説明

中空粒子及びその製造方法

【課題】 中空粒子の特性を向上させたり、中空粒子に新たな機能を付与したりすることのできる形状を有する中空粒子及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 外形が長軸と短軸を有し、かつ長軸を回転軸とする回転対称性をもつ、細長い形状であり、外形をなす殻の内部に外形とほぼ相似の空洞が形成されている中空粒子を作製する。この中空粒子は、第1の材料からなり、外形が長軸と短軸を有し、かつ長軸を回転軸とする回転対称性をもつ形状である核粒子を作製する工程と、第1の材料とは異なる第2の材料からなる層で核粒子の表面を被覆し、核粒子と第2の材料からなる層との複合体粒子を形成する工程と、複合体粒子から核粒子を除去し、第2の材料からなる層を殻とする中空粒子を作製する工程とで作製できる。核粒子は、結晶構造に異方性があり、1つの軸方向への結晶成長が他の軸方向への成長よりも速い材料を用いて、単結晶が成長する条件下で作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空シリカ粒子などの中空粒子及びその製造方法に関するものであり、より詳しくは、中空粒子の形状による中空粒子の特性の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、殻の内部に空洞が形成された中空粒子が注目されている。中空粒子は、空洞が存在するため、殻を構成する材料の物性とは異なる物性を示す。例えば、中空粒子の空洞内に空気が存在している場合、空気の屈折率、誘電率および密度は小さいので、中空粒子全体としての見かけの屈折率、誘電率および密度は、それぞれ、殻を構成する材料の屈折率、誘電率および密度に比べて小さくなる。これを利用して、殻がシリカからなる中空シリカ粒子は低屈折率材料として実用化されており、例えば、画像表示装置などの反射防止膜を構成する低屈折率材料として用いられている。また、中空シリカ粒子を低誘電率材料や低密度のフィラーなどとして用いることもできる。
【0003】
また、空洞内に別の材料を入れることで、様々な機能をもたせることができる。この場合、中空粒子は極めて微小な容器のように機能する。例えば、医薬品や化粧品の分野では、中空粒子内部に有効成分を内包した徐放性医薬品や徐放性化粧品の開発が行われている。また、中空粒子を、外部物質と接触すると変質して劣化してしまう物質を外界から隔離する保護材や、体内の作用箇所まで医薬品を送り届けるための運搬体(ドラッグデリバリーシステムの担体)などとして活用しようとする研究も行われている。また、製紙分野では、内部に染料やインクを内包したマイクロカプセルが、感圧紙の発色部材として用いられている。
【0004】
中空粒子は上記以外にも様々な用途に応用されることが期待されているが、光学的に透明であることが求められる用途では、中空粒子の粒子径は可視光の波長に比べて十分小さく、ナノサイズであることが求められる。また、ナノサイエンスおよびナノテクノロジーに代表される、極めて微小な材料を対象とする科学技術の発展の中で、中空粒子についてもナノサイズのものが求められている。この場合、ナノ粒子であることの特徴をより効果的に発現させるためには、ナノ粒子が互いに凝集せず、1個1個が単独で存在する、分散性のよいものであることが重要である。
【0005】
なお、本明細書では、1nm〜1μm未満、典型的には十数nm〜数百nm程度の大きさをナノサイズと呼び、ナノサイズの大きさをもつ部材を、例えばナノ粒子というように、接頭辞「ナノ」を付して呼ぶことにする。一方、1μm〜数十μm程度の大きさをミクロンサイズと呼ぶことにする。
【0006】
このような中空粒子の製造方法に関して種々の検討がなされてきており、中空シリカ粒子の製造方法に関してもいくつかの特許出願や研究報告がなされている。
【0007】
例えば、特開平6−91194号公報には、テトラメトキシシランなどの有機ケイ素化合物と発泡材とを混合霧化した後に加熱分解する際、発泡材が気泡となるのを利用して、中空シリカ粉末が得られることが記されている。また、特許第2590428号公報には、テトラエトキシシランにアルコール、水および酸触媒を加えて部分加水分解反応を行わせた後、この反応液にフタル酸ジブチルを添加して油状溶液とし、この溶液を界面活性剤を含んだアンモニア水溶液中に撹拌混合して乳化させ、上記部分加水分解反応の生成物を重合させることにより、中空多孔質シリカ粒子を製造する方法が提案されている。これらの方法は、気泡の気相−液相界面、あるいは油滴の油相−水相における反応を利用して、球形の界面にシリカを生成させる方法であり、得られるシリカ中空粒子の形状は球状となる。しかし、得られるシリカ中空粒子の粒子径は数μm〜数百μmである。
【0008】
そこで、支持体となる核粒子の表面にシリカ層を形成した後、核粒子のみを選択的に除去することによって、中空シリカ粒子を作製する方法が提案されている。この方法では核粒子を空洞の型材(template)として用いるので、ナノサイズの核粒子を用いれば、ナノサイズの空洞を有する中空シリカ粒子を作製することができる。
【0009】
例えば、後述の特許文献1には、シリカ以外の材料からなる支持体(核粒子)上に、ケイ酸アルカリ金属塩の水溶液から、シリカ粒子の核を発生させない特定の条件下で活性シリカを沈着させた後、支持体のみを溶解除去することによって、稠密シリカ殻からなる中空シリカ粒子を得る方法が開示されている。特許文献1には、ケイ酸アルカリ金属塩として、一般的なケイ酸ナトリウムなどがよく、支持体の材料として、酸処理で容易に除去できる炭酸カルシウムや炭酸バリウムなどがよいと説明されている。また、支持体の平均粒径は、20nm〜30μm程度、より好ましくは50nm〜20μm程度であるのがよいとされ、厚さが5nm程度であるシリカ層を形成した実施例が報告されている。
【0010】
また、後述の特許文献2には、緻密なシリカ殻からなり、分散性に優れた、ナノサイズのシリカ中空粒子を作製する製造方法が提案されている。この方法では、核粒子として炭酸カルシウム粒子を用い、アルコール系溶媒中においてシリコンアルコキシドを用いてシリカ層を形成する。
【0011】
図6は、特許文献2に示されている中空シリカ粒子の製造方法を示すフロー図である。この製造方法の特徴の1つは、透過型電子顕微鏡法で測定される一次粒子径が20〜200nmの炭酸カルシウム粒子を水系にて作製した後に、炭酸カルシウムのスラリーを80℃の液温で24時間撹拌し続けるなどの方法によって、静的光散乱法で測定される粒子径が20〜700nmになるまで熟成させることである。ここで、透過型電子顕微鏡法で測定される一次粒子径とは、個々の粒子の粒子径であるのに対して、静的光散乱法で測定される粒子径とは、液相中に分散している分散粒子の粒子径であり、粒子が凝集している場合には、凝集粒子全体としての粒子径である。
【0012】
特許文献2には、熟成に関して次のように説明されている。一次粒子径がナノサイズになると、粒子同士の凝集が顕著になり、熟成していない従来技術では、一次粒子径がナノサイズであっても、実際に分散している粒子は、凝集粒子全体としての粒子径がミクロンサイズの凝集粒子になる。このため、炭酸カルシウムの調製方法についての特段の限定はないが、作製直後の炭酸カルシウム粒子は、一次粒子径が20〜200nmであっても、粒子同士が水溶液中で集合し、粒子径が数μmの凝集粒子を形成しており、このままシリカ層で被覆すると、得られる中空シリカ粒子も粒子径が数μm程度の凝集粒子となる。これに対し、特許文献2の方法では、熟成によって作製直後の凝集状態が解消され、一次粒子径と分散粒子の粒子径との比較からわかるように、液相中において炭酸カルシウム粒子は単独で存在しているか、あるいは、凝集しているとしても、その個数は数個程度に抑えられている。
【0013】
特許文献2で提案されている製造方法の別の特徴は、エタノールなどのアルコール系溶媒中において、テトラエトキシシラン(TEOS)などのシリコンアルコキシドの加水分解反応を用いて上記炭酸カルシウム粒子の表面をシリカ層で被覆する際に、シリコンアルコキシドの量に対するアルコール溶媒の量、塩基性触媒であるアンモニアの量、および水の量を細かに規定していることである。特許文献2には、これによって、細孔のない、平滑で、緻密な膜状のシリカ層が形成されると説明されている。
【0014】
なお、特許文献2の出願人を出願人の一人とする後述の特許文献3では、特許文献2に提案されている製造方法の弱点として、アルコールを主体とするアルコール系溶媒を使用する必要があることを挙げ、水を主体とする水系溶媒を用いて緻密なシリカ層を形成することを提案している。しかしながら、上記公報には、特許文献2の発明で困難であった水系溶媒の使用が、どのようにして、なぜ可能になったのかという説明が全くない。また、実施例1では、コロイド状炭酸カルシウムを分散させたイオン交換水500gに、29%アンモニア水87gとTEOS32gとを添加し、24時間撹拌して、緻密なシリカ殻からなるシリカ中空粒子を得たとされている。しかし、水に不溶のTEOS32gを、アルコールを含まない合計562gの水に添加した場合、必ずTEOSと水は2相に分離してしまい、この界面でシリカが生成する。界面で生成するシリカをどのようにして水相の炭酸カルシウム粒子の表面に均一に堆積させることができたのか、説明する記述が特許文献3には全くない。このように、特許文献3に提案されている発明は、発明の根幹である実施の方法が全く示されておらず、実現の可能性は乏しいと思われる。
【0015】
また、後述の非特許文献1には、核粒子としてヘマタイト粒子を用い、TEOSを用いてヘマタイト粒子の表面をシリカ層で被覆した後、酸を用いてヘマタイト粒子を溶解除去することによって中空シリカ粒子を得る方法が示されている。
【0016】
図7は、非特許文献1に示されている中空シリカ粒子の作製工程を示すフロー図である。
【0017】
この製造方法では、まず、鉄(III)イオンFe3+の酸性水溶液を加水分解させ、ゲル状の水酸化鉄(III)Fe(OH)3を生成させる。この際、鉄(III)イオンに対して配位子として作用する塩化物イオンCl-の量と、鉄(III)イオンに対して配位子として作用しない硝酸イオンNO3-の量との比を変えることによって、粒子径を制御することができる。
【0018】
次に、撹拌しながら100℃の下で7日間還流加熱して、水酸化鉄(III)を結晶性ヘマタイト(α−Fe23)に変化させる。この後、遠心分離、水洗、乾燥の各処理を行い、粉末状のヘマタイト粒子を得る。
【0019】
次に、TEOSを用いた2つのステップによって、ヘマタイト粒子をシリカ層で被覆する。第1のステップでは、まず、上記のヘマタイト粉末を蒸留水に加え、超音波を照射して分散させる。一方、pH=4に保った酸水溶液中でTEOSを部分的に加水分解し、透明なポリケイ酸ゾル水溶液を調製する。このポリケイ酸ゾル水溶液をヘマタイト分散液に加え、ヘマタイト粒子の表面をオリゴケイ酸系化学種で被覆する。最後に、希アンモニア水を加え、ヘマタイト粒子表面に堆積したオリゴケイ酸系化学種を完全に加水分解する。
【0020】
第2のステップでは、まず、上記の工程で表面が改質されたヘマタイト粒子を遠心分離法によって分別して取り出し、エタノール中に分散させる。この分散液にTEOSを滴下した後、アンモニア水を加えてTEOSを加水分解させ、ヘマタイト粒子表面にシリカ層として堆積させる。この後、遠心分離、エタノールによる洗浄、乾燥の各処理を行い、シリカ層で被覆されたヘマタイト粒子を得る。
【0021】
次に、上記のシリカ層で被覆されたヘマタイト粒子を希塩酸中に分散させ、ヘマタイトを溶解除去して、中空シリカ粒子を作製する。この際、ある程度処理が進んだ時点で中空シリカ粒子を遠心分離によって分別し、新しい希塩酸を加えることで、上記工程を3回行い、ヘマタイト粒子を完全に除去する。
【0022】
非特許文献1では、その製造方法の特徴として、ヘマタイト粒子の粒子径を容易に制御することができ、これによって中空シリカ粒子の空洞のサイズを制御できること、および、2つのステップでシリカ層を形成することによって、シリカ層の細孔構造を制御できることが挙げられている。
【0023】
【特許文献1】特許第3419787号公報(第3、4及び6頁)
【特許文献2】特開2005−263550号公報(第4−8頁)
【特許文献3】特開2006−256921号公報(第4−7及び11頁)
【非特許文献1】J.Sol.Stat.Chem.,B180,2978-2985(2007)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
図8は、非特許文献1に示されている、透過型電子顕微鏡(TEM)による中空シリカ粒子の観察像である。この例のように、従来、核粒子として用いられてきた核粒子の形状は、球状、立方体状、菱面体状などの等方性の形状、或いは特定の異方性をもたない不定形状であり、この結果として、中空粒子の外形および内部の空洞の形状も、球状、立方体状、菱面体状などの等方性の形状、或いは特定の異方性をもたない不定形状である。
【0025】
この理由は2つあると考えられる。1つは、核粒子として好適に用いられる炭酸カルシウム微粒子やヘマタイト微粒子は、異方的な形状の粒子を作製する意図をもって特別に作製しない限り、作製される微粒子の形状は、球状、立方体状、菱面体状などの等方性の形状、或いは特定の異方性をもたない不定形状になることである。従って、これらの形状を有する中空粒子を作製するのが最も容易であり、生産性も高くなる。
【0026】
他の理由は、球や立方体などの形状が、中空粒子として最も効果的な形状であると考えられることである。例えば、中空シリカ粒子を低屈折率材料として用いる場合、内部の空洞に対して表面を占めるシリカの割合が小さいほど、中空シリカ粒子の屈折率は小さくなるので、好ましい。このためには、中空シリカ粒子の形状が、体積に対する表面積の比が小さい形状であるほど好ましい。あらゆる図形の中で、球は体積に対する表面積の比が最も小さい形であり、立方体はそれに準ずる形である。従って、中空シリカ粒子の屈折率を小さくするには、中空シリカ粒子の形状をできるだけ球や立方体などに近づけることが望ましい。また、体積に比して表面積が小さいことは、表面からの漏出の影響が小さくなるので、ドラッグデリバリーシステムの担体など、中空粒子を微小な容器として用いる場合にも有効である。
【0027】
しかしながら、本発明者が慎重に検討したところ、上述した、中空粒子として好ましい形状に関する従来の「常識」が、必ずしもあてはまらない場合があることが判明した。
【0028】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、中空粒子の特性を向上させたり、中空粒子に新たな機能を付与したりすることのできる形状を有する中空粒子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
即ち、本発明は、
外形が長軸と短軸を有し、かつ長軸を回転軸とする回転対称性をもつ形状であり、前記外形をなす殻の内部に前記外形とほぼ相似の形状の空洞が形成されている、中空粒子に係わり、また、
第1の材料からなり、外形が長軸と短軸を有し、かつ長軸を回転軸とする回転対称性 をもつ形状である核粒子を作製する工程と、
前記第1の材料とは異なる第2の材料からなる層で前記核粒子の表面を被覆し、前記 核粒子と前記第2の材料からなる層との複合体粒子を形成する工程と、
前記複合体粒子から前記核粒子を除去し、前記第2の材料からなる層を殻とする中空 粒子を作製する工程と
を有する、中空粒子の製造方法に係わるものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明の中空粒子は、外形が長軸と短軸とを有し、細長い異方的形状を有する。細長い形状は、血管などの細い流路を、大きな抵抗を受けず、自転などを起こさずに、スムーズに通過するのに都合がよく、ドラッグデリバリーシステムの担体などとして好適である。この際、長軸を回転軸とする回転対称性をもち、長軸に垂直な断面における形状が円形又は略円形で角張っていないのも、パイプ状の流路などをスムーズに流れる上で好都合である。
【0031】
また、中空粒子は、使用環境によっては、三次元のうちの特定の方向の大きさだけが制限を受ける場合がある。例えば、細い血管中を移動するドラッグデリバリーシステムの担体の例では、血管の内径によって短軸長は制限されるが、流れの方向に沿う長軸長に関する制限はそれほど厳しくはない。このような場合、本発明の異方的形状を有する中空粒子では、短軸長を一定に保ったまま長軸長を長くする、すなわち、アスペクト比の大きな形状にすることにより、中空粒子の体積、ひいては内部の空洞に納めることのできる医薬品の量を増やすことができる。これに対し、従来の、球や立方体などの等方的形状の中空粒子では、三次元のうちの1つの方向における大きさが制限されると、それはそのまま残りの方向における大きさの制限にもなり、必然的に中空粒子の体積を制限することになる。この結果、従来の、等方的形状を有する中空粒子、或いは特定の異方性をもたない不定形状の中空粒子よりも、本発明に基づく、アスペクト比の大きい中空粒子の方が、内部の空洞に納めることのできる医薬品の量が多い担体になり得る場合がある。
【0032】
また、細長い、異方的形状を有する微粒子は、密に充填すると、(筆箱の中の鉛筆のように)微粒子同士が互いに長軸を平行にして整列する性質をもつ。また、微粒子を含有させた高分子樹脂フィルムを一方向に引き伸ばすと、高分子鎖の延伸方向に長軸を配向させる性質をもつ。従って、例えば、本発明に基づく異方的形状を有する中空シリカ粒子を高分子樹脂フィルム中に含有させ、これらの中空シリカ粒子を一方向に整列させることによって、屈折率異方性を有するフィルムを作製することができる。このようなフィルムは、視野角補償フィルムなど、屈折率異方性(複屈折性)が必要とされる光学フィルム用途全般に応用が可能である。
【0033】
以上の例のように、細長い異方的形状を有する本発明の中空粒子は、使用環境や使用目的によっては、従来の、等方的形状を有する中空粒子、或いは特定の異方性をもたない不定形状の中空粒子よりも優れた性能を発揮する場合がある。また、異方性と整列性とを利用して、等方的形状を有する従来の中空粒子では作り得ない、異方性を有する新規な材料を作り出すこともできる。
【0034】
本発明の中空粒子の製造方法は、第1の材料からなり、外形が長軸と短軸を有し、かつ長軸を回転軸とする回転対称性をもつ形状である核粒子を作製する工程と、この核粒子を空洞の型材(template)として用いて中空粒子を作製するのに必要な工程を有しているので、本発明の中空粒子を確実に製造することができる。
【0035】
前記の、外形が長軸と短軸を有し、かつ長軸を回転軸とする回転対称性をもつ形状である核粒子は、結晶軸をa軸、b軸およびc軸とするとき、a=b≠cの異方性をもち、c軸方向への結晶成長が速い材料を前記第1の材料として用いて、この材料からなる単結晶微粒子が成長する条件下で作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の中空粒子において、前記外形が、おおむね、針状、両円錐形、円柱の両端に円錐を付した形、又は楕円体状であるのがよい。
【0037】
また、前記短軸長を直径とする球に比べて、より大きな体積を有するのがよい。例えば、短軸長に対する長軸長の比(アスペクト比)が2以上であるのがよい。更に、前記短軸長を直径とする球に比べて、体積に対する表面積の比が小さいのがよい。これらについては、実施の形態1で図面参照下に説明する。
【0038】
また、長軸長が100〜1000nm、短軸長が20〜400nmであるのがよい。種々の応用を考えると、本発明の中空粒子の大きさはできるだけ広い範囲をカバーできることが望ましいが、現在作製できているのは上記の範囲である。
【0039】
また、前記殻の材料がシリカであるのがよい。中空シリカ粒子は低屈折率材料として実用化されており、例えば、画像表示装置などの反射防止膜を構成する低屈折率材料として用いられる。また、中空シリカ粒子を低誘電率材料や低密度のフィラーなどとして用いることもできる。なお、本発明では、シリカは無水物および含水物を含む酸化ケイ素を意味するものとする。
【0040】
本発明の中空粒子の製造方法において、前記核粒子として、前記第1の材料が炭酸ストロンチウムである核粒子を作製するのがよい。炭酸ストロンチウム結晶は、硝酸カリウム型結晶構造を有し、c軸方向に異方性を有する。このため、炭酸ストロンチウム結晶の成長条件を適切に選択することで、針状、両円錐形、円柱の両端に円錐を付した形、又は楕円体状といった形状の微粒子を生成させることができる。また、炭酸ストロンチウムは、酸水溶液による処理によって容易に溶解除去することができ、前記核粒子として好適である。
【0041】
この他に、前記核粒子としてヘマタイト(α−Fe23)粒子などを作製するのもよい。ヘマタイト粒子は、ゲル状態の水酸化鉄(III)分散液から生成させる際に、種結晶と硫酸イオンなどを添加しておくことによって、楕円体形のヘマタイト粒子を生成させることができる(Sugimoto et al,Colloids and Surfaces A:Physicochemical and Engineering Aspects,134(1998),p.265-279)。
【0042】
前記炭酸ストロンチウム核粒子の作製方法としては、ストロンチウムイオン含有物質と炭酸イオン前駆体含有物質とを均一に溶解させた反応溶液を調製する反応溶液調製工程と、前記反応溶液に結晶成長制御剤を添加する結晶成長制御剤添加工程とを有し、前記反応溶液調製工程の後、前記結晶成長制御剤添加工程と同時か又はその後に、前記炭酸イオン前駆体から炭酸イオンを生成させ、炭酸ストロンチウム核粒子を析出させる工程を開始する作製方法がよい。この際、前記反応溶液調製工程の後に前記制御剤添加工程を行うのがよい。また、前記ストロンチウムイオン含有物質と前記炭酸イオン前駆体含有物質と前記結晶成長制御剤とを均一に混合した状態で、前記炭酸イオンの生成を開始させるのがよい。以下、この作製方法について説明する。
【0043】
本作製方法の特徴の1つは、前記結晶成長制御剤の存在下で前記炭酸ストロンチウム核粒子を生成させることにある。前記結晶成長制御剤は、前記炭酸ストロンチウム核粒子の表面を適度な結合力で被覆し、適度に結晶成長速度を抑えるとともに、適度な結晶成長を妨げない働きをする。これにより、前記炭酸ストロンチウム核粒子が過度に大型化するのを防止する。しかも、結晶成長を遅滞させすぎ、形状異方性が乏しく、結晶性の低い微粒子を生成させるということはない。この結果、結晶性がよく、針状または棒状の形状を有し、しかも長径の平均値が小さい前記炭酸ストロンチウム核粒子を得ることができる。
【0044】
この場合、結晶成長制御剤は、微粒子生成中および微粒子生成後において微粒子表面を被覆し、微粒子同士が二次凝集するのを防止する。この結果、前記炭酸ストロンチウム核粒子の結晶性がさらに向上するばかりでなく、分散性が向上する効果も得られる。このような結晶成長制御剤の機能は凝集防止剤の機能と重なることになるが、前記結晶成長制御剤は単なる凝集防止剤とは本質的に異なっている。すなわち、凝集防止剤が、単に微粒子表面を被覆し、微粒子同士が二次凝集するのを防止すればよいのに対し、前記結晶成長制御剤は、適度な結晶成長速度を維持し、高い形状異方性と結晶性を有する微粒子を生成させるために、微粒子表面を適度な結合力で被覆するものでなければならない。
【0045】
このような結晶成長制御剤として、ポリビニルピロリドン([-CH2CH(C3H5CONH)-]n)、ポリビニルアルコール([-CH2CH(OH)-]n)、ポリアクリルアミド([-CH2CH(CONH2)-]n)、6-メルカプト-1-ヘキサノール(HS(CH2)5CH2OH)、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム([N(CH2(CH2)14CH3)(CH3)3]Br)、ベタイン(N+(CH3)3CH2COO-)、及びこはく酸ジ(2-エチルヘキシル)スルホン酸ナトリウム(CH2(COOCH2CH(C2H5)CH2CH2CH2CH3)CH(COOCH2CH(C2H5)CH2CH2CH2CH3)SO3Na)からなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることができる。
【0046】
本作製方法のもう一つの特徴は、均一沈殿法を用いる点にある。上述したように、前記結晶成長制御剤の役割は、前記炭酸ストロンチウム微粒子の成長速度を適切な大きさに制御することにある。従って、前記結晶成長制御剤を添加していないときの、もとになる結晶成長速度が所望の大きさに近いと、その効果が得られやすい。均一沈殿法では、反応物質である前記炭酸イオン前駆体の濃度、反応温度、反応溶液のpH、触媒の有無とその量などによって、前記炭酸イオン前駆体から前記炭酸イオンが生成する速度を幅広く変化させることができ、これを通じて、前記結晶成長制御剤無添加時の結晶成長速度をかなりの程度に制御することができる。この結果、前記結晶成長制御剤を添加した場合、この結晶成長制御剤の効果が有効に発揮され、結晶性がよく、針状または棒状の形状を有し、長径の平均値が小さい炭酸ストロンチウム微粒子を生成させることができる。
【0047】
これに対し、ストロンチウムイオンを含む溶液と炭酸イオンを含む溶液とを急速に混合して瞬時に炭酸ストロンチウム微粒子を生成させたり、水酸化ストロンチウム溶液に炭酸ガスを吹き込んで瞬時に炭酸ストロンチウム微粒子を生成させたりする不均一沈殿法の場合には、前記結晶成長制御剤を添加していないときの、もとになる結晶成長速度を制御する手段が限られており、無添加時の結晶成長速度を効果的に制御することができない。この結果、前記結晶成長制御剤を添加した場合でも、結晶成長速度を適切に制御しきれず、結晶性がよく、針状または棒状の形状を有し、長径の平均値が小さい炭酸ストロンチウム核粒子を得ることはできない。
【0048】
前記ストロンチウムイオン含有物質として、ストロンチウム塩又は水酸化ストロンチウムを用いるのがよい。前記ストロンチウムイオン含有物質としては、溶解してストロンチウムイオンを生ずるものであればよく、適宜選択することができる。例えば、硝酸ストロンチウムSr(NO3)2や塩化ストロンチウムSrCl2などの塩、および水酸化ストロンチウムSr(OH)2を用いることができる。
【0049】
前記炭酸イオン前駆体含有物質は、原理的には、溶解して前記炭酸イオン前駆体を生ずるものであればよく、また、前記炭酸イオン前駆体は、反応によって炭酸イオンを生ずるものであればよいので、適宜選択することができる。例えば、前記炭酸イオン前駆体含有物質として尿素又は炭酸水素塩を用いることができる。
【0050】
前記炭酸イオン前駆体含有物質が尿素である場合には、尿素分子全体が前記炭酸イオン前駆体である。この際、尿素分子は下記の加水分解反応(1)
(NH2)2CO + H2O → 2NH3 + CO2・・・(1)
で分解して二酸化炭素を生成し、生じた二酸化炭素が、例えば下記の中和反応(2)
2NH3 + CO2 + H2O → 2NH4+ + CO32-・・・(2)
などによって、炭酸イオンを生成すると考えられる。このようにして生成した炭酸イオンが、ストロンチウムイオンと下記の反応(3)
Sr2+ + CO32- →SrCO3・・・(3)
によって、前記炭酸ストロンチウム微粒子を生成する。
【0051】
前記反応溶液に水酸化ナトリウムなどの強塩基を添加したり、前記ストロンチウムイオン含有物質として水酸化ストロンチウムを用いたりしている場合には、反応(1)で生成した二酸化炭素がこれらの強塩基と下記の中和反応(4)
2OH- + CO2 → H2O + CO32-・・・(4)
などによって、炭酸イオンを生成すると考えられる。
【0052】
前記炭酸イオン前駆体含有物質が炭酸水素塩である場合には、炭酸水素イオンが前記炭酸イオン前駆体であり、炭酸水素イオンは下記の熱分解反応(5)
2HCO3- → H2O + CO2 + CO32-・・・(5)
によって、炭酸イオンを生成する。ただし、前記炭酸イオン前駆体として炭酸水素イオンを用いる場合には、前記反応溶液に他の塩基類を添加することはできない。もしも塩基を加えると、下記の反応(6)
OH- + HCO3- → H2O + CO32-・・・(6)
によって直ちに炭酸イオンを生成してしまうためである。
【0053】
均一沈殿法では、前記反応溶液中に予めストロンチウムイオンと前記炭酸イオン前駆体とを均一に溶解させておき、前記反応溶液中で前記炭酸イオン前駆体から炭酸イオンを生成させ、前記反応溶液から前記炭酸ストロンチウム微粒子を析出させる。この際、上記の尿素の加水分解反応や炭酸水素イオンの熱分解反応では、前記反応溶液を100℃未満の適切な温度に制御することによって、炭酸イオンの生成速度を調節することができ、これを通じて、前記炭酸ストロンチウム微粒子の成長速度を制御することができる。
【0054】
この例のように、均一沈殿法では、反応物質である前記炭酸イオン前駆体の濃度、反応温度、反応溶液のpH、触媒の有無とその量などによって、前記炭酸イオン前駆体から前記炭酸イオンが生成する速度を幅広く変化させることができ、これを通じて、前記結晶成長制御剤無添加時の結晶成長速度をかなりの程度に制御することができる。この結果、前記結晶成長制御剤を添加した場合、この結晶成長制御剤の効果が有効に発揮され、結晶性がよく、針状または棒状の形状を有し、長径の平均値が小さい炭酸ストロンチウム微粒子を生成させることができる。
【0055】
前記炭酸イオン前駆体含有物質として尿素を用いる場合には、加水分解酵素を加えることで、反応温度を変えずに、前記尿素の加水分解反応を促進することができる。
【0056】
また、本発明の中空粒子の製造方法において、前記第2の材料をシリカとして、中空シリカ粒子を作製するのがよい。この工程では、アルコール類を主成分とするアルコール系溶媒中に前記核粒子を分散させた後、このアルコール系溶媒にシリコンアルコキシドと塩基性触媒とを加えて混合し、このとき起こる前記シリコンアルコキシドの加水分解反応によって生じるシリカ層によって前記核粒子の表面を被覆し、前記核粒子と前記シリカ層とからなる前記複合体粒子を形成するのがよい。以下、シリカ層形成工程について説明する。
【0057】
シリカ層形成工程で用いる溶媒は、アルコール類を主成分とするアルコール系溶媒であるのがよい。シリカ層形成工程で用いる溶媒は、前記シリコンアルコキシドとともに水をも溶かし込める溶媒であることが必要であるので、極性の大きな有機溶媒、例えば、アルコール類やケトン類を主成分とする溶媒であることが必要である。アルコール類は同程度の分子量のケトン類よりも蒸気圧が小さいので、安全上、ケトン類よりも好ましい。
【0058】
シリカ層形成工程では、必要に応じて前記アルコール系溶媒に水を加えるのがよい。上述したように、前記シリコンアルコキシドは、完全に加水分解するために4倍の物質量の水を必要とする。一方、前記炭酸ストロンチウム微粒子などの前記核粒子は、通常、水溶液中で作製されるので、多少の水が前記核粒子とともに前記アルコール系溶媒中にもちこまれる。この他、前記塩基性触媒としてアンモニアを用いる場合には、アンモニア水に含まれる水が前記アルコール系溶媒中にもちこまれる。このようにしてもちこまれる水によって前記加水分解反応に必要な水が確保される場合には、あえて水を加える必要はない。これらの水では不足する場合には、必要に応じて前記アルコール系溶媒に水を加えるのがよい。
【0059】
前記アルコール系溶媒における前記核粒子の粒子濃度を1.95質量%以下とするのがよい。このようにすると、前記シリカ層の形成の際に、粒子同士が凝集したり、癒着したりするのが抑えられ、分散性の良好な前記複合体粒子が得られ、ひいては分散性の良好な前記中空シリカ粒子が得られる。
【0060】
或いは、前記アルコール系溶媒中に前記核粒子を分散させる際に、凝集防止剤を添加するのがよい。そして、前記凝集防止剤の存在下で前記シリコンアルコキシドの加水分解反応を起こさせ、前記核粒子の表面をシリカ層で被覆するのがよい。このようにすると、前記シリカ層の形成の際に、粒子同士が凝集したり、癒着したりするのが抑えられ、分散性の良好な前記複合体粒子が得られ、ひいては分散性の良好な前記中空シリカ粒子が得られる。また、粒子同士の癒着を防ぐために低い粒子濃度で中空シリカ粒子の作製を行う必要がなく、粒子濃度を高く設定できるので、生産性が高くなる。前記凝集防止剤としては、非イオン性の界面活性剤、例えば、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びポリビニルアルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種を用いるのがよい。
【0061】
また、前記シリコンアルコキシドとしてテトラエトキシシランSi(OC25)4を用い、前記塩基性触媒としてアンモニアを用いるのがよい。
【0062】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図面参照下に具体的かつ詳細に説明する。
【0063】
実施の形態1
実施の形態1では、まず、請求項1〜5に対応して、後述の実施例1で得られた異方性の大きい中空シリカ粒子の形状を2種の簡単な図形で近似して、本発明の中空粒子の図形的特徴の要点を説明する。この際、短軸長を一定に保ったまま長軸長を長くする、すなわち、アスペクト比の大きな形状にすることの効果を調べる。また、従来の等方性の中空粒子の形状を、上記の短軸長と同じ大きさの直径を有する球で近似して、比較する。次に、請求項9〜24に記載した中空粒子の製造方法について、中空シリカ粒子の製造方法を例として説明する。
【0064】
<本発明の中空粒子の図形的特徴>
図1は、実施の形態1に基づく中空粒子の構造の例を示す断面図である。図は長軸を含む面で切断した断面図であり、図の横方向が長軸方向である。また、殻は厚さを無視して形状だけを実線で示した。
【0065】
図1(a)は、中空粒子が両円錐形で近似できる場合を示す。両円錐形は、2つの同等な円錐が、底面を重ねて逆向きに接合してできる形である。円錐の底面の半径をR、円錐の高さをLとすると、両円錐形の体積V、表面積S、および体積Vに対する表面積Sの比S/Vは下記の式で与えられる。
V=(2/3)πR2
S=2πRL(1+R2/L2)1/2
S/V=(3/R)(1+R2/L2)1/2
【0066】
一方、従来の等方性の中空粒子の形状は、球で近似できるものとする。図1に細点線で示した、上記の両円錐形の短軸長と同じ大きさの直径をもつ球の体積V、表面積S、および体積Vに対する表面積Sの比S/Vは下記の式で与えられる。
=(4/3)πR3
=4πR2
/V=3/R
【0067】
両者を比べて
V=V
となる条件を求めると、
L=2R
アスペクト比=2L/2R=2
S/V=(1+R2/L2)1/2(S/V)≒1.12(S/V)
が得られる。
【0068】
すなわち、両円錐形は、L<2R、アスペクト比<2である間は上記の球に比べて体積が小さいが、2R<L、アスペクト比>2になると上記の球より体積が大きくなる。これは、本発明に基づく中空粒子は、両円錐形で近似できる場合に、前述したドラッグデリバリーシステムの担体のように、短軸長が制限されている使用条件下では、アスペクト比が2以上であれば、球形で近似できる従来の中空粒子よりも、多くの医薬品などを収納できることを示している。
【0069】
この傾向はLが大きいほど顕著になり、図1(b)に示すように、中空粒子が両円錐形で近似でき、
L=4R
アスペクト比=2L/2R=4
である場合には、
V=2V
S/V=(1+R2/L2)1/2(S/V)≒1.03(S/V)
となり、球形で近似できる従来の中空粒子の2倍の収納量を実現することができる。
【0070】
しかしながら、計算式から明らかなように、Lをいくら大きくしても、両円錐形である限り、体積Vに対する表面積Sの比S/Vは球形よりも大きくなる。前述したように、中空シリカ粒子を低屈折率材料として用いる場合、内部の空洞に対して表面を占めるシリカの割合が小さいほど、中空シリカ粒子の屈折率は小さくなるので好ましく、そのためには、中空シリカ粒子の形状が、体積に対する表面積の比S/Vが小さい形状であることが望ましいことを考えると、これは残念なことである。
【0071】
図1(c)は、中空粒子が、円柱の両端に円錐を底面で接合した形で近似できる場合を示している。図4(a)に示されているように、後述の実施例1で得られた中空シリカ粒子の形状は、両円錐形よりもこの形に近い。図4(a)に示されている透過電子顕微鏡(TEM)による観察像に基づいて、
1=4R、L2=1.2R、
とおき、この中空粒子の体積V、表面積S、および体積Vに対する表面積Sの比S/Vを求めると、下記のようになる。
アスペクト比=(2L1+2L2)/2R=5.2
V=(2/3)πR21+πR22
=(2+1.8)(4/3)πR3=3.8V
S=2πRL1(1+R2/L12)1/2+2πRL2
≒(2×1.03+1.2)4πR3=3.26S
S/V≒0.86(S/V)
【0072】
この例から中央部分に円柱形の領域が存在することが、体積Vの増加と比S/Vの減少とに、極めて有効であることがわかる。この結果、この中空粒子では、体積Vに対する表面積Sの比S/Vが、上記の円錐形の短軸長と同じ大きさの直径をもつ球に比べて小さい。これは、中空粒子が円柱の両端に円錐を底面で接合した形で近似できる場合には、球で近似できる従来の中空シリカ粒子よりも、低屈折率の中空シリカ粒子を実現できることを示している。
【0073】
<中空シリカ粒子の作製方法>
図2は、実施の形態1に基づく中空シリカ粒子の作製工程を示すフロー図である。本実施の形態では、前記核粒子として炭酸ストロンチウム微粒子を用い、本出願人が特願2007−321535に提案している方法に基づいて炭酸ストロンチウム核粒子を作製する例について説明する。
【0074】
まず、一定の温度、例えば5℃に保った水とエチレングリコールとの混合溶媒に、前記ストロンチウムイオン含有物質である硝酸ストロンチウムSr(NO3)2などのストロンチウム塩と、前記炭酸イオン前駆体含有物質である尿素とを完全に溶解させた反応溶液を調製する反応溶液調製工程を行う。
【0075】
次に、一定の温度、例えば5℃に保った反応溶液にポリビニルピロリドン(PVP)などの結晶成長制御剤を添加する制御剤添加工程を行い、続いて、尿素の加水分解酵素ウレアーゼを加える工程を行う。PVPを加える制御剤添加工程は、反応溶液調製工程の前に行ってもよいし、ウレアーゼを加える工程と同時に行ってもよいが、通常は、反応溶液調製工程の後に行い、ストロンチウム塩と尿素と結晶成長制御剤とを均一に混合した状態でウレアーゼを加えるのがよい。
【0076】
ウレアーゼを加えると、前述した反応(1)によって尿素を加水分解させ、反応(2)によって炭酸イオンを生成させ、反応(3)によって炭酸ストロンチウム微粒子を析出させる工程が始まる。この工程はスターラーで攪拌しながら、例えば12時間程度行う。
【0077】
その後、スターラー攪拌を止め、反応液の温度を一定の温度、例えば5℃に保ったまま12時間静置して熟成し、針状の炭酸ストロンチウム核粒子を得る。
【0078】
表1は、特願2007−321535に示した、種々の結晶成長制御剤およびその添加量が、炭酸ストロンチウム微粒子の粒子径および分散状態に与える影響をまとめた表である。表1から、結晶成長制御剤の種類およびその添加量によって、炭酸ストロンチウム核粒子の粒子径および分散状態が変化することがわかる。なお、表1中、PVPはポリビニルピロリドンを、AOTはこはく酸ジ(2-エチルヘキシル)スルホン酸ナトリウムを、PVAはポリビニルアルコールを、PAAはポリアクリルアミドを、6M1Hは6-メルカプト-1-ヘキサノールを、CTABは臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを、それぞれ、略記したものである。
【0079】
【表1】

【0080】
また、特願2007−321535に示したように、反応温度5℃で作製した実施例7−2の炭酸ストロンチウム微粒子の長径は、平均500nmであり、ばらつきが大きいのに対し、反応温度−5℃で作製した実施例8の炭酸ストロンチウム微粒子の長径は、平均300nmであり、ばらつきが小さかった。この例のように、他の条件は同じまま、より低温でより長時間をかけて作製することより、針状の形状、大きなアスペクト比、結晶構造/単結晶性、および分散性などの優れた特性を維持したまま、粒子径を縮小することができた。
【0081】
以上に述べたように、本出願人が特願2007−321535に提案している炭酸ストロンチウム微粒子の製造方法によれば、結晶成長速度を適切に制御する結晶成長制御剤を反応溶液に添加しておくことによって、高結晶性で、凝集しにくく、配向複屈折性を有する炭酸ストロンチウム微粒子、特に、針状または棒状の炭酸ストロンチウム微粒子を効率的かつ簡便に生成させることができる。また、粒子サイズを制御することも可能で、一定の粒子サイズを有する炭酸ストロンチウム微粒子を高い割合で得ることができる。また、より低温でより長時間をかけて微粒子を作製することより、粒子サイズをさらに縮小することも可能である。
【0082】
この後、生成した炭酸ストロンチウム核粒子をろ別し、蒸留水によって洗浄した後、取り出してエタノールなどのアルコール中に加え、撹拌して、均一に分散させる。このとき、前記凝集防止剤であるポリビニルピロリドン(PVP)などと、必要に応じて水とを添加してもよい。
【0083】
次に、テトラエトキシシランSi(OC25)4(TEOS)などの前記シリコンアルコキシドと、アンモニアなどの前記塩基性触媒とを上記分散液に加えて混合し、TEOSの加水分解反応によって生じるシリカによって、炭酸ストロンチウム核粒子の表面を被覆する。この後、エタノールによる洗浄処理を行い、炭酸ストロンチウム核粒子とその表面を被覆するシリカ層からなる前記複合体粒子を得る。
【0084】
次に、上記の複合体粒子を希塩酸中に分散させ、炭酸ストロンチウム核粒子を溶解させて除去する。この後、蒸留水によって洗浄し、シリカ殻からなる中空シリカ粒子を得る。
【0085】
実施の形態2
図3は、本発明に基づく中空シリカ粒子を用いた、画像表示装置の反射防止膜を模式的に示す断面図である。これは、請求項7および8に対応して、本発明に基づく中空シリカ粒子を低屈折率層3を構成する低屈折率材料として用いた例である。ここでいう画像表示装置とは、出射光または反射光の光量を制御することによって、文字や図や写真などのデータを画像として表示する装置のことであり、具体的には、液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示装置(PDP)、エレクトロルミネッセンス表示装置(ELD)、陰極管表示装置(CRT)などの様々な表示装置がある。
【0086】
これらの表示装置の、ユーザー側の前面には、通常、データを表示する光以外の光が表示画面で反射され、ユーザーの目に届くのを防止するための反射防止膜4や、表示画面を構成する基材11の表面に傷がつくのを防止するハードコート層1が設けられている。例えば液晶表示装置の場合、液晶セルのユーザー側前面には偏光板が設けられており、この偏光板は、偏光材料からなる偏光基材と、この偏光基材を挟んで保護する2枚のベース基板で構成されており、ユーザー側のベース基板が基材11に相当する。
【0087】
反射防止膜4は、特開昭59−50401号公報などに示されている反射防止膜で、基材11よりも小さい屈折率を有する低屈折率層3と、基材11および低屈折率層3よりも大きい屈折率を有する高屈折率層2とで構成されている。上記公報には、ポリメチルメタクリレート樹脂(屈折率 1.49)からなる基材に、屈折率1.76、厚さ43nmの高屈折率層と、屈折率1.43、厚さ92nmの低屈折率層を設けた例が示されている。
【0088】
このような反射防止膜4を、トリアセチルセルロース樹脂(屈折率 1.49)またはポリエチレンテレフタラート樹脂(屈折率 1.56)などからなる基材11に設ける場合、高屈折率層2と低屈折率層3との屈折率差が大きいほど、低反射率化が達成されるので、低屈折率層3の材料として屈折率が1.20〜1.45である材料が好ましく、本発明の光学材料を好ましく用いることができる。
【0089】
低屈折率層3は、実施の形態1で説明した作製方法によって得られた中空シリカ粒子を有機高分子マトリクス中に含有させたものである。低屈折率層3を形成するには、まず、中空シリカ粒子を水に分散させた分散液から遠心分離により中空シリカ粒子を沈降させた後、上澄み液を捨て、所定の有機溶媒を加えることによって、中空シリカ粒子を有機溶媒に分散させる。次に、この分散液と、有機高分子マトリクスを形成する樹脂原料とを混合する。次に、混合液を基材上に塗布した後、有機溶媒を蒸発させる。この後、樹脂原料を重合させ、低屈折率層3を形成する。
【0090】
上記有機溶媒としては、エタノールやイソプロピルアルコール(2−プロパノール)などのアルコール類、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどのケトン類などが挙げられる。有機高分子マトリクスを形成する樹脂としては、例えばアクリル樹脂が挙げられる。この場合、塗布膜形成後、紫外線を照射して樹脂原料を重合硬化させ、低屈折率層3を形成する。低屈折率層3の屈折率は、中空シリカ粒子と有機高分子マトリクス樹脂原料との配合比によって決まる。
【0091】
中空シリカ粒子を有機高分子マトリクス中に含有させた低屈折率層3は、中空粒子の三次元方向の大きさのうち、特定の方向の大きさだけが使用環境によって制限される例の1つである。以下、この点について説明する。
【0092】
低屈折率層3の厚さ方向における中空シリカ粒子の粒子径が小さいうちは、厚さ方向における中空シリカ粒子の高さの変化は有機高分子樹脂によって埋め合わせされるので、低屈折率層3の表面は平滑性を保つことができる。しかし、厚さ方向における中空シリカ粒子の粒子径が大きくなり過ぎると、中空シリカ粒子の高さの変化を有機高分子樹脂によって埋めきれなくなり、中空シリカ粒子の高さが高い位置では低屈折率層3の表面が盛り上がるのに対し、中空シリカ粒子の高さが低い位置や中空シリカ粒子が存在しない位置では表面がへこみ、低屈折率層3の表面に凹凸が生じる。低屈折率層3では良好な光学特性を実現するために表面が平滑であることが必須であるので、厚さ方向の中空シリカ粒子の粒子径は、例えば50nm程度に制限される。
【0093】
一方、基板面に平行な方向における粒子径は、低屈折率層3の表面の凹凸の高低差には関係しない。従って、この方向における粒子径に関する制限はそれほど厳しくはなく、可視光の波長に比べて十分小さければよい。むしろ、比較的大きな粒子を少数導入する方が、小さな粒子を多数導入するよりも、表面における凹凸の数密度が低下して、傾きがなだらかになるので好ましい。
【0094】
本発明の異方的形状を有する中空粒子は、長軸を基板面に平行な方向に配向させ、短軸長を厚さ方向における粒子径とすることで、上記の中空シリカ粒子として好適に用いられる。この際、短軸長を一定に保ったまま長軸長を長くする、すなわち、アスペクト比の大きな形状にすることにより、体積Vに対する表面積Sの比S/Vを減少させ、低屈折率の中空シリカ粒子として用いることができる。特に、図4(c)を用いて説明したように、中空粒子が円柱の両端に円錐を底面で接合した形で近似できる場合には、球で近似できる従来の中空シリカ粒子よりも、低屈折率の中空シリカ粒子を実現することができる。また、長軸長を長くすることで、長軸方向における表面の凹凸の数密度が低下して、傾きがなだらかになるので好ましい。
【0095】
これに対し、球や立方体などの等方的形状の中空粒子では、厚さ方向における粒子径が制限されると、それはそのまま残りの方向における大きさの制限にもなり、必然的に中空粒子の体積Vに対する表面積Sの比S/Vを制限することになる。この結果、低屈折率の中空シリカ粒子を実現することが難しくなる。すなわち、低屈折率層3の表面の平滑性を保とうとする要求と、低屈折率層3の低屈折率化の要求とが二律背反の関係に陥り、解決が困難である。
【実施例】
【0096】
本実施例では、実施の形態1で説明した方法によって中空シリカ粒子を作製した例について、より具体的に説明する。
【0097】
実施例1
<針状炭酸ストロンチウム核粒子の作製>
5℃に保った水75gとエチレングリコール15gとの混合溶媒に、硝酸ストロンチウム3.075gと尿素16.3gとを完全に溶解させた。次に、溶液の温度を5℃に保ったまま、PVP0.615gとウレアーゼ0.3gを加え、スターラーで攪拌しながら12時間反応させ、炭酸ストロンチウム微粒子を生成させた。その後、スターラー攪拌を止め、反応液の温度を5℃に保ったまま12時間静置熟成した。この後、生成した炭酸ストロンチウム微粒子をろ別し、蒸留水によって洗浄した後、取り出してエタノール液中に保存した。透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察したところ、このようにして得られた炭酸ストロンチウム核粒子は分散性に優れた針状微粒子であり、一次粒子径は、長軸長が200〜700nmで、短軸長が20〜60nmであった
【0098】
<シリカ層の形成>
次に、上記の炭酸ストロンチウム核粒子0.33gをエタノール16.5g中に加え、超音波を照射しながら撹拌して、均一に分散させた。続いて、この分散液にテトラエトキシシラン0.085gと29質量%アンモニア水1.00gとを加え、超音波を照射しながら撹拌し、均一に混合した。その後、24時間スターラーによる撹拌を続け、テトラエトキシシランの加水分解反応によって生じるシリカによって、炭酸ストロンチウム核粒子の表面を被覆した。この場合、エタノール分散液における炭酸ストロンチウム核粒子の粒子濃度は1.95質量%であった。
【0099】
<炭酸ストロンチウム核粒子の溶解除去>
その後、シリカ層で被覆された炭酸ストロンチウム核粒子をイオン交換水で洗浄してから、1M塩酸16.6mL中に投入し、1時間超音波を照射しながら撹拌を続け、炭酸ストロンチウム核粒子を溶解させ除去した。続いて、イオン交換水により洗浄し、針状中空シリカ粒子を得た。
【0100】
図4(a)は、得られた中空シリカ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察した観察像である。TEMとしてJEOL JEM-200CX(日本電子社製)を用いた。この観察像から、得られた中空シリカ粒子は分散性に優れた針状中空シリカ粒子であり、一次粒子径は、長軸長が200〜700nmで、短軸長が20〜60nmであり、シリカ殻の厚さは約10〜20nmであった。
【0101】
図4(b)は、得られた中空シリカ粒子をエネルギー分散型X線マイクロアナライザー(XMA)で化学分析した結果を示すグラフである。XMA装置としてEDAX DX4iを備えたXL30FEG(Philips社製)を用いた。この結果から、シリコン原子と酸素原子のみが検出され、高純度のシリカ粒子であることが確認された。
【0102】
例1
シリカ層形成の際に用いる溶媒であるエタノールの量を実施例1の場合の1/3(5.5g)に変更した。これ以外は実施例1と同様にして、中空シリカ粒子を作製した。この場合、シリカ層形成の際のエタノール分散液における炭酸ストロンチウム核粒子の粒子濃度は5.67質量%であった。
【0103】
得られた中空シリカ粒子を、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察およびXMA測定によって評価した。図5(a)は、中空シリカ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)による観察像である。XMA測定によれば、含まれる元素としてケイ素及び酸素のみが検出され、高純度のシリカであることが判明した。しかしながら、図5(a)に示されているように、中空シリカ粒子同士は凝集しており、分散性が悪くなることがあった。
【0104】
これは、炭酸ストロンチウム核粒子の粒子濃度が実施例1に比べて高く、核粒子同士が比較的近い距離にある状態で核粒子を被覆するシリカ層が形成されるために、堆積したシリカによって粒子同士が癒着し、結果的に、得られる中空シリカ粒子も粒子径がミクロンサイズの凝集粒子になってしまうものと考えられる。
【0105】
例えば、このような凝集した中空シリカ粒子を低屈折率材料として用いて反射防止膜を形成した場合、膜表面の平坦性が損なわれ、所望の性能を得ることができない。また、本発明に基づく中空シリカ粒子の特徴である形状の異方性も、利用することができなくなる。したがって、このような粒子同士の癒着を防ぐためには、実施例1程度の粒子濃度でシリカ層の形成を行う必要がある。
【0106】
例2
シリカ層形成の際に用いる溶媒として、エタノールの代わりに同質量の水を用いた。これ以外は実施例1と同様にして、中空シリカ粒子を作製した。
【0107】
得られた中空シリカ粒子を、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察およびXMA測定によって評価した。図5(b)は、中空シリカ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)による観察像である。XMA測定によれば、含まれる元素としてケイ素及び酸素のみが検出され、高純度のシリカであることが判明した。しかしながら、図5(b)に示されているように、中空シリカ粒子同士は凝集しており、分散性が悪くなることがあった。これから、シリコンアルコキシドを用いてシリカ層を形成する場合には、溶媒として水よりもアルコール系溶媒の方が好ましいことがわかる。
【0108】
以上、本発明を実施の形態および実施例に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の中空シリカ粒子の製造方法は、低屈折率材料や低誘電率材料として有用な高分散中空シリカ粒子を生産性よく製造することができ、中空シリカ粒子を用いた、画像表示装置の反射防止膜などの普及に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施の形態1に基づく中空粒子の例を示す断面図である。
【図2】同、中空シリカ粒子の作製工程を示すフロー図である。
【図3】本発明の実施の形態2に基づく、画像表示装置の反射防止膜を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の実施例1で得られた中空シリカ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)観察像(a)、および、中空シリカ粒子をX線マイクロアナライザー(XMA)で化学分析した結果を示すグラフ(b)である。
【図5】本発明の例1で得られた中空シリカ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)観察像である。
【図6】特許文献2に提案されている中空シリカ粒子の作製工程を示すフロー図である。
【図7】非特許文献1に示されている中空シリカ粒子の作製工程を示すフロー図である。
【図8】非特許文献1に示されている中空シリカ粒子の、透過型電子顕微鏡(TEM)観察像である。
【符号の説明】
【0111】
1…ハードコート層、2…高屈折率層、3…低屈折率層、4…反射防止膜4、11…基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形が長軸と短軸を有し、かつ長軸を回転軸とする回転対称性をもつ形状であり、前記外形をなす殻の内部に前記外形とほぼ相似の形状の空洞が形成されている、中空粒子。
【請求項2】
前記外形が、おおむね、針状、両円錐形、円柱の両端に円錐を付した形、又は楕円体状である、請求項1に記載した中空粒子。
【請求項3】
前記短軸長を直径とする球に比べて、より大きな体積を有する、請求項1に記載した中空粒子。
【請求項4】
短軸長に対する長軸長の比(アスペクト比)が2以上である、請求項3に記載した中空粒子。
【請求項5】
前記短軸長を直径とする球に比べて、体積に対する表面積の比が小さい、請求項3に記載した中空粒子。
【請求項6】
長軸長が100〜1000nm、短軸長が20〜400nmである、請求項1に記載した中空粒子。
【請求項7】
前記殻の材料がシリカである、請求項1に記載した中空粒子。
【請求項8】
反射防止膜の低屈折率層を構成する低屈折率材料として用いられる、請求項7に記載した中空粒子。
【請求項9】
第1の材料からなり、外形が長軸と短軸を有し、かつ長軸を回転軸とする回転対称 性をもつ形状である核粒子を作製する工程と、
前記第1の材料とは異なる第2の材料からなる層で前記核粒子の表面を被覆し、前 記核粒子と前記第2の材料からなる層との複合体粒子を形成する工程と、
前記複合体粒子から前記核粒子を除去し、前記第2の材料からなる層を殻とする中 空粒子を作製する工程と
を有する、中空粒子の製造方法。
【請求項10】
前記第1の材料が炭酸ストロンチウムである前記核粒子を作製する、請求項9に記載した中空粒子の製造方法。
【請求項11】
ストロンチウムイオン含有物質と炭酸イオン前駆体含有物質とを均一に溶解させた反応溶液を調製する反応溶液調製工程と、前記反応溶液に結晶成長制御剤を添加する結晶成長制御剤添加工程とを有し、前記反応溶液調製工程の後、前記結晶成長制御剤添加工程と同時か又はその後に、前記炭酸イオン前駆体から炭酸イオンを生成させ、炭酸ストロンチウム核粒子を析出させる工程を開始する、請求項10に記載した中空粒子の製造方法。
【請求項12】
前記結晶成長制御剤として、炭酸ストロンチウム微粒子表面を適度な結合力で被覆し、過度な結晶成長を抑制するとともに、適度な結晶成長を妨げない物質を用いる、請求項11に記載した炭酸ストロンチウム微粒子の製造方法。
【請求項13】
前記結晶成長制御剤として、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、6-メルカプト-1-ヘキサノール、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ベタイン(N+(CH3)3CH2COO-)、及びこはく酸ジ(2-エチルヘキシル)スルホン酸ナトリウム(CH2(COOCH2CH(C2H5)CH2CH2CH2CH3)CH(COOCH2CH(C2H5)CH2CH2CH2CH3)SO3Na)からなる群から選ばれた少なくとも1種を用いる、請求項12に記載した炭酸ストロンチウム微粒子の製造方法。
【請求項14】
前記ストロンチウムイオン含有物質として、ストロンチウム塩又は水酸化ストロンチウムを用いる、請求項9に記載した炭酸ストロンチウム微粒子の製造方法。
【請求項15】
前記炭酸イオン前駆体含有物質として尿素又は炭酸水素塩を用いる、請求項9に記載した炭酸ストロンチウム微粒子の製造方法。
【請求項16】
尿素の加水分解酵素を加えて前記尿素の加水分解反応を促進する、請求項15に記載した炭酸ストロンチウム微粒子の製造方法。
【請求項17】
前記第2の材料をシリカとして、中空シリカ粒子を作製する、請求項9に記載した中空粒子の製造方法。
【請求項18】
アルコール類を主成分とするアルコール系溶媒中に前記核粒子を分散させた後、前記アルコール系溶媒にシリコンアルコキシドと塩基性触媒とを加えて混合し、このとき起こる前記シリコンアルコキシドの加水分解反応によって、前記第2の材料からなる層であるシリカ層で前記核粒子の表面を被覆し、前記核粒子と前記シリカ層とからなる前記複合体粒子を形成する、請求項17に記載した中空粒子の製造方法。
【請求項19】
必要に応じて前記アルコール系溶媒に水を加える、請求項18に記載した中空粒子の製造方法。
【請求項20】
前記アルコール系溶媒における前記核粒子の粒子濃度を1.95質量%以下とする、請求項18に記載した中空粒子の製造方法。
【請求項21】
前記アルコール系溶媒中に凝集防止剤を添加する、請求項18に記載した中空粒子の製造方法。
【請求項22】
前記凝集防止剤として非イオン性の界面活性剤を用いる、請求項21に記載した中空粒子の製造方法。
【請求項23】
前記非イオン性界面活性剤として、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びポリビニルアルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種を用いる、請求項22に記載した中空粒子の製造方法。
【請求項24】
前記シリコンアルコキシドとしてテトラエトキシシランSi(OC25)4を用い、前記塩基性触媒としてアンモニアを用いる、請求項18に記載した中空粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−37137(P2010−37137A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201368(P2008−201368)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】