説明

中栓および容器

【課題】キャップなしでも流通させることができ、かつ、簡単な操作で開封することができる中栓および容器を提案する。
【解決手段】中栓7は、容器本体5の口部突端3bに保持されるとともに口部3の開口h1と通じる開口h2を形成するベース部13と、開口h2を閉塞する底壁15および該底壁15から上方に延びてその上端が開放された筒壁17を有する押し込み部19と、開口h2の周縁と底壁15の周縁とを一体連結する一方、押し込み部19の押し込みによって破断して開口h2を開放させる連結部21と、有し、筒壁17には、押し込み部19が押し込まれた状態で収容空間Sと該筒壁17の内側空間とを連通して収容空間Sから外界へと通じる内容物の注出経路を形成する貫通孔35,37が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内側に内容物の収容空間を形成するとともに上端部に口部を立設する容器本体の該口部に装着して使用される中栓および該中栓を上記口部に装着してなる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧液や薬液等の内容物を収容する容器には、その口部に内容物の適量注出を可能とする中栓を装着するのが一般的であり、さらにこのような中栓としては、使用を開始するまでの間内容物のバージン性を保証するために、その上端面に注出孔を閉塞するシート状のバージンシールを貼付したものが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1−61046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の中栓では、バージンシールが外部に露出していると流通過程等で容易に剥離するおそれがあったことから、流通過程においては中栓を覆うキャップを容器の口部に装着しておく必要があった。特に、近年では、中栓を装着した容器を詰め替え容器として別の容器に内容物を移し替えて当該別の容器を再利用する使用形態が増えてきており、このような使用形態では、キャップは、詰め替え後に余った内容物を保管するのにも使用されるが、詰め替え容器が空になった場合には次の詰め替え容器のキャップとしても使い回しが可能である。それにもかかわらず、流通過程でのバージンシールの剥離を防止するために詰め替え容器毎にキャップを付属させるのは無駄であり、省資源化や環境保護の見地からも好ましくはなかった。
【0005】
それゆえ、この発明は、キャップなしでも流通させることができ、かつ、簡単な操作で開封することができる中栓を提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、この発明の中栓は、内側に内容物の収容空間を形成するとともに上端部に口部を立設する容器本体の該口部に装着して使用される中栓であって、該中栓は、前記口部の突端に保持されるとともに前記口部の開口と通じる開口を形成するベース部と、ベース部の前記開口を閉塞する底壁および該底壁から上方に延びてその上端が開放された筒壁を有する押し込み部と、前記ベース部の前記開口の周縁と前記底壁の周縁とを一体連結する一方、前記押し込み部の押し込みによって破断して前記底壁によって閉塞された前記ベース部の前記開口を開放させる連結部と、を有し、前記筒壁に、前記押し込み部が押し込まれた状態で前記収容空間と該筒壁の内側空間とを連通して収容空間から外界へと通じる内容物の注出経路を形成する貫通孔を設けたことを特徴とするものである。
【0007】
なお、この発明の中栓にあっては、前記筒壁の外壁面に、前記押し込み部が押し込まれた状態にて前記ベース部の対応する壁面に係合して該状態を維持する係合部を設けることが好ましい。
【0008】
また、この発明の中栓にあっては、前記連結部を薄肉部で構成してなることが好ましい。
【0009】
さらに、この発明の中栓にあっては、前記筒壁の上端に、前記押し込み部の押し込み時に前記ベース部の上面に当接して該押し込み部の前記収容空間内への脱落を防止する凸部を設けることが好ましい。
【0010】
また、この発明の容器は、上記の中栓を、内側に内容物の収容空間を形成するとともに上端部に口部を立設する容器本体の該口部に装着してなる容器であり、該容器は、前記口部に装着して容器本体内の収容空間を密閉するキャップを具え、前記中栓の押し込み部は、前記キャップの締め込みにより押し込まれて前記連結部を破断するものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明の中栓にあっては、内部の収容空間内に内容物が充填され、中栓が容器本体の口部に打栓された状態では、中栓の押し込み部の底壁とベース部の開口の周縁とが連結部によって連結され、容器本体内は密封されているので、この状態のまま中栓付きの容器を流通させることができる。中栓を開封するにあたっては、中栓の押し込み部の押し込みにより、押し込み部がベース部の内側に押し込まれるとともに押し込み部とベース部とを連結している連結部が破断され、ベース部の、底壁によって閉塞されていた開口が開放される。これにより、収納空間から筒壁の貫通孔、筒壁の内側空間へ続く内容物の注出経路が形成される。この状態で、中栓付きの容器を傾けることで容器本体内の内容物はかかる注出経路を通じて外界に注出される。
【0012】
したがって、この発明の中栓によれば、押し込み部をベース部内に押し込むという簡単な操作のみで中栓を開封することができる。また、この発明の中栓によれば、キャップを用いなくとも容器本体内部を密封して中栓付きの容器を流通させることができるので、当該中栓付きの容器に付属させることができるキャップを、次の中栓付きの容器に使いまわすことができる。当該中栓付きの容器を詰め替え容器(詰め替え用の内容物を収容する容器)として使用した場合においても、他の容器への内容物の詰め替えにより容器本体内が空になった場合には、キャップを、内容物が充填されている新たな詰め替え容器に対して使い回すことができる。
【0013】
さらに、中栓の押し込み部の押し込みをキャップの締め込みにより行った場合には、中栓に手が直接触れることがないため菌の発生を防止することができ衛生的である。
【0014】
さらに、押し込み部が押し込まれた状態にてベース部の対応する壁面に係合して該状態を維持する係合部を設けた場合には、容器を傾けて内容物を注出する際に押し込み部がベース部から飛び出して脱落するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明にしたがう一実施形態の中栓を容器本体の口部に装着してなる容器の一部を示す正面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1に示した容器につき、キャップを締め込むことにより中栓の押し込み部をベース部の内側に押し込んだ状態を示す断面図である。
【図4】図1に示した容器につき、キャップを外し、容器を傾けて内容物を注出する様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図中符号1は、一実施形態の中栓を容器本体の口部に装着してなる中栓付きの容器を指し、符号Xは該容器の軸線方向を指す。なお、本明細書において、「上方」または「上」とは容器の軸線方向みて、底部から口部へ向かう方向を指すものとする。
【0017】
図1および2に示すように、容器1は、内側に内容物の収容空間S(図2参照)を形成するとともに上端部に口部3を立設する容器本体5と、該容器本体5の口部3に装着された中栓7とを具えるものである。
【0018】
容器本体5は、ここでは、肩部9を介して上記口部3を立設する胴部11と、胴部11の下端を閉塞する底部(図示省略)を有し、口部3の外壁面にはねじ3aが形成されている。
【0019】
中栓7は、口部3の突端3bに保持されるとともに口部3の開口h1と通じる開口h2を形成するベース部13と、ベース部13の開口h2を閉塞する底壁15および該底壁15から上方に延びてその上端が開放された筒壁17をもつ押し込み部19と、ベース部13の開口h2の周縁と底壁15の周縁とを一体連結する一方、押し込み部19の押し込みによって破断して底壁15によって閉塞されたベース部13の開口h2を開放させる連結部21と、を有している。
【0020】
より詳細には、ベース部13は、口部突端3bの外壁を取り囲んで該外壁に例えばアンダーカットのような嵌合手段により嵌合される外周壁23と、該外周壁23の上端に連設されて口部突端3bの上面に沿って延びる上壁25と、上壁25の内周縁から垂下して口部3の内壁に嵌り込む内周壁27とからなり、よって、ベース部13は、外周壁23と上壁25と内周壁27とで形成される環状溝内に口部突端3bを挿入、嵌合させることで口部3に保持されている。また、上壁25は、半径方向外側の薄壁部分25aと、該薄壁部分25aより半径方向内側の厚壁部分25bとを有しており、厚壁部分25bの、ベース部13の開口h2を形成する内周面には、内周壁27に対して内側に向けて段差29を形成する環状凸部31が設けられている。
【0021】
押し込み部19の筒壁17は、ベース部13の内周壁27の内径よりも径の小さい小径筒部17aと、該小径筒部17aの上方に配置され小径筒部17aよりも径が大きくかつベース部13の厚壁部分25bの内径と略同一の径を有する大径筒部17bとを有しており、また、小径筒部17aと大径筒部17bとの間には、アンダーカットのような係合部33が形成されている。よって、押し込み部19が押し込まれた状態(押し込み部19がベース部13の開口h2内に挿入された状態)では、係合部33がベース部13の段差29に係合して該状態が維持されるとともに、内周壁27と小径筒部17aとの間には内容物の注出経路の一部を構成する環状の隙間が形成される。
【0022】
さらに、筒壁17の小径筒部17aには、押し込み部19が押し込まれた状態で収容空間Sと筒壁17の内側空間とを連通して収容空間Sから外界へと通じる内容物の注出経路を形成する少なくとも1つ(ここでは2つ)の貫通孔35,37が形成されている。
【0023】
また、この実施形態では、筒壁17の上端に、押し込み部19の押し込み時にベース部13の上面(上壁25の上面)に当接して該押し込み部19の収容空間S内への脱落を防止する凸部39を設けている。凸部39は、この例では環状としているが、これに限らず、一つまたは複数の独立した凸部39であってもよい。
【0024】
連結部21は、該連結部21に隣接する部分に比べて厚みの小さい環状の薄肉部で構成されており、薄肉部の厚みは、押し込み部19の押し込み時には破断することができる一方、流通過程等における外部からの衝撃では破断しない程度の強度を有するものとすることが好ましく、さらには、押し込み部19の押し込みを後述するキャップ40の締め込みにより行った際に破断する程度の厚みとすることがより好ましい。
【0025】
キャップ40は、図3に示すように、容器本体5の口部3に装着して容器本体5内の収容空間Sを密閉するものであり、この実施形態では、逆さカップ形状の外装体42とこの外装体42の内側に嵌め込まれる内装体44との二重構造をなし、内装体44に形成された凹部46の内周壁には、容器本体5の口部外壁に形成されたねじ3aと嵌合するねじ46aが形成されている。またこの凹部46の天井部分には、円板状のシール48が設けられており、これによって、キャップ40を容器本体5の口部3に締め込んだときにシール48が中栓7の注出開口(ベース部13の開口h2)を密閉するようにしている。
【0026】
このようになる容器1にあっては、図2に示す、内部の収容空間S内に内容物が充填され、中栓7が容器本体5の口部3に打栓された状態では、中栓7の押し込み部19の底壁15とベース部13の開口h2の周縁とが連結部21によって連結され、容器本体5内は密封されているため、この状態のままで容器1を流通させることができる。中栓7を開封するにあたっては、図3に示すように、キャップ40を容器本体5の口部3に締め込むことで押し込み部19がベース部13の内側に押し込まれるとともに中栓7の押し込み部19とベース部13とを連結している連結部21が破断され、ベース部13の、底壁15によって閉塞されていた開口h2が開放される。これにより、収容空間Sから筒壁17の貫通孔35,37、筒壁17の内側空間へと続く内容物の注出経路が形成される。この状態で、図4に示すように、容器1を傾けることで容器本体5内の内容物はかかる注出経路を通じて外界に注出される。
【0027】
したがって、この実施形態の中栓7を装着してなる容器1によれば、中栓7の押し込み部19をベース部13内に押し込むという簡単な操作のみで中栓7を開封することができ、これは、容器1を詰め替え容器として使用した場合に詰め替え用の内容物を移し替える先の他の容器が何ら制限されないという利点もある。すなわち、例えば実開平5−71152号公報に開示されるように、容器の口部をシート層で閉塞した容器につきそのシート層を容易に除去しようとした場合、内容物を移し替える先の容器に該シート層の切断刃を設ける必要があり、切断刃が邪魔となって移し替える先の容器にポンプ等を装着することができなくなるが、この発明の中栓7によれば、中栓7の押し込み部19を押し込むだけで中栓7を開封でき、移し替える先の容器に中栓7を開封するための手段を設ける必要はない。
【0028】
また、この中栓7によれば、キャップ40を用いなくとも容器本体5を密封して流通させることができるので、当該中栓付きの容器1に付属させることができるキャップ40を、次の中栓付きの容器1に使い回すことができる。当該中栓付きの容器1を詰め替え容器(詰め替え用の内容物を収容する容器)として使用した場合においても、他の容器への内容物の詰め替えにより容器本体5内が空になった場合には、キャップ40を内容物が充填されている新たな詰め替え容器1に対して使い回すことができる。つまり、容器1に付属させることができるキャップ40や通常の容器(詰め替えが行われる容器)で使用されるキャップを、容器1に使用することもできる。
【0029】
さらに、中栓7の押し込み部19の押し込みをキャップ40の締め込みにより行った場合には、中栓7に手が直接触れることがないため菌の発生を防止することができ衛生的である。
【0030】
さらに、この実施形態の中栓7によれば、押し込み部19が押し込まれた状態にてベース部13の対応する壁面(段差29)に係合して該状態を維持する係合部33を設けたことから、容器を傾けて内容物を注出する際に押し込み部19がベース部13から飛び出して脱落するのを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
かくして、この発明により、キャップなしでも流通させることができ、かつ、簡単な操作で開封することができる中栓および容器を提案することが可能となった。
【符号の説明】
【0032】
1 容器
3 口部
3b 口部の突端
5 容器本体
7 中栓
13 ベース部
15 底壁
17 筒壁
19 押し込み部
21 連結部
33 係合部
35,37 貫通孔
39 凸部
40 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に内容物の収容空間を形成するとともに上端部に口部を立設する容器本体の前記口部に装着して使用される中栓であって、
該中栓は、前記口部の突端に保持されるとともに前記口部の開口と通じる開口を形成するベース部と、ベース部の前記開口を閉塞する底壁および該底壁から上方に延びてその上端が開放された筒壁を有する押し込み部と、前記ベース部の前記開口の周縁と前記底壁の周縁とを一体連結する一方、前記押し込み部の押し込みによって破断して前記底壁によって閉塞された前記ベース部の前記開口を開放させる連結部と、を有し、
前記筒壁に、前記押し込み部が押し込まれた状態で前記収容空間と該筒壁の内側空間とを連通して収容空間から外界へと通じる内容物の注出経路を形成する貫通孔を設けたことを特徴とする中栓。
【請求項2】
前記筒壁の外壁面に、前記押し込み部が押し込まれた状態にて前記ベース部の対応する壁面に係合して該状態を維持する係合部を設けた、請求項1に記載の中栓。
【請求項3】
前記連結部を薄肉部で構成してなる、請求項1または2に記載の中栓。
【請求項4】
前記筒壁の上端に、前記押し込み部の押し込み時に前記ベース部の上面に当接して該押し込み部の前記収容空間内への脱落を防止する凸部を設けた、請求項1〜3の何れか一項に記載の中栓。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の中栓を、内側に内容物の収容空間を形成するとともに上端部に口部を立設する容器本体の該口部に装着してなる容器であり、
該容器は、前記口部に装着して容器本体内の収容空間を密閉するキャップを具え、前記中栓の押し込み部は、前記キャップの締め込みにより押し込まれて前記連結部を破断する、容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−28397(P2013−28397A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167435(P2011−167435)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】