説明

並行スクリーニングの超臨界流体クロマトグラフィ

本発明は、超臨界流体クロマトグラフィ用の装置を提供する。装置は、バイナリーポンプ、オートサンプラ、サンプル採取弁と、第1および第2ポート切替弁と、第1および第2マニホルドと、逆止め弁アセンブリと、分離カラムおよびそれに動作可能に接続された1つまたは複数の検出器をそれぞれが有する複数のチャネルと、背圧調整器とを備える。装置は、多チャネルモードと単一チャネルモードの切替えを含む、装置を通る流体の分配を制御し、2)1つまたは複数の検出器によって収集されたデータを分析し、3)溶媒の組み合わせ、濃度勾配、圧力および温度を制御することによってアナライトの分離を最適化するためのコンピュータソフトウェアおよびハードウェアも含む。装置は個々のチャネルに追加の調整器またはポンプを必要としない。複数のサンプルが並行処理によって同時にスクリーニングされることができる、上述の装置を使用して超臨界クロマトグラフィを使用してサンプルをスクリーニングする方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年9月29日に出願された仮出願番号61/194625の優先権を主張する。同出願の全てが参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、2つ以上のサンプルを超臨界流体クロマトグラフィで並行処理する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
クロマトグラフィは、とりわけ開始材料の構成成分を分離するために使用される技法である。クロマトグラフィの一般的な分野には、順相と逆相を含むいくつかのタイプがある。超臨界流体クロマトグラフィ(SFC)は、典型的には移動相の臨界点付近でまたは臨界点上で作動する高圧力方法であって、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)などの従来の技法に対して著しい速度上の優位性と分解能とを提供する。SFCは、クロマトグラフィ分離を実施するために、移動相として二酸化炭素または他の圧縮性流体を、時として共溶媒とともに使用する。SFCは広範囲の適用性を有し、カラムの充填材料に典型的には3から20ミクロンの小粒子サイズを使用し、圧力降下が小さいことから分析規模から実験規模の適用である。HPLCを適用した場合、カラム頂部の圧力は典型的には数千psiに、または数万psiにさえも達するが、底部では大気圧力まで低下して、大きな圧力降下を生じる。製薬業および精製化学製品製造業などの産業で分離用の超臨界流体クロマトグラフィ(SFC)がますます重要な役割を担っていること、ならびにそのような産業で多様な特性の化合物が使用されていることにより、新たな最適化された方法開発の方法論と、そのような新たな方法論のためのシステムとが求められている。SFCは順相クロマトグラフィの技法であり、分離の条件を決定するために溶媒およびカラムをスクリーニングすることが必要である。分離の目的は分析のためのスクリーニングである場合もあり、化合物を大量に分離するための最適化方法である場合もある。現在のところ、SFC処理では、混合物または化合物が、CO2および共溶媒用のバイナリーポンピングシステムと、注入用オートサンプラと、開始混合物または化合物の構成成分を検出する検出器(複数可)と、圧力調整用の自動背圧調整器とを含むシステムの中に逐次的に注入されている。方法およびシステムのユーザは、望ましい結果が得られるまで、勾配条件、カラム、溶媒、圧力、および温度を変化させることによって注入を逐次繰り返している。これらの結果を迅速かつ自動的に得られることが極めて望ましい。結果が得られた後は、結果はユーザによって検討されることができ、結果を検証するための追加条件を選択することによってさらに最適化されることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在のSFC処理およびシステムの逐次的な特質は、最適化の処理を時間の掛かるものにしてしまう可能性がある。したがって、複数の混合物および化合物を逐次的にではなく、並行して処理する効果的な方法および装置が求められている。これがあれば、方法をより速くなるよう最適化することによって処理の時間およびコストを著しく軽減することになる。
【0005】
本発明は、サンプルおよび混合物を並行モードで処理する、従来技術の逐次処理で経験された欠点の一部を克服する装置および方法を対象としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、一態様では、本発明は超臨界流体クロマトグラフィ用の装置であって、バイナリーポンプと、オートサンプラと、サンプル採取弁と、第1および第2ポート切替弁と、第1および第2マニホルドと、逆止め弁アセンブリ、分離カラムおよびそれに動作可能に接続された1つまたは複数の検出器をそれぞれが有する複数のチャネルと、1)多チャネルモードと単一チャネルモードの切替えを含む、装置を通る流体の分配を制御し、2)1つまたは複数の検出器によって収集されたデータを分析し、3)溶媒の組み合わせ、濃度勾配、圧力および温度を制御することによってアナライトの分離を最適化するためのコンピュータソフトウェアおよびハードウェアと、背圧調整器とを備え、個々のチャネルには追加の背圧調整器またはポンプが必要ない装置を提供する。
【0007】
さらなる態様では、本発明は超臨界流体クロマトグラフィを使用してサンプルをスクリーニングする方法であって、混合移動相を作り出すために、対象とするアナライトを含むサンプルを、超臨界流体および任意選択で適切な溶媒に混合するステップと、混合移動相を流路に沿ってオートサンプラへ移動させるステップと、混合移動相の単一の部分をオートサンプラの中へ注入するステップと、単一の部分を流路に沿って第1カラム切替弁を通して第1マニホルドに移動させるステップと、単一の部分を複数の副次部分に分割し、複数の副次部分のそれぞれを個々の分離用チャネルに向けるステップと、複数の副次部分のそれぞれを同時に、個々のチャネルそれぞれに沿って、分離カラムを通しかつ1つまたは複数の検出器を通して移動させるステップと、単一の流出ストリームを作り出すために複数の副次部分を第2逆止め弁および第2マニホルドを通して移動させるステップと、流出ストリームを流路に沿って背圧調整器に移動させるステップとを備える方法を提供する。
【0008】
本発明のこれらおよび他の態様が、以下の詳細な説明、図面、および添付の請求項からより容易に明らかとなる。
【0009】
本発明は以下の図面によってさらに図示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の装置の一実施形態の概略図である。
【図2】本発明の装置の他の実施形態の概略図である。
【図3】本発明の逆止め弁アセンブリの実施形態の概略図である。
【図4A】実施例1に記載のクロマトグラムである。
【図4B】実施例1に記載のクロマトグラムである。
【図4C】実施例1に記載のクロマトグラムである。
【図4D】実施例1に記載のクロマトグラムである。
【図5A】実施例2に記載のクロマトグラムである。
【図5B】実施例2に記載のクロマトグラムである。
【図5C】実施例2に記載のクロマトグラムである。
【図5D】実施例2に記載のクロマトグラムである。
【図6A】実施例3に記載のクロマトグラムである。
【図6B】実施例3に記載のクロマトグラムである。
【図6C】実施例3に記載のクロマトグラムである。
【図6D】実施例3に記載のクロマトグラムである。
【図7A】実施例4に記載のクロマトグラムである。
【図7B】実施例4に記載のクロマトグラムである。
【図7C】実施例4に記載のクロマトグラムである。
【図7D】実施例4に記載のクロマトグラムである。
【図8A】実施例5に記載のクロマトグラムである。
【図8B】実施例5に記載のクロマトグラムである。
【図8C】実施例5に記載のクロマトグラムである。
【図8D】実施例5に記載のクロマトグラムである。
【図9A】実施例6に記載のクロマトグラムである。
【図9B】実施例6に記載のクロマトグラムである。
【図9C】実施例6に記載のクロマトグラムである。
【図9D】実施例6に記載のクロマトグラムである。
【図9E】実施例6に記載のクロマトグラムである。
【図9F】実施例6に記載のクロマトグラムである。
【図9G】実施例6に記載のクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書および本請求項で使用される際、実施例も含めて、特段の明示がない限り「約」という言葉が明らかに現れていなくとも全ての数字はその言葉が前に付いているように読まれてもよい。また、本明細書で掲げられる数値範囲はそれに含まれる全ての副次的範囲も含むものである。
【0012】
本発明は、並行超臨界流体クロマトグラフィ(SFC)の方法および装置について述べる。
【0013】
ここに例証される本発明の実施形態では、並行スクリーニングの方法は、同じ処理内でサンプルを同時に複数のコラムで処理する。
【0014】
例示的な実施形態の方法は、サンプルを分析システム上の5つのチャネルで超臨界流体クロマトグラフィ(SFC)によって同時に処理することを含む(図1に示される通り)。5つという数は、説明を簡単にするための恣意的なものである。ユーザの必要に応じて任意の数のチャネルがシステム内に設計されることができる。並行スクリーニングは、96チャネル以下の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24などの任意の数のチャネル、または必要に応じてさらに多くのチャネルで達成されることができる。方法は原サンプルの一部分をSFC流路に沿って第1チャネルへと回すこと、サンプルの一部分を単一ピークのプロフィルに分離すること、ピークを流路の下方に移動させることを含む。流れストリーム内の超臨界流体の圧力は、下流の背圧調整器によって調整される。方法は、ピーク特性の判定のために、分離されたピークを流路の下方に、この同じ第1流路内に挿入された分析器へと回すことも含む。
【0015】
方法は、流れストリームがこの第1チャネルから分析器を通過した後、サンプルが流路の端部の背圧調整器へと回る前に、必要であればさらなる分析処理、例えば分子的同定のためにサンプルの一部分を質量分析器へとスプリットすること、またはサンプルの一部分を確証的定量分析のために蒸発光散乱検出器へとスプリットすることなどのためにサンプルを再結合するように、他のチャネルからの流れストリームと合流させるためのマニホルド(または弁/マニホルド)へと流れストリームを移動させることをさらに含む。
【0016】
この図示されている実施形態の並行スクリーニング方法は、第1チャネルの処理と同時にサンプルの他の部分を第2チャネルに沿って処理することをさらに含む。
【0017】
第2チャネルでの処理は、原サンプルの他の部分をSFC流路に沿って第2チャネルに回すこと、サンプルを単一ピークのプロフィルに分離すること、ピークを流路の下方に移動させることを含む。第2チャネルの流れストリーム内の超臨界流体の圧力も、第1チャネルに使用されるものと同じ下流の背圧調整器によって調整される。方法は、分離されたピークを流路の下方にピーク特性判定用の分析器へと回すことも含む。この分析器は、第1チャネル内で使用されるものと同様、同じように機能し、これも完全にこの第2チャネル専用である。しかしながら、分析器のタイプは必ずしも第1のものと同じでなくてもよい。設計の目的に応じて任意のタイプの分析器であることができる。ソフトウェアは、チャネルで使用される検出器(複数可)のタイプに応じて、対象とする全てのデータ型、例えば、以下に限定されないが、任意の指定の紫外線波長(UV)下の吸収量と、フォトダイオードアレイ検出器(PDA)、光散乱検出器(ELSD)および質量分析器(MS)、炎イオン化検出器(FID)、化学発光窒素検出器(CLND)、コロナエアロゾル検出器(CAD)、円偏光二色性(CD)および他のキラル検出器、オンラインの赤外線(IR)および核磁気共鳴検出器(NMR)による全スペクトルの判定とを含むあらゆるデータ型を収集するようにプログラムされる。
【0018】
方法は、分析器を通過させた後に、サンプルを流路の端部の背圧調整器へ回す前に、必要に応じてさらなる分析処理をするよう部分サンプルを再結合するために、上述の第1チャネルを含む他のチャネルからの流れストリームと合流させるよう、この第2チャネルから流れストリームを下方に、第1チャネルで使用される同じマニホルド(または弁/マニホルド)へと移動させることをさらに含む。
【0019】
本発明の例示的な実施形態では、並行スクリーニングの方法は、第3チャネル、第4チャネル、および第5チャネルに沿った原サンプルの一部分を、第1および第2チャネルに関して、以上に説明した処理と同様の方法で処理することを含む。この実施形態では、専用の分析器が、対応するチャネル内それぞれのサンプルの部分を分析するよう使用されてから、必要に応じてさらなる分析処理をするために、サンプルは同じマニホルド(または弁/マニホルド)に回されて、ストリームを下方に移動する他の全てのチャネルとサンプルを再結合される。再結合されたストリームは続けて流路を下方に移動し、同じ背圧調整器へと至る。
【0020】
上述の並行スクリーニングの装置および方法に加えて、追加の実施形態で、本発明はまた、サンプルおよび混合物を従来の逐次モードで処理する装置および方法を対象とする。本発明の図示された実施形態(図2に示されている)では、従来の逐次スクリーニングの方法が、同じ処理内でサンプルを複数のカラムで逐次的に処理する。この例示的な実施形態の方法は、サンプルを分析システム内の5つのチャネルで超臨界流体クロマトグラフィ(SFC)によって逐次的に処理することを含む。当業者に理解されるように、システムおよび装置は、96チャネル以下の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24などの任意の数のチャネル、またはユーザの必要に応じてさらに多くのチャネルで逐次スクリーニングを行うよう適合される。
【0021】
方法は、注入されたサンプルを流路に沿って、選択弁スイッチによって任意の単一チャネルへと回すことを含む。ストリームが特定のチャネルに沿って移動すると、流れが一度に任意の単一の特定チャネルに沿ってのみ移動するように、切替弁と方向弁の組み合わせによって流れの制御が実現される。方法はサンプルをさらに分離し、サンプルを流路の下方に、そのチャネル内に挿入されたピーク特性判定用の分析器へと移動させる。方法は、流れストリームを分析器に通過させた後、マニホルド(または弁/マニホルド)を通して移動させ、流れストリームは続けて下流に背圧調整器へと移動する。チャネル内の超臨界流体の圧力は背圧調整器によって制御される。
【0022】
本発明のこの実施形態では、従来の逐次スクリーニングモードの方法は、サンプルを逐次的に第1チャネル、第2チャネル、第3チャネル、第4チャネル、および第5チャネル(または任意の数のチャネル)を通して処理する。各チャネルで、サンプルは流路に沿って移動し、分離カラムを介して分離され、チャネル内の判定用の専用分析器を通して回され、次いで下流にマニホルド(または弁/マニホルド)を通って移動し、背圧調整器へと渡る。この装置および方法によって、本発明が、様々な分析用途のための1つの実施形態の中に新規の並行処理モードとともに従来の逐次処理モードを両方有することが可能になる。
【0023】
図1を参照すると、並行処理実施形態では、装置は、二酸化炭素などの超臨界流体をポンピングするバイナリーポンプとメタノールなどの調整剤または共溶媒とをシステムの中に備える。注入器は混合物を切替弁に連結されたラインの中に注入し、切替弁は、流れを逆止め弁(方向弁)を有する弁用マニホルドに向ける。弁用マニホルドは、流れ(または流れの一部分)を1つまたは複数の分離用分離カラムに向ける。ライン毎に、図1で表わされているようなUV検出器などの個々の検出器が配置される。任意のタイプの検出器が任意のラインに配置されてもよい。次いで流れは、第2切替弁に連結された第2マニホルドに向けて送られる。背圧調整器が全システムの圧力を調整する。
【0024】
並行チャネルスクリーニングによるサンプルの分析処理、ならびに単一チャネル内の集中的な最適化がクロマトグラフィによって、特に以下により詳しく説明される超臨界流体クロマトグラフィ(SFC)によって達成される。
【0025】
以下の参照数字は、図1、図2、および図3に示された以下の構成要素を指す。
【0026】
モジュール1 バイナリー流体送達モジュール
モジュール2 オートサンプラ
モジュール3 カラムオーブン
項目
1 上流のポート切替弁
2 上流の並行スクリーニング用マニホルド
3−1 逆止め弁アセンブリ
3−2 逆止め弁アセンブリ
3−3 逆止め弁アセンブリ
3−4 逆止め弁アセンブリ
3−5 逆止め弁アセンブリ
4−1 チャネル1
4−2 チャネル2
4−3 チャネル3
4−4 チャネル4
4−5 チャネル5
5−1から5−5 逆止め弁
6 下流のマニホルド
7 下流のポート切替弁
8−1 T継手
8−1 T継手
8−1 T継手
8−1 T継手
8−5 T継手
9 CO供給部(顧客供給)
10 冷却水槽
11 冷却熱交換器
12 COポンプ
13 調整剤貯留部
14 溶媒弁
15 調整剤ポンプ
16 緩衝剤チャンバ
17 起動/逃し弁
18 静混合器
19 緩衝液
20 注射器
21 弁
22 サンプルのループ
23 注入弁装填位置
24 サンプル
25 ISS弁
26 ABPR自動BPR
27 UV検出器
28 UV検出器
29 UV検出器
30 UV検出器
31 UV検出器
32 ねじ
33 ブラケット
34 アセンブリ底部へのライン
35 ブロック
36 逆止め弁
37 逆止め弁ハウジング
38 ライン取付け具(ナットおよびフェルール)
39 マニホルドからのライン
40 チャネル/カラムへのライン
【0027】
図1で、モジュール1のボックスは、単一のバイナリー流体送達のモジュールである。これは、超臨界流体CO2をCO2ポンプによって送達し、それを調整剤ポンプによってポンピングされる共溶媒と混合する。CO2は、独立型シリンダまたは大量供給ラインのいずれかから供給され、昇圧機構または類似のものによって公称圧力範囲に、機器の動作に最適な圧力にされ、超臨界状態へとポンピングされる。モジュール1内で、共溶媒は、様々なタイプおよび組み合わせのクロマトグラフィに適合した溶媒から溶媒選択弁によって選択され、調整剤ポンプによって、超臨界CO2と混合するための混合器へとポンピングされる。
【0028】
この混合移動相は流路に沿って移動してモジュール2、オートサンプラに到達する。オートサンプラ内では、1回のみのサンプル注入が行われ、注入されたサンプルは注入弁によって切り替えられて流れストリームの中へ至る。注入方法は、サンプル取扱い機能を備えたオートサンプラであることができ、または手動の注入弁が使用されることができる。ここに図示された実施形態は、プレート取扱い機能を備えたオートサンプラを使用する。
【0029】
サンプルが注入されると、混合移動ストリームは流路に沿って回り、モジュール3、カラムオーブンに到達する。動作温度範囲は、移動相の臨界状態に対して通常40℃から90℃である。オーブンは、並行(および/または単一)スクリーニングモードを実現するように設計された弁システムも収容する。望まれる並行スクリーニングモードでは、ストリームは最初にカラム切替弁1を通過し、マニホルド2に通じる指定ポートによって移動する。注入されたサンプル部分はマニホルド2を通して多数の方向に分割されることができる。ある部分は逆止め弁アセンブリ3−1を通って移動し、第1チャネル4−1へと至る。
【0030】
チャネル4−1では、分析目的および検査目的のためにサンプルのこの部分に対して分離を実施するようSFCカラムが設置される。このチャネル内で分離が達成された後、サンプルの分離された部分は下流にこのチャネル内の専用検出器へと移動する。ここに図示される実施形態では、専用検出器はUV検出器である。分離されたサンプルの特性が検出器内で判定され、対応するデータがソフトウェアによって得られ、同定目的のための具体的なチャネルの情報とともに記録される。ユーザの必要に応じて、多数の検出器がこの第1チャネルに沿って(または任意のチャネルに沿って)設置されることができる。
【0031】
サンプルの部分は検出器を通過した後、逆止め弁5−1、マニホルド6、および自動背圧調整器(ABPR)を通って移動して、処理が完了する。
【0032】
第1部分が第1チャネルを通過するサンプルの時間スケール内で、マニホルド2で分割されたサンプルの第2部分が逆止め弁アセンブリ3−2を通過して第2チャネル4−2に至る。チャネル4−2には、分析目的および検査目的のために、サンプルのこの部分に対して分離を実施するようSFCカラムが設置される。この第2チャネル内で分離が達成された後、サンプルの分離された部分は下流にこの第2チャネル上の専用検出器へと移動する。ここに図示される実施形態の専用検出器はUV検出器である。分離されたサンプルの特性が検出器内で判定され、対応するデータがソフトウェアによって得られ、同定目的のため具体的なチャネルの情報とともに記録される。ユーザの選択に応じて、この第2チャネルに沿って多数の検出器が設置されることができる。
【0033】
サンプルの第2部分は検出器を通過した後、逆止め弁5−2およびマニホルド6を通って移動する。マニホルド6では第2部分は第1部分と再結合して同じストリームになり、自動背圧調整器(ABPR)へと移動して、処理が完了する。様々な検出目的を達成するために、ABPRの前にも任意選択でその後にも、流路に沿った任意の点に多数の検出器、ならびにフラクションコレクタなどの他のタイプの装置も設置されることができることに留意されたい。
【0034】
同様に、分割されたサンプルの第3、第4、および第5部分が同時に、対応する第3、第4、および第5チャネルを通って流れて、分析が行われる。ここに図示された実施形態では、第3および第4チャネルにはUV検出器が使用され、第5チャネルにはフォトダイオードアレイ検出器(PDA)が使用される。原サンプルの全ての部分が分離後に検出器を通り抜け、逆止め弁5−3、5−4、および5−5の後にマニホルド6で前述の第1および第2部分と一緒に再結合し、続けて流路を下方に移動し、背圧調整器へと至る。
【0035】
この並行スクリーニングモードは、図示された実施形態によって実現されるが、本発明は、望ましい分離性能を得るように条件を最適化するための、または任意の単一のチャネルで実験をするための、逐次スクリーニングモードならびに単一チャネル動作モードを可能にする単一チャネル機能の設計特色も有する。
【0036】
ここに図示された実施形態では、単一チャネルモードが望まれる場合、この特色を達成するためにモジュール3内の設計された弁システムが使用される。例えば、チャネル3でのスクリーニングが望まれる場合、注入されたサンプルが直接的に逆止め弁アセンブリ3−3にしか流れずにマニホルド2を迂回するように、カラム切替弁が特定の位置にプログラムされる。このようにして、注入されたサンプルは分析目的のためにチャネル4−3のみを下方に流れ、モジュール3内の弁システムの方向機構によって、任意の他の方向に任意の他のチャネル内を流れることを防止される。例えば、チャネル3が選択される場合、第1切替弁は、逆止め弁3−3に直接連結されたポートへと回転し、ストリームは3−3のT継手の点へと直接流れるが、マニホルド2を通ることはない。これは逆止め弁3−3が流れを一方向にのみ進行させて、流れはマニホルド2へと逆向きに流れることができなくなり、チャネル4−3などを下方に進行することしかできなくなるためである。このようにして単一チャネルの機能が創出される。
【0037】
同じように、図示された実施形態内の個々のチャネルは全て単一チャネルのスクリーニングモードを有するようにもプログラムされる。したがって、サンプル分析のための逐次スクリーニングは、制御ソフトウェアによってプログラムされる通りに任意の所望のチャネルの組み合わせとともにサンプルを単一チャネルモード内に一度ずつ注入することによって実現される。
【0038】
逐次スクリーニングモードでも、並行スクリーニングモードで使用されるように、多数の検出器および他の装置が任意の所望のチャネルに特定の用途目的のために同様に設置されることができることに留意されたい。
【0039】
本発明の方法では、弁システムが、他のハードウェアおよびソフトウェアとともに、カラムを備えた全てのチャネルでの同時スクリーニングを可能にする。
【0040】
弁アセンブリは、図3に示された逆止め弁と混合用T継手との組み合わせである。それらは両方とも現在TharSFC社によって製造されている。並行スクリーニングが実現される弁システムは、他のハードウェアおよびソフトウェアと共に、他のいずれのチャネルを指定時間に使用する必要もなく、特別の事象が起こることもなくユーザ定義の好ましい単一チャネルが使用されることができる単一チャネルのスクリーニングモードも可能にする。
【0041】
本発明の方法に使用されるソフトウェアは、サンプルを注入する度に逐次的に、多数の共溶媒、勾配条件、温度および圧力条件をスクリーニングする機能を備えるようプログラムされる。さらに、ソフトウェアは、分離を最適化するように、全てのチャネルに対してスクリーニングの勾配(gradient)条件または無勾配(isocratic)条件を同時にプログラムするよう使用されることができる。
【0042】
ソフトウェアは、各運転を、ユーザ指定の基準に基づいて、チャネル毎の分離の性能について評価し、次いで最も優れたカラム性能を備えたチャネルを識別することにより、かつそれらの基準に基づいて最適化条件を備えた単一チャネルのモードで運転するように弁を切り替えることによってシーケンスに追加の運転を加える。例えば、ユーザは、どのチャネルが最も性能がよいかを自動的に判定するためにソフトウェアが使用する望ましいピーク計数と分離係数とを選択し、次いで最適化用のその単一のチャネルで分離を繰り返し運転するようハードウェアを操作してもよい。そうすればユーザは単にハードウェアにサンプルを充填し、処理を開始すればよいだけになる。
【0043】
ソフトウェアは、任意の特定のサンプルについて、様々な特性判定の組み合わせから、例えば以下に限定されないが、任意の指定の紫外線波長(UV)下の吸収量、フォトダイオードアレイ検出器(PDA)、光散乱検出器(ELSD)および質量分析器(MS)による全スペクトルの判定などから全てのデータ型を同時に得るようにも設計されている。ソフトウェアは、得られた全てのデータ型について、意志決定のためのユーザへの報告の形で単一データパッケージの出力を提供する。この報告は、ユーザがどのチャネルおよび条件がどの程度成功したかを迅速に判定できるように、選択されたチャネルおよび条件を表わすのに必要な全ての情報を含んでいて、最適化のために候補が迅速かつ効果的に選択されるようになる。異なる実施形態では、背圧調整器の前で全てのストリームが一緒に合流する場所に質量分析器(MS)が配置されることができる。この実施形態では、全てのチャネルでスクリーニングが実施されるとき、生成されるMSデータ(スペクトル)は全てのチャネルの出力の組み合わせとなる。ソフトウェアは追加の処理によってデータを分解するよう、また特定チャネルの検出器によって生成されたデータに基づいてスペクトルを各チャネルに関連付けるよう試みる。
【0044】
実施例
以下は、本発明による装置および方法の実施例である。これらの実施例は本発明を例証することを目的としており、いかなる方法でも本発明を限定するものとして解釈されてはならない。
【0045】
実施例1では、同時に並行スクリーニングを行うために多数の検出器が全てのチャネルに配置される本発明の一実施形態から得られたクロマトグラムが示される。この実施例では、勾配流モードでトランススチルベン酸化物(TSO)の単回注入を分析するために4つのUV検出器が使用された。C1からC4(図4Aから図4D)は各チャネルのカラムである。
【0046】
実施例2は、チャネル3の全体的勾配モードを使用して単一チャネルが用いられる本発明の一実施形態から得られたクロマトグラム(図5Aから図5D)を示す。化合物はTSOである。
【0047】
実施例3には、第2サンプルの並行スクリーニングを行うために多数の検出器が全てのチャネルに配置されることができる本発明の一実施形態から得られたクロマトグラムがある。この実施例では、勾配流モードでメフェネシンの単回注入を分析するために4つのUV検出器が使用された。C1からC4(図6Aから図6D)は各チャネルのカラムである。
【0048】
実施例4には、チャネル4の全体的勾配モードを使用して単一のチャネルが用いられる本発明の一実施形態から得られたクロマトグラムがある。化合物はメフェネシンであり、C1からC4(図7Aから図7D)は各チャネルのカラムである。
【0049】
一実施形態では、方法開発の第2ステップは集束勾配を運転することである。実施例5には、サンプルのメフェネシンを用いて単一のチャネルで集束勾配を運転することから得られたクロマトグラム(図8Aから図8d)がある。最適化された方法を得るために、結果が評価され、無勾配の逐次注入がカラム1を備えた単一チャネルで行われる。
【0050】
実施例6には、化合物ビノルによる方法開発の第3実施例から得られたクロマトグラムがある。ビノルをスクリーニングするための最適化された方法を迅速に開発するために、4つのチャネル全てが使用される。C1からC4(図9Aから図9D)は各チャネルのカラムである。
【0051】
同じ実施例(ビノル)の方法開発から得られた第2ステップのクロマトグラムが図9Eから図9Gに示されている。ビノルで集束勾配を運転することによって結果が得られた。最適化された方法を得るために、結果が評価され、無勾配の逐次注入がカラム2を備えた単一チャネルで行われる。
【0052】
以上から、例証する目的のために本発明の特定の実施形態が本明細書で述べられたが、本発明の精神および範囲から逸脱せずに様々な修正形態がなされてもよいことが理解される。したがって、本発明はここに添付される請求項による以外は限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界流体クロマトグラフィ用の装置であって、
バイナリーポンプと、
オートサンプラと、
サンプル採取弁と、
第1および第2ポート切替弁と、
第1よび第2マニホルドと、
逆止め弁アセンブリ、分離カラム、それに動作可能に接続された1つまたは複数の検出器をそれぞれが有する複数のチャネルと、
1)多チャネルモードまたは単一チャネルモードの切替えを含む、装置を通る流れの分配を制御し、
2)1つまた複数の検出器によって収集されたデータを分析し、
3)溶媒の組み合わせ、濃度勾配、圧力、および温度を制御することによってアナライトの分離を最適化するコンピュータソフトウェアおよびハードウェアと、
背圧調整器とを備える装置であって、
個々のチャネル上の追加の背圧調整器またはポンプを必要としない、装置。
【請求項2】
ユーザによって物理的構成を変更することなく、ソフトウェアのみを使用して多チャネルモードと単一チャネルモードとで切り替わる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
得られた結果に基づいて分離を最適化するソフトウェア機能をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
チャネルの数が8を超える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
チャネルの数が24を超える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
ソフトウェアが、複数のチャネルに単一のサンプルを通す同時並行スクリーニングを提供するようにプログラムされる、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
ソフトウェアが、1つまたは複数のチャネルに通す任意選択による逐次スクリーニングを提供するようにプログラムされる、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
超臨界流体クロマトグラフィを使用してサンプルをスクリーニングする方法であって、
混合移動相を作り出すために、対象とするアナライトを含むサンプルを超臨界流体および任意選択で適切な溶媒と混合するステップと、
混合移動相を流路に沿ってオートサンプラに移動させるステップと
混合移動相の単一の部分をオートサンプラ内に注入するステップと、
単一の部分を流路に沿って第1カラム切替弁を通して第1マニホルドに移動させるステップと、
単一の部分を複数の副次部分に分割し、複数の副次部分のそれぞれを個々の分離用チャネルに向けるステップと、
複数の副次部分のそれぞれを個々のチャネルそれぞれに沿って分離カラムを通し、かつ1つまたは複数の検出器を通して同時に移動させるステップと、
単一の流出ストリームを作り出すために複数の副次部分を第2逆止め弁および第2マニホルドを通して移動させるステップと、
流出ストリームを流路に沿って背圧調整器に移動させるステップと、を備える方法。
【請求項9】
流出ストリームへの追加の分析処理を背圧調整器の出口の前に提供することをさらに備える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
1つまたは複数の検出器が、紫外線波長(UV)と、フォトダイオードアレイ検出器(PDA)と、光散乱検出器(ELSD)と、質量分析器(MS)と、炎イオン化検出器と、化学発光窒素検出器と、コロナエアロゾル検出器と、円偏光二色性および他のキラル検出器と、オンラインの赤外線および核磁気共鳴検出器とからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのチャネルが複数の検出器を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
多数の共溶媒、勾配条件、温度および圧力条件が注入毎に逐次スクリーニングされる、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
最適化のために、勾配または無勾配のスクリーニング条件が複数のチャネルのいずれにも同時に設定される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
ソフトウェアが、各運転を、チャネル毎に分離の性能についてユーザ指定の基準に基づいて評価し、次いで最も優れたカラム性能を備えたチャネルを識別してそれらの基準に基づいて最適化条件を備えた単一チャネルのモードで運転するように弁を切り替えることによって、シーケンスに追加の運転を加える、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
ソフトウェアが任意の特定サンプルに対して全てのデータ型を同時に得る、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
データ型が、紫外線波長(UV)検出器と、フォトダイオードアレイ検出器(PDA)と、光散乱検出器(ELSD)と、質量分析器(MS)と、炎イオン化検出器と、化学発光窒素検出器と、コロナエアロゾル検出器と、円偏光二色性および他のキラル検出器と、オンラインの赤外線および核磁気共鳴検出器と、これらのうちの任意のものの組み合わせによる全スペクトルの判定とからなる群から選択される検出器によって生成されるデータである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
任意の特定サンプルについて得られた全てのデータ型が、意思決定のためのユーザへの単一のデータ報告内に含まれる、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図9G】
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【公表番号】特表2012−504238(P2012−504238A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529030(P2011−529030)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/005361
【国際公開番号】WO2010/051005
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(511079241)タール・インスツルメンツ・インコーポレイテツド (2)