説明

中和滓を利用した路盤材料及びその製造方法

【課題】硫酸法による酸化チタン製造時に発生する中和滓の路盤における高い支持力を維持、向上させながら、水に対する影響の度合いを小さくした中和滓を主原料とする路盤材料を提供する。
【解決手段】硫酸法による酸化チタン製造時に発生する中和滓と、前記中和滓へ内数でさらに15〜50重量%の割合で混合されている高炉スラグとからなる路盤材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸法による酸化チタン製造時に発生する中和滓を有効利用した路盤材料に関し、特に高炉スラグや石灰を添加することにより路盤材料に要求される塑性指数や修正CBR(modified California bearing ratio)、一軸圧縮強度といった品質基準値や性質を大幅に改善した産業副産物利用型の路盤材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の保全の意識の高まりから、各種産業副産物(廃棄物)の有効利用、すなわち、これらをリサイクル原料として再利用することが検討されている。このような背景の下で、硫酸法により酸化チタン製造する場合に発生する中和滓もリサイクル原料の代表例であり、この中和滓のさらなる有効利用の道筋が模索されている。
【0003】
硫酸法により酸化チタン製造には、原料のイルメナイト鉱又はチタンスラグを溶解するために大量の硫酸が使用される。中和滓はこの使用済み硫酸を中和処理し、それを沈降分離・脱水することにより排出される。中和滓の製造プロセスの典型的な一例を図1に示す。
【0004】
このような中和滓を有効利用する例としては、例えば、石膏としてボードやセメントなどの建築資材用原料などに再利用する例が知られている。しかしながら、建築資材用原料として使用できる量は発生する中和滓に対し極めて少ないため、その殆どが産業廃棄物として処分されていた。
【0005】
また、中和滓はそれ自体路盤材料としての高い支持力を有するものの、その支持力は非常に水の影響を受けやすいという特性があるため、実際の自然環境における路盤材料への適用は殆ど検討されていなかった。
【特許文献1】特開2002−146709号公報
【特許文献2】特開2003−12363号公報
【特許文献3】特開2005−42497号公報
【特許文献4】特開2005−42497号公報
【特許文献5】特開2005−139829号公報
【特許文献6】特開2006−721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、硫酸法による酸化チタン製造時に発生する中和滓を路盤に適用した場合の高い支持力を維持、向上させながら、路盤材料として適用する際に問題となる水に対する影響の度合いを小さくした中和滓を主原料とする路盤材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、中和滓の粘土分の含有比率を少なくし水に対する影響の度合いを小さくするため、塑性指数の低下が期待できる水硬性の高い添加材料を探索した。その結果、水硬性の高い材料としては高炉スラグが適しており、中和滓に適量の高炉スラグを添加した場合、水に対する影響の度合いを基準値より小さくできることを見出した。
【0008】
すなわち、請求項1に記載された発明は、硫酸法による酸化チタン製造時に発生する中和滓と、前記中和滓へ内数で15〜50重量%、さらに好ましくは20〜40重量%の割合で混合されている高炉スラグとからなる路盤材料及びその製造方法である。
【0009】
イルメナイト鉱又はチタンスラグを出発原料として、硫酸法により酸化チタン製造する場合に発生する中和滓は、例えば、表1に示されるような成分を有する。表1から理解されるように、中和滓は多くの鉄分を含んでおり、鉄鋼スラグと同様に路盤材料としての適用が期待される。また、溶出試験によっても、中和滓単体では環境有害物質が検出されることはなかった。
【0010】
【表1】

【0011】
しかしながら、中和滓単体では、「JIS A 1205」に基づく液性限界試験及び塑性限界試験より求めた塑性指数が20〜25と、路盤材料選定において基準となる塑性指数18よりも高いため、中和滓単独での路盤材料への適用は極めて困難である。そこで、本発明では、中和滓へ水硬性の高い高炉スラグを添加することにより、水に対し支持力が殆ど影響を受けることがない路盤材料及びその製造方法を発明するに至った。
【0012】
すなわち、本発明によれば、中和滓へ内数で15〜50重量%、さらに好ましくは20〜40重量%の割合で高炉スラグを混合することにより、塑性指数を18以下に改善した路盤材料及びその製造方法を提供することができる。
【0013】
路盤材料に含まれる高炉スラグの混合割合は、15重量%より低い場合、路盤材料の塑性指数が18を超えてしまい、水に対して安定した支持力を得られなくなる。一方、高炉スラグの混合割合を高くすれば高くするほど中和滓と高炉スラグからなる路盤材料の塑性指数は小さくなるが、高炉スラグの混合割合が50%を超えてしまうと中和滓を有効利用するという本発明の目的に反することになるので、この値を上限値と定めた。したがって、中和滓を有効利用するという目的に拘らなければ、中和滓に混合する高炉スラグの混合割合を50重量%より高くして路盤材料の塑性指数をさらに低下させることも可能である。
【0014】
また、中和滓は、元来、路盤材料の強さを評価するための相対的強度を表す修正CBR(modified California bearing ratio)において、中和滓(乾燥品)で110%、中和滓(未乾燥品)で41%と既に路盤材料に要求される基準値を満たしている。しかしながら、中和滓に高炉スラグを15%混合すると修正CBRはそれぞれさらに118%、55%まで向上する。
【0015】
なお、中和滓へ高炉スラグを混合した場合であっても、溶出試験において本発明による路盤材料から六価クロムは検出されなかった。この要因は定かではないが、中和滓単体には六価クロムが含まれていないこと及び高炉スラグによる六価クロム抑制効果が寄与したものと推察される。
【0016】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の路盤材料100重量部に対し、石灰をさらに3重量部以上添加した路盤材料である。
【0017】
中和滓へ高炉スラグを混合した路盤材料はその塑性指数を大幅に改善することできるから、例えば、塑性指数を18以下に低下させた路盤材料は石灰系安定処理路盤の施工に使用することができ、また、塑性指数を9まで低下させた路盤材料はセメント系安定処理路盤や下層路盤におけるアスファルト系安定処理路盤に使用することができる。そこで、請求項2に記載された発明では、上記の適用範囲の中で石灰系安定処理路盤に適した石灰の添加量が存在することを実験により見出した。
【0018】
その結果、中和滓及び高炉スラグからなる路盤材料100重量部に対し、石灰をさらに3重量部以上添加した場合、一軸圧縮強さは10kgf/cm以上と、下層路盤における一軸圧縮強さの基準値7kgf/cm以上及び上層路盤における一軸圧縮強さの基準値10kgf/cm以上のいずれの基準値もクリアできることが判った。
【0019】
なお、中和滓及び高炉スラグからなる混合物へ石灰を添加した場合であっても、溶出試験において本発明による路盤材料から六価クロムは検出されなかった。この要因は定かではないが、中和滓単体には六価クロムが含まれていないこと及び高炉スラグによる六価クロム抑制効果が寄与したものと推察される。
【0020】
請求項3に記載された発明は請求項2に記載の路盤材料の中、中和滓80重量部と高炉スラグ20重量部の混合物に対し、石灰を3〜4重量部添加した路盤材料に限定したものである。
【0021】
中和滓、高炉スラグ及び石灰の成分には酸化カルシウム(CaO)が含まれており、これが水と反応すると体積が約2倍となるため、本発明による路盤材料を石灰系安定処理路盤へ適用した場合の体積膨張が懸念される。しかしながら、中和滓80重量部と高炉スラグ20重量部の混合物に対して、石灰の添加量を好ましくは外数で3〜6重量%、さらに好ましくは3〜4重量%の範囲に限定すれば、水浸膨張試験において、本発明による路盤材料の体積膨張率を0.6%未満に抑えることができ、基準値の体積膨張率1.5%を大幅に下回ることが判った。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、硫酸法による酸化チタン製造時に発生する中和滓へ適量の高炉スラグを混合することにより、塑性指数が大幅に改善された、すなわち、水に対して支持力が殆ど影響を受けることがない路盤材料及びその製造方法を提供することができる。
【0023】
また、本発明によれば、塑性指数を6から18の間までに低下させた路盤材料は石灰系安定処理路盤材料として使用することができ、また、塑性指数を9以下にまで低下させた路盤材料はセメント系安定処理路盤材料及び下層路盤におけるアスファルト系安定処理路盤材料として使用することができる。
【0024】
このため、本発明によれば、特に石灰系安定処理路盤材料としてさらに適量の石灰の添加することにより、下層路盤及び上層路盤におけるいずれの一軸圧縮強さの基準値を上回る一軸圧縮強さが10kgf/cm以上の路盤材料及びその製造方法を提供することができる。
【0025】
さらに、本発明によれば、中和滓80重量部と高炉スラグ20重量部の混合物に対し石灰を3〜4重量部添加することにより、水浸膨張試験における路盤材料の体積膨張率が0.6%未満に抑えられた路盤材料及びその製造方法を提供することができる。
【0026】
なお、本発明による中和滓及び高炉スラグからなる路盤材料およびこれに石灰を添加した路盤材料は、溶出試験においても六価クロム等の有害物質は殆ど検出されないことから、本発明によれば、主としてリサイクル原料(産業廃棄物)を有効利用しながら環境に優しい路盤材料及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施例により説明する。なお、本発明は以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【実施例】
【0028】
路盤材料原料
本実施例では、路盤材料の主原料として、テイカ株式会社岡山工場において発生する中和滓を使用した。この中和滓は硫酸法による酸化チタンの製造工程において発生する産業副産物である。なお、本実施例で用いられた中和滓に含まれる主な成分は、上記表1に示されている。また、前記中和滓に添加する高炉スラグには、表2に示される特性を有するJFEミネラル株式会社 福山製造所で発生する粉状の高炉スラグを使用した。
【0029】
【表2】

【0030】
[塑性限界指数による評価]
「JIS A 1205」に基づく液性限界試験及び塑性限界試験より、本発明による路盤材料の塑性指数等を求めた。
(1)試料の作製
中和滓及び高炉スラグは、「JIS Z 8801」に規定する標準ふるい425μmを通過したものを試料とした。なお、乾燥した後の中和滓はビー玉程度の大きさを形成しているので、試料の作製にはこれをハンマー等で細かく砕き、上記標準ふるいを通過させたものを使用した。また、試料の量は液性限界試験用には200g、塑性限界試験用には30gを用いた。
【0031】
また、液性限界試験及び塑性限界試験においては、中和滓及び高炉スラグの混合比率を表3のように変化させた路盤材料の試料を作製して実験を行った。
【表3】

【0032】
(2)液性限界試験及び塑性限界試験方法
液性限界試験及び塑性限界試験は、上記試料について「JIS A 1205」に基づく液性限界試験及び塑性限界試験を行うことにより、それぞれの液性限界及び塑性限界を求めた。
【0033】
(3)試験結果
上記液性限界及び塑性限界より、各路盤材料の塑性指数を求めた。高炉スラグ添加率と塑性指数との関係を図2に示す。
【0034】
路盤材料の塑性指数が下層路盤では6以上、上層路盤では4以上であると水の影響を受け易く、セメントや石灰などの安定処理を施さなければそのままの状態では使用することができない。図2によれば、中和滓単体である比較例の場合、塑性指数は中和滓(乾燥品)で25、中和滓(未乾燥品)で24の高い値となるため、塑性指数の低下を図らなければならないことが判る。
【0035】
一方、実施例1〜3のように高炉スラグを内数で10重量%から20重量%中和滓へ添加した場合は、高炉スラグの添加量の増加にほぼ反比例する形で路盤材料の塑性指数が低下することが判った。これは、高炉スラグを添加することにより、水硬性を有し長期的にも高い支持力を発揮するという高炉スラグの特性が寄与したものと考えられる。
【0036】
また、安定化処理材として本発明による路盤材料を利用するためには塑性指数が18以下としなければならないので、図2より、中和滓へ高炉スラグを内数で少なくとも15重量%より多く添加する必要があり、好ましくは20重量%以上高炉スラグを添加する必要がある。
【0037】
一方、高炉スラグを内数で50重量%以上添加すると、本発明による路盤材料は粒状路盤材料又は粒度調整路盤材料として利用できることも期待されるが、高炉スラグの添加量を中和滓より多くしてしまうと中和滓を有効利用するという本発明の目的に反することになるので、この値を上限値と定めた。したがって、中和滓を有効利用するという目的に拘らなければ、中和滓に混合する高炉スラグの混合割合を内数で50重量%より高くして路盤材料の塑性指数をさらに低下させることも可能である。ただし、本発明に使用する中和滓が硫酸法による酸化チタンの製造工程において大量に発生する産業副産物であることを考慮すると、中和滓に添加される高炉スラグの割合は40重量%以下に抑えることが望ましい。
【0038】
[修正CBRによる評価]
次に「JIS A 1211」に規定されるCBR試験を行い、高炉スラグの添加率の違いによる各路盤材料のCBR及び修正CBRを求めた。ここで、CBR(California bearing ratio)とは、路盤材料や盛土材料の品質基準を表す指標であり、現場締固め条件に合わせて求めた砕石、砂利、スラグなどの粒状・粉状路盤材料の強度を相対的に示す指標である。
【0039】
(1)修正CBR試験方法
CBR試験では、はじめに舗装試験法便覧「1−3−8 突固め試験方法」の呼び名2.5に従って3層92回の突固め試験を行い最適含水比を求めた。次に、前記突固め試験により求められた最適含水比を用いて3層17、42及び92回の3通りの突固め回数で締固めた供試体を作製し、この供試体を水浸後の貫入試験を行うことによりCBR及び修正CBRを求めた。なお、CBRは所定貫入量における標準荷重強さに対する百分率をいい、また、修正CBR(modified California bearing ratio)とは、通常3層92回突固めた時の締固め度95%のCBRをいう。
【0040】
(2)試験結果
「JIS A 1211」に基づくCBR試験により、比較例及び実施例1〜3における修正CBRを求めた。各路盤材料における高炉スラグの添加率と修正CBR等との関係を表4に示す。
【表4】

【0041】
各路盤材料の支持力特性は、表4からも明らかなように中和滓単体(比較例)においても規格値を十分に満たしている。しかしながら、実施例1〜3のように中和滓に高炉スラグを添加することにより、本発明による路盤材料の修正CBRは最大で未乾燥品で62%、乾燥品で121%まで増加することが判った。
【0042】
この結果、本発明による路盤材料は、例えば、その基本組成として中和滓85重量%に対して高炉スラグを15重量%添加することにより、石灰安定処理路盤材料として利用可能であることが判明した。
【0043】
[一軸圧縮強さによる評価]
石灰安定処理路盤材料として最適な石灰添加量を求めるため、中和滓と高炉スラグからなる混合物に対しさらに石灰を外数で1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%添加した供試体を作製し、側圧を受けない状態で一軸圧縮強さを求めた。
【0044】
(1)供試体の作製
中和滓80重量%と高炉スラグ20重量%を添加した混合物に対し、さらに石灰を外数で1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%添加した5種類の試料を準備した。この試料を用いて舗装試験法便覧「2−4−1 安定処理混合物の突固め試験方法」の呼び名1.4に従って直径5cm、高さ10cmの供試体を作製することは困難であったため、代わりに下記の式1を用いて、呼び名1.4の締固めエネルギーEc:約550kJ/mと同等のエネルギーとなるようにランマー質量W:1.5kg、ランマー落下高さH:20cm、モールド直径:5cm、モールド高さ:10cm、突固め層数N:3層、一層当たりの突固め回数N:13回の条件でそれぞれに石灰の添加量が異なる供試体を作製した。

Ec=〔W(kN)×H(m)×N×N〕/V(m)・・・(式1)

供試体は、作製後、ポリエチレンシートで密封し温度20±3℃に調節された室内で9日間室内養生をした後、ポリエチレンシートを外して温度20±3℃に調節された水中で24時間水浸養生を行った。
【0045】
(2)一軸圧縮試験方法
一軸圧縮試験は、24時間水浸養生が終了した供試体表面の水滴を拭き取りその質量及び寸法を計測した後、圧縮試験機で毎分1%の圧縮ひずみを与えながら供試体が破壊するまで圧縮し、その時の最大値を記録することにより行った。
【0046】
(3)試験結果
図3に、一軸圧縮試験により求められた石灰添加率と一軸強さとの関係を示す。
【0047】
図3より明らかなように、中和滓と高炉スラグからなる混合物へ石灰の添加率を増加させてゆくと供試体の一軸圧縮強さも増加していくことが判った。なお、未乾燥品に関しては、混合を十分に行わないと高炉スラグおよび石灰が十分反応しないため一軸圧縮強さが上がらず、基準値の一軸圧縮強度を満足しない値が出ることがある。したがって、混合を慎重に行う必要がある。また、参考として石灰を添加しない中和滓と高炉スラグのみからなる供試体を水浸させたところ、24時間後には一軸圧縮試験を行うことができないほど供試体は原形を留めることなく崩壊していた。
【0048】
また、石灰安定処理路盤材料として要求される一軸圧縮強さの基準値は、下層路盤で7kgf/cm以上、上層路盤で10kgf/cm以上であるため、中和滓と高炉スラグからなる路盤材料の場合、少なくとも外数で3重量%以上の石灰の添加が必要であることが判明した。
【0049】
[水浸膨張試験]
中和滓、高炉スラグ及び石灰の成分には酸化カルシウム(CaO)が含まれており、これが水と反応すると体積が約2倍となるため、特に石灰が添加された本発明による路盤材料の体積膨張が懸念される。そこで、石灰が添加された石灰安定処理路盤向けの路盤材料について水浸膨張試験を行った。
【0050】
(1)供試体の作製
中和滓80重量%と高炉スラグ20重量%を添加した混合物に対し、さらに石灰を外数で3重量%、4重量%添加した2種類の試料を準備した。この試料を用いて舗装試験法便覧「2−4−1 安定処理混合物の突固め試験方法」の呼び名2.5に従って突固め試験を行い、石灰が3重量%、4重量%添加された試料の最適含水比を求めた。この結果、石灰が3重量%添加された試料の最適含水比を44%とし、石灰が4重量%添加された試料の最適含水比を47%として舗装試験法便覧「2−4−1 安定処理混合物の突固め試験方法」の呼び名2.5に従って直径15cm、高さ12.5cmの供試体を作製した。
【0051】
(2)水浸膨張試験方法
水浸膨張試験は、舗装やその他の荷重を考慮するための軸付き有孔板5kgを供試体に載せ、供試体を水槽内に水浸させ変位計をセットした後、1h、2h、4h、8h、24h、48h、72h、96h経過時の変位計を読み取ることにより行った。ただし、96h経過時においても供試体の膨張が進行していた場合は、膨張が一定に落ち着くまで供試体の水浸を続けた。
【0052】
(3)試験結果
図4に、水浸膨張試験により求められた石灰を3重量%、4重量%添加した場合の水浸時間と膨張率との関係を示す。
【0053】
図4より明らかなように、中和滓と高炉スラグからなる混合物へ石灰を外数で好ましくは3〜6重量%、さらに好ましくは3〜4重量%添加しても供試体の膨張率はいずれも0.6%未満に収まり、石灰安定処理路盤材料として要求される膨張率である1.5%を大幅に下回ることが判った。
【0054】
この結果、中和滓と高炉スラグからなる混合物に石灰を添加した路盤材料の場合、中和滓80重量%と高炉スラグ20重量%を添加した混合物に対し、石灰を外数で3〜4重量%添加することにより路盤材料の体積膨張を十分に抑制できることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、硫酸法による酸化チタンの製造工程で発生する中和滓に適量の高炉スラグを添加することにより、路盤材料として有効利用することができる。また、中和滓と高炉スラグからなる混合物に適量の石灰を添加することにより、石灰安定処理路盤材料としても有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】中和滓の典型的な製造プロセスを示すフローチャートである。
【図2】中和滓と高炉スラグからなる路盤材料の高炉スラグ添加率と塑性指数との関係を表した図である。
【図3】石灰を添加した中和滓と高炉スラグからなる路盤材料の石灰添加率と一軸圧縮強さとの関係を表した図である。
【図4】石灰を添加した中和滓と高炉スラグからなる路盤材料の水浸時間と膨張率との関係を表した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸法による酸化チタンの製造時に発生する中和滓と、前記中和滓へ内数でさらに15〜50重量%の割合で混合されている高炉スラグとからなる路盤材料。
【請求項2】
前記路盤材料100重量部に対し、石灰がさらに3重量部以上添加されている請求項1に記載の路盤材料。
【請求項3】
前記中和滓80重量部と前記高炉スラグ20重量部の混合物に対し、前記石灰が3〜4重量部添加されている請求項2に記載の路盤材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−69525(P2008−69525A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−247429(P2006−247429)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000215800)テイカ株式会社 (108)
【Fターム(参考)】