中枢神経系障害の処置のための方法および組成物
本発明は、必要とする対象に有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を投与することを含む、哺乳類対象における中枢神経系障害の処置のための方法および組成物を提供する。本発明はまた、新規な 11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類対象における中枢神経系障害の処置のための方法および組成物に関する。本発明はまた、新規なプロスタグランジン化合物にも関する。
【背景技術】
【0002】
細胞間接着部は、隣接している内皮および上皮細胞の間の接着および連絡を媒介する。内皮において、結合複合体は、タイトジャンクション(密着結合)、アドヘレンスジャンクション(接着結合)およびギャップジャンクション(ギャップ結合)を含む。かかる複合体の発現および組織化は、灌流される臓器の血管のタイプおよび透過性の要求に依存する。ギャップジャンクションは、隣接する細胞間の低分子量溶質の通過を可能とする連絡構造である。タイトジャンクションは、傍細胞透過性の制御および細胞極性の維持により、膜内の「障壁(バリア)」および「障害(フェンス)」を提供する主な機能的役割を果たしている。アドヘレンスジャンクションは、内皮細胞増殖の接触阻害および循環する白血球および溶質に対する傍細胞透過性において重要な役割を果たす。さらに、それらは血管新生において新しい血管の正確な組織化に必要である(Physiol. Rev. 84(3)、869-901、2004)。
【0003】
上皮および内皮細胞が相互作用して極性組織を形成する機構は多細胞生物にとって非常に重要である。これら障壁の調節不全は様々な疾患において起こっており、正常な細胞環境を破壊し、臓器不全を導く。
【0004】
血液脳関門 (BBB)を形成する脳微小血管内皮細胞は、脳の恒常性および低い透過性を維持するために必須のタイトジャンクションを有する。
【0005】
血液脳関門 (BBB)は中枢神経系 (CNS)における特殊化した構造であって、栄養分および毒性物質の中枢神経系 (CNS)への接近を制御することにより脳脊髄液恒常性の状態の維持に役割を果たしている。
【0006】
脈管構造の下にある基底膜は、内皮細胞壁に対する構造的支持を提供することによってBBBの完全性の維持に重要な役割を果たしている(Trends Neurosci. 1990;13(5): 174-178)。BBBは、侵入物質、例えば、炎症細胞および細菌、ならびに化学物質から、中枢神経系 (CNS)を保護する役割を果たしている。
【0007】
BBBの破壊と関連する広範な中枢神経系 (CNS) 障害が知られている。障害の例としては、多発性硬化症、実験的アレルギー性脳脊髄炎、細菌性髄膜炎、虚血、脳浮腫、アルツハイマー病、エイズによる認知症 (Helga E. DE Vries et al、Pharmacological Reviews、49(2): 143-155、1997)、脳腫瘍 (Davies D. C. et al. 、J Anat.、200 (6): 639-46,2002)、外傷性脳障害 (Hartl R et. al.、Acta Neurochir Suppl. 70: 240-242、1997)が挙げられる。
【0008】
局所性卒中の後、BBBが崩壊するとともに血管透過性が上昇するということも報告されている。BBBに対する損傷の結果、しばしば出血および浮腫が起こり、その結果神経細胞死が導かれる(Biomedicine. 1974;21:36-39、Stroke、1998; 29(5): 1020-1030、Stroke、2003; 34(3):806-812、J Neurotrauma. 1995;12:833-842)。局所性卒中後の脳傷害は第一に脳血管の閉塞による血流の低下およびエネルギー枯渇の結果である。神経組織はかかる現象の結果損なわれ、興奮毒性、酵素活性化、浮腫、および炎症からの影響を受ける(Trends Pharmacol Sci. 1996;17:227-233、Crit Care Med. 1988;16:954-963)。
【0009】
さらに、全身由来炎症が最近、BBBタイトジャンクションの破壊をもたらし、傍細胞透過性を上昇させることが示されている。BBBは細胞骨格レベルで生理的刺激に応答して迅速な調節を行うことが出来、脳実質の保護、および恒常性の環境の維持を可能とする。
【0010】
研究によるとBBBの破壊はCNS疾患に関連していることが示されている。しかし、BBBをどのように保護するかについての研究はあまりなされていない。
【0011】
プロスタグランジン類(以後プロスタグランジンはPGとして示す)はヒトまたは他の哺乳類の組織または器官に含有され、広範囲の生理学的活性を示す有機カルボン酸の1群である。天然に存在するPG類(天然PG類)は一般的に、式(A)に示すプロスタン酸骨格を有する。
【化1】
【0012】
一方天然PG類の幾つかの合成アナログは修飾された骨格を持っている。天然PG類は5員環部分の構造特性によって、PGA類、PGB類、PGC類、PGD類、PGE類、PGF類、PGG類、PGH類、PGI類およびPGJ類に分類され、さらに炭素鎖部分の不飽和の数と位置によって以下の3タイプに分類される。
(下付1)...13,14−不飽和−15−OH
(下付2)...5,6−および13,14−ジ不飽和−15−OH
(下付3)...5,6−、13,14−および17,18−トリ不飽和−15−OH。
【0013】
さらに、PGF類は9位の水酸基の配置によってα(水酸基がアルファー配置である)およびβ(水酸基がベータ配置である)に分類される。
【0014】
PGE1、PGE2およびPGE3は血管拡張、血圧降下、胃液分泌減少、腸管運動亢進、子宮収縮、利尿、気管支拡張および抗潰瘍活性をもつことが知られている。また、PGF1α、PGF2αおよびPGF3αは血圧上昇、血管収縮、腸管運動亢進性、子宮収縮、黄体退行および気管収縮特性を有することが知られている。
【0015】
いくつかの15-ケト (即ち、15位にヒドロキシの代わりにオキソを有する)-PG類および13,14-ジヒドロ (即ち、13および14位の間に単結合を有する)-15-ケト-PG類は天然PG類の代謝の際に酵素の作用によって天然に生じる物質として知られている。
【0016】
上野らの米国特許第5290811号はいくつかの15-ケト-PG化合物が脳の機能の向上に有用であることを記載している。米国特許第5290811号は13位と14位の間の結合が飽和である場合、ケト-ヘミアセタール平衡が、11位のヒドロキシ基と15位のケト基の間のヘミアセタール形成によって形成されることがあることを示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上野らの米国特許第5317032号は二環式互変異性体の存在を含むプロスタグランジン化合物の下剤を記載しており、上野の米国特許第6414016号は抗便秘薬として顕著な活性を有する二環式互変異性体を記載している。1以上のハロゲン原子によって置換されている二環式互変異性体は低用量で便秘の緩和に用いることが出来る。特にC16位にフッ素原子を有するものは便秘の緩和のために低用量にて用いることが出来る。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の概要
本発明者は鋭意研究を行った結果、11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が中枢神経系障害に対する有意な効果を有することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0019】
即ち、本発明は、有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を必要とする対象に投与することを含む、哺乳類対象における中枢神経系障害の処置方法に関する。
【0020】
本発明はさらに、有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を含む、哺乳類対象における中枢神経系障害の処置のための組成物に関する。
【0021】
さらに、本発明は、有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を含む、哺乳類対象における中枢神経系障害の処置のための組成物の製造のための11-デオキシ-プロスタグランジン化合物の使用に関する。
【0022】
本発明の別の態様は、有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を必要とする対象に投与することを含む、哺乳類対象において脳血管内皮細胞を保護する方法に関する。
【0023】
本発明の別の側面において、式 (IV)で表される新規な化合物が提供される:
【化2】
(IV)
[式中、
Lは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ; ここで、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CH2OH、−COCH2OH、−COOH またはそれらの官能性誘導体;
Bは、単結合、−CH2−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2−CH2−CH2−、−CH=CH−CH2−、−CH2−CH=CH−、−C≡C−CH2−または−CH2−C≡C−;
Zは、
【化3】
ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキル、ただしR4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない;
X1’およびX2’ は同一または異なるハロゲン原子;
R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された、飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄で置換されていてもよい;
R2は、単結合または低級アルキレン; および、
R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄で置換されていてもよい;
ただし、 式 (IV)は、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1ではない]。
【0024】
図面の簡単な説明
図1は、経内皮電気抵抗(Transendothelial Electrical Resistance)(TEER) の回復に対する化合物Aの効果を示すグラフである。ヒト血管内皮細胞培養を経内皮電気抵抗 (TEER)により測定して集密にさせた。細胞培養を次いで窒素雰囲気中でのインキュベーションにより、30 分間酸素を欠乏させた。細胞を次いで0.1% DMSOまたは5 nM 化合物A+0.1% DMSOのいずれかで処理した。統計的有意性は薬物処理の後のすべてのデータ地点について示す。N=10 細胞。
【0025】
図2は、ATP レベルの回復に対する化合物Aの効果を示すグラフである。ヒト微小血管内皮細胞(成人) (HMVEC-AD)を集密まで培養した。細胞を次いで窒素雰囲気で30 分間処理し、正常の酸素に戻した。ATP レベルをルシフェリン・ルシフェラーゼアッセイ系 (ATPlite、Perkin Elmer)を用いて示された時点でモニターした。ATP レベルを相対的発光として示す。各時点において、N=6 細胞。
【0026】
図3は、以下の合成例 2において得た化合物 (6) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0027】
図4は、以下の合成例 2において得た化合物 (6) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0028】
図5は、以下の合成例 3において得た化合物 (9) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0029】
図6は、以下の合成例 3において得た化合物 (9) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0030】
図7は、以下の合成例 4において得た化合物(12) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0031】
図8は、以下の合成例 4において得た化合物(12) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0032】
図9は、以下の合成例 5において得た化合物(15) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0033】
図10は、以下の合成例 5において得た化合物(15) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0034】
図11は、以下の合成例 6において得た化合物(18) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0035】
図12は、以下の合成例 6において得た化合物(18) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0036】
図13は、以下の合成例 7において得た化合物(21) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0037】
図14は、以下の合成例 7において得た化合物(21) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0038】
図15は、以下の合成例 8において得た化合物(23) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0039】
図16は、以下の合成例 8において得た化合物(23) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0040】
図17は、以下の合成例9において得た化合物(25) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0041】
図18は、以下の合成例 9において得た化合物(25)の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0042】
図19は、以下の合成例10において得た化合物(34) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0043】
図20は、以下の合成例 10において得た化合物(34)の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0044】
発明の詳細な説明
本発明において、「11-デオキシ-プロスタグランジン化合物」(以下、「11-デオキシ-PG化合物」と称する)は、5員環の配置、二重結合の数、置換基の存在または非存在、あるいはαまたはω鎖のその他の修飾に関わりなく、プロスタン酸骨格の11位に置換基を有さない化合物のあらゆる誘導体またはアナログ (置換体を含む)を含みうる。
【0045】
前記式(A)はC−20の基本骨格のものであるが、本発明では炭素数がこれによって限定されるものではない。即ち、式(A)においてPG化合物の基本骨格を構成する炭素の番号はカルボン酸を1とし5員環に向かって順に2〜7までをα鎖上の炭素に、8〜12までを5員環の炭素に、13〜20までをω鎖上に付しているが、炭素数がα鎖上で減少する場合、2位から順次番号を抹消して命名する。炭素数がα鎖上で増加する場合、カルボキシル基(C−1)の代わりに2位において対応する置換基を有する置換化合物として命名する。同様に炭素数がω鎖上で減少する場合、20位から順次番号を抹消して命名する。また、炭素数がω鎖上で増加する場合、21番目以後の炭素原子は置換基として命名する。また、立体配置に関しては、特に断りのない限り、上記基本骨格(A)の有する立体配置に従うものとする。
【0046】
前述のように、11-デオキシ-PG化合物の命名はプロスタン酸骨格に基づいて行うが、上記化合物がプロスタグランジンと類似の部分構造を有する場合には、簡略化のため「PG」の略名を利用することがある。この場合、α鎖の骨格炭素数が2個延長された11-デオキシ-PG化合物、すなわちα鎖の骨格炭素数が9である11-デオキシ-PG化合物は、2−デカルボキシ−2−(2−カルボキシエチル)−11-デオキシ-PG化合物と命名する。同様に、α鎖の骨格炭素数が11である11-デオキシ-PG化合物は、2−デカルボキシ−2−(4−カルボキシブチル)−11-デオキシ-PG化合物と命名する。また、ω鎖の骨格炭素数が2個延長された11-デオキシ-PG化合物、すなわちω鎖の骨格炭素数が10である11-デオキシ-PG化合物は、11-デオキシ-20−エチル−PG化合物と命名する。なお、命名はこれをIUPAC命名法に基づいて行うことも可能である。
【0047】
アナログ(置換体を含む)または誘導体の例は、上記11-デオキシ-PG類のα鎖末端のカルボキシル基がエステル化された化合物、α鎖が延長された化合物、それらの生理学的に許容し得る塩、2−3位の炭素結合が2重結合あるいは5−6位の炭素結合が3重結合を有する化合物、3位、5位、6位、16位、17位、18位、19位および/または20位の炭素に置換基を有する化合物、9位の水酸基の代りに低級アルキル基またはヒドロキシ(低級)アルキル基を有する化合物等である。
【0048】
本発明において3位、17位、18位および/または19位の好適な置換基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、特にメチル基、エチル基が挙げられる。16位の好適な置換基としては、メチル、エチル等の低級アルキル、ヒドロキシ、塩素、フッ素等のハロゲン原子、およびトリフルオロメチルフェノキシ等のアリールオキシが挙げられる。17位の好適な置換基としては、メチル、エチル等の低級アルキル、ヒドロキシ、塩素、フッ素等のハロゲン原子、およびトリフルオロメチルフェノキシ等のアリールオキシが挙げられる。20位の好適な置換基としては、C1−4アルキルのような飽和または不飽和の低級アルキル基、C1−4アルコキシのような低級アルコキシ基、C1−4アルコキシ−C1−4アルキルのような低級アルコキシアルキルを含む。5位の好適な置換基としては、塩素、フッ素などのハロゲン原子を含む。6位の好適な置換基としては、カルボニル基を形成するオキソ基を含む。9位にヒドロキシ基、低級アルキルまたはヒドロキシ(低級)アルキル置換基を有する場合のPG類の立体配置はα,βまたはそれらの混合物であってもかまわない。
【0049】
さらに、上記アナログまたは誘導体は、ω鎖が天然のPG類より短い化合物のω鎖末端にアルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、フェノキシ基、フェニル基等の置換基を有する化合物であってもよい。
【0050】
本発明の11-デオキシ-PG化合物の命名に際しては、前記式(A)に示したプロスタン酸の番号を用いる。
【0051】
本発明に用いられる好ましい化合物は式 (I)で表される:
【化4】
(I)
[式中、
LおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ、ここで、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していていてもよい;
Aは、−CH3、−CH2OH、−COCH2OH、−COOH またはそれらの官能性誘導体;
R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;および、
R0は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基; 低級アルコキシ; 低級アルカノイルオキシ; シクロ(低級)アルキル; シクロ(低級)アルキルオキシ; アリール; アリールオキシ; 複素環基; 複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい]。
【0052】
本発明において用いられるより好ましい化合物は式 (II)で表される:
【化5】
(II)
[式中、
LおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ、ここで、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CH2OH、−COCH2OH、−COOH またはそれらの官能性誘導体;
Bは、単結合、−CH2−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2−CH2−CH2−、−CH=CH−CH2−、−CH2−CH=CH−、−C≡C−CH2−または−CH2−C≡C−;
Zは、
【化6】
ここで、R4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない;
R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;および、
Raは、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基; 低級アルコキシ; 低級アルカノイルオキシ; シクロ(低級)アルキル; シクロ(低級)アルキルオキシ; アリール; アリールオキシ; 複素環基; 複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい]。
【0053】
上記化合物のなかで特に好ましい化合物の一群は式 (III)で表される:
【化7】
(III)
[式中、
Lは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ、ここで5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CH2OH、−COCH2OH、−COOH またはそれらの官能性誘導体;
Bは、単結合、−CH2−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2−CH2−CH2−、−CH=CH−CH2−、−CH2−CH=CH−、−C≡C−CH2−または−CH2−C≡C−;
Zは、
【化8】
ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4およびR5は同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない;
X1およびX2は、水素、低級アルキル、またはハロゲン;
R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;および、
R2は、単結合または低級アルキレン;および、
R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい]。
【0054】
本発明はさらに、式 (IV)で表される化合物およびそれを作る方法に関する:
【化9】
(IV)
[式中、
Lは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ、ここで、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
Bは、単結合、−CH2−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2−CH2−CH2−、−CH=CH−CH2−、−CH2−CH=CH−、−C≡C−CH2−または−CH2−C≡C−;
Zは、
【化10】
ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4およびR5は同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない;
X1’およびX2’は同じかまたは異なっている、ハロゲン原子;
R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;
R2は、単結合または低級アルキレン;および、
R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;
ただし、式 (IV)は11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1ではない]。
【0055】
上記式中、R1およびRaの定義における「不飽和」の語は、主鎖および/または側鎖の炭素原子間の結合として、1つまたはそれ以上の二重結合および/または三重結合を孤立、分離または連続して含むことを意味する。通常の命名法に従って、連続する2つの位置間の不飽和結合は若い方の位置番号を表示することにより示し、連続しない2つの位置間の不飽和結合は両方の位置番号を表示して示す。
【0056】
「低〜中級脂肪族炭化水素」の語は、炭素原子数1〜14の直鎖または分枝鎖(ただし、側鎖は炭素原子数1〜3のものが好ましい)を有する炭化水素基を意味し、R1については好ましくは炭素原子数1〜10、特に6〜10、Raについては1〜10、特に1〜8の炭化水素基である。
【0057】
「ハロゲン」の語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。
【0058】
「低級」の語は、特にことわりのない限り炭素原子数1〜6を有する基を包含するものである。
【0059】
「低級アルキル」の語は、炭素原子数1〜6の直鎖または分枝状の飽和炭化水素基を意味し、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。
【0060】
「低級アルコキシ」の語は、低級アルキルが上述と同意義である低級アルキル−O−基を意味する。
【0061】
「ヒドロキシ(低級)アルキル」の語は、少なくとも1つのヒドロキシ基で置換された上記のような低級アルキルを意味し、例えばヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチルおよび1−メチル−1−ヒドロキシエチルが挙げられる。
【0062】
「低級アルカノイルオキシ」の語は、式RCO−O−(ここで、RCO−は上記のような低級アルキル基が酸化されて生じるアシル基、例えばアセチル)で示される基を意味する。
【0063】
「シクロ(低級)アルキル」の語は、炭素原子3個以上を含む上記のような低級アルキル基が閉環して生ずる環状基を意味し、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを含む。
【0064】
「シクロ(低級)アルキルオキシ」の語は、シクロ(低級)アルキルが上述と同意義であるシクロ(低級)アルキル−O−基を意味する。
【0065】
「アリール」の語は、非置換または置換の芳香族炭化水素環基を包含し、(好ましくは単環式基の)、例えばフェニル、トリル、キシリルが例示される。置換基としては、ハロゲン原子、ハロ(低級)アルキル(ここで、ハロゲン原子および低級アルキルは前記の意味)が含まれる。
【0066】
「アリールオキシ」の語は、式ArO−(ここで、Arは上記のようなアリール)で示される基を意味する。
【0067】
「複素環基」の語としては、置換されていてもよい炭素原子および、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1種または2種のヘテロ原子を1〜4個、好ましくは1〜3個含む、5〜14員環、好ましくは5〜10員環の、単環式〜3環式、好ましくは単環式の複素環基が含まれる。複素環基としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、2−ピロリニル基、ピロリジニル基、2−イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、2−ピラゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、インドリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、プリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズイミダゾリニル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基などが例示される。置換基としてはハロゲン、ハロゲン置換低級アルキル基(ここで、ハロゲンおよび低級アルキル基は前記の意味)が例示される。
【0068】
「複素環オキシ基」の語は、式HcO−(ここでHcは上記のような複素環基)で示される基を意味する。
【0069】
Aの「官能性誘導体」の語は、塩(好ましくは、医薬上許容し得る塩)、エーテル、エステルおよびアミド類を含む。
【0070】
適当な「医薬上許容し得る塩」としては、慣用される非毒性塩を含み、無機塩基との塩、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩;または有機塩基との塩、例えばアミン塩(例えばメチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン塩、モノメチル−モノエタノールアミン塩、プロカイン塩、カフェイン塩等)、塩基性アミノ酸塩(例えばアルギニン塩、リジン塩等)、テトラアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩類は、例えば対応する酸および塩基から常套の反応によってまたは塩交換によって製造し得る。
【0071】
エーテルの例としてはアルキルエーテル、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、t−ブチルエーテル、ペンチルエーテル、1−シクロプロピルエチルエーテル等の低級アルキルエーテル;オクチルエーテル、ジエチルヘキシルエーテル、ラウリルエーテル、セチルエーテル等の中級または高級アルキルエーテル;オレイルエーテル、リノレニルエーテル等の不飽和エーテル;ビニルエーテル、アリルエーテル等の低級アルケニルエーテル;エチニルエーテル、プロピニルエーテル等の低級アルキニルエーテル;ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシイソプロピルエーテル等のヒドロキシ(低級)アルキルエーテル;メトキシメチルエーテル、1−メトキシエチルエーテル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエーテル;例えばフェニルエーテル、トシルエーテル、t−ブチルフェニルエーテル、サリチルエーテル、3,4−ジメトキシフェニルエーテル、ベンズアミドフェニルエーテル等の所望により置換されたアリールエーテル;およびベンジルエーテル、トリチルエーテル、ベンズヒドリルエーテル等のアリール(低級)アルキルエーテルが挙げられる。
【0072】
エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、1−シクロプロピルエチルエステル等の低級アルキルエステル;ビニルエステル、アリルエステル等の低級アルケニルエステル;エチニルエステル、プロピニルエステル等の低級アルキニルエステル;ヒドロキシエチルエステル等のヒドロキシ(低級)アルキルエステル;メトキシメチルエステル、1−メトキシエチルエステル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエステルのような脂肪族エステル;および例えばフェニルエステル、トリルエステル、t−ブチルフェニルエステル、サリチルエステル、3,4−ジメトキシフェニルエステル、ベンズアミドフェニルエステル等の所望により置換されたアリールエステル;ベンジルエステル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステル等のアリール(低級)アルキルエステルが挙げられる。
【0073】
Aのアミドは、式−CONR’R''(式中、R’およびR''はそれぞれ水素、低級アルキル、アリール、アルキル−またはアリール−スルホニル、低級アルケニルおよび低級アルキニル)で示される基を意味し、例えばメチルアミド、エチルアミド、ジメチルアミド、ジエチルアミド等の低級アルキルアミド;アニリド、トルイジド等のアリールアミド;メチルスルホニルアミド、エチルスルホニルアミド、トリルスルホニルアミド等のアルキル-またはアリール-スルホニルアミドが挙げられる。
【0074】
好ましいLの例は、ヒドロキシ、オキソを含み、特にいわゆるPGFまたはPGEタイプと称される5員環構造を有するものを含む。
【0075】
好ましいAは、−COOH、その医薬上許容し得る塩、エステルまたはアミドである。
【0076】
好ましいBは、−CH2−CH2−であり、いわゆる、13,14-ジヒドロタイプの構造を提供するものである。
【0077】
好ましいX1およびX2の例は、水素、またはそれらの少なくとも1つがハロゲンであり、より好ましくは両方がハロゲンであり、特に好ましくは両方がフッ素であり、いわゆる16,16−ジフルオロタイプと称される構造を提供するものである。
【0078】
好ましいX1’およびX2’は、ジフルオロ原子である。
【0079】
好ましいR1は、炭素原子数1〜10であり、特に好ましくは炭素原子数6〜10の炭化水素残基である。脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は酸素、窒素または硫黄で置換されていてもよい。
【0080】
R1の具体例としては、例えば、次のものが挙げられる。
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH=CH−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH=CH−、
−CH2−C≡C−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH(CH3)−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−O−CH2−、
−CH2−CH=CH−CH2−O−CH2−、
−CH2−C≡C−CH2−O−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH=CH−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH=CH−、
−CH2−C≡C−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH(CH3)−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH=CH−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH=CH−、
−CH2−C≡C−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、および、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH(CH3)−CH2−。
【0081】
好ましいRaは、1−10炭素原子、より好ましくは1−8炭素原子を有する炭化水素である。Raは1の炭素原子を有する1または2の側鎖を有していてもよい。
【0082】
好ましいR2は単結合であり、好ましいR3は低級アルキルである。R3は1つの炭素原子を含む1または2の側鎖を有していてもよい。
【0083】
上記式(I)、(II)、(III)および(IV)における環、および、α−および/またはω−鎖の配置は、天然PG類の配置と同じであっても異なっていてもよい。しかしながら、本発明は、天然タイプの配置を有する化合物と非天然タイプの配置を有する化合物の混合物も包含する。
【0084】
本発明の化合物の典型的な例は、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-16,16-ジフルオロ-PGEまたはPGF化合物、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGEまたはPGF化合物、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)- 11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGEまたはPGF化合物、あるいは、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ- 20-メチルまたはエチル-PGEまたはPGF化合物およびその誘導体またはアナログである。
【0085】
本発明の化合物の好ましい例は、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-16,16-ジフルオロ-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 イソプロピルエステル、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-11-デオキシ- 13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 イソプロピルエステル、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15- ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト- 16,16-ジフルオロ-20-メチル-PGE1 イソプロピルエステル、11-デオキシ- 13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-メチル-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-エチル-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 メチルエステル、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-エチル-PGE1 イソプロピルエステルまたは11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGF1αイソプロピルエステルである。
【0086】
本発明において、いずれの異性体、例えば、個々の互変異性体、その混合物、または光学異性体、その混合物、ラセミ混合物、およびその他の立体異性体も同じ目的に用いることが出来る。
【0087】
本発明に用いられる化合物のいくつかは、米国特許第5,073,569、5,166,174、5,221,763、5,212,324、5,739,161および6,242,485号に開示の方法によって調製することが出来る (これらの引用文献は引用により本明細書に含める)。
【0088】
本発明によると、哺乳類対象は、本発明に用いられる化合物を投与することにより本発明により処置され得る。対象はヒトを含むいずれの哺乳類対象でもよい。化合物は、全身的または局所的に適用しうる。通常、化合物は、経口投与、静脈内注射 (注入を含む)、皮下注射、直腸内投与、膣内投与、経皮投与などによって投与されうる。
【0089】
投与量は動物の種類、年令、体重、処置されるべき症状、所望の治療効果、投与経路、処置期間等により変化する。1日1〜4分割用量で全身投与または連続投与する場合、1日当たり0.00001〜500mg/kg、より好ましくは0.0001〜100mg/kgの投与量で満足な効果が得られる。
【0090】
化合物は好ましくは、常套的に投与に好適な医薬組成物に製剤するとよい。組成物は、経口投与、注射または灌流に好適なものであってもよいし、外用剤、坐薬または膣坐薬であってもよい。
【0091】
本発明の組成物は生理学的に許容される添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤は本発明の化合物と併用される成分を含み、例えば、賦形剤、希釈剤、増量剤、溶剤、滑沢剤、補助剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、カプセル化剤、軟膏基剤、坐薬基剤、エアロゾル化剤、乳化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、保存剤、抗酸化剤、矯味剤、芳香剤、着色剤、機能性素材(例えばシクロデキストリン、生体内分解高分子など)、安定剤が挙げられる。これらの添加剤は当該技術分野で周知であり、製剤学に関する一般書籍に記載されているものから適宜選択すればよい。
【0092】
本発明の組成物における上記化合物の量は組成物の剤形に応じて変動し得、一般的には、0.000001−10.0%、より好ましくは0.00001−5.0%、最も好ましくは0.0001−1%でありうる。
【0093】
経口投与のための固体組成物の例としては、錠剤、トローチ剤、舌下錠、カプセル、丸剤、散剤、顆粒剤等が挙げられる。固体組成物は、1以上の活性成分を少なくとも1つの不活性希釈剤と混合することによって調製できる。組成物はさらに、不活性希釈剤以外の添加剤を含んでいてもよく、例えば、滑沢剤、崩壊剤および安定化剤が挙げられる。錠剤および丸剤は必要であれば腸溶または胃腸溶フィルムでコーティングしてもよい。
【0094】
それらは2以上の層で被覆してもよい。それらはまた、徐放物質に吸着させてもよいし、マイクロカプセルに封入してもよい。さらに、組成物は易分解性物質、例えばゼラチンによってカプセル化してもよい。それらはさらに適当な溶媒、例えば、脂肪酸またはそのモノ、ジまたはトリグリセリドに溶解して軟カプセルとしてもよい。即効性を要する場合には舌下錠を用いてもよい。
【0095】
経口投与のための液体組成物の例としては、乳濁液、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤等が挙げられる。該組成物はさらに、常套的に用いられる不活性希釈剤、例えば、精製水またはエチルアルコールを含んでいてもよい。組成物は補助剤等の不活性希釈剤以外の添加剤、例えば、湿潤剤および懸濁化剤、甘味料、香味料、香料および保存料を含んでいてもよい。
【0096】
本発明の組成物は1以上の活性成分を含む噴霧組成物の形態であってもよく、公知の方法にしたがって調製することが出来る。
【0097】
非経口投与のための本発明の注射可能組成物の例としては、無菌の水性または非水性溶液、懸濁液および乳濁液が挙げられる。
【0098】
水溶液または懸濁液のための希釈剤としては、例えば、注射用蒸留水、生理的食塩水およびリンゲル液が挙げられる。
【0099】
溶液および懸濁液のための非水性希釈剤としては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えば、オリーブ油、アルコール、例えば、エタノールおよびポリソルベートが挙げられる。組成物はさらに、添加剤、例えば、保存料、湿潤剤、乳化剤、分散剤等を含んでいてもよい。それらは例えば細菌保持フィルターでのろ過によって、滅菌剤を配合することによって、あるいはガスまたは放射性同位体照射滅菌によって滅菌してもよい。
【0100】
注射可能組成物は、注射用無菌溶媒に使用時に溶解される滅菌された粉末組成物として提供してもよい。
【0101】
本発明の外用剤は、皮膚科学および耳鼻科学の分野で用いられるいずれの形態の外用剤であってもよく、軟膏、クリーム、ローションおよびスプレーが挙げられる。
【0102】
組成物のさらなる形態は坐薬または膣坐薬であり、これは活性成分を体温で軟化する常套の基材、例えば、カカオ脂と混合することによって調製でき、好適な軟化温度を有する非イオン性界面活性剤を吸収性を高めるために用いてもよい。
【0103】
本明細書において用いる「処置」の語は、例えば、症状の予防、治療、軽減、症状の減弱、進行の阻害などのあらゆる管理手段をいう。
【0104】
本明細書において用いる「中枢神経系障害」の語は、あらゆるタイプの症状および/または疾患に関与または関連するあらゆる中枢神経系障害を含み、あるいは、虚血、外傷、感染症、炎症、腫瘍、浮腫、低血圧、低酸素血症、血液凝固 (血栓)、酵素活性化、動脈閉塞 (塞栓)、動脈硬化症、代謝障害、変性症、加齢、薬物、薬物療法または外科手術によってもたらされるものを含む。
【0105】
「中枢神経系障害」の例としては、これらに限定されないが、脳血管障害、例えば、脳卒中および脳梗塞 (例えば、脳血栓、脳塞栓、ラクナ脳梗塞、無症候性脳梗塞); 脳内出血またはくも膜下出血による血管攣縮; 脳血管痴呆; 神経障害、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、認知症、ピック病、脊髄小脳変性症、舞踏病、AIDS 脳症、肝性脳症、筋萎縮性側索硬化症、抗癌薬-誘導性末梢神経障害、糖尿病性神経障害、外傷性神経障害および多発性硬化症; 脳浮腫、高ナトリウム血性脳障害および脳腫瘍; 虚血性疾患、例えば、血管障害による脳虚血、一過性脳虚血発作 (TIA)、可逆性虚血性神経障害 (RIND)、偏頭痛またはコカイン乱用による脳血管虚血、癲癇または癲癇性精神症状を含む脳虚血、外科手術の際の脳虚血(虚血性組織傷害)、頭部損傷による脳虚血、低血圧による脳虚血、低酸素血症または呼吸困難および心停止による脳虚血; 炎症性脳障害、例えば、慢性再発性多発性硬化症、脳脊髄炎、髄膜炎、外傷性脳障害; 新生児仮死およびこれらの疾患の二次的合併症が挙げられる。
【0106】
本発明によると、本明細書において用いる化合物は、脳血管内皮細胞、特に血液脳関門の障壁機能の回復に対して有意な効果を有し、したがって脳血管内皮細胞の保護にも有用である。
【0107】
本発明の医薬組成物はさらに本発明の目的を損なわない限りその他の薬理成分を含んでいてもよい。
【0108】
本発明の剤形は単一の活性成分を含むものでもよいし、2以上の活性成分の組合せを含むものでもよい。複数の活性成分の組合せにおいて、それぞれの含有量は、その治療効果および安全性を考慮して適宜増減するとよい。
【0109】
さらに、本発明の剤形は本発明の目的を損なわない限り、その他の薬理活性成分を含んでいてもよい。
【0110】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定する意図ではない。
【実施例】
【0111】
実施例 1
<方法>
4週齡雄性 ddY マウスを、温度 (24 ±3℃)、相対湿度 (55 ±10%)、換気速度 (~12 回/時間)および明暗周期 (蛍光照明: 8:00〜20:00)を制御した動物飼育室中、アルミニウムケージ中で少なくとも7日間飼育した。動物には、固形飼料を自由に摂取させ、水道水を採水器から自由に飲ませた。全身に異常のない健康動物をこの研究に用いた。
【0112】
11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 (以下、「化合物A」と称する)を媒体 (0.01% ポリソルベート 80および0.5% エタノールを含有する生理的食塩水)に溶解し、動物の皮下に投与した。対照群には等量の媒体を同様に与えた。
【0113】
動物を投与の30 分後に断頭し、あえぎ運動の持続時間を測定した。
【0114】
<結果>
表 1に示すように、化合物Aは10、30、100 および 300μg/kgにて断頭後、あえぎ運動の持続時間を用量依存的に延長させた。結果は、化合物Aが神経保護活性を有し、化合物Aが虚血性疾患の処置に有用であることを示す。
【0115】
表 1.マウスにおける断頭後のあえぎ運動の持続時間に対する化合物Aの効果
【表1】
s.c.: 皮下、
媒体-処置対照群と比較して、**p < 0.01、*p < 0.05 (ダネット多重比較テスト)
【0116】
実施例 2
<方法>
4週齡雄性 ddY マウスを、温度 (24 ± 3℃)、相対湿度 (55 ±10%)、換気速度 (~12 回/時間)および明暗周期 (蛍光照明: 8:00 〜20:00)について制御した動物飼育室中のアルミニウムケージで少なくとも 7日間飼育した。動物には、固形飼料を自由に摂取させ、水道水を採水器から自由に飲ませた。全身に異常のない健康動物をこの研究に用いた。動物を20 時間またはそれ以上、使用時まで水を自由に与えて絶食させた。
【0117】
化合物Aおよび11-デオキシ-13,14-ジヒドロ- 15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 メチルエステル (以下、「化合物B」と称する)を媒体 (0.01% ポリソルベート 80および0.5% エタノールを含む生理的食塩水)に溶解し、動物に経口投与した。対照群には等量の媒体を同様に与えた。
【0118】
動物を投与の30 分後に断頭し、あえぎ運動の持続時間を測定した。
【0119】
<結果>
表 2に示すように、化合物A および化合物Bの100、300および1000 μg/kgの経口投与により、断頭後のあえぎ運動の持続時間が用量依存的に延長した。結果は、化合物Aおよび化合物Bが経口投与による神経保護活性を有しており、化合物Aおよび化合物Bが虚血性疾患の処置に有用であることを示す。
表 2.マウスにおける断頭後のあえぎ運動の持続時間に対する化合物AおよびBの経口投与の効果
【表2】
p.o.: 経口、
媒体-処置対照群と比較して、**p < 0.01、*p < 0.05 (ダネット多重比較テスト)
【0120】
実施例 3
<方法>
4週齡雄性 ddY マウスを温度 (24 ± 3℃)、相対湿度 (55 ± 10%)、換気速度 (~12回/時間)および明暗周期 (蛍光照明: 8:00〜20:00)を制御した動物飼育室中でアルミニウムケージで少なくとも 7日間飼育した。動物には、固形飼料を自由に摂取させ、水道水を採水器から自由に飲ませた。全身に異常のない健康動物をこの研究に用いた。
【0121】
11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-16,16-ジフルオロ-PGE1 (以下、「化合物C」と称する)を媒体 (0.01% ポリソルベート 80および0.5% エタノールを含む生理的食塩水)に溶解し、動物の皮下に投与した。対照群には等量の媒体を同様に与えた。
【0122】
動物を投与の30 分後に断頭し、あえぎ運動の持続時間を測定した。
【0123】
<結果>
表 3に示すように、300 μg/kgの化合物Cは断頭後のあえぎ運動の持続時間を有意に延長した。結果は化合物Cが神経保護活性を有することを示す。
【0124】
表 3.マウスにおける断頭後のあえぎ運動の持続時間に対する化合物Cの効果
【表3】
s.c.: 皮下、
媒体-処置対照群と比較して**p < 0.01
【0125】
実施例 4
<方法>
7週齡 Crj: CD (SD) 雄性ラットを、室温 (22-26℃)、相対湿度 (47-60%)、換気速度 (10-20 回/時間)および明暗周期 (照明: 7:00〜19:00)について制御した動物飼育室中のポリメチルペンテンケージで少なくとも 6 日間飼育した。動物には固形飼料を自由に摂取させ、採水器から水を自由に摂取させた。良好な健康にあると判定された動物をこの研究に用いた。
【0126】
ラットを2% イソフルランおよびN2O:O2 (= 7:3)のガス混合物の吸入により麻酔し、仰臥位に固定し、上記ガス混合物の吸入により麻酔状態を維持した。動物を外科手術の期間中に温度プローブを用いて直腸温度についてモニターした。体温の低下が観察されたら、白熱ランプを用いて温度を約37℃に維持した。右総頸動脈、外頸動脈、および内頸動脈を露出して中大脳動脈(以下、MCAと称する)を閉塞させた。右総頸動脈および外頸動脈を縫合糸(5-0)を用いて結紮し、シリコンであらかじめ被覆した19 mm-長のNo. 4-0 ナイロン縫合糸のセグメントを外頸動脈と内頸動脈との分岐点を介してMCAに挿入し、MCAを閉塞させた。MCA 閉塞の2 時間後、縫合糸を除き、MCA中の血流を回復させた。
【0127】
化合物Aを媒体 (1 % ポリソルベート 80を含む生理的食塩水)に溶解し、動物に容量2 mL/kgにてMCA 閉塞-再灌流の直後、およびMCA 閉塞-再灌流の30 分後に静脈内投与した。対照群には等容量の媒体を同様に与えた。
【0128】
MCA 閉塞の24 時間後、動物を断頭し、脳をすぐに単離した。組織ナイフ (Micro-3D; The Mickle Laboratory Engineering Co.、Ltd.)を用いて、順次に2 mmの厚さの脳切片を調製した。脳組織切片はPaxinos and Watsonの脳地図にしたがって配置し、ブレグマより4 mm前側、ブレグマより2 mm 前側、ブレグマ点、ブレグマより2 mm 後側、ブレグマより4 mm 後側、ブレグマより6 mm 後側にて前頭面を含めた。脳切片は1% TTC 溶液で染色し、写真撮影した。画像分析 (Adobe PhotoshopTM、version 3.0 J; Adobe Systems Incorporated、Color Count 0.3b; K&M Software Corporation)を写真に対して行って、梗塞面積を測定した。これらの結果に基づき、梗塞体積 (ブレグマの4 mm 前側-ブレグマの6 mm 後側)を下記式を用いて算出した。
V= 2(a+b)/2 + 2(b+c)/2 + 2(c+d)/2 + 2(d+e)/2+ 2(e +f)/2
= a + 2(b+c+d+e) + f
V: 梗塞体積
a: ブレグマの4 mm前側の断面における梗塞面積
b: ブレグマの2 mm前側の断面における梗塞面積
c: ブレグマ点の断面における梗塞面積
d: ブレグマの2 mm後側の断面における梗塞面積
e: ブレグマの4 mm後側の断面における梗塞面積
f: ブレグマの6 mm後側の断面における梗塞面積
【0129】
<結果>
表 4に示すように、化合物Aは0.05および0.5 mg/kgにて虚血後の脳梗塞体積を媒体群と比較して用量依存的に有意に低下させた。結果は化合物Aは、脳血管障害、例えば、脳梗塞の処置に有用であることを示す。
【0130】
表 4.ラットにおける一過性局所脳虚血後の脳梗塞体積に対する化合物Aの効果
【表4】
脳はMCA 閉塞の24 時間後に取り出した。各値は10匹のラットの平均±S.E.を表す。化合物を、MCA 閉塞 -再灌流の直後およびMCA 閉塞-再灌流の30分後に静脈内投与した。
* P < 0.05、** P < 0.01;媒体群および化合物A 群の有意差 (ダネット多重比較テスト)
【0131】
実施例 5
<方法>
アルツハイマー病モデル動物をラットにおける基底核の両側イボテン酸破壊により調製した。簡単に説明すると、ラットをペントバルビタールナトリウムで麻酔し、小動物定位固定装置に固定した。5 μg/0.5 μLのイボテン酸の基底核への両側注入を注射器ポンプおよびステンレス鋼カニューレ (外径: 0.5 mm)を介して速度0.1 μL/分にて行った。定位座標は以下の通りであった:十字縫合から0.8 mm 後側、正中線から2.6 mm 側方 (両側)、および骨表面から深さ7.4 mm。偽群の動物は麻酔だけを受けた。動物を次いで飼料と水を自由に摂取させて研究の残りの期間飼育した。
【0132】
化合物Aはモデル動物に対する手術後14 日間経口投与した。対照群には等量の媒体を与えた。
【0133】
モリス水迷路試験を被験化合物の効果の評価のために行った。水迷路は循環プールであった(灰色に着色、直径1.48 m、高さ0.33 m)。プールは温度17-18℃に維持した水を含んでいた。水迷路における試験中、直径12 cmのプラットホームを、プールの4つの位置の1つにおける水面の下2 cm、側壁からおよそ38 cmに配置した (ゾーン 4) 。明るい電球を迷路の外側の合図としてプールのまわりに配置した。動物に、化合物Aまたは媒体の投与の開始後10 日目から1日2回試験を行った。ラットは隠された避難プラットホームに位置するよう訓練し、試験の期間中それは固定位置に維持した。試験は最大90秒持続させた。水に浸ったプラットホームを見つけるまでの潜伏期を記録し、作業課題の獲得の尺度として用いた。動物をこのようにして4 日間試験し(全部で8試験)、5日目に探索試験を受けさせた。探索試験のために、プラットホームをプールから除き、動物をプラットホームが位置していた逆の四分円のところから自由にした。試験時間は90秒であり、その後ラットはプールから取り出した。訓練用の四分円 (ゾーン 4) ; 即ち、プラットホームの以前の位置においてプラットホームを探すのにラットが費やした時間を記録し、記憶の指標として用いた。
【0134】
<結果>
表 5および6に示すように、媒体群は空間認識がひどく損なわれていた。化合物Aによる処置は学習および記憶の欠陥からの有意な回復をもたらした。これらの結果は化合物Aが神経障害、例えば、アルツハイマー病の処置に有用であることを示唆する。
【0135】
表 5.モリス水迷路学習試験における目標潜伏期に対する化合物Aの効果
【表5】
##偽群と比較してp<0.01、**媒体群と比較してp<0.01
【0136】
表 6.モリス水迷路学習試験においてプラットホームが以前に位置していた四分円 (ゾーン 4)において費やした時間に対する化合物Aの効果
【表6】
##偽群と比較してp<0.01、*媒体群と比較してp<0.05
【0137】
実施例 6
<方法>
ヒト血管内皮細胞培養を経内皮電気抵抗 (TEER)により測定して集密にした。細胞培養を次いで窒素雰囲気中でのインキュベーションにより30 分間酸素欠乏させた。細胞を次いで0.1% DMSOまたは5 nM 化合物A+0.1% DMSOのいずれかで処理した。
【0138】
<結果>
図1に示すように、DMSO-処理細胞はTEERの回復をほとんど示さなかった。化合物A-処理細胞は中程度のTEERの回復を示した。
【0139】
結果は内皮細胞の測定されるバリア機能であるTEERが、化合物A-処理の後損傷から迅速に回復することを示す。
【0140】
実施例 7
<方法>
ヒト微小血管内皮細胞(成人) (HMVEC-AD)を集密まで培養した。細胞を次いで窒素雰囲気で30 分間処理し、正常の酸素に戻した。ATP レベルをルシフェリン・ルシフェラーゼアッセイ系 (ATPlite、Perkin Elmer)を用いて示された時点にてモニターした。
【0141】
<結果>
図2に示すように、細胞を窒素雰囲気に30 分間曝すとATP レベルは低下した。ATP レベルは、0.01% DMSOのみで処理した細胞と比較して5 nM 化合物Aで処理した細胞においてはより迅速に回復した。
【0142】
結果は、化合物Aが中枢神経系障害の処置に有用であることを示す。
【0143】
合成例 1
【化11】
【0144】
16,16-ジフルオロ-PGA1 ベンジルエステル (2) の合成
16,16-ジフルオロ-PGE1 ベンジルエステル (1) (457.8 mg、0.95 mmol) を酢酸 (13.7 mL、0.24 mol)に溶解し、溶液を80℃で18 時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却した。10 mLのトルエンを溶液に添加し、減圧下で濃縮した。 この操作を5回繰り返して酢酸を除去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル: FL60D (70 g)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (2:1))で精製して化合物 (2)を黄色油状物として得た。収率: 391.6 mg (88.9%)
【0145】
11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-16,16-ジフルオロ-PGE1 (3) の合成
16,16-ジフルオロ-PGA1 ベンジルエステル (化合物 (2)) (382.5 mg、0.83 mmol)を酢酸エチル (10 mL)中、10% パラジウム-炭素 (57.4 mg、50% w/wの水で湿っている) の存在下で室温、大気圧で2 時間水素化した。反応混合物をセライトパッドでろ過し、フィルターケーキを酢酸エチルで洗浄し、次いでろ液を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル BW-300SP (50 g、15% w/w の水で湿っている)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (1:1)) で精製し、粗化合物 (3) (298.5 mg、95.7%)を得た。
【0146】
粗化合物 (3)を別のロットの粗化合物と合わせた。次いで、全部で約350 mgの粗化合物 を分取HPLC (YMC-Pack D-SIL-5-06 20×250mm、ヘキサン/2-プロパノール/酢酸 (250:5:1)、20 mL/分)で精製して化合物 (3)を無色油状物として得た。 収率: 297.3 mg (HPLC 精製回収率: 83.5%)
1H-NMR (200MHz、CDCl3) δ
0.94 (3H、t、J=7.1Hz)、1.22-2.29 (28H、m)、2.34 (2H、t、J=7.3Hz)、3.65-3.81 (1H、m)
13C-NMR(50MHz、CDCl3) δ
13.70、22.40、23.25、24.32、26.28、26.63)、27.18、27.58、28.49、29.09、30.39、31.77 (t、J=24.4Hz)、33.67、37.63、41.05、54.76、72.73 (t、J=29.0Hz)、124.09 (t、J=244.3Hz)、179.07、220.79
【0147】
合成例 2
【化12】
【0148】
合成例 1に記載のものと同様にして、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1イソプロピルエステル (化合物 (6))を上記2工程反応により無色油状物として得た。収率: 0.285g (第一工程: 96.2%、第二工程: 97.6%、HPLC 精製:回収率 81.0%)。
化合物 (6)の1H-NMR (200MHz、CDCl3)および 13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 3 および4に示す。
【0149】
合成例 3
【化13】
【0150】
合成例 1に記載のものと同様にして、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-11-デオキシ-13,14- ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 イソプロピルエステル (化合物 (9)) を無色油状物として得た。収率: 0.402g (第一工程: 94.9%、第二工程: 92.2%、HPLC 精製:回収率 83.1%)。
化合物 (9)の1H-NMR (200MHz、CDCl3)および 13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 5 および6に示す。
【0151】
合成例 4
【化14】
【0152】
合成例 1に記載のものと同様にして、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-11-デオキシ-13,14- ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 (化合物 (12)) を無色油状物として得た。収率: 0.696g(第一工程: 95.6%、第二工程: 99.3%、HPLC 精製:回収率: 87.4%)。
化合物 (12) の1H-NMR (200MHz、CDCl3) および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 7および8に示す。
【0153】
合成例 5
【化15】
【0154】
合成例 1に記載のものと同様にして、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ- 20-メチル-PGE1 イソプロピルエステル (化合物 (15)) を無色油状物として得た。収率: 0.271g (第一工程: 91.4%、第二工程: 97.3%、HPLC 精製:回収率: 79.0%)。
化合物 (15)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 9および10に示す。
【0155】
合成例 6
【化16】
【0156】
合成例 1に記載のものと同様にして、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ- 20-メチル-PGE1 (化合物 (18)) を無色油状物として得た。収率: 0.637g (第一工程: 93.3%、第二工程: 96.6%、HPLC 精製:回収率: 73.9%)。
化合物 (18)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 11および12に示す。
【0157】
合成例 7
【化17】
【0158】
合成例 1に記載のものと同様にして、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-エチル-PGE1 (化合物 (21)) を無色油状物として得た。収率: 0.401g (第一工程: 90.6%、第二工程: 92.7%、HPLC 精製:回収率: 29.2%)。
化合物 (21)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 13および14に示す。
【0159】
合成例 8
【化18】
【0160】
11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 メチル エステル (化合物 (23)) を化合物 (22)のジアゾメタンによるエステル化により無色油状物として得た。収率: 0.860g (72.9%、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製後)。
化合物 (23)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)を図 15 および16に示す。
【0161】
合成例 9
【化19】
【0162】
化合物 (24) (0.67g、1.66mmol) をDMF (13mL)に溶解し、K2CO3 (460.1mg、3.33mmol)およびヨウ化イソプロピル (831μL、8.32mmol)を添加した。溶液を室温で2 時間撹拌した。反応混合物を氷で冷却し、水 (10mL)および塩水を添加し、酢酸エチル (30mL)で抽出した。有機層を塩水 (10mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル FL60D (50 g)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (5:1)) で精製し、粗 11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-エチル-PGE1 イソプロピルエステル (化合物 (25)) (0.70g、94.6%)を得た。粗化合物 (25) を分取HPLCで精製し、化合物 (25)を無色油状物として得た。収率 245.8mg (35.1%)。
化合物 (25)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 17 および 18に示す。
【0163】
合成例 10
【0164】
【化20】
【化21】
【0165】
化合物 (26) (8.71g、20.2mmol)を1,2-ジクロロエタン(70mL)に溶解し、1,1’- チオカルボニルジイミダゾール (5.41g、30.3mmol)を添加した。溶液を70℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、次いで減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル BW-300SP (650 g)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (1:1)) で精製し、化合物 (27)を明黄色油状物(10.61g、97.0%)として得た。
【0166】
Bu3SnH (11.21g、38.5mmol) をトルエン (224mL)に溶解し、加熱により還流した。トルエン (208mL)中の化合物 (27) (10.41g、19.2mmol)の溶液を反応混合物に還流温度で70 分間滴下した。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、減圧下で濃縮し、粗化合物 (28) を明黄色油状物として得た。
【0167】
粗化合物 (28) (19.2mmol) をTHF (52mL)に溶解し、TBAF 溶液 (THF中1.0M、38.5mL、38.5mmol)を10 分間滴下した。1時間後、TBAF 溶液 (THF中1.0M、19.2mL、19.2mmol)を溶液に滴下した。計3.5 時間撹拌した後、反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル BW-300SP (1,000 g)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (1:1)) で精製し、化合物 (29)を黄色油状物(4.01g、69.3%)として得た。
【0168】
化合物 (31)をSwern 酸化およびω-鎖の導入により化合物 (29)から得た。
【0169】
化合物 (31) (807.4mg、1.88mmol)を10% パラジウム-炭素の存在下で酢酸エチル (8mL)中で室温で2 時間水素化した。反応混合物をセライトパッドでろ過し、ろ液を減圧下で濃縮し、粗化合物 (32)を明褐色油状物として得た。
【0170】
粗化合物 (32) (1.88mmol)をEtOH (8mL)に溶解した。1N-NaOH 溶液 (7.4mL、7.4mol)を溶液に室温で10 分間滴下した。反応混合物を室温で10 時間撹拌し、次いで氷で冷却した。1N-HCl (7.1mL)を反応混合物に滴下してpHを約3-4に調整した。反応混合物をTBME (30mL)で抽出した。有機層を水 (10mL)および塩水 (10mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル 15% 水含有FL-60D (80 g)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (2:1)) で精製し 、化合物 (33)を明黄色油状物(481.4mg、68.8%)として得た。
【0171】
合成例 9に記載のものと同様にして、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ- PGF1α イソプロピルエステル (化合物 (34))を化合物 (33)から無色油状物として得た。収率: 166.6mg (反応工程91.9%: HPLC 精製:回収率: 55.4%)。
化合物 (34)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 19および20に示す。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】図1は、経内皮電気抵抗(Transendothelial Electrical Resistance)(TEER) の回復に対する化合物Aの効果を示すグラフである。ヒト血管内皮細胞培養を経内皮電気抵抗 (TEER)により測定して集密にさせた。細胞培養を次いで窒素雰囲気中でのインキュベーションにより、30 分間酸素を欠乏させた。細胞を次いで0.1% DMSOまたは5 nM 化合物A+0.1% DMSOのいずれかで処理した。統計的有意性は薬物処理の後のすべてのデータ地点について示す。N=10 細胞。
【図2】図2は、ATP レベルの回復に対する化合物Aの効果を示すグラフである。ヒト微小血管内皮細胞(成人) (HMVEC-AD)を集密まで培養した。細胞を次いで窒素雰囲気で30 分間処理し、正常の酸素に戻した。ATP レベルをルシフェリン・ルシフェラーゼアッセイ系 (ATPlite、Perkin Elmer)を用いて示された時点でモニターした。ATP レベルを相対的発光として示す。各時点において、N=6 細胞。
【図3】図3は、以下の合成例 2において得た化合物 (6) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図4】図4は、以下の合成例 2において得た化合物 (6) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図5】図5は、以下の合成例 3において得た化合物 (9) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図6】図6は、以下の合成例 3において得た化合物 (9) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図7】図7は、以下の合成例 4において得た化合物(12) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図8】図8は、以下の合成例 4において得た化合物(12) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図9】図9は、以下の合成例 5において得た化合物(15) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図10】図10は、以下の合成例 5において得た化合物(15) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図11】図11は、以下の合成例 6において得た化合物(18) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図12】図12は、以下の合成例 6において得た化合物(18) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図13】図13は、以下の合成例 7において得た化合物(21) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図14】図14は、以下の合成例 7において得た化合物(21) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図15】図15は、以下の合成例 8において得た化合物(23) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図16】図16は、以下の合成例 8において得た化合物(23) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図17】図17は、以下の合成例9において得た化合物(25) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図18】図18は、以下の合成例 9において得た化合物(25)の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図19】図19は、以下の合成例10において得た化合物(34) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図20】図20は、以下の合成例 10において得た化合物(34)の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類対象における中枢神経系障害の処置のための方法および組成物に関する。本発明はまた、新規なプロスタグランジン化合物にも関する。
【背景技術】
【0002】
細胞間接着部は、隣接している内皮および上皮細胞の間の接着および連絡を媒介する。内皮において、結合複合体は、タイトジャンクション(密着結合)、アドヘレンスジャンクション(接着結合)およびギャップジャンクション(ギャップ結合)を含む。かかる複合体の発現および組織化は、灌流される臓器の血管のタイプおよび透過性の要求に依存する。ギャップジャンクションは、隣接する細胞間の低分子量溶質の通過を可能とする連絡構造である。タイトジャンクションは、傍細胞透過性の制御および細胞極性の維持により、膜内の「障壁(バリア)」および「障害(フェンス)」を提供する主な機能的役割を果たしている。アドヘレンスジャンクションは、内皮細胞増殖の接触阻害および循環する白血球および溶質に対する傍細胞透過性において重要な役割を果たす。さらに、それらは血管新生において新しい血管の正確な組織化に必要である(Physiol. Rev. 84(3)、869-901、2004)。
【0003】
上皮および内皮細胞が相互作用して極性組織を形成する機構は多細胞生物にとって非常に重要である。これら障壁の調節不全は様々な疾患において起こっており、正常な細胞環境を破壊し、臓器不全を導く。
【0004】
血液脳関門 (BBB)を形成する脳微小血管内皮細胞は、脳の恒常性および低い透過性を維持するために必須のタイトジャンクションを有する。
【0005】
血液脳関門 (BBB)は中枢神経系 (CNS)における特殊化した構造であって、栄養分および毒性物質の中枢神経系 (CNS)への接近を制御することにより脳脊髄液恒常性の状態の維持に役割を果たしている。
【0006】
脈管構造の下にある基底膜は、内皮細胞壁に対する構造的支持を提供することによってBBBの完全性の維持に重要な役割を果たしている(Trends Neurosci. 1990;13(5): 174-178)。BBBは、侵入物質、例えば、炎症細胞および細菌、ならびに化学物質から、中枢神経系 (CNS)を保護する役割を果たしている。
【0007】
BBBの破壊と関連する広範な中枢神経系 (CNS) 障害が知られている。障害の例としては、多発性硬化症、実験的アレルギー性脳脊髄炎、細菌性髄膜炎、虚血、脳浮腫、アルツハイマー病、エイズによる認知症 (Helga E. DE Vries et al、Pharmacological Reviews、49(2): 143-155、1997)、脳腫瘍 (Davies D. C. et al. 、J Anat.、200 (6): 639-46,2002)、外傷性脳障害 (Hartl R et. al.、Acta Neurochir Suppl. 70: 240-242、1997)が挙げられる。
【0008】
局所性卒中の後、BBBが崩壊するとともに血管透過性が上昇するということも報告されている。BBBに対する損傷の結果、しばしば出血および浮腫が起こり、その結果神経細胞死が導かれる(Biomedicine. 1974;21:36-39、Stroke、1998; 29(5): 1020-1030、Stroke、2003; 34(3):806-812、J Neurotrauma. 1995;12:833-842)。局所性卒中後の脳傷害は第一に脳血管の閉塞による血流の低下およびエネルギー枯渇の結果である。神経組織はかかる現象の結果損なわれ、興奮毒性、酵素活性化、浮腫、および炎症からの影響を受ける(Trends Pharmacol Sci. 1996;17:227-233、Crit Care Med. 1988;16:954-963)。
【0009】
さらに、全身由来炎症が最近、BBBタイトジャンクションの破壊をもたらし、傍細胞透過性を上昇させることが示されている。BBBは細胞骨格レベルで生理的刺激に応答して迅速な調節を行うことが出来、脳実質の保護、および恒常性の環境の維持を可能とする。
【0010】
研究によるとBBBの破壊はCNS疾患に関連していることが示されている。しかし、BBBをどのように保護するかについての研究はあまりなされていない。
【0011】
プロスタグランジン類(以後プロスタグランジンはPGとして示す)はヒトまたは他の哺乳類の組織または器官に含有され、広範囲の生理学的活性を示す有機カルボン酸の1群である。天然に存在するPG類(天然PG類)は一般的に、式(A)に示すプロスタン酸骨格を有する。
【化1】
【0012】
一方天然PG類の幾つかの合成アナログは修飾された骨格を持っている。天然PG類は5員環部分の構造特性によって、PGA類、PGB類、PGC類、PGD類、PGE類、PGF類、PGG類、PGH類、PGI類およびPGJ類に分類され、さらに炭素鎖部分の不飽和の数と位置によって以下の3タイプに分類される。
(下付1)...13,14−不飽和−15−OH
(下付2)...5,6−および13,14−ジ不飽和−15−OH
(下付3)...5,6−、13,14−および17,18−トリ不飽和−15−OH。
【0013】
さらに、PGF類は9位の水酸基の配置によってα(水酸基がアルファー配置である)およびβ(水酸基がベータ配置である)に分類される。
【0014】
PGE1、PGE2およびPGE3は血管拡張、血圧降下、胃液分泌減少、腸管運動亢進、子宮収縮、利尿、気管支拡張および抗潰瘍活性をもつことが知られている。また、PGF1α、PGF2αおよびPGF3αは血圧上昇、血管収縮、腸管運動亢進性、子宮収縮、黄体退行および気管収縮特性を有することが知られている。
【0015】
いくつかの15-ケト (即ち、15位にヒドロキシの代わりにオキソを有する)-PG類および13,14-ジヒドロ (即ち、13および14位の間に単結合を有する)-15-ケト-PG類は天然PG類の代謝の際に酵素の作用によって天然に生じる物質として知られている。
【0016】
上野らの米国特許第5290811号はいくつかの15-ケト-PG化合物が脳の機能の向上に有用であることを記載している。米国特許第5290811号は13位と14位の間の結合が飽和である場合、ケト-ヘミアセタール平衡が、11位のヒドロキシ基と15位のケト基の間のヘミアセタール形成によって形成されることがあることを示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上野らの米国特許第5317032号は二環式互変異性体の存在を含むプロスタグランジン化合物の下剤を記載しており、上野の米国特許第6414016号は抗便秘薬として顕著な活性を有する二環式互変異性体を記載している。1以上のハロゲン原子によって置換されている二環式互変異性体は低用量で便秘の緩和に用いることが出来る。特にC16位にフッ素原子を有するものは便秘の緩和のために低用量にて用いることが出来る。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の概要
本発明者は鋭意研究を行った結果、11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が中枢神経系障害に対する有意な効果を有することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0019】
即ち、本発明は、有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を必要とする対象に投与することを含む、哺乳類対象における中枢神経系障害の処置方法に関する。
【0020】
本発明はさらに、有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を含む、哺乳類対象における中枢神経系障害の処置のための組成物に関する。
【0021】
さらに、本発明は、有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を含む、哺乳類対象における中枢神経系障害の処置のための組成物の製造のための11-デオキシ-プロスタグランジン化合物の使用に関する。
【0022】
本発明の別の態様は、有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を必要とする対象に投与することを含む、哺乳類対象において脳血管内皮細胞を保護する方法に関する。
【0023】
本発明の別の側面において、式 (IV)で表される新規な化合物が提供される:
【化2】
(IV)
[式中、
Lは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ; ここで、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CH2OH、−COCH2OH、−COOH またはそれらの官能性誘導体;
Bは、単結合、−CH2−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2−CH2−CH2−、−CH=CH−CH2−、−CH2−CH=CH−、−C≡C−CH2−または−CH2−C≡C−;
Zは、
【化3】
ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキル、ただしR4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない;
X1’およびX2’ は同一または異なるハロゲン原子;
R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された、飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄で置換されていてもよい;
R2は、単結合または低級アルキレン; および、
R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄で置換されていてもよい;
ただし、 式 (IV)は、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1ではない]。
【0024】
図面の簡単な説明
図1は、経内皮電気抵抗(Transendothelial Electrical Resistance)(TEER) の回復に対する化合物Aの効果を示すグラフである。ヒト血管内皮細胞培養を経内皮電気抵抗 (TEER)により測定して集密にさせた。細胞培養を次いで窒素雰囲気中でのインキュベーションにより、30 分間酸素を欠乏させた。細胞を次いで0.1% DMSOまたは5 nM 化合物A+0.1% DMSOのいずれかで処理した。統計的有意性は薬物処理の後のすべてのデータ地点について示す。N=10 細胞。
【0025】
図2は、ATP レベルの回復に対する化合物Aの効果を示すグラフである。ヒト微小血管内皮細胞(成人) (HMVEC-AD)を集密まで培養した。細胞を次いで窒素雰囲気で30 分間処理し、正常の酸素に戻した。ATP レベルをルシフェリン・ルシフェラーゼアッセイ系 (ATPlite、Perkin Elmer)を用いて示された時点でモニターした。ATP レベルを相対的発光として示す。各時点において、N=6 細胞。
【0026】
図3は、以下の合成例 2において得た化合物 (6) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0027】
図4は、以下の合成例 2において得た化合物 (6) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0028】
図5は、以下の合成例 3において得た化合物 (9) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0029】
図6は、以下の合成例 3において得た化合物 (9) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0030】
図7は、以下の合成例 4において得た化合物(12) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0031】
図8は、以下の合成例 4において得た化合物(12) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0032】
図9は、以下の合成例 5において得た化合物(15) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0033】
図10は、以下の合成例 5において得た化合物(15) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0034】
図11は、以下の合成例 6において得た化合物(18) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0035】
図12は、以下の合成例 6において得た化合物(18) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0036】
図13は、以下の合成例 7において得た化合物(21) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0037】
図14は、以下の合成例 7において得た化合物(21) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0038】
図15は、以下の合成例 8において得た化合物(23) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0039】
図16は、以下の合成例 8において得た化合物(23) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0040】
図17は、以下の合成例9において得た化合物(25) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0041】
図18は、以下の合成例 9において得た化合物(25)の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0042】
図19は、以下の合成例10において得た化合物(34) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【0043】
図20は、以下の合成例 10において得た化合物(34)の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【0044】
発明の詳細な説明
本発明において、「11-デオキシ-プロスタグランジン化合物」(以下、「11-デオキシ-PG化合物」と称する)は、5員環の配置、二重結合の数、置換基の存在または非存在、あるいはαまたはω鎖のその他の修飾に関わりなく、プロスタン酸骨格の11位に置換基を有さない化合物のあらゆる誘導体またはアナログ (置換体を含む)を含みうる。
【0045】
前記式(A)はC−20の基本骨格のものであるが、本発明では炭素数がこれによって限定されるものではない。即ち、式(A)においてPG化合物の基本骨格を構成する炭素の番号はカルボン酸を1とし5員環に向かって順に2〜7までをα鎖上の炭素に、8〜12までを5員環の炭素に、13〜20までをω鎖上に付しているが、炭素数がα鎖上で減少する場合、2位から順次番号を抹消して命名する。炭素数がα鎖上で増加する場合、カルボキシル基(C−1)の代わりに2位において対応する置換基を有する置換化合物として命名する。同様に炭素数がω鎖上で減少する場合、20位から順次番号を抹消して命名する。また、炭素数がω鎖上で増加する場合、21番目以後の炭素原子は置換基として命名する。また、立体配置に関しては、特に断りのない限り、上記基本骨格(A)の有する立体配置に従うものとする。
【0046】
前述のように、11-デオキシ-PG化合物の命名はプロスタン酸骨格に基づいて行うが、上記化合物がプロスタグランジンと類似の部分構造を有する場合には、簡略化のため「PG」の略名を利用することがある。この場合、α鎖の骨格炭素数が2個延長された11-デオキシ-PG化合物、すなわちα鎖の骨格炭素数が9である11-デオキシ-PG化合物は、2−デカルボキシ−2−(2−カルボキシエチル)−11-デオキシ-PG化合物と命名する。同様に、α鎖の骨格炭素数が11である11-デオキシ-PG化合物は、2−デカルボキシ−2−(4−カルボキシブチル)−11-デオキシ-PG化合物と命名する。また、ω鎖の骨格炭素数が2個延長された11-デオキシ-PG化合物、すなわちω鎖の骨格炭素数が10である11-デオキシ-PG化合物は、11-デオキシ-20−エチル−PG化合物と命名する。なお、命名はこれをIUPAC命名法に基づいて行うことも可能である。
【0047】
アナログ(置換体を含む)または誘導体の例は、上記11-デオキシ-PG類のα鎖末端のカルボキシル基がエステル化された化合物、α鎖が延長された化合物、それらの生理学的に許容し得る塩、2−3位の炭素結合が2重結合あるいは5−6位の炭素結合が3重結合を有する化合物、3位、5位、6位、16位、17位、18位、19位および/または20位の炭素に置換基を有する化合物、9位の水酸基の代りに低級アルキル基またはヒドロキシ(低級)アルキル基を有する化合物等である。
【0048】
本発明において3位、17位、18位および/または19位の好適な置換基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、特にメチル基、エチル基が挙げられる。16位の好適な置換基としては、メチル、エチル等の低級アルキル、ヒドロキシ、塩素、フッ素等のハロゲン原子、およびトリフルオロメチルフェノキシ等のアリールオキシが挙げられる。17位の好適な置換基としては、メチル、エチル等の低級アルキル、ヒドロキシ、塩素、フッ素等のハロゲン原子、およびトリフルオロメチルフェノキシ等のアリールオキシが挙げられる。20位の好適な置換基としては、C1−4アルキルのような飽和または不飽和の低級アルキル基、C1−4アルコキシのような低級アルコキシ基、C1−4アルコキシ−C1−4アルキルのような低級アルコキシアルキルを含む。5位の好適な置換基としては、塩素、フッ素などのハロゲン原子を含む。6位の好適な置換基としては、カルボニル基を形成するオキソ基を含む。9位にヒドロキシ基、低級アルキルまたはヒドロキシ(低級)アルキル置換基を有する場合のPG類の立体配置はα,βまたはそれらの混合物であってもかまわない。
【0049】
さらに、上記アナログまたは誘導体は、ω鎖が天然のPG類より短い化合物のω鎖末端にアルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、フェノキシ基、フェニル基等の置換基を有する化合物であってもよい。
【0050】
本発明の11-デオキシ-PG化合物の命名に際しては、前記式(A)に示したプロスタン酸の番号を用いる。
【0051】
本発明に用いられる好ましい化合物は式 (I)で表される:
【化4】
(I)
[式中、
LおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ、ここで、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していていてもよい;
Aは、−CH3、−CH2OH、−COCH2OH、−COOH またはそれらの官能性誘導体;
R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;および、
R0は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基; 低級アルコキシ; 低級アルカノイルオキシ; シクロ(低級)アルキル; シクロ(低級)アルキルオキシ; アリール; アリールオキシ; 複素環基; 複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい]。
【0052】
本発明において用いられるより好ましい化合物は式 (II)で表される:
【化5】
(II)
[式中、
LおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ、ここで、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CH2OH、−COCH2OH、−COOH またはそれらの官能性誘導体;
Bは、単結合、−CH2−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2−CH2−CH2−、−CH=CH−CH2−、−CH2−CH=CH−、−C≡C−CH2−または−CH2−C≡C−;
Zは、
【化6】
ここで、R4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない;
R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;および、
Raは、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基; 低級アルコキシ; 低級アルカノイルオキシ; シクロ(低級)アルキル; シクロ(低級)アルキルオキシ; アリール; アリールオキシ; 複素環基; 複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい]。
【0053】
上記化合物のなかで特に好ましい化合物の一群は式 (III)で表される:
【化7】
(III)
[式中、
Lは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ、ここで5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CH2OH、−COCH2OH、−COOH またはそれらの官能性誘導体;
Bは、単結合、−CH2−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2−CH2−CH2−、−CH=CH−CH2−、−CH2−CH=CH−、−C≡C−CH2−または−CH2−C≡C−;
Zは、
【化8】
ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4およびR5は同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない;
X1およびX2は、水素、低級アルキル、またはハロゲン;
R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;および、
R2は、単結合または低級アルキレン;および、
R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい]。
【0054】
本発明はさらに、式 (IV)で表される化合物およびそれを作る方法に関する:
【化9】
(IV)
[式中、
Lは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ、ここで、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
Bは、単結合、−CH2−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2−CH2−CH2−、−CH=CH−CH2−、−CH2−CH=CH−、−C≡C−CH2−または−CH2−C≡C−;
Zは、
【化10】
ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4およびR5は同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない;
X1’およびX2’は同じかまたは異なっている、ハロゲン原子;
R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;
R2は、単結合または低級アルキレン;および、
R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;
ただし、式 (IV)は11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1ではない]。
【0055】
上記式中、R1およびRaの定義における「不飽和」の語は、主鎖および/または側鎖の炭素原子間の結合として、1つまたはそれ以上の二重結合および/または三重結合を孤立、分離または連続して含むことを意味する。通常の命名法に従って、連続する2つの位置間の不飽和結合は若い方の位置番号を表示することにより示し、連続しない2つの位置間の不飽和結合は両方の位置番号を表示して示す。
【0056】
「低〜中級脂肪族炭化水素」の語は、炭素原子数1〜14の直鎖または分枝鎖(ただし、側鎖は炭素原子数1〜3のものが好ましい)を有する炭化水素基を意味し、R1については好ましくは炭素原子数1〜10、特に6〜10、Raについては1〜10、特に1〜8の炭化水素基である。
【0057】
「ハロゲン」の語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。
【0058】
「低級」の語は、特にことわりのない限り炭素原子数1〜6を有する基を包含するものである。
【0059】
「低級アルキル」の語は、炭素原子数1〜6の直鎖または分枝状の飽和炭化水素基を意味し、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。
【0060】
「低級アルコキシ」の語は、低級アルキルが上述と同意義である低級アルキル−O−基を意味する。
【0061】
「ヒドロキシ(低級)アルキル」の語は、少なくとも1つのヒドロキシ基で置換された上記のような低級アルキルを意味し、例えばヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチルおよび1−メチル−1−ヒドロキシエチルが挙げられる。
【0062】
「低級アルカノイルオキシ」の語は、式RCO−O−(ここで、RCO−は上記のような低級アルキル基が酸化されて生じるアシル基、例えばアセチル)で示される基を意味する。
【0063】
「シクロ(低級)アルキル」の語は、炭素原子3個以上を含む上記のような低級アルキル基が閉環して生ずる環状基を意味し、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを含む。
【0064】
「シクロ(低級)アルキルオキシ」の語は、シクロ(低級)アルキルが上述と同意義であるシクロ(低級)アルキル−O−基を意味する。
【0065】
「アリール」の語は、非置換または置換の芳香族炭化水素環基を包含し、(好ましくは単環式基の)、例えばフェニル、トリル、キシリルが例示される。置換基としては、ハロゲン原子、ハロ(低級)アルキル(ここで、ハロゲン原子および低級アルキルは前記の意味)が含まれる。
【0066】
「アリールオキシ」の語は、式ArO−(ここで、Arは上記のようなアリール)で示される基を意味する。
【0067】
「複素環基」の語としては、置換されていてもよい炭素原子および、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1種または2種のヘテロ原子を1〜4個、好ましくは1〜3個含む、5〜14員環、好ましくは5〜10員環の、単環式〜3環式、好ましくは単環式の複素環基が含まれる。複素環基としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、2−ピロリニル基、ピロリジニル基、2−イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、2−ピラゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、インドリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、プリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズイミダゾリニル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基などが例示される。置換基としてはハロゲン、ハロゲン置換低級アルキル基(ここで、ハロゲンおよび低級アルキル基は前記の意味)が例示される。
【0068】
「複素環オキシ基」の語は、式HcO−(ここでHcは上記のような複素環基)で示される基を意味する。
【0069】
Aの「官能性誘導体」の語は、塩(好ましくは、医薬上許容し得る塩)、エーテル、エステルおよびアミド類を含む。
【0070】
適当な「医薬上許容し得る塩」としては、慣用される非毒性塩を含み、無機塩基との塩、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩;または有機塩基との塩、例えばアミン塩(例えばメチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン塩、モノメチル−モノエタノールアミン塩、プロカイン塩、カフェイン塩等)、塩基性アミノ酸塩(例えばアルギニン塩、リジン塩等)、テトラアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩類は、例えば対応する酸および塩基から常套の反応によってまたは塩交換によって製造し得る。
【0071】
エーテルの例としてはアルキルエーテル、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、t−ブチルエーテル、ペンチルエーテル、1−シクロプロピルエチルエーテル等の低級アルキルエーテル;オクチルエーテル、ジエチルヘキシルエーテル、ラウリルエーテル、セチルエーテル等の中級または高級アルキルエーテル;オレイルエーテル、リノレニルエーテル等の不飽和エーテル;ビニルエーテル、アリルエーテル等の低級アルケニルエーテル;エチニルエーテル、プロピニルエーテル等の低級アルキニルエーテル;ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシイソプロピルエーテル等のヒドロキシ(低級)アルキルエーテル;メトキシメチルエーテル、1−メトキシエチルエーテル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエーテル;例えばフェニルエーテル、トシルエーテル、t−ブチルフェニルエーテル、サリチルエーテル、3,4−ジメトキシフェニルエーテル、ベンズアミドフェニルエーテル等の所望により置換されたアリールエーテル;およびベンジルエーテル、トリチルエーテル、ベンズヒドリルエーテル等のアリール(低級)アルキルエーテルが挙げられる。
【0072】
エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、1−シクロプロピルエチルエステル等の低級アルキルエステル;ビニルエステル、アリルエステル等の低級アルケニルエステル;エチニルエステル、プロピニルエステル等の低級アルキニルエステル;ヒドロキシエチルエステル等のヒドロキシ(低級)アルキルエステル;メトキシメチルエステル、1−メトキシエチルエステル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエステルのような脂肪族エステル;および例えばフェニルエステル、トリルエステル、t−ブチルフェニルエステル、サリチルエステル、3,4−ジメトキシフェニルエステル、ベンズアミドフェニルエステル等の所望により置換されたアリールエステル;ベンジルエステル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステル等のアリール(低級)アルキルエステルが挙げられる。
【0073】
Aのアミドは、式−CONR’R''(式中、R’およびR''はそれぞれ水素、低級アルキル、アリール、アルキル−またはアリール−スルホニル、低級アルケニルおよび低級アルキニル)で示される基を意味し、例えばメチルアミド、エチルアミド、ジメチルアミド、ジエチルアミド等の低級アルキルアミド;アニリド、トルイジド等のアリールアミド;メチルスルホニルアミド、エチルスルホニルアミド、トリルスルホニルアミド等のアルキル-またはアリール-スルホニルアミドが挙げられる。
【0074】
好ましいLの例は、ヒドロキシ、オキソを含み、特にいわゆるPGFまたはPGEタイプと称される5員環構造を有するものを含む。
【0075】
好ましいAは、−COOH、その医薬上許容し得る塩、エステルまたはアミドである。
【0076】
好ましいBは、−CH2−CH2−であり、いわゆる、13,14-ジヒドロタイプの構造を提供するものである。
【0077】
好ましいX1およびX2の例は、水素、またはそれらの少なくとも1つがハロゲンであり、より好ましくは両方がハロゲンであり、特に好ましくは両方がフッ素であり、いわゆる16,16−ジフルオロタイプと称される構造を提供するものである。
【0078】
好ましいX1’およびX2’は、ジフルオロ原子である。
【0079】
好ましいR1は、炭素原子数1〜10であり、特に好ましくは炭素原子数6〜10の炭化水素残基である。脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は酸素、窒素または硫黄で置換されていてもよい。
【0080】
R1の具体例としては、例えば、次のものが挙げられる。
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH=CH−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH=CH−、
−CH2−C≡C−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH(CH3)−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−O−CH2−、
−CH2−CH=CH−CH2−O−CH2−、
−CH2−C≡C−CH2−O−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH=CH−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH=CH−、
−CH2−C≡C−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH(CH3)−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH=CH−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH=CH−、
−CH2−C≡C−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−、および、
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH(CH3)−CH2−。
【0081】
好ましいRaは、1−10炭素原子、より好ましくは1−8炭素原子を有する炭化水素である。Raは1の炭素原子を有する1または2の側鎖を有していてもよい。
【0082】
好ましいR2は単結合であり、好ましいR3は低級アルキルである。R3は1つの炭素原子を含む1または2の側鎖を有していてもよい。
【0083】
上記式(I)、(II)、(III)および(IV)における環、および、α−および/またはω−鎖の配置は、天然PG類の配置と同じであっても異なっていてもよい。しかしながら、本発明は、天然タイプの配置を有する化合物と非天然タイプの配置を有する化合物の混合物も包含する。
【0084】
本発明の化合物の典型的な例は、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-16,16-ジフルオロ-PGEまたはPGF化合物、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGEまたはPGF化合物、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)- 11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGEまたはPGF化合物、あるいは、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ- 20-メチルまたはエチル-PGEまたはPGF化合物およびその誘導体またはアナログである。
【0085】
本発明の化合物の好ましい例は、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-16,16-ジフルオロ-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 イソプロピルエステル、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-11-デオキシ- 13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 イソプロピルエステル、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15- ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト- 16,16-ジフルオロ-20-メチル-PGE1 イソプロピルエステル、11-デオキシ- 13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-メチル-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-エチル-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 メチルエステル、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-エチル-PGE1 イソプロピルエステルまたは11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGF1αイソプロピルエステルである。
【0086】
本発明において、いずれの異性体、例えば、個々の互変異性体、その混合物、または光学異性体、その混合物、ラセミ混合物、およびその他の立体異性体も同じ目的に用いることが出来る。
【0087】
本発明に用いられる化合物のいくつかは、米国特許第5,073,569、5,166,174、5,221,763、5,212,324、5,739,161および6,242,485号に開示の方法によって調製することが出来る (これらの引用文献は引用により本明細書に含める)。
【0088】
本発明によると、哺乳類対象は、本発明に用いられる化合物を投与することにより本発明により処置され得る。対象はヒトを含むいずれの哺乳類対象でもよい。化合物は、全身的または局所的に適用しうる。通常、化合物は、経口投与、静脈内注射 (注入を含む)、皮下注射、直腸内投与、膣内投与、経皮投与などによって投与されうる。
【0089】
投与量は動物の種類、年令、体重、処置されるべき症状、所望の治療効果、投与経路、処置期間等により変化する。1日1〜4分割用量で全身投与または連続投与する場合、1日当たり0.00001〜500mg/kg、より好ましくは0.0001〜100mg/kgの投与量で満足な効果が得られる。
【0090】
化合物は好ましくは、常套的に投与に好適な医薬組成物に製剤するとよい。組成物は、経口投与、注射または灌流に好適なものであってもよいし、外用剤、坐薬または膣坐薬であってもよい。
【0091】
本発明の組成物は生理学的に許容される添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤は本発明の化合物と併用される成分を含み、例えば、賦形剤、希釈剤、増量剤、溶剤、滑沢剤、補助剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、カプセル化剤、軟膏基剤、坐薬基剤、エアロゾル化剤、乳化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、保存剤、抗酸化剤、矯味剤、芳香剤、着色剤、機能性素材(例えばシクロデキストリン、生体内分解高分子など)、安定剤が挙げられる。これらの添加剤は当該技術分野で周知であり、製剤学に関する一般書籍に記載されているものから適宜選択すればよい。
【0092】
本発明の組成物における上記化合物の量は組成物の剤形に応じて変動し得、一般的には、0.000001−10.0%、より好ましくは0.00001−5.0%、最も好ましくは0.0001−1%でありうる。
【0093】
経口投与のための固体組成物の例としては、錠剤、トローチ剤、舌下錠、カプセル、丸剤、散剤、顆粒剤等が挙げられる。固体組成物は、1以上の活性成分を少なくとも1つの不活性希釈剤と混合することによって調製できる。組成物はさらに、不活性希釈剤以外の添加剤を含んでいてもよく、例えば、滑沢剤、崩壊剤および安定化剤が挙げられる。錠剤および丸剤は必要であれば腸溶または胃腸溶フィルムでコーティングしてもよい。
【0094】
それらは2以上の層で被覆してもよい。それらはまた、徐放物質に吸着させてもよいし、マイクロカプセルに封入してもよい。さらに、組成物は易分解性物質、例えばゼラチンによってカプセル化してもよい。それらはさらに適当な溶媒、例えば、脂肪酸またはそのモノ、ジまたはトリグリセリドに溶解して軟カプセルとしてもよい。即効性を要する場合には舌下錠を用いてもよい。
【0095】
経口投与のための液体組成物の例としては、乳濁液、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤等が挙げられる。該組成物はさらに、常套的に用いられる不活性希釈剤、例えば、精製水またはエチルアルコールを含んでいてもよい。組成物は補助剤等の不活性希釈剤以外の添加剤、例えば、湿潤剤および懸濁化剤、甘味料、香味料、香料および保存料を含んでいてもよい。
【0096】
本発明の組成物は1以上の活性成分を含む噴霧組成物の形態であってもよく、公知の方法にしたがって調製することが出来る。
【0097】
非経口投与のための本発明の注射可能組成物の例としては、無菌の水性または非水性溶液、懸濁液および乳濁液が挙げられる。
【0098】
水溶液または懸濁液のための希釈剤としては、例えば、注射用蒸留水、生理的食塩水およびリンゲル液が挙げられる。
【0099】
溶液および懸濁液のための非水性希釈剤としては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えば、オリーブ油、アルコール、例えば、エタノールおよびポリソルベートが挙げられる。組成物はさらに、添加剤、例えば、保存料、湿潤剤、乳化剤、分散剤等を含んでいてもよい。それらは例えば細菌保持フィルターでのろ過によって、滅菌剤を配合することによって、あるいはガスまたは放射性同位体照射滅菌によって滅菌してもよい。
【0100】
注射可能組成物は、注射用無菌溶媒に使用時に溶解される滅菌された粉末組成物として提供してもよい。
【0101】
本発明の外用剤は、皮膚科学および耳鼻科学の分野で用いられるいずれの形態の外用剤であってもよく、軟膏、クリーム、ローションおよびスプレーが挙げられる。
【0102】
組成物のさらなる形態は坐薬または膣坐薬であり、これは活性成分を体温で軟化する常套の基材、例えば、カカオ脂と混合することによって調製でき、好適な軟化温度を有する非イオン性界面活性剤を吸収性を高めるために用いてもよい。
【0103】
本明細書において用いる「処置」の語は、例えば、症状の予防、治療、軽減、症状の減弱、進行の阻害などのあらゆる管理手段をいう。
【0104】
本明細書において用いる「中枢神経系障害」の語は、あらゆるタイプの症状および/または疾患に関与または関連するあらゆる中枢神経系障害を含み、あるいは、虚血、外傷、感染症、炎症、腫瘍、浮腫、低血圧、低酸素血症、血液凝固 (血栓)、酵素活性化、動脈閉塞 (塞栓)、動脈硬化症、代謝障害、変性症、加齢、薬物、薬物療法または外科手術によってもたらされるものを含む。
【0105】
「中枢神経系障害」の例としては、これらに限定されないが、脳血管障害、例えば、脳卒中および脳梗塞 (例えば、脳血栓、脳塞栓、ラクナ脳梗塞、無症候性脳梗塞); 脳内出血またはくも膜下出血による血管攣縮; 脳血管痴呆; 神経障害、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、認知症、ピック病、脊髄小脳変性症、舞踏病、AIDS 脳症、肝性脳症、筋萎縮性側索硬化症、抗癌薬-誘導性末梢神経障害、糖尿病性神経障害、外傷性神経障害および多発性硬化症; 脳浮腫、高ナトリウム血性脳障害および脳腫瘍; 虚血性疾患、例えば、血管障害による脳虚血、一過性脳虚血発作 (TIA)、可逆性虚血性神経障害 (RIND)、偏頭痛またはコカイン乱用による脳血管虚血、癲癇または癲癇性精神症状を含む脳虚血、外科手術の際の脳虚血(虚血性組織傷害)、頭部損傷による脳虚血、低血圧による脳虚血、低酸素血症または呼吸困難および心停止による脳虚血; 炎症性脳障害、例えば、慢性再発性多発性硬化症、脳脊髄炎、髄膜炎、外傷性脳障害; 新生児仮死およびこれらの疾患の二次的合併症が挙げられる。
【0106】
本発明によると、本明細書において用いる化合物は、脳血管内皮細胞、特に血液脳関門の障壁機能の回復に対して有意な効果を有し、したがって脳血管内皮細胞の保護にも有用である。
【0107】
本発明の医薬組成物はさらに本発明の目的を損なわない限りその他の薬理成分を含んでいてもよい。
【0108】
本発明の剤形は単一の活性成分を含むものでもよいし、2以上の活性成分の組合せを含むものでもよい。複数の活性成分の組合せにおいて、それぞれの含有量は、その治療効果および安全性を考慮して適宜増減するとよい。
【0109】
さらに、本発明の剤形は本発明の目的を損なわない限り、その他の薬理活性成分を含んでいてもよい。
【0110】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定する意図ではない。
【実施例】
【0111】
実施例 1
<方法>
4週齡雄性 ddY マウスを、温度 (24 ±3℃)、相対湿度 (55 ±10%)、換気速度 (~12 回/時間)および明暗周期 (蛍光照明: 8:00〜20:00)を制御した動物飼育室中、アルミニウムケージ中で少なくとも7日間飼育した。動物には、固形飼料を自由に摂取させ、水道水を採水器から自由に飲ませた。全身に異常のない健康動物をこの研究に用いた。
【0112】
11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 (以下、「化合物A」と称する)を媒体 (0.01% ポリソルベート 80および0.5% エタノールを含有する生理的食塩水)に溶解し、動物の皮下に投与した。対照群には等量の媒体を同様に与えた。
【0113】
動物を投与の30 分後に断頭し、あえぎ運動の持続時間を測定した。
【0114】
<結果>
表 1に示すように、化合物Aは10、30、100 および 300μg/kgにて断頭後、あえぎ運動の持続時間を用量依存的に延長させた。結果は、化合物Aが神経保護活性を有し、化合物Aが虚血性疾患の処置に有用であることを示す。
【0115】
表 1.マウスにおける断頭後のあえぎ運動の持続時間に対する化合物Aの効果
【表1】
s.c.: 皮下、
媒体-処置対照群と比較して、**p < 0.01、*p < 0.05 (ダネット多重比較テスト)
【0116】
実施例 2
<方法>
4週齡雄性 ddY マウスを、温度 (24 ± 3℃)、相対湿度 (55 ±10%)、換気速度 (~12 回/時間)および明暗周期 (蛍光照明: 8:00 〜20:00)について制御した動物飼育室中のアルミニウムケージで少なくとも 7日間飼育した。動物には、固形飼料を自由に摂取させ、水道水を採水器から自由に飲ませた。全身に異常のない健康動物をこの研究に用いた。動物を20 時間またはそれ以上、使用時まで水を自由に与えて絶食させた。
【0117】
化合物Aおよび11-デオキシ-13,14-ジヒドロ- 15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 メチルエステル (以下、「化合物B」と称する)を媒体 (0.01% ポリソルベート 80および0.5% エタノールを含む生理的食塩水)に溶解し、動物に経口投与した。対照群には等量の媒体を同様に与えた。
【0118】
動物を投与の30 分後に断頭し、あえぎ運動の持続時間を測定した。
【0119】
<結果>
表 2に示すように、化合物A および化合物Bの100、300および1000 μg/kgの経口投与により、断頭後のあえぎ運動の持続時間が用量依存的に延長した。結果は、化合物Aおよび化合物Bが経口投与による神経保護活性を有しており、化合物Aおよび化合物Bが虚血性疾患の処置に有用であることを示す。
表 2.マウスにおける断頭後のあえぎ運動の持続時間に対する化合物AおよびBの経口投与の効果
【表2】
p.o.: 経口、
媒体-処置対照群と比較して、**p < 0.01、*p < 0.05 (ダネット多重比較テスト)
【0120】
実施例 3
<方法>
4週齡雄性 ddY マウスを温度 (24 ± 3℃)、相対湿度 (55 ± 10%)、換気速度 (~12回/時間)および明暗周期 (蛍光照明: 8:00〜20:00)を制御した動物飼育室中でアルミニウムケージで少なくとも 7日間飼育した。動物には、固形飼料を自由に摂取させ、水道水を採水器から自由に飲ませた。全身に異常のない健康動物をこの研究に用いた。
【0121】
11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-16,16-ジフルオロ-PGE1 (以下、「化合物C」と称する)を媒体 (0.01% ポリソルベート 80および0.5% エタノールを含む生理的食塩水)に溶解し、動物の皮下に投与した。対照群には等量の媒体を同様に与えた。
【0122】
動物を投与の30 分後に断頭し、あえぎ運動の持続時間を測定した。
【0123】
<結果>
表 3に示すように、300 μg/kgの化合物Cは断頭後のあえぎ運動の持続時間を有意に延長した。結果は化合物Cが神経保護活性を有することを示す。
【0124】
表 3.マウスにおける断頭後のあえぎ運動の持続時間に対する化合物Cの効果
【表3】
s.c.: 皮下、
媒体-処置対照群と比較して**p < 0.01
【0125】
実施例 4
<方法>
7週齡 Crj: CD (SD) 雄性ラットを、室温 (22-26℃)、相対湿度 (47-60%)、換気速度 (10-20 回/時間)および明暗周期 (照明: 7:00〜19:00)について制御した動物飼育室中のポリメチルペンテンケージで少なくとも 6 日間飼育した。動物には固形飼料を自由に摂取させ、採水器から水を自由に摂取させた。良好な健康にあると判定された動物をこの研究に用いた。
【0126】
ラットを2% イソフルランおよびN2O:O2 (= 7:3)のガス混合物の吸入により麻酔し、仰臥位に固定し、上記ガス混合物の吸入により麻酔状態を維持した。動物を外科手術の期間中に温度プローブを用いて直腸温度についてモニターした。体温の低下が観察されたら、白熱ランプを用いて温度を約37℃に維持した。右総頸動脈、外頸動脈、および内頸動脈を露出して中大脳動脈(以下、MCAと称する)を閉塞させた。右総頸動脈および外頸動脈を縫合糸(5-0)を用いて結紮し、シリコンであらかじめ被覆した19 mm-長のNo. 4-0 ナイロン縫合糸のセグメントを外頸動脈と内頸動脈との分岐点を介してMCAに挿入し、MCAを閉塞させた。MCA 閉塞の2 時間後、縫合糸を除き、MCA中の血流を回復させた。
【0127】
化合物Aを媒体 (1 % ポリソルベート 80を含む生理的食塩水)に溶解し、動物に容量2 mL/kgにてMCA 閉塞-再灌流の直後、およびMCA 閉塞-再灌流の30 分後に静脈内投与した。対照群には等容量の媒体を同様に与えた。
【0128】
MCA 閉塞の24 時間後、動物を断頭し、脳をすぐに単離した。組織ナイフ (Micro-3D; The Mickle Laboratory Engineering Co.、Ltd.)を用いて、順次に2 mmの厚さの脳切片を調製した。脳組織切片はPaxinos and Watsonの脳地図にしたがって配置し、ブレグマより4 mm前側、ブレグマより2 mm 前側、ブレグマ点、ブレグマより2 mm 後側、ブレグマより4 mm 後側、ブレグマより6 mm 後側にて前頭面を含めた。脳切片は1% TTC 溶液で染色し、写真撮影した。画像分析 (Adobe PhotoshopTM、version 3.0 J; Adobe Systems Incorporated、Color Count 0.3b; K&M Software Corporation)を写真に対して行って、梗塞面積を測定した。これらの結果に基づき、梗塞体積 (ブレグマの4 mm 前側-ブレグマの6 mm 後側)を下記式を用いて算出した。
V= 2(a+b)/2 + 2(b+c)/2 + 2(c+d)/2 + 2(d+e)/2+ 2(e +f)/2
= a + 2(b+c+d+e) + f
V: 梗塞体積
a: ブレグマの4 mm前側の断面における梗塞面積
b: ブレグマの2 mm前側の断面における梗塞面積
c: ブレグマ点の断面における梗塞面積
d: ブレグマの2 mm後側の断面における梗塞面積
e: ブレグマの4 mm後側の断面における梗塞面積
f: ブレグマの6 mm後側の断面における梗塞面積
【0129】
<結果>
表 4に示すように、化合物Aは0.05および0.5 mg/kgにて虚血後の脳梗塞体積を媒体群と比較して用量依存的に有意に低下させた。結果は化合物Aは、脳血管障害、例えば、脳梗塞の処置に有用であることを示す。
【0130】
表 4.ラットにおける一過性局所脳虚血後の脳梗塞体積に対する化合物Aの効果
【表4】
脳はMCA 閉塞の24 時間後に取り出した。各値は10匹のラットの平均±S.E.を表す。化合物を、MCA 閉塞 -再灌流の直後およびMCA 閉塞-再灌流の30分後に静脈内投与した。
* P < 0.05、** P < 0.01;媒体群および化合物A 群の有意差 (ダネット多重比較テスト)
【0131】
実施例 5
<方法>
アルツハイマー病モデル動物をラットにおける基底核の両側イボテン酸破壊により調製した。簡単に説明すると、ラットをペントバルビタールナトリウムで麻酔し、小動物定位固定装置に固定した。5 μg/0.5 μLのイボテン酸の基底核への両側注入を注射器ポンプおよびステンレス鋼カニューレ (外径: 0.5 mm)を介して速度0.1 μL/分にて行った。定位座標は以下の通りであった:十字縫合から0.8 mm 後側、正中線から2.6 mm 側方 (両側)、および骨表面から深さ7.4 mm。偽群の動物は麻酔だけを受けた。動物を次いで飼料と水を自由に摂取させて研究の残りの期間飼育した。
【0132】
化合物Aはモデル動物に対する手術後14 日間経口投与した。対照群には等量の媒体を与えた。
【0133】
モリス水迷路試験を被験化合物の効果の評価のために行った。水迷路は循環プールであった(灰色に着色、直径1.48 m、高さ0.33 m)。プールは温度17-18℃に維持した水を含んでいた。水迷路における試験中、直径12 cmのプラットホームを、プールの4つの位置の1つにおける水面の下2 cm、側壁からおよそ38 cmに配置した (ゾーン 4) 。明るい電球を迷路の外側の合図としてプールのまわりに配置した。動物に、化合物Aまたは媒体の投与の開始後10 日目から1日2回試験を行った。ラットは隠された避難プラットホームに位置するよう訓練し、試験の期間中それは固定位置に維持した。試験は最大90秒持続させた。水に浸ったプラットホームを見つけるまでの潜伏期を記録し、作業課題の獲得の尺度として用いた。動物をこのようにして4 日間試験し(全部で8試験)、5日目に探索試験を受けさせた。探索試験のために、プラットホームをプールから除き、動物をプラットホームが位置していた逆の四分円のところから自由にした。試験時間は90秒であり、その後ラットはプールから取り出した。訓練用の四分円 (ゾーン 4) ; 即ち、プラットホームの以前の位置においてプラットホームを探すのにラットが費やした時間を記録し、記憶の指標として用いた。
【0134】
<結果>
表 5および6に示すように、媒体群は空間認識がひどく損なわれていた。化合物Aによる処置は学習および記憶の欠陥からの有意な回復をもたらした。これらの結果は化合物Aが神経障害、例えば、アルツハイマー病の処置に有用であることを示唆する。
【0135】
表 5.モリス水迷路学習試験における目標潜伏期に対する化合物Aの効果
【表5】
##偽群と比較してp<0.01、**媒体群と比較してp<0.01
【0136】
表 6.モリス水迷路学習試験においてプラットホームが以前に位置していた四分円 (ゾーン 4)において費やした時間に対する化合物Aの効果
【表6】
##偽群と比較してp<0.01、*媒体群と比較してp<0.05
【0137】
実施例 6
<方法>
ヒト血管内皮細胞培養を経内皮電気抵抗 (TEER)により測定して集密にした。細胞培養を次いで窒素雰囲気中でのインキュベーションにより30 分間酸素欠乏させた。細胞を次いで0.1% DMSOまたは5 nM 化合物A+0.1% DMSOのいずれかで処理した。
【0138】
<結果>
図1に示すように、DMSO-処理細胞はTEERの回復をほとんど示さなかった。化合物A-処理細胞は中程度のTEERの回復を示した。
【0139】
結果は内皮細胞の測定されるバリア機能であるTEERが、化合物A-処理の後損傷から迅速に回復することを示す。
【0140】
実施例 7
<方法>
ヒト微小血管内皮細胞(成人) (HMVEC-AD)を集密まで培養した。細胞を次いで窒素雰囲気で30 分間処理し、正常の酸素に戻した。ATP レベルをルシフェリン・ルシフェラーゼアッセイ系 (ATPlite、Perkin Elmer)を用いて示された時点にてモニターした。
【0141】
<結果>
図2に示すように、細胞を窒素雰囲気に30 分間曝すとATP レベルは低下した。ATP レベルは、0.01% DMSOのみで処理した細胞と比較して5 nM 化合物Aで処理した細胞においてはより迅速に回復した。
【0142】
結果は、化合物Aが中枢神経系障害の処置に有用であることを示す。
【0143】
合成例 1
【化11】
【0144】
16,16-ジフルオロ-PGA1 ベンジルエステル (2) の合成
16,16-ジフルオロ-PGE1 ベンジルエステル (1) (457.8 mg、0.95 mmol) を酢酸 (13.7 mL、0.24 mol)に溶解し、溶液を80℃で18 時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却した。10 mLのトルエンを溶液に添加し、減圧下で濃縮した。 この操作を5回繰り返して酢酸を除去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル: FL60D (70 g)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (2:1))で精製して化合物 (2)を黄色油状物として得た。収率: 391.6 mg (88.9%)
【0145】
11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-16,16-ジフルオロ-PGE1 (3) の合成
16,16-ジフルオロ-PGA1 ベンジルエステル (化合物 (2)) (382.5 mg、0.83 mmol)を酢酸エチル (10 mL)中、10% パラジウム-炭素 (57.4 mg、50% w/wの水で湿っている) の存在下で室温、大気圧で2 時間水素化した。反応混合物をセライトパッドでろ過し、フィルターケーキを酢酸エチルで洗浄し、次いでろ液を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル BW-300SP (50 g、15% w/w の水で湿っている)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (1:1)) で精製し、粗化合物 (3) (298.5 mg、95.7%)を得た。
【0146】
粗化合物 (3)を別のロットの粗化合物と合わせた。次いで、全部で約350 mgの粗化合物 を分取HPLC (YMC-Pack D-SIL-5-06 20×250mm、ヘキサン/2-プロパノール/酢酸 (250:5:1)、20 mL/分)で精製して化合物 (3)を無色油状物として得た。 収率: 297.3 mg (HPLC 精製回収率: 83.5%)
1H-NMR (200MHz、CDCl3) δ
0.94 (3H、t、J=7.1Hz)、1.22-2.29 (28H、m)、2.34 (2H、t、J=7.3Hz)、3.65-3.81 (1H、m)
13C-NMR(50MHz、CDCl3) δ
13.70、22.40、23.25、24.32、26.28、26.63)、27.18、27.58、28.49、29.09、30.39、31.77 (t、J=24.4Hz)、33.67、37.63、41.05、54.76、72.73 (t、J=29.0Hz)、124.09 (t、J=244.3Hz)、179.07、220.79
【0147】
合成例 2
【化12】
【0148】
合成例 1に記載のものと同様にして、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1イソプロピルエステル (化合物 (6))を上記2工程反応により無色油状物として得た。収率: 0.285g (第一工程: 96.2%、第二工程: 97.6%、HPLC 精製:回収率 81.0%)。
化合物 (6)の1H-NMR (200MHz、CDCl3)および 13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 3 および4に示す。
【0149】
合成例 3
【化13】
【0150】
合成例 1に記載のものと同様にして、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-11-デオキシ-13,14- ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 イソプロピルエステル (化合物 (9)) を無色油状物として得た。収率: 0.402g (第一工程: 94.9%、第二工程: 92.2%、HPLC 精製:回収率 83.1%)。
化合物 (9)の1H-NMR (200MHz、CDCl3)および 13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 5 および6に示す。
【0151】
合成例 4
【化14】
【0152】
合成例 1に記載のものと同様にして、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-11-デオキシ-13,14- ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 (化合物 (12)) を無色油状物として得た。収率: 0.696g(第一工程: 95.6%、第二工程: 99.3%、HPLC 精製:回収率: 87.4%)。
化合物 (12) の1H-NMR (200MHz、CDCl3) および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 7および8に示す。
【0153】
合成例 5
【化15】
【0154】
合成例 1に記載のものと同様にして、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ- 20-メチル-PGE1 イソプロピルエステル (化合物 (15)) を無色油状物として得た。収率: 0.271g (第一工程: 91.4%、第二工程: 97.3%、HPLC 精製:回収率: 79.0%)。
化合物 (15)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 9および10に示す。
【0155】
合成例 6
【化16】
【0156】
合成例 1に記載のものと同様にして、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ- 20-メチル-PGE1 (化合物 (18)) を無色油状物として得た。収率: 0.637g (第一工程: 93.3%、第二工程: 96.6%、HPLC 精製:回収率: 73.9%)。
化合物 (18)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 11および12に示す。
【0157】
合成例 7
【化17】
【0158】
合成例 1に記載のものと同様にして、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-エチル-PGE1 (化合物 (21)) を無色油状物として得た。収率: 0.401g (第一工程: 90.6%、第二工程: 92.7%、HPLC 精製:回収率: 29.2%)。
化合物 (21)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 13および14に示す。
【0159】
合成例 8
【化18】
【0160】
11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 メチル エステル (化合物 (23)) を化合物 (22)のジアゾメタンによるエステル化により無色油状物として得た。収率: 0.860g (72.9%、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製後)。
化合物 (23)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)を図 15 および16に示す。
【0161】
合成例 9
【化19】
【0162】
化合物 (24) (0.67g、1.66mmol) をDMF (13mL)に溶解し、K2CO3 (460.1mg、3.33mmol)およびヨウ化イソプロピル (831μL、8.32mmol)を添加した。溶液を室温で2 時間撹拌した。反応混合物を氷で冷却し、水 (10mL)および塩水を添加し、酢酸エチル (30mL)で抽出した。有機層を塩水 (10mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル FL60D (50 g)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (5:1)) で精製し、粗 11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-エチル-PGE1 イソプロピルエステル (化合物 (25)) (0.70g、94.6%)を得た。粗化合物 (25) を分取HPLCで精製し、化合物 (25)を無色油状物として得た。収率 245.8mg (35.1%)。
化合物 (25)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 17 および 18に示す。
【0163】
合成例 10
【0164】
【化20】
【化21】
【0165】
化合物 (26) (8.71g、20.2mmol)を1,2-ジクロロエタン(70mL)に溶解し、1,1’- チオカルボニルジイミダゾール (5.41g、30.3mmol)を添加した。溶液を70℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、次いで減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル BW-300SP (650 g)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (1:1)) で精製し、化合物 (27)を明黄色油状物(10.61g、97.0%)として得た。
【0166】
Bu3SnH (11.21g、38.5mmol) をトルエン (224mL)に溶解し、加熱により還流した。トルエン (208mL)中の化合物 (27) (10.41g、19.2mmol)の溶液を反応混合物に還流温度で70 分間滴下した。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、減圧下で濃縮し、粗化合物 (28) を明黄色油状物として得た。
【0167】
粗化合物 (28) (19.2mmol) をTHF (52mL)に溶解し、TBAF 溶液 (THF中1.0M、38.5mL、38.5mmol)を10 分間滴下した。1時間後、TBAF 溶液 (THF中1.0M、19.2mL、19.2mmol)を溶液に滴下した。計3.5 時間撹拌した後、反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル BW-300SP (1,000 g)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (1:1)) で精製し、化合物 (29)を黄色油状物(4.01g、69.3%)として得た。
【0168】
化合物 (31)をSwern 酸化およびω-鎖の導入により化合物 (29)から得た。
【0169】
化合物 (31) (807.4mg、1.88mmol)を10% パラジウム-炭素の存在下で酢酸エチル (8mL)中で室温で2 時間水素化した。反応混合物をセライトパッドでろ過し、ろ液を減圧下で濃縮し、粗化合物 (32)を明褐色油状物として得た。
【0170】
粗化合物 (32) (1.88mmol)をEtOH (8mL)に溶解した。1N-NaOH 溶液 (7.4mL、7.4mol)を溶液に室温で10 分間滴下した。反応混合物を室温で10 時間撹拌し、次いで氷で冷却した。1N-HCl (7.1mL)を反応混合物に滴下してpHを約3-4に調整した。反応混合物をTBME (30mL)で抽出した。有機層を水 (10mL)および塩水 (10mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル 15% 水含有FL-60D (80 g)、Fuji Silysia、ヘキサン/酢酸エチル (2:1)) で精製し 、化合物 (33)を明黄色油状物(481.4mg、68.8%)として得た。
【0171】
合成例 9に記載のものと同様にして、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ- PGF1α イソプロピルエステル (化合物 (34))を化合物 (33)から無色油状物として得た。収率: 166.6mg (反応工程91.9%: HPLC 精製:回収率: 55.4%)。
化合物 (34)の 1H-NMR (200MHz、CDCl3)および13C-NMR(50MHz、CDCl3)をそれぞれ図 19および20に示す。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】図1は、経内皮電気抵抗(Transendothelial Electrical Resistance)(TEER) の回復に対する化合物Aの効果を示すグラフである。ヒト血管内皮細胞培養を経内皮電気抵抗 (TEER)により測定して集密にさせた。細胞培養を次いで窒素雰囲気中でのインキュベーションにより、30 分間酸素を欠乏させた。細胞を次いで0.1% DMSOまたは5 nM 化合物A+0.1% DMSOのいずれかで処理した。統計的有意性は薬物処理の後のすべてのデータ地点について示す。N=10 細胞。
【図2】図2は、ATP レベルの回復に対する化合物Aの効果を示すグラフである。ヒト微小血管内皮細胞(成人) (HMVEC-AD)を集密まで培養した。細胞を次いで窒素雰囲気で30 分間処理し、正常の酸素に戻した。ATP レベルをルシフェリン・ルシフェラーゼアッセイ系 (ATPlite、Perkin Elmer)を用いて示された時点でモニターした。ATP レベルを相対的発光として示す。各時点において、N=6 細胞。
【図3】図3は、以下の合成例 2において得た化合物 (6) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図4】図4は、以下の合成例 2において得た化合物 (6) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図5】図5は、以下の合成例 3において得た化合物 (9) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図6】図6は、以下の合成例 3において得た化合物 (9) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図7】図7は、以下の合成例 4において得た化合物(12) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図8】図8は、以下の合成例 4において得た化合物(12) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図9】図9は、以下の合成例 5において得た化合物(15) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図10】図10は、以下の合成例 5において得た化合物(15) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図11】図11は、以下の合成例 6において得た化合物(18) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図12】図12は、以下の合成例 6において得た化合物(18) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図13】図13は、以下の合成例 7において得た化合物(21) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図14】図14は、以下の合成例 7において得た化合物(21) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図15】図15は、以下の合成例 8において得た化合物(23) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図16】図16は、以下の合成例 8において得た化合物(23) の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図17】図17は、以下の合成例9において得た化合物(25) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図18】図18は、以下の合成例 9において得た化合物(25)の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【図19】図19は、以下の合成例10において得た化合物(34) の1H-NMR (200MHz、CDCl3)チャートである。
【図20】図20は、以下の合成例 10において得た化合物(34)の13C-NMR (50MHz、CDCl3)チャートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を含む、哺乳類対象における中枢神経系障害の処置のための組成物の製造のための、11-デオキシ-プロスタグランジン化合物の使用。
【請求項2】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が下記一般式(I)で表される化合物である請求項1の使用:
【化1】
(I)
[式中、
LおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ、ここで、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄により置換されていてもよい; そして、
R0は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基; 低級アルコキシ; 低級アルカノイルオキシ; シクロ(低級)アルキル; シクロ(低級)アルキルオキシ; アリール; アリールオキシ; 複素環基; 複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄により置換されていてもよい]。
【請求項3】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-プロスタグランジン化合物である請求項1の使用。
【請求項4】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-15-ケト-プロスタグランジン化合物である請求項1の使用。
【請求項5】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物である請求項1の使用。
【請求項6】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物である請求項1の使用。
【請求項7】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-15-ケト-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物である請求項1の使用。
【請求項8】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物である請求項1の使用。
【請求項9】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16-モノまたはジフルオロ-プロスタグランジン化合物である請求項1の使用。
【請求項10】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジンEまたはF化合物である請求項1の使用。
【請求項11】
該プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16-モノまたはジフルオロ-プロスタグランジンEまたはF化合物である請求項1の使用。
【請求項12】
該プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1化合物である請求項1の使用。
【請求項13】
中枢神経系障害が脳血管障害である、請求項1-12のいずれかの使用。
【請求項14】
有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を含む、哺乳類対象における中枢神経系障害の処置のための組成物。
【請求項15】
有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を必要とする対象に投与することを含む、哺乳類対象における中枢神経系障害の処置方法。
【請求項16】
有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を含む、哺乳類対象における脳血管内皮細胞の保護のための組成物の製造のための、11-デオキシ-プロスタグランジン化合物の使用。
【請求項17】
脳血管内皮細胞が血液脳関門のものである請求項16の使用。
【請求項18】
式 (IV)によって表される化合物:
【化2】
(IV)
[式中、
Lは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ、ここで、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
Bは、単結合、−CH2−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2−CH2−CH2−、−CH=CH−CH2−、−CH2−CH=CH−、−C≡C−CH2−または−CH2−C≡C−;
Zは、
【化3】
ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキル、ただし、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない;
X1’およびX2’は、同一であるか、または異なっている、ハロゲン原子;
R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄により置換されていてもよい;そして、
R2は、単結合または低級アルキレン; そして、
R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄により置換されていてもよい;
ただし該化合物は11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1ではない]。
【請求項19】
以下からなる群から選択される請求項18の化合物: 11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-16,16-ジフルオロ-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 イソプロピルエステル、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-11-デオキシ- 13,14- ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 イソプロピルエステル、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15- ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト- 16,16-ジフルオロ- 20-メチル-PGE1 イソプロピルエステル、11-デオキシ- 13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-メチル-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-エチル-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 メチルエステル、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-エチル-PGE1 イソプロピルエステルおよび11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGF1αイソプロピルエステル。
【請求項1】
有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を含む、哺乳類対象における中枢神経系障害の処置のための組成物の製造のための、11-デオキシ-プロスタグランジン化合物の使用。
【請求項2】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が下記一般式(I)で表される化合物である請求項1の使用:
【化1】
(I)
[式中、
LおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ、ここで、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄により置換されていてもよい; そして、
R0は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基; 低級アルコキシ; 低級アルカノイルオキシ; シクロ(低級)アルキル; シクロ(低級)アルキルオキシ; アリール; アリールオキシ; 複素環基; 複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄により置換されていてもよい]。
【請求項3】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-プロスタグランジン化合物である請求項1の使用。
【請求項4】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-15-ケト-プロスタグランジン化合物である請求項1の使用。
【請求項5】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物である請求項1の使用。
【請求項6】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物である請求項1の使用。
【請求項7】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-15-ケト-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物である請求項1の使用。
【請求項8】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物である請求項1の使用。
【請求項9】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16-モノまたはジフルオロ-プロスタグランジン化合物である請求項1の使用。
【請求項10】
該11-デオキシ-プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジンEまたはF化合物である請求項1の使用。
【請求項11】
該プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16-モノまたはジフルオロ-プロスタグランジンEまたはF化合物である請求項1の使用。
【請求項12】
該プロスタグランジン化合物が11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1化合物である請求項1の使用。
【請求項13】
中枢神経系障害が脳血管障害である、請求項1-12のいずれかの使用。
【請求項14】
有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を含む、哺乳類対象における中枢神経系障害の処置のための組成物。
【請求項15】
有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を必要とする対象に投与することを含む、哺乳類対象における中枢神経系障害の処置方法。
【請求項16】
有効量の11-デオキシ-プロスタグランジン化合物を含む、哺乳類対象における脳血管内皮細胞の保護のための組成物の製造のための、11-デオキシ-プロスタグランジン化合物の使用。
【請求項17】
脳血管内皮細胞が血液脳関門のものである請求項16の使用。
【請求項18】
式 (IV)によって表される化合物:
【化2】
(IV)
[式中、
Lは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ、ここで、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CH2OH、−COCH2OH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
Bは、単結合、−CH2−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2−CH2−CH2−、−CH=CH−CH2−、−CH2−CH=CH−、−C≡C−CH2−または−CH2−C≡C−;
Zは、
【化3】
ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキル、ただし、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない;
X1’およびX2’は、同一であるか、または異なっている、ハロゲン原子;
R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄により置換されていてもよい;そして、
R2は、単結合または低級アルキレン; そして、
R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄により置換されていてもよい;
ただし該化合物は11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1ではない]。
【請求項19】
以下からなる群から選択される請求項18の化合物: 11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-16,16-ジフルオロ-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 イソプロピルエステル、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-11-デオキシ- 13,14- ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 イソプロピルエステル、2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15- ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト- 16,16-ジフルオロ- 20-メチル-PGE1 イソプロピルエステル、11-デオキシ- 13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-メチル-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-エチル-PGE1、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 メチルエステル、11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-20-エチル-PGE1 イソプロピルエステルおよび11-デオキシ-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGF1αイソプロピルエステル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
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【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2008−528440(P2008−528440A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535160(P2007−535160)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際出願番号】PCT/JP2006/301704
【国際公開番号】WO2006/080549
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(501131276)スキャンポ・アーゲー (37)
【氏名又は名称原語表記】Sucampo AG
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際出願番号】PCT/JP2006/301704
【国際公開番号】WO2006/080549
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(501131276)スキャンポ・アーゲー (37)
【氏名又は名称原語表記】Sucampo AG
【Fターム(参考)】
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