説明

中子組立体、射出成形装置、転動体連結体用連結ベルトの製造方法および転動体連結体用連結ベルト

【課題】金型内に配置し易く、金型から取り出し易く、かつ、十分な強度を有し製造し易い中子組立体、および、該中子組立体を用いた射出成形装置、転動体連結体用連結ベルトの製造方法並びに転動体連結体用連結ベルトを提供すること。
【解決手段】金型に用いる中子であって、一の端部の断面14が広がる貫通孔16が形成され、貫通孔と平行に、貫通孔の他の端部の側に凹部18が形成された中子12と、貫通孔の広がった断面に挿入するヘッド22を一端に有し、貫通孔を貫通する抑えピン20と、一端が凹部に挿入するエジェクターピン30とを備え、抑えピンとエジェクターピンとは長手方向に相対的な動きが拘束されている中子組立体10。該中子組立体と、中子を内包し、抑えピンとエジェクターピンとが貫通する金型と、中子組立体を、エジェクターピンの軸方向に移動する移動装置とを備える射出成形装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中子組立体、射出成形装置、転動体連結体用連結ベルトの製造方法および転動体連結体用連結ベルトに関する。特に、転動体連結体用連結ベルトの製造が容易な中子組立体、射出成形装置および転動体連結体用連結ベルトの製造方法、並びに容易な方法で製造された転動体連結体用連結ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
軌道レールと移動体ブロックとの接面にローラー(転動体)を配して、摩擦を軽減している直線運動案内装置がある。かかる直線運動案内装置では、ローラーを無限軌道に配することにより、少ないローラーで長い距離を移動することが可能となる。ローラーを無限軌道で安定して作動させるために、ローラー保持部材でローラーを保持することが行われている。ローラー保持部材は、バンドで連結されることにより互いの位置関係が一定に保たれ、その結果、ローラーの間隔を一定に保っている(例えば、特許文献1参照)。かかるバンドで連結したローラー保持部材を、転動体連結体用連結ベルトとして一体で成形するためには、ローラーが配される部分にローラーとほぼ同じ大きさの中子を金型に配し、射出成形した後に、二次工程として中子を機械または人力で取り出していた。そのため、転動体連結体用連結ベルトにて保持されるローラーの個数と同じ数の中子の配置と取出し作業が発生し、転動体連結体用連結ベルトが長くなり、すなわち、ローラーの個数が増えるに連れ、生産効率を低下させる要因となっていた。
【特許文献1】国際公開第WO03/080306号パンフレット(第20頁、図11、図12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、中子を機械的に金型内に配置し、射出成形後に金型から取り出すためには、中子にピン(シャフト)を装着することが必要となる。しかし、中子とピンとを接着剤で接着したものでは接着強度が低すぎ、また、中子とピンとを焼き嵌め技術で結合したものでも結合強度が低すぎる。中子とピンとを一体物とすると強度は十分に得られるが、削り出しにより成形するため、製造コストがかさみ、かつ、加工精度が低下する恐れが高い。そこで、本発明は、金型内に配置し易く、金型から取り出し易く、かつ、十分な強度を有し製造し易い中子組立体、および、該中子組立体を用いた射出成形装置、転動体連結体用連結ベルトの製造方法並びに転動体連結体用連結ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る中子組立体は、例えば図1に示すように、金型に用いる中子であって、一の端部の断面14が広がる貫通孔16が形成され、貫通孔16と平行に、貫通孔16の他の端部の側に凹部18が形成された中子12と;貫通孔14の広がった断面14に挿入するヘッド22を一端に有し、貫通孔16を貫通する抑えピン20と;一端が凹部18に挿入するエジェクターピン30とを備え;抑えピン20とエジェクターピン30とは長手方向に相対的な動きが拘束されている。
【0005】
このように構成すると、抑えピンとエジェクターピンとは長手方向に一体の動きをし、中子は抑えピンとエジェクターピンとによりピンの長手方向の動きを拘束されるので、中子の移動が容易であり、かつ、製造し易い中子組立体となる。中子組立体が移動することにより、中子を金型内に配置し易く、金型から取り出しやすくなる。また、ピンと中子との接合が無いので、強度的な弱部を有さず、十分な強度を有する中子組立体となる。
【0006】
また、請求項2に記載の発明に係る中子組立体では、例えば図1に示すように、請求項1に記載の中子組立体10において、中子12が円柱形状であり、貫通孔14、16が円柱の直径方向に形成され、凹部18が貫通孔14、16とは円柱軸の方向に離間した位置に形成されてもよい。
【0007】
このように構成すると、円柱形状の中子の軸方向に離間して貫通孔と凹部が形成され、よって抑えピンとエジェクターピンとが軸方向に離間して中子の移動を拘束するので、中子の移動が安定する。
【0008】
また、請求項3に記載の発明に係る中子組立体では、例えば図1に示すように、請求項1または請求項2に記載の中子組立体10において、貫通孔14、16が中子12の重心を貫通する位置に形成され;凹部18が貫通孔14、16を中心に対称の位置に2つ形成され、それぞれの凹部18にエジェクターピン30が挿入されてもよい。
【0009】
このように構成すると、貫通孔が中子の重心位置を通り、凹部が貫通孔を中心に対称位置に形成され、よって抑えピンが中子の重心位置で、エジェクターピンが重心位置を挟んだ両側で中子の移動を拘束するので、中子の移動がさらに安定する。
【0010】
また、請求項4に記載の発明に係る中子組立体では、例えば図2および図3に示すように、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の中子組立体10において、中子12が、一列に配列される多数個の転動体間に介装される介装部84を、可撓性を有する連結部82で連結してなる転動体連結体用連結ベルト80の成形に用いる転動体用中子であってもよい。
【0011】
転動体連結体用連結ベルトの成形に用いる転動体用中子では、多数の中子を金型内に配置し、また、取り出さなければならず、作業効率を低下させる要因となるが、金型内に配置し易く、金型から取り出し易い中子組立体を用いることにより、作業効率が向上する。
【0012】
前記目的を達成するため、請求項5に記載の発明に係る射出成形装置は、例えば図4に示すように、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の中子組立体10と;中子12を内包し、抑えピン20とエジェクターピン30とが貫通する金型40と;中子組立体10を、エジェクターピン30の軸方向に移動する移動装置90とを備える。
【0013】
このように構成すると、中子を金型内に配置し易く、金型から取り出し易い射出成形装置となる。
【0014】
前記目的を達成するため、請求項6に記載の発明に係る転動体連結体用連結ベルトの製造方法は、例えば図4および図5に示すように、請求項5に記載の射出成形装置100において、中子12を金型40に密着させる工程と;金型40に、熱可塑性樹脂を射出する工程と;中子12を金型40から離間する位置に移動する工程と;射出された熱可塑性樹脂80を、中子12から取り外す工程とを備える。
【0015】
このように構成すると、中子を金型内に配置し易く、金型から取り出し易く、また、成形した転動体連結体用連結ベルトを金型から取り出し易い、転動体連結体用連結ベルトの製造方法となる。
【0016】
また、請求項7に記載の発明に係る転動体連結体用連結ベルトの製造方法では、請求項6に記載の転動体連結体用連結ベルトの製造方法において、金型に、予め延伸した熱可塑性樹脂の繊維状物を配設する工程とをさらに備えてもよい。
【0017】
このように構成すると、転動体連結体用連結ベルトが熱可塑性樹脂の繊維状物と一体に成形され、そのために補強されるので、強度の高い転動体連結体用連結ベルトの製造方法となる。
【0018】
前記目的を達成するため、請求項8に記載の発明に係る転動体連結体用連結ベルトは、例えば図4および図5に示すように、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の中子組立体10の中子12を内包した金型40、60に熱可塑性樹脂を射出して成形し、金型40、60から中子12とともに取り出された後に、中子12から取り外され;繊維状物86が全長にわたって貫通している。
【0019】
このように構成すると、成形した転動体連結体用連結ベルトを金型から取り外し易く、製造効率の高い製造方法で製造した転動体連結体用連結ベルトとなり、また、繊維状物が全長にわたって貫通しているので、強度の高い転動体連結体用連結ベルトとなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、中子組立体は、金型に用いる中子であって、一の端部の断面が広がる貫通孔が形成され、貫通孔と平行に、貫通孔の他の端部の側に凹部が形成された中子と、貫通孔の広がった断面に挿入するヘッドを一端に有し、貫通孔を貫通する抑えピンと、一端が凹部に挿入するエジェクターピンとを備え、抑えピンとエジェクターピンとは長手方向に相対的な動きが拘束されているので、中子は抑えピンとエジェクターピンとによりピンの長手方向の動きを拘束され、中子の移動が容易であり、かつ、ピンと中子との接合が無く十分な強度を有し、製造し易い中子組立体となる
【0021】
また、本発明に係る射出成形装置によれば、上述の中子組立体と、中子を内包し抑えピンとエジェクターピンとが貫通する金型と、中子組立体をエジェクターピンの軸方向に移動する移動装置とを備えるので、中子を金型内に配置し易く、金型から取り出し易い射出成形装置となる。
【0022】
また、本発明に係る転動体連結体用連結ベルトの製造方法によれば、上述の射出成形装置において、中子を金型に密着させる工程と、金型に、熱可塑性樹脂を射出する工程と、中子を金型から離間する位置に移動する工程と、射出された熱可塑性樹脂を、中子から取り外す工程とを備えるので、中子を金型内に配置し易く、金型から取り出し易く、また、成形した転動体連結体用連結ベルトを金型から取り出し易い、転動体連結体用連結ベルトの製造方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一又は相当する装置には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0024】
まず、図1を参照して、転動体連結体用連結ベルトの成形に用いる中子組立体10について説明する。図1中、(a)は中子12の斜視図、(b)は抑えピン20(芯ピンともいう)の斜視図、(c)はエジェクターピン30(支柱ピンともいう)の斜視図、(d)は通しピン36の斜視図、(e)は中子組立体10の組立図、(f)は通しピン36の代替としてのクランプ38の構成を説明する部分断面図である。中子組立体10は、中子12、抑えピン20、2本のエジェクターピン30、および通しピン36とを備える。
【0025】
中子12は、転動体としてのローラーに対応する円柱形状を有している。転動体をボールとするときには球形とし、また、他の形状であってもよい。中子の重心を通る直径の位置に、貫通孔14、16が形成されている。貫通孔14、16は、比較的細く、一様断面のピン孔16と、ピン孔16より断面が広がったヘッド孔14とにより構成されている。ヘッド孔14は、ピン孔16から軸に垂直な平面で断面が広がるものとして示されているが、ピン孔16から徐々に断面が広がるように形成されてもよい。貫通孔14、16が中子の重心を通る直径の位置に形成されることにより、後述するように抑えピン20が中子12の重心を通ることになり、中子12との位置関係が安定し易いが、必ずしも、重心を通る位置に形成されなくてもよい。
【0026】
中子12には、ピン孔16が形成されたのと同一の側に、凹部18が形成される。凹部18は、典型的には一様断面とするが、たとえば断面が凹部18の奥に行くほど狭くなっていてもよい。中子12では、凹部18はピン孔16を中心として対称の位置に2つ形成されている。このように構成することにより、後述するようにエジェクターピン30が抑えピン20を中心として対称な位置に2本配置されることになり、中子12と、抑えピン20およびエジェクターピン30との位置関係が極めて安定するので、好ましい。しかし、凹部18は、対称ではない位置に形成されてもよく、あるいは、1つだけが形成され1本のエジェクターピン30を備える構造としてもよい。
【0027】
中子12は、鋼製の円柱に、例えば放電加工により貫通孔14、16および凹部18とを形成する。円柱の径は、射出成形後の樹脂の収縮を考慮して、転動体連結体用連結ベルトに用いるローラーより、若干大きな径とするのがよい。市販のローラーを用いる場合には、例えば、仕上げ研磨をする前のローラーを使用してもよいし、市販のローラーにコーティングを施して使用してもよいし、あるいは、一サイズ大きなものを使用してもよい。
【0028】
抑えピン20は、ほぼ直方体のヘッド22と、細長いピン24とを備える。ヘッド22は、ヘッド孔14には挿入されるが、ピン孔16には挿入されない大きさであればよい。ヘッド22がヘッド孔14の断面とほぼ同じ大きさの断面を有し、ヘッド22がヘッド孔14と嵌合するように構成すると、抑えピン20と中子12とが固定されるので、好適である。ピン24は、ピン孔16に挿入される太さのピンで、ピン孔16内で僅かな隙間を有して、滑らかに軸方向に移動できることが好ましい。ピン24には、ヘッド22とは反対側の末端近くに、ピン24を横断する方向に貫通する通し孔26が形成される。抑えピン20は、市販の鋼製のエジェクターピンの頭をヘッド22の形状に削り、放電加工により通し孔26を形成することにより、製造してもよい。
【0029】
エジェクターピン30は、凹部18に挿入される一様断面のピンでよく、凹部18に挿入されるのとは反対側の末端近くに、エジェクターピン30を横断する方向に貫通する通し孔32が形成される。エジェクターピン30が凹部18の断面とほぼ同じ大きさの断面を有し、凹部18が凹部18と嵌合するように構成すると、エジェクターピン30と中子12とが固定されるので、好適である。エジェクターピン30は、市販の鋼製のストレート型エジェクターピンに、放電加工により通し孔32を形成することにより、製造してもよい。なお、抑えピン20の通し孔26とエジェクターピン30の通し孔32とは、それぞれのピン20、30を中子12に取り付けた後に、中子12からの距離が等しくなり、一本の通しピン36が共通して挿通するように形成される。
【0030】
通しピン36は、細長の鋼製のピンで、通し孔26と通し孔32とを挿通する。通しピン36が細すぎて、扱いにくいときには、一方の端部につまみとしての太いヘッドを有してもよい。
【0031】
図1(e)に示すように、中子12の貫通孔14、16のヘッド孔14側から、抑えピン20のピン24を挿入する。ヘッド22は、ヘッド孔14には挿入するが、ピン孔16には挿入できないので、ヘッド22がヘッド孔14からピン孔16に移行する位置で止まるまで深く挿入する。続いて、2つの凹部18にそれぞれエジェクターピン30を挿入し、凹部18の奥に当接するまで挿入する。そして、通しピン36を抑えピン20の通し孔26と2本のエジェクターピン30の通し孔32とに挿通して、抑えピン20とエジェクターピン30とを締結する。このようにして、中子組立体10が組立てられる。
【0032】
なお、図1(f)に示すように、抑えピン20とエジェクターピン30とを、通しピン36の代替としてのクランプ38で締結してもよい。この場合、抑えピン20およびエジェクターピン30には、通し孔26、32を形成する代わりに溝を形成する。クランプ38は、断面コの字状で、開口部の両側の先端から開口を閉じる向きに伸びた爪を有する。抑えピン20とエジェクターピン30との溝と、クランプの爪とを係合することにより、抑えピン20とエジェクターピン30とを締結する。なお、抑えピン20とエジェクターピン30とは、他の方法で締結されてもよい。
【0033】
中子組立体10は、通しピン36により、抑えピン20とエジェクターピン30とが締結され、軸方向の相対的変位が拘束される。中子12は、抑えピン20のヘッド22のために、ヘッド22の方向(ヘッド孔14の方向)への移動が拘束される。また、エジェクターピン30が凹部18に挿入され、凹部18の奥に当接しているため、エジェクターピン30が接続している方向(凹部18の方向)への移動が拘束される。したがって、中子12は、ピンの軸方向のいずれの方向にも移動が拘束され、抑えピン20およびエジェクターピン30と一体の動きをすることになる。
【0034】
中子組立体10では、中子12は、市販のロールに、放電加工等により、貫通孔14、16および凹部18を形成することにより製造できる。抑えピン20は、市販のエジェクターピンのヘッドを切削し、放電加工により通し孔26を形成することにより製造できる。エジェクターピン30は、市販のエジェクターピンに放電加工により通し孔26を形成することにより製造できる。通しピン36は、市販のピンを用いることができる。すなわち、市販の材料を用いて、簡単な加工で製造し、組立てればよいので、製造し易い中子組立体10となる。
【0035】
また、中子組立体10では、中子12と抑えピン20あるいはエジェクターピン30とを、接合することなく、上述のように機械的な構造のみで動きの一体化を実現しているので、強度的な弱部となる接合部を有さず、十分な強度を有する。
【0036】
続いて図2を参照して、中子組立体10の金型への取付けを説明する。図2(a)は、複数の中子組立体10を組み入れて、転動体連結体用連結ベルトを製造する金型において、片側の金型40に一つの中子組立体10を取り付けた状態での部分斜視図であり、(b)は(a)におけるX矢視断面図、(c)は(a)におけるY矢視断面図である。
【0037】
ここで、図3を参照して、転動体連結体用連結ベルト80について説明する。図3(a)は転動体連結体用連結ベルト80の上面図であり、(b)は正面図、(c)は側面図である。図3(a)および(b)では、長い転動体連結体用連結ベルト80の末端付近の一部のみを示しており、転動体連結体用連結ベルト80は図示するのと同様な形状が繰り返され長く繋がっている。図3(b)には、転動体連結体用連結ベルト80で保持されるローラー90も併せて示しており、転動体連結体用連結ベルト80とローラー90とでローラーチェーンを構成する。
【0038】
転動体連結体用連結ベルト80は、ローラー90を保持する介装部としてのローラー保持部材84と、ローラー保持部材84を直線状に連結する連結部である連結部材82とを備える。ローラー保持部材84は、円柱形のローラー90の側面に沿った円弧状の面を有し、ローラー90を回転自在に保持するブロックであり、典型的には60度以上120度以下の中心角でローラー90を保持する。ローラー90を保持する中心角が小さすぎるとローラー90を保持することが難しくなり、ローラー90を保持する中心角が大きすぎるとローラー90をはめ込みにくくなり作業効率が低下するとともに、ローラー90とローラー保持部材84との摩擦力が大きくなりローラー90の自由な回転を阻害する恐れが生ずる。また、ローラー保持部材84は、ローラー90の幅(円柱形の高さ)と略同じ幅を有するのが好ましいが、必ずしも同じ幅でなくてもよい。転動体連結体用連結ベルト80の端部のローラー保持部材84を除き、ローラー保持部材84は、ローラー90を保持する円弧状の面を2面有し、直線状に並んだローラー90の間に介装し、ローラー90同士を所定の間隔に保つ。転動体連結体用連結ベルト80の端部のローラー保持部材84は、片面にのみローラー90を保持する円弧状の面を有し、他面は転動体連結体用連結ベルト80の端部として平面に形成され、必要により他の端部と結合される結合部(不図示)が形成される。
【0039】
連結部材82は、ローラー保持部材84を一直線状に連結する柔軟なベルトである。連結部材82の断面形状は、典型的には矩形であるが、他の形状でもよい。連結部材82は、ローラー保持部材82と同じ素材で一体に成形されるが、細長い形状であるために、ローラー保持部材84間において柔軟性を有する。連結部材82は、柔軟ではあるが、長手方向への伸縮が大きいと、ローラー保持部材84同士の間隔が変化し、ローラー90の保持ができなくなるので、長手方向への伸縮が小さい方が好ましく、また、長手方向の強度が大きいことが要求される。柔軟な連結部材82で連結したローラー保持部材84でローラー90を保持することにより、複数のローラー90の間隔を維持しながら無限軌道に沿って変形するローラーチェーンとなる。連結部材82には、補強材として、長手方向に予め延伸した繊維状物86を配設しておくことが好ましい。
【0040】
図2に戻り、中子組立体10の金型への取付けの説明を続ける。金型40は、ほぼ同一の形状の金型と組み合わせて、一つの金型として完成するものである。金型40は、実際には、転動体連結体用連結ベルト80(図3参照)の長さに応じて、長く形成されるものであるが、図2にはその端部付近の一部のみを示している。金型40には、樹脂が射出される開口した内部空間42が形成されている。内部空間42は、周囲を囲まれた凹状の空間である。内部空間42の底部には、長さ方向(図2(a)のY矢印方向)に所定の間隔毎に円弧状に窪んだ中子窪み46が形成されている。中子窪み46は、中子12が嵌合する形状であり、中子窪み46の円弧は、中子12の曲率と一致した曲率を有し、その幅は、中子12と同じ長さである。中子窪み46の底部には、抑えピン20のピン24とエジェクターピン30とが貫通するピン用孔48が形成されている。すなわち、ピン用孔48は、一つの中子窪み46に3個形成されている。図2(c)に示すように、内部空間42の開口部では、幅方向に段差44が形成され、空間が広がっている。この段差44により画定される空間が連結部材82(図3参照)に対応する。
【0041】
中子窪み46の円弧は、図2(b)に示すように、中子12の一部が嵌合するだけの範囲を有し、中子12の断面での中心角が60度以上120度以下となる範囲と嵌合するように形成する。この中心角は、転動体連結体用連結ベルト80(図3参照)のローラー保持部材84(図3参照)がローラー90(図3参照)を保持する範囲と直接関係するので、用途に合わせて設計する必要がある。中子窪み46に中子12を配置すると、その間にできる空間が、ローラー保持部材84に対応する。すなわち、中子窪み46が形成される所定の間隔は、ローラー保持部材84の間隔である。
【0042】
続いて、図4を参照して、中子組立体10を備える射出成形装置100について説明する。図4(a)は、射出成形装置100の金型40、60と金型に取り付けられた中子組立体10と中子移動装置90とを説明する、金型40、60の長手方向に平行に切断した断面図であり、(b)は、(a)と直交方向での断面図である。図4では、金型40、60を上下に重ねたように示しているが、水平に配置してもよく、以下では水平に配置した実施の形態について説明する。図4で説明した金型40の各中子窪み46に中子12が嵌合する様に中子組立体10が取り付けられる。また、金型40には、内部空間42(図2参照)に蓋をするように、同様な形状の内部空間を有する金型60がかぶされて、一つの樹脂が射出される空間であるキャビティ50を形成する。そこで、中子12間の空間が、ローラー保持部材84に対応するローラー保持部材用キャビティ54となり、金型40と金型60の段差44同士が合わさって連結部材に対応する連結部材用キャビティ52となる。金型60は、金型40とほぼ同一の形状であるが、中子窪み46(図2参照)の底部にピン用孔48(図2参照)が形成されていない。金型40と金型60とが組み合わされることにより、中子12と金型40、60の中子窪み46とは嵌合し密着するので、その間に樹脂が流れ込むような隙間はない。したがって、図4(a)あるいは(b)に示すように、中子12と抑えピン20あるいはエジェクターピン30との間に隙間があっても、その隙間に樹脂が流れ込むことはなく、また、抑えピン20のヘッド22(図1参照)の端面が中子12と一体の曲率を有さずに平坦であっても、樹脂成形品である転動体連結体用連結ベルト80(図3参照)の形状に影響することはない。
【0043】
中子組立体10の抑えピン20およびエジェクターピン30の中子12側とは逆の端部は、中子移動装置90に接合する。中子移動装置90は、抑えピン20およびエジェクターピン30が当接する面を、エジェクターピン30の軸方向(すなわち、抑えピン20の軸方向でもある)に往復移動をする装置で、この往復移動により、中子組立体10を移動させる。なお、図4に示すように、金型40、60の鉛直下方に中子移動装置90を設置し、中子移動装置90により中子組立体10を上下に移動するときには、中子組立体10の上方への移動は中子移動装置90の上方への移動により行い、下方への移動は、中子移動装置90の下方への移動にすると中子組立体10が自重で中子移動装置90の移動と共に下方に移動するので、中子移動装置90と抑えピン20およびエジェクターピン30とを接合しなくてもよい。中子移動装置90の移動は、公知の技術で行えばよく、移動側金型40の移動等のタイミングと合わせるために、制御装置(不図示)によりコントロールしてもよく、あるいは、任意のタイミングで手動で行ってもよい。
【0044】
次に、図4および図5を参照して、転動体連結体用連結ベルト80の製造について説明する。図5は、中子12が金型から離間するように移動した状態を説明する図で、(a)は図4(a)に対応する断面での部分断面図、(b)は図4(b)に対応する断面での断面図である。まず、図4に示すように、金型40と金型60とが組み合わされた状態で、溶融した樹脂がキャビティ50に射出される。樹脂は、例えば次のような公知の技術により、樹脂押出装置(不図示)から押し出される。不図示のシリンダにペレットを投入し、加熱することによりペレットを溶融し、シリンダからスクリューの回転によりあるいはピストンの移動により、ペレットが溶融した樹脂を押し出す。シリンダから押し出された樹脂は、注入口62よりキャビティ50に射出される。図4(a)では、注入口62は、金型60に形成されているが、金型40に形成されてもよい。また、図4(a)では、1つの注入口62しか示されていないが、注入口62を複数形成すれば、より均一に樹脂が射出されるので、好ましい。また、図示はしていないが、キャビティ50内の空気抜きとして、キャビティに射出された樹脂が流出しないような小径の空気抜き孔を形成し、あるいは、金型40と金型60との合わさり部分に空気溝を形成し、あるいは、ピン用孔48(図2参照)とピン24・エジェクターピン30との間に隙間を設け、樹脂の射出によるキャビティ50の圧力上昇を防ぐことが好ましい。
【0045】
樹脂としては、熱可塑性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、各種のエラストマー(例えば、ポリエステル系、ナイロン系、ポリオレフィン系、アクリル系、フッ素樹脂系)、あるいは各種の合成樹脂(例えば、ポリエステル系、ナイロン系、ポリオレフィン系、アクリル系、フッ素樹脂系)等を用いることができる。熱可塑性樹脂であるので、金型40、60に射出され、温度低下することにより、固化して成形される。金型40、60に、冷却水の流れる流路を形成し、金型40、60の温度を一定に保つようにすると、樹脂の冷却速度が一定となり、成形品の品質が均等化すると共に、冷却時間を短縮し作業効率が上がるので、好ましい。
【0046】
なお、樹脂を射出する前に、金型40、60のキャビティ50内の、段差44の両外側に予め延伸した熱可塑性樹脂の繊維状物86を、キャビティ50の全長にわたって配しておいてもよい。成形された、転動体連結体用連結ベルト80の連結部材82に繊維状物86が配されることにより、連結部材の長手方向強度が向上するからである。予め延伸した熱可塑性樹脂の繊維状物とは、未延伸繊維状物を紡糸した後、未延伸繊維状物を延伸することによって、分子鎖が配向した繊維状物をいう。予め延伸した熱可塑性樹脂の繊維状物86としては、モノフィラメントでもマルチフィラメントでもよく、射出される樹脂と同質の樹脂であっても、異種の樹脂であっても、射出される樹脂と接着性が高ければよいが、射出される樹脂と同質のモノフィラメントとするのが好ましい。連結部材82(すなわち、金型40、60の段差によって作られる空間)の長手方向に垂直な断面に占める予め延伸した熱可塑性樹脂の繊維状物86の比率は、10〜70%、好ましくは20〜60%であることが望ましい。
【0047】
樹脂が固化すると、金型40を金型60から離間するように移動する。すなわち、金型60が固定側金型であり、金型40が移動側金型である。金型40の移動と共に、中子組立体10および中子移動装置90も移動する。成形された樹脂は、円柱形の中子12を挟み込んでいるので、中子12を備える移動側金型40内に残留する。
【0048】
次に、図5に示すように、中子移動装置90が移動し、中子12を金型40から離間する位置に移動するように、中子組立体10を移動する。中子12が金型40から押し出されるように移動することにより、中子12を挟み込んでいる、成形された樹脂である、転動体連結体用連結ベルト80が金型40から取り出される。そこで、転動体連結体用連結ベルト80をつまんで、中子12から引き離すことにより、容易に取り外すことができる。あるいは、図5(b)に示す連結部材82と金型40との間に転動体連結体用連結ベルト取り外しのためのスペーサを挿入し、その後に中子12を金型40に戻すように移動させることにより、転動体連結体用連結ベルト80を取り外してもよい。この取り外し作業は、人手で行っても、機械で自動的に行ってもよい。作業員が中子12から転動体連結体用連結ベルト80を取り外すには、金型40、60を水平に移動するようにした方が、アクセスを確保し易く好適である。
【0049】
樹脂成形品の転動体連結体用連結ベルト80が取り外されると、中子移動装置90が移動し、中子12が再び金型40と密着する。そして、繊維状物86が金型40の段差44に配された後、移動側金型60が金型40にかぶさり、密封することにより、樹脂を射出する準備が整い、次の転動体連結体用連結ベルト80の射出成形が開始される。
【0050】
以上のように、中子組立体10を備えることにより、多数の中子を金型内に配置する手間が省け、また、樹脂が成形された後に、樹脂から多数の中子を取り外す手間が省け、また、成形した樹脂を金型から取り出しやすい、射出成形装置100となる。
【0051】
以上の説明では、本発明に係る中子組立体および射出成形装置を、転動体連結体用連結ベルトの成形に用いるものとして説明したが、断るまでもなく、他の用途に用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、転動体連結体用連結ベルトの成形に用いる中子組立体を説明する図である。(a)は中子の斜視図、(b)は抑えピンの斜視図、(c)はエジェクターピンの斜視図、(d)は通しピンの斜視図、(e)は中子組立体の組立図、(f)は通しピンの代替としてのクランプの構成を説明する部分断面図である。
【図2】図2は、中子組立体の金型への取付けを説明する図である。(a)は、金型に一つの中子組立体を取り付けた状態での部分斜視図であり、(b)は(a)におけるX矢視断面図、(c)は(a)におけるY矢視断面図である。
【図3】図3(a)は転動体連結体用連結ベルトの上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図4】図4(a)は、金型の長手方向に平行に切断した断面図、(b)は(a)と直交方向での断面図である。
【図5】図5は、中子が金型から離間するように移動した状態を説明する図で、(a)は図4(a)に対応する断面での部分断面図、(b)は図4(b)に対応する断面での断面図である。
【符号の説明】
【0053】
10 中子組立体
12 中子
14 ヘッド孔(貫通孔)
16 ピン孔(貫通孔)
18 凹部
20 抑えピン(芯ピン)
22 ヘッド
24 (抑えピンの)ピン
26、32 通し孔
30 エジェクターピン(支柱ピン)
36 通しピン
38 クランプ
40 移動側金型
42 内部空間
44 段差
46 中子窪み
48 ピン用孔
50 キャビティ
52 連結部材用キャビティ
54 ローラー保持部材用キャビティ
60 固定側金型
62 注入口
80 転動体連結体用連結ベルト
82 連結部材(連結部)
84 ローラー保持部材(介装部)
90 中子移動装置
100 射出成形装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に用いる中子であって、一の端部の断面が広がる貫通孔が形成され、前記貫通孔と平行に、前記貫通孔の他の端部の側に凹部が形成された中子と;
前記貫通孔の広がった断面に挿入するヘッドを一端に有し、前記貫通孔を貫通する抑えピンと;
一端が前記凹部に挿入するエジェクターピンとを備え;
前記抑えピンと前記エジェクターピンとは長手方向に相対的な動きが拘束された;
中子組立体。
【請求項2】
前記中子が円柱形状であり、前記貫通孔が円柱の直径方向に形成され、前記凹部が前記貫通孔とは円柱軸の方向に離間した位置に形成された;
請求項1に記載の中子組立体。
【請求項3】
前記貫通孔が前記中子の重心を貫通する位置に形成され;
前記凹部が前記貫通孔を中心に対称の位置に2つ形成され、それぞれの凹部に前記エジェクターピンが挿入された;
請求項1または請求項2に記載の中子組立体。
【請求項4】
前記中子が、一列に配列される多数個の転動体間に介装される介装部を、可撓性を有する連結部で連結してなる転動体連結体用連結ベルトの成形に用いる転動体用中子である;
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の中子組立体。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の中子組立体と;
前記中子を内包し、前記抑えピンと前記エジェクターピンとが貫通する金型と;
前記中子組立体を、前記エジェクターピンの軸方向に移動する移動装置とを備える;
射出成形装置。
【請求項6】
請求項5に記載の射出成形装置において、前記中子を前記金型に密着させる工程と;
前記金型に、熱可塑性樹脂を射出する工程と;
前記中子を前記金型から離間する位置に移動する工程と;
前記射出された熱可塑性樹脂を、前記中子から取り外す工程とを備える;
転動体連結体用連結ベルトの製造方法。
【請求項7】
前記金型に、予め延伸した熱可塑性樹脂の繊維状物を配設する工程とをさらに備える;
請求項6に記載の転動体連結体用連結ベルトの製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の中子組立体の前記中子を内包した金型に熱可塑性樹脂を射出して成形し、前記金型から前記中子とともに取り出された後に、前記中子から取り外され;
繊維状物が全長にわたって貫通する;
転動体連結体用連結ベルト。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−144939(P2007−144939A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345825(P2005−345825)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(390009830)クレハ合繊株式会社 (8)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】