説明

並列接続HTSFCLデバイス

超伝導電気ケーブルシステムが、既知の故障電流レベルを有する電力公益事業電力格子内に含まれるように構成されている。この超伝導電気ケーブルシステムは、電力公益事業電力格子の第1の分岐点と第2の分岐点の間に相互接続された非超伝導電気経路を備えている。超伝導電気経路が、電力公益事業電力格子の第1の分岐点と第2の分岐点の間に相互接続されている。超伝導電気経路および非超伝導電気経路は並列に電気接続されており、超伝導電気経路は、臨界電流レベルおよび臨界温度未満で動作する場合、非超伝導電気経路より小さい直列インピーダンスを有する。超伝導電気経路は、臨界電流レベルおよび超伝導体臨界温度のうちの1つまたは複数で動作し、あるいはそれより高いレベルまたは高い温度で動作する場合、非超伝導電気経路の直列インピーダンスの少なくともN倍の直列インピーダンスを有するように構成されている。Nは1より大きく、非超伝導電気経路のインピーダンスと相まって既知の故障電流レベルを少なくとも10%減衰させるように選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はHTSデバイスに関し、より詳細には故障電流制限デバイスとして動作するように構成されたHTSデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電力の需要は世界的な規模で著しく増加し続けており、したがって電力公益事業は、発電の観点ならびに配電の観点の両方から、増加する一方のこれらの需要に合致するべく懸命な努力を続けている。
【0003】
既存の設置済み送電および配電インフラストラクチャの容量が限られており、また、従来の追加送電線および配電線ならびに送電ケーブルおよび配電ケーブルを追加するために利用することができる空間が限られているため、電力公益事業による送電ネットワークおよび配電ネットワークを介した使用者への電力の引渡しには、重大な課題が依然として存在している。この課題は、容量を拡張するために利用することができる既存の空間が極めて限られている混雑した都市および首都圏地域にとりわけ関連している。
【0004】
電力公益事業の電力送電ネットワークおよび配電ネットワークにおける電力容量を増し、その一方で設置をより容易にするために比較的小さいフットプリントを維持し、かつ、冷却のために環境的にきれいな液体窒素を使用した、高温超伝導(HTS)ワイヤを使用した可撓性長距離電力ケーブルが開発されている。本開示では、HTS材料は、臨界温度が30K(マイナス243°センチグレード)以上の超伝導体として定義されており、イットリウムすなわち希土類・バリウム・銅・酸化物(本明細書においてはYBCOと呼ばれている)、タリウム・バリウム・カルシウム・銅・酸化物、ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・銅・酸化物(本明細書においてはBSCCOと呼ばれている)、水銀・バリウム・カルシウム・銅・酸化物およびマグネシウム・ジボライド(MgB)などの材料が含まれている。YBCOは約90Kの臨界温度を有している。BSCCOは、1つの組成において約90Kの臨界温度を有しており、また、第2の組成において約110Kの臨界温度を有している。MgBは、最大約40Kの臨界温度を有している。材料には置換、付加および不純物が可能であり、臨界温度を30°K未満に下げない限り、これらの組成族には、これらの可能な置換、付加および不純物が包含されているものとして理解されたい。このようなHTSケーブルを使用することにより、電力公益事業電力ネットワークの混雑した地域に、より多くの電力を経済的に、かつ、高い信頼性で提供することができ、ひいては混雑が緩和され、電力公益事業は、それらの送電および配電容量の問題に対処することができる。
【0005】
HTS電力ケーブルには、電気を送電し、かつ、配電するためのケーブルの一次導体としてHTSワイヤが使用されている(つまり従来の銅導体の代わりに)。HTSケーブルの設計により、従来の架空線路および地下ケーブルと比較すると、それらの超伝導状態における直列インピーダンスが著しく小さくなっている。ここでは、ケーブルまたは線路の直列インピーダンスは、電力を運ぶ導体の抵抗性インピーダンスと、ケーブルアーキテクチャまたは架空線路と結合した無効(誘導性)インピーダンスとの組合せとして参照されている。ケーブルの断面積が同じである場合、HTSワイヤを使用することにより、従来の交流(AC)ケーブルと比較すると電流容量を3倍乃至5倍にすることができ、また、従来の直流(DC)ケーブルと比較すると電流容量を最大10倍にすることができる。
【0006】
HTSケーブルは、連続可撓性波形巻型の周囲に螺旋状に巻かれたHTSワイヤを使用して設計することができ、あるいは様々なスタックおよびねん回構成の複数のHTSワイヤをそれらに持たせることができる。これらのいずれの場合においても、ケーブルは、輸送のためにドラムに便利に巻き付けることができ、また、電線管の中、あるいは他の電力デバイス間で、湾曲またはねじることによって設置することができるよう、連続した可撓性のあるものにすることができる。HTSケーブルは、HTSワイヤと接触し、かつ、ケーブルの長さに沿って展開している液体冷媒を使用して設計することができる。液体窒素は、最も一般的な液体冷媒であるが、液体水素または液体ネオンを使用して、マグネシウム・ジボライドのような超伝導材料の温度を低くすることも可能である。
【0007】
容量の問題に加えて、電力需要の増加(したがって発電され、かつ、送電ネットワークおよび配電ネットワークを介して送電される電力のレベルが高くなること)に起因する電力公益事業の他の重大な問題は、故障によって生じる「故障電流」の増加である。故障は、場合によっては、ネットワークデバイスの故障、自然の作用(例えば雷)、人間による作用(例えば自動車事故による電柱の破損)、または接地への短絡、あるいは電力公益事業ネットワークの1つの相から他の相への短絡をもたらす他の何らかのネットワークの問題によって生じる。通常、このような故障は、電力公益事業ネットワーク上で即座に有形化する極端に大きい負荷として出現する。ネットワークは、この負荷の出現に応答して、負荷への大量の電流の引渡しを試行する(つまり故障)。電力格子のネットワーク内における所与のリンクは、すべて、最大故障状態に突如として陥らせることになる短絡の間、故障電流制限手段がない場合に流れることになる最大故障電流によって特性化される。故障電流制限手段がない大きな電力格子の場合、故障電流が非常に大きく、格子内のほとんどの電気設備が損傷または破壊されることになる。故障電流から保護する従来の方法は、遮断器を速やかに開路し、電流および電力の流れを完全に遮断することである。
【0008】
遮断器に結合された検出器回路がネットワークを監視し、故障(または過電流)状況の出現を検出する。故障(または過電流)状況の出現が検出されると、数ミリ秒以内に検出器回路から起動信号を発信して遮断器を開路し、様々なネットワークコンポーネントの破壊を防止することができる。既存の遮断器デバイスの最大能力は、現在、約80,000アンペアであり、これらは送電レベル電圧専用である。20世紀に構築された電力公益事業ネットワークの多くのセクションは、40,000アンペア〜63,000アンペアの故障電流しか耐えることができないネットワークデバイスを使用して構築されている。残念なことには、電力公益事業ネットワーク上の発電レベルおよび送電レベルが高くなっている現在、故障電流レベルは、配電レベル電圧および送電レベル電圧の両方に対して、現在設置されている遮断器デバイスあるいは最新技術の遮断器デバイスの能力を超えるポイントまで(つまり80,000アンペアを超えるレベルまで)高くなっている。たとえもっと小さい故障電流レベルであっても、より低いレベルからもっと高いレベルへ格子全体にわたって遮断器をアップグレードするコストは、場合によっては極めて高くなる。ほとんどの場合、格子の動作の改善を有意義なものにするためには、故障電流を少なくとも10%小さくすることが望ましい。したがって電力公益事業は、高くなる一方の故障電流レベルに対処するための新しい解決法を探し求めている。開発中のこのような解決法の1つは、HTS故障電流制限器(FCL)と呼ばれているデバイスである。
【0009】
HTS FCLは、電力公益事業ネットワークに相互接続された専用デバイスであって、容易に入手することができ、あるいは既に設置されている従来の遮断器が取り扱うことができるレベルまで故障電流の大きさを小さくするための専用デバイスである。High−Temperature Superconductor Fault Current Limiters by Noe and M.Steurer、Supercond.Sci.Technol.20(2007)R15〜R29を参照されたい。このようなHTS FCLは、通常、HTS材料の固体バーすなわちシリンダでできた短い剛直モジュールで構成されており、このモジュールは、それらの超伝導臨界電流で抵抗状態に駆動されると極めて大きい抵抗を有することになる。残念なことには、このような独立型HTS FCLは、現在、極めて大型で、かつ、高価である。空間は、とりわけ、HTSケーブルを最も必要とする密集した都市環境における変電所内では極めて高価である。また、電力公益事業は、大型インダクタを使用することも可能であるが、それらは、余計な損失、電圧調整および格子安定性の問題の原因になることがある。また、残念なことには、花火電流制限器(例えばヒューズ)の場合、故障が発生する毎に交換が必要である。さらに、新しい電力エレクトロニックFCLも開発中であるが、それらをフェイルセーフにすることができるかどうか、また、それらを高い信頼性で送電電圧レベルまで拡張することができるかどうか疑問である。
【0010】
HTSケーブルを故障電流の流れに耐えることができるようにするために、かなりの量の銅がHTSワイヤと共に導入されてもよいが、そのためにケーブルの重量が重くなり、また、サイズが大きくなっている。Development and Demonstration of a Long Length HTS Cable to Operate in the Long Island Power Authority Transmission Grid by J.F.Maguire、F.Schmidt、S.Bratt、T.E.Welsh、J.Yuan、A.Allais、and F.Hamber、to be published in IEEE Transaction on Applied Superconductivityを参照されたい。しばしば、周囲にHTSワイヤが螺旋状に巻き付けられたHTSケーブルのコア中の中央巻型に銅が充填されるが、これは、液体窒素が流れる通路としてコアが使用されるのを防止している。別法としては、とりわけ多相ケーブルの場合、螺旋状に巻かれたケーブルの層の中で銅線とHTSワイヤが混合される。これらの銅線または構造は、HTSワイヤと電気的に並列にすることができ、HTSケーブル内の「銅分路」と呼ぶことができる。ケーブルのHTSワイヤの臨界電流を超える大きな故障電流が存在すると、HTSワイヤは、抵抗性IR損失によって加熱することができる抵抗状態に急冷すなわちスイッチする(Iは電流であり、Rはケーブルの抵抗である)。「銅分路」は、HTSワイヤの過熱を防止するために、故障電流を吸収して運ぶように設計することができる。銅の量は非常に多く、したがってケーブル中におけるその総合抵抗は比較的小さく、したがって故障電流のレベルを小さくする効果は無視し得る程度のものである。銅は、純粋な銅または少量の不純物を含有した銅であり、したがって77〜90Kの温度範囲におけるその抵抗率が比較的小さいこと(例えば<0.5マイクロオーム−cmあるいは0.2マイクロオーム−cm程度の小さい抵抗率であること)を意味するものとして定義することができる。
【0011】
欧州SUPERPOLIプログラム(SUPERPOLI Fault−Current Limiters Based on YBCO−Coated Stainless Steel Tapes by A.Usoskin et al.、IEEE Trans.on Applied Superconductivity、Vol.13、No.2、2003年6月、1972〜5頁、Design Performance of a Superconducting Power Link by Paasi et al.、IEEE Trans.on Applied Superconductivity、Vol.11、No.1、March 2001年3月、1928〜31頁、HTS Materials of AC Current Transport and Fault Current Limitation by Verhaege et al.、IEEE Trans.on Applied Superconductivity、Vol.11、No.1、2001年3月、2503〜6頁、および「Superconductive Electrical Transmission Line」という名称の米国特許第5,859,386号参照)では、同じく電流を制限することができる超伝導電力リンクが調査された。
【0012】
初期の独立型FCLのための典型的な手法に引き続いて、このプログラムでは、電力リンクのためのモジュールすなわち母線を形成していたHTS材料の剛直固体ロッドすなわちシリンダが調査された。モジュールすなわち母線の典型的な長さは50cm乃至2メートルであった。第2の手法では、コーティングが施された導体ワイヤが使用され、抵抗の大きいステンレス鋼基板の上にYBCO材料がコーティングされた。金スタビライザ層が使用されたが、長さ当たりの抵抗を可能な限り大きい値に維持するために、この金スタビライザ層は極めて薄い状態で維持された。ワイヤは、電力リンクのためのモジュールすなわち母線のための他のオプションを形成していた剛直な円筒状コアの上に螺旋状に巻き付けられた。故障電流に応答してこれらのモジュールの両方が極めて大きい抵抗状態に切り換わり、それにより電流を制限する。SUPERPOLIプログラムの中で提案されている、長さがより長いケーブルを生成するための概念は、剛直モジュールと可撓性編組銅相互接続部を相互接続することであった。「Superconductive Electrical Transmission Line」という名称の米国特許第5,859,386号を参照されたい。故障電流制限機能を備えた長距離連続可撓性ケーブルを、抵抗がより小さく、かつ、熱容量がより大きいワイヤ、つまり局部加熱のレベルがより低いワイヤを使用して設計し、かつ、製造する可能性については考慮されなかった。また、リンクの機能を最適化することができる追加格子エレメントの可能性についても考慮されなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願第11/673,281号
【特許文献2】一部継続米国特許出願第11/688,827号
【特許文献3】一部継続米国特許出願第11/688,817号
【特許文献4】一部継続米国特許出願第11/688,809号
【特許文献5】米国特許第5,859,386号
【特許文献6】同時係属米国特許出願第11/459,167号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】High−Temperature Superconductor Fault Current Limiters by Noe and M.Steurer、Supercond.Sci.Technol.20(2007)R15〜R29
【非特許文献2】Development and Demonstration of a Long Length HTS Cable to Operate in the Long Island Power Authority Transmission Grid by J.F.Maguire、F.Schmidt、S.Bratt、T.E.Welsh、J.Yuan、A.Allais、 and F.Hamber、to be published in IEEE Transaction on Applied Superconductivity.
【非特許文献3】SUPERPOLI Fault−Current Limiters Based on YBCO−Coated Stainless Steel Tapes by A.Usoskin et al.、IEEE Trans.on Applied Superconductivity、Vol.13、No.2、2003年6月、1972〜5頁
【非特許文献4】Design Performance of a Superconducting Power Link by Paasi et al.、IEEE Trans.on Applied Superconductivity、Vol.11、No.1、March 2001年3月、1928〜31頁
【非特許文献5】HTS Materials of AC Current Transport and Fault Current Limitation by Verhaege et al.、IEEE Trans.on Applied Superconductivity、Vol.11、No.1、2001年3月、2503〜6頁
【非特許文献6】Switching Behavior of YBCO Thin Film Conductors in Resistive Fault Current Limiters by H.−P.Kraemer et al.、IEEE Trans.on Applied Superconductivity、vol.13、No.2、2003年6月、2044〜7頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
HTSケーブルが故障電流を処理する方法が改善され、また、例えば、電力リンクを形成している、長さ当たりの抵抗が大きい故障電流制限モジュールなどの独立型FCLまたは他の故障電流制限デバイスの使用に取って代わる改良型代替が提供されることが望ましい。故障電流制限機能を組み込んだ実用的な長距離連続可撓性HTS電力ケーブルは、容量が大きく、フットプリントが小さく、かつ、環境的にきれいな電力送電および配電の確立に大きな利点を提供することができ、また、それと同時に、込み合った電力公益事業変電所における高価な個別の故障電流制限デバイスの必要性を回避することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示の第1の実施態様では、超伝導電気ケーブルシステムが、既知の故障電流レベルを有する電力公益事業電力格子内に含まれるように構成されている。この超伝導電気ケーブルシステムは、電力公益事業電力格子の第1の分岐点と第2の分岐点の間に相互接続された非超伝導電気経路を備えている。超伝導電気経路が、電力公益事業電力格子の第1の分岐点と第2の分岐点の間に相互接続されている。超伝導電気経路および非超伝導電気経路は並列に電気接続されており、超伝導電気経路は、臨界電流レベルおよび臨界温度未満で動作する場合、非超伝導電気経路より小さい直列インピーダンスを有する。超伝導電気経路は、臨界電流レベルおよび超伝導体臨界温度のうちの1つまたは複数で動作し、あるいはそれより高いレベルまたは高い温度で動作する場合、非超伝導電気経路の直列インピーダンスの少なくともN倍の直列インピーダンスを有するように構成されている。Nは1より大きく、非超伝導電気経路のインピーダンスと相まって既知の故障電流レベルを少なくとも10%減衰させるように選択される。
【0017】
以下の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。非超伝導電気経路は非低温温度に維持することができる。非低温温度は、少なくとも273Kにすることができる。超伝導電気経路はケーブルアセンブリ内に備えることができ、また、非超伝導電気経路はケーブルアセンブリの外側に配置することができる。インピーダンス調整デバイスは、非超伝導電気経路のインピーダンスを調整することができる。インピーダンス調整デバイスは、リアクトルアセンブリを備えることができる。
【0018】
高速スイッチは、超伝導電気経路に直列に電気結合することができる。超伝導電気経路は、第1の超伝導ケーブル部分および少なくとも第2の超伝導ケーブル部分を備えることができる。第1の超伝導ケーブル部分は第1のHTS超伝導材料を備えることができる。少なくとも第2の超伝導ケーブル部分は第2のHTS超伝導材料を備えることができる。第1のHTS超伝導材料はYBCO材料を備えることができる。第2のHTS超伝導材料はBSCCO材料を備えることができる。
【0019】
Nは3以上にすることができる。Nは5以上にすることができる。非超伝導電気経路は、少なくとも1つの非超伝導電気ケーブルを備えることができる。非超伝導電気経路は、少なくとも1つの非超伝導電気架空線路を備えることができる。超伝導電気経路は、1つまたは複数の超伝導電気ケーブルおよび1つまたは複数の高速スイッチアセンブリのうちの1つまたは複数を備えることができる。非超伝導電気経路は、1つまたは複数の非超伝導電気ケーブル、1つまたは複数の母線、1つまたは複数の変電所および1つまたは複数のリアクトルアセンブリのうちの少なくとも1つを備えることができる。
【0020】
少なくとも1つの超伝導電気ケーブルは、中央に配置された軸方向の冷媒通路を備えることができる。この中央に配置された軸方向の冷媒通路は、該冷媒通路を介して冷媒を軸方向に分配することができるように構成されている。超伝導電気経路は、90Kの温度範囲で0.8マイクロオーム−cmより大きい抵抗率を個々に有する複数の導電コンポーネントを備えることができる。
【0021】
少なくとも1つの超伝導電気ケーブルは、1つまたは複数のHTSワイヤを備えることができる。複数のHTSワイヤのうちの少なくとも1つは、イットリウムすなわち希土類・バリウム・銅・酸化物、タリウム・バリウム・カルシウム・銅・酸化物、ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・銅・酸化物、水銀・バリウム・カルシウム・銅・酸化物およびマグネシウム・ジボライドからなるグループから選択される材料で構築することができる。
【0022】
複数のHTSワイヤのうちの少なくとも1つはカプセル封じ剤を備えることができる。1つまたは複数のHTSワイヤのうちの少なくとも1つは、200〜600ミクロンの範囲内の総合厚さを有し、かつ、90Kで0.8〜15.0マイクロオーム−cmの範囲内の抵抗率を有する1つまたは複数のスタビライザ層を備えることができる。
【0023】
スタビライザ層は、少なくとも部分的に黄銅材料で構築することができる。1つまたは複数のHTSワイヤのうちの少なくとも1つは、200〜1000ミクロンの範囲内の総合厚さを有し、かつ、90Kで1〜10マイクロオーム−cmの範囲内の抵抗率を有する1つまたは複数のスタビライザ層を備えることができる。1つまたは複数のHTSワイヤのうちの少なくとも1つは、臨界電流レベル未満の超伝導モードで動作するように構成することができる。1つまたは複数のHTSワイヤのうちの少なくとも1つは、臨界電流レベル以上の非超伝導モードで動作するように構成することができる。
【0024】
本開示の他の実施態様では、超伝導電気ケーブルシステムが、既知の故障電流レベルを有する電力公益事業電力格子内に含まれるように構成されている。この超伝導電気ケーブルシステムは、電力公益事業電力格子の第1の分岐点と第2の分岐点の間に相互接続された非低温非超伝導電気経路を備えている。超伝導電気経路が、電力公益事業電力格子の第1の分岐点と第2の分岐点の間に相互接続されている。超伝導電気経路および非超伝導電気経路は並列に電気接続されている。超伝導電気経路は、臨界電流レベル未満で動作する場合、非超伝導電気経路より小さい直列インピーダンスを有する。超伝導電気経路は、臨界電流レベルで動作し、あるいはそれより高いレベルで動作する場合、非超伝導電気経路の直列インピーダンスの少なくともN倍の直列インピーダンスを有するように構成されている。Nは1より大きい。
【0025】
以下の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。非低温非超伝導電気経路は、少なくとも273Kの非低温温度に維持することができる。超伝導電気経路はケーブルアセンブリ内に備えることができ、また、非低温非超伝導電気経路はケーブルアセンブリの外側に配置することができる。インピーダンス調整デバイスは、非低温非超伝導電気経路のインピーダンスを調整することができる。インピーダンス調整デバイスは、リアクトルアセンブリを備えることができる。
【0026】
超伝導電気経路は、第1の超伝導ケーブル部分および少なくとも第2の超伝導ケーブル部分を備えることができる。第1の超伝導ケーブル部分は、第1のHTS超伝導材料を備えることができ、また、少なくとも第2の超伝導ケーブル部分は、第2のHTS超伝導材料を備えることができる。第1のHTS超伝導材料はYBCO材料を備えることができ、また、第2のHTS超伝導材料はBSCCO材料を備えることができる。Nは3以上にすることができる。Nは5以上にすることができる。
【0027】
添付の図面は、1つまたは複数の実施態様の詳細を示したものであり、以下、それらについて説明する。他の特徴および利点は、以下の説明、図面および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】電力公益事業電力格子内に設置された銅コアHTSケーブルの略図である。
【図2】図1の銅コアHTSケーブルの等角図である。
【図3】中空コアHTSケーブルの等角図である。
【図4】電力公益事業電力格子内に設置された図3の中空コアHTSケーブルの略図である。
【図5】電力公益事業電力格子の略図である。
【図6】超伝導ケーブル/従来のケーブル対のモデルを示す図である。
【図7A】HTSワイヤの横断面図である。
【図7B】代替実施形態HTSワイヤの横断面図である。
【図8】図7のHTSワイヤのモデルを示す図である。
【図9】図6の超伝導ケーブル/従来のケーブル対の代替モデルを示す図である。
【図10】超伝導モードである間の図9の超伝導ケーブル/従来のケーブル対のモデルを示す図である。
【図11】非超伝導モードである間の図9の超伝導ケーブル/従来のケーブル対のモデルを示す図である。
【図12】電力公益事業電力格子内に設置された図3の中空コアHTSケーブルの代替実施形態の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
すべての図を通して、同様の参照記号は同様の構成要素を表している。
【0030】
概説
図1を参照すると、電力公益事業電力格子10の一部は、高温超伝導体(HTS)ケーブル12を備えることができる。HTSケーブル12は、数百メートルまたは数千メートルの長さにすることができ、また、発電所(図示せず)から電力を引き渡すための、あるいは遠隔の電力公益事業(図示せず)から電力を引き入れるための、電流が比較的大きく/抵抗が比較的小さい電気経路を提供することができる。
【0031】
HTSケーブル12の断面積は、従来の銅コアケーブルの断面積のほんの数分の1にすることができ、また、同じ量の電流を運ぶことができる。上で説明したように、HTSケーブルは、同じ断面積以内で従来のACケーブルの3倍乃至5倍の電流容量を提供することができ、また、従来のDCケーブルの最大10倍の電流容量を提供することができる。HTSの技術が発達するにつれて、これらの比率を大きくすることができる。
【0032】
以下でより詳細に説明するように、HTSケーブル12は、同様のサイズの銅線の150倍程度の電流を処理することができるHTSワイヤを備えることができる。したがって、比較的少量のHTSワイヤを使用して(従来のACケーブルのコア内でより合わされた大量の銅導体ではなく)、同様のサイズの従来の銅導体電力ケーブルの3倍乃至5倍程度の電力を提供することができるHTS電力ケーブルを構築することができる。
【0033】
HTSケーブル12は、例えば138kVのレベルで電圧を運ぶ送電格子セグメント14内で接続し、格子セグメント14から、この電圧を受け取り、かつ、受け取った電圧のレベルを例えば69kVのより低いレベルに変換する格子セグメント16まで展開させることができる。例えば、送電格子セグメント14は、765kVの電力を受け取ることができ(架空線路すなわちケーブル18を介して)、また、この送電格子セグメント14は、138kV変電所20を備えることができる。138kV変電所20は、ケーブル18上で受け取った765kVの電力を138kVに逓降させるための765kV/138kV変圧器(図示せず)を備えることができる。次に、この「逓降された」138kVの電力を例えばHTSケーブル12を介して送電格子セグメント16に提供することができる。送電格子セグメント16は、HTSケーブル12を介して受け取った138kVの電力を69kVの電力に逓降させるための138kV/69kV変圧器(図示せず)を備えることができる69kV変電所24を備えることができ、69kVに逓降された電力を例えばデバイス26、28、30、32に配電することができる。デバイス26、28、30、32の例には、それには限定されないが34.5kV変電所を含むことができる。
【0034】
上で説明した電圧レベルは、説明を目的としたものにすぎず、本開示を制限することを意図したものではない。したがって本開示は、送電システムおよび配電システムの両方における様々な電圧レベルおよび電流レベルに等しく適用することができる。同様に、本開示は、産業用電力配電または車両用電力配電(例えば船舶、列車、航空機および宇宙船)などの非公益事業アプリケーションにも等しく適用することができる。
【0035】
1つまたは複数の遮断器34、36を例えばHTSケーブル12の各末端で接続することができ、また、電力公益事業電力格子10からHTSケーブル12を速やかに開放することができる。故障管理システム38は、HTSケーブル12が損傷することになるポイント未満の温度にHTSケーブル12が確実に維持されるよう、HTSケーブル12のための過電流保護を提供することができる。
【0036】
故障管理システム38は、HTSケーブル12が結合されている電力公益事業格子のセグメントに流入する電流を監視することによってこのような過電流保護を提供することができる。例えば故障管理システム38は、138kV変電所20を通って流れる電流を知覚することができ(例えば電流センサ40を使用して)、また、電流センサ40によって提供される信号に少なくとも部分的に基づいて遮断器34、36の動作を制御することができる。
【0037】
この実施例の場合、HTSケーブル12は、大きさが51kA程度で、継続期間が200msの故障電流(つまり12サイクルの60Hz電力)に耐えるように設計することができる。2006年7月21日に出願した、Fault Management of HTS Power Cableという名称の同時係属米国特許出願第11/459,167号に、故障管理システム38の詳細が記載されている。そのためには、通常、HTSケーブルは、大きい故障電流の運搬を補助し、ひいてはHTSワイヤの保護を補助するかなりの量の銅を含有しなければならない。銅は、HTSケーブルを保護するために提供されるが、抵抗が極めて小さいため、電流の制限に関しては有意な効果は有していない。
【0038】
また、図2を参照すると、より合わされた銅コア100を備えることができる単相銅コアHTSケーブル12の典型的な実施形態が示されており、第1のHTS層102、第2のHTS層104、高電圧誘電体絶縁層106、銅遮蔽層108、HTS遮蔽層110、冷媒通路112、内部クライオスタット壁114、熱絶縁116、真空空間118、外部クライオスタット壁120および外部ケーブルシース122が、半径方向に連続的にこのより合わされた銅コア100を取り囲んでいる。銅遮蔽層108は、別法として、HTS遮蔽層110の外側に配置することも可能である。HTS層102およびHTS層104は、「相導体」と呼ぶことも可能である。動作中、冷媒(例えば液体窒素、図示せず)を外部冷媒源(図示せず)から供給することができ、また、冷媒通路112内で、その長さに沿って循環させることができる。ケーブルのすべてのコンポーネントは、HTSケーブル12の可撓性を可能にするように設計されている。例えば、より合わされた銅コア100(その上に第1のHTS層102および第2のHTS層104が巻かれている)は可撓性である。したがって、より合わされた可撓性銅コア100を利用することによって、その長さに沿って連続的に可撓性であるHTSケーブル12が実現されている。任意選択で、螺旋状に巻かれたHTSワイヤを波形金属巻型を使用して支持し、連続した可撓性をケーブルの長さに沿って提供することができる。
【0039】
追加/別法として、追加同軸HTS層および絶縁層を利用することも可能である。例えば、3層以上のHTSワイヤを単相に使用することができる。また、絶縁層(図示せず)によって分離された3つのグループのHTS層を利用して3相電力を運ぶことも可能である。Ultera(つまりジョージア州キャロルトン在所のSouthwire Companyと、ドイツのケルン在所のnktケーブルの合弁会社)によって提案されたTriax HTS Cable構造は、このようなケーブル構造の一例である。HTSケーブル12の他の実施形態は、それらに限定されないが、暖および/または冷誘電体構成、単相対3相構成および様々な異なる遮蔽構成(例えば非遮蔽およびクライオスタットに基づく遮蔽)を備えることができる。
【0040】
銅コア100および銅遮蔽層108は、ケーブル12内に出現し得る故障電流(例えば故障電流124)を運ぶように構成することができる。例えば、ケーブル12内に故障電流124が出現すると、HTS層102、104内の電流が、場合によってはHTS層102、104の臨界電流レベル(つまりI)を超えるレベルまで劇的に大きくなり、そのためにHTS層102、104がそれらの超伝導特性を失う原因になることがある(つまりHTS層102、104が「通常の状態」になることがある)。臨界電流レベルIの典型的な値は、定格が3000Armsのケーブルの場合、4242Apeakである(Armsは、電流のルート平均二乗アンペアと呼ばれている)。
【0041】
HTS材料の臨界電流レベルは、場合によっては電界レベルの選択で決まる。従来、臨界電流レベルIは、1マイクロボルト/cmの電界レベルとして定義されているが、もっと小さい値を使用することも可能である。しかしながら、通常、超伝導体は、ゼロ抵抗(つまり超伝導)状態と電流レベルを関数とした完全な抵抗性(つまり非超伝導)状態の間の移行領域を示す。この移行領域での動作によって生じるワイヤ損失は、完全な抵抗性状態での動作によって生じるワイヤ損失より小さい。したがって、HTSケーブル12中のワイヤの一部は、場合によっては、1マイクロボルト/cmの基準で定義されている従来の臨界電流レベルIの係数(「f」)倍の臨界電流レベルIで完全な抵抗性状態に切り換わることがある。YBCO薄膜を備えた蛇行線ワイヤの場合、この係数は2になるように決定されたが、この係数は時間と共に若干変化することが分かった。Switching Behavior of YBCO Thin Film Conductors in Resistive Fault Current Limiters by H.−P.Kraemer et al.、IEEE Trans.on Applied Superconductivity、vol.13、No.2、2003年6月、2044〜7頁を参照されたい。同様のYBCO薄膜を備えたHTSワイヤのf−係数は同じ範囲になることが期待され、その範囲は1〜4であることが予測されている。
【0042】
したがって、臨界電流レベル(上で定義した)とf−係数の積が超過すると、場合によってはHTS層102、104の抵抗が著しく大きくなることがあり、また、かなり非常に大きくなることがある(つまり銅コア100と比較すると)。複数の並列ワイヤを通って流れる電流は、個々のワイヤの抵抗に反比例して分配されるため、HTS層102、104に並列に接続されている銅コア100に故障電流124の大部分を向けることができる。銅コア100を通る故障電流124のこの流れは、故障電流124が減退するか、あるいはHTSケーブル12を通る故障電流124の流れを適切な遮断器(例えば遮断器34、36)が遮断するまで継続することができる。
【0043】
HTSケーブル12内のHTSワイヤの過熱は、銅コア100によって提供される2つの利点によって回避することができる。第1に、故障電流124(または少なくともその一部)をHTS層102、104から銅コア100へ向けることにより、HTSケーブル12内のHTSワイヤの過熱を回避することができる。また、第2に、銅コア100によって熱容量が追加され、それによりHTS層102および104の温度上昇が抑制される。故障電流124(または少なくともその一部)がHTS層102、104から銅コア100へ向けられなかった場合、HTS層102、104の抵抗が大きいため、故障電流124によってHTSケーブル12内のHTSワイヤが著しく加熱されることになり、ひいては液体窒素のガス状「気泡」が形成されることになる(つまり冷媒通路112内で液体窒素が液体の状態から気体の状態に変換されるため)。残念なことには、液体窒素のガス状「気泡」が形成されると、誘電体層の絶縁耐力が低下し、ひいては電圧破壊によってHTSケーブル12が破壊されることになる。暖誘電体ケーブル構成の場合(図示せず)、HTS層102、104から方向転換されなかった故障電流は、HTS層102、104を単純に過熱し、破壊することになる。
【0044】
HTSケーブル12の例には、それらに限定されないが、フランスのパリ在所のNexans、日本の大阪在所の住友電気工業株式会社およびUltera(つまりジョージア州キャロルトン在所のSouthwire Companyと、ドイツのケルン在所のnktケーブルの合弁会社)から入手することができるHTSケーブルを含むことができる。
【0045】
銅コア100は、故障電流(またはその一部)を周囲のHTS層102、104に向けているが、このような「内部」銅コアを利用することには欠点がある。例えば銅コア100には、場合によってはHTSケーブル12を物理的により大きく、かつ、より重くする必要があり、そのためにコストが高くなり、また、より多くの熱がHTSケーブル12内に保持されることになる。したがって余分に保持される熱を補償するためにはより多くの冷凍が必要になり、ひいては総合システムコストおよび運転コストがより高くなることになる。さらに、銅コア100の熱容量が大きく、また、誘電体層のためにHTS層102、104と冷媒との間の熱抵抗が大きく、そのために場合によっては回復時間が著しく長くなり、したがって故障電流のエネルギーによって、HTS層102、104の超伝導性を維持することができるポイントを超えて温度が上昇することになる。例えば、故障電流が銅コア100を介して方向転換される場合、HTSケーブル12を適切な動作温度範囲内(例えば65〜77°K)に冷却するためには、冷凍システム(図示せず)は場合によっては数時間を要することになる。HTSケーブル12をケーブルの動作範囲内に冷却するために要する時間は、一般に「回復時間」と呼ばれており、電力公益事業は、送電デバイスのためにはこの回復時間を場合によっては数秒(またはそれ未満)にしなければならず、あるいは配電デバイスのためにはこの回復時間を数十分の一秒(またはそれ未満)にしなければならない。別法としては、独立型故障電流制限器をHTSケーブル12と共に使用して故障電流を制限することも可能であるが、それには、大型で、かつ、コストのかかる他の電気設備をHTSケーブル12にリンクされた変電所内に設置しなければならない欠点がある。
【0046】
図3を参照すると、本開示による可撓性中空コアHTSケーブル150が示されている。HTSケーブル150は、従来技術による銅コアHTSケーブル12の様々なコンポーネントを備えることができるが、HTSケーブル150は、より合わされた銅コア100(図2)を備えていない。より合わされた銅コア100は、可撓性中空コア(例えば内部冷媒通路152)に置き換えられた。内部冷媒通路152の一実施例は、それには限定されないが可撓性波形ステンレス鋼管を備えることができる。また、すべての銅遮蔽層が除去されている。冷媒(例えば液体窒素)は、内部冷媒通路152を通って流れることができる。
【0047】
銅コアHTSケーブル12の場合と同様の方法で、第1のHTS層102、第2のHTS層104(通常、層102とは逆のヘリシティで螺旋状に巻かれている)、高電圧誘電体絶縁層106、支持構造108、HTS遮蔽層110、冷媒通路112、内部クライオスタット壁114、熱絶縁116、真空空間118、外部クライオスタット壁120および外部ケーブルシース122によって、半径方向に連続的にこの内部冷媒通路152を取り囲むことができる。動作中、冷媒(例えば液体窒素、図示せず)を外部冷媒源(図示せず)から供給することができ、また、冷媒通路114内および内部冷媒通路152内で、それらの長さに沿って循環させることができる。MgBのように転位温度がより低い材料の場合、代替冷媒(例えば液体ネオンまたは液体水素)を使用することも可能である。
【0048】
HTSケーブル12の場合と同様、HTSケーブル150のすべてのコンポーネントは、ケーブルの長さに沿った連続的な可撓性を可能にするように設計されている。例えば、上で説明したように、内部冷媒通路152(その上に第1のHTS層102および第2のHTS層104が巻かれている)は可撓性である。したがって、可撓性内部冷媒通路152を利用することによって可撓性HTSケーブル150が実現されている。
【0049】
図4を参照すると、電力公益事業電力格子部分10’は、可撓性長距離ケーブル150を備えることができる。ここでは、長距離は、200mより長い距離として定義されている。また、電力公益事業電力格子部分10’は、HTSケーブル150に並列に接続された従来のケーブル(つまり非超伝導ケーブル)200を備えることも可能である。従来のケーブル200の例には、それには限定されないが、コネチカット州シーモア在所のThe Kerite Companyから入手することができる500kcmil、138kV Shielded Triple Permashield(TPS)電力ケーブルを含むことができる。従来のケーブル200は、レトロフィットアプリケーションにおける既存のケーブルであってもよく、例えば電気格子の電力容量を増すためにHTSケーブル150が追加され、1つまたは複数の従来のケーブルと置換される。別法としては、従来のケーブル200は、HTSケーブル150と同時に設置され、かつ、適切なバスワークおよび遮断器に相互接続される新しい従来のケーブルであってもよい。
【0050】
HTSケーブル150および/または追加HTSケーブル(図示せず)は、電力公益事業電力格子の一部を含むことができる超伝導電気経路202内に含めることができる。さらに、超伝導電気経路202は、母線(図示せず)、変圧器(図示せず)、故障電流制限器(図示せず)および変電所(図示せず)などの他の超伝導電力配電デバイスを備えることができる。
【0051】
高速スイッチアセンブリ202は、HTSケーブル150に直列に結合することができる。ペンシルベニア州グリーンズバーグ在所のABB社が製造している138kV Type PM Power Circuit Breakerは、高速スイッチアセンブリ202の一例である。高速スイッチアセンブリ202(例えば4サイクルで開くことができるスイッチ)は、故障管理システム38によって制御することができる。例えば、故障管理システム38は、故障電流124(図3)を知覚すると高速スイッチアセンブリ202を開くことができ、それによりHTSケーブル150を本質的に故障電流124から分離することができる。多相電力の場合、複数の高速スイッチアセンブリ202を利用することができる。別法としては、いくつかの高速スイッチアセンブリまたは遮断器を単一の3相デバイスとして構築することができる。高速スイッチアセンブリ202は、HTSケーブル150がその超伝導状態に復帰することができるよう、十分な時間が経過した後、再度閉じることができる。既存の電力公益事業遮断器34、36が十分な速さでスイッチし、以下で説明する加熱要求事項に合致する場合、高速スイッチアセンブリ202は、場合によっては不要である。
【0052】
従来のケーブル200(図示せず)および/または従来の追加ケーブル(図示せず)は、電力公益事業電力格子の一部を含むことができる非超伝導電気経路204内に含めることができる。さらに、非超伝導電気経路204は、母線(図示せず)、変圧器(図示せず)、故障電流制限器(図示せず)および変電所(図示せず)などの他の配電デバイスを備えることができる。非超伝導電気経路204は、非低温温度(例えば0℃に相当する少なくとも273Kの温度)に維持することができる。例えば、非超伝導電気経路204を冷却することは不可能であり、したがって周囲温度にあることを前提にすることができる。
【0053】
以下でより詳細に説明するように、銅コア100(図2)および銅遮蔽層108(図2)を可撓性長距離HTSケーブル150の内側から除去し、かつ、従来の外部(つまりHTSケーブル150に対して)並列接続ケーブル200を利用して例えば故障電流124を運ぶことにより、HTSケーブル150を物理的により小さくすることができ、ひいては製造コストを低減し、また、HTSケーブル150からの熱損失をより少なくすることができる。したがって、HTSケーブル150は、必要な冷凍をより少なくすることができ(より大きい熱保持を有しているHTSケーブル12と比較すると)、ひいては総合システムコストおよび運転コストをより少なくすることができる。さらに、銅コア100をHTSケーブル12の内側からHTSケーブル150の外側へ移動させることにより(従来のケーブル200の形態で)、HTSケーブル150の熱容量およびHTS層102、104と冷媒との間の熱抵抗の両方が小さくなり、したがって故障電流124によって、HTS層102、104の超伝導性を維持することができるポイントを超えてHTSケーブル150の温度が上昇した場合に、その回復時間をより短くすることができる。銅コア100をHTSケーブル12の内側から除去し、かつ、適切に最適化されたHTSワイヤを使用することにより、故障電流制限機能をHTSケーブル150に直接組み込むことができ、したがって、HTSケーブルまたは下流側の電力公益事業設備を故障電流から保護することを望む場合に、個別の独立型故障電流制限器の必要性が除去される。
【0054】
HTSケーブルおよび故障電流制限器
もう一度図1を参照すると、格子セクション10内の故障電流によって、HTSケーブル12を通って流れる電流が従来の遮断器34、36の制限を超えて大きくなる場合、HTS FCLデバイス42(仮想線で示されている)または従来のリアクトル技術(図示せず)を格子セクション10内に組み込むことができ、それにより、HTSケーブル12を通って流れる故障電流の大きさを従来の遮断器34、36が遮断することができるレベルに制限することができる。通常の状態の下で公称電流レベルが格子セクション10内を流れる場合、電力潮流に直列に接続されるHTS FCLデバイス42は、極めて小さいインピーダンスが格子に導入されるように設計することができる(他の格子インピーダンスと比較して)。しかしながら、故障電流が格子セクション10に出現すると、その電流によってHTS FCL42内の超伝導体が瞬時に「通常」すなわち非超伝導状態(つまり抵抗性)になり、そのために極めて大きいインピーダンスが格子セクション10に追加されることになる。HTS FCL42は、故障電流を従来の遮断器34、36の遮断能力の範囲内である所定のレベルに制限するように設計される。
【0055】
独立型HTS FCLデバイス42は、Siemens AG(ドイツ)と共にAmerican Superconductor Corporation(マサチューセッツ州ウェストバラ在所)を始めとする様々な会社によって開発されている。残念なことには、HTS FCLデバイス42を格子セクション10に追加することは、場合によってはコストが非常に高くつき、また、場合によってデバイス42を収容するためのかなりの量の空間が必要であり、そのためにとりわけ都市地域における収容が場合によっては困難である。故障電流制限能力を備えた短い母線すなわちモジュールは、Nexans(フランス)およびEHTS(ドイツ)を始めとする様々な会社によって開発されている。故障電流制限母線は、特定のアプリケーションを有することができるが、それらは、送電および配電アプリケーションのための長距離連続可撓性ケーブルによって提供される、必要とされる大きい容量、小さいフットプリントおよび可撓性を提供していない。
【0056】
本開示によれば、HTSデバイス、例えば連続可撓性長距離HTSケーブル150(図3)は、適切に設計されると、HTS FCL42(図1)などの個別のHTS FCLを組み込む必要のない故障電流制限器自体として使用することができる。例えばHTSケーブル150の通常状態(抵抗性)インピーダンスを制御することにより、HTSケーブル自体を利用して、典型的な独立型HTS FCLの望ましい効果(例えば故障電流の減衰)を得ることができ、かつ、典型的な独立型HTS FCLの望ましくない効果が(例えばコストおよびサイズ)が回避される。故障電流制限効果および利点をさらに達成するために、HTSケーブルを従来のケーブル(つまり非超伝導ケーブル)と並列に配置することができる。例えば、超伝導ケーブル150および従来のケーブル200を並列に配置する場合、この組合せは、以下でより詳細に説明する故障電流制限ケーブルシステムとして作用するように設計し、かつ、動作させることができる。
【0057】
本開示は、他のHTSデバイスにも適用することができる。例えば、他のタイプの超伝導デバイス(例えば超伝導変圧器、図示せず)を従来の変圧器(図示せず)と並列に配置する場合、これらのデバイスのこの組合せは、故障電流制限システムとして作用するように設計し、かつ、動作させることができる。その場合、従来の変圧器がアクティブであるのは、その回復期間の間、高速スイッチが超伝導変圧器を通って流れる電力を遮断する故障事象の間のみであるため、定常状態定格の関数として従来の変圧器をサイズ化することができる。別法としては、故障電流を減衰させる必要がない場合、必ずしもすべての故障電流が超伝導変圧器を通って流れるわけではなく、その代わりに優先的に従来の変圧器を通って流れることになるため、この構造によって超伝導変圧器をより小さくすることができる。したがって、従来のデバイスを本開示による超伝導デバイスに並列に配置することにより、格子上の故障電流の大きさを所望のレベルに制限することができ(従来の並列デバイスおよび/または超伝導デバイスを適切にサイズ化することによって)、ひいては容易に入手することができる遮断器を使用することが可能になる。
【0058】
HTSデバイス(例えば図4のHTSケーブル150)が通常の動作をしている間、HTSデバイスのインピーダンス(つまり実インピーダンスおよび無効インピーダンスの両方)を従来のデバイス(例えば従来のケーブル200)のインピーダンスより著しく小さくすることができる。例えば、HTSケーブル150の典型的なインピーダンスは、本質的に1キロメートル当たり0.00+j0.007オームであり(超伝導の場合)、また、1キロメートル当たり1.46+j0.007オームである(超伝導ではなく、完全な抵抗性の場合)。また、従来のケーブル200の典型的なインピーダンスは、1キロメートル当たり0.095+j0.171オームである。HTSケーブル150は、超伝導である場合、本質的にゼロ抵抗を有していることに留意されたい。したがってHTSケーブル150が超伝導である場合、遮断器34、36を通って流れる電流の大部分はHTSケーブル150を通って流れることになる(従来のケーブル200を通って流れる電流は極めてわずかであるか、あるいはゼロである)。しかしながら超伝導ではない場合、電流の大部分は従来のケーブル200を通って流れることになる(HTSケーブル150を通って流れる電流はほんのわずかにすぎない)。
【0059】
インピーダンス調整デバイス(例えば過渡定格または全定格リアクトルアセンブリ206)は、従来のケーブル200に直列に結合することができる。リアクトルアセンブリ206の一実施例は、それには限定されないが、カナダのオンタリオ州スカーボロー在所のTrench(登録商標)Limitedが製造している空気コア・ドライ・タイプ電力リアクトルを備えることができる。リアクトルアセンブリ206は、インピーダンス(Z)の虚数部分であるリアクタンス(X)を非超伝導電気経路204に導入することができる。誘導性リアクトルアセンブリの場合、リアクタンス(X)は2π(f)(L)として定義することができ、(f)はリアクトルアセンブリ206に印加される信号の周波数であり、(L)はリアクトルアセンブリ206のインダクタンスである。したがってリアクトルアセンブリ206に印加される信号が本質的に一定であるシステム(例えば60Hz電力配電システム)の場合、リアクトルアセンブリ206のインダクタンスを変化させることによってリアクトルアセンブリ206のリアクタンス(X)を変化させることができる。
【0060】
さらに、高速スイッチアセンブリ208は、HTSケーブル150に直列に結合することができる。ペンシルベニア州グリーンズバーグ在所のABB社が製造している138kV Type PM Power Circuit Breakerは、高速スイッチアセンブリ208の一例である。リアクトルアセンブリ206および/または高速スイッチアセンブリ208(例えば4サイクルで動作させることができるスイッチ)のうちの一方または両方を故障管理システム38によって制御することができる。例えば、故障管理システム38は、故障電流124を知覚すると高速スイッチアセンブリ208を開くことができ、それにより従来のケーブル200に沿ったリアクトルアセンブリ206は、故障電流124の電力の一部を吸収し、事実上、HTSケーブル150を故障電流124から分離することができる。また、高速スイッチは、電流制限によって高速スイッチングHTSケーブルから保護されている。多相電力の場合、複数のリアクトルアセンブリ206および/または高速スイッチアセンブリ208を利用することができる。高速スイッチは、数分後にHTSケーブルがその超伝導状態に復帰すると、再度閉じることができる。
【0061】
また、図5を参照すると、電力公益事業電力格子250のコンテキストにおけるFCLとしてのHTSケーブル150の動作が示されている。この特定の実施例では、図に示されている電力公益事業電力格子250は、765kV母線252、69kV母線254および34.5kV母線256を備えている。さらに、図に示されている電力公益事業電力格子250は、3つの138kV変電所20、258、260を備えており、これらの変電所の各々は、3つの69kV変電所24、262、264を介して69kV母線254に電力を提供している。3つの34.5kV変電所266、268、270は、69kV母線254から34.5kV母線256へ電力を提供することができる。図に示されているHTSケーブルおよびFCLシステム150、200は、変電所20と24の間に配置されている。
【0062】
故障電流(例えば故障電流124)が電力公益事業電力格子250内に存在している場合、電流は、相互接続されているすべての変電所から利用可能なすべての経路を通って流れ、場合によっては電力公益事業電力格子250上に置かれた極めて大きい負荷として出現する故障を供給することができる。故障状態の間に実現可能な故障電流を計算する場合、接地への短絡として故障をモデル化することができる。
【0063】
また、図6を参照すると、特定の変電所(例えば138kV変電所20)が例えば故障電流124に寄与する故障電流の量を決定する場合、開路が発生する電圧を理想電圧源300としてモデル化することができる。さらに、ケーブル150、200のインピーダンスは、それらの抵抗性等価回路エレメントおよび無効等価回路エレメントとしてモデル化することができ、また、上流側インピーダンスは、変圧器インピーダンスと組み合わせることができ、電源インピーダンス302として表すことができる。このコンテキストにおけるインピーダンスは、実成分および無効成分からなる複素ベクトル量であってもよい。数学的にはインピーダンスZ=R+jXであり、Rは実(つまり抵抗性)成分であり、Xは無効成分である。この実施例では、無効成分は誘導性であり、jωLに等しい。ω=2πfであり、fは電流の周波数(例えば北アメリカでは60Hz)である。
【0064】
ケーブルも同様に複素インピーダンスとしてモデル化することができる。例えば、図に示されているケーブル150、200は、上で説明したように接地への短絡として故障がモデル化されているため、接地に終端されている。オームの法則を使用して、138kV変電所20によって提供される故障電流の期待レベルを決定することができる。この手法を格子250内の他の変電所に対して使用して、総合故障電流寄与を計算することができ、また、ケーブル150を通って流れることが期待される故障電流を決定することができる。次に、このさもなければ期待される故障電流124を従来の遮断器が取り扱うことができるもっと低い所定のレベルに制限するようにHTSケーブル150および従来のケーブル200を設計することができる。
【0065】
HTSデバイスおよび従来のデバイスがFCLとして適切に動作するように設計するためには、特定の基準を考慮しなければならない。例えば、故障状態の間、HTSケーブル150は、故障電流を所望のレベルまで小さくするだけの十分なインピーダンスを格子に提供するだけの十分な大きさの抵抗が達成されるように構成しなければならない。また、故障電流124の大部分が従来のケーブル200を通って流れるようにするためには、このインピーダンスは、従来のケーブル200のインピーダンスと比較して十分に大きくしなければならない。例えば、超伝導電気経路202は、超伝導電気経路202がその完全な抵抗性状態で動作している場合、非超伝導電気経路204の直列インピーダンスの少なくともN倍(例えば1より大きい)の直列インピーダンスを有するように構成することができる。Nの典型的な値は1より大きく、また、5より大きくすることも可能である。Nは、従来の並列リンクのインピーダンスと相まって既知の故障電流レベルを少なくとも10%減衰させるように選択することができる。
【0066】
この分圧器は、故障中におけるHTSケーブル150の両端間の電圧降下によって、冷媒(例えば液体窒素または他の液体冷媒)が液体の状態から気体の状態に変化するポイントまでケーブルの温度が上昇しないように設計しなければならない。これが生じると、高電圧ケーブルコア(例えばHTS層102、104)と遮蔽(例えばHTS遮蔽層108)の間の液体窒素の絶縁耐力が維持されなくなり、HTSケーブル150内で電圧破壊が生じ、そのために場合によってはケーブルが損傷することになる。
【0067】
そのスタビライザを備えたHTSワイヤの、超伝導状態から通常の状態(つまり非超伝導状態)への移行後における抵抗率が十分に大きいため、故障電流の大部分を従来のデバイスの方へ導くための十分な大きさの抵抗をHTSデバイスが達成する基準を達成することは可能である。すべての超伝導体の場合と同様、温度、電流密度および磁界強度が特定の臨界値未満を維持している限り、電流は、抵抗が本質的にゼロである超伝導体を通って流れることになる。しかしながら、HTSワイヤの抵抗性状態における加熱は、スタビライザの抵抗率が大きくなるにつれて大きくなる。したがって抵抗率は、以下でさらに説明するように、中間の範囲に存在していなければならない。
【0068】
HTSケーブル150は、長さが2.60kmのHTSケーブルであることが仮定されており、その定格は、138kV、直流2400Aである。HTSケーブル150のHTSワイヤ(例えばHTS層102、104)は、28本のHTSワイヤのより線を並列に備えることができる。さらに、ケーブル150は、300ミクロンの黄銅が積層された(片面に150ミクロンずつ)、幅0.44cm、90Kにおける抵抗率が5マイクロオーム−cmのHTSワイヤを使用して構築されていることが仮定されている。この場合、このHTSワイヤの1本のより線は、1キロメートル当たり約37.9オームの90K抵抗を有している。American Superconductor Corporationは、HTSワイヤに対する黄銅スタビライザの積層を立証している。したがって、相当たりのケーブル抵抗は、37.9Ω/km2.6km1.08/28より線=3.80Ωになる。係数1.08は、個々のより線の長さをHTSケーブル150の長さより長くする必要がある螺旋状ケーブル敷設プロセスからきている。従来のケーブル200の場合、インピーダンスは、2.6km(0.095+j0.17)Ω/km=0.25+j0.44Ωである。したがってHTSケーブル150は、超伝導の場合、従来のケーブル200より実質的に小さいインピーダンス値(つまり0.00+j0.007Ω/km)を有しているが、HTSケーブル150が超伝導ではない場合(例えば高温状態が発生した場合)、HTSケーブル150のインピーダンスは、従来のケーブル200(0.095+j0.17Ω/kmの誘導性インピーダンスを有している)より実質的に大きい(1.46+j0.007Ω/kmのインピーダンスを有している)。
【0069】
また、図7Aを参照すると、HTS層102、104を構築するために使用される、HTSコーティングが施された1本の導体ワイヤ350の横断面図が示されている。図に示されているこの実施例では、HTS層102、104に使用されているHTSワイヤ350は、2つのスタビライザ層352、353および基板354を備えている。スタビライザ層352、353の一実施例は、それらに限定されないが、黄銅もしくは他の銅またはニッケル合金を備えることができる。基板354の一実施例は、それらに限定されないが、ニッケル・タングステン、ステンレス鋼およびHastelloyを備えることができる。スタビライザ層352と基板層354の間に、バッファ層356、HTS層358(例えばイットリウム・バリウム・銅・酸化物層)および例えば銀からなるキャップ層360を配置することができる。バッファ層356の一実施例は、酸化イットリウム、酸化イットリウム安定化酸化ジルコニウムおよび酸化セリウム(CeO)の組合せであり、また、キャップ層360の一実施例は銀である。はんだ層362(例えばSnPbAg層)を使用して、スタビライザ層352および353をキャップ層360および基板層354に結合することができる。追加HTS層、基板およびスラビライザならびに可能なカプセル封じ剤を備えた他の構成も、本発明の範囲内で考慮されている。
【0070】
上で説明したワイヤ構成に加えて、他のワイヤ構成も本開示の範囲に包含されるものと見なされている。例えば単一のスタビライザ層を使用することができる。別法としては、第2のHTS層(そのバッファ層およびキャップ層と共に、図示せず)を第2のスタビライザ層353と基板354の下面との間に配置することができる。任意選択で、HTSワイヤは、2つの基板(それぞれバッファ層、HTS層およびキャップ層を備えている)が、2つの基板層の間に配置された第3のスタビライザ層で分離される状態で、HTSワイヤの外側に配置された2つのスタビライザ層からなっていてもよい。はんだ層を使用することにより、必要なあらゆる結合を容易にすることができる(場合によっては基板層354、バッファ層356、HTS層358およびキャップ層360の間を除く)。
【0071】
また、図7Bを参照すると、HTSワイヤ350の一代替実施形態であるHTSワイヤ350’が示されている。HTSワイヤ350’は、第2のスタビライザ層353と第3のスタビライザ層382の間に配置された第2の基板層380を備えることができる。スタビライザ層353(および/またはスタビライザ層382)と基板層380の間に、バッファ層、HTS層(例えばイットリウム・バリウム・銅・酸化物すなわちYBCO層)、キャップ層およびはんだ層を配置することができる。
【0072】
安定化HTSワイヤの周囲に付着し、あるいは安定化HTSワイヤを覆っている、安定化HTSワイヤをカプセル封じするための、導電性に乏しい「絶縁体」層を任意選択で追加することによって追加比熱を提供することができる。導電性に乏しいこの絶縁体層は、カプセル封じ剤364と呼ぶことができる。カプセル封じ剤364は、熱伝達係数が概ね制限された液体不浸透層を形成することができ、それにより周囲の液体冷媒(例えば液体窒素)への熱の導入を遅延させ、ひいてはHTSワイヤの温度を熱化させる、つまりHTSワイヤの断面全体をより一様になるようにすることができ、したがってホットスポットの発生を最少化し、また、液体冷媒中のガス気泡の形成を最少化することができる。また、HTSワイヤの表面を最適化し(例えば表面特徴および界面化学を使用して)、液体冷媒の泡立ちまたは沸騰の発生を抑制することも可能である。
【0073】
カプセル封じ剤364は、共通の電気絶縁材料を含有した重合体(例えばポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、エポキシ、ポリメタクリル酸メチル、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリウレタン)であってもよい。カプセル封じ剤364の厚さは、周囲の液体冷媒への熱伝達によってHTSワイヤを冷却する必要性と、周囲の液体冷媒中におけるガス気泡の形成を伴うことなくHTSワイヤの温度を最低化する必要性とが平衡するように選択することができる。カプセル封じ剤364の一般的な厚さの範囲は、25〜300マイクロメートルであり、また、カプセル封じ剤364の望ましい厚さの範囲は、50〜150マイクロメートルである。
【0074】
好ましい形態では、恐らくは金属、黒鉛または炭素粉末などの導電性粒子を加えることによってカプセル封じ剤364に若干の導電性を持たせることも可能であり、あるいは部分的に導電性であるいくつかの重合体からカプセル封じ剤364を選択することも可能である。カプセル封じ剤364の正味電気抵抗率は、0.0001〜100オームcmの範囲にすることができる。この控え目な導電率は、HTSワイヤのその抵抗性状態すなわち通常の状態における故障電流制限抵抗を著しく小さくすることは不可能であるが、この導電率によってHTSケーブル内のHTSワイヤが個々の断面で確実に等電位を維持し、それによりHTSケーブル150内の異なるHTSワイヤ間における電流共有を確実に可能にすることができる。電流がサージする場合、等電位を維持することが重要であり、さもなければHTSワイヤ間に電位差が誘導的に誘導され、それにより絶縁破壊が生じて場合によってはHTSワイヤが損傷することになる。カプセル封じ剤364は、任意選択で、抵抗率が大きい金属であるか、またはこの範囲の抵抗を有する半導電性材料であるか、あるいは導電率改善材料を含有することもできるエナメル、ガラスまたは結晶性酸化物材料であってもよい。
【0075】
カプセル封じ剤364の外部表面は、カプセル封じ剤364と周囲の液体冷媒(例えば液体窒素)との間の熱伝達係数を小さくする材料でコーティングすることができる。別法としては、カプセル封じ剤364の表面をテクスチャード加工し、カプセル封じ剤364と周囲の液体冷媒(例えば液体窒素)との間の熱伝達係数を改善することも可能である。さらに、カプセル封じ剤364の表面は、周囲の液体冷媒に向かって外側に急激に散逸する熱による核形成を抑制するために、例えば導電率がより大きい金属粒子または押出し金属繊維でコーティングすることができる。しかしながら、このような表面処理は、すべて、同じく液体状態における絶縁耐力の低下を回避しなければならない。
【0076】
カプセル封じ剤364は、例えば、単一パス手法と比較すると貫通の発生率が統計的に減少するマルチパス手法を始めとする様々なラッピング/コーティング方法を使用して加えることができる。別法としては、カプセル封じ剤364は、浸漬、押出し、めっき、気相成長または噴霧などのコーティング方法によって加えることができる。
【0077】
カプセル封じ剤364は、例えば最大0.3%のワイヤ引張りひずみの軸方向張力(例えば100メガパスカル程度)がHTSワイヤにかかっている間に加えることができ、したがって塗布プロセスが終了すると圧縮状態でカプセル封じ剤364を置くことができるため、カプセル封じ剤364中における貫通の可能性が減少する。したがって完成すると、カプセル封じ剤364中のHTSワイヤに軸方向の張力がかかっている間に、カプセル封じ剤364を軸方向に圧縮することができる(それらの初期状態と比較して)。
【0078】
ラッピング手順を使用してカプセル封じ剤364を加える場合、カプセル封じ剤364中のあらゆる隙間/開口から不浸透性材料のラップ層に浸入する追加含浸コーティング(例えば重合体、ペイントまたはワニス、図示せず)を加えることができ、したがって気密封止カプセル封じ剤が形成される。別法としては、ラップされたカプセル封じ剤を上で参照した隙間/開口を密閉するローリングプロセスまたは圧縮プロセス(例えばアイソスタティック圧縮)によって気密にすることも可能である。ワイヤの金属スタビライザ層に向かって浸入する液体冷媒は、故障中、ガス気泡核形成および沸騰を開始させることになるため、隙間または開口を回避することは重要である。
【0079】
他の等級のカプセル封じ剤またはスタビライザは、融解構造相転移または結晶構造相転移などの吸熱相転移する材料である。HTSワイヤの動作温度より高い何らかの温度で(かつ、HTSワイヤの最大許容温度未満で)このような吸熱相変化する材料が使用されることが好ましい。吸熱相変化の一例は、例えば、複合物補強材料中の離散埋込み粒子としてカプセル封じ剤364に加えることができ、カプセル封じ剤364の表面/界面に加えることができるゲル/ペイントとしてカプセル封じ剤364に加えることができ、あるいはカプセル封じ剤364の特定の領域(例えば内部コンジット領域の縁、フィレットまたは中)に選択的に加えることができる低融解温度有機材料または低融解温度無機材料の融解である。また、吸熱相変化には、例えば、特定の金属間相変化、順序相変化または他の二次相転移を含むことも可能である。例えば、カプセル封じ剤364用に選択される材料は、−160℃乃至−70℃の範囲で融解させることができ、約−50℃より高い温度で沸騰する(好ましい沸点は周囲温度より高い温度である)ため、液体または複合物の状態で(つまりペイント、膜コーティング、乳濁液またはゲルとして)比較的容易に、かつ、経済的にカプセル封じ剤364に加えることができる。
【0080】
また、図8を参照すると、HTSワイヤ350の等価電気モデル400が示されている。説明を目的として、等価電気モデル400は、モデル400の下半分が超伝導層402であり、また、モデル400の上半分が、抵抗性金属層404を形成するために他のすべてのワイヤ構造が結合されたHTSワイヤ350を示している。HTSワイヤ350が超伝導モードにある場合、電流は、すべて、本質的にゼロ抵抗超伝導層402の中を流れる。非超伝導モードにある場合、電流は、主としてスタビライザからなる抵抗性金属層404の中を流れる。
【0081】
また、図9を参照すると、上で説明したように、臨界電流レベルを超えるということは、HTSワイヤ350が超伝導モードで機能しているのか、あるいは非超伝導モードで機能しているのかを区別することである。HTSワイヤ350は、電流が小さい場合(つまり臨界電流レベル未満の場合)に閉じて金属層404の抵抗408を分路するスイッチ406を備えるようにモデル化することができる。したがって、スイッチ406が閉じると、電流は、すべて、ゼロ抵抗としてモデル化されている超伝導層402を通って流れる。臨界電流レベルを超えると、超伝導層402が高度に抵抗性になり、スイッチ406を開いて、すべての電流が抵抗性金属層404を通って流れるようにすることができる。
【0082】
また、図10を参照すると、超伝導動作モード時におけるHTSケーブル150と従来のケーブル200の組合せモデルが示されている。このモデルの場合、79.7kV線路−接地の典型的な電源電圧および0.155+j1.55オームの電源インピーダンスが仮定されている(図6のVs、LsおよびRs)。これらの値は、ケーブル150、200の前段の変電所20における故障に対して51kAの故障電流をもたらすことになる。電流(つまり臨界電流レベル未満の電流)が1つの変電所から他の変電所へ流れる通常の動作中に、例えば2600メートルのケーブルに典型的な実インピーダンス値および無効インピーダンス値を挿入することによってスイッチが閉じ、電流の96%がHTSケーブル150の中を流れる。
【0083】
また、図11を参照すると、故障状態の間、臨界電流レベルが合致するかあるいは超過し、それによりスイッチ406(図9)が開く。HTSケーブル150の金属層402(図8)の追加抵抗により、故障電流の大部分が従来のケーブル200の中を流れるようにすることができる。詳細には、示されている値の場合、HTSケーブルが完全に抵抗性になると、故障電流の88%が従来のケーブル200の中を流れ、12%がHTSケーブル150の中を流れる。ケーブル150、200の中を流れる総故障電流は40kAであり、これは、利用可能な51kAから著しく低減されている。利用可能な故障電流のこの20%の低減は、故障電流制限器に必要とされることになる典型的な低減である。
【0084】
故障中におけるHTSケーブル150の過度の加熱を防止するためにいくつかの対策を講じることができる。通常、HTSケーブル150と直列である高速スイッチアセンブリ208(図4)は、例えば4サイクル後に開くことができ、また、HTSケーブル150が許容可能な開始温度まで冷却されるまでの間は閉じることはない。別法としては、遮断器34および/または遮断器36を開くことも可能である。
【0085】
温度上昇をさらに最小化するために、スタビライザ層352(図7)を極めて分厚くして(例えば300ミクロン)熱容量を大きくすることができる。また、それと同時に、抵抗性加熱による温度上昇が最小化され、かつ、それと同時に、その切り換えられた状態のHTSケーブル150が、故障電流124(図5)の大部分が従来のケーブル200を通って流れることを保障するだけの十分な大きさの抵抗を有することを保障するだけの十分な大きさになるようにスタビライザ層352の抵抗率の値を選択することができる。通常、典型的なアプリケーションに対するこれらの要求事項を満足する値の範囲は、90K近辺で0.8〜15マイクロオーム−cmであり、より好ましくは1〜10マイクロオーム−cmである。このような値を達成するための便利な材料族は黄銅(Cu−Zn合金)であるが、CuNiおよびCuMnなどの他の多くの合金も可能である。これらの値は、単に説明を目的として提供されたものにすぎず、本開示の制限を意図したものではない。例えば、上で説明した事例の場合、幅がそれぞれ0.44cmである28本の並列HTSワイヤを使用し、かつ、抵抗率が5.0マイクロオーム−cmである合計300ミクロンのスタビライザを使用することにより、1.35オーム/kmの抵抗が提供され、また、実効臨界電流が350A/cmである場合、高速スイッチが開く前の4サイクル(0.067秒)のホールド時間の間に上昇する温度は、約5×10−6(350/0.03)×0.067/(2×2)=11Kである(熱容量が2J/cmKであり、また、f−係数が1である断熱温度上昇を仮定して)。15〜20バールの範囲の圧力で加圧されたケーブルシステムの場合、窒素気泡の温度は約110Kより高いため、この温度上昇は、70〜80Kの温度範囲での動作に対しては許容可能である。臨界電流がもっと小さい約250A/cm−幅のワイヤの場合、約10マイクロオーム−cmの抵抗率によって同じ温度上昇が得られる。f−係数が2であるワイヤの場合、温度上昇は約44Kであり、この場合、3マイクロオーム−cmの抵抗率によって、77K未満で動作するケーブルに対して許容可能な約26Kの温度上昇が得られる。f−係数が3であるワイヤの場合、1マイクロオーム−cmの抵抗率によって約20Kの温度上昇が得られる。
【0086】
したがってスタビライザ抵抗率の値は、1〜10マイクロオームcmの範囲であることが好ましい。開始パラメータの範囲がもう少し広い場合、より広い0.8〜15マイクロオームcmの範囲の抵抗率も可能である。これらの値は、文献で取り上げられているHTSケーブルのための先行手法の値とは異なっている。一方では、電流を制限するためではなく、どちらかと言えば保護を目的として設計されたほとんどのHTSケーブルは、77〜90Kの温度範囲における抵抗率が0.5マイクロオーム−cm未満である低抵抗率銅分路を使用して構築された。他方では、電流制限ケーブルのための従来の設計(SUPERPOLI Fault−Current Limiters Based on YBCO−Coated Stainless Steel Tapes by A.Usoskin et al.、IEEE Trans.on Applied Superconductivity、Vol.13、No.2、2003年6月、1972〜5頁参照)には、通常の抵抗性状態で約100マイクロオーム−cmの抵抗率を有する超伝導体自体のロッドまたはシリンダか、あるいはステンレス鋼によって安定化された、>50マイクロオーム−cmの抵抗率を有するHTSワイヤのロッドまたはシリンダのいずれかが使用された。中間の範囲のスタビライザ抵抗率を使用している本発明の解決法は、これまで認識されていなかった。
【0087】
次に、長さが600mの同じケーブル(つまり同じワイヤ特性を使用して同じ方法で構築された138kV、2400Aのケーブル)の実施例について考察する。図9の電源電圧およびインピーダンスの値は、同じ値がそのまま維持されている。しかしながら、従来のケーブル200のインピーダンスは、非超伝導状態で0.57+j0.10オームであり、また、HTSケーブル150のインピーダンスは、非超伝導状態で0.88+j0.005オームである。このシナリオの場合、故障電流は、51kAから48kAまでしか低減されない。故障電流をさらに小さくするために、リアクトル(例えばリアクトル206)を従来のケーブル200に直列に挿入することができる。例えば1.4mHのリアクトルは0+j0.53オームのインピーダンスを有しており、このインピーダンスが従来のケーブルインピーダンスに追加されると(それらが直列に接続されるため)、ケーブルの中を流れる総故障電流は40kAまで低減される。
【0088】
故障電流制限ケーブル150の正味効果は、ケーブルシステムの衝撃分岐における電流をf−係数と臨界電流Iの積以下のレベルまで制限すること、高速スイッチアセンブリ208を保護すること、および残りの故障電流を非超伝導ケーブル200およびリアクトル206の方へ向けることである。上記実施例の場合、本開示による故障電流制限HTSケーブル設計を使用することなく、ケーブルシステムの分岐における故障電流を著しく大きくすることができる(例えば一桁程度大きくすることができる)。しかしながら、正確な電流レベルは、電気経路内のインピーダンスおよび電力レベルで決まる。高速スイッチアセンブリ208が開くと、故障電流は、遮断器34、36が開くまでの間、非超伝導ケーブル200およびリアクトル206を通って流れる。非超伝導ケーブル200およびリアクトル206のインピーダンスを適切に選択することにより、所望のレベルまで故障電流を制限することができる。数分後に超伝導ケーブル150がその超伝導状態に復帰すると、高速スイッチアセンブリ208を閉じてシステムにその元の動作を再開させることができる。
【0089】
超伝導ケーブル150は、上では、ケーブル全体が共通の超伝導パラメータを有する単一の超伝導ケーブル(例えば単一の超伝導材料でできたケーブル)として説明されているが、他の構成も可能であり、本開示の範囲内であると見なされている。例えば同じく図12を参照すると、複数のまったく異なる超伝導ケーブル部分450、452を備えた代替実施形態超伝導ケーブル150’が示されている。図に示されている代替実施形態超伝導ケーブル150’は、2つの超伝導ケーブル部分450、452を備えているが、これは単に説明を目的としたものにすぎず、超伝導ケーブル部分の実際の数はアプリケーションに応じて増/減させることができるため、本開示を制限することは意図されていない。
【0090】
超伝導材料によって移行特性が変化するため(つまり超伝導状態から通常の状態へ移行する間)、いくつかの超伝導材料は、本来、故障電流制限アプリケーションにおいては他の超伝導材料より良好である。例えば、YBCO(つまりイットリウム・バリウム・銅・酸化物)導体は、そのn値がより大きいため、故障電流制限アプリケーションの場合、通常、BSCCO(つまりビスマス・ストロンチウム・カルシウム・銅・酸化物)導体より優れていると見なされている。超伝導体のn値は、超伝導状態から通常の状態への移行の突発性を表すために使用されている。n値の典型的な例は、場合によっては10〜100の範囲に存在しており、YBCOワイヤは25〜30のn値を有しており、また、BSCCOワイヤは15〜20のn値を有している。
【0091】
したがって超伝導ケーブル部分は、複数の超伝導ケーブル部分(例えばケーブル部分450、452)で構築することができ、超伝導ケーブル部分450、452は、それぞれ異なる超伝導材料を使用して構築されている。例えば超伝導ケーブル部分450をBSCCO(つまりビスマス・ストロンチウム・カルシウム・銅・酸化物)ワイヤで構築し、一方、超伝導ケーブル部分452をYBCO(つまりイットリウムすなわち希土類・バリウム・銅・酸化物)ワイヤで構築することができる。BSCCOケーブル部分450の例には、それには限定されないが、日本の大阪在所の住友電気工業株式会社およびマサチューセッツ州ウェストバラ在所のAmerican Superconductor Corporationが製造しているBSCCOワイヤを含むことができる。YBCOケーブル部分452の例には、それには限定されないが、マサチューセッツ州ウェストバラ在所のAmerican Superconductor Corporationが製造しているYBCOワイヤを含むことができる。
【0092】
したがって全体がBSCCOワイヤのみで構築された超伝導ケーブルは、故障電流制限デバイスとしてのその有効性は場合によっては限られているが(つまりn値が小さいために)、より大きいn値を有するワイヤを使用して構築されたケーブル部分を追加することにより、ケーブル全体(つまりケーブル部分450、452の組合せ)を故障電流制限デバイスとして有効なものにすることができる。したがって、n値が大きいケーブル部分(例えば本開示の中で説明されているように設計されたYBCOワイヤを使用して構築された超伝導ケーブル部分452)をn値が小さい既存のケーブル部分(例えばBSCCOワイヤを使用して構築された超伝導ケーブル部分450)に追加することによって故障電流制限超伝導ケーブル150’を実現することができる。この構成の場合、ケーブル部分452の大きいn値の移行特性を使用して、所望の故障電流制限効果を超伝導ケーブル150’(n値が小さいケーブル部分450を備えている)の中に達成することができる。
【0093】
以上、多くの実施態様について説明した。しかしながら、様々な修正を加えることができることは理解されよう。したがって他の実施態様は、以下の特許請求の範囲の範疇である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既知の故障電流レベルを有する電力公益事業電力格子内に含まれるように構成された超伝導電気ケーブルシステムであって、
前記電力公益事業電力格子の第1の分岐点と第2の分岐点の間に相互接続された非超伝導電気経路と、
前記電力公益事業電力格子の前記第1の分岐点と前記第2の分岐点の間に相互接続された超伝導電気経路であって、当該超伝導電気経路および前記非超伝導電気経路が並列に電気接続され、当該超伝導電気経路が臨界電流レベルおよび臨界温度未満で動作する場合、前記非超伝導電気経路より小さい直列インピーダンスを有する超伝導電気経路と
を備え、
前記超伝導電気経路が、臨界電流レベルおよび超伝導体臨界温度のうちの1つまたは複数で動作し、あるいはそれより高いレベルまたは高い温度で動作する場合、前記非超伝導電気経路の前記直列インピーダンスの少なくともN倍の直列インピーダンスを有するように構成され、Nが1より大きく、かつ、前記非超伝導電気経路のインピーダンスと相まって前記既知の故障電流レベルを少なくとも10%減衰させるように選択される超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項2】
前記非超伝導電気経路が非低温温度に維持される、請求項1に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項3】
前記非低温温度が少なくとも273Kである、請求項2に記載の超伝導電気ケーブル。
【請求項4】
前記超伝導電気経路がケーブルアセンブリ内に含まれ、また、前記非超伝導電気経路が前記ケーブルアセンブリの外側に位置している、請求項1に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項5】
前記非超伝導電気経路の前記インピーダンスを調整するためのインピーダンス調整デバイスをさらに備えた、請求項1に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項6】
前記インピーダンス調整デバイスがリアクトルアセンブリを備えた、請求項5に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項7】
前記超伝導電気経路に直列に電気結合された高速スイッチをさらに備えた、請求項1に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項8】
前記超伝導電気経路が第1の超伝導ケーブル部分および少なくとも第2の超伝導ケーブル部分を備えた、請求項1に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項9】
前記第1の超伝導ケーブル部分が第1のHTS超伝導材料を備え、前記少なくとも第2の超伝導ケーブル部分が第2のHTS超伝導材料を備えた、請求項8に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項10】
前記第1のHTS超伝導材料がYBCO材料を備え、前記第2のHTS超伝導材料がBSCCO材料を備えた、請求項8に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項11】
Nが3以上である、請求項1に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項12】
Nが5以上である、請求項1に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項13】
前記非超伝導電気経路が少なくとも1つの非超伝導電気ケーブルを備えた、請求項1に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項14】
前記非超伝導電気経路が少なくとも1つの非超伝導電気架空線路を備えた、請求項1に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項15】
前記超伝導電気経路が、1つまたは複数の超伝導電気ケーブルおよび1つまたは複数の高速スイッチアセンブリのうちの1つまたは複数を備えた、請求項1に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項16】
前記非超伝導電気経路が、1つまたは複数の非超伝導電気ケーブル、1つまたは複数の母線、1つまたは複数の変電所および1つまたは複数のリアクトルアセンブリのうちの少なくとも1つを備えた、請求項1に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1つの超伝導電気ケーブルが、中央に配置された軸方向冷媒通路であって、前記中央に配置された軸方向冷媒通路を介して冷媒を軸方向に分配することができるように構成された冷媒通路を備えた、請求項16に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項18】
前記超伝導電気経路が、90Kの温度範囲で0.8マイクロオーム−cmより大きい抵抗率を個々に有する複数の導電コンポーネントを備えた、請求項1に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項19】
前記少なくとも1つの超伝導電気ケーブルが1つまたは複数のHTSワイヤを備えた、請求項16に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項20】
前記複数のHTSワイヤのうちの少なくとも1つが、イットリウムすなわち希土類・バリウム・銅・酸化物、タリウム・バリウム・カルシウム・銅・酸化物、ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・銅・酸化物、水銀・バリウム・カルシウム・銅・酸化物およびマグネシウム・ジボライドからなるグループから選択される材料で構築される、請求項19に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項21】
前記複数のHTSワイヤのうちの少なくとも1つがカプセル封じ剤を備えた、請求項19に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項22】
前記1つまたは複数のHTSワイヤのうちの少なくとも1つが、200〜600ミクロンの範囲内の総合厚さを有し、かつ、90Kで0.8〜15.0マイクロオーム−cmの範囲内の抵抗率を有する1つまたは複数のスタビライザ層を備えた、請求項19に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項23】
前記スタビライザ層が少なくとも部分的に黄銅材料で構築された、請求項22に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項24】
前記1つまたは複数のHTSワイヤのうちの少なくとも1つが、200〜1000ミクロンの範囲内の総合厚さを有し、かつ、90Kで1〜10マイクロオーム−cmの範囲内の抵抗率を有する1つまたは複数のスタビライザ層を備えた、請求項19に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項25】
前記1つまたは複数のHTSワイヤのうちの少なくとも1つが、臨界電流レベル未満の超伝導モードで動作するように構成された、請求項24に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項26】
前記1つまたは複数のHTSワイヤのうちの少なくとも1つが、臨界電流レベル以上の非超伝導モードで動作するように構成された、請求項19に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項27】
既知の故障電流レベルを有する電力公益事業電力格子内に含まれるように構成された超伝導電気ケーブルシステムであって、
前記電力公益事業電力格子の第1の分岐点と第2の分岐点の間に相互接続された非低温非超伝導電気経路と、
前記電力公益事業電力格子の前記第1の分岐点と前記第2の分岐点の間に相互接続された超伝導電気経路であって、当該超伝導電気経路および前記非超伝導電気経路が並列に電気接続され、当該超伝導電気経路が臨界電流レベル未満で動作する場合、前記非超伝導電気経路より小さい直列インピーダンスを有する超伝導電気経路と
を備え、
前記超伝導電気経路が、臨界電流レベルで動作し、あるいはそれより高いレベルで動作する場合、前記非超伝導電気経路の前記直列インピーダンスの少なくともN倍の直列インピーダンスを有するように構成され、Nが1より大きい超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項28】
前記非低温非超伝導電気経路が少なくとも273Kの非低温温度に維持される、請求項27に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項29】
前記超伝導電気経路がケーブルアセンブリ内に含まれ、また、前記非低温非超伝導電気経路が前記ケーブルアセンブリの外側に位置している、請求項27に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項30】
前記非低温非超伝導電気経路の前記インピーダンスを調整するためのインピーダンス調整デバイスをさらに備えた、請求項27に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項31】
前記インピーダンス調整デバイスがリアクトルアセンブリを備えた、請求項30に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項32】
前記超伝導電気経路が第1の超伝導ケーブル部分および少なくとも第2の超伝導ケーブル部分を備えた、請求項27に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項33】
前記第1の超伝導ケーブル部分が第1のHTS超伝導材料を備え、前記少なくとも第2の超伝導ケーブル部分が第2のHTS超伝導材料を備えた、請求項32に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項34】
前記第1のHTS超伝導材料がYBCO材料を備え、前記第2のHTS超伝導材料がBSCCO材料を備えた、請求項32に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項35】
Nが3以上である、請求項27に記載の超伝導電気ケーブルシステム。
【請求項36】
Nが5以上である、請求項27に記載の超伝導電気ケーブルシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2010−518803(P2010−518803A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549170(P2009−549170)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/052293
【国際公開番号】WO2008/121430
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(509225166)アメリカン スーパーコンダクター コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】