説明

並列の定格電流経路を備えたサーキット・ブレーカ

【課題】増大された電流伝送能力を有するのみではなく、スイッチが閉じられまた開かれるときの、定格電流接触子により作られる接触をも改善する、サーキット・ブレーカを提供する。
【解決手段】スイッチの長手方向軸Aに沿って移動されることが可能である二つの接触機構は、アーク接触子システム12、及びそれに対して電気的に並列に接続された定格電流接触子システム9を形成し、ここで、接触機構の内の一つは、定格電流接触子システム9、内側定格電流接触子6及び外側定格電流接触子7を有していて、内側定格電流接触子6は、長手方向軸Aの方向に、外側定格電流接触子7の上に張り出し、外側定格電流接触子7は、内側定格電流接触子6の周りを同軸状に取り囲んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中電圧及び高電圧技術の分野に係り、特に、中電圧及び高電圧領域における大電流伝送能力を備えたサーキット・ブレーカに係る。
【背景技術】
【0002】
例として、冒頭に挙げたタイプのサーキット・ブレーカが、DE 3341903 A1 から知られている。この既知のサーキット・ブレーカは、互いに対して移動するスイッチング片を有していて、それらのアーク接触子及び定格電流接触子は、スイッチの共通の長手方向軸に沿って移動される。スイッチング・オンの動作の間に、可動アーク接触子が固定アーク接触子の中に移動される。可動スイッチング片の全ての定格電流接触子は、フィンガーの形態であって、アーク接触子に対して同軸状に且つそれから同一の距離を隔てて配置されている。定格電流接触フィンガーの一部は、長手方向軸の方向で、他方の定格電流接触フィンガーの前に配置されている。
【0003】
スイッチング・オンの動作の間に、フィンガーの形態の定格電流接触子は、円筒状のスイッチング片の形態の対向する定格電流接触子の上に移動し、電流が、先ず最初に、既に閉じられたアーク接触子を通って、前側の定格電流接触フィンガーの上に伝えられ、次いで、他方の、より短い定格電流接触フィンガーの上に伝えられる。この目的のために、前側の定格電流接触フィンガーは、アーク抵抗であるようにデザインされている。
【0004】
定格電流接触子システムが閉じられているとき、フィンガーの形態の全ての定格電流接触子が、内部の対向する定格電流接触片の上に機械的な圧力を及ぼす。この圧力は、定格電流接触子の中を流れる電流の結果として発生する電磁力により、更に増大される。これは、高い圧力をもたらし、それにより、最終的に、接触を形成する定格電流接触子の間での高いトータルの摩擦力をもたらす。この摩擦力は、スイッチの開放及び閉鎖フェーズの間に、駆動機構によって打ち勝たれなければならない。
【0005】
このスイッチ及びその他のスイッチにおいて、外側定格電流接触フィンガーを介して、それに対向する定格電流接触子に流れる電流が、電磁力を生じさせ、この電磁力は、短絡の場合に、スイッチの上に発生する機械的な摩擦力を上回る可能性があり、それによって、スイッチの開放及び閉鎖の動作を不可能にする可能性がある。
【0006】
この及びその他のサーキット・ブレーカにおいて、スイッチの定格電流接触子の電流伝送能力及び接触子特性は、特にスイッチ内での短絡の場合に、改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第DE3341903A1号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、それ故に、増大された電流伝送能力を有するのみではなく、スイッチが閉じられまた開かれるときの、定格電流接触子により作られる接触をも改善する、サーキット・ブレーカを提供することにある。
【0009】
この目的は、独立請求項の特徴を有する装置及び方法により実現される。
【0010】
本発明に基づくサーキット・ブレーカは、好ましくは、クエンチング・ガスで満たされることが可能であり、二つの接触機構を含んでいて、それらは、互いに対して且つスイッチの長手方向軸に沿って、移動されることが可能である。接触機構は、アーク接触子システム及び定格電流接触子システムを有していて、定格電流接触子システムは、アーク接触子システムに対して電気的に並列に接続されている。アークが、アーク接触子システムの中で、アーク接触子の間に発生することがある。二つの接触機構の内の一つは、内側定格電流接触子及び外側定格電流接触子を有していて、ここで、内側定格電流接触子は、長手方向軸の方向で、外側定格電流接触子の前に配置されている。即ち、内側の接触子は、スイッチの長手方向に沿って、外側接触子の上に張り出している。スイッチの閉鎖の動作の間に、それ故に、内側定格電流接触子が、外側定格電流接触子に先行して、接触する。
【0011】
これが、スイッチング・オン・プロセスの間には、短絡の場合に、アーク接触子から内側定格電流接触子のみへ、短絡電流が伝えられることをもたらし、且つ、スイッチング・オフ・プロセスの間には、内側定格電流接触子からアーク接触子のみの上に、電流が伝えられることをもたらすので、短絡の場合に、電流により引き起こされる磨耗が、内側定格電流接触子の上のみで発生し、外側定格電流接触子の上では防止される。それ故に、スイッチの機能性が改善され、特に、短絡が発生した後において、改善される。
【0012】
外側定格電流接触子は、リングの形態で構成され、且つ、内側定格電流接触子の周りを同軸状に取り囲んでいる。内側定格電流接触子は、次に、アーク接触子システムの周りにリングの形態で構成されている。外側定格電流接触子の中での、更なる内側定格電流接触子の配置は、トータルの利用可能な定格電流接触子領域が拡大されることをもたらし、それは、スイッチの体積を変えることなく、より大きな電流伝送能力を有するスイッチをもたらす。
【0013】
これと、アーク接触子システムまたは補助的な接触子システム(例えば、スイッチング・オン抵抗を有している)との間を識別するために、サーキット・ブレーカの定格電流接触子システムは、この場合に、相対的に最も低い電気抵抗を有していて、スイッチの中に流入する定格電流を恒久的に伝送するようにデザインされた接触子システムを意味している。
【0014】
実施形態において、内側定格電流接触子(内側でリングの形態で構成されている)の周りでの、外側定格電流接触子の同軸配置は、内側定格電流接触子と外側定格電流接触子の間に、環状の間隙を形成し、スイッチが閉じられるとき、この間隙の中に対向する定格電流接触子が移動される。対向する定格電流接触子は、それ故に、形成された環状の間隙の中で、内側定格電流接触子と外側定格電流接触子の間にクランプされ、それにより、内側定格電流接触子及び外側定格電流接触子の両方と接触する。
【0015】
内側定格電流接触子と外側定格電流接触子の間での電流の分割は、好ましい。その理由は、これは、電流の全てが外側定格電流接触子を介して流れることが無い、と言うことを意味していて、それにより、外側接触子を通る電流により引き起こされる電磁力を減少させるからであり。電磁力は、外側接触子により減少された電流のために減少され、接触がなされる対向する定格電流接触子上での接触圧力を減少させ、それ故に、スイッチの中で短絡が発生した時に、接触機構の動作の間で、定格電流接触子と対向する定格電流接触子との間に働く摩擦力を減少させる。
【0016】
実施形態において、アーク接触子システムは、二つの移動可能な、中空円筒形のアーク接触子を有していて、これらのアーク接触子は、スイッチが閉じた状態にあるとき、それらの端面に接触する。端面または端部表面とは、中空円筒形のアーク接触子の包絡面の境界を定める表面を意味している。アーク接触子が端面で接触することが、接触子が重複する接触子システムと比較して、好ましいと言うことが見出されている。その理由は、スイッチ駆動機構が、重複により引き起こされる摩擦力に打ち勝つ必要が無いからである。
【0017】
高電圧または中電圧領域のための電気的なサーキット・ブレーカであって、アーク接触子を備えたアーク接触子システム及びそれに対して電気的に並列に接続された定格電流接触子システムを形成する二つの接触機構を有しているサーキット・ブレーカをオン状態にするための、本発明に基づく方法は、以下の工程を有している:
両方の接触機構が、互いに対して、互いの方向へ、且つスイッチの長手方向軸に沿って、移動する。スイッチング・オンの動作の第一のフェーズの間に、アーク接触子システムの両方のアーク接触子がそれらの端面で互いに接触する。これは、端部表面が互いに対して接触し、両方のアーク接触子が中空円筒の形態であると言うことを意味している。アーク接触子が電気的な接触をすると、更なるフェーズにおいて、定格電流接触子システムの定格電流接触子が、互いに接触する。
【0018】
この更なるフェーズの特徴は、長手方向軸の方向に外側定格電流接触子の上に張り出す内側定格電流接触子が、対向する定格電流接触子と最初に接触し、この接触がなされた後でのみ、外側定格電流接触子が、この対向する定格電流接触子と接触することにある。この場合において、内側定格電流接触子は、外側定格電流接触子により同軸状に取り囲まれている。
【0019】
内側及び外側定格電流接触子の、このシ−ケンシャルな接触形成プロセスは、接触がなされたとき、外側定格電流接触子(後で接触する)が、流れる電流により磨耗されることが無い、と言うことを確保する。スイッチング・オン・フェーズの間に、内側定格電流接触子が最初に接触するので、接触がなされて電流が流れた瞬間に、電磁力が作り出され、その力が対向する定格電流接触子と内側定格電流接触子との間の圧力に対抗するように、その力が向けられる。これは、スイッチ移動の間に発生し、スイッチ駆動機構により打ち勝たれなければならない摩擦力を減少させる。それ故に、スイッチング・オン及びスイッチング・オフ・プロセスの間の接触形成のプロセスが改善され、特に、短絡の場合に改善される。
【0020】
これらのようなサーキット・ブレーカは、発電機スイッチとして使用され、例えば、複数の風力設備を備えたウインド・ファームを電力供給グリッドから完全に切断するため、及び、このようなウインド・ファームを電力供給グリッドに接続するために、使用される。
【0021】
更に好ましい実施形態及び有利な効果は、従属請求項及び図から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明に基づいてデザインされたサーキット・ブレーカの、長手方向の断面の図を示していて、この図の中で、図の左半分には、オフ状態の位置にあるスイッチが示され、図の右半分には、オン状態の位置にあるスイッチが示されている。
【図2a】図2a〜dは、本発明に基づいてデザインされたサーキット・ブレーカの、長手方向の断面の図であって、オフ状態の位置からオン状態の位置までの、異なるスイッチ状態を示していて、図2aは、“オフ”スイッチ位置のスイッチを示している。
【図2b】図2bは、“アーク接触子システムが接触状態にある”スイッチ位置のスイッチを示している。
【図2c】図2cは、“内側定格電流接触子が接触状態にある”スイッチ位置のスイッチを示している。
【図2d】図2dは、“オン”スイッチ位置のスイッチを示している。
【図3】図3は、スイッチのスイッチング・オンの動作の間に、内側定格電流接触フィンガー及び外側定格電流接触フィンガーが、対向する定格電流接触子と接触する結果として、定格電流接触子システムに作用する力の時間的変化の形状を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の主題が、好ましい例示的な実施形態を参照しながら、以下のテクストにおいてより詳細に説明される。これらの実施形態は、添付図面の中に概略的に示されている。
【0024】
これらの図面の中で使用されている参照符号及びそれらの意味は、参照符号のリストの中に、まとめられた形態で示されている。これらの図において、原則として、同一の部分または同一の効果を有する部分には、同一または同様な参照符号が付されている。一部の場合において、本発明の理解のために本質的でない部分は、示されていない。ここに示された例示的な実施形態は、本発明の主題の例を表していて、本発明を限定する効果を有していない。
【0025】
図1は、本発明に基づくサーキット・ブレーカ1の詳細を示していて、このサーキット・ブレーカは、発電機スイッチの形態であって、典型的な定格電圧24kV、公称電流6300アンペア、及び公称周波数50/60ヘルツのためにデザインされている。このサーキット・ブレーカ1は、中空円筒形の絶縁体2を有していて、この絶縁体は、電源接続3,4の間に、気密状態で取り付けられている。図1の左半分部分は、開いた状態にあるスイッチ1を示し、図の右半分部分は、閉じた状態にあるスイッチ1を示している。
【0026】
このサーキット・ブレーカ2は、二つの接触機構を有していて、両方とも、絶縁体2及び二つの電源接続3,4により境界を定められたスイッチング・チャンバ・ボリューム5の中に配置され、且つ、スイッチ1がオン状態及びオフ状態にあることを可能にするために、スイッチ1の長手方向軸Aに沿って、互いに対して移動することが可能である。二つの接触機構は、アーク接触子システム12を有していて、これらのアーク接触子システムは、定格電流接触子システム9により同軸状に取り囲まれている。アーク接触子システム12は、アーク接触子10及び11を有していて、ここで、定格電流接触子システム9は、内側定格電流接触子6、外側定格電流接触子7、及び対向する定格電流接触子8を有している。
【0027】
二つの接触機構の内の一方は、アーク接触子10を有している、このアーク接触子は、中空円筒の形態であって、スイッチの長手方向軸Aに沿って配置されている。同様に、アーク接触子11の周りを取り囲む定格電流接触子8も、スイッチの長手方向軸Aに沿って配置されている。定格電流接触子8も、同様に円筒状である。絶縁ノズル13が、クエンチング・ガスの流れ(例えば、6弗化硫黄(SF)の流れ)をガイドするために、定格電流接触子8とアーク接触子11の間に配置され、この絶縁ノズル13は、長手方向軸Aの方向に、定格電流接触子8及びアーク接触子11の上に張り出している。
【0028】
加熱チャネル18が、絶縁ノズル13とアーク接触子11の間に形成され、加熱ボリューム16の中に開口している。加熱ボリューム16(定格電流接触子8により本質的に境界を定められている)、絶縁ノズル13及びアーク接触子11は、バルブ19を介して、スイッチ1の中の圧縮ボリューム17に接続されている。
【0029】
二つの接触機構の他方は、アーク接触子10を有していて、このアーク接触子は、スイッチング・チャンバ・ボリューム5、内側定格電流接触子6、及び外側定格電流接触子7の中に配置されている。中空円筒形のアーク接触子10は、長手方向軸Aに沿って、スプリング14の力に抗して移動されることが可能であり、且つ、管状部分20の中のスプリング14によりガイドされ、この管状部分は、吹出しボリューム13の中に開口している。クエンチング・ガスは、それ故に、中空のアーク接触子10を通って、吹出しボリューム13の中へ逃れることが可能である。内側定格電流接触子6は、弾性的な接触フィンガーの形態であって、接触フィンガーのリング22を形成し、これらの接触フィンガーの周りに同軸状に、外側定格電流接触子7が配置され、これらの接触フィンガーも、同様に、弾性的な接触フィンガーの形態であって、同様に、接触フィンガーのリング23を形成している。
【0030】
内側定格電流接触子6の周りでの、外側定格電流接触子7の同軸配置は、以下のような優位性を有している。即ち、このデザインは、定格電流接触フィンガーの数を増大させることを可能にして、それにより、スイッチ1の上の有効接触子領域を拡大し、それが、次に、サーキット・ブレーカ1の電流伝送能力を増大させるが、その過程で、サーキット・ブレーカ1の直径または体積を増大させる必要が無い。それにより、スイッチの単位体積当り伝送される電流密度が増大されることが可能になる。
【0031】
内側定格電流接触子6により形成されるリング22、及び外側定格電流接触子7により形成されるリング23の両方は、スイッチ1の中の、定格電流接触子支持ボディ21にしっかり接続されている。この目的のために、リング22及びリング23は、定格電流接触子支持ボディ21にネジで固定され、これにより、内側定格電流接触子6及び外側定格電流接触子7が容易に交換されることを可能にする。
【0032】
図1に示されているように、内側定格電流接触子6は、長手方向軸Aの方向に、外側定格電流接触子7の上に張り出していて、それ故に、外側定格電流接触子7の前に配置されている。内側定格電流接触子6及び外側定格電流接触子7は、導電性を有して、互いに対して接続されている。
【0033】
図2aから図2dまでは、図1に示されたサーキット・ブレーカ1の、様々なスイッチング状態を示している。例えば、図2aは、“オフ”スイッチ位置のスイッチ1を示している。図2bは、“アーク接触子システムが接触状態にある”スイッチ位置のスイッチ1を示している。図2cは、“内側定格電流接触子が接触状態にある”スイッチ位置のスイッチ1を示している。最後に、図2dは、“オン”スイッチ位置のスイッチ1を示している。
【0034】
スイッチ1のスイッチング・オンの動作の間に、アーク接触子11は、定格電流接触子8とともに及び絶縁ノズル13とともに、内側定格電流接触子6及び外側定格電流接触子7、及びアーク接触子10の方へ、長手方向軸Aの方向に、移動され、それらが接近するときに、アークがアーク接触子10とアーク接触子11の間に形成される。このアークは、“アーク接触子システムが接触状態にある”スイッチ位置(図2bに示されている)が到達され、二つのアーク接触子10及び11の二つのヘッドの表面が接触し、それにより、導電性の接触がなされるまで、継続する。それ故に、このスイッチ状態においては、電流の全てが、スイッチ1のアーク接触子システム12を介して流れる。
【0035】
数ミリ秒の後、サーキット・ブレーカ1は、“内側定格電流接触子が接触状態にある”スイッチ位置(図2cに示されている)となる。接触の形成は、内側定格電流接触子6と反対側の定格電流接触子8の間の、第一の物理的な接触の瞬間により規定される。中空円筒の形態の定格電流接触子8の内径に対する、内側の弾性的な定格電流接触子6から形成されるリング22の外径は、定格電流接触子8が、接触力に打ち勝ちながら、定格電流接触子6の上に押されるように選択される。それによって、中空円筒の形態の定格電流接触子8の内側が、定格電流接触子6から形成されるリング23の外側と重複し且つそれに接触することになる。
【0036】
定格電流接触子システム9の中の電気抵抗が、アーク接触子システム12の電気抵抗と比べて遥かに低いので、電流が、アーク接触子システム12から、定格電流接触子システム9の上に伝えられ、その結果として、スイッチ1の中に流入する電流は、この瞬間に、定格電流接触子システム9及びそれに対して電気的に且つ並列に接続されたアーク接触子システム12により運ばれる。同時に、このアーク接触子10が、スプリング14のスプリング力に抗して押され、アーク接触子11が接触する時のアーク接触子11のスイッチング・オンの動作が、アーク接触子11を、吹出しボリューム16の方向に押す。
【0037】
スイッチング・オンの動作の間に、定格電流接触子8(示されていない駆動機構により駆動される)は、内側定格電流接触子6及び外側定格電流接触子7の方へ、更に移動する。これは、図2dに示されているように、“オン”スイッチ位置が到達されることをもたらす。この場合には、中空円筒の形態の定格電流接触子8の外径に対する、外側弾性的な定格電流接触子7から形成されるリング23の内径は、内側定格電流接触子6が、更なる接触力に打ち勝ちながら、定格電流接触子8の上に押されるように選択され、その結果として、定格電流接触子6から形成されるリング22の内側が、中空円筒の形態の定格電流接触子8の外側に重複し且つ接触することになる。それ故に、定格電流接触子8が、内側定格電流接触子6及び外側定格電流接触子7により加えられる接触力により、内側定格電流接触子6及び外側定格電流接触子7の間にクランプされる。
【0038】
内側定格電流接触子6の電気抵抗と外側定格電流接触子7の電気抵抗が同一なので、スイッチ1の中の電流が、内側定格電流接触子6と外側定格電流接触子7との間で、本質的に分割される。この場合には、外側定格電流接触子7から形成される接触子のリング23は、全電流の約65%を運び、これに対して、内側定格電流接触子6から形成されるリング22は、電流の約35%を運ぶ。
【0039】
“オン”スイッチ位置において、アーク接触子10及び11により形成される電流経路は、内側定格電流接触子6と対向する定格電流接触子8により形成される電流経路に対して、電気的に並列であり、また、外側定格電流接触子7と対向する定格電流接触子8により形成される電流経路に対して並列である。定格電流接触子システム9の電気抵抗は、アーク接触子システム12の電気抵抗と比べて実質的に小さいので、アーク接触子10,11を通る電流は、無視し得る程に小さい。
【0040】
図3に示された図は、内側定格電流接触子6及び外側定格電流接触子7の上に作用する力を、定性的に示し、また、定格電流接触子システム9の上にこれからもたらされる摩擦力FRを示していて、この摩擦力は、接触機構のスイッチング・オンの移動を確保するために、駆動機構により打ち勝たれなければならない。一方では、摩擦力(示されていない)が、スイッチング・オンの動作に抗して、長手方向軸Aの方向に働き、この摩擦力は、定格電流接触子8の上で摺動する内側定格電流接触子6及び外側定格電流接触子7により引き起こされる。他方では、電磁力が発生し、この電磁力は、スイッチング・オンの方向に対して垂直方向に働く。この電磁力は、内側定格電流接触子6及び外側定格電流接触子7の中の電流により引き起こされる。スイッチ1の中の増大する電流はまた、外側定格電流接触子7と対向する定格電流接触子8の間の接触力の増大をもたらす。
【0041】
図2aに示されているように、時間t0に、スイッチ1は“オフ”スイッチ状態にある。接触機構を通る電流が妨げられ、作用する力の合計はゼロである。スイッチング・オンの動作の間に、この後、時間t1にアーク接触子システム12が閉じられ、二つのアーク接触子10,11が接触し(図2b)、図2cに示されているように、“内側定格電流接触子が接触状態にある”スイッチ状態通って移動する。この場合には、減少された電磁力FIの結果として、摩擦力が、対向する定格電流接触子8と内側定格電流接触子6の間に、定格電流接触子システム9の上で発生する。力FIは、内側定格電流接触子6の中の電流により引き起こされる。この電磁力FIは、定格電流接触子8と内側定格電流接触子6の間の圧力に対抗する。
【0042】
電流が内側定格電流接触子6通って流れた瞬間に、定格電流接触子8と内側定格電流接触子6の間の圧力、従ってその結果として生ずる摩擦力FRが減少される。電流が内側定格電流接触子6の中を通って流れるときの、結果として生ずる摩擦力FRは、それ故に、電流が流れていないときに発生する摩擦力と比べて小さい。
【0043】
スイッチ1の閉鎖の動作が更に進行すると、図2dに示された“オン”スイッチ位置が、時間t2に到達され、その後で、摩擦力が、更に発生し、この摩擦力は、 定格電流接触子8と外側定格電流接触子7の間に形成される接触により引き起こされる。同時に、電流の一部が、内側定格電流接触子6から、外側定格電流接触子7の上に伝えられ、この伝送は、一方においては、内側定格電流接触子6の上の電磁力FIの減少をもたらし、それと同時に、外側定格電流接触子7に作用する電磁力FAをもたらし、これらの接触子7の上での圧力を増大させる。
【0044】
それ故に、時間t2から、これは、その結果生ずる摩擦力FRをもたらし、この摩擦力は、対向する定格電流接触子8の上での内側定格電流接触子6及び外側定格電流接触子7の圧力、及び、内側定格電流接触子6の中の電流により引き起こされる電磁力FIの成分(摩擦力FRを減少させる)、並びに、外側定格電流接触子7の中に流入する電流により引き起こされる電磁力FAの成分(摩擦力FRを増大させる)を有している。
【0045】
電流は、約65%が外側定格電流接触子7を介して流れ、約35%が内側定格電流接触子6を介して流れるように、定格電流接触子6,7の間で分割される。外側定格電流接触子7に加えて、内側定格電流接触子6が存在することは、このようにして、内部の対向する定格電流接触子の上に外側から作用する定格電流接触子のみを有しているサーキット・ブレーカの中で発生する力と比較して、接触子に作用する摩擦力を減少させる。
【符号の説明】
【0046】
1・・・サーキット・ブレーカ、2・・・絶縁体、3,4・・・電源接続、5・・・スイッチング・チャンバ・ボリューム、6・・・内側定格電流接触子、7・・・外側定格電流接触子、8・・・対向する接触片として働く定格電流接触子;対向する定格電流接触子、9・・・定格電流接触子システム、10・・・アーク接触子、11・・・アーク接触子、12・・・アーク接触子システム、13・・・絶縁ノズル、14・・・スプリング、15・・・吹出しボリューム、16・・・加熱ボリューム、17・・・圧縮ボリューム、18・・・加熱チャネル、19・・・バルブ、20・・・管状部分、21・・・定格電流接触子支持ボディ、22・・・内側定格電流接触子のリング、23・・・外側定格電流接触子のリング、24・・・環状の間隙、A・・・長手方向軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエンチング・ガスで満たされることが可能であり、且つ二つの接触機構を有するサーキット・ブレーカ(1)であって、
これらの接触機構は、スイッチの長手方向軸(A)に沿って互いに対して移動されることが可能であり、且つ、アーク接触子システム(12)と、それに対して電気的に並列に接続された定格電流接触子システム(9)と、を有し、
定格電流接触子システム(9)は、最も低い電気抵抗を備えた接触子システムであって、且つ、当該サーキット・ブレーカの中に流入する定格電流を恒久的に伝送するようにデザインされている、
サーキット・ブレーカにおいて、
接触機構の内の一つが、定格電流接触子システム(9)の、内側定格電流接触子(6)及び外側定格電流接触子(7)を有し、内側定格電流接触子(6)は、長手方向軸(A)の方向に、外側定格電流接触子(7)の上に張り出し、他方、外側定格電流接触子(7)は、内側定格電流接触子(6)の周りを同軸状に取り囲んでいること、を特徴とするサーキット・ブレーカ。
【請求項2】
下記特徴を有する請求項1に記載のサーキット・ブレーカ:
当該サーキット・ブレーカが、オンの状態にあるとき、一方の接触機構の、内側定格電流接触子(6)及び外側定格電流接触子(7)が、他方の接触機構の中の、対向する定格電流接触子(8)と物理的に接触し、それにより、二つの平行な定格電流経路を形成する。
【請求項3】
下記特徴を有する請求項1または2に記載のサーキット・ブレーカ:
内側定格電流接触子(6)は、外側定格電流接触子(7)と同一の金属から構成され、且つ同一の電気抵抗を有している。
【請求項4】
下記特徴を有する請求項1から3の何れか1項に記載のサーキット・ブレーカ:
内側定格電流接触子(6)及び外側定格電流接触子(7)の両方は、弾性的な接触フィンガーの形態である。
【請求項5】
下記特徴を有する請求項4に記載のサーキット・ブレーカ:
スイッチがオンの状態にあるとき、接触力が、内側定格電流接触フィンガー(6)と外側定格電流接触フィンガー(7)の間に、働く。
【請求項6】
下記特徴を有する請求項5に記載のサーキット・ブレーカ:
スイッチがオンの状態にあるときに働く前記接触力は、スイッチ(1)の中の電流が増大するに従い、接触力が増大するように定められている。
【請求項7】
下記特徴を有する請求項2から6の何れか1項に記載のサーキット・ブレーカ:
前記対向する定格電流接触子(8)は、中空円筒の形態である。
【請求項8】
下記特徴を有する請求項2から7の何れか1項に記載のサーキット・ブレーカ:
リングの形態で構成された内側定格電流接触子(6)に対する、外側定格電流接触子(7)の同軸配置が、環状の間隙(24)を形成し、スイッチが閉じられるとき、この環状の間隙の中へ、前記対向する定格電流接触片(8)が移動する。
【請求項9】
下記特徴を有する請求項8に記載のサーキット・ブレーカ:
内側定格電流接触子(6)は、先ず最初に、前記対向する定格電流接触子(8)に接触する状態にされ、それに続いて、外側定格電流接触子(7)に接触する状態にされる。
【請求項10】
下記特徴を有する請求項1から9の何れか1項に記載のサーキット・ブレーカ:
内側定格電流接触フィンガー(6)及び外側定格電流接触フィンガー(7)は、それぞれ、ネジによる接続により、スイッチに取り付けられている。
【請求項11】
下記特徴を有する請求項1から10の何れか1項に記載のサーキット・ブレーカ:
前記アーク接触子システムは、二つの移動可能な、中空円筒形のアーク接触子(10,11)により形成され、当該サーキット・ブレーカがオンの状態にあるとき、これらのアーク接触子(10,11)が端面で接触する。
【請求項12】
二つの接触機構を有する、高電圧または中電圧のための、電気的なサーキット・ブレーカ(1)をオン状態にするための方法であって、
当該サーキット・ブレーカは、アーク接触子(10,11)及びそれに対して電気的に並列に接続された定格電流接触子システム(9)を備えたアーク接触子システム(12)を有し、且つ、この定格電流接触子システム(9)は、最も低い電気抵抗を備えた接触子システムであって、当該サーキット・ブレーカの中を流れる定格電流を恒久的に伝送するようにデザインされ、
当該方法は:
− スイッチの長手方向軸(A)に沿って、両方の接触機構を互いに対して移動させ、
− 第一のフェーズで、中空円筒の形態のアーク接触子(10)と、対向する接触子として働き且つ中空円筒の形態のアーク接触子(11)との間で、中空円筒の端面で接触させ、
− 後続するフェーズで、定格電流接触子システム(9)を用いて接触させる、
方法において、
対向する定格電流接触子(8)、内側定格電流接触子(6)及び外側定格電流接触子(7)を有する定格電流接触子システム(9)の中で、内側定格電流接触子(6)は、長手方向軸(A)の方向に、外側定格電流接触子(7)の上に張り出し、外側定格電流接触子(7)は、内側定格電流接触子(6)の周りを同軸状に取り囲み、
内側定格電流接触子(6)は、先ず最初に、対向する定格電流接触子(8)と接触し、それに続いて、外側定格電流接触子(7)と接触すること、を特徴とする方法。
【請求項13】
下記特徴を有する請求項12に記載の方法:
内側定格電流接触子(6)及び外側定格電流接触子(7)が、共通の対向する定格電流接触子(8)と接触することにより、二つの平行な定格電流経路が形成される。
【請求項14】
下記特徴を有する請求項12または13に記載の方法:
前記対向する定格電流接触片(8)は、外側定格電流接触子(7)の、リングの形態で構成された内側定格電流接触子(6)に対する同軸配置により形成される環状の間隙(24)の中に移動される。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−82168(P2011−82168A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−228021(P2010−228021)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(505063441)アーベーベー・テヒノロギー・アーゲー (96)
【Fターム(参考)】