を備え、消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8を母材18を挟んで設置し、消耗電極溶接トーチ5のワイヤ2と定電流式直流電源20のプラス極を接続し、非消耗電極溶接トーチ8のタングステン電極7と定電流式直流電源20のマイナス極を接続し、母材18の両側からそれぞれアーク1,6を発生させて溶接を行う両面アーク溶接方法において、
母材18と定電流式直流電源20のマイナス極間の電圧を測定する非消耗電極アーク電圧測定回路11と、母材18と定電流式直流電源20のプラス極間の電圧を測定する消耗電極アーク電圧測定回路22と、前記トーチ5,8への給電量を測定する電流センサ16と、該電流センサ16の指示電流値に基づき溶接電流を測定する溶接電流測定回路17を設け、
さらに消耗電極アーク電圧測定回路22で測定した消耗電極アーク電圧値(Vgma)に基づき定電流式直流電源20の電流値を指示する電流値指示回路21を設け、
消耗電極アーク電圧測定回路22で測定した消耗電極アーク電圧値(Vgma)を電流値指示回路21で予め設定してある消耗電極アーク1の基準電圧値(Vgma-const)と比較して定電流式直流電源20からの出力電流値を調整することで消耗電極アーク1のアーク長が一定値となるように制御し、
溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値により予め設定した非消耗電極側の基準アーク電圧値(Vgta-const)を補正し、この補正アーク電圧値と非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)との比較により、非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整して非消耗電極アーク6のアーク長が一定値となるように制御することを特徴とする両面アーク溶接方法。
【請求項4】
ワイヤ2を備えた消耗電極溶接トーチ5とタングステン電極7を備えた非消耗電極溶接トーチ8と前記トーチ5,8間に設けられる定電流式直流電源20を備え、消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8を母材18を挟んで設置し、消耗電極溶接トーチ5のワイヤ2と定電流式直流電源20のプラス極を接続し、非消耗電極溶接トーチ8のタングステン電極7と定電流式直流電源20のマイナス極を接続し、母材18の両側からそれぞれアーク1,6を発生させて溶接を行う両面アーク溶接方法において、
母材18と定電流式直流電源20のマイナス極間の電圧を測定する非消耗電極アーク電圧測定回路11と、母材18と定電流式直流電源20のプラス極間の電圧を測定する消耗電極アーク電圧測定回路22と、前記トーチ5,8への給電量を測定する電流センサ16と、該電流センサ16の検出値に基づき溶接電流を測定する溶接電流測定回路17を設け、
さらに消耗電極アーク電圧測定回路22での消耗電極アーク電圧の測定値に基づき定電流式直流電源20の電流値を指示する電流値指示回路21を設け、
消耗電極アーク電圧測定回路22で測定した消耗電極アーク電圧値(Vgma)を電流値指示回路21で予め設定してある消耗電極アーク1の基準電圧値(Vgma-const)と比較して定電流式直流電源20からの出力電流値を調整することで消耗電極アーク1のアーク長が一定値となるように制御し、
非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)と溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値の積である電力値と予め設定してある非消耗電極の電力値との比較により、非消耗電極側の溶接時の電力値が前記設定電力値になるように、非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整して非消耗電極アーク6のアーク長を制御することを特徴とする両面アーク溶接方法。
【請求項5】
ワイヤ2を備えた消耗電極溶接トーチ5とタングステン電極7を備えた非消耗電極溶接トーチ8と前記トーチ5,8間に設けられる定電圧式直流電源14を備え、消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8を母材18を挟んで設置し、消耗電極溶接トーチ5のワイヤ2と定電圧式直流電源14のプラス極を接続し、非消耗電極溶接トーチ8のタングステン電極7と定電圧式直流電源14のマイナス極を接続し、母材18の両側からそれぞれアーク1,6を発生させて溶接を行う両面アーク溶接装置において、
前記定電圧式直流電源14は、溶接のスタート時の定電圧式直流電源14の出力電圧値を消耗電極側のアーク電圧値(Vgma-const)と非消耗電極側のアーク電圧値(Vgta-const)の和(Vall-const)を出力電圧値 (Vout)の設定値として出力し、溶接中は非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)と予め設定した消耗電極側のアーク電圧値(Vgma-const)の和(Vall)を出力電圧値(Vout)にすることで消耗電極アーク1のアーク長が一定値となるように制御する構成を備え、
さらに母材18と定電圧式直流電源14のマイナス極間の電圧を測定する非消耗電極アーク電圧測定回路11と、
前記トーチ5,8への給電量を測定する電流センサ16と、
該電流センサ16の検出値に基づき溶接電流を測定する溶接電流測定回路17と、
非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)に基づき定電圧式直流電源14の電圧値を指示する電圧値指示回路15と、
溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値により予め設定した非消耗電極側のアーク電圧値(Vgta-const)を補正し、この補正アーク電圧値と非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)との比較により、非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整して非消耗電極アーク6のアーク長が一定値となるように制御する非消耗電極アーク長調整回路10と、
該非消耗電極アーク長調整回路10により作動されるスライダー9と、
を設けたことを特徴とする両面アーク溶接装置。
【請求項6】
ワイヤ2を備えた消耗電極溶接トーチ5とタングステン電極7を備えた非消耗電極溶接トーチ8と前記トーチ5,8間に設けられる定電圧式直流電源14を備え、消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8を母材18を挟んで設置し、消耗電極溶接トーチ5のワイヤ2と定電圧式直流電源14のプラス極を接続し、非消耗電極溶接トーチ8のタングステン電極7と定電圧式直流電源14のマイナス極を接続し、母材18の両側からそれぞれアーク1,6を発生させて溶接を行う両面アーク溶接装置において、
前記定電圧式直流電源14は、溶接のスタート時の定電圧式直流電源14の出力電圧を消耗電極側のアーク電圧値(Vgma-const)と非消耗電極側のアーク電圧値(Vgta-const)の和(Vall-const)を出力電圧値 (Vout)の設定値として出力し、溶接中は非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)と予め設定した消耗電極側のアーク電圧値(Vgma-const)の和(Vall)を出力電圧値(Vout)にすることで消耗電極アーク1のアーク長が一定値となるように制御する構成を備え、
さらに母材18と定電圧式直流電源14のマイナス極間の電圧を測定する非消耗電極アーク電圧測定回路11と、
前記トーチ5,8への給電量を測定する電流センサ16と、
該電流センサ16の検出値に基づき溶接電流を測定する溶接電流測定回路17と、
非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)と溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値の積である電力値と予め設定してある非消耗電極の電力値との比較により、非消耗電極側の溶接時の電力値が前記設定電力値になるように、非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整して非消耗電極アーク6のアーク長を制御する非消耗電極アーク長調整回路10と、
非消耗電極アーク長調整回路10により作動されるスライダー9と、
を設けたことを特徴とする両面アーク溶接装置。
【請求項7】
ワイヤ2を備えた消耗電極溶接トーチ5とタングステン電極7を備えた非消耗電極溶接トーチ8と前記トーチ5,8間に設けられる定電流式直流電源20を備え、消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8を母材18を挟んで設置し、消耗電極溶接トーチ5のワイヤ2と定電流式直流電源20のプラス極を接続し、非消耗電極溶接トーチ8のタングステン電極7と定電流式直流電源20のマイナス極を接続し、母材18の両側からそれぞれアーク1,6を発生させて溶接を行う両面アーク溶接装置において、
母材18と定電流式直流電源20のマイナス極間の電圧を測定する非消耗電極アーク電圧測定回路11と、
前記トーチ5,8への給電量を測定する電流センサ16と、
該電流センサ16の検出値に基づき溶接電流を測定する溶接電流測定回路17と、
母材18と定電流式直流電源20のプラス極間の電圧を測定する消耗電極アーク電圧測定回路22と、
該消耗電極アーク電圧測定回路22での消耗電極アーク電圧の測定値(Vgma)に基づき、予め設定してある基準電圧と比較して定電流式直流電源20からの消耗電極アーク出力電流値を指示する電流値指示回路21と、
溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値により、予め設定した非消耗電極側のアーク電圧値(Vgta-const)を補正し、得られた補正アーク電圧値と非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)との比較により、非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整して非消耗電極アーク6のアーク長が一定値となるように制御する非消耗電極アーク長調整回路10と、
非消耗電極アーク長調整回路10により作動されるスライダー9と、
を設けたことを特徴とする両面アーク溶接装置。
【請求項8】
ワイヤ2を備えた消耗電極溶接トーチ5とタングステン電極7を備えた非消耗電極溶接トーチ8と前記トーチ5,8間に設けられる定電流式直流電源20を備え、消耗電極溶接トーチ5と非消耗電極溶接トーチ8を母材18を挟んで設置し、消耗電極溶接トーチ5のワイヤ2と定電流式直流電源20のプラス極を接続し、非消耗電極溶接トーチ8のタングステン電極7と定電流式直流電源20のマイナス極を接続し、母材18の両側からそれぞれアーク1,6を発生させて溶接を行う両面アーク溶接装置において、
母材18と定電流式直流電源20のマイナス極間の電圧を測定する非消耗電極アーク電圧測定回路11と、
前記トーチ5,8への給電量を測定する電流センサ16と、
該電流センサ16の検出値に基づき溶接電流を測定する溶接電流測定回路17と、
母材18と定電流式直流電源20のプラス極間の電圧を測定する消耗電極アーク電圧測定回路22と、
該消耗電極アーク電圧測定回路22で測定した消耗電極アーク電圧値(Vgma)に基づき、予め設定してある基準電圧と比較して定電流式直流電源20からの消耗電極アーク出力電流値を指示する電流値指示回路21と、
非消耗電極アーク電圧測定回路11で測定した非消耗電極アーク電圧値(Vgta)と溶接電流測定回路17で測定した溶接電流値との積である電力値と予め設定してある非消耗電極の電力値との比較により、非消耗電極側の溶接時の電力値が前記設定電力値になるように、非消耗電極溶接トーチ8のトーチ高さを調整して非消耗電極アーク6のアーク長を制御する非消耗電極アーク長調整回路10と、
非消耗電極アーク長調整回路10により作動されるスライダー9と、
を設けたことを特徴とする両面アーク溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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