説明

両面粘着テープ

【課題】 プラスチックや金属等の被着体に対して、強固に接着し、長期間貼着した後に剥離する時には、加熱等の特別な処理を施さずに、糊残りや、支持基材である不織布が破壊することのない両面粘着テープを提供する。
【解決手段】 不織布基材と、アクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層とを有し、不織布基材が、引張強さが5〜45N/20mmの不織布に、ガラス転移温度が−10℃以下のアクリル系共重合体エマルジョンを3〜30質量%固着した不織布基材であり、アクリル系粘着剤組成物が、2−エチルヘキシルアクリレート、窒素含有ビニルモノマー及びカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーを含有するアクリル系共重合体の水分散型のエマルジョン型アクリル系粘着剤組成物であり、粘着剤層の周波数1Hzにおける30℃の貯蔵弾性率が、6×10〜1×10Paである両面粘着テープにより良好な接着性と剥離性を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面粘着テープに関する。更に詳しくは、プラスチックや金属等の被着体に対して強固に接着し、長期間貼着した後に剥離する際には、加熱等の特別な処理を施さずに、いわゆる糊残りや、支持基材である不織布が破壊することのない両面粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
両面粘着テープは、作業性に優れる接着信頼性の高い接合手段として、OA機器、家電製品、自動車等の各種産業分野において使用されている。一方、地球環境保護の観点から、OA機器等の組立製品は使用後に解体してリサイクル、リユースすることが多くなってきている。この際、部品が両面粘着テープによって接合されている場合、両面粘着テープを剥離する作業が求められ、糊残りや、支持基材である不織布が破壊することなく剥離できる特性(いわゆる再剥離性)が要求される。
【0003】
この要求に対応する両面粘着シートとして、これまでにも各種の提案が行われている。
例えば、特定の単量体成分からなるアクリル系共重合体を主成分とするアクリル系粘着剤に、流れ方向および幅方向の引張強さが1.0〜3.5kgf/20mmの不織布を組み合わせ、流れ方向および幅方向の引張強さが1.5〜4.5kgf/20mmである両面粘着テープが提案されている(特許文献1参照)。当該粘着テープは、強い接着力と優れた再剥離性とを兼備するが、再剥離時の剥離条件が厳しい条件、例えば剥離速度が極端に速い場合においては、粘着剤の一部が被着体に残存する場合があり、再剥離性の更なる向上が求められていた。
【0004】
また、特定の貯蔵弾性率からなるアクリル系粘着剤に、グレーン比が80%以上、引裂強さが50〜80gf、引張強さが1〜2kgf/15mm、流れ方向と幅方向の伸びの差が50%以下、透気度が0.3秒以下であるマニラ麻のみからなる不織布を組み合わせた両面粘着テープが提案されている(特許文献2参照)。また、層間破壊面積率が10%以下であり、流れ方向および幅方向の引張強さが20N/10mm以上である両面粘着テープが提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
これら粘着テープは、不織布基材として強靭な基材を使用することにより、再剥離時のテープ切れを抑制したものである。しかし、これら粘着テープは、含浸性が低い粘着剤を使用すると、再剥離時に粘着剤層の脱落による糊残りが生じる場合があった。
【0006】
こうした問題は、粘着剤としてエマルジョン型の粘着剤、特に水系溶媒を使用したエマルジョン型粘着剤を使用した場合や、粘着テープが転写法で作成されたテープである場合に顕著に生じた。
【0007】
【特許文献1】特開平08−209086
【特許文献2】特開平09−272850
【特許文献3】特開2001−152111
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、プラスチックや金属等の被着体に対して、強固に接着し、長期間貼着した後に剥離する時には、加熱等の特別な処理を施さずに、糊残りや、支持基材である不織布が破壊することのない両面粘着テープを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明においては、一定強度の不織布基材を中芯とし、当該不織布基材と積層される粘着剤層に、強い粘着力を示す特定の貯蔵弾性率を有するアクリル系粘着剤を使用する。この不織布基材は、不織布に低ガラス転移温度のアクリル系樹脂を固着させた基材である。この不織布基材は、その繊維表面にアクリル系樹脂が固着し、アクリル系粘着剤との化学的な親和性が向上して不織布基材と粘着剤との結合が強固となる。これに加えて、当該低ガラス転移温度のアクリル系樹脂が不織布基材の強度を脆性が強くなりすぎない程度に向上させ、かつ柔軟性を付与することにより、強い粘着力と優れた再剥離性との両立に好適に寄与すると推察される。
【0010】
即ち、本発明は、不織布基材と、アクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層とを有する両面粘着テープであって、前記不織布基材が、MD方向及びTD方向の引張強さが共に5〜45N/20mmの不織布に、ガラス転移温度が−10℃以下のアクリル系共重合体エマルジョンを不織布質量に対して3〜30質量%固着した不織布基材であり、前記アクリル系粘着剤組成物が、2−エチルヘキシルアクリレート、窒素含有ビニルモノマー及びカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーをモノマー成分として含有するアクリル系共重合体のエマルジョン粒子が水性媒体中に分散した水分散型のエマルジョン型アクリル系粘着剤組成物であり、前記粘着剤層の周波数1Hzにおける30℃の貯蔵弾性率が、6×10〜1×10Paであることを特徴とする両面粘着テープを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の両面粘着テープによれば、プラスチックや金属等の被着体に対して、強固に接着し、長期間貼着した後に剥離する時には、加熱等の特別な処理を施さずに、糊残りや、支持基材である不織布が破壊することなく、極めて効率的に両面粘着テープの剥離作業を行うことができる。その結果、両面粘着テープによって接合された部品の解体が簡便化され、部品のリサイクルやリユースが一層容易になる。
【0012】
さらに、エマルジョン重合により合成された粘着剤で問題になっている不織布との密着性不足に対し、本発明の構成により、エマルジョン型粘着剤であっても十分な不織布との密着性を確保することができ、極めて良好な再剥離性を発現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の両面粘着テープは、不織布基材と、アクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層とを有する両面粘着テープであって、前記不織布基材にガラス転移温度が−10℃以下のアクリル系共重合体が固着され、かつ前記不織布基材の引張強さが10〜50N/20mm以上であり、前記粘着剤層の周波数1Hzにおける30℃の貯蔵弾性率が、6×10〜1×10Paの両面粘着テープである。
【0014】
なお、アクリル系共重合体とは、(メタ)アクリレートを主たるモノマー成分として得られる共重合体をいい、アクリル系粘着剤組成物とは、アクリル系共重合体を主剤とする粘着剤組成物をいう。また、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートをいい、(メタ)アクリル酸等の表記においても同様にアクリル酸及びメタクリル酸を総称するものである。
【0015】
[不織布基材]
(不織布)
本発明に使用する不織布は、引張強さがMD方向(縦方向;流れ方向)、TD方向(横方向;幅方向)共に5〜45N/20mm、好ましくは10〜45N/20mm、より好ましくは15〜40N/20mm、さらに好ましくは20〜30N/20mmの不織布である。本発明の両面粘着テープは、不織布の引張強さを当該範囲の強さとすることで、再剥離時のテープ切れが生じにくく、かつ湾曲面等へ貼り付けた際にも剥がれにくい。
【0016】
尚、前述の引張強さは、票線長さ100mm、幅20mmのサンプルを、テンシロン引張試験機を用い、23℃・50%RHの環境下において、引張速度300mm/minの測定条件で測定した最大強度をいう。
【0017】
(不織布の材質)
本発明に使用する不織布の材質としては、両面粘着テープの引張強さが本発明において規定される範囲を満足するものであれば、両面粘着テープの不織布基材として用いられる公知慣用の不織布を用いることができる。代表的な例としては、マニラ麻;パルプ;レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維等の化学繊維;及びこれらの混合物等が挙げられる。さらに、必要に応じて、ビスコース含浸や熱可塑性樹脂をバインダーとした含浸処理を施しても良い。
【0018】
中でも麻単独、または麻とビニロン、レーヨン、ポリエステル、パルプ等を混抄したものが好ましい。麻としては、強度の点からマニラ麻が好ましい。また、マニラ麻の含有率は50質量%以上のものが好ましく、70質量%以上のものがさらに好ましい。本範囲内に有る不織布を用いた場合、不織布と粘着剤の密着性が向上し、また柔軟性と切断に耐えうる強度とを両立し易くなり再剥離性が向上する。
【0019】
また、不織布基材の強度を向上させる目的で、不織布製造工程で公知慣用の強化剤を添加することが好ましい。強化剤は、内添強化剤或いは外添強化剤を、単独または併用しても良い。内添強化剤としては、ポリアクリルアミド系樹脂、尿素−ホルムアルデヒド系樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド系樹脂、エポキシ−ポリアミド系樹脂等が使用できる。特に、エポキシ−ポリアミド系樹脂であるポリアミドアミン・エピクロルヒドリン樹脂が著しく不織布基材の層間強度を上げるため好ましい。内添強化剤の添加量としては、好ましくは不織布の質量に対して0.2〜1質量%、さらに好ましくは0.3〜0.5質量%である。一方、外添強化剤としては、ビスコース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の熱可塑性樹脂が使用できる。
【0020】
(不織布の坪量および密度)
前述の不織布の坪量は10〜30g/mであることが好ましく、13〜25g/mであることがより好ましい。また、密度は0.15〜0.35g/mであることが好ましく、0.2〜0.3g/mであることがより好ましい。このような不織布を使用することで、不織布基材の切断し難さと、不織布への粘着剤の含浸性をバランスよく向上させることができ、再剥離性を一層向上させることができる。
【0021】
(不織布の抄紙方法)
不織布の抄紙方法としては、特に限定されるものではないが、公知の湿式法により得られ、円網抄紙機、短網抄紙機、長網抄紙機、傾斜短網抄紙機等を使用した各種抄紙法が用いられる。中でも、不織布基材を切断し難くするために、MD方向とTD方向の強度や伸びの等方性を上げることが好ましく、その等方性を上げやすい傾斜短網抄紙機が好ましい。
【0022】
(不織布に固着させるアクリル系共重合体)
本発明の両面粘着テープは、上記不織布に、ガラス転移温度(Tg)が−10℃以下であるアクリル系共重合体を固着させた不織布を使用する。当該不織布基材は、アクリル系共重合体を固着させていない通常の不織布に比べ、不織布表面にアクリル系樹脂が固着し、アクリル系粘着剤との化学的な親和性が向上し、不織布と粘着剤との結合が強固になる作用が生まれる。その結果、長期間被着体に貼着された両面粘着テープを剥離する再剥離過程において、粘着剤が不織布基材から脱落し難くなる。また、通常、不織布をアクリル系繊維加工剤により処理すると、不織布の引張強さは増加する傾向にあるが、引裂強さが大きく低減し、千切れ易くなる。しかし、低ガラス転移温度のアクリル系共重合体を使用すると、−10℃近傍の温度を境に引裂強さが強くなり、再剥離性の向上に大きく貢献する。
【0023】
不織布へのアクリル系共重合体への固着とは、不織布の表面、不織布を構成する繊維表面、あるいは不織布の繊維の結点等にアクリル系共重合体が固定されている状態をいい、その固定は、物理的な固定であっても、化学的な親和力による固定であっても良い。
【0024】
不織布に固着させるアクリル系共重合体のガラス転移温度は、−10℃以下であることが必要であり、好ましくは−15℃以下であり、さらに好ましくは−20℃以下である。−10℃を超えるガラス転移温度のアクリル系共重合体を不織布に固着させた場合、不織布基材の脆性が強くなり、不織布基材の引裂強さが低下する。その結果、再剥離時に不織布基材が顕著に千切れ易くなる。一方、−10℃以下である低ガラス転移温度のアクリル系共重合体の場合、再剥離過程において不織布基材に加わる応力を緩和する効果を生み出し、不織布基材が千切れ難くなる。
【0025】
不織布に固着させるアクリル系共重合体のガラス転移温度は、例えば、示差走査型熱量計による吸熱曲線測定により求められる。不織布に固着させるアクリル系共重合体のガラス転移温度は、図1に示した示唆走査熱量計による吸熱曲線測定において「T」として表される値であり、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状の変化部分の曲線とが交わる点の温度である。
【0026】
(不織布に固着させるアクリル系共重合体の構成)
不織布に固着させるアクリル系共重合体を構成する主モノマーとしては、例えば、n−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート等が挙げられる。これらの主モノマーを本発明に規定されるガラス転移温度となるように、単独または複数組み合わせて使用することができる。中でも、ガラス転移温度を−10℃以下に容易に制御することができるため、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートを単独又は組み合わせたものを主モノマーとすることが好ましい。さらに、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートを単独又は組み合わせたものを主モノマーとし、粘着剤層もn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートを単独又は組み合わせたものを主モノマー
とすることにより、不織布基材と粘着剤層の密着力を一層高めることができ、再剥離性を向上させることができる。
【0027】
さらに、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノマーを適宜組み合わせて使用することができる。
【0028】
また、架橋モノマーに関しては、重合段階で架橋が完了するタイプ、重合段階では架橋が進行せずに、不織布に付着させた後の乾燥加熱工程にて架橋が完了するタイプ等が挙げられる。前者の例としてはシリル含有モノマーが、後者の例としてはメチロールアミド基又はそのアルコキシ化物含有モノマーが挙げられる。前者のシリル含有モノマーとしては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。また、後者のメチロールアミド基又はそのアルコキシ化物含有モノマーとしては、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0029】
中でも、重合段階で架橋が完了するタイプが好ましく、特にシリル含有モノマーを使用することが好ましい。疎水性の高いシリルを含有させることにより、粘着剤層中の疎水性の高い主モノマーとの密着性を上げ、再剥離性を向上させることができる。
【0030】
(不織布へのアクリル系共重合体の固着方法)
不織布へのアクリル系共重合体の固着方法としては、例えば、アクリル系共重合体を溶媒、好ましくは水性媒体に溶解又は分散させ、アクリル系共重合体溶液や、アクリル系共重合体エマルジョンとし、これを、グラビアコーター方式、ロールコーター方式、ディッピング方式、スプレー方式等の方法により不織布に塗布して、溶媒を除去する方法により固着することができる。中でも不織布に均一に樹脂を付着せしめるディッピング方式が好ましい。なお、水性媒体とは水または水と水溶性溶剤との混合溶媒をいう。
【0031】
上記のようなアクリル系共重合体の溶液やエマルジョンには、主に不織布の繊維内部に浸透するタイプと、主に繊維結点等の繊維表面に付着するタイプとがある。通常、アクリル共重合体の溶液は不織布の繊維内部に浸透するタイプであり、アクリル系共重合体エマルジョンは不織布の繊維結点に付着するタイプとなる。中でも、繊維結点等の繊維表面に付着するタイプのアクリル系共重合体エマルジョンが好ましい。繊維結点等の繊維表面にアクリル樹脂を付着させることにより、粘着剤層のアクリル成分との密着性が効率的に向上し易くなる。
【0032】
このようなアクリル系共重合体エマルジョンの製造に際して使用する(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、等のアルキル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリレート;2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;アミノエチル(メタ)アクリレート、N−モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート;2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート等のアジリジニル基含有(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート等のアリル基含有(メタ)アクリレート;ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等のシクロペンテニル基含有(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0033】
更に、前記(メタ)アクリレートと共に使用可能なモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルプロピオン酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の酸化合物を併用できる。また、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のメチロールアミド基又はそのアルコキシ化物含有モノマー;(メタ)アクリロイルイソシアナート、(メタ)アクリロイルイソシアナートエチルのフェノール或いはメチルエチルケトオキシム付加物等のイソシアナート基及び/又はブロック化イソシアナート基含有モノマー;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有モノマー;スルホン酸基及び/又はサルフェート基(及び/又はその塩)、リン酸基及び/又はリン酸エステル基(及び/又はその塩)を含有するエチレン性不飽和モノマー、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等のビニルスルホン酸類又はその塩、アリルスルホン酸、2−メチルアリルスルホン酸等のアリル基含有スルホン酸類又はその塩、(メタ)アクリル酸2−スルホエチル、(メタ)アクリル酸2−スルホプロピル等の(メタ)アクリロイル基含有スルホン酸類又はその塩、(メタ)アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸等の(メタ)アクリルアミド基含有スルホン酸類又はその塩、リン酸基を有する「アデカリアソープPP−70、PPE−710」[旭電化工業(株)製];酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチラート、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有エチレン性不飽和モノマー;イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、エチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン等のラジカル重合可能なモノマー等が挙げられる。これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0034】
また、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のシリル基含有モノマーを使用することで、得られる両面粘着テープの再剥離性を向上させることができるため好ましい。
【0035】
本発明に使用するアクリル系共重合体エマルジョンは、通常、重合開始剤と、必要に応じて乳化剤、分散安定剤などの添加剤の存在下に、前記(メタ)アクリレートを用いて、更に必要に応じてこれらの(メタ)アクリレートと共重合可能なその他のモノマーの混合物を水性媒体中で共重合させることにより得ることができる。
【0036】
その際の重合方法としては、特に限定しないが、例えば、(1)(メタ)アクリレート、その他のモノマー、水、重合開始剤等を一括混合して重合する方法、あるいは(2)(メタ)アクリレート、その他のモノマー、水、乳化剤等を予め混合したものを滴下するいわゆるプレエマルジョン法、あるいは(3)モノマー滴下法等が挙げられる。
【0037】
前記アクリル系共重合体エマルジョンは、乳化剤、フリーラジカル発生触媒等の添加剤の存在下に水性媒体中で上記各種重合成分を乳化重合することにより得ることができる。
【0038】
前記乳化剤としては、各種の陰イオン性界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両イオン界面活性剤などを使用することができる。
【0039】
前記陰イオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩[例えば日本乳化剤(株)製ニューコール707SF]等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記陽イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアンモニウムクロライド[例えばライオン(株)製アーカード16−50]等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記両イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニル硫酸塩等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0043】
更に、必要に応じて、一般的に「反応性乳化剤」と称される、重合性不飽和基を分子内に有する乳化剤を使用することもできる。かかる反応性乳化剤としては、市販製品として、例えばスルホン酸基及びその塩を有する「ラテムルS−180、PD−104」[花王(株)製]、「エレミノールJS−2、RS−30」[三洋化成工業(株)製]等;硫酸基及びその塩を有する「アクアロンHS−10、HS−1025、KH−05、KH−10」、[第一工業製薬(株)製]、「アデカリアソープSE−10、SE−20」[旭電化工業(株)製]等;リン酸基を有する「ニューフロンティアA−229E」[第一工業製薬(株)製]等;非イオン性親水基を有する「アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50」[第一工業製薬(株)製]等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記アクリル系共重合体エマルジョンの製造に使用することのできる乳化剤以外のその他の分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、繊維素エーテル、澱粉、マレイン化ポリブタジエン、マレイン化アルキッド樹脂、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリルアミド、水性アクリル樹脂、水性ポリエステル樹脂、水性ポリアミド樹脂、水性ポリウレタン樹脂等の水溶性高分子物質が挙げられ、合成品でもよく天然品でもよく特に限定せず、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記アクリル系共重合体エマルジョンを製造する際に用いる水性媒体としては、特に限定せず、水の単独使用でもよく、あるいは水と水溶性溶剤の混合溶剤を用いてもよい。
【0046】
本発明で使用可能な「水と水溶性溶剤の混合溶剤」とは、実質的に水を主体とした水溶性溶剤との混合溶剤であり、混合溶剤の全量に対して、水溶性溶剤の含有率が好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下である。
【0047】
前記水溶性溶剤とは、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール類、あるいはN−メチルピロリドン等の極性溶剤が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0048】
また、前記アクリル系共重合体エマルジョンを製造する際に用いる重合開始剤としては、通常ラジカル重合開始剤が用いられ、かかるラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル類、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類等の有機過酸化物類、過酸化水素等が挙げられる。
【0049】
また、前記過酸化物と還元剤とを併用したレドックス重合開始剤を用いることもでき、前記還元剤としては、例えばアスコルビン酸及びその塩、エリソルビン酸及びその塩、酒石酸及びその塩、クエン酸及びその塩、ホルムアルデヒドスルホキシラートの金属塩、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、塩化第二鉄等が挙げられ、更に4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ系開始剤を使用することも可能であり、これら重合開始剤の1種又は2種以上の混合物を使用することができる。
【0050】
前記アクリル系共重合体エマルジョンにおいて、使用する重合体の分子量を調整する必要がある場合は、分子量調整剤として連鎖移動能を有する化合物を添加してもよい。
【0051】
かかる分子量調整剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸、チオグリセリン等のメルカプタン類、又は、α−メチルスチレン・ダイマー等が挙げられる。
【0052】
また、前記アクリル系共重合体エマルジョン中のカルボキシル基を中和するために、中和剤を使用することができる。
【0053】
かかる中和剤としては、本発明の目的を阻害しないものならば何れの塩基性物質も使用することができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の水溶性有機アミン類等が挙げられ、これらを単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。これらのうち、特に得られる被膜の耐水性をより向上させる場合は、常温或いは加熱により飛散し易いアンモニアを使用することが好ましい。
【0054】
前記アクリル系共重合体エマルジョンを製造する際の重合温度は、使用するモノマーの種類、重合開始剤の種類等に種々の条件により異なり、適宜選択可能であるが、例えば、水性媒体中で乳化重合する場合は、通常30〜90℃の範囲で行うことが好ましい。かかる温度範囲で乳化重合を行えば、未反応のモノマーが殆ど残存することなく、均一で安定な重合体粒子を得ることができる。
【0055】
前記アクリル系共重合体エマルジョンは、水溶性或いは水分散性の熱硬化性樹脂を本発明の目的を阻害しない範囲で混和して使用することもできる。
【0056】
前記水溶性或いは水分散性の熱硬化性樹脂とは、特に限定しないが、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂等が挙げられ、これらを単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
【0057】
更に、本発明に使用するアクリル系共重合体エマルジョンには、顔料、pH調整剤、被膜形成助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤、油剤等の公知慣用の添加剤を本発明の目的を阻害しない範囲で適宜添加することができる。
【0058】
本発明に使用するアクリル系共重合体エマルジョンは、例えばポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、アクリル繊維等の合成繊維、あるいは再生セルロース繊維等の再生繊維、あるいはアセテート繊維等の半合成繊維、あるいは絹、木綿、羊毛、パルプ等の天然繊維、よりなる群から選ばれる少なくとも一種の素材で構成される不織布、編物などに使用することができる。
【0059】
本発明に使用するアクリル系共重合体エマルジョンは、ゲル分率を80%以上に調整することが好ましく、90%以上に調整することがより好ましい。ゲル分率が80%以上の場合、固着させたアクリル系共重合体による経時で粘着剤層の可塑化を抑制することができ、両面粘着テープとしての粘着物性の経時変化を少なくする効果があることを筆者らは見出している。また、ゲル分率を80%以上とすることで、不織布にアクリル系共重合体を固着させた後、不織布をロール状に巻き取っても、いわゆるブロッキング現象が発生し難くなる。
【0060】
当該ゲル分率は、ガラス板上に、乾燥後の厚さが20μmになるようにアクリル系共重合体エマルジョンを塗工し、100℃で2分間乾燥し、140℃で3分のキュアリングを行ったもの50mm角に切り取り、これを試料とした。次に、予め上記試料のトルエン浸漬前の質量(G1)を測定しておき、トルエン溶液中に常温で24時間浸漬した後の試料のトルエン不溶解分を300メッシュ金網で濾過することにより分離し、110℃で1時間乾燥した後の残渣の質量(G2)を測定し、以下の式に従ってゲル分率を求めた。
ゲル分率(質量%)=(G2/G1)×100
【0061】
上記アクリル系共重合体を不織布に固着させる量としては、以下の式に示されるアクリル系共重合体固着量が、3〜30質量%であることが好ましく、5〜25質量%であることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、不織布の表面がアクリル系共重合体により過度に覆われることなく効果的に固着効果が得られ粘着剤組成物が不織布内部まで含浸しやすくなる。
アクリル系共重合体固着量(%)=(A−B)/B×100
A=アクリル系共重合体固着後の不織布基材の
B=アクリル系共重合体固着前の不織布の
【0062】
(アクリル系共重合体を固着させた不織布の引裂強さ)
アクリル系共重合体を固着させた不織布基材の強度は、JIS−P−8116に規定される引裂強さにて1N以上であることが好ましい。引裂強さを1N以上とすることで、剥離工程での一瞬の引裂により破壊の起点が生じ拡大していくことで生じる不織布の破壊を顕著に抑制でき、基材が切れ難くなる。その結果、長期間被着体に貼着された両面粘着テープの再剥離性を大幅に向上できる。引裂強度の上限は、特に規定されるものではないが、不織布を使用した基材としては3N程度の引裂強度が通常上限として想定される。好ましくは1.2〜2.5N、より好ましくは1.5〜2.5Nである。
【0063】
(アクリル系共重合体を固着させた不織布基材の層間強さ)
アクリル系共重合体を固着させた不織布基材の層間強さは、1N/15mm以上であることが好ましい。層間強さの測定方法は、まず25×150mmの不織布の両面に24mm幅の粘着フィルムを密着するように貼る。粘着フィルムは不織布の相間を剥がすことのできる接着力を有するものを使用し、粘着フィルムの長さは不織布より長めにする。上記試料の両端を切り落とし、15×150mmに調整した試料の一端から粘着フィルムを剥がし、不織布層間を約30mm剥がす。この試料を、縦方向と横方向の各3枚ずつを準備する。測定温湿度:23℃50%RH、測定機器:オリエンテック製テンシロンRTA−100を用い、試片つかみ間隔:20mmとして上記試料をチャックに挟み、速度:100mm/分、測定距離:50mm、により得た積分平均荷重を読み取り、縦方向、横方向、各3枚の平均値を層間強度(N/15mm)とする。層間強さの上限は、特に規定されるものではないが、不織布を使用した基材としては4N程度の層間強さが通常上限として想定される。
【0064】
(アクリル系共重合体を固着させた不織布基材の引張強さ)
アクリル系共重合体を固着させた不織布基材の強度は、引張強さがMD方向(縦方向;流れ方向)、TD方向(横方向;幅方向)共に10〜50N/20mm、好ましくは15〜40N/20mmの不織布基材である。本発明の両面粘着テープは、不織布基材の引張強さを当該範囲の強さとすることで、再剥離時のテープ切れが生じにくく、かつ湾曲面等へ貼り付けた際にも剥がれにくい。
尚、前述の引張強さは、票線長さ100mm、幅20mmのサンプルを、テンシロン引張試験機を用い、23℃・50%RHの環境下において、引張速度300mm/minの測定条件で測定した最大強度をいう。
【0065】
[粘着剤層]
(粘着剤層の特定)
本発明の両面粘着テープを構成するアクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層には、30℃の貯蔵弾性率が6×10〜1×10Paである粘着剤層を使用する。6×10以上の場合には、被着体への粘着剤の濡れが適度に抑えられ、経時での粘着力上昇を抑制する効果が得られる結果、再剥離性が向上する。一方、1×10Pa以下の場合には、粘着剤に適度な柔軟性が発現されるため、適度な初期接着性が得られ易くなることを発明者らは見出している。
【0066】
粘着剤層の貯蔵弾性率を上記範囲とすることで、得られる両面粘着テープは、強固な接着性、具体的にはJIS−Z−0237に規定される粘着力にて、12〜20N/20mm程度の強い粘着力を示すと同時に、長期間貼付した後の再剥離性をバランス良く発現することができる。
【0067】
さらに、正接損失のピーク値(tanδ)が−25℃〜−5℃にあることが好ましい。本範囲内にあることにより、初期接着性と再剥離に必要な粘着剤の凝集力をバランス良く発現し易くなる。
【0068】
前述の動的粘弾性特性は、アクリル系粘着剤に使用するアクリル系共重合体に用いるモノマーの種類やその比率、重合開始剤の種類やその使用量、架橋剤や粘着付与樹脂の種類や使用量、重合方法等を適宜選択することにより調整できる。
【0069】
尚、前述の粘着剤層の動的粘弾性特性は、特定周波数、及び特定温度における、動的粘弾性スペクトルの損失正接、又は損失正接及び貯蔵弾性率により規定し、さらに、特定周波数における動的粘弾性スペクトルの損失正接のピークを示す温度、または損失正接のピーク値により規定する。動的粘弾性の測定においては、粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:アレス2KSTD)を用いて、同試験機の測定部である平行円盤の間に試験片を挟み込み、周波数1Hzで−50℃から150℃までの貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)を測定する。試験片は厚み0.5〜2.5mmの粘着剤層を単独で平行円盤の間に挟んでも良いが、不織布基材と粘着剤層の積層体を幾重にも重ねて平行円盤の間に挟んでも良い。なお、後者の場合は粘着剤のみの厚さが前記の範囲となるように調整する。粘着剤としての厚さを上記の範囲に調整すると、中間に基材が挟まっていても粘着剤の動的粘弾性スペクトルに影響はないことを本発明者等は確認している。
【0070】
(粘着剤の構成)
本発明の両面粘着テープの粘着剤層を構成する粘着剤組成物は、上記特性を有するアクリル系粘着剤組成物であれば、通常両面粘着テープに使用される粘着剤組成物を用いることができ、特に前述の不織布との化学的な親和性が高い粘着剤組成物を好ましく使用できる。本発明に使用するアクリル系粘着剤組成物は、(メタ)アクリレート単独又は(メタ)アクリレートと他のモノマーとの共重合体からなるアクリル系共重合体をベースポリマーとし、これに必要に応じて粘着付与樹脂や架橋剤等の添加剤が配合されたアクリル系粘着剤組成物である。
【0071】
アクリル系粘着剤組成物中のアクリル系共重合体は、溶液重合、乳化重合(エマルジョン重合)等の公知の重合方法により得ることができる。尚、近年は人体への影響、地球環境保護の観点から、溶液重合により得られる溶剤型粘着剤よりも、水性媒体で合成され、水性媒体中にエマルジョン粒子が分散した水分散型のエマルジョン型粘着剤が好ましい。
【0072】
(エマルジョン型粘着剤の構成)
強接着性と再剥離性に優れるエマルジョン型粘着剤に使用するアクリル系共重合体としては、ガラス転移点が−10℃以下の(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。そのようなモノマーとしては、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、ドデシルメタアクリレート、オクタデシルメタアクリレート等がある。また、−10℃以下の(メタ)アクリレートの使用比率は、全モノマーに対して60〜98質量%であることが好ましく、より好ましくは80〜97質量%である。上記範囲であれば、接着力および凝集力が共に良好である。
【0073】
更に、高極性ビニルモノマーを共重合することも好ましく、高極性ビニルモノマーとしては、水酸基を有するモノマー、カルボキシル基を有するモノマー、アミノ基を有するモノマー、グリシジル基を有するモノマー等が挙げられる。水酸基を有するモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート等が、カルボキシル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸2量体、クロトン酸等が、アミノ基を有するモノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。その他として、酢酸ビニル、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸等のスルホン酸基含有モノマー等がある。
【0074】
なかでも、エマルジョン型粘着剤に使用するアクリル系共重合体としては、モノマー成分として2−エチルヘキシルアクリレートと窒素含有ビニルモノマー、及び、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーを含有することが特に好ましい。2−エチルヘキシルアクリレート及び窒素含有ビニルモノマー、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーは、それぞれ、各種被着対象との界面剥離能を向上させることができ、当該アクリル系共重合体を使用した粘着剤は、各種被着体、特にステンレス、スチレン−アクリロニトリル樹脂(ABS)、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)及びポリカーボネート/ABSのポリマーアロイ樹脂(PC/ABS)の被着体に対して、糊残りの発生を抑制でき、好適な再剥離性を実現できる。
【0075】
2−エチルヘキシルアクリレートを含有する場合の含有量は、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の20〜90質量%、好ましくは30〜70質量%、より好ましくは40〜60質量%、更により好ましくは45〜55質量%含有することにより、被着対象との接着力を確保しつつ、良好な再剥離性を発現できる。
【0076】
窒素含有モノマーを含有する場合の含有量は0.1〜5.0質量%、好ましくは、0.5〜4.0質量%、より好ましくは0.5〜3.5質量%の範囲で調整することで本発明の効果を好適に発現できる。窒素含有モノマーの含有量を上記下限以上とすることで、粘着テープの粘着剤層を形成した際に粘着剤層の凝集力が良好となる。これにより粘着テープを被着体から剥離する際に、粘着剤の糊残りや剥離不良を好適に抑制できる。また、上記上限以下とすることで、初期タック性や接着性を損なうことなく、良好な接着性を保持できる。
【0077】
カルボキシル基を含有する場合のエチレン性不飽和モノマー、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、無水フタル酸、クロトン酸等から選ばれる1種又は2種以上を使用できる。カルボキシル基を含有するエチレン性不飽和モノマーの含有量は0.5〜5.0質量%が好適である。より好ましくは、0.5〜4.0質量%、更に好ましくは1.0〜3.0質量%である。当該範囲内とすることで、架橋剤との架橋反応が良好に進行して剥離時の粘着剤の断裂が生じにくくなり、また、ステンレス、ABS、HIPS、PC/ABS等の被着体に対する糊残りが生じにくくなる。
【0078】
窒素含有モノマーとカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーの比率は、特に限定されるものではないが、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の窒素含有モノマーのモル数をX、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーのモル数をYとした場合のモル比X/Yが1/1〜1/10であることが好ましく、1/1〜1/5がより好ましく、1/1〜1/3が更に好ましい。当該範囲内であれば、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーと架橋剤との反応が、窒素含有モノマーに阻害されることなく進行し、凝集力が向上し、定荷重剥離性及び再剥離性がいっそう向上する。
【0079】
上記アクリル系共重合体として、上記2−エチルヘキシルアクリレートをモノマー成分として含有するアクリル系共重合体には、更に、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを併用することが好ましい。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のモノマー成分を例示でき、これらの1種または2種以上が用いられる。なかでも、好適なモノマー成分は、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレートであり、n−ブチルアクリレートが特に好適である。前記モノマー成分の含有量は、アクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の10〜80質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましく、40〜60質量%が更に好ましい。当該範囲内とすることで、再剥離性を損なうことなく、強粘着力を得やすくなる。
【0080】
また、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、メチルメタアクリレート、エチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタアクリレートをモノマー成分中の1〜10質量%の含有量で、2−エチルヘキシルアクリレート及びn−ブチルアクリレートと共に併用すると、本発明に使用する組成物を用いた粘着剤被膜の凝集力を向上することから好ましい。
【0081】
本発明に使用するアクリル系共重合体の重量平均分子量は50〜120万が好適であり、より好ましくは60〜100万である。当該範囲内とすることで、高い凝集力を保持したまま、中芯である不織布への含浸性が確保できるため、再剥離性が発現できる。前記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算である。測定条件として、カラムはTSKgel GMHXL[東ソー製]を用い、カラム温度は40℃、溶離液はテトラヒドロフラン、流量は1.0mL/分とし、標準ポリスチレンはTSK標準ポリスチレンを用いた。
【0082】
分子量を調整するために、重合には連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤としては、公知の連鎖移動剤、例えばラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノールなどが使用できる。
【0083】
(粘着付与樹脂)
本発明に使用するアクリル系粘着剤組成物には、粘着付与樹脂を使用することが好ましい。粘着付与樹脂としては、ロジン系、重合ロジン系、重合ロジンエステル系、ロジンフェノール系、安定化ロジンエステル系、不均化ロジンエステル系、テルペン系、テルペンフェノール系、石油樹脂系等が例示できる。エマルジョン型の粘着剤組成物に使用する場合には、エマルジョン型の粘着付与樹脂を使用することが好ましい。
【0084】
なかでも、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂と、ロジンフェノール系粘着付与樹脂が好ましく、これらを併用で配合することが特に好ましい。具体的には、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂は、スーパーエステルE−650[荒川化学工業(株)製]、スーパーエステルE−788[荒川化学工業(株)製]、スーパーエステルE−786−60[荒川化学工業(株)製]、スーパーエステルE−865[荒川化学工業(株)製]、スーパーエステルE−865NT[荒川化学工業(株)製]、ハリエスターSK−508[ハリマ化成(株)製]ハリエスターSK−508H[ハリマ化成(株)製]、ハリエスターSK−816E[ハリマ化成(株)製]、ハリエスターSK−822E[ハリマ化成(株)製]、ハリエスターSK−323NS[ハリマ化成(株)製]等が挙げられ、ロジンフェノール系粘着付与樹脂は、タマノルE−100[荒川化学工業(株)製]、タマノルE−200[荒川化学工業(株)製]、タマノルE−200NT[荒川化学工業(株)製]等が挙げられる。
【0085】
これらを併用する場合には、前記重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(A)とロジンフェノール系粘着付与樹脂(B)との比が、(A)/(B)で表される質量比で1/1〜1/5であることが好ましく、1/1〜1/4がより好ましく、1/1〜1/3が更に好ましい。当該範囲内であれば、アクリル系共重合体と粘着付与樹脂との相溶性が良好であり、定荷重剥離性及び再剥離性の向上が期待できる。
【0086】
粘着付与樹脂の軟化点において、軟化点が120〜180℃であることが好適であり、より好ましくは140〜180℃である。軟化点の高い粘着付与樹脂を配合することで、高い接着性能、特に定荷重剥離性が期待できる。
【0087】
(アクリル系共重合体と粘着付与樹脂の配合比)
アクリル系共重合体と粘着付与樹脂とを使用する際の配合比は、アクリル系共重合体/粘着付与樹脂で表される比が、アクリル系共重合体/粘着付与樹脂=100/10〜100/40が好適であり、より好ましくはアクリル系共重合体/粘着付与樹脂=100/15〜100/35である。アクリル系共重合体/粘着付与樹脂=100/10以上であると定荷重剥離性が向上し、アクリル系共重合体/粘着付与樹脂=100/40以下では、再剥離性が良好である。
【0088】
(架橋剤の種類)
また、アクリル系粘着剤組成物中には、凝集力を向上させる目的で、架橋剤を使用できる。架橋剤としては、公知のイソシアネート、エポキシ化合物、アジリジン化合物、多価金属塩、金属キレート、ケト・ヒドラジド化合物、オキサゾリン化合物、シラン化合物、グリシジル(アルコキシ)エポキシシラン化合物が使用できる。その中でも、重合終了後に添加し、架橋反応を進行させるタイプの架橋剤が好ましくい。例えば、イソシアネート系架橋剤や、エポキシ化合物、グリシジル(アルコキシ)エポキシシラン化合物等が挙げられる。具体的には、エポキシ化合物では、デナコール EX−832[ナガセ化成工業(株)製]、デナコール EX−841[ナガセ化成工業(株)製]、テトラッドC[三菱瓦斯化学(株)製]、テトラッドX[三菱瓦斯化学(株)製]等が挙げられ、グリシジル(アルコキシ)エポキシシラン化合物では、2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン[KBM−303;信越シリコーン(株)製]、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン[KBM−403;信越シリコーン(株)製]、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン[KBE−402;信越シリコーン(株)製]、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン[KBE−403;信越シリコーン(株)製]等が挙げられる。架橋度合いの指標として、粘着剤層をトルエンに24時間浸漬した後の不溶分を測定するゲル分率の値が用いられる。ゲル分率は、好ましくは20〜45質量%である。より好ましくは25〜45質量%、更に好ましくは30〜40質量%の範囲であれば、定荷重剥離性と再剥離性がともに良好である。
【0089】
尚、ゲル分率とは、ガラス板上に、乾燥後の厚さが65μmになるようにエマルジョン型アクリル系粘着剤組成物を塗工し、100℃で10分間乾燥し、40℃2日エージングしたものを50mm角に切り取り、これを試料とする。次に、予め上記試料のトルエン浸漬前の重量(G1)を測定しておき、トルエン溶液中に23℃で24時間浸漬した後の試料のトルエン不溶解分を300メッシュ金網で濾過することにより分離し、110℃で1時間乾燥した後の残渣の重量(G2)を測定し、以下の式に従って求める値をいう。
ゲル分率(質量%)=(G2/G1)×100
【0090】
(添加剤)
また、添加剤として、必要に応じて、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、ガラスやプラスチック製の繊維・バルーン・ビーズ・金属粉末等の充填剤、顔料・染料等の着色剤、pH調整剤、皮膜形成補助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤等の公知のものを粘着剤組成物に任意で添加することができる。
【0091】
(製造方法/乳化剤の種類)
アクリル系粘着剤組成物に使用するアクリル系共重合体は、公知慣用の溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知慣用の重合方法で製造することができる。重合の開始方法も、過酸化ベンソイルや過酸化ラウロイル等の過酸化物系、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ系の熱重合開始剤を用いた熱による開始法や、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、アシルフォスフィンオキシド系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系の光重合開始剤を用いた紫外線照射による開始方法や、電子線照射による方法を任意に選択することができる。
【0092】
また、本発明に使用するエマルジョン型粘着剤は、エマルジョン型の粘着剤を得る乳化重合法により製造できる。乳化重合においては、重合安定性を確保するため、陰イオン性や非イオン性の乳化剤、その他の分散安定剤が適量用いられる。特に乳化剤は制限されず、公知の乳化剤を用いることができる。陰イオン性乳化剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられ、非イオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0093】
更に、公知の「反応性乳化剤」と称される重合性不飽和基を分子内に有する乳化剤を使用することが好ましい。具体的には、ラテムルS−180[花王(株)製]、ラテムルPD−104[花王(株)製]、アクアロンHS−10[第一工業製薬(株)製]、アクアロンHS−20[第一工業製薬(株)製]、アクアロンKH−10[第一工業製薬(株)製]、アクアロンKH−1025[第一工業製薬(株)製]、アクアロンKH−05[第一工業製薬(株)製]、アクアロンRN−10[第一工業製薬(株)製]、アクアロンRN−20[第一工業製薬(株)製]、アクアロンER−10[第一工業製薬(株)製]、アクアロンER−20[第一工業製薬(株)製]、ニューフロンティアA−229E[第一工業製薬(株)製]、アデカリアソープSE−10[旭電化工業(株)製]、アデカリアソープSE−20[旭電化工業(株)製]、アデカリアソープSR−10N[旭電化工業(株)製]、アデカリアソープSR−20N[旭電化工業(株)製]等が挙げられる。反応性乳化剤を使用することで、重合安定性に加え、被膜の耐水性が向上するため好ましい。
【0094】
(開始剤)
乳化重合に際し用いられる重合開始剤は限定されず、公知の重合開始剤を用いることができる。具体的に、2,2’,−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−アルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩等のアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤、芳香族カルボニル化合物等のカルボニル系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組合せ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組合せ等のレドックス系開始剤などが挙げられる。
【0095】
(平均粒子径)
また、本発明に使用するエマルジョン型粘着剤組成物中のエマルジョン粒子の平均粒子径は特に制限されるものではないが、50〜1000nmの範囲が好ましい。ここでの粒子の平均粒子径とは、エマルジョン粒子の体積基準での50%メジアン径をいい、数値は動的光散乱法により測定して得られる値に基づくものである。
【0096】
(固形分濃度)
また、本発明に使用するエマルジョン型粘着剤の固形分濃度は、特に制限されるものではないが、製造時のコストや輸送コストという観点、及び、乾燥して使用する際の乾燥性に優れるという観点から、固形分濃度が40〜70重量%であることが好ましい。
【0097】
(粘着剤層の厚み)
本発明の両面粘着テープを構成する粘着剤層は、片面の厚みで、30〜100μmが好ましく、50〜80μmであることがより好ましい。
【0098】
[両面粘着テープ]
本願発明の両面粘着テープは、上記不織布に上記のアクリル系共重合体が固着された不織布基材の両面に粘着剤層が設けられた構成であり、当該粘着剤層の少なくとも一方、好ましくは両方が上記のアクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層の両面粘着テープである。
【0099】
(両面粘着テープの製造方法)
本発明の両面粘着テープの製造方法は、公知慣用の方法が適宜使用される。例えば、不織布に直接アクリル系粘着剤溶液を塗布し乾燥させる直写法や、剥離シートにアクリル系粘着剤溶液を塗布し乾燥させた後、不織布に貼り合せる転写法が挙げられる。
本発明の両面粘着テープは、不織布と粘着剤との密着性が優れる構成を提案しており、不織布と粘着剤との密着が課題となる転写法にて特に効果が発現され易い。
【0100】
(両面粘着テープの引張強さ)
本発明の両面粘着テープの引張強さは、MD方向(縦方向;流れ方向)、TD方向(横方向;幅方向)共に20N/20mm以上且つ40N/20mm未満であることが好ましい。より好ましくは、30N/20mm以上且つ40N/20mm未満である。20N/20mm以上とすることで、本発明にて規定している粘着力を有する両面粘着テープを長期間貼着し、再剥離する際に千切れ難くなる。一方、40N/20mm以下の場合には、曲面等の耐反発力が要求される用途に両面テープを使用した際に、両面テープとしてのいわゆる腰が強くなりすぎるのを抑え、反発力に耐えられずに発生する剥がれを抑制しやすくなる。これにより、20N/20mm以上40N/20mm未満の範囲において再剥離性と耐反発性を両立させやすくなる。
【0101】
尚、前述の引張強さは、票線長さ100mm、幅20mmのサンプルを、テンシロン引張試験機を用い、23℃・50%RHの環境下において、引張速度300mm/minの測定条件で測定した最大強度をいう。
【0102】
(本発明の両面粘着テープの使用例)
本発明の両面粘着テープによれば、プラスチックや金属等の被着体に対して、強固に接着し、長期間貼着した後に剥離する時には、加熱等の特別な処理を施さずに、糊残りや、支持基材である不織布基材が破壊することなく、極めて効率的に両面粘着テープの剥離作業を行うことができる。本特性を有する両面粘着テープは、OA機器、家電製品等のリサイクルやリユースを想定して設計が行われる部品を接合する材料として最適である。
【実施例】
【0103】
(実施例1)
(1)不織布基材の調整
マニラ麻100%、ポリアミドアミン・エピクロルヒドリン樹脂0.5%を含む溶液を、傾斜短網抄紙機で、坪量17g/m、密度0.27g/cmとなるように抄紙し、引張強さがMD方向で27.3N/20mm、TD方向で25.8N/20mmの不織布基材を得た。
【0104】
(2)不織布に固着させるアクリル系共重合体の合成
撹拌装置を備えた重合容器に、イオン交換水280部を仕込み、窒素ガスを送入しつつ攪拌しながら反応容器内を80℃に昇温した。昇温後、下記組成の単量体乳化液(1A)の6部を反応容器に添加し、その後過硫酸アンモニウム6部と重亜硫酸ナトリウム6部を添加し重合を開始した。反応容器内温度を60℃で10分間保持した後、残りの単量体乳化液(1A)を594部と、下記の重合開始剤水溶液(2A)をそれぞれ反応容器内に同時に滴下し重合を行った。滴下時間は単量体乳化液(1A)が4時間、重合開始剤水溶液(2A)が4.5時間であり、反応容器内温度を60℃に保持しながら重合を完結させた。重合終了後、アンモニア水でpHを調整し、固形分50%、pH7、ゲル分率80%のアクリル系共重合体のエマルジョン(1)を得た。
【0105】
単量体乳化液(1A)の組成
ブチルアクリレート ;450部
アクリルアミド ; 15部
アクリロニトリル ; 15部
メタクリル酸 ; 5部
イタコン酸 ;2.5部
γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン;2.5部
ニューコール707SF[日本乳化剤(株)製] ; 10部
イオン交換水 ;100部
重合開始剤水溶液(2A)の組成
過硫酸アンモニウム ; 1部
イオン交換水 ; 59部
重亜硫酸ナトリウム ; 1部
イオン交換水 ; 59部
【0106】
(3)アクリル系共重合体を固着させた不織布の調整
前述のアクリル系共重合体のエマルジョン(固形分50%)と水とを、アクリル系共重合体エマルジョン:水=2:3の割合で希釈し、樹脂固形分20%の配合液をえた。この配合液に麻不織布(目付け17g/m)を浸漬させ、マングルロールにて絞り後、パーフェクトオーブンにて100℃×2分の予備乾燥、140℃×3分のキュアリングを行い、アクリル系共重合体が固着した不織布を得た。なお、不織布基材へのアクリル系共重合体の固着量は不織布質量に対し、12%とした。
樹脂固着量〔%〕=(樹脂固着後質量−樹脂固着前質量)/樹脂固着前質量
【0107】
(4)アクリル系粘着剤組成物の調整
<乳化液の調製>
容器に脱イオン水75gと界面活性剤アクアロンKH−1025[第一工業製薬(株)製;有効成分25%]20gと界面活性剤ラテムルPD−104[花王(株)製;有効成分20%]37.5gを入れ、均一に溶解した。そこに、2−エチルヘキシルアクリレート227.5g、n−ブチルアクリレート227.5g、メチルメタクリレート25g、N−ビニルピロリドン7.5g、アクリル酸[有効成分80%]15.63g、ラウリルメルカプタン0.2gを加えて乳化し、乳化液635.83gを得た。
【0108】
<アクリル系共重合体の製造>
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器に、脱イオン水277.5gを入れ、窒素を吹き込みながら60℃まで昇温した。攪拌下、乳化液の一部[3.18g]、過硫酸アンモニウム水溶液5g[有効成分3%]、亜硫酸水素ナトリウム水溶液5g[有効成分3%]を添加し、60℃を保ちながら1時間で重合させた。引き続き、残りの乳化液632.65gと、過硫酸アンモニウム水溶液40g[有効成分1.25%]を別々の漏斗を使用して、反応容器を60℃に保ちながら6時間かけて滴下重合した。滴下終了後、反応容器を60℃に保ちながら2時間攪拌した後、内容物を冷却し、pHが8になるようにアンモニア水(有効成分10%)で調整した。これを200メッシュ金網で濾過し、媒体が水性媒体であるアクリル系共重合体のエマルジョンを得た。ここで、得られたアクリル系共重合体のエマルジョンは固形分濃度51.9%、平均粒子径は340nm、重量平均分子量は808,000であった。
【0109】
<エマルジョン型アクリル系粘着剤組成物の製造>
前記のアクリル系共重合体のエマルジョンー963.39g[dry;500g]に、レベリング剤としてサーフィノールPSA−336[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、消泡剤としてサーフィノールDF−110D[エアー・プロダクツ・ジャパン(株)製;有効成分100%]2.5g、架橋剤としてエポキシ化合物テトラッドC[三菱瓦斯化学(株)製]0.15g、粘着付与樹脂としてエマルジョン型重合ロジンエステル系粘着付与樹脂スーパーエステルE−865NT[荒川化学工業(株)製;軟化点160℃]固形分で50g、エマルジョン型ロジンフェノール系粘着付与樹脂タマノルE−200NT[荒川化学工業(株)製;軟化点150℃]固形分で50gを添加し、100メッシュ金網で濾過し、媒体が水性媒体であるエマルジョン型アクリル系粘着剤組成物を得た。
【0110】
(5)両面粘着テープの調整
前記のエマルジョン型アクリル系粘着剤組成物を剥離処理した厚さ75μmのポリエステルフィルム上に、乾燥後の厚さが65μmになるように塗工し、100℃で5分間乾燥することにより得られた粘着剤層を、前述のアクリル系共重合体を固着させた不織布の両面に転写し、90℃の熱ロールを用い、40N/cmの圧力でラミネートし、40℃で2日間エージングすることにより両面粘着テープを調整した。尚、前述の粘着剤層の30℃における貯蔵弾性率は8.0×10Paであり、ゲル分率は33.9%、正接損失のピーク値(tanδ)は−17℃であった。
【0111】
(実施例2)
不織布に固着させるアクリル系共重合体を、以下の製造例にて得られるアクリル系共重合体とした以外は(実施例1)と同様にして両面粘着テープを調整した。
【0112】
撹拌装置を備えた重合容器に、イオン交換水280部を仕込み、窒素ガスを送入しつつ攪拌しながら反応容器内を80℃に昇温した。昇温後、下記組成の単量体乳化液(1B)の6部を反応容器に添加し、その後過硫酸アンモニウム6部と重亜硫酸ナトリウム6部を添加し重合を開始した。反応容器内温度を60℃で10分間保持した後、残りの単量体乳化液(1B)を594部と、下記の重合開始剤水溶液(2B)をそれぞれ反応容器内に同時に滴下し重合を行った。滴下時間は単量体乳化液(1B)が4時間、重合開始剤水溶液(2B)が4.5時間であり、反応容器内温度を60℃に保持しながら重合を完結させた。重合終了後、アンモニア水でpHを調整し、固形分50%、pH7、ゲル分率92%のアクリル系共重合体のエマルジョン(2)を得た。
【0113】
単量体乳化液(1B)の組成
ブチルアクリレート ;300部
エチルアクリレート ;161部
アクリルアミド ; 20部
メタクリル酸 ; 5部
イタコン酸 ;2.5部
γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン;1.5部
ニューコール707SF[日本乳化剤(株)製] ; 10部
イオン交換水 ;100部
重合開始剤水溶液(2B)の組成
過硫酸アンモニウム ; 1部
イオン交換水 ; 59部
重亜硫酸ナトリウム ; 1部
イオン交換水 ; 59部
【0114】
(参考例1)
不織布基材へのアクリル系共重合体の固着量を不織布質量に対し、1%とした以外は(実施例2)と同様にして両面粘着テープを調整した。
【0115】
(実施例
不織布基材へのアクリル系共重合体の固着量を不織布質量に対し、3%とした以外は(実施例2)と同様にして両面粘着テープを調整した。
【0116】
(実施例
不織布基材へのアクリル系共重合体の固着量を不織布質量に対し、6%とした以外は(実施例2)と同様にして両面粘着テープを調整した。
【0117】
(実施例
不織布基材へのアクリル系共重合体の固着量を不織布質量に対し、16%とした以外は(実施例2)と同様にして両面粘着テープを調整した。
【0118】
(実施例
不織布基材へのアクリル系共重合体の固着量を不織布質量に対し、22%とした以外は(実施例2)と同様にして両面粘着テープを調整した。
【0119】
(実施例
不織布基材へのアクリル系共重合体の固着量を不織布質量に対し、30%とした以外は(実施例2)と同様にして両面粘着テープを調整した。
【0120】
(参考例2)
不織布基材へのアクリル系共重合体の固着量を不織布質量に対し、40%とした以外は(実施例2)と同様にして両面粘着テープを調整した。
【0121】
(実施例
不織布基材の調整において、マニラ麻90%、ポリエステル10%、ポリアミドアミン・エピクロルヒドリン樹脂0.5%を含む溶液を、傾斜短網抄紙機で、坪量17g/m、密度0.28g/cmとなるように抄紙し、引張強さがMD方向で25.3N/20mm、TD方向で23.5N/20mmの不織布基材を用いた以外は、(実施例5)と同様にして両面粘着テープを調整した。
【0122】
(実施例
不織布基材の調整において、マニラ麻90%、ポリエステル10%を含む溶液を、傾斜短網抄紙機で、坪量17g/m、密度0.28g/cmとなるように抄紙し、引張強さがMD方向で8.9N/20mm、TD方向で7.6N/20mmの不織布基材を用い、不織布基材へのアクリル系共重合体の固着量を不織布質量に対し、35%とした以外は(実施例2)と同様にして両面粘着テープを調整した。
【0123】
(実施例10
不織布に固着させるアクリル系共重合体を、以下の製造例にて得られるアクリル系共重合体とした以外は(実施例5)と同様にして両面粘着テープを調整した。
【0124】
撹拌装置を備えた重合容器に、イオン交換水280部を仕込み、窒素ガスを送入しつつ攪拌しながら反応容器内を80℃に昇温した。昇温後、下記組成の単量体乳化液(1F)の6部を反応容器に添加し、その後過硫酸アンモニウム6部と重亜硫酸ナトリウム6部を添加し重合を開始した。反応容器内温度を60℃で10分間保持した後、残りの単量体乳化液(1F)を594部と、下記の重合開始剤水溶液(2F)をそれぞれ反応容器内に同時に滴下し重合を行った。滴下時間は単量体乳化液(1F)が4時間、重合開始剤水溶液(2F)が4.5時間であり、反応容器内温度を60℃に保持しながら重合を完結させた。重合終了後、アンモニア水でpHを調整し、固形分50%、pH7、ゲル分率98%のアクリル系共重合体のエマルジョン(6)を得た。
【0125】
単量体乳化液(1F)の組成
ブチルアクリレート ;245部
エチルアクリレート ;196部
アクリルアミド ; 24部
メタクリル酸 ;7.5部
イタコン酸 ;5.0部
γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン;2.5部
ニューコール707SF[日本乳化剤(株)製] ; 10部
イオン交換水 ;100部
重合開始剤水溶液(2F)の組成
過硫酸アンモニウム ; 1部
イオン交換水 ; 59部
重亜硫酸ナトリウム ; 1部
イオン交換水 ; 59部
【0126】
(実施例11
不織布に固着させるアクリル系共重合体を、以下の製造例にて得られるアクリル系共重合体とした以外は(実施例5)と同様にして両面粘着テープを調整した。
【0127】
撹拌装置を備えた重合容器に、イオン交換水280部を仕込み、窒素ガスを送入しつつ攪拌しながら反応容器内を80℃に昇温した。昇温後、下記組成の単量体乳化液(1G)の6部を反応容器に添加し、その後過硫酸アンモニウム6部と重亜硫酸ナトリウム6部を添加し重合を開始した。反応容器内温度を60℃で10分間保持した後、残りの単量体乳化液(1G)を594部と、下記の重合開始剤水溶液(2G)をそれぞれ反応容器内に同時に滴下し重合を行った。滴下時間は単量体乳化液(1G)が4時間、重合開始剤水溶液(2G)が4.5時間であり、反応容器内温度を60℃に保持しながら重合を完結させた。重合終了後、アンモニア水でpHを調整し、固形分50%、pH7、ゲル分率98%のアクリル系共重合体のエマルジョン(7)を得た。
【0128】
単量体乳化液(1G)の組成
ブチルアクリレート ;199部
エチルアクリレート ;198部
アクリルアミド ; 40部
メタクリル酸 ; 40部
イタコン酸 ; 10部
γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン;3.0部
ニューコール707SF[日本乳化剤(株)製] ; 10部
イオン交換水 ;100部
重合開始剤水溶液(2G)の組成
過硫酸アンモニウム ; 1部
イオン交換水 ; 59部
重亜硫酸ナトリウム ; 1部
イオン交換水 ; 59部
【0129】
(実施例12
以下の製造例にて得られるアクリル系粘着剤を使用すること以外は(実施例5)と同様にして両面粘着テープを調整した。
【0130】
<アクリル系粘着剤組成物の調整>
冷却管、撹拌機、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器にn−ブチルアクリレート96部、N−ビニルピロリドン2.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.5部、アクリル酸1.0部と重合開始剤として2,2‘−アゾビスイソブチルニトリル0.2部とを酢酸エチル100部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して粘着剤溶液を得た。
【0131】
前記粘着剤溶液の固形分100部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、コロネートL−45)2.0部、不均下ロジングリセリンエステル(軟化点100℃)10部、重合ロジンペンタエリスリトールエステル(軟化点128℃)10部を配合し、酢酸エチルで混合液の固形分を40%に調整することにより、溶剤型アクリル系粘着剤組成物を得た。
【0132】
得られた両面粘着テープの粘着剤層の30℃における貯蔵弾性率は7.5×10Paであり、ゲル分率は33%、正接損失のピーク値(tanδ)は−12℃であった。
【0133】
(実施例13
以下の製造例にて得られるアクリル系粘着剤を使用すること以外は(実施例5)と同様にして両面粘着テープを調整した。
【0134】
<アクリル系粘着剤組成物の調整>
容器に脱イオン水75gと界面活性剤アクアロンKH−1025[第一工業製薬(株)製;有効成分25%]20gと界面活性剤ラテムルPD−104[花王(株)製;有効成分20%]37.5gを入れ、均一に溶解した。そこに、2−エチルヘキシルアクリレート450g、n−ブチルアクリレート5g、メチルメタクリレート25g、N−ビニルピロリドン7.5g、アクリル酸[有効成分80%]15.63g、ラウリルメルカプタン0.2gを加えて乳化し、乳化液635.83gを得た。得られた乳化液を使用した以外は(実施例5)と同様にして、媒体が水性媒体であるエマルジョン型アクリル系粘着剤組成物を調整した。
【0135】
得られた両面粘着テープの粘着剤層の30℃における貯蔵弾性率は6.0×10Paであり、ゲル分率は34%、正接損失のピーク値(tanδ)は−19℃であった。
【0136】
(実施例14
以下の製造例にて得られるアクリル系粘着剤を使用すること以外は(実施例5)と同様にして両面粘着テープを調整した。
【0137】
<アクリル系粘着剤の製造>
容器に脱イオン水75gと界面活性剤アクアロンKH−1025[第一工業製薬(株)製;有効成分25%]20gと界面活性剤ラテムルPD−104[花王(株)製;有効成分20%]37.5gを入れ、均一に溶解した。そこに、2−エチルヘキシルアクリレート100g、n−ブチルアクリレート352.5g、メチルメタクリレート25g、N−ビニルピロリドン7.5g、アクリル酸[有効成分80%]18.75g、ラウリルメルカプタン0.2gを加えて乳化し、乳化液636.45gを得た。得られた乳化液を使用した以外は(実施例5)と同様にして、媒体が水性媒体であるアクリル系共重合体のエマルジョンを調整した。
【0138】
上記にて得られたアクリル系共重合体のエマルジョンを使用し、エマルジョン型ロジンフェノール系粘着付与樹脂タマノルE−200NT[荒川化学工業(株)製;軟化点150℃]固形分で100gを添加すること以外は(実施例5)と同様として媒体が水性媒体であるエマルジョン型アクリル系粘着剤組成物を調整した。
【0139】
得られた両面粘着テープの粘着剤層の30℃における貯蔵弾性率は1.0×10Paであり、ゲル分率は31%、正接損失のピーク値(tanδ)は−7℃であった。
【0140】
(比較例1)
不織布に固着させるアクリル系共重合体を、以下の製造例にて得られるアクリル系共重合体とした以外は(実施例1)と同様にして両面粘着テープを調整した。
【0141】
撹拌装置を備えた重合容器に、イオン交換水280部を仕込み、窒素ガスを送入しつつ攪拌しながら反応容器内を80℃に昇温した。昇温後、下記組成の単量体乳化液(1C)の6部を反応容器に添加し、その後過硫酸アンモニウム6部と重亜硫酸ナトリウム6部を添加し重合を開始した。反応容器内温度を60℃で10分間保持した後、残りの単量体乳化液(1C)を594部と、下記の重合開始剤水溶液(2C)をそれぞれ反応容器内に同時に滴下し重合を行った。滴下時間は単量体乳化液(1C)が4時間、重合開始剤水溶液(2C)が4.5時間であり、反応容器内温度を60℃に保持しながら重合を完結させた。重合終了後、アンモニア水でpHを調整し、固形分50%、pH7のアクリル系共重合体のエマルジョン(3)を得た。
【0142】
単量体乳化液(1C)の組成
エチルアクリレート ;427部
メチルメタクリレート ; 35部
メタクリル酸 ; 5部
イタコン酸 ;2.5部
アクリルアミド ; 20部
γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン;0.5部
ニューコール707SF[日本乳化剤(株)製] ; 10部
イオン交換水 ;100部
重合開始剤水溶液(2C)の組成
過硫酸アンモニウム ; 1部
イオン交換水 ; 59部
重亜硫酸ナトリウム ; 1部
イオン交換水 ; 59部
【0143】
(比較例2)
不織布に固着させるアクリル系共重合体を、以下の製造例にて得られるアクリル系共重合体とした以外は(実施例1)と同様にして両面粘着テープを得た。
【0144】
撹拌装置を備えた重合容器に、イオン交換水280部を仕込み、窒素ガスを送入しつつ攪拌しながら反応容器内を80℃に昇温した。昇温後、下記組成の単量体乳化液(1D)の6部を反応容器に添加し、その後過硫酸アンモニウム6部と重亜硫酸ナトリウム6部を添加し重合を開始した。反応容器内温度を60℃で10分間保持した後、残りの単量体乳化液(1D)を594部と、下記の重合開始剤水溶液(2D)をそれぞれ反応容器内に同時に滴下し重合を行った。滴下時間は単量体乳化液(1D)が4時間、重合開始剤水溶液(2D)が4.5時間であり、反応容器内温度を60℃に保持しながら重合を完結させた。重合終了後、アンモニア水でpHを調整し、固形分50%、pH7、ゲル分率88%のアクリル系共重合体のエマルジョン(4)を得た。
【0145】
単量体乳化液(1D)の組成
ブチルアクリレート ;292部
メチルメタクリレート ;185部
メタクリル酸 ; 11部
γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン; 2部
ニューコール707SF[日本乳化剤(株)製] ; 10部
イオン交換水 ;100部
重合開始剤水溶液(2D)の組成
過硫酸アンモニウム ; 1部
イオン交換水 ; 59部
重亜硫酸ナトリウム ; 1部
イオン交換水 ; 59部
【0146】
(比較例3)
不織布に固着させるアクリル系共重合体を、以下の製造例にて得られるアクリル系共重合体とした以外は(実施例1)と同様にして両面粘着テープを調整した。
【0147】
撹拌装置を備えた重合容器に、イオン交換水280部を仕込み、窒素ガスを送入しつつ攪拌しながら反応容器内を80℃に昇温した。昇温後、下記組成の単量体乳化液(1E)の6部を反応容器に添加し、その後過硫酸アンモニウム6部と重亜硫酸ナトリウム6部を添加し重合を開始した。反応容器内温度を60℃で10分間保持した後、残りの単量体乳化液(1E)を594部と、下記の重合開始剤水溶液(2E)をそれぞれ反応容器内に同時に滴下し重合を行った。滴下時間は単量体乳化液(1E)が4時間、重合開始剤水溶液(2E)が4.5時間であり、反応容器内温度を60℃に保持しながら重合を完結させた。重合終了後、アンモニア水でpHを調整し、固形分50%、pH7.0、ゲル分率90%のアクリル系共重合体のエマルジョン(5)を得た。
【0148】
単量体乳化液(1E)の組成
ブチルアクリレート ;170部
メチルメタクリレート ;278部
アクリルアミド ; 10部
メタクリル酸 ; 20部
γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン; 2部
ニューコール707SF[日本乳化剤(株)製] ; 20部
イオン交換水 ;100部
重合開始剤水溶液(2E)の組成
過硫酸アンモニウム ; 1部
イオン交換水 ; 59部
重亜硫酸ナトリウム ; 1部
イオン交換水 ; 59部
【0149】
(比較例4)
不織布にアクリル系共重合体を固着させない以外は(実施例1)と同様にして両面粘着テープを調整した。
【0150】
(比較例5)
以下の製造例にて得られるアクリル系粘着剤組成物を使用すること以外は(実施例14)と同様にして両面粘着テープを調整した。
【0151】
<アクリル系粘着剤組成物の調整>
容器に脱イオン水75gと界面活性剤アクアロンKH−1025[第一工業製薬(株)製;有効成分25%]20gと界面活性剤ラテムルPD−104[花王(株)製;有効成分20%]37.5gを入れ、均一に溶解した。そこに、n−ブチルアクリレート454.5g、メチルメタクリレート25g、N−ビニルピロリドン0.5g、アクリル酸[有効成分80%]25g、ラウリルメルカプタン0.2gを加えて乳化し、乳化液637.7gを得た。得られた乳化液を使用した以外は、(実施例14)と同様にして、エマルジョン型アクリル系粘着剤組成物を調整した。
【0152】
得られた両面粘着テープの粘着剤層の30℃における貯蔵弾性率は1.6×10Paであり、ゲル分率は35%、正接損失のピーク値(tanδ)は−12℃であった。
【0153】
前述の不織布基材、アクリル系共重合体のエマルジョン及び実施例1〜14、比較例1〜5、参考例1〜2で得られた両面粘着テープについて、以下の評価を行った。得られた結果を表1〜3に示す。
【0154】
(アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)の測定)
前述のアクリル系共重合体エマルジョンを乾燥後の膜厚が0.7mmとなるようにガラス板に塗工し、40℃で8時間乾燥した後、生成した被膜をガラス板から剥離し、更に140℃で5分間乾燥して試料片を得た。直径5mm、深さ2mmのアルミニウム製円筒型セルに試料片約10mgを秤取し、TAインスツルメント社製のDSC−2920モジュレイテッド型示差走査型熱量計を用いて、−50℃から昇温速度20℃/分で150℃まで昇温した時の吸熱曲線を測定し、図1におけるTを求め、これをアクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)とした。
【0155】
(不織布基材及び両面粘着テープの引張強さの測定)
不織布基材及び両面テープサンプルを、20mm幅で票線長さが100mmとなるように切断し、テンシロン引張試験機を用い、23℃・50%RHの環境下、引張速度300mm/minにて最大強度を測定した。測定は、MD方向およびTD方向で実施した。
【0156】
(不織布基材の引裂強さの測定)
不織布基材を、JIS−P−8116に準拠し、エレメンドルフ型試験器(株式会社 安田精機製作所製)を用いて引裂強さを測定した。測定は、MD方向およびTD方向で実施した。
【0157】
(不織布基材の層間強さの測定)
25mm幅×150mm長の不織布基材の両面に、24mm幅のセロハンテープ(ニチバン社製CT405AP−24)を、セロハンテープの長さが不織布より長めになるように貼付した。上記サンプルの両端を切り落とし、15mm幅×150mm長に調整したサンプルの一端からセロハンテープを剥がし、不織布層間を約30mm剥がした状態に準備した。このサンプルを、23℃、50%RHの環境下で、オリエンテック製テンシロンRTA−100を用い、サンプルつかみ間隔20mmとして上記サンプルをチャックに挟み、引張速度100mm/分、測定距離50mmにより得た積分平均荷重を読み取り、層間強度を算出した。測定は、MD方向およびTD方向で実施した。
【0158】
(動的粘弾性の測定)
両面粘着テープを粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:アレス2KSTD)を用いて、平行円盤形の測定部に試験片を挟み込み、周波数1Hzで−50℃から150℃までの貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)を測定し、30℃での貯蔵弾性率と粘着剤層の損失正接のピーク値を確認した。損失正接tanδは、以下の計算式より算出した。試験片は、各実施例及び比較例の粘着シートを複数枚重ねて、基材の厚さを除いた実質的な粘着剤の厚みが0.65mmとなるように積層させて作製した。
損失正接tanδ=G”/G’
【0159】
(粘着力の測定)
両面粘着テープを厚さ25μmのPETフィルムで裏打ちし、20mm幅×100mm長に切断することにより両面粘着テープサンプルを調整した。次いで、ステンレス板を被着体とし、23℃・50%の環境下、2kgローラーにて1往復の加圧貼付を行い、1時間静置した。その後、両面粘着テープサンプルを180度方向に300m/minの速度で引き剥がした際の粘着力を測定した。尚、粘着力の測定は、JIS−Z−0237に準拠して測定を実施した。
【0160】
(再剥離性の評価)
両面粘着テープを厚さ25μmのPETフィルムで裏打ちし、20mm幅×100mm長に切断することにより両面粘着テープサンプルを調整した。次いで、ステンレス板、及びABS板を被着体とし、23℃・50%の環境下、2kgローラーにて1往復の加圧貼付を行い、60℃の環境下で12日間静置した。その後、23℃・50%RHの環境下で1時間静置し、両面粘着テープサンプルを135度方向に1m/min及び20m/minの速度で引き剥がした際の再剥離性を評価した。尚、再剥離性の評価は以下の基準で行った。
◎:被着体への糊残り及び不織布の切断が発生しなかった。
○:僅かに、被着体への糊残りまたは不織布の切断が発生したが、実用上問題のないレベルであった。
○△:○より劣る結果であったが、実用上問題のないレベルであった。
△:被着体への糊残りまたは不織布の切断が発生した。
×:被着体への糊残りまたは不織布の切断が顕著に発生した。
【0161】
【表1】

【0162】
【表2】

【0163】

【0164】
表1の実施例及び比較例から明らかなように、本願発明の両面粘着テープは、良好な粘着力と再剥離性とを兼備するものであった。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】不織布に固着させるアクリル系共重合体のガラス転移温度を算出するための示唆走査熱量計による吸熱曲線測定図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布基材と、アクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層とを有する両面粘着テープであって、
前記不織布基材が、MD方向及びTD方向の引張強さが共に5〜45N/20mmの不織布に、ガラス転移温度が−10℃以下のアクリル系共重合体エマルジョンを不織布質量に対して3〜30質量%固着した不織布基材であり、
前記アクリル系粘着剤組成物が、2−エチルヘキシルアクリレート、窒素含有ビニルモノマー及びカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーをモノマー成分として含有するアクリル系共重合体のエマルジョン粒子が水性媒体中に分散した水分散型のエマルジョン型アクリル系粘着剤組成物であり、
前記粘着剤層の周波数1Hzにおける30℃の貯蔵弾性率が、6×10〜1×10Paであることを特徴とする両面粘着テープ。
【請求項2】
前記不織布への、ガラス転移温度が−10℃以下のアクリル系共重合体エマルジョンの固着量が、不織布質量に対して5〜25質量%である請求項1に記載の両面粘着テープ。
【請求項3】
前記2−エチルヘキシルアクリレートの含有量が、水分散型アクリル系粘着剤組成物に使用するアクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の20〜90質量%である請求項1又は2に記載の両面粘着テープ。
【請求項4】
前記窒素含有ビニルモノマーが、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリルアミド及びN,N−ジメチルアクリルアミドから選ばれる少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載の両面粘着テープ。
【請求項5】
前記窒素含有ビニルモノマーの含有量が、水分散型アクリル系粘着剤組成物に使用するアクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の0.1〜5.0質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の両面粘着テープ。
【請求項6】
前記カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、無水フタル酸及びクロトン酸から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜5のいずれかに記載の両面粘着テープ。
【請求項7】
前記カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーの含有量が、水分散型アクリル系粘着剤組成物に使用するアクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の0.5〜5.0質量%である請求項1〜6のいずれかに記載の両面粘着テープ。
【請求項8】
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物に使用するアクリル系共重合体を構成するモノマー成分中の窒素含有ビニルモノマーのモル数をX、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーのモル数をYとした際のモル比X/Yが、1/1〜1/10である請求項1〜7のいずれかに記載の両面粘着テープ。
【請求項9】
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物に使用するアクリル系共重合体が、n−ブチルアクリレートをモノマー成分として含有する請求項1〜8のいずれかに記載の両面粘着テープ。
【請求項10】
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物に使用するアクリル系共重合体が、メチルメタアクリレート、エチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート及びシクロヘキシルメタアクリレートから選ばれる少なくとも一種をモノマー成分として含有する請求項9に記載の両面粘着テープ。
【請求項11】
前記不織布基材の引裂強さが、1N以上である請求項1〜11のいずれかに記載の両面粘着テープ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−265483(P2010−265483A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193764(P2010−193764)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【分割の表示】特願2009−531187(P2009−531187)の分割
【原出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】