説明

両面印刷シート製造方法及び両面印刷容器

【課題】
不透明な基材を有するシートであっても、絵柄が鮮やかで表裏が同調する両面印刷シートの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
上記課題を解決するため、本願発明にかかる両面印刷シートの製造方法は、絵柄の印刷されている表面フィルム1aと裏面フィルム1bとを、不透明である基材6を間に置いて重なり合う状態にし、両フィルム1a、1bの位置合せマーク5a、5bを検知し、両フィルム1a、1bの相対的な位置関係を算出し、両フィルム1a、1bが所定の位置関係になるように位置合せをし、両フィルム1a、1bと前記基材6とが一体化されるように貼着する。両フィルムの前記基材からはみ出る該透明領域3a、3bに前記位置合せマーク5a、5bが印刷されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面の絵柄が同調する両面印刷シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
丼型の即席麺容器やその蓋材等、不透明なシートの印刷方法に関しては、発泡ポリスチレンや紙等の不透明なシートの層(基材層)に直接印刷を施すのではなく、透明プラスチックフィルムに印刷を行った後、このフィルムを不透明なシートに積層する、いわゆるオフラインでの印刷が主流となっている。これは、絵柄がシートに印刷される場合、表面に細かな凹凸のある発泡ポリスチレンや紙製などのシートに直接印刷するよりも、表面が平らで均一なプラスチックフィルムに印刷する方が、絵柄が鮮やかで光沢に優れたものとすることができるためである。
【0003】
しかしながら、このような不透明なシートの表面と裏面の両面に絵柄を印刷する場合、前記のようにオフラインでの印刷を両面に適用すると、表面と裏面の絵柄を同調させることが困難で、そのため、オフラインで両面印刷を行う場合には、表面か裏面のどちらか一方の面を、同調させる必要のないパターン状の連続絵柄とせざるを得なかった。
【0004】
なお、プラスチックフィルムの表と裏の絵柄を同調させる両面印刷法としては、プラスチックフィルムに一部透明部分をつくり、表面には絵柄と共に透明部分に位置合せマークを施して、この位置合せマークを目安に裏面を印刷するという方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−99654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の方法は、アルミ蒸着フィルムを基材層とするシートの表面と裏面の両面に直接印刷するものであり、アルミ蒸着面上の印刷は透明フィルムに印刷するオフラインでの印刷に比べて鮮やかなものではなく、また印刷面の保護のために、印刷層の上面にさらに保護層を積層する等の工程が必要であった。すなわち、このような方法では、表裏とも印刷が鮮やかなオフラインでの印刷で、しかも表裏とも同調させた絵柄を有する不透明なシートを得ることは不可能である。
【0006】
そこで本発明では、不透明な基材を有するシートであっても、絵柄が鮮やかで表裏が同調する両面印刷シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、本願発明にかかる両面印刷シート製造方法によって、解決することができる。つまり、本願発明に係る両面印刷シート製造方法は、帯状の表面フィルムと、帯状の裏面フィルムと、帯状の基材とを同方向に送りつつ貼着して両面印刷シートを製造する両面印刷シート製造方法であって、前記表面フィルムと前記裏面フィルムのうちいずれか一方を前記基材に予め貼着して、又はいずれも貼着しない状態で、前記基材が前記表面フィルムと前記裏面フィルムの間に挟まれるように、前記表面フィルムと前記裏面フィルムと前記基材とを重なり合った状態にしていく重ね合せ工程と、前記表面フィルムと前記裏面フィルムと前記基材とが一枚のシートに一体化されるように、前記基材に予め貼着されているフィルム以外のフィルムを、前記基材に貼着していく貼着工程と、
前記表面フィルムと前記裏面フィルムとが上記重なり合った状態又は前記基材に両フィルムとも貼着された状態で、前記表面フィルムと前記裏面フィルムに印刷された位置合せマークを検知する検知工程と、該検知の結果に基づき、前記表面フィルムと前記裏面フィルムとの相対的な位置関係を算出する位置関係算出工程と、算出された該相対的な位置関係に基づき、前記表面フィルムと前記裏面フィルムとの相対的な位置関係が所定の位置関係になるように、前記貼着工程以前の段階の両フィルムの位置合せを行う位置合せ工程とを備え、前記表面フィルム及び前記裏面フィルムは、前記重なり合った状態にすると前記基材からはみ出る個所に透明領域を有し、該透明領域には前記位置合せマークが送り方向に沿って繰り返し印刷されており、前記基材に対応する個所には絵柄が印刷されている。
【0008】
かかる構成によれば、絵柄が印刷されている2つのフィルムを同調して基材に貼着することができるので、基材が不透明であっても、その表裏両面の絵柄が同調する両面印刷シートを製造することができる。しかも、両面共に絵柄が基材ではなく、フィルムに印刷されているので、絵柄が鮮やかで、見た目にも優れている。
【0009】
なお、本願発明の上記印刷シート製造方法は、フィルムの積層作業中において生じてくる、フィルム同士のわずかな位置ずれを補正する場合等に特に有効なものである。
【0010】
また、上記両面印刷シート製造方法において、前記位置合せ工程において、n番目の前記表面フィルムに印刷された前記位置合せマークと前記裏面フィルムに印刷された前記位置合せマークとの相対的な位置関係の算出結果に基づき、n+1番目以降の前記表面フィルムに印刷された前記位置合せマークと前記裏面フィルムに印刷された前記位置合せマークとの相対的な位置関係が所定の位置関係になるように、前記表面フィルム及び前記裏面フィルムの送り速度のうち少なくとも一の送り速度を増減して前記位置合せを行うようにしてもよい。ここで「n」は、自然数を意味する。
【0011】
かかる構成によれば、送り速度を増減させるのみで、位置合せ用の特別な装置を用いる必要はなく、容易に位置合せを行うことができる。
【0012】
また、上記両面印刷シート製造方法において、前記重ね合せ工程の前の工程として、前記表面フィルムと前記裏面フィルムのうちいずれか一方を前記基材の一方の面に予め貼着する片面貼着工程を必須とするようにしてもよい。
【0013】
かかる構成によれば、表面フィルムと裏面フィルムのいずれか一方のフィルムを基材に貼着した状態で積層するので、位置合せが容易となり、さらに基材への両フィルムの貼着方法をそれぞれ異なる方法とすることもできる。
【0014】
また、上記両面印刷シート製造方法の前記検知工程において、前記表面フィルムまたは前記裏面フィルムの一方の側から、前記表面フィルムに印刷された前記位置合せマーク及び前記裏面フィルムに印刷された前記位置合せマークの両マークを光学的に検知するようにしてもよい。
【0015】
かかる構成によれば、1つのセンサーで両フィルムの位置合せマークを検出することができる。よって、複数のセンサーを用いる場合に必要なセンサー間の調整が不要であるため、検知誤差を小さくすることができる。
【0016】
また、上記両面印刷シート製造方法の前記検知工程において、前記表面フィルムに印刷された前記位置合せマーク及び前記裏面フィルムに印刷された前記位置合せマークが、位置合せマーク検知用センサーの検知エリアを所定の速度で通過し、前記位置関係算出工程において、前記センサーからの出力信号と前記所定速度とに基づいて、前記表面フィルムに印刷された前記位置合せマークと前記裏面フィルムに印刷された前記位置合せマークとの相対的な位置関係が算出されるようにしてもよい。
【0017】
かかる構成によれば、両フィルムを流しつつ、連続的に相対位置を検出することができるため、製造工程に要する時間を短縮することができる。
【0018】
また、前記表面フィルム及び前記裏面フィルムが透明なフィルムに絵柄が印刷されたフィルムであり、前記重ね合せ工程において、前記表面フィルムの印刷面及び前記裏面フィルムの印刷面が前記基材に接するように、前記基材が前記表面フィルムと前記裏面フィルムとの間に挟まれるように、前記表面フィルムと前記裏面フィルムと前記基材とを重なり合う状態にしてもよい。
【0019】
かかる構成によれば、両面印刷シートの表面には印刷用のインクが露出しないため、表面から印刷が剥がれることのない両面印刷シートを製造することができる。
【0020】
また、上記両面印刷シート製造方法により製造された両面印刷シートを成型し、該基材が樹脂材である両面(内外面)印刷容器としてもよい。
【0021】
かかる構成によれば、内側と外側の絵柄の同調する両面印刷容器を製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基材の両面に絵柄が印刷されたフィルムを同調させて貼着することができる。よって、基材が不透明である場合であっても、両面の絵柄が同調するシートの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本願発明にかかる両面印刷シート製造方法の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
本実施形態にかかる両面印刷シート製造方法により製造される両面印刷シートは、基材と、基材の表面に貼着される表面フィルムと、基材の裏面に貼着される裏面フィルムとを備える。まず、これらの基材及び両フィルムについて説明する。
【0025】
図1は、絵柄が印刷された表面フィルム1aの斜視図である。表面フィルム1aは透明で、薄い帯状の形状を有している。表面フィルム1aの材料として、例えば2軸延伸ポリスチレンフィルム(OPS)等の材料が使用される。表面フィルム1aには、絵柄4aが印刷されており、この領域2aは表面フィルム1aの表面積のほとんどを占める。以下、この絵柄4aが印刷されている領域2aを「印刷領域」と呼ぶ。一方、絵柄4aが印刷されていない領域3aは、表面フィルム1aの片方の縁に形成されており、透明のままである。以下、この領域3aを「透明領域」と呼ぶ。なお、絵柄4aは、表面フィルム1aの印刷面とは反対側の面から見た場合に、絵柄4aが鮮やかになるように印刷されている。絵柄4aは、即席麺容器の外側に表れる絵柄であって、一つの容器ごとにパターン状に表面フィルム1aに印刷されている。なお、後述するように、表面フィルム1aは容器を製造する際にプレス加工されて変形するため、変形によるゆがみを考慮して絵柄4aは印刷されている。
【0026】
表面フィルム1aの透明領域3aには、一定間隔で位置合せマーク5aが印刷されている。位置合せマーク5aは、位置合せマーク5aの位置が確認しやすいような形状等であればよく、例えば十字状の形状や台形のような形状であってもよいし、色が付されたものであってもよい。位置合せマーク5aは絵柄4aと所定の位置関係となるよう印刷されている。例えば、絵柄4aが3列印刷されるごとに位置合せマーク5aが一つ印刷されるといったような位置関係である。
【0027】
図2は、絵柄が印刷された裏面フィルム1bの斜視図である。裏面フィルム1bは、基本的な点では表面フィルム1aと同じである。裏面フィルム1bは透明で、薄い帯状の形状を有している。裏面フィルム1bの材料として、表面フィルム1a同様、例えば2軸延伸ポリスチレンフィルム(OPS)等材料が使用される。裏面フィルム1bには絵柄4bが印刷されており、この領域2bは裏面フィルム1bの表面積のほとんどを占める。この絵柄4bが印刷されている領域2bを「印刷領域」と呼ぶ。一方、絵柄4bが印刷されていない領域3bは、裏面フィルム1bの片方の縁に形成されており、透明のままである。以下、この領域3bを「透明領域」と呼ぶ。なお、絵柄4bは、裏面フィルム1bの印刷面とは反対側の面から見た場合に、絵柄4bが鮮やかになるように印刷されている。絵柄4bは、即席麺容器の内側に表れる絵柄であって、一つの容器ごとにパターン状に印刷されている。なお、後述するように、裏面フィルム1bは容器を製造する際にプレス加工されて変形するため、変形によるゆがみを考慮して絵柄4bは印刷されている。
【0028】
裏面フィルム1bの透明領域3bには、一定間隔で位置合せマーク5bが印刷されている。位置合せマーク5bは、位置合せマーク5bの位置が確認しやすいような形状等であればよく、例えば十字状の形状や台形のような形状であってもよいし、色が付されたものであってもよい。位置合せマーク5bは絵柄4bと所定の位置関係となるよう印刷されている。例えば、絵柄4bが3列印刷されるごとに位置合せマーク5bが一つ印刷されるといったような位置関係である。
【0029】
また、表面フィルム1aに印刷されている位置合せマーク5aの印刷間隔と、裏面フィルム1bに印刷されている位置合せマーク5bの印刷間隔とは同じである。本実施形態では、表面フィルム1aの位置合せマーク5aと裏面フィルム1bの位置合せマーク5bとを一致させると、表面シート1aの絵柄4aと裏面シート1bの絵柄4bとが同調する関係になっている。
【0030】
本実施形態で使用される基材6(図3参照)は、不透明であって、帯状の形状を有している。基材6の厚さは、表面フィルム1aや裏面フィルム1bの厚さに比べ十分厚い。基材6の幅は、表面フィルム1aの印刷領域2aや裏面フィルム1bの印刷領域2bの幅と略同一である。つまり、基材6の幅は表面フィルム1aや裏面フィルム1bの幅よりも透明領域3a、3bの幅の分だけ小さい。基材6の材料として、一般の食品用白色トレーに使用される発泡ポリスチレンペーパー(PSP)等樹脂材が使用される。
【0031】
次に上記の表面フィルム1a、裏面フィルム1b及び基材6によって構成される両面印刷シートの製造方法について説明する。本願発明に係る両面印刷シート製造方法は、重ね合せ工程と、貼着工程と、検知工程と、位置関係算出工程と、位置合せ工程とを備える。ここで、各工程は、基材6が表面フィルム1aや裏面フィルム1bと貼着されていない状態で行われる場合のみならず、基材6に表面フィルム1aと裏面フィルム1bのうちのいずれかのフィルムを先に貼着した状態で行われる場合も含む。以下では、基材6の一方の面に表面フィルム1aを貼着する片面貼着工程を行った後に、上記各工程が行われる実施形態について説明する。
【0032】
まず、基材6の一方の面に表面フィルム1aを貼着する片面貼着工程について説明する。上述のように、片面貼着工程は、重ね合せ工程、貼着工程、検知工程、位置関係算出工程及び位置合せ工程の一連の工程の前に行われる予備的な工程である。なお、基材6の一方の面に表面フィルム1aを貼着して得られるシートを「片面合成シート」と呼ぶこととする。図3は、片面合成シート7の斜視図である。図3に示すように、基材6と表面フィルム1aの印刷領域2aの部分とが重なるように、表面フィルム1aを基材6に貼着する。このように貼着すると、基材6の幅と表面フィルム1aの印刷領域2aの幅とは略同一であるため、必然的に透明領域3aが基材6からはみ出る。そうすると、透明領域3aに印刷されている位置合せマーク5aは基材6と重なることはなく、表面フィルム1a側からでも、基材6側からでも位置合せマーク5aを検知することができる。また、表面フィルム1aの印刷面が基材6側になるように表面フィルム1aと基材6とを貼着する。これにより、表面フィルム1aの表面にさらに保護用のフィルム等を積層しなくても、印刷された絵柄4aが剥がれることはない。なお、絵柄4aが表面フィルム1aの印刷面とは反対の面から見た場合に、絵柄4aが鮮やかになるよう、印刷されているため、絵柄4aは外側に鮮やかに表れる。表面フィルム1aと基材6とは、接着剤で貼着される。接着剤として、一般的に食品用容器の材料として用いられる材料を高温で液状にしたものが用いられる。以上、片面貼着工程について説明した。
【0033】
次に、本実施形態で用いられる両面印刷シート製造装置の作動に沿って、重ね合せ工程、貼着工程、検知工程、位置関係検出工程及び位置合せ工程の各工程について説明する。図4は、両面印刷シート製造装置11を概略的に示した斜視図である。各工程の説明の前に、両面印刷シート製造装置11について簡単に説明する。
【0034】
両面印刷シート製造装置11は、個々に回転速度を変化させることができるローラー12と、位置合せマーク5を検出するセンサー13と、接着剤8を溜めることができる接着剤容器14とを備えている。両面印刷シート製造装置11には基材6と表面フィルム1aとが貼着されて成る片面合成シート7がドラム状にセットされており、その反対側には裏面フィルム1bがドラム状にセットされている。さらに具体的には、片面合成シート7の一部である表面フィルム1aの透明領域3aと、裏面フィルム1bの透明領域3bとが対応するように、かつ、裏面フィルム1bの印刷面が片面合成シート7側に向くようにセットされている。片面合成シート7と裏面フィルム1bは、複数のローラー12によって鉛直下方に送られつつ、接着剤8により貼着される。図4では、矢印Yが鉛直方向である。以下、鉛直方向を「流れ方向」とし、これに直行する方向を「幅方向」とする。ローラー12は個々に回転数を制御することができ、裏面フィルム1bの透明領域3b側(図中手前側)と透明領域3bとは反対側(図中奥側)とのローラー12の回転速度を変化させることも可能である。片面合成シート7と裏面フィルム1bが送られる先には、位置合せマーク5a、5bを光学的に検知できるセンサー13が取り付けられている。また、初期状態では、片面合成シート7の表面フィルム1aに印刷された位置合せマーク5aと裏面フィルム1bに印刷された位置合せマーク5bとが一致している。以下、この一致している位置合せマーク5a、5bを「1番目」とし、その後の位置合せマーク5a、5bを順に2番目、3番目、・・・、n番目、・・・とする。そして、表面フィルム1a及び裏面フィルム1bを複数のエリアに分け、n番目の位置合せマーク5a、5bとn+1番目の位置合せマーク5a、5bとの間をn番エリアと呼ぶこととする。なお、nは自然数を表す。
【0035】
次に、重ね合せ工程について説明する。重ね合せ工程は、絵柄4aの印刷されている帯状の表面フィルム1aと絵柄4bの印刷されている帯状の裏面フィルム1bとを、不透明である基材6を間に置いて重なり合った状態にしていく工程である。本実施形態では、表面フィルム1aと基材6が重ね合わされている片面合成シート7を使用するため、片面合成シート7と裏面フィルム1bとを重なり合った状態にしていく工程である。片面合成シート7と裏面フィルム1bとは、複数のローラー12により鉛直下方に送られる。ローラー12は、鉛直下方に進むにつれ、片面合成シート7を送るローラー12と、裏面フィルム1bを送るローラー12とが近づくように配置されている。ローラー12は、このような構成をとるため、片面合成シート7と裏面フィルム1bは、ローラー12に送られることで徐々に近づいていき、片面合成シート7と裏面フィルム1bとが重ね合わされる。つまり、表面フィルム1aと裏面フィルム1bとが、基材6を間に置いて重なり合う状態となる。この重ね合わせは1番エリア、2番エリア、・・・、n番エリア、・・・と連続的に行われていく。
【0036】
次に、貼着工程について説明する。貼着工程は、上記重ね合せ後の工程で、表面フィルム1aと裏面フィルム1bと基材6とが一枚のシートに一体化されるように、表面フィルム1a及び裏面フィルム1bのうち少なくとも一のフィルムを基材6に貼着していく工程である。本実施形態では、表面フィルム1aと基材6とが貼着されている片面合成シート7を用いるため、片面合成シート7と裏面フィルム1bとを貼着していく工程である。図4に示すように、片面合成シート7と裏面フィルム1bが十分接近する位置に接着剤8を注入する。接着剤8は裏面フィルム1bの印刷領域2と基材6との間に注入され、透明領域3bの部分には注入されない。接着剤8として、一般的に食品用容器の材料として用いられるポリスチレン等の材料を高温で液状にしたものが使用される。接着剤容器14の底には図示しない孔穴が施されており、そこから接着剤8が流れ落ち、片面合成シート7と裏面フィルム1bとの間に注入される。片面合成シート7と裏面フィルム1bはローラー12でさらに鉛直下方に送られ、ローラー12により加圧される。そして、接着剤8が硬化すると、片面合成シート7と裏面フィルム1bは貼着する。これにより、基材6、表面フィルム1a及び裏面フィルム1bを一体化することができる。
【0037】
次に、検知工程について説明する。検知工程は、表面フィルム1aと裏面フィルム1bとが重なり合った状態(重ね合せ工程後)又は貼着された状態(貼着工程後)で、表面フィルム1aに印刷された位置合せマーク5aと、裏面フィルム1bに印刷された位置合せマーク5bとを検知する工程である。本実施形態では、表面フィルム1aと裏面フィルム1bとが貼着された状態で検知工程が行われる。図4に示すように、片面合成シート7と裏面フィルム1bとは、貼着された後、ローラー12によって鉛直下方へさらに送られる。表面フィルム1aの透明領域3a及び裏面フィルム1bの透明領域3bが通過する位置には位置合せマーク5a、5bを光学的に検知できるセンサー13が設置されている。表面フィルム1aの透明領域3aと裏面フィルム1bの透明領域3bとの間には、基材6が介在していないため、いずれの方向からでも両方の位置合せマーク5a、5bを検知することができる。本実施形態では、1つのセンサー13によって、表面フィルム1a側から、表面フィルム1aに印刷された位置合せマーク5a及び裏面フィルム1bに印刷された位置合せマーク5bを検知する。なお、表面フィルム1aの位置合せマーク5a及び裏面フィルム1bの位置合せマーク5bは識別することが可能である。例えば、両位置合せマーク5a、5bを色彩や形状を異なるものにすることで識別することができる。
【0038】
次に、位置関係算出工程について説明する。位置関係算出工程は、検知工程の検知結果に基づき、表面フィルム1aと裏面フィルム1bとの相対的な位置関係を算出する工程である。センサー13は、図示しない制御部へ検知信号を出力する。制御部はセンサー13からの信号に基づいて、表面フィルム1aの位置合せマーク5aと裏面フィルム1bの位置合せマーク5bとの相対的な位置関係を算出する。位置関係の算出は、流れ方向のみならず幅方向の位置関係も算出される。流れ方向の位置関係は、位置合せマーク5aの検知と位置合せマーク5bの検知との時間差に送り速度を乗ずることで算出することができる。また、表面フィルム1aの位置合せマーク5aと裏面フィルム1bの位置合せマーク5bとが近接している場合は、流れ方向及び幅方向の相対的な位置関係は画像処理によって算出することができる。例えば表面フィルム1aの位置合せマーク5aと裏面フィルム1bの位置合せマーク5bとが重なって作られる形状に基づいて検出することが可能である。本実施形態では、1番目、2番目、・・・、n番目、・・・の両位置合せマーク5a、5bが連続的に検知され、表面フィルム1aの位置合せマーク5aと裏面フィルム1bの位置合せマーク5bとの位置関係も連続的に算出される。この位置関係算出による結果から、表面フィルム1aと裏面フィルム1bとの相対的な位置関係を知ることができる。例えば、n番目とn+1番目に当たる表面フィルム1aの位置合せマーク5aと裏面フィルム1bの位置合せマーク5bが一致している場合、n番エリアの表面フィルム1aに印刷されている絵柄4aと裏面フィルム1bに印刷されている絵柄4bは同調している。
【0039】
次に、位置合せ工程について説明する。位置合せ工程は、位置関係算出工程により算出された相対的な位置関係に基づき、表面フィルム1aと裏面フィルム1bとの相対的な位置関係が所定の位置関係になるように、貼着工程以前の段階で両フィルムの位置合せをする工程である。本実施形態では、上記位置合せは、片面合成シート7と裏面フィルム1bとの送り速度を変化させることによって行う。例えば、片面合成シート7が所定の相対位置よりも裏面フィルム1bの流れ方向前方にずれている場合は、片面合成シート7の送り速度を一旦裏面フィルム1bの送り速度よりも遅くすることで、流れ方向の相対位置のずれを修正することができる。さらに、幅方向のずれに対しても位置合せをすることもできる。例えば、裏面シート1bの透明領域3b側のローラー12と、透明領域3bと反対側のローラー12とで回転速度を変えることにより幅方向の相対位置のずれを修正することができる。
【0040】
本実施形態では、位置合せは、n番目の両位置合せマーク5a、5bの位置関係に基づいて、n+1番目の両位置合せマーク5a、5bの位置関係が所定の位置関係になるように、n+1番目の両位置合せマーク5a、5bが重ね合わせられる前に行われる。そして、この位置合せが行われた後に、n+1番目の両位置合せマーク5a、5bに対応するエリアの両フィルム1a、1bが重ね合せられ(重ね合せ工程)、貼着され(貼着工程)、次の工程へと続いていく。このように上記の各工程は、連続的に繰り返し行われる。
【0041】
n番目の両位置合せマーク5a、5bが所定の位置関係となった状態で、n番エリアを貼着すれば、原則としてn番エリアで表面及び裏面の絵柄が同調した両面印刷シートが完成する。ただし、片面合成シート7または裏面フィルム1bが歪んだ場合には、n番エリアの絵柄が同調しない。この場合、n+1番目の両位置合せマーク5a、5bの位置関係が所定の位置関係でなくなるため、n+1番目の両位置合せマーク5a、5bを検知することにより、貼着工程が正しく行われなかったことが判断できる。
【0042】
図5は、完成した両面印刷シート15の流れ方向Yに垂直な面の断面図である。図5に示すように、断面は基材とフィルムの間に接着剤8が硬化した接着層9が形成され、両面印刷シート15は、表面フィルム1a、接着層9、基材6、接着層9及び裏面フィルム1bで構成される。そして、表面フィルム1aに印刷された絵柄4aのインクは、表面フィルム1aと接着層9に挟まれた状態となり、裏面フィルム1bに印刷された絵柄4bのインクは、裏面フィルム1bと接着層9とに挟まれた状態となる。なお、接着剤8は、硬化することで強度を出せるような例えばハイインパクトポリスチレン(HIPS)等の材料を使用すれば、両面印刷シート15全体の強度を上げることができる。
【0043】
以上、本願発明にかかる両面印刷シート製造方法の実施形態について説明した。
【0044】
次に、本願発明にかかる両面印刷容器の実施形態について説明する。両面印刷容器は上記製造方法によって製造された両面印刷シート15を用いて製造される。両面印刷容器の製造方法は、製造に用いるシートが上記の両面印刷シート15である点以外は、通常の即席麺に使用される容器の製造方法と同じである。具体的には、両面印刷シート15はプレス加工されることにより、容器の形状に成型される。図6は、プレス加工した後の両面印刷シート15の斜視図である。両面印刷シート15の絵柄4a、4bごとにプレス加工がなされ、数列分の絵柄4a、4bに対して同時に行われる。プレス加工用の型と両面印刷シート15との位置合せは、図示しない両面印刷シートの表面にあるプレス加工用のマークに基づいて行われる。その後、成型された各器は両面印刷シート15から切り取られることにより両面印刷容器が完成する。なお、本実施形態では、作業効率の観点から、両フィルム1a、1bの透明領域3a、3bを切り落としてからプレス加工が行われる。
【0045】
両面印刷シート15の表面の絵柄4aと裏面の絵柄4bは、同調しているため、外側の絵柄4aと内側の絵柄4bが同調した両面印刷容器が完成する。なお、両面印刷シート15に印刷されている絵柄4a、4bは、プレス加工によるゆがみを考慮して印刷されているため、両面印刷容器完成後は、ゆがみのない絵柄4a、4bとなっている。また、両面印刷シート15の絵柄4は両フィルム1a、1bの基材6側の面に印刷されているため、容器の表面に絵柄4a、4bのインクはフィルム外側に露出しておらず、インクが剥がれ落ちることはない。よって、両面印刷容器を食品用に用いてもインクが食べ物の中に混入するおそれはないため安全である。
【0046】
以上、本願発明にかかる両面印刷容器の実施形態について説明した。
【0047】
本実施形態では、両面印刷シートをプレス加工して容器とする場合を説明したが、これに限らず、例えば紙の表面に鮮明な印刷を施したい場合等にも有効である。すなわち、本実施形態では、基材を発泡ポリスチレンペーパーとしたが、これを紙あるいはアルミ積層紙とし、この基材の表裏に本実施形態同様の印刷を施した透明フィルムを貼着することで、例えば即席麺容器の蓋材等とすることもできる。また、この場合、不透明な紙等の基材にも絵柄を印刷しておくこともでき、あるいは、積層する表面又は裏面の透明フィルムの枚数を増やして、各フィルムに絵柄を印刷してこれを重ね合わせることもできる。この構成によれば、例えば立体的な絵柄の作成等も可能である。なお、基材が紙等の場合、前記実施形態のようにシートを変形する必要がないので、透明な表面及び裏面のフィルムにはPETフィルムやポリプロピレンフィルム等各種のものが選択できる。
【0048】
また、本実施形態にかかる両面印刷シート製造方法では、表面フィルム1aを基材6に貼着して片面合成シート7とした後、この片面合成シート7と裏面フィルム1bとを貼着することとしたが、これに代えて、両フィルム1a、1bとも基材6に貼着せずに重なり合った状態とし、その後両フィルム1a、1bを基材6の両面に同時に貼着することとしても良い。
【0049】
また、本実施形態にかかる両面印刷シート製造方法では、基材6と両フィルム1a、1bとの貼着には、接着剤を利用したが、これに代えて表面フィルム1aまたは裏面フィルム1bを熱して溶着させ、基材6と貼着させても良い。なお、両フィルム1a、1bの貼着方法は必ずしも同じにする必要はなく、表面フィルム1aと基材6とを溶着により貼着させ、裏面フィルム1bと基材6とを接着剤により貼着させるようにしてもよい。
【0050】
また、本願発明にかかる両面印刷シート製造方法では、位置合せマーク5a、5bをフィルムの片方の縁の透明領域3a、3bに設けたが、フィルムの幅方向両方の縁に透明領域を作成し、この両方の縁を透明領域にそれぞれ位置合せマークを設けることもできる。この場合、位置合せマークを検出するセンサー13を図4のX方向奥側(図中奥側)にも設置して、両方のセンサーの検知信号に基づいて位置合せするようにすれば、特に幅広のシート等においても正確な位置合せが可能となる。
【0051】
また、本実施形態にかかる両面印刷シート製造方法では、n番目の両位置合せマーク5a、5bの位置関係の算出結果に基づいて、n+1番目の両位置合せマーク5a、5bが所定の位置関係になるように位置合せをするようにしたが、これに代えてn番目の両位置合せマーク5a、5bの位置関係の算出結果に基づいて、n番目の両位置合せマーク5a、5bが所定の位置関係になるように位置合せをするようにしてもよい。この場合は、基材6と表面フィルム1aや裏面フィルム1bを一体化していない重ね合せ状態で、両位置合せマーク5a、5bを検知して位置合せした後、溶着等により貼着することにより両面印刷シート15を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本願発明によれば、不透明な基材を有するシートであっても、絵柄が鮮やかで裏表の絵柄が同調する両面印刷シートの製造方法を提供することができる。よって、両面印刷の技術分野において、特に不透明な基材を有するシートの両面印刷の技術分野に有益である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、絵柄が印刷された表面フィルムの斜視図である。
【図2】図2は、絵柄が印刷された裏面フィルムの斜視図である。
【図3】図3は、片面合成シートの斜視図である。
【図4】図4は、両面印刷シート製造装置を概略的に示した斜視図である。
【図5】図5は、貼着工程後の両面印刷シートの断面図である。
【図6】図6は、プレス加工した後の両面印刷シートの斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1a 表面フィルム
1b 裏面フィルム
2a、2b 印刷領域
3a、3b 透明領域
4a、4b 絵柄
5a、5b 位置合せマーク
6 基材
7 片面合成シート
8 接着剤
9 接着層
11 両面印刷シート製造装置
13 センサー
15 両面印刷シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の表面フィルムと、帯状の裏面フィルムと、帯状の基材とを同方向に送りつつ貼着して両面印刷シートを製造する両面印刷シート製造方法であって、
前記表面フィルムと前記裏面フィルムのうちいずれか一方を前記基材に予め貼着して、又はいずれも貼着しない状態で、前記基材が前記表面フィルムと前記裏面フィルムの間に挟まれるように、前記表面フィルムと前記裏面フィルムと前記基材とを重なり合った状態にしていく重ね合せ工程と、
前記表面フィルムと前記裏面フィルムと前記基材とが一枚のシートに一体化されるように、前記基材に予め貼着されているフィルム以外のフィルムを、前記基材に貼着していく貼着工程と、
前記表面フィルムと前記裏面フィルムとが上記重なり合った状態又は前記基材に両フィルムとも貼着された状態で、前記表面フィルムと前記裏面フィルムに印刷された位置合せマークを検知する検知工程と、
該検知の結果に基づき、前記表面フィルムと前記裏面フィルムとの相対的な位置関係を算出する位置関係算出工程と、
算出された該相対的な位置関係に基づき、前記表面フィルムと前記裏面フィルムとの相対的な位置関係が所定の位置関係になるように、前記貼着工程以前の段階の両フィルムの位置合せを行う位置合せ工程とを備え、
前記表面フィルム及び前記裏面フィルムは、前記重なり合った状態にすると前記基材からはみ出る個所に透明領域を有し、該透明領域には前記位置合せマークが送り方向に沿って繰り返し印刷されており、前記基材に対応する個所には絵柄が印刷されている両面印刷シート製造方法。
【請求項2】
前記位置合せ工程において、n番目の前記表面フィルムに印刷された前記位置合せマークと前記裏面フィルムに印刷された前記位置合せマークとの相対的な位置関係の算出結果に基づき、n+1番目以降の前記表面フィルムに印刷された前記位置合せマークと前記裏面フィルムに印刷された前記位置合せマークとの相対的な位置関係が所定の位置関係になるように、前記表面フィルム及び前記裏面フィルムの送り速度のうち少なくとも一の送り速度を増減して前記位置合せを行う請求項1記載の両面印刷シート製造方法。
【請求項3】
前記重ね合せ工程の前の工程として、前記表面フィルムと前記裏面フィルムのうちいずれか一方を前記基材の一方の面に予め貼着する片面貼着工程を必須とする請求項1又は2記載の両面印刷シート製造方法。
【請求項4】
前記検知工程において、前記表面フィルムまたは前記裏面フィルムの一方の側から、前記表面フィルムに印刷された前記位置合せマーク及び前記裏面フィルムに印刷された前記位置合せマークの両マークを光学的に検知する請求項1乃至3のいずれか一の項に記載の両面印刷シート製造方法。
【請求項5】
前記検知工程において、前記表面フィルムに印刷された前記位置合せマーク及び前記裏面フィルムに印刷された前記位置合せマークが、位置合せマーク検知用センサーの検知エリアを所定の速度で通過し、
前記位置関係算出工程において、前記センサーからの出力信号と前記所定速度とに基づいて、前記表面フィルムに印刷された前記位置合せマークと前記裏面フィルムに印刷された前記位置合せマークとの相対的な位置関係が算出される請求項1乃至4のいずれか一の項に記載の両面印刷シート製造方法。
【請求項6】
前記表面フィルム及び前記裏面フィルムが透明なフィルムに絵柄が印刷されたフィルムであり、
前記重ね合せ工程において、前記表面フィルムの印刷面及び前記裏面フィルムの印刷面が前記基材に接するように、前記基材が前記表面フィルムと前記裏面フィルムとの間に挟まれるように、前記表面フィルムと前記裏面フィルムと前記基材とを重なり合う状態にする請求項1乃至5のいずれか一の項に記載の両面印刷シート製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の両面印刷シート製造方法により製造された両面印刷シートを成型して得られる両面印刷容器であって、該基材が樹脂材である両面印刷容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−191254(P2007−191254A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9533(P2006−9533)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000226976)日清食品株式会社 (127)
【Fターム(参考)】