説明

中空体で被覆された二酸化チタンの顔料、およびその製造方法

本発明は、装飾紙における使用のための良好な歩留と同時に、良好な不透明度を有する被覆された二酸化チタンの顔料、ならびにその製造方法に関する。この顔料は、アルミニウムオキシドフォスファートと結合された中空体を含む表面被覆によって特徴付けられる。この製造方法は、まずアルミニウム成分とリン成分をTiO2の懸濁液に加え、その間pH値を10未満に低下させないことによって特徴付けられる。引き続き中空体の添加、および引き続いて少なくとも1の酸性成分の添加を行い、このことによって懸濁液のpH値を4〜9の範囲に低下させる。代替的な方法実施において、懸濁液はアルミニウム成分の、およびリン成分の添加の際、4未満のpH値を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、高い不透明度を有する二酸化チタンの顔料、その製造方法、および装飾紙、または装飾フィルムにおけるその使用に関する。
【0002】
発明の技術的背景
装飾紙、もしくは装飾フィルムは、好適には家具表面の改良、ラミネートの床、および内装仕上げにおいて使用される、装飾的な熱硬化性の被覆材料の構成部材である。ラミネートとは、例えば複数の含浸された、相互に積層された紙、もしくは紙と硬質繊維板、または木材パーティクルボードが相互にプレスされている、層状プレス材(Schichtpressstoff)を意味する。特殊な合成樹脂の使用によって、ラミネートの非常に高い引掻強度、衝撃強度、耐薬品性、および耐熱性が得られる。
【0003】
装飾紙(以下、装飾紙とは常に装飾フィルムとも理解されるべきである)の使用は、装飾的表面の製造を可能にし、その際装飾紙は例えば魅力的ではない木材材料表面のための被覆用紙としてのみではなく、合成樹脂のための担体としても役立つ。
【0004】
装飾紙に課される要求にはとりわけ、不透明度(隠蔽力)、耐光性(耐灰色化性(Vergrauungsstabilitaet)、色堅牢度、湿潤強度、含浸可能性、および印刷適性がある。
【0005】
装飾紙の製造方法の経済性は、とりわけ紙の中の顔料の不透明度により決まる。必要とされる装飾紙の不透明度を達成するためには、二酸化チタンベースの顔料が原則的に極めて適している。紙の製造の際には通常、二酸化チタン顔料、もしくは二酸化チタン顔料の懸濁液をパルプの懸濁液と混合する。使用原料である顔料とパルプの他に、一般的に助剤、例えば湿潤紙力増強剤、および場合によってはさらなる添加剤も使用される。各成分(パルプ、顔料、助剤、および添加剤、水)の相互作用が紙の形成のために相互に貢献し、かつ顔料の歩留を決定する。歩留とは、製造の際の紙の中のすべての無機物質の保持能力と理解される。
【0006】
不透明度の改善を、二酸化チタンの顔料における特殊表面処理によって達成することができることは、公知である。
【0007】
US5,942,281A、およびUS5,665,466Aには、アルミニウムオキシドフォスファートの第一の層を4〜6の酸性pH値で施与し、かつ酸化アルミニウムの第二の層を3〜10のpH範囲で、好ましくはpH約7で析出させる、表面処理が記載されている。歩留における改善は、酸化マグネシウムから成る第三の層によって達成されるので、製造された顔料はアルミニウムオキシドフォスファート、酸化アルミニウム、および酸化マグネシウムの相互に連続する層によって特徴付けられる。
【0008】
US6,962,622は、高い耐灰色化性を有する顔料(顔料タイプA)と、高められたSiO2含分と、Al23含分をフレーク状析出で有する被覆を有する顔料(顔料タイプB)から構成されている、二酸化チタン−顔料の混合物を開示している。
【0009】
US6,143,064Aには、炭酸カルシウム粒子が30〜100nmの大きさである、析出された炭酸カルシウムを用いた顔料粒子の被覆が記載されている。炭酸カルシウムで被覆された二酸化チタンは紙の中でより高い不透明度を達成する。カルシウム粒子はこの際、スペーサーの機能を担うので、顔料粒子は紙の中でより良好な分散を有する。顔料粒子間の最小距離は、ほぼ顔料粒径に相当する。
【0010】
US5,886,069A、およびUS5,650,002は、連続的な無機被覆と同様に、5〜100nmの直径を有する無機個別粒子(Einzelpartikel)から成る被覆も有する、TiO2の顔料粒子を記載している。表面被覆の順序は恣意的であり、個別粒子の形態もまた同様である。この製造は、個別粒子のコロイド状懸濁液と、TiO2のスラリーとの混合によって行われる。
【0011】
US2003 0024437A1は、表面に球状形態の粒子、例えば炭酸カルシウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコン、または酸化チタンをその場で析出させる顔料粒子を有する顔料混合物を開示している。
【0012】
本発明の課題設定、および概要
本発明の課題は、装飾紙における使用のための良好な不透明度、ならびに良好な歩留を有する、代替的な二酸化チタンの顔料の提供である。本発明の課題はさらに、このような二酸化チタンの顔料の製造方法の提供である。
【0013】
この課題は、粒子表面上にリン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、および中空体を含む層が存在する、二酸化チタン粒子を含む二酸化チタンの顔料によって解決される。
【0014】
この課題はさらに、
a)被覆されていない二酸化チタン粒子の水性懸濁液の調製
b)アルミニウム成分、およびリン成分の添加
c)中空体の添加
d)懸濁液のpH値を約4〜9の範囲の値に調整すること
という工程を含む、被覆された二酸化チタン顔料の製造方法によって解決される。
【0015】
本発明のさらなる有利な変法は、従属請求項に記載されている。
【0016】
発明の記述
ここで、および以降、「酸化物」とは、相応する含水性の酸化物、もしくは水和物と理解されるべきである。pH値、温度、質量%または体積%での濃度などに関する、以降開示されたすべての記載は、当業者に公知のその都度の測定精度の範囲にある、すべての値が含まれていると理解されるべきである。本願の範囲において「著しい量」または「著しい割合」という記載は、測定精度の範囲内で混合物の特性に影響を与える成分の最少量を意味する。
【0017】
本発明による二酸化チタンの顔料は、中空体の使用によって特徴付けられる。中空体とは、中空球体、マイクロ中空体、またはマイクロ中空球体をも含む。中空体は本発明によれば後処理の際に使用される。中空体は粒子表面に堆積され、かつ個々の顔料粒子間のスペーサーとして作用する。中空体は無機的性質、および有機的性質であってよい。中空体は好ましくは、5〜1000nmの平均直径を有する。中空体は空気の取り込みによって特徴付けられ、その際空気の取り込みは場合によっては顔料の乾燥後に初めて存在する。
【0018】
有機的な中空体は例えば、塗料における充填材として使用される。中空体は顔料粒子間のスペーサーとして作用し、かつその空気取り込みによって顔料と空気との間の好都合な屈折率差異を利用し、より高い隠蔽力につながる(「Qualitaetsverbesserung RopaqueTM Opaque Polymer zur Qualitaetsverbesserung von Lacken und Farben」 Phaenomen Farbe 2/98、 1/99)。有機中空体の製造のためには、刊行物「Hollow latex particles: synthesis and applications」 (McDonaldら、 Advances in Colloid and Interface Science 99 (2002年) 181〜213ページ)が概要を与える。無機中空球体の製造は、「Nanoengineering of Inorganic and Hybrid Hollow Spheres by Colloidal Templating」(Carusoら、Science 1998年、282巻 1111ページ)に模範的に記載されている。WO02/074431A1は、無機中空体の製造、および触媒作用もしくはフォトニクスにおけるその適用を開示している。
【0019】
本発明による方法においては、TiO2の粒子表面上にアルミニウム−リンの化合物から成る層を、中空体との混合物、および場合によっては酸化アルミニウムとの混合物で析出させる。組成は使用されるアルミニウム成分とリン成分の量に依存する。以降、この層を単純にアルミニウムオキシドフォスファート−中空球体の層と呼ぶ。
【0020】
本発明の基礎をなしている後処理法は、水性の、および好ましくは湿式で粉砕したTiO2の懸濁液から出発する(工程a)。湿式粉砕を、場合によっては分散剤の存在下で実施する。TiO2とは、被覆されていないTiO2の粒子、すなわち硫酸法(SP)、または塩素法(CP)に従って製造されるTiO2ベース体(Grundkoeper)の粒子である。CP法では、Al23として計算して0.3〜3質量%の量のアルミニウムの添加、および四塩化チタンから二酸化チタンへの酸化における気相中の2%〜15%の酸素過剰物の添加によって、およびSP法では例えばAl、Sb、Nb、またはZnを用いたドープによって、ベース体は通常安定化されている。
【0021】
好ましくは塩素法に従って製造されたTiO2の粒子を使用する。この方法を80℃未満の温度で、好ましくは55℃〜65℃で実施する。
【0022】
懸濁液は工程a)において、アルカリ性にも酸性にも調整されていることができ、好ましくは9超のpH値、または4未満のpH値を有する。
【0023】
工程b)においてアルミニウム成分とリン成分を添加する。本発明による表面処理方法に適したアルミニウム成分は、アルカリ性の、または酸性の反応性水溶性塩、例えばアルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウムなどである。この選択は限定として理解されるべきではない。アルミニウム成分は、Al23として計算して、およびTiO2の粒子に対して1.0〜5.0質量%の量で、好ましくは1.5〜4.5質量%、とりわけ2.0質量%で添加するのが望ましい。
【0024】
適切なリン成分は無機化合物、例えばアルカリリン酸塩、リン酸アンモニウム、ポリリン酸塩、リン酸などである。この選択は限定と理解されるべきではない。特に適しているのは、リン酸水素二ナトリウム、またはリン酸である。リン成分をP25として計算しTiO2の粒子に対して1.0〜5.0質量%、好ましくは1.5〜4.0質量%、とりわけ2.0〜3.0質量%の濃度で添加する。
【0025】
Al成分、およびP成分を懸濁液に任意の順序で個々に順次、または同時に添加することができる。
【0026】
引き続いた工程c)において、5〜1000nm、好ましくは400〜600nmの平均直径を有する有機、または無機中空体の添加を行う。
【0027】
有機中空球体としては例えば、Rohm&Haasの製品、Ropaque(登録商標)が考慮される。Ropaque(登録商標)とは、スチレン/アクリルのコポリマー中空球体である。他のラテックスの中空球体、もしくはポリマーの中空球体も適している。しかしながらこの列挙は発明の限定として理解されるべきではない。むしろ原則的には、必要とされる5〜1000nmの範囲の粒子直径を有し、かつ発生するpH値において安定的であるすべての有機中空体が考慮される。
【0028】
無機中空体としては、従来技術においてガラス中空球体およびセラミック中空球体が一般的に、個別的にはTiO2の中空球体も記載されている。ここで同様に、必要とされる5〜1000nmの平均粒子直径を有し、発生するpH値で安定的である限り、すべての種類の無機中空体が本発明の範囲において基本的に使用可能である。当業者は適用条件、例えば加工性、費用などの理由で適切な中空体を選択することができる。
【0029】
中空体を、被覆されていないTiO2粒子に対して1〜15質量%の量で添加する。
【0030】
さらに引き続いた工程d)において、懸濁液のpH値を、pH値を調整する成分の添加によって4〜9の範囲の値に調整する。使用されるpH値を調整する成分は、酸またはアルカリ溶液であってよい。酸としては例えば、硫酸、塩酸、リン酸、または他の適切な酸を使用することができる。さらには酸の代わりに、相応する酸性の反応性塩、例えば硫酸アルミニウムを使用することができる。さらには、酸性金属塩溶液、例えばセリウム、チタン、またはジルコンの酸性金属塩溶液を使用することも可能であり、その結果アルミニウムオキシドフォスファート−中空球体の層と一緒の析出が行われる。アルカリ溶液としては、好ましくは水酸化ナトリウム溶液を使用する。アルカリ性の反応性塩もまた適している。当業者には適切なpH値を調整する化合物は公知である。従ってこの選択は、本発明の限定として理解されるべきではない。
【0031】
その後の引き続いた工程e)において、アルミニウムオキシドフォスファート−中空球体の層上に酸化アルミニウムから成る層を、アルカリ性アルミニウム成分と酸性アルミニウム成分(例えばアルミン酸ナトリウム/硫酸アルミニウム)の並行的な添加によって、またはアルカリ性アルミニウム成分、例えばアルミン酸ナトリウムと酸、例えば硫酸または塩酸の添加によって、または酸性アルミニウム成分、例えば硫酸アルミニウムとともにアルカリ溶液、例えばNaOHの添加によって、pH値を4〜9の範囲に保つように施与することは、有利と実証されている。この際これらの成分を、pH値が常に4〜9の範囲の値に留まるように添加することができる。またはこれらの成分を、pH値が添加の間pH値範囲4〜9の中で変化するように、組み合わせて添加する。当業者にはこの方法は公知である。pH値の調整のために、例えばアルカリ溶液または酸(例えば(NaOH/H2SO4)、またはアルカリ性もしくは酸性の反応性塩溶液(例えばアルミン酸ナトリウム/硫酸アルミニウム)が適している。工程d)において調整されたpH値で処理を実施することが、特に有利と判明した。
【0032】
必要に応じて引き続き、工程f)において5〜8へのpH値調整を、例えばアルカリ溶液/酸(例えばNaOH/H2SO4もしくはHCL)、またはアルカリ性/酸性塩溶液、例えばアルミン酸ナトリウム/硫酸アルミニウムを用いて行う。
【0033】
工程d)、e)、およびf)において使用されるアルミニウム化合物の量はAl23として計算して、すでに工程b)において使用された量のAl23に算入することができる。工程b)〜f)において使用されるアルミニウム化合物の総計は、Al23として計算して被覆されていないTiO2の粒子に対して理想的には1.0〜9.0質量%、好ましくは3.5〜7.5質量%、とりわけ5.5質量%である。同様に場合によっては工程d)とe)において使用されるリン成分の量はP25として計算して、工程b)において使用されるP25に算入することができる。工程b)〜e)において使用されるリン化合物の総計はP25として計算して、被覆されていないTiO2の粒子に対して理想的には1.0〜5.0質量%、好ましくは1.5〜3.5質量%、およびとりわけ2.0〜3.0質量%である。
【0034】
Al成分、およびP成分とともに工程b)においてさらなる金属塩溶液、例えばCe、Ti、Si、Zr、またはZnの金属塩溶液を懸濁液に加えることもでき、これらの金属塩溶液を、引き続き工程d)において一緒にアルミニウムオキシドフォスファート−中空球体の層内の硫酸塩または酸化物とし、粒子表面に析出させる。さらには工程e)前、または工程e)後に、さらなる有機層を施与することが可能であり、該有機層は従来技術より公知である(例えばZn含有化合物、Ti含有化合物、Si含有化合物)。
【0035】
本発明による方法の好ましい態様においては、アルカリ性TiO2懸濁液から出発する。このために工程a)において懸濁液をまず適切なアルカリ性化合物、例えばNaOHを用いて少なくとも10のpH値に調整する。このことは湿式粉砕が行われる場合、理想的には粉砕の前に行う。
【0036】
工程b)において引き続いてアルミニウム成分とリン成分をその都度水溶液の形で懸濁液に加える。成分の添加の間、懸濁液のpH値を少なくとも10、好適には少なくとも10.5、およびとりわけ好ましくは少なくとも11に保つ。
【0037】
アルカリ性アルミニウム成分として特に適しているのは、アルミン酸ナトリウムである。添加の際にpH値を10未満に低下させるであろう、酸性の反応性化合物、例えば硫酸アルミニウムである場合、この作用を適切なアルカリ性化合物、例えばNaOHの添加によって補償することが有利であると証明された。pH値を少なくとも10に保つための適切なアルカリ性化合物、および必要な量は、当業者には周知である。
【0038】
リン成分の場合、それらの添加の際にpH値が10未満に低下したならば、この作用を適切なアルカリ性化合物、例えばNaOHの添加によって補償することが、同様に有利であると証明された。pH値を少なくとも10に保つための適切なアルカリ性化合物、および必要な量は、当業者には慣用である。
【0039】
Al成分、およびP成分を懸濁液に任意の順序でそれぞれ順次、または同時に添加することができる。
【0040】
次の工程c)において、5〜1000nm、好ましくは400〜600nmの平均直径を有する有機中空体、または無機中空体の添加を行い、この際懸濁液のpH値は10未満、好ましくは10.5未満、とりわけ11未満に低下しない。
【0041】
次の工程d)において、pH値が4〜9の範囲に調整されるように、pH値を調整する成分の添加を行う。
【0042】
本発明による方法の代替的な実施態様において、本発明による表面処理を酸性pH値の範囲から開始する。
【0043】
この際工程b)において、懸濁液のpH値が引き続き4未満の値であるように、アルミニウム成分、およびリン成分を添加する。既に工程a)において適切な酸を用いてpH値を低下させるか、工程b)において成分の適切な組み合わせによって、場合によっては酸の添加でpH値を4未満に低下させるかは、当業者に任されている。例えばリン酸/アルミン酸ナトリウム、またはリン酸水素二ナトリウム/硫酸アルミニウムの組み合わせが適している。これらの成分を懸濁液に任意の順序でそれぞれ順次、または同時に添加することができる。
【0044】
工程c)においては、酸性のpH値で安定的である中空体のみが使用される。
【0045】
工程d)においては一方、pH値を調整する成分を添加し、これによって4〜9のpH値に調整する。
【0046】
表面処理されるTiO2の顔料を当業者に公知の濾過法によって懸濁液から分離し、かつ生じたフィルターケークを溶解性の塩を分離するために洗浄する。洗浄されたフィルターペーストを、ラミネート中の顔料の耐光性の改善のために、引き続いた乾燥前、または乾燥の間に硝酸塩を含む化合物、例えばKNO3、NaNO3、Al(NO33、をNO3として計算して0.05〜0.5%の量で混合することができる。引き続いた粉砕、例えば湿式ジェットミル(Dampfmuehle)を用いた粉砕において、TiO2の顔料の製造の際に通常使用され、かつ当業者に公知であるような群から、顔料に有機化合物、例えばポリアルコール(トリメチロールプロパン)を添加することができる。
【0047】
乾燥前、または乾燥の間の硝酸塩含有化合物の添加と代替的に、そのような物質の添加を粉砕の間に行うこともできる。
【0048】
この方法に従って製造された顔料は、比較顔料に比べて改善された不透明度を示し、かつ装飾紙もしくは装飾的被覆材における使用のために、非常に適している。
【0049】
本発明による表面処理方法は、通常バッチ稼働で実施する。処理を連続的に行うこともまた可能であるが、その場合、例えば当業者に公知の適切な混合用具によって、充分な混合が保証されていなければならない。
【0050】
実施例
以下、本発明を模範的に記載するが、これによって発明の限定を意図するものではない。
【0051】
実施例
350g/lのTiO2濃度を有する、サンドミルで粉砕した塩素法からのTiO2の懸濁液を、60℃でNaOHを用いてpH値10に調整した。撹拌下、2.0質量%のAl23懸濁液を、アルミン酸ナトリウム溶液として添加した。15分の撹拌時間後、2.4質量%のP25をリン酸水素ジナトリウムの溶液として添加した。さらに15分間の撹拌時間が続いた。引き続き30%のRopaque Ultra Emulsion(ポリマー中空球体、Rohm&Haas)を、TiO2に対して2質量%の作用物質のスチレン/アクリルのコポリマー含有量に相応して添加し、さらに15分撹拌した。懸濁液を次の工程において2.6質量%のAl23に相応する硫酸アルミニウム溶液の添加によってpH値5に調整した。引き続き0.7質量%のAl23をアルミン酸ナトリウム溶液、および硫酸アルミニウム溶液の並行的な添加の形で混合し、pH値を5に保った。
【0052】
懸濁液を30分の撹拌時間後、アルカリ性アルミン酸ナトリウムの溶液を用いてpH値約5.8に調整し、濾過し、洗浄によって水溶性の塩を除去した。洗浄されたフィルターペーストを噴霧乾燥機において、NaNO3の形で0.25質量%のNO3の添加のもと乾燥させ、引き続き湿式ジェットミルで粉砕した。
【0053】
実施例の顔料の透過型電子顕微鏡写真は図1において、顔料表面上に堆積された中空体を示す。
【0054】
比較例
350g/lのTiO2濃度を有する、サンドミルで粉砕した塩素法からのTiO2の懸濁液を、60℃でNaOHを用いてpH値10に調整した。撹拌下、2.0質量%のAl23懸濁液を、アルミン酸ナトリウム溶液として添加した。15分の撹拌時間後、2.4質量%のP25をリン酸水素二ナトリウムの溶液として添加した。さらに15分間の撹拌時間が続いた。懸濁液を次の工程において、2.6質量%のAl23に相応する硫酸アルミニウム溶液の添加によってpH値5に調整した。引き続きアルミン酸ナトリウム溶液、および硫酸アルミニウム溶液の並行的な添加の形で0.8質量%のAl23を混合し、pH値を5に保った。
【0055】
懸濁液を30分の撹拌時間後、アルカリ性アルミン酸ナトリウム溶液を用いてpH値約5.8に調整し、濾過し、洗浄によって水溶性の塩を除去した。洗浄されたフィルターペーストを噴霧乾燥機において、NaNO3の形で0.25質量%のNO3の添加のもと乾燥し、引き続きジェットミルで粉砕した。
【0056】
試験方式、および試験結果
試験方式
装飾紙の光学的特性の評価、ひいては二酸化チタン顔料の品質の評価のために、同一の灰含有率の装飾紙と比較することが重要である。1枚の紙の重量が約80g/m2、灰含有率が約30g/m2の装飾紙を製造した。この手順、および使用される助剤は当業者には公知である。
【0057】
1枚の紙の二酸化チタン含有率(灰分)、ならびに顔料の歩留を引き続き測定した。
【0058】
a)灰含有率
二酸化チタン含有率の測定のために、製造された紙の定義された質量を高速灰化装置(Schnellverascher)を用いて900℃で灰化した。残渣の発生量によって、TiO2(灰分)の質量割合が質量%で得られた。灰分含有率の計算には、下記の公式を基礎においた。
灰分含有率[g/m2]=(灰分[質量%]×坪量[g/m2])/100[%]
b)歩留
歩留とは、抄紙機の網上の紙中のすべての無機物質の保持力と理解される。ここで測定されたいわゆるワンパスリテンションは、抄紙機の一度の供給工程において保持される、パーセンテージ割合を示す。懸濁液の全固体において使用された顔料の質量部に対する灰分のパーセンテージ割合が、歩留である。
歩留[%]=灰分[%]×(顔料秤量[g]+パルプ秤量[g])
顔料秤量[g]
b)光学的特性
顔料の光学的特性をラミネート中で測定した。
【0059】
このために装飾紙を、変性メラミン含浸樹脂を用いて含浸し、ラミネートにプレスした。樹脂コーティングする1枚の紙をメラミン樹脂溶液内で完全に含浸し、その後一定の樹脂塗布を保証するために、2のドクターブレード間を通過させ、その後直接的に循環空気式乾燥棚において130℃で前圧縮する(vorkondensieren)。樹脂塗布は1枚の紙の質量の120〜140%であった。該紙は約6質量%の残留水分を有していた。圧縮された該紙をフェノール樹脂で含浸されたコア用紙、および白色/黒色のアンダーレイ用紙とともにプレス成型材(Presspaket)に統合する。試験顔料の評価のために、ラミネート構造は11の層から構成された。すなわち、装飾紙、白色/黒色のアンダーレイ、コア用紙、コア用紙、コア用紙、白色のアンダーレイ、コア用紙、コア用紙、コア用紙、白色/黒色のアンダーレイ、装飾紙である。成型材のプレスはWickert Laminat−Presse タイプ2742を用いて140℃の温度下、900N/cm2の圧力下で、プレス時間300秒で行われる。
【0060】
ラミネートの光学的特性の測定を、市販の光度計を用いて行った。
【0061】
層状プレス材の光学的特性の評価のために、装飾紙の色価(CIELAB L*、−a*、−b*)をDIN6174に従ってELREPHO(登録商標)3000の色測定器を用いて白色の、および黒色のアンダーレイについて測定した。不透明度は、紙の透光性または透過性のための基準である。ラミネートの不透明度の基準として、以下のパラメータを選択した:CIELAB L*schwarz、つまり黒色のアンダーレイ用紙に関して測定したラミネートの明度、および不透明度値L[%]=(Yschwarz/Yweiss)×100であり、このLは黒色のアンダーレイ用紙に関して測定した装飾紙のY値(Yschwarz)、および白色のアンダーレイ用紙に関して測定されたY値(Yweiss)から算出される。
【0062】
試験結果
この表は、本発明による顔料(実施例)を用いて製造されたラミネート、および比較顔料(比較)を用いて製造されたラミネートに関する試験結果を示す。本発明による顔料は、比較顔料に比べて改善された不透明度を有する。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】顔料表面上に堆積された中空体を示す、顔料の透過型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタンの粒子を含む二酸化チタンの顔料であって、その際粒子表面上にリン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、および中空体を含む被覆が存在する、二酸化チタンの粒子を含む二酸化チタンの顔料。
【請求項2】
前記中空体が5〜1000nmの平均直径を有することを特徴とする、請求項1に記載の二酸化チタン顔料。
【請求項3】
被覆のアルミニウム含有率が、Al23として計算して1.0〜9.0質量%、好ましくは3.5〜7.5質量%、とりわけ約5.5質量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の二酸化チタンの顔料。
【請求項4】
被覆のリン含有率が、P25として計算して1.0〜5.0質量%、好ましくは1.5〜3.5質量%、とりわけ2.0〜3.0質量%であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の二酸化チタンの顔料。
【請求項5】
被覆された二酸化チタンの顔料粒子の製造方法であって、
a)被覆されていない二酸化チタン粒子の水性懸濁液の調製
b)アルミニウム成分、およびリン成分の添加
c)中空体を含む成分の添加
d)懸濁液のpH値を約4〜9の範囲の値に調整すること
という工程を含む、被覆された二酸化チタンの顔料粒子の製造方法。
【請求項6】
工程a)において懸濁液のpH値が少なくとも10であり、かつ
工程b)において懸濁液のpH値を少なくとも10に保つ
ことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程b)において懸濁液のpH値を4未満に調整することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記中空体が5〜1000nmの平均直径を有することを特徴とする、請求項5から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程e)において約4〜9のpH値で、さらなる酸化アルミニウム層を施与することを特徴とする、請求項5から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
添加されるアルミニウム化合物の総量が、Al23として計算して1.0〜9.0質量%、好ましくは3.7〜7.5質量%、とりわけ約5.5質量%であることを特徴とする、請求項5から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
添加されるリン化合物の総量が、P25として計算して1.0〜5.0質量%、好ましくは1.5〜3.5質量%、とりわけ2.0〜3.0質量%であることを特徴とする、請求項5から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程b)においてAl成分、およびP成分とともにさらなる金属塩溶液、例えばCe、Ti、Si、Zr、またはZnの金属塩溶液を懸濁液中に加えることを特徴とする、請求項5から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程f)において懸濁液の最終pH値を、約5〜8に調整することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
工程d)においてCe、Ti、またはZrの酸性金属塩溶液をpH値の調整のために使用することを特徴とする、請求項5から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
引き続いた工程において顔料粒子を硝酸塩で処理し、完成顔料が最大1.0質量%の硝酸塩を含むようにすることを特徴とする、請求項5から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
引き続いた工程において顔料粒子を有機物質とともに粉砕することを特徴とする、請求項5から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
被覆された二酸化チタンの顔料粒子の製造方法であって、
a)被覆されていない二酸化チタンの粒子の水性懸濁液の調製、この際懸濁液のpH値は少なくとも10である
b)アルミニウム成分、およびリン成分の添加、この際懸濁液のpH値を少なくとも10に保つ
c)中空体を含む成分の添加
d)懸濁液のpH値を約4〜9の範囲の値に調整すること
e)約4〜9のpH値での、酸化アルミニウムの層の施与
という工程を含む、被覆された二酸化チタンの顔料粒子の製造方法。
【請求項18】
請求項5から17までのいずれか1項に記載の方法に従って製造される、二酸化チタンの顔料粒子。
【請求項19】
装飾紙の製造における、請求項1、2、3、4、18のいずれか1項に記載の二酸化チタンの顔料の使用。
【請求項20】
請求項1、2、3、4、18のいずれか1項に記載の二酸化チタンの顔料を含む装飾紙。
【請求項21】
請求項1、2、3、4、18のいずれか1項に記載の二酸化チタンの顔料を含む装飾紙の、装飾的被覆材の製造のための使用。
【請求項22】
請求項20に記載の装飾紙を含む、装飾的被覆材。

【図1】
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【公表番号】特表2009−529613(P2009−529613A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558686(P2008−558686)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001997
【国際公開番号】WO2007/104465
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(592039299)クローノス インターナショナル インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】KRONOS INTERNATIONAL, INC.
【住所又は居所原語表記】Peschstrasse 5, D−51373 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】