説明

中折れ式親子シールド

【課題】中折れ機構を子シールドと親シールドとで共用することでコストダウンを図った中折れ式親子シールドを提供する。
【解決手段】 前胴10と後胴20とが屈曲可能な親シールド30から、前胴40と後胴50とが屈曲可能な子シールド60が発進する中折れ式親子シールド1であって、子シールド60の前胴40に親シールド30の前胴10を連結切離可能に被嵌し、子シールド60の後胴50に親シールド30の後胴20を連結切離可能に被嵌し、子シールド60の前胴40と後胴50とを中折れ機構70を介して屈曲可能に接続し、中折れ機構70を、子シールド60の前胴40と後胴50との屈曲、親シールド30の前胴10と後胴20との屈曲に共用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中折れ式の親シールドから中折れ式の子シールドが発進する中折れ式親子シールドに係り、特に、低コスト化を図った中折れ式親子シールドに関する。
【背景技術】
【0002】
中折れ式親子シールドとして、前胴と後胴とが屈曲可能な親シールドから、前胴と後胴とが屈曲可能な子シールドが発進するものが知られている。従来のこの種の中折れ式親子シールドは、親シールドの前胴と後胴とが中折れ機構によって屈曲可能に接続されていると共に、子シールドの前胴と後胴とが別の中折れ機構によって屈曲可能に接続されていた(特許文献1、2)。
【0003】
ここで、中折れ機構は、前胴と後胴とを屈曲可能に接続する球面軸受や中折れピン等からなる。
【0004】
【特許文献1】特許第3605887号公報
【特許文献2】特許第2647356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、中折れ機構は、前胴と後胴とを屈曲可能に接続するのみならず、前胴と後胴との間を止水しなければならないため、切削加工等により精度良く製造する必要がある。よって、このように高精度な部品である中折れ機構を親シールド用と子シールド用とに別々に設けることは、コストアップの原因となる。
【0006】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、中折れ機構を子シールドと親シールドとで共用することでコストダウンを図った中折れ式親子シールドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、前胴と後胴とが屈曲可能な親シールドから、前胴と後胴とが屈曲可能な子シールドが発進する中折れ式親子シールドであって、上記子シールドの前胴に上記親シールドの前胴を連結切離可能に被嵌し、上記子シールドの後胴に上記親シールドの後胴を連結切離可能に被嵌し、上記子シールドの前胴と後胴とを中折れ機構を介して屈曲可能に接続し、該中折れ機構を、上記子シールドの前胴と後胴との屈曲、上記親シールドの前胴と後胴との屈曲に共用したものである。
【0008】
上記親シールドの後胴の内周に、親シールド用シールドジャッキを設け、該シールドジャッキよりも径方向内方に位置させて、上記中折れ機構を配置することが好ましい。
【0009】
上記親シールドの後胴が、上記子シールドの前胴の外周面と前後方向で重合するように前方に延出されると共にその外周面から径方向外方に離間された延出部を有し、該延出部に、上記親シールド用シールドジャッキを設けることが好ましい。
【0010】
上記親シールドの前胴と後胴とを架け渡すようにして、それら前胴と後胴との間の側部地山に対する隙間を覆うように形成され、且つそれら前胴と後胴との屈曲を許容するシールを備えることが好ましい。
【0011】
上記親シールドの前胴と後胴との間に、中折れジャッキを介設することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る中折れ式親子シールドによれば、子シールドの中折れ機構を親シールドに共用しているので、親シールド専用の中折れ機構が不要となり、コストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好適実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1、図5に示すように、本実施形態に係る中折れ式親子シールド1は、前胴10と後胴20とが屈曲可能な親シールド30から、前胴40と後胴50とが屈曲可能な子シールド60が発進するものである。図1は親シールド30が掘進するときの側断面図であり、図5は親シールド30から子シールド60が発進する直前の様子を示す側断面図である。
【0015】
先ず、親シールド30の内部に組み込まれた子シールド60について説明する。
【0016】
図1に示すように、子シールド60は、同径の筒状に形成された前胴40及び後胴50と、これら前胴40及び後胴50を屈曲可能に接続する中折れ機構70とを有する。
【0017】
前胴40の内部には、内部を前後に仕切る隔壁41が設けられており、隔壁41には、その前方に配置された子シールド用カッタ80を回転駆動するためのカッタ駆動機構81と、隔壁41とカッタ80との間に形成されたカッタ室82内の掘削土砂を坑内に取り込むための排土装置83とが設けられている。
【0018】
カッタ駆動機構81は、カッタ80に連結された回転板84と、回転板84に取り付けられた筒体85と、筒体85をラジアル軸受及びスラスト軸受を介して支持する軸受ハウジング86と、軸受ハウジング86を隔壁41に固定するブラケット87と、ブラケット87に取り付けられた駆動モータ88とを備え、駆動モータ88の回転軸に設けたピニオンを筒体85の外周に設けた外歯ギヤに噛合させて構成されている。排土装置83は、本実施形態では土圧式又は泥土圧式シールドなのでスクリューコンベヤが用いられているが、泥水式シールドでは送排泥管が用いられる。
【0019】
後胴50には、図5に示す子シールド60の発進時に、後胴50と同径の筒状の延長後胴51が溶接等によって継ぎ足され、延長後胴51の内部には、子シールド用のエレクタ52が設けられる。エレクタ52は、支持ローラ53によって回転可能に支持された旋回リング54と、旋回リング54に取り付けられ延長後胴51の径方向及び軸方向に移動可能な把持部55とを有し、把持部55には子シールド用のセグメント56が把持される。また、延長後胴51のテール部の内周面には、既設セグメント56の外周面に接するテールシール57が設けられている。また、後胴50の内周面には、既設セグメント56に反力を取って子シールド60を前進させるための子シールド用シールドジャッキ58が、周方向に間隔を隔てて複数取り付けられる。
【0020】
前胴40と後胴50とを連結する中折れ機構70は、前胴40の後部内周面に設けられた凹球面部71と、前胴40の後部内周面に挿入されるようにして後胴50の前部外周面に設けられた凸球面部72とからなる。凹球面部71と凸球面部72とは係合されて球面軸受を構成し、その前後にはリング状のシール73が設けられている。凹球面部71と凸球面部72との曲率半径の中心(中折れ中心)は、本実施形態では図4に示すように中折れ機構70のカーブ内側の部分に設定されているが(V中折れ)、子シールド60の径方向の中心に設定してもよい(X中折れ)。また、中折れ機構70は、球面軸受に限られず、前胴40と後胴50とを屈曲可能に連結する中折れピンであってもよい。
【0021】
前胴40と後胴50とは、中折れジャッキ74を介して連結されている。中折れジャッキ74は、一端が前胴40の内周面に設けられたブラケットに接続され、他端が後胴50の内周面に設けられたブラケットに接続されており、図3に示すように前胴40の周方向に間隔を隔てて複数配置されている。中折れジャッキ74は、子シールド60として掘進するときにその前胴40と後胴50とを屈曲させるのみならず、後述するように親シールド30として掘進するときにその前胴10と後胴20とを屈曲させるものなので、親シールド30を屈曲させるときに必要な力に見合った中折れ力を発揮できるように本数や一本当たりの能力が設定されている。
【0022】
次に親シールド30について説明する。
【0023】
図1に示すように、親シールド30は、子シールド60の前胴40の外周に親シールド30の前胴10を前胴固定装置11によって連結切離可能に被嵌し、子シールド60の後胴50の外周に親シールド30の後胴20を後胴固定装置21によって連結切離可能に被嵌することで構成される。また、子シールド用カッタ80には、親シールド用カッタ90が着脱可能に取り付けられるが、これについては後述する。
【0024】
親シールド30の前胴10は、子シールド60の前胴40にスライド可能に被嵌される内径に形成された内筒12と、この内筒12より大径であって親シールド用カッタ90によって掘削されるトンネル径に合わせて形成された外筒13と、内筒12と外筒13との後端の開口を覆うリング板状の後蓋14と、内筒12と外筒13との前端の開口を覆うリング板状の前蓋15と、前蓋15と後蓋14との間に配置されたリング板状の補強板16とからなる。
【0025】
前胴固定装置11は、本実施形態では、親シールド前胴10の内筒12に固定されたナット17と、子シールド前胴40に固定されたナット18と、これらナット17、18に螺合されたネジロッド19とからなり、ネジロッド19を子シールド側ナット18から親シールド側ナット17にねじ込むことで子シールド前胴40と親シールド前胴10とを固定し、ネジロッド19を逆回転させて親シールド側ナット17から離脱させることで親シールド前胴10を子シールド前胴40から切り離すものである。前胴固定装置11は、周方向に間隔を隔てて複数配設されている。なお、前胴固定装置11は、上記構成に限定されず、溶接やピン等により構成してもよい。溶接した場合、溶接部を切削等することで係合を解除する。
【0026】
図1に示すように、親シールド後胴20は、子シールド後胴50に後胴固定装置21によって連結切離可能に固定された内筒22と、内筒22より大径の外筒23と、内筒22と外筒23との前端の開口を覆うリング板状の前蓋24とからなる。後胴固定装置21は、前胴固定装置11と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0027】
内筒22は、子シールド後胴50よりも大径であり、その後胴50の径方向外方の位置から子シールド前胴40の外周面に前後方向で重合するように前方に延出されると共に、その前胴40の外周面から径方向外方に所定間隔L1離間されるように形成されている。この所定間隔L1は、親シールド30が図4に示すように屈曲するとき、親シールド30のカーブ内側の後胴20の先端内周部25が子シールド前胴40の外周面に干渉することを防止しつつ所定の中折れ角を確保するために設けられる。
【0028】
図1に戻って、後胴20の外筒23は、親シールド前胴10の外径よりも所定長さL2小径に形成された前部231と、親シールド前胴10の外径と同径に形成された後部232と、前部231と後部232とを滑らかに接続するテーパ部233とを有する。上記所定長さL2は、親シールド30が図4に示すように屈曲するとき、親シールド30のカーブ外側の後胴20の先端外周部26を親シールド用カッタ90によって切削された掘孔内面の内方に位置付けさせ、先端外周部26が掘孔内面と干渉することを防止するために設定される。
【0029】
外筒23の前部231及びテーパ部233と内筒22と前蓋24とは、後胴20の延出部27を構成する。延出部27は、子シールド後胴50の径方向外方の位置から子シールド前胴40の外周面と前後方向で重合するように前方に延出されると共に、子シールド前胴40の外周面から径方向外方に所定間隔L1離間され、後方にリング状の開口271を有する袋状に形成される。
【0030】
延出部27の内部には、図3にも示すように、親シールド用のシールドジャッキ28が後胴20の周方向に間隔を隔てて複数設けられている。詳しくは、図1に示すように、延出部27の開口271には、それを覆うようにリング板状に形成されたブラケット29が設けられており、そのブラケット29には、後胴20の周方向に間隔を隔ててジャッキ装着孔が複数設けられ、それらジャッキ装着孔に、親シールド用シールドジャッキ28が装着されている。
【0031】
図1に示すように、後胴20の後部の内方には、親シールド用のエレクタ201が設けられる。エレクタ201は、支持ローラ202によって回転可能に支持された旋回リング203と、旋回リング203に取り付けられ後胴20の径方向及び軸方向に移動可能な把持部204とを有し、把持部204には親シールド用のセグメント205が把持される。また、後胴20のテール部の内周面には、既設セグメント205の外周面に接するテールシール206が設けられている。また、子シールド後胴50と親シールド後胴20との間には、リング状のシール兼スペーサ209が介設されている。
【0032】
前胴10と後胴20とには、それらを架け渡すようにして前胴10と後胴20との間の側部地山に対する隙間207を覆うように形成され、且つそれら前胴10と後胴20との屈曲を許容するシール208が設けられている。シール208は、樹脂や硬質ゴム等の可撓性材料から蛇腹筒状に形成され、前端が前胴10の後端外周部に周方向に沿って固定され、後端が後胴20の外周面に周方向に沿って固定されており、親シールド30が図4に示すように屈曲したときその屈曲を阻害しないように自在に変形する。なお、シール208は、この構成に限定されず、また省略することも可能である。
【0033】
次にカッタについて説明する。
【0034】
図1に示すように、カッタ100は、隔壁41に対して回転可能な回転板84に接続された子シールド用カッタ80と、子シールド用カッタ80の外周に着脱可能に取り付けられた親シールド用カッタ90とからなる。
【0035】
子シールド用カッタ80は、図2にも示すように、回転中心から放射状に配置されたカッタスポーク801と、カッタスポーク801同士の外周端を接続するリング802と有し、カッタスポーク801にはビット803が取り付けられている。カッタスポーク801の外周端の径(リング802の外径)は、図1に示すように、子シールド60の前胴40の外径R1に一致されている。なお、子シールド用カッタ80は、上述したスポークタイプに限られず、面板タイプでもよい。
【0036】
図2に戻って、親シールド用カッタ90は、子シールド用カッタ80のカッタスポーク801の外周端から所定間隔L3を隔てて径方向外方に延出されたカッタスポーク901と、カッタスポーク901同士の内周端を接続する内周リング902と、カッタスポーク901同士の外周端を接続する外周リング903とを有し、カッタスポーク901には、ビット904が取り付けられている。カッタスポーク901の内周端の径R2(内周リング902の内径)は、図1に示すように、子シールド前胴40の外径R1よりも上記所定間隔L3だけ大きくなっており、子シールド60が親シールド30から発進して子シールド前胴40が親シールド用カッタ90の内周リング902を通過するとき、引っ掛からないようになっている。なお、親シールド用カッタ90は、上述したスポークタイプに限られず、面板タイプでもよい。
【0037】
図1に示すように、子シールド用カッタ80のカッタスポーク801の内部には、カッタスポーク801の外周端から径方向外方に出没することで、親シールド用カッタ90と係合離脱する係脱装置804が設けられている。係脱装置804は、カッタスポーク801の内部に収容されたジャッキ805と、ジャッキ805のロッドに連結された有底筒体状の挿抜部材806と、挿抜部材806が挿抜されるように親シールド用カッタ90のカッタスポーク901に形成された挿抜孔807とからなる。この係脱装置804によれば、ジャッキ805のロッドを突出させることで図1に示すように挿抜部材806が挿抜孔807に挿入されて親シールド用カッタ90が子シールド用カッタ80に固定され、ジャッキ805のロッドを引き込むことで図5に示すように挿抜部材806が挿抜孔807から引き抜かれて親シールド用カッタ90が子シールド用カッタ80から切り離される。
【0038】
上記挿抜部材806の内部には、コピーカッタ用ジャッキ808が収容されている。コピーカッタ用ジャッキ808は、有底筒体状の挿抜部材807の底板に固定されたロッドと、ロッドにスライド可能に装着されたシリンダと、シリンダのヘッドに設けられたコピーカッタ809とを有し、シリンダを油圧によってロッドに対してスライドさせることでコピーカッタ809を図1の親シールド用カッタ90の外周端又は図5の子シールド用カッタ80の外周端から径方向外方に突出させ、カーブ掘進時にカーブの内側を余掘りする。
【0039】
なお、図2にて、コピーカッタ809が設けられていない親シールド用カッタ90のカッタスポーク901と子シールド用カッタ80のカッタスポーク801とは、別の係脱装置によって係合離脱されるようになっている。別の係脱装置は、子シールド用カッタ80のカッタスポーク801の内部に収容されたジャッキと、このジャッキのロッドが挿抜されるように親シールド用カッタ90のカッタスポーク901に形成された挿抜孔とからなる。
【0040】
以上の構成からなる本実施形態の作用を述べる。
【0041】
親シールド30として掘進するときには、図1に示すように、予め発進立坑内等において、子シールド用カッタ80の外周に係脱装置804によって親シールド用カッタ90を装着し、子シールド前胴40の外周に前胴固定装置11によって親シールド前胴10を装着し、子シールド後胴50の外周に後胴固定装置21によって親シールド後胴20を装着し、後胴20の延出部27にシールドジャッキ28を装着し、後胴20の内部にエレクタ201を取り付ける。このとき、図5に示す子シールド用の延長後胴51、子シールド用のエレクタ52、子シールド用のシールドジャッキ58は、親シールド用のエレクタ201によるセグメント205の組立の邪魔になるため、取り外されている。この親シールド30を掘進させることで、大径のトンネルを構築できる。
【0042】
親シールド30がカーブ掘進するときには、図4に示すように、カーブの外側の中折れジャッキ74を伸長させることで、親シールド30の前胴10と後胴20とを子シールド60の内部に設けた中折れ機構70によって屈曲させる。このように、子シールド60の中折れ機構70を親シールド30の屈曲にも共用しているので、親シールド30の前胴10と後胴20との間に、親シールド用の中折れ機構を設ける必要がない。中折れ機構70は、前胴40と後胴50とを屈曲可能に接続し且つ前胴40と後胴50との間を止水しなければならないため、切削加工等により精度良く製造する必要があり高価であるところ、このように高価な中折れ機構70を親シールド30及び子シールド60で共用することで親シールド30用のものを省略でき、大きなコストダウンに繋がる。
【0043】
また、親シールド用シールドジャッキ28が、親シールド30及び子シールド60に共用の中折れ機構70を囲むようにしてその径方向外側に配置された延出部27の内部に収容されているので、中折れ機構70とシールドジャッキ28とが並設されることになって親シールド30の機長を短縮でき、カーブ施工上有利となる。すなわち、延出部27を省略してシールドジャッキ28を中折れ機構70の軸方向後方(反切羽方)に配置すると、中折れ機構70とシールドジャッキ28とが直列に並ぶことになるので、親シールド30の機長が長くなってしまい、カーブ施工が不利となるところ、本実施形態では、後胴20に子シールド60の前胴40にラップするように前方に延出された延出部27を形成し、その延出部27の内部にシールドジャッキ28を収容することでシールドジャッキ28と中折れ機構70とを並設し、親シールド30の機長の短縮化を図っているのである。
【0044】
このように親シールド30の後胴20の延出部27を子シールド60の前胴40にラップさせて親シールド30の機長の短縮化を図った構造においては、カーブ掘進時に親シールド30の前胴10と後胴20とを中折れ機構70及び中折れジャッキ74を用いて屈曲させると、図4に示すように、カーブの内側にて、親シールド後胴20の延出部27の先端内周部25と子シールド前胴40の外周面とが干渉し得るところ、親シールド後胴20の延出部27の内筒22と子シールド前胴40の外周面との間に上述した所定間隔L1を設けることで、上記干渉を回避して所定の中折れ角を確保している。また、カーブの外側にて、親シールド後胴20の延出部27の先端外周部26が親シールド用カッタ90で切削形成された掘孔内面に干渉し得るところ、親シールド後胴20の延出部27の外筒23の前部231を親シールド前胴10の外径よりも上述したように所定長さL2だけ小径に形成することで、上記干渉を回避して所定の中折れ角を確保している。
【0045】
また、親シールド30の前胴10と後胴20との間の隙間207はシール208によって覆われて側部地山からシールされているので、親シールド後胴20の延出部27と子シールド前胴40との間に土砂が噛み込んで、屈曲が阻害されることが防止される。
【0046】
次に図1に示す親シールド30から子シールド60を発進させるときの手順を図5を用いて説明する。
【0047】
図1、図5に示すように、親シールド後胴20をブラケット210で既設セグメント205に固定して親シールド30の後退を防止し、親シールド用シールドジャッキ28及びエレクタ201を取り外して回収する。但し、シールドジャッキ28は、子シールド30の前胴40及び後胴50の径方向外方に位置するので、取り外すことなくそのまま放置しても子シールド60の発進の邪魔にならない。
【0048】
子シールド後胴50の後端に延長後胴51を継ぎ足し、延長後胴51の内部に子シールド用エレクタ52を設置する。既設セグメント201に反力受け用のブロック211をリング状に止水させて取り付け、そのブロック211に子シールド用セグメント26を突き当ててエレクタ52等によってリング状に組み立てる。子シールド後胴50に子シールド用シールドジャッキ58を取り付ける。
【0049】
前胴固定装置11のネジロッド19を緩めて親シールド前胴10を子シールド前胴40から切り離し、後胴固定装置21のネジロッドを緩めて親シールド後胴20を子シールド後胴50から切り離す。ネジロッド19はナット18のネジ孔の止水栓となる。また、子シールド用カッタ80内のジャッキ805のロッドを没入して、挿抜部材806を挿抜孔807から引き抜き、親シールド用カッタ90を子シールド用カッタ80から切り離す。これにより、図5に示すように、発進準備が完了した子シールド60が親シールド30の内部に収容された状態となる。
【0050】
その後、子シールド用カッタ80を回転させ、子シールド用シールドジャッキ58を伸長させ、セグメント56に反力を取って子シールド60を親シールド30から発進させる。このとき、子シールド60が通過する親シールド用カッタ90の穴の内径(内周リング902の内径R2)は、子シールド用カッタ80の外径すなわち前胴40及びこれと同径の後胴50の外径R1よりも所定間隔L3だけ大きいので、子シールド60は、親シールド用カッタ90の穴を通過してスムーズに発進できる。詳しくは、親シールド用カッタ90は、切羽前面からの土圧を受けるので、子シールド60に引き摺られて前進することはなく、親シールド前胴10は、停止状態の親シールド用カッタ90に引っ掛かるため、子シールド60に引き摺られても前進することはない。
【0051】
親シールド30から発進した後の子シールド60の中折れは、中折れジャッキ74及び中折れ機構70によって行われ、その中折れ掘進時すなわちカーブ掘進時に、コピーカッタ用ジャッキ808を適宜伸縮させてコピーカッタ809を子シールド用カッタ80の外周端から適宜出没させることで、カーブ内側の地山を余掘りする。
【0052】
本発明の変形実施形態を図6に示す。
【0053】
この変形実施形態に係る中折れ式親子シールド1は、前実施形態に係る親シールド30の前胴10と後胴20との間に、中折れジャッキ220を追加して介設した点のみが前実施形態と異なり、その他は同様の構成となっているので、同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
追加された中折れジャッキ220は、周方向に間隔を隔てて複数配設されており、親シールド30の前胴10と後胴20とを屈曲させるとき、子シールド60内の中折れジャッキ74のみでは不足しがちとなる中折れ力(中折れモーメント)を補うために設けられたものである。追加された中折れジャッキ220は、子シールド60内の中折れジャッキ74と比べて中折れ中心からの距離(中折れモーメントの腕の長さ)が長い位置に配置されるので、効率よく親シールド30の中折れモーメントを補うことができる。
【0055】
本発明の実施形態は、上述の各実施形態に限られない。例えば、親シールド30のシールドジャッキ28は、子シールド60内に設けられた中折れ機構70に対してシールド軸方向後方に位置をずらして配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る中折れ式親子シールドを親シールドとして機能させるときの側断面図である。
【図2】図1のII−II線矢示図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】図1の親シールドを屈曲させたときの平面断面図である。
【図5】図1の親シールドから子シールドを発進させる直前の側断面図である。
【図6】中折れ式親子シールドの変形実施形態を示す平面断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 中折れ式親子シールド
10 前胴
20 後胴
27 延出部
28 親シールド用シールドジャッキ
30 親シールド
40 前胴
50 後胴
60 子シールド
70 中折れ機構
207 隙間
208 シール
220 中折れジャッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前胴と後胴とが屈曲可能な親シールドから、前胴と後胴とが屈曲可能な子シールドが発進する中折れ式親子シールドであって、
上記子シールドの前胴に上記親シールドの前胴を連結切離可能に被嵌し、上記子シールドの後胴に上記親シールドの後胴を連結切離可能に被嵌し、上記子シールドの前胴と後胴とを中折れ機構を介して屈曲可能に接続し、
該中折れ機構を、上記子シールドの前胴と後胴との屈曲、上記親シールドの前胴と後胴との屈曲に共用したことを特徴とする中折れ式親子シールド。
【請求項2】
上記親シールドの後胴の内周に、親シールド用シールドジャッキを設け、該シールドジャッキよりも径方向内方に位置させて、上記中折れ機構を配置した請求項1に記載の中折れ式親子シールド。
【請求項3】
上記親シールドの後胴が、上記子シールドの前胴の外周面と前後方向で重合するように前方に延出されると共にその外周面から径方向外方に離間された延出部を有し、該延出部に、上記親シールド用シールドジャッキを設けた請求項1又は2に記載の中折れ式親子シールド。
【請求項4】
上記親シールドの前胴と後胴とを架け渡すようにして、それら前胴と後胴との間の側部地山に対する隙間を覆うように形成され、且つそれら前胴と後胴との屈曲を許容するシールを備えた請求項1〜3いずれかに記載の中折れ式親子シールド。
【請求項5】
上記親シールドの前胴と後胴との間に、中折れジャッキを介設した請求項1〜4のいずれかに記載の中折れ式親子シールド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate