説明

中空ガラス製製品

【課題】中空ガラス製品を提供する。
【解決手段】5mmの厚さに対して、ISO/CIE10526標準によって規定される光源CおよびISO/CIE10527標準によって規定されるCIE1931測色標準観察者を考慮に入れることによって算出される全光透過率が70%以上、且つ330〜450nmでの透過率の算術平均が100%低減した値に相当して規定されるフィルタリング能力が65%以上、特に70%以上であり、ソーダ石灰シリカ型の化学組成を有する中空ガラス製品であって、以下:
Fe(全鉄) 0.01〜0.15質量%
TiO 0.5〜3質量%
硫化物(S2−) 0.0010〜0.0050質量%
に規定される限定の範囲内で変わる含有量で光学的吸収剤を含む、前記製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い光透過率および放射線に起因する劣化に対して強固な保護を有するボトル、フラスコ又はポットのような中空ガラス製品に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線、特に太陽放射線は多くの液体と相互に作用しそして時にはその品質を低下させ得ることが知られている。例えば、色および味覚が損なわれ得るシャンパンのような特定のワイン又はビールを含む特定の消耗液ではそうである。それゆえ、農業食品業界および化粧品業界のいずれにおいても、大部分の紫外線を吸収できるガラス容器に対する現実の必要性がある。
【0003】
この制約に合致するガラスで作製された中空製品は極めて一般的であるが、それは一般的に強く着色されており、それゆえ低い光透過率を有している。例えば、ワイン又はビールは茶色又は緑色のボトルに充填されるが、これらの着色は酸化クロムあるいは遷移元素の硫化物のような顔料の添加によってなし得る。しかしながら、これらの色付き容器は収容している液体の着色を隠すという欠点を有している。
【0004】
特定の場合、主として審美的理由によって、内容物の着色を十分に正しく評価することができること、それゆえに高い光透過率および無彩色の色合いのいずれをも示す中空ガラス製品を得ることができれば望ましい。
【0005】
国際特許公開第2005/075368号はこの問題を解決することができるガラス組成物を記載している。この組成物は、酸化バナジウムと酸化マグネシウムとを含み、低い紫外線透過率(380nm未満の波長に対して)および高い光透過率(380〜780nmの波長範囲で)のいずれをも示す中空ガラス製品を得ることを可能とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この製品によって与えられる保護は特定の事項、特にスティルワイン又はスパークリング白ワイン、特にシャンパンのような液体にとって長期的には不十分であり得ることが明らかになった。
本発明の目的は、液体の外観を見ることを可能としつつ、ガラス容器内に含まれる液体の保存期間を増やすことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的に対して、本発明の1つの主題は、5mmの厚さに対して、ISO/CIE10526標準によって規定される光源CおよびISO/CIE10527標準によって規定されるCIE1931測色標準観察者を考慮に入れることによって算出される全光透過率が70%以上、且つ330〜450nmでの透過率の算術平均が100%低減した値に相当して規定されるフィルタリング能力が65%以上、特に70%以上である中空ガラス製品である。本発明の製品は、化学的組成がソーダ石灰シリカ型でありそして以下:
Fe(全鉄) 0.01〜0.15質量%
TiO 0.5〜3質量%
硫化物(S2−) 0.0010〜0.0050質量%
に規定される限定の範囲内で変わる含有量で光学的吸収剤を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明によるガラス製品は、好適には常に5mmの厚さに対して算出される次の特性:
- 70%以下、好適には65%以下、特に60%以下そして55%以下又は50%以下、あるいは45%以下若しくは40%以下そして35%以下である440nmの波長に対する透過率、
-ISO9050標準に従って算出される、20%以下、好適には15%以下、特に10以下そして5%以下の紫外線透過率、および
- 75%以上、特に80%以上、そして85%以上の光透過率
の1つ以上を有する。
【0009】
波長が440nmに近い放射線は、紫外線が原因で白ワイン、特にシャンパンのような液体にとって最も危険であることが証明された。
好適には、これらの光学的特性はガラス製品単独のものであり、それゆえに有機又は無機の被覆膜を除いてのものである。前記光学的特性は、公知の方法ではガラスの厚さに依存している。当然のことながら、本発明によるガラス製品は5mmの厚さを必ずしも有さない。一方、主要な光学的特性が5mmの等価厚に対して配慮されることが重要である。製品の厚さが5mmではない場合、実際の厚さを考慮に入れて、製品について行われた測定値からの5mmの等価厚に対するこれらの特性を算出することは容易である。
【0010】
驚いたことに、複数の光学的特性のこの組合せが、本発明の根拠である技術的問題、すなわち特定の液体、特にシャンパンの保存期間の増加、一方で前記液体の外観を見ることを可能とすることを解決することが可能であった。
【0011】
これら2つの特性(一方での高い光透過率と他方での高いフィルタリング能力)は、高い光透過率は可視域、それゆえ380〜780nmでの高い透過率を前提とするので、これまでは両立しないものと判断された。それゆえ、フィルタリング能力の高い現存する容器は非常に濃い色合い(緑色又は茶色)そしてその結果として低い光透過率を有している。
【0012】
他に指定のない限り、全ての組成は質量%で表され、そして所与の金属の酸化物の含有量は、問題になっている金属イオンの実際の酸化程度を予断することなく、この金属酸化物の全含有量に一致する。好適な最小のあるいは最大の含有量が与えられると、最小含有量と最大含有量との間の組合せから生じる任意の範囲が明確に本明細書の一部であることが理解される。
【0013】
本発明における組成物は、好適には次の限定:
- 好適には、酸化鉄含有量は0.02%以上、特に0.03%以上そして0.04%以上、又は0.05%以上あるいは0.06%以上および/又は0.14%以下、特に0.13%以下そして0.12%以下、又は0.11%以下あるいは0.10%以下、
- 酸化チタン含有量が、好適には0.6%以上、特に0.7%以上そして0.8%以上、又は0.9%以上あるいは1%以上および/又は2.5%以下、特に2.4%以下、もしくは2.3%以下そして2.2%以下あるいは2.1%以下、
- 硫化物の含有量が、好適には0.0015%以上、特に0.0020%以上および/又は0.0040%以下、又は0.0035%以下
の1つ以上を単独で又は組合せで含む。
【0014】
ガラスのレドックス状態の指標である、全鉄(Feとして表される)のモル含有量に対する酸化第一鉄(FeOとして表される)のモル含有量の比によって規定されるレドックス(酸化還元)は、好適には0.5以上、特に0.55以上そして0.6以上である。レドックスは一般に硫酸ナトリウムのような酸化剤およびコークスのような還元剤を用い、望ましいレドックスを得るために相対含有量が調整されて、制御される。
【0015】
本発明による組成物は、好適には酸化鉄と酸化チタンと硫化物イオン以外には300〜1000nmの波長に対するどんな吸収剤をも含有しない。特に、本発明による組成物は、以下の:CoO、CuO、Cr、V、MnOのような遷移金属の酸化物、CeO、La、Er、又はNd、のような希土類元素の酸化物、あるいはSe、Ag、Cuのような元素状態での他の着色剤から選択される剤を含有しない。
【0016】
本発明の限定の範囲内での前述の光学的吸収剤の使用はガラスに望ましい特性を与え、且つその光学的およびエネルギー特性を最適化することを可能する。
原則として、ガラスがいくつかの光学的吸収剤を含有するときはガラスの光学的およびエネルギー特性を予測することは困難である。これは、これらの特性がさまざまな剤間の複雑な相互作用、さらに用いられるガラス母材およびその酸化状態と関係しているその作用に起因しているからである。これがいくつかの原子価状態で存在する少なくとも2つの元素を含有する、本発明による組成物に当てはまる。
【0017】
前記の「ソーダ石灰シリカ」の表現は、本明細書では広い意味で用いられており、そして以下:
SiO 64〜75%
Al 0〜5%
0〜5%、好適には0%
CaO 5〜15%
MgO 0〜10%
NaO 10〜18%
O 0〜5%
BaO 0〜5%、好適には0%
の成分(質量%)を含有するガラス母材からなる任意のガラス組成物に関する。
【0018】
ここでは、ソーダ石灰シリカガラス組成物は、特にバッチ材料において、含有される不可避の不純物の他に、少ない割合(1%以下)の他の成分、例えばガラスの溶融又は精製を促進するための剤(SO、Cl、Sb、As)、又はバッチ混合への再生カレットの可能な添加に由来する他の成分を含み得ることを述べなければならない。
【0019】
本発明によるガラスにおいて、シリカは以下の理由により一般に限られた狭い範囲内に保たれる。75%より多いと、ガラスの粘度およびその失透への能力が大幅に増大し、溶融錫浴での溶融および流れをより困難にする。64%未満では、ガラスの加水分解抵抗が早急に低下し且つ可視域での透過率が低下する。
【0020】
アルミナAlはガラスの加水分解抵抗において特に重要な役割を果している。本発明によるガラスが液体を入れている中空体を形成することを意図されるとき、アルミナ含有量は好適には1%以上である。
【0021】
アルカリ金属酸化物であるNaOおよびKOは、ガラスの溶融を促進し且つ標準ガラスのものに近くするために高温での粘度を調整することを可能とする。KOは、これを越えると組成物の高コストの問題が起こるので、5%以下で用いられ得る。さらに、KOの割合の増加は、大部分NaOを損ねてのみ成し遂げられ得て、粘度の増大の一因になる。NaOおよびKOの%表示の含有量の合計は、好適には10質量%以上であり、そして有利には20質量%未満である。これらの含有量の合計が20質量%より多いかNaOの含有量が18質量%より多いと、加水分解抵抗が大幅に低下する。本発明によるガラスは、好適にはコストのために酸化リチウムLiOが含まれない。
【0022】
アルカリ土類金属酸化物は、ガラスの粘度を生産条件に適応させることを可能とする。
MgOは約10%で以下用いられ得て、そしてそれを省略するとNaOおよび/又はSiO含有量の増大により少なくとも部分的には補われ得る。好適には、MgO含有量は、5%未満でありそして特に有利には2%未満であり、可視域での透過率を損なうことなく赤外吸収係数の増大という効果を有する。また、低MgO含有量は、ガラスを溶融させるために必要なバッチ材料の数を低下させることを可能とする。
【0023】
BaOは、CaOおよびMgOよりもガラスの粘度への影響がずっと低く、そしてその含有量の増大は主としてアルカリ金属酸化物、MgOそして特にCaOを失って成し遂げられる。BaOのどのような増大でも低温でのガラス粘度の増大に寄与する。好適には、本発明によるガラスは、元素が高コストとなるBaOおよび酸化ストロンチウム(SrO)を含まない。
【0024】
好ましい透過特性を得るためには、各アルカリ土類金属酸化物の含有量の変動を規定した前述の限定を順守することを除けば、MgO、CaOおよびBaOの合計%を15質量%以下の値に制限することが好適である。
【0025】
本発明によるガラス組成物は、プレス成形、吹き込み成形又は他の成形技術を用いて中空体を形成することを意図するガラスのための製造条件下で溶融され得る。溶融は、一般的には、任意的に2つの電極間に電流を流すことによりバッチでのガラスを加熱するための電極が備わっている火炎−焼成炉で生じる。溶融工程を容易にするために、そして特に溶融工程を機械的に有利にするためには、本発明のガラス組成物は有利には1500℃未満であるlogη=2になるような粘度ηに相当する温度を有する。より好適には、logη=3.5になるような粘度ηに相当する温度[T(logη=3.5)で示される]および液相温度(Tliqで示される)は、式:
T(logη=3.5)−Tliq>20℃
そして、さらに良いのは:
T(logη=3.5)−Tliq>50℃
を満足する。
【0026】
光学的に吸収性の酸化物の添加は、炉内で行われる(次には、工程は「槽着色法」と呼ばれる)あるいは炉および成形装置間でガラスを移送するフィーダー内で行われ(次には、工程は「フィーダー着色法」と呼ばれる)得る。フィーダー着色法は、特別な添加/混合装置を必要とするが、特別な光学的特性および/又は色合いの拡張範囲のものを製造することが必要であるときに特に望ましい柔軟性と反応性に関しては有利である。フィーダー着色法の特別な場合には、均一化の後に本発明によるガラスを成形するために透明ガラスに加えられるガラス原料又はガラス凝塊に光学的吸収剤が入れられる。加えられる各酸化物に対して異なるガラス原料が用いられ得るが、特定の場合には全ての有用な光学的吸収剤を含有する単一の原料を有することが有利であり得る。溶融ガラス中の原料希釈の程度が10%を超えない、特に5%を超えない、そして有利には2%を超えないように、用いられる原料又は凝塊中の光学的吸収性酸化物の含有量は5〜30%であることが望ましい。これは、これを越えると、工程の低い総経済的費用を適用して高い生産高を維持しながら溶融ガラスを適切に均質化されることが困難になるからである。
【0027】
それゆえ、本発明の他の主題は、本発明による組成物を有するガラスを製造する方法であって、バッチ混合物の一部を溶融する工程、溶融ガラスを成形装置に移す工程を含み、前記工程の間、ガラス原料又はガラス凝塊を用いて前記溶融ガラスに複数種の酸化物が加えられ、光学的吸収剤の少なくとも一部がこの工程の間に組成物に供給され、且つ中空製品を得るために前記ガラスを成形する工程を含む、前記方法である。
【0028】
好適には、鉄を除いて、全ての光学的吸収剤は溶融ガラスを成形装置に移す工程の間に組成物に供給される。
【0029】
本発明の他の主題は、本発明による組成物を有するガラスを製造する方法であって、溶融炉内で前記組成物に含有される全ての酸化物を供給するバッチ混合物を溶融する工程、および成形工程を含む、前記方法である。
【0030】
中空ガラス製品を得ることを可能とする任意の工程が用いられ得る。限定されない実施例によって、当業者にとっては周知である「プレスアンドブロー」プロセスおよび「ブローアンドブロー」プロセスについて記述され得る。
【0031】
本発明による製品は、好適にはビール又はスティルあるいはスパークリング白ワイン、特にシャンパンを入れ得るあるいは入っているボトルである。
【0032】
本発明は、表1に示す限定しない典型的な実施態様の以下の詳細な記述を読めば理解される。
【0033】
これらの実施例では、実験のスペクトルから5mm厚さのガラスに対して算出された以下:
- ISO/CIE10526標準によって規定される光源CおよびISO/CIE10527標準によって規定されるCIE1931測色標準観察者を考慮に入れることによる算出が実施され、380〜780nmで算出された全光透過率(LT)、
- 330〜450nmでの透過率の算術平均が100%低減した値に相当して規定されるフィルタリング能力(FPで示される)、
- ISO9050標準に従って算出される紫外線透過率(UVT)、および
- 440nmの波長に対する透過率(T440
の光学的特性の値が示されている。
また、表1には、光学的吸収剤の質量含有量が示されている。
【0034】
表1に表示される組成物は、含有量が添加された着色剤の全含有量に適合させるためにシリカに対して補正されて、百分率で示される以下のガラス母材から製造される。
【0035】
SiO 71.0質量%
Al 1.40質量%
Fe 0.05質量%
CaO 12.0質量%
MgO 0.1質量%
NaO 13.0質量%
O 0.35質量%
【0036】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
5mmの厚さに対して、ISO/CIE10526標準によって規定される光源CおよびISO/CIE10527標準によって規定されるCIE1931測色標準観察者を考慮に入れることによって算出される全光透過率が70%以上、且つ330〜450nmでの透過率の算術平均が100%低減した値に相当して規定されるフィルタリング能力が65%以上、特に70%以上であり、ソーダ石灰シリカ型の化学組成を有する中空ガラス製品であって、以下:
Fe(全鉄) 0.01〜0.15質量%
TiO 0.5〜3質量%
硫化物(S2−) 0.0010〜0.0050質量%
に規定される限定の範囲内で変わる含有量で光学的吸収剤を含有する、前記製品。
【請求項2】
5mmの厚さに対して、450nmの波長に対する透過率が70%以下である請求項1に記載の製品。
【請求項3】
20%以下のISO9050標準に従って算出される紫外線透過率を有する請求項1又は2に記載の製品。
【請求項4】
10%以下、特に5%以下の紫外線透過率を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の製品。
【請求項5】
50%以下、特に40%以下の、440nmの波長に対する透過率を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の製品。
【請求項6】
75%以上、特に80%以上、その中でも85%以上の光透過率を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の製品。
【請求項7】
ガラスのレドックスが0.5以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の製品。
【請求項8】
酸化鉄の含有量が0.04質量%〜0.12質量%である請求項1〜7のいずれか1項に記載の製品。
【請求項9】
酸化チタンの含有量が0.8質量%〜2.2質量%である請求項1〜8のいずれか1項に記載の製品。
【請求項10】
硫化物の含有量が0.0015質量%〜0.0040質量%である請求項1〜9のいずれか1項に記載の製品。
【請求項11】
ビール又は白ワイン、特にシャンパンが入っているボトルである請求項1〜10のいずれか1項に記載の製品。

【公表番号】特表2011−523933(P2011−523933A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513035(P2011−513035)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051108
【国際公開番号】WO2009/150382
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(593099355)
【Fターム(参考)】