説明

中押工法

【課題】 中押工法で急曲線推進工を行う場合に、どのような曲線半径でも従来のST管の中押装置を使用することなく低コストで連続推進を可能にする。
【解決手段】 使用する標準的な推進管と長さが同じか又はそれ以下の管の差込口端部に凹部24を形成してジャッキ取付用凹部付き推進管20とする。先ず推進管を複数継ぎ足しながら元押装置で元押しし、その推進管列に前記ジャッキ30を凹部24に取り付けたジャッキ取付用凹部付き推進管20を複数連続して継ぎ足し、さらに推進管を複数継ぎ足しながら元押装置で途中まで推進する。次に元押装置を停止して最前方のジャッキ30を伸長させて切羽側の推進管列を中押しし、続いて後方のジャッキ30を伸長させるとともにその前方のジャッキ30を収縮させて後続のジャッキ取付用凹部付き推進管20を1本づつ順に前詰めし、その後発進側の推進管列を元押装置で元押しする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進工法において、推進管列の途中位置から切羽側の推進管列を推進させる中押工法に関する。
【背景技術】
【0002】
推進工法の推進力伝達手段として、発進立坑内に複数の油圧ジャッキを設置した元押装置があるが、これ以外には中押工法がある。この中押工法は、特に長距離推進工となる場合、元押装置の推進力が推進管の軸方向耐荷力をオーバーして推進管が破損する可能性が高い場合に用いられる工法である。
【0003】
先ず、推進管を複数継ぎ足しながら元押装置で元押しし、計画された位置の推進管列に油圧ジャッキを備えた中押管を設置し、さらに推進管を複数継ぎ足しながら推進管の軸方向耐荷力をオーバーしない推進力で推進可能な距離まで元押装置で元押しする。次に、元押装置を停止して中押装置の油圧ジャッキで切羽側の推進管列を中押しし、次に、中押管の油圧ジャッキを解圧して発進側の推進管列を元押装置で元押しする(中押管の油圧ジャッキは収縮する)。その後、この中押しと元押しの工程を交互に繰り返す。このように、推進管が破損しないように推進力の発生箇所を分散して全体を推進できるようにする技術で、長距離推進工を行う場合に採用されることが多い。
【0004】
ところで、推進管の管長は、標準管の2.430m、半管の1.20m、1/3管の0.80m、1/4管の0.60m等があり、開口目地寸法は漏水や抜け出し長の制限から35mm(シングルパッキン)〜60mm程度(ダブルパッキン)が限界のため、曲線半径が小さいほど管長の短い推進管が使用される。この推進管を中押管より管長の短いものを用いて急曲線推進工を行った場合、削孔の通過時に中押管に曲げモーメントが発生し、一般的な中押管は胴割れを起こすこともあり、一般的な中押管は曲線半径の制限を受ける問題があった。
【0005】
また、前記中押管は、オス・メスの1組のST管から形成され、ストロークが20〜50cm程度の複数の油圧ジャッキが伸縮自在な空間を保持する特殊な構造であるから、推進管と比較して非常に高価であった。また、その構造上、ST管挿入時の有効長は1.30mほどになり、管長が0.80mや0.60m等の推進管のように管長の短い中押管の製作は技術的に困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−200691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、中押工法で急曲線推進工を行う場合に、どのような曲線半径でも従来のST管の中押装置を使用することなく低コストで連続推進を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 掘削機の後端に複数の推進管を接続し、その推進管列の最後尾を元押装置で元押しして地中を推進する推進工法において、元押装置の推進力が推進管の軸方向耐荷力以上になると想定される場合に推進管列の途中位置から切羽側の推進管列を中押しする中押工法であって、使用する標準的な推進管と長さが同じか又はそれ以下の管の差込口端部の一部にジャッキを脱着自在に取り付ける凹部を形成してジャッキ取付用凹部付き推進管とし、先ず推進管を複数継ぎ足しながら元押装置で元押しし、その推進管列に前記ジャッキ取付用凹部付き推進管を複数連続して継ぎ足し、さらに推進管を複数継ぎ足しながら元押装置で途中まで推進し、次に元押装置を停止して各ジャッキ取付用凹部付き推進管の凹部にジャッキをそれぞれ取り付け、最前方のジャッキを伸長させて切羽側の推進管列を中押しし、続いて後方のジャッキを伸長させるとともにその前方のジャッキを収縮させて後続のジャッキ取付用凹部付き推進管を1本づつ順に前詰めし、その後発進側の推進管列を元押装置で元押しするようにしたことを特徴とする、中押工法
2) 掘削機の後端に複数の推進管を接続し、その推進管列の最後尾を元押装置で元押しして地中を推進する推進工法において、元押装置の推進力が推進管の軸方向耐荷力以上になると想定される場合に推進管列の途中位置から切羽側の推進管列を中押しする中押工法であって、使用する標準的な推進管と長さが同じか又はそれ以下の管の差込口端部の一部にジャッキを脱着自在に取り付ける凹部を形成してジャッキ取付用凹部付き推進管とし、先ず推進管を複数継ぎ足しながら元押装置で元押しし、その推進管列に前記ジャッキを凹部に取り付けたジャッキ取付用凹部付き推進管を複数連続して継ぎ足し、さらに推進管を複数継ぎ足しながら元押装置で途中まで推進し、次に元押装置を停止して最前方のジャッキを伸長させて切羽側の推進管列を中押しし、続いて後方のジャッキを伸長させるとともにその前方のジャッキを収縮させて後続のジャッキ取付用凹部付き推進管を1本づつ順に前詰めし、その後発進側の推進管列を元押装置で元押しするようにしたことを特徴とする、中押工法
3) ジャッキ取付用凹部付き推進管が鉄筋コンクリート製で、凹部を差込口端部の左右部のみに形成し、その凹部の内面と差込口端部と受口端面を鋼製の補強板で補強し、上下部を元押装置で元押しする際の推力伝達部とした、前記1)又は2)記載の中押工法
にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の前記1)及び2)記載の構成によれば、以下の効果を奏する。
1)ジャッキ取付用凹部付き推進管の長さが使用する標準的な推進管と同じか又はそれ以下であるから、推進管が通過できる掘削外径であれば、どのような曲線半径でも円滑に推進できる。
2)ジャッキ取付用凹部付き推進管は基本的に標準的な推進管と同じ構造のものが使用できるから、多少の改造で済み、従来の一般的な中押管と比較して低コストで製作できる。
3)複数のジャッキ取付用凹部付き推進管とジャッキで中押しするようにしたから、ジャッキは従来の専用のジャッキと比較して推力の小さい小型のものでよく、低コストで実施できる。
4)ジャッキ取付用凹部付き推進管とジャッキを追加すれば、より連続的に長距離を推進できる。
【0010】
本発明の前記3)記載の構成によれば、元押し時に前後のジャッキ取付用凹部付き推進管同士は上下の推力伝達部が当接する。したがって、凹部を形成しても当接面積が不足することなく元押装置の推進力を伝達できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例のジャッキ取付用凹部付き推進管の説明図である。
【図2】実施例のジャッキ取付用凹部付き推進管の差込口側の端面図である。
【図3】実施例の推進管とジャッキ取付用凹部付き推進管の説明図である。
【図4】実施例の急曲状の削孔の通過を示す説明図である。
【図5】実施例の中押しを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を実施例と図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0013】
図1は実施例のジャッキ取付用凹部付き推進管の説明図、図2は実施例のジャッキ取付用凹部付き推進管の差込口側の端面図、図3は実施例の推進管とジャッキ取付用凹部付き推進管の説明図、図4は実施例の急曲状の削孔の通過を示す説明図、図5は実施例の中押しを示す説明図である。図中、10は推進管、11はカラー、12はクッション材、20はジャッキ取付用凹部付き推進管、21はカラー、22は補強板、23はパッキン、24は凹部、25は補強板、25aはリブ、30はジャッキ、40は掘削機、50は元押装置である。
【0014】
本実施例のジャッキ取付用凹部付き推進管20は、使用する標準的な推進管10と同じ長さの鉄筋コンクリート製で、図1〜3に示すように、受口側の外縁に鋼製のカラー21を取り付け、その受口側の端面に鋼製の環状の補強板22を取り付けている。カラー21の突出長さは、ジャッキ30の伸長分と余裕分、及び急曲状の削孔の通過を考慮し、推進管10のカラー11の150mmより長めの280mmに形成している。補強板22は、ジャッキ30の荷重を分散してコンクリートの端部欠けを防止するために設けられるもので、ジャッキ取付用凹部付き推進管20の製作時にコンクリート内の鉄筋と溶接される。
【0015】
差込口側の外周にはカラー21と密接して止水するパッキン23を二重に取り付け、その差込口側の端面の左右を切り欠いて凹部24を形成している。その左右の凹部24の内面には鋼製の補強板25を取り付け、その補強板25にジャッキ30を定位置に支持するための鋼製の一対のリブ25aを3箇所づつ溶接している。左右の凹部24の内部空間側は開放し、ジャッキ30を内部空間側から出し入れ可能にしている。差込口の端面の上下およそ90度の部分は凹部24を形成せず、元押し時に前後のジャッキ取付用凹部付き推進管20同士を当接させて推進力を伝達する推力伝達部としている。ジャッキ30は10cmのストローク長を有する油圧式豆ジャッキを用いている。
【0016】
本実施例では、掘削機40の後端に推進管10を複数継ぎ足しながら元押装置50で元押しし、その推進管列にジャッキ取付用凹部付き推進管20を5体連続して継ぎ足し、さらに推進管10を複数継ぎ足しながら元押装置50で元押しする。前後のジャッキ取付用凹部付き推進管20同士は、上下の推力伝達部が当接して元押装置50の推進力を伝達でき、凹部24の形成によって当接面積が不足することはない。
【0017】
推進中に掘削機40が中折れしながら掘進すると、後続の推進管列は目地が開口して屈曲し、掘削機40が造成した急曲状の削孔を通過して追従する。このとき、5体のジャッキ取付用凹部付き推進管20は推進管10の長さと同じであるから、図4に示すように、ジャッキ取付用凹部付き推進管20の目地も推進管10の開口目地と同幅に開口して屈曲し、従来技術のように曲げモーメントが発生したり胴割れを起こすことなく円滑に通過して推進できる。
【0018】
元押装置50の油圧ポンプ(図示せず)の推力が推進管10の軸方向耐荷力に近づくと、元押装置50を停止させ、各ジャッキ取付用凹部付き推進管20の凹部24のリブ25a間にジャッキ30をそれぞれ取り付ける(ジャッキ30に給油する給油管及び油圧ポンプは図示を省略している)。図5は上方が切羽側、下方が発進側である。図5(a)に示すように、先ず1番目のジャッキ30を伸長させて1番目のジャッキ取付用凹部付き推進管20と切羽側の推進管列を中押しさせる。次に、図5(b)に示すように、2番目のジャッキ30を伸長させるとともに1番目のジャッキ30を解圧して収縮させながら2番目のジャッキ取付用凹部付き推進管20を前詰めさせる。3,4番目のジャッキ30も同様に作動させ、図5(c),(d)に示すように、3,4番目のジャッキ取付用凹部付き推進管20を順に前詰めさせる。その後、図5(e)に示すように、元押装置50で5番目のジャッキ取付用凹部付き推進管20と後続の発進側の推進管列を元押しし、この中押しと元押しの工程を交互に繰り返して長距離を掘進する。この中押しにより、推進管10が破損しないように推進力の発生箇所が分散されて全体を推進できる。
【0019】
このように、本実施例によれば、ジャッキ取付用凹部付き推進管20の長さが使用する標準的な推進管10と同じであるから、推進管10が通過できる掘削外径であれば、どのような曲線半径でも円滑に推進できる。また、ジャッキ取付用凹部付き推進管20は基本的に標準的な推進管10と同じ構造のものが使用できるから、多少の改造で済み、従来の一般的な中押管と比較して低コストで製作できる。また、複数のジャッキ取付用凹部付き推進管20とジャッキ30で中押しするようにしたから、ジャッキ30は従来の専用のジャッキと比較して推力の小さい小型のものでよく、低コストで実施できる。なお、ジャッキ30は前記では中押し直前に取り付けたが、発進立坑でジャッキ取付用凹部付き推進管20を継ぎ足す前に予め取り付けておいてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の技術は、中押工法で急曲線推進工を行う場合に利用される。
【符号の説明】
【0021】
10 推進管
11 カラー
12 クッション材
20 ジャッキ取付用凹部付き推進管
21 カラー
22 補強板
23 パッキン
24 凹部
25 補強板
25a リブ
30 ジャッキ
40 掘削機
50 元押装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削機の後端に複数の推進管を接続し、その推進管列の最後尾を元押装置で元押しして地中を推進する推進工法において、元押装置の推進力が推進管の軸方向耐荷力以上になると想定される場合に推進管列の途中位置から切羽側の推進管列を中押しする中押工法であって、使用する標準的な推進管と長さが同じか又はそれ以下の管の差込口端部の一部にジャッキを脱着自在に取り付ける凹部を形成してジャッキ取付用凹部付き推進管とし、先ず推進管を複数継ぎ足しながら元押装置で元押しし、その推進管列に前記ジャッキ取付用凹部付き推進管を複数連続して継ぎ足し、さらに推進管を複数継ぎ足しながら元押装置で途中まで推進し、次に元押装置を停止して各ジャッキ取付用凹部付き推進管の凹部にジャッキをそれぞれ取り付け、最前方のジャッキを伸長させて切羽側の推進管列を中押しし、続いて後方のジャッキを伸長させるとともにその前方のジャッキを収縮させて後続のジャッキ取付用凹部付き推進管を1本づつ順に前詰めし、その後発進側の推進管列を元押装置で元押しするようにしたことを特徴とする、中押工法。
【請求項2】
掘削機の後端に複数の推進管を接続し、その推進管列の最後尾を元押装置で元押しして地中を推進する推進工法において、元押装置の推進力が推進管の軸方向耐荷力以上になると想定される場合に推進管列の途中位置から切羽側の推進管列を中押しする中押工法であって、使用する標準的な推進管と長さが同じか又はそれ以下の管の差込口端部の一部にジャッキを脱着自在に取り付ける凹部を形成してジャッキ取付用凹部付き推進管とし、先ず推進管を複数継ぎ足しながら元押装置で元押しし、その推進管列に前記ジャッキを凹部に取り付けたジャッキ取付用凹部付き推進管を複数連続して継ぎ足し、さらに推進管を複数継ぎ足しながら元押装置で途中まで推進し、次に元押装置を停止して最前方のジャッキを伸長させて切羽側の推進管列を中押しし、続いて後方のジャッキを伸長させるとともにその前方のジャッキを収縮させて後続のジャッキ取付用凹部付き推進管を1本づつ順に前詰めし、その後発進側の推進管列を元押装置で元押しするようにしたことを特徴とする、中押工法。
【請求項3】
ジャッキ取付用凹部付き推進管が鉄筋コンクリート製で、凹部を差込口端部の左右部のみに形成し、その凹部の内面と差込口端部と受口端面を鋼製の補強板で補強し、上下部を元押装置で元押しする際の推力伝達部とした、請求項1又は2記載の中押工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−87544(P2012−87544A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235608(P2010−235608)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(599111965)株式会社アルファシビルエンジニアリング (32)
【出願人】(505229391)ボーディング株式会社 (19)
【Fターム(参考)】