中空糸膜モジュール、中空糸膜モジュールの製造方法、浄水器用カートリッジおよび浄水器
【課題】中空糸膜束を包むシートを容易に取り除くことで、低水圧でのろ過流量低下対策として疎水性中空糸膜をモジュールに入れた場合にも十分な親水性中空糸膜の膜面積を維持し、よりろ過能力の高い中空糸膜モジュールおよび中空糸膜モジュールを搭載した浄水器用カートリッジを提供すること。
【解決手段】
中空糸膜束をU字状に筒状ケースに充填し、ポッティング材で前記中空糸膜束の開口端部を前記筒状ケースの開口部に固定した中空糸膜モジュールであって、前記中空糸膜束は親水性中空糸膜に疎水性中空糸膜を混在させたものであり、前記中空糸膜束が非拘束状態で配置され、前記モジュールの前記筒状ケース端面において前記中空糸膜束の最外周の中空糸膜がすべて前記親水性中空糸膜であることを特徴とする中空糸膜モジュール。
【解決手段】
中空糸膜束をU字状に筒状ケースに充填し、ポッティング材で前記中空糸膜束の開口端部を前記筒状ケースの開口部に固定した中空糸膜モジュールであって、前記中空糸膜束は親水性中空糸膜に疎水性中空糸膜を混在させたものであり、前記中空糸膜束が非拘束状態で配置され、前記モジュールの前記筒状ケース端面において前記中空糸膜束の最外周の中空糸膜がすべて前記親水性中空糸膜であることを特徴とする中空糸膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸膜モジュール、中空糸膜モジュールの製造方法、浄水器用カートリッジおよび浄水器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浄水器のカ−トリッジは、活性炭やイオン交換体などの粒状、繊維状、球状の吸着剤と中空糸膜を充填したモジュールから成るものが多く知られている。中空糸膜の素材としては、ポリエチレン、ポリスルホンなどが知られるが、これらのポリマーはいずれも疎水性であり、このままの状態ではほとんど水を通さない。浄水器用途として膜を使用する場合には、親水化処理が必要となる。親水化処理には、製膜後にアルコールなどの溶媒により親水化する方法や、製膜原液とともに、親水性高分子を含む注入液を2重環状の口金から吐出し、親水性を付与する方法などがある。このような親水化処理を施すことにより、透水性を高めているのである。
【0003】
しかしながら、一方で、親水性中空糸膜のみからなるモジュールを使用すると、逆に空気の透過性が低下することになる。すなわち、親水性中空糸膜のみからなるモジュールを有する浄水器の場合、何らかの理由で浄水器の水道水入口側からモジュールに空気が混入すると、特に低水圧(例えば0.1MPa以下)では、混入した空気が親水性中空糸膜を通過しにくい。モジュールの上流側に空気が滞留して抵抗となり、水の透過が阻止され、ろ過流量が低下する場合があった。
【0004】
このような問題を解決するために、特許文献1には、膜のすべてを親水化させるのではなく、膜の一部を疎水性のまま保つことにより、モジュール上流側の空気を排出する方法が開示されている。しかしながら、本方法ではアルコールなどの溶媒を大量に消費するため、換気対策や廃液処理対策が必要となって、設備費用がかかる問題点があった。
【0005】
また、特許文献2には、親水性中空糸膜からなるモジュールの一部に疎水性中空糸膜を混ぜることにより、モジュール内に溜まった空気を系外へ排出する方法が開示されている。しかしながら、親水性中空糸膜と疎水性中空糸膜をどのように混在させ、どのようにモジュール化するのかといった製造方法に関しては全く開示されていない。
【0006】
モジュールを製造する方法としては、U字状の形とした中空糸膜束が拡がらないよう拘束するようにシートで覆い、筒状のケース内に装填する方法がある。しかしながら、本発明者らの知見によれば、図1のようにモジュール内にシートを含むと、中空糸膜束がシートで拘束されることによって密集し、モジュール中の水の流れが悪くなる傾向にあり、中空糸膜が有効利用されず、濁りろ過能力低下の原因となる。本発明者らの知見によれば、図2のようにモジュール製造途中で中空糸膜束を覆うシートを取り除いて中空糸膜束を非拘束状態にすることが好ましく、図3のように筒状ケース内に装填された中空糸膜束開口部を把持しながらシートを取り除く、特許文献3のような製造方法が中空糸膜モジュールの高性能化を目指す観点から好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−28852号公報
【特許文献2】特許第2720364号公報
【特許文献3】特許第3239693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、中空糸膜束が親水性中空糸膜と疎水性中空糸膜を混在させてなる場合、図4のように疎水性中空糸膜が中空糸膜束の外側に配される時がある。この場合、本発明者らの知見によれば、シートを取り除く上記のような従来技術では、疎水性中空糸膜が親水性中空糸膜と比較し、剛性が強く、中空糸膜束をU字状とした後に疎水性中空糸膜のみにストレート状に復元しようとする力が働くことで、中空糸膜束の開口端部で疎水性中空糸膜のみが把持部から外れる場合がある。また、疎水性中空糸膜とシートとの摩擦が親水性中空糸膜と比べて大きくなることから、図5に示すようにシートを取り除くと共に疎水性中空糸膜のみ筒状ケース外に浮き上がってしまう問題点があった。
【0009】
本発明は、中空糸膜束を包むシートを容易に取り除くことができ、中空糸膜束を非拘束の状態で密集させないことから、水の通りがよくなり、中空糸膜の揺れや中空糸膜同士の擦れなどにより中空糸膜表面の汚れが落ちやすくなることでろ過能力が高く、かつモジュール上流側に滞留する空気を系外に排出することが可能な中空糸膜モジュールおよび中空糸膜モジュールを搭載した浄水器用カートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決するため、本発明は次の(1)〜(8)で構成される。
(1)中空糸膜束をU字状に筒状ケースに充填し、ポッティング材で前記中空糸膜束の開口端部を前記筒状ケースの開口部に固定した中空糸膜モジュールであって、前記中空糸膜束は親水性中空糸膜に疎水性中空糸膜を混在させたものであり、前記中空糸膜束が非拘束状態で前記筒状ケースに収納され、前記筒状ケースの端面において前記中空糸膜束の最外周の中空糸膜がすべて前記親水性中空糸膜であることを特徴とする中空糸膜モジュール。
(2)前記筒状ケースの内半径をrとしたときに、前記疎水性中空糸膜の端部の位置が前記筒状ケースの端面における前記筒状ケースの円の中心から半径0.9rで描かれる円周領域内に配置されることを特徴とする(1)に記載の中空糸膜モジュール。
(3)中空糸膜束をU字状に筒状ケースに充填し、ポッティング材で前記中空糸膜束の開口端部を前記筒状ケースの開口部に固定した中空糸膜モジュールであって、前記中空糸膜束は親水性中空糸膜に疎水性中空糸膜を混在させたものであり、前記中空糸膜束が非拘束状態で前記筒状ケースに収納され、前記中空糸膜モジュールの側面において前記疎水性中空糸膜が前記中空糸膜束の最外周に位置している部分の長さが前記筒状ケースの長さの25%以下であることを特徴とする中空糸膜モジュール。
(4)前記疎水性中空糸膜の膜面積の割合が前記親水性中空糸膜に対して、0.05〜5%であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
(5)中空糸膜束をU字状にした後、前記中空糸膜束をシートで全周覆い、前記シートに包んだ状態で筒状ケースに充填後、ポッティング材で前記中空糸膜束の開口端部を前記筒状ケースの開口部に固定する中空糸膜モジュールの製造方法であって、前記中空糸膜束として親水性中空糸膜と疎水性中空糸膜から成るものを用い、前記疎水性中空糸膜を前記親水性中空糸膜内側に包み込み、中空糸膜束とした後U字状にし、前記筒状ケースに前記中空糸膜束を充填後に、前記シートを取り除くことを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法。
(6)(1)〜(4)のいずれかに記載の中空糸膜モジュールを搭載した浄水器用カートリッジ。
(7)(1)〜(4)のいずれかに記載の中空糸膜モジュールを搭載した浄水器。
(8)(6)に記載の浄水器用カートリッジを装着した浄水器。
【0011】
本発明において、「中空糸膜束の開口端部」とは、中空糸膜が開口している方の端部をいう。
【0012】
本発明において、「筒状ケースの内半径r」を、以下の2つの場合に分けて定義する。
a)中空糸膜束胴体部における筒状ケースの内径が筒状ケース端面の内径より大きい、あるいは等しい場合には、筒状ケース端面の内半径をrとし、b)中空糸膜束胴体部における筒状ケースの内径が筒状ケース端面の内径より小さい場合には、中空糸膜束胴体部における筒状ケースの内半径をrとする。ここで、中空糸膜束胴体部とは、U字状とした中空糸膜束のストレート状部分を指し、中空糸膜束胴体部における筒状ケースの内径とはU字状とした中空糸膜束のストレート状部分における筒状ケースの最も小さい内径を指す。
【0013】
図を用いて詳細を説明する。a)図2、図6に示すような、中空糸膜束胴体部における筒状ケースの内径が筒状ケース端面の内径より大きい、あるいは等しい場合は、ケース端面の内半径を筒状ケースの内半径rとし、b)図7に示すような、中空糸膜束胴体部における筒状ケースの内径が筒状ケース端面の内径より小さい場合には、図7の内径9を筒状ケースの内半径rとする。内径9を図8に示す端面に投影したものを円周8とすると、円周8の半径がrである。
【0014】
本発明において、「前記筒状ケースの内半径をrとしたときに、前記疎水性中空糸膜の端部の位置が前記筒状ケースの端面における前記筒状ケースの円の中心から半径0.9rで描かれる円周領域内に配置される」とは、筒状ケースの内半径をrとした時に、半径0.9rで描いた円周領域内に疎水性中空糸膜の全ての端部が存在することをいう。
【0015】
図を用いて詳細を説明する。a)中空糸膜束胴体部における筒状ケースの内径が筒状ケース端面の内径が大きい、あるいは等しい場合には、図9に示すように、半径0.9rで描かれる円周領域に配置される中空糸膜とは、円周領域7内にある中空糸膜のことをいい、また、b)中空糸膜束胴体部における筒状ケースの内径が筒状ケース端面の内径より小さい場合には、図8に示すように、半径rで描かれる領域が、筒状ケース端面内径より内側に配置される円周領域8となるので、半径0.9rで描かれる円周領域はさらにその内側の円周領域7となる。
【0016】
本発明において、「筒状ケースの端面において中空糸膜束の最外周の中空糸膜」とは、筒状ケースの端面において、筒状ケースの内周領域に存在する任意の中空糸膜の中心をそれぞれお互いに直線で結んだとき、筒状ケースの中心から最も外側となる直線を構成する中空糸膜のことをいう。
【0017】
図10に中空糸膜モジュール端面拡大図を示し、詳細を説明する。ここでは、説明を簡単にするため、「筒状ケースの端面において、筒状ケースの内周領域に存在する任意の中空糸膜」のうち、「筒状ケースの端面において、筒状ケースの円の中心から所定の半径で描かれる円周領域外に存在する任意の中空糸膜」を取り出して説明する。図10において、筒状ケースの円の中心から所定の半径で描かれる円周領域外の中空糸膜はa〜tの20個である。中空糸膜a、b、c、dをとって説明すると、隣接する中空糸膜を結んだ直線はab、bc、cdとなるが、これらの直線よりも破線で示すadが中心Zから外側になり、直線adを構成する中空糸膜aとdを筒状ケースの端面において中空糸膜束の最外周の中空糸膜という。中空糸膜bとcは最外周とはいわない。
【0018】
a〜t全てに当てはめて考えると、12個の中空糸膜(a、d、e、f、h、i、k、l、m、p、r、s)を最外周ということができる。上記の概念をもとに、実際には、「筒状ケースの端面において、筒状ケースの内周領域に存在する任意の中空糸膜」を対象にして考えるのである。
【0019】
また、本発明において、「中空糸膜モジュールの側面において疎水性中空糸膜が中空糸膜束の最外周に位置している部分」とは、中空糸膜モジュールの側面において疎水性中空糸膜が中空糸膜束の最外周に現れている部分をいうが、「最外周」の中空糸膜の定義は上記と同じ概念である。すなわち、こちらの場合は、上記の筒状ケースの端面ではなく、中空糸膜モジュールの軸心に対して垂直に切った断面において、筒状ケースの内周領域に存在する任意の中空糸膜の中心をそれぞれお互いに直線で結んだとき、筒状ケースの断面中心から最も外側となる直線を構成する中空糸膜のことをいう。中空糸膜モジュールの軸心に対して垂直に切った断面における疎水性中空糸膜が「最外周」に位置するか否かを、例えば筒状ケース全長を10等分した箇所における断面について確認することで、筒状ケースの側面において疎水性中空糸膜が最外周に位置している部分の長さを確認することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、中空糸膜モジュール上流側に空気が流入しても、疎水性中空糸膜を通過して容易に系外へ排出できて、流量低下を起こさない。しかも中空糸膜束が拡がらないよう拘束するように覆うシートをモジュール製造時に取り除くことができ、疎水性中空糸膜だけが浮き上がるなどして中空糸膜束が乱れることはない。親水性中空糸膜の密集を避けることができ、水の通りがよく、また、中空糸膜の揺れや中空糸膜同士の擦れなどにより中空糸膜表面の汚れが落ちやすくなることよりろ過能力が高い中空糸膜モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】中空糸膜を拘束する形で覆うシートを含む中空糸膜モジュールの概略図である。
【図2】シートを含まない中空糸膜モジュールの概略図である。
【図3】本発明中空糸膜モジュールにおけるシートを外す方法を示す図である。
【図4】疎水性中空糸膜が中空糸膜の外側に配される中空糸膜モジュールの側面概略図である。
【図5】疎水性中空糸膜が浮き上がった中空糸膜モジュール不良品一例である。
【図6】シートを含まない中空糸膜モジュールの概略図である。
【図7】シートを含まない中空糸膜モジュールの概略図である。
【図8】本発明モジュールの端面概略図である。
【図9】本発明モジュールの端面概略図である。
【図10】本発明モジュールの端面概略図である。
【図11】本発明モジュールの実施形態概略図である。
【図12】疎水性中空糸膜を親水性中空糸膜に混ぜる前の状態の概略図である。
【図13】本発明モジュールの側面概略図一例である。
【図14】本発明モジュールの側面概略図一例である。
【図15】本発明モジュールの側面概略図一例である。
【図16】モジュールを組み込んだ浄水器カートリッジ概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
本実施形態の中空糸膜モジュールは図11に示すような、複数本の中空糸膜を束ねてU字状に折り曲げた中空糸膜束11を筒状ケース3にポッティング材4で固定したものである。ここで中空糸膜束11は親水性中空糸膜1と疎水性中空糸膜2を混在させたものからなり、中空糸膜束11が筒状ケース3に非拘束状態で配置され、モジュール端面6において中空糸膜束11の最外周の中空糸膜がすべて親水性中空糸膜1となるよう配置する。
【0024】
「中空糸膜束11が筒状ケース3に非拘束状態で配置されている」とは、中空糸膜束11が筒状ケース3にシート5などで拘束されることなく配置されている状態をいう。すなわち、中空糸膜束11と筒状ケース3の間にシート5が介在することがあってもよいが、シート5などによって中空糸膜束11が拘束されていない状態で配置されている状態をいう。
【0025】
本発明の中空糸膜モジュールを製造する方法を説明する。親水性中空糸膜1と疎水性中空糸膜2を混在させた後、U字状にした中空糸膜束11をシート5にて覆い、筒状ケース3に充填後、シート5のみを取り除き、ポッティング材4で中空糸膜束11の開口端部を筒状ケース3の開口部に固定する。
【0026】
親水性中空糸膜1と疎水性中空糸膜2を混ぜる方法としては、まず図12のように複数本の親水性中空糸膜束1を平らにし、その中央部に疎水性中空糸膜2を置き、疎水性中空糸膜2を親水性中空糸膜1の束で包み込む方法や、親水性中空糸膜1の束が凹形になるようくぼみを作り、くぼみ部分に疎水性中空糸膜2を配置し、包み込む方法があるが、作業の簡便性から前者のほうが好ましい。
【0027】
後の工程にてシート5を取り除くためには、シート5で覆われない中空糸膜束11の開口端部を把持する必要がある。そこで、把持する中空糸膜束11開口端部をシート5で覆わずに残し、残りの部分をシート5で覆うことが好ましい。
【0028】
シート5を取り除く方法としては、図3に示すような、吸引器具21を用いる方法がある。中空糸膜束11の開口端部を把持部22で固定しながら、エアによる吸引でシート5を筒状ケース3から抜き取り、中空糸膜束11のみを筒状ケース3内に残す。把持部22で中空糸膜開口端部を把持した上で、直接手で抜き取ってもよい。
【0029】
中空糸膜モジュール内に中空糸膜束11を拘束する形で覆っているシート5を残さず、中空糸膜束の密集が生じないことで、中空糸膜が有効利用され、モジュール中の水の流れが良くなる傾向にあり、濁りろ過能力は向上する。
【0030】
親水性中空糸膜1としては、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンを原料ポリマーとすることが好ましく、更に好ましくは生物学的特性、耐熱性、耐薬品性等に優れており、浄水器用として好適であるポリスルホンが良い。
【0031】
親水性中空糸膜1の孔径は、10μm以下であると好ましく、さらに好ましくは2μm以下である。さらに微小な固体を除去する場合には、孔径0.1μm以下のものを用いると、より微小な濁り成分を除去できるという点で好ましい。
【0032】
疎水性中空糸膜2としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホンなどを原料ポリマーとすることが好ましく、更に好ましくは極性が最も低く最も疎水性であるポリエチレンが好ましい。
【0033】
ポッティング材4は、筒状ケース3と中空糸膜束11との間並びに中空糸膜間を封止することが出来ればよく、流動性を有する主剤と硬化剤とを混合して反応、硬化させる二液混合型のエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などが中空糸膜モジュールを製造する上で取り扱いやすく、好ましい。
【0034】
U字状とした中空糸膜束11を覆い、その後の工程で引き抜くシート5としては、中空糸膜を損傷させないよう、摩擦抵抗の少ない不織布が好ましい。
【0035】
中空糸膜モジュール中の疎水性中空糸膜2は外側から見えないよう、親水性中空糸膜1内部に配し、またモジュール端面6においては中空糸膜束11の最外周の中空糸膜が全て親水性中空糸膜1であって、疎水性中空糸膜2でない。図12に示すように、親水性中空糸膜1の束を5〜10cm程度の幅になるよう平らにして、その上に疎水性中空糸膜2を数本置き、疎水性中空糸膜2を親水性中空糸膜1の束で包み込んでから、U字状とすることで、図9のように、モジュール端面6において筒状ケース3の内半径をrとしたときに、疎水性中空糸膜2の端部を筒状ケース3の端面における筒状ケース3の中心から半径0.9rで描かれる領域7の内側に配置することができる。これによって、疎水性中空糸膜2が把持部22から外れなくなる。把持部22から外れる可能性をさらに低くするため、親水性中空糸膜1の束の厚みを1cm以上とした上で、疎水性中空糸膜2を数本置き、疎水性中空糸膜2を親水性中空糸膜1の束で包み込んでから、U字状とすることで、0.7rで描かれる円周領域内に配置させることができ、そして、シート5を取り除く際、中空糸膜束11を把持する時に疎水性中空糸膜2のみが外れ、疎水性中空糸膜2がシート5と共に浮き上がるといった不良がなく、中空糸膜モジュールが安定して製造可能となる。シート5を取り除くので、中空糸膜束11の密集を防ぎ、水の通りがよく、濁りろ過能力が高くかつ滞留空気を排出することが可能な中空糸膜モジュールとすることができる。
【0036】
中空糸膜モジュールの側面において疎水性中空糸膜2の一部が中空糸膜束11の最外周に位置する場合については、中空糸膜束11の最外周に位置している部分の疎水性中空糸膜2の長さが筒状ケース3の長さの25%以下であると、シート5を取り除く際に疎水性中空糸膜2がシート5と一緒に引き抜かれる確率が低くなる。
【0037】
さらに10%以下であると引き抜かれる確率が極めて低くなる。中空糸膜モジュールの側面において疎水性中空糸膜2の一部が中空糸膜束11の最外周に位置する長さが筒状ケース3の25%以下であるという状態は図13、図14、図15に示すような形をいう。図13のようにポッティング材4付近で一箇所のみ疎水性中空糸膜2と筒状ケース3が接触可能な場合、図14のようにU字上の山付近一箇所のみ疎水性中空糸膜2と筒状ケース3が接触している場合、図15のように2箇所で疎水性中空糸膜2と筒状ケース3とが接触している場合など、本発明はいずれの形態も含む。
【0038】
疎水性中空糸膜2の膜面積の割合は、親水性中空糸膜1に対して0.05%〜5%であることが好ましい。疎水性中空糸膜2の割合を0.05%以上とすることで、滞留空気を排出する能力を発揮することができる。また5%以下とすることで、親水性中空糸膜の膜面積を十分に有することができ、ろ過能力を維持することができる。疎水性中空糸膜2の割合が0.05〜0.5%であるとさらに好ましい。
【0039】
ここで膜面積とは、中空糸膜の接水部分の外表面の面積を算出したものであり、ポッティング材4で接着固定された部分は含まない。
【0040】
本発明の中空糸膜モジュールは蛇口直結型、据置型、ポット型、アンダーシンク型など種々形態の浄水器用カートリッジに適用することが可能である。活性炭やゼオライト、無機イオン交換体、イオン交換樹脂、キレート樹脂等の吸着剤と併用して用いることが好ましく、トリハロメタンや鉛などの有害物を除去するもの、細菌の増殖抑制のために銀や銅などの抗菌剤を添着したもの、水道水中の塩素を除去するものなどが好ましく用いられる。
【0041】
上記形態の浄水器用カートリッジを装着した浄水器として用いることも可能であり、上記のような吸着剤と併用せずに、本発明の中空糸膜モジュールのみを搭載した浄水器として用いることも可能である。
【0042】
以下に実施例を記載して本発明をより具体的に説明する。疎水性中空糸膜の浮き上がり不良は モジュール中の親水性中空糸膜束に対して2mm以上浮き上がった場合を不良としてカウントした。
【0043】
浄水器カートリッジの濁りろ過能力試験はJIS S 3201:2004(家庭用浄水器試験方法)に示される方法に沿って実施した。
【実施例】
【0044】
[実施例1]
親水性中空糸膜としてポリスルホン中空糸膜(平均外径=0.46mm)を、疎水性中空糸膜としてポリエチレン中空糸膜(平均外径=0.65mm)を用い、図12に示すように親水性中空糸膜888本を約5cmの幅になるように平らにし、疎水性中空糸膜2〜5本をその上に配置し、親水性中空糸膜内側に包むように混ぜ、U字化を行い、シートとして用いる不織布で中空糸膜束を包み、円筒状の筒状ケース(内径=26.5mm、長さ=86.5mm)内に挿入した。挿入後、中空糸膜束の開口端部を把持し、中空糸膜束を包む不織布を取り除き、ポリウレタン樹脂にて開口端部を固定し、中空糸膜モジュールとした。100個製作して疎水性中空糸膜の浮き上がり不良発生率を確認したところ、表1に示す通り、0%となり比較例1に対して大幅に改善できた。本モジュール端面における疎水性中空糸膜の配置は表2に示す通りの分布となり、いずれも筒状ケースの円の中心から半径0.9rで描かれる円周領域内に配置されていた。中空糸膜モジュールの側面において疎水性中空糸膜の一部が中空糸膜束の最外周に位置する長さの筒状ケース長に対する割合は表3に示す通りであり、全て25%以下であった。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
[比較例1]
親水性中空糸膜としてポリスルホン中空糸膜(平均外径=0.46mm)を、疎水性中空糸膜としてポリエチレン中空糸膜(平均外径=0.65mm)を用い、親水性中空糸膜888本に疎水性中空糸膜2〜5本を混ぜる際に、疎水性中空糸膜の配置を考慮せずに混ぜ、U字化を行い、不織布で中空糸膜束を包み、円筒状の筒状ケース(内径=26.5mm、長さ=86.5mm)内に挿入する。挿入後、中空糸膜束の開口端部を把持し、中空糸膜束を包む不織布を取り除き、ポリウレタン樹脂にて開口端部を固定し、中空糸膜モジュールとした。100個製作して疎水性中空糸膜の浮き上がり不良発生率を確認したところ、30%となった。また、本モジュール端面における疎水性中空糸膜の配置は表2に示す通りの分布となり、筒状ケースの円の中心から半径0.9rで描かれる円周領域外に配置されることで、不良率が上昇する。中空糸膜モジュールの側面において疎水性中空糸膜の一部が中空糸膜の最外周に位置する長さの筒状ケース長に対する割合は表3に示す通りであり、25%以上となる場合から浮き上がり不良が確認できた。
[実施例2]
親水性中空糸膜としてポリスルホン中空糸膜(平均外径=0.46mm)を、疎水性中空糸膜としてポリエチレン中空糸膜(平均外径=0.65mm)を用い、図12に示すように親水性中空糸膜888本に疎水性中空糸膜2〜5本を親水性中空糸膜内側に包むように混ぜ、U字化を行い、不織布で中空糸膜束を包み、円筒状の筒状ケース(内径=26.5mm、長さ=86.5mm)内に挿入する。挿入後、中空糸膜束の開口端部を把持し、中空糸膜束を包む不織布を取り除き、ポリウレタン樹脂にて開口端部を固定し、中空糸膜モジュールとした。開口部内径が53.7mm、高さが97.5mmの円筒形の本体容器に、本中空糸膜モジュールを挿入し、粒径が48メッシュ〜100メッシュの範囲である活性炭38.5gを充填し、図16に示す形状の浄水器用カートリッジとした。図16中、符号31は中空糸膜モジュールを、32は活性炭充填部を、33はカートリッジ本体容器を示している。本カートリッジでJIS S 3201「家庭用浄水器試験方法」に基づき、表示ろ過流量を2.0L/minとし、濁りろ過能力試験を実施した。その結果、表示ろ過流量の1/2まで低下するまでの総ろ過水量は5250Lであり、中空糸膜モジュールに不織布を含む場合と比較してろ過能力が向上した。
[比較例2]
親水性中空糸膜としてポリスルホン中空糸膜(平均外径=0.46mm)を、疎水性中空糸膜としてポリエチレン中空糸膜(平均外径=0.65mm)を用い、図12に示すように親水性中空糸膜888本に疎水性中空糸膜2〜5本を親水性中空糸膜内側に包むように混ぜ、U字化を行い、不織布で中空糸膜束を包み、円筒状の筒状ケース(内径=26.5mm、長さ=86.5mm)内に挿入する。挿入後、中空糸膜束を包む不織布を取り除かず存在させたまま、ポリウレタン樹脂にて開口端部を固定し、モジュールとした。開口部内径が53.7mm、高さが97.5mmの円筒形の本体容器に、本中空糸膜モジュールを挿入し、粒径が48メッシュ〜100メッシュの範囲である活性炭38.5gを充填し、浄水器用カートリッジとした。本カートリッジでJIS S 3201「家庭用浄水器試験方法」に基づき、表示ろ過流量を2.0L/minとし、濁りろ過能力試験を実施した。その結果、表示ろ過流量の1/2まで低下するまでの総ろ過水量は3450Lであった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、蛇口直結型、据置型、ポット型、アンダーシンク型など浄水器全般に応用することができるが、これらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0050】
1 親水性中空糸膜
2 疎水性中空糸膜
3 筒状ケース
4 ポッティング材
5 シート
6 中空糸膜モジュール端面
7 筒状ケース端面において半径0.9rで描かれる領域
8 筒状ケース端面において半径rで描かれる領域
9 中空糸膜胴体部における筒状ケースの内径
10 筒状ケース端面において所定の半径で描かれる領域
11 中空糸膜束
21 吸引器具
22 中空糸膜束把持部
31 中空糸膜モジュール
32 活性炭充填部
33 カートリッジ本体容器
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸膜モジュール、中空糸膜モジュールの製造方法、浄水器用カートリッジおよび浄水器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浄水器のカ−トリッジは、活性炭やイオン交換体などの粒状、繊維状、球状の吸着剤と中空糸膜を充填したモジュールから成るものが多く知られている。中空糸膜の素材としては、ポリエチレン、ポリスルホンなどが知られるが、これらのポリマーはいずれも疎水性であり、このままの状態ではほとんど水を通さない。浄水器用途として膜を使用する場合には、親水化処理が必要となる。親水化処理には、製膜後にアルコールなどの溶媒により親水化する方法や、製膜原液とともに、親水性高分子を含む注入液を2重環状の口金から吐出し、親水性を付与する方法などがある。このような親水化処理を施すことにより、透水性を高めているのである。
【0003】
しかしながら、一方で、親水性中空糸膜のみからなるモジュールを使用すると、逆に空気の透過性が低下することになる。すなわち、親水性中空糸膜のみからなるモジュールを有する浄水器の場合、何らかの理由で浄水器の水道水入口側からモジュールに空気が混入すると、特に低水圧(例えば0.1MPa以下)では、混入した空気が親水性中空糸膜を通過しにくい。モジュールの上流側に空気が滞留して抵抗となり、水の透過が阻止され、ろ過流量が低下する場合があった。
【0004】
このような問題を解決するために、特許文献1には、膜のすべてを親水化させるのではなく、膜の一部を疎水性のまま保つことにより、モジュール上流側の空気を排出する方法が開示されている。しかしながら、本方法ではアルコールなどの溶媒を大量に消費するため、換気対策や廃液処理対策が必要となって、設備費用がかかる問題点があった。
【0005】
また、特許文献2には、親水性中空糸膜からなるモジュールの一部に疎水性中空糸膜を混ぜることにより、モジュール内に溜まった空気を系外へ排出する方法が開示されている。しかしながら、親水性中空糸膜と疎水性中空糸膜をどのように混在させ、どのようにモジュール化するのかといった製造方法に関しては全く開示されていない。
【0006】
モジュールを製造する方法としては、U字状の形とした中空糸膜束が拡がらないよう拘束するようにシートで覆い、筒状のケース内に装填する方法がある。しかしながら、本発明者らの知見によれば、図1のようにモジュール内にシートを含むと、中空糸膜束がシートで拘束されることによって密集し、モジュール中の水の流れが悪くなる傾向にあり、中空糸膜が有効利用されず、濁りろ過能力低下の原因となる。本発明者らの知見によれば、図2のようにモジュール製造途中で中空糸膜束を覆うシートを取り除いて中空糸膜束を非拘束状態にすることが好ましく、図3のように筒状ケース内に装填された中空糸膜束開口部を把持しながらシートを取り除く、特許文献3のような製造方法が中空糸膜モジュールの高性能化を目指す観点から好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−28852号公報
【特許文献2】特許第2720364号公報
【特許文献3】特許第3239693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、中空糸膜束が親水性中空糸膜と疎水性中空糸膜を混在させてなる場合、図4のように疎水性中空糸膜が中空糸膜束の外側に配される時がある。この場合、本発明者らの知見によれば、シートを取り除く上記のような従来技術では、疎水性中空糸膜が親水性中空糸膜と比較し、剛性が強く、中空糸膜束をU字状とした後に疎水性中空糸膜のみにストレート状に復元しようとする力が働くことで、中空糸膜束の開口端部で疎水性中空糸膜のみが把持部から外れる場合がある。また、疎水性中空糸膜とシートとの摩擦が親水性中空糸膜と比べて大きくなることから、図5に示すようにシートを取り除くと共に疎水性中空糸膜のみ筒状ケース外に浮き上がってしまう問題点があった。
【0009】
本発明は、中空糸膜束を包むシートを容易に取り除くことができ、中空糸膜束を非拘束の状態で密集させないことから、水の通りがよくなり、中空糸膜の揺れや中空糸膜同士の擦れなどにより中空糸膜表面の汚れが落ちやすくなることでろ過能力が高く、かつモジュール上流側に滞留する空気を系外に排出することが可能な中空糸膜モジュールおよび中空糸膜モジュールを搭載した浄水器用カートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決するため、本発明は次の(1)〜(8)で構成される。
(1)中空糸膜束をU字状に筒状ケースに充填し、ポッティング材で前記中空糸膜束の開口端部を前記筒状ケースの開口部に固定した中空糸膜モジュールであって、前記中空糸膜束は親水性中空糸膜に疎水性中空糸膜を混在させたものであり、前記中空糸膜束が非拘束状態で前記筒状ケースに収納され、前記筒状ケースの端面において前記中空糸膜束の最外周の中空糸膜がすべて前記親水性中空糸膜であることを特徴とする中空糸膜モジュール。
(2)前記筒状ケースの内半径をrとしたときに、前記疎水性中空糸膜の端部の位置が前記筒状ケースの端面における前記筒状ケースの円の中心から半径0.9rで描かれる円周領域内に配置されることを特徴とする(1)に記載の中空糸膜モジュール。
(3)中空糸膜束をU字状に筒状ケースに充填し、ポッティング材で前記中空糸膜束の開口端部を前記筒状ケースの開口部に固定した中空糸膜モジュールであって、前記中空糸膜束は親水性中空糸膜に疎水性中空糸膜を混在させたものであり、前記中空糸膜束が非拘束状態で前記筒状ケースに収納され、前記中空糸膜モジュールの側面において前記疎水性中空糸膜が前記中空糸膜束の最外周に位置している部分の長さが前記筒状ケースの長さの25%以下であることを特徴とする中空糸膜モジュール。
(4)前記疎水性中空糸膜の膜面積の割合が前記親水性中空糸膜に対して、0.05〜5%であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
(5)中空糸膜束をU字状にした後、前記中空糸膜束をシートで全周覆い、前記シートに包んだ状態で筒状ケースに充填後、ポッティング材で前記中空糸膜束の開口端部を前記筒状ケースの開口部に固定する中空糸膜モジュールの製造方法であって、前記中空糸膜束として親水性中空糸膜と疎水性中空糸膜から成るものを用い、前記疎水性中空糸膜を前記親水性中空糸膜内側に包み込み、中空糸膜束とした後U字状にし、前記筒状ケースに前記中空糸膜束を充填後に、前記シートを取り除くことを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法。
(6)(1)〜(4)のいずれかに記載の中空糸膜モジュールを搭載した浄水器用カートリッジ。
(7)(1)〜(4)のいずれかに記載の中空糸膜モジュールを搭載した浄水器。
(8)(6)に記載の浄水器用カートリッジを装着した浄水器。
【0011】
本発明において、「中空糸膜束の開口端部」とは、中空糸膜が開口している方の端部をいう。
【0012】
本発明において、「筒状ケースの内半径r」を、以下の2つの場合に分けて定義する。
a)中空糸膜束胴体部における筒状ケースの内径が筒状ケース端面の内径より大きい、あるいは等しい場合には、筒状ケース端面の内半径をrとし、b)中空糸膜束胴体部における筒状ケースの内径が筒状ケース端面の内径より小さい場合には、中空糸膜束胴体部における筒状ケースの内半径をrとする。ここで、中空糸膜束胴体部とは、U字状とした中空糸膜束のストレート状部分を指し、中空糸膜束胴体部における筒状ケースの内径とはU字状とした中空糸膜束のストレート状部分における筒状ケースの最も小さい内径を指す。
【0013】
図を用いて詳細を説明する。a)図2、図6に示すような、中空糸膜束胴体部における筒状ケースの内径が筒状ケース端面の内径より大きい、あるいは等しい場合は、ケース端面の内半径を筒状ケースの内半径rとし、b)図7に示すような、中空糸膜束胴体部における筒状ケースの内径が筒状ケース端面の内径より小さい場合には、図7の内径9を筒状ケースの内半径rとする。内径9を図8に示す端面に投影したものを円周8とすると、円周8の半径がrである。
【0014】
本発明において、「前記筒状ケースの内半径をrとしたときに、前記疎水性中空糸膜の端部の位置が前記筒状ケースの端面における前記筒状ケースの円の中心から半径0.9rで描かれる円周領域内に配置される」とは、筒状ケースの内半径をrとした時に、半径0.9rで描いた円周領域内に疎水性中空糸膜の全ての端部が存在することをいう。
【0015】
図を用いて詳細を説明する。a)中空糸膜束胴体部における筒状ケースの内径が筒状ケース端面の内径が大きい、あるいは等しい場合には、図9に示すように、半径0.9rで描かれる円周領域に配置される中空糸膜とは、円周領域7内にある中空糸膜のことをいい、また、b)中空糸膜束胴体部における筒状ケースの内径が筒状ケース端面の内径より小さい場合には、図8に示すように、半径rで描かれる領域が、筒状ケース端面内径より内側に配置される円周領域8となるので、半径0.9rで描かれる円周領域はさらにその内側の円周領域7となる。
【0016】
本発明において、「筒状ケースの端面において中空糸膜束の最外周の中空糸膜」とは、筒状ケースの端面において、筒状ケースの内周領域に存在する任意の中空糸膜の中心をそれぞれお互いに直線で結んだとき、筒状ケースの中心から最も外側となる直線を構成する中空糸膜のことをいう。
【0017】
図10に中空糸膜モジュール端面拡大図を示し、詳細を説明する。ここでは、説明を簡単にするため、「筒状ケースの端面において、筒状ケースの内周領域に存在する任意の中空糸膜」のうち、「筒状ケースの端面において、筒状ケースの円の中心から所定の半径で描かれる円周領域外に存在する任意の中空糸膜」を取り出して説明する。図10において、筒状ケースの円の中心から所定の半径で描かれる円周領域外の中空糸膜はa〜tの20個である。中空糸膜a、b、c、dをとって説明すると、隣接する中空糸膜を結んだ直線はab、bc、cdとなるが、これらの直線よりも破線で示すadが中心Zから外側になり、直線adを構成する中空糸膜aとdを筒状ケースの端面において中空糸膜束の最外周の中空糸膜という。中空糸膜bとcは最外周とはいわない。
【0018】
a〜t全てに当てはめて考えると、12個の中空糸膜(a、d、e、f、h、i、k、l、m、p、r、s)を最外周ということができる。上記の概念をもとに、実際には、「筒状ケースの端面において、筒状ケースの内周領域に存在する任意の中空糸膜」を対象にして考えるのである。
【0019】
また、本発明において、「中空糸膜モジュールの側面において疎水性中空糸膜が中空糸膜束の最外周に位置している部分」とは、中空糸膜モジュールの側面において疎水性中空糸膜が中空糸膜束の最外周に現れている部分をいうが、「最外周」の中空糸膜の定義は上記と同じ概念である。すなわち、こちらの場合は、上記の筒状ケースの端面ではなく、中空糸膜モジュールの軸心に対して垂直に切った断面において、筒状ケースの内周領域に存在する任意の中空糸膜の中心をそれぞれお互いに直線で結んだとき、筒状ケースの断面中心から最も外側となる直線を構成する中空糸膜のことをいう。中空糸膜モジュールの軸心に対して垂直に切った断面における疎水性中空糸膜が「最外周」に位置するか否かを、例えば筒状ケース全長を10等分した箇所における断面について確認することで、筒状ケースの側面において疎水性中空糸膜が最外周に位置している部分の長さを確認することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、中空糸膜モジュール上流側に空気が流入しても、疎水性中空糸膜を通過して容易に系外へ排出できて、流量低下を起こさない。しかも中空糸膜束が拡がらないよう拘束するように覆うシートをモジュール製造時に取り除くことができ、疎水性中空糸膜だけが浮き上がるなどして中空糸膜束が乱れることはない。親水性中空糸膜の密集を避けることができ、水の通りがよく、また、中空糸膜の揺れや中空糸膜同士の擦れなどにより中空糸膜表面の汚れが落ちやすくなることよりろ過能力が高い中空糸膜モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】中空糸膜を拘束する形で覆うシートを含む中空糸膜モジュールの概略図である。
【図2】シートを含まない中空糸膜モジュールの概略図である。
【図3】本発明中空糸膜モジュールにおけるシートを外す方法を示す図である。
【図4】疎水性中空糸膜が中空糸膜の外側に配される中空糸膜モジュールの側面概略図である。
【図5】疎水性中空糸膜が浮き上がった中空糸膜モジュール不良品一例である。
【図6】シートを含まない中空糸膜モジュールの概略図である。
【図7】シートを含まない中空糸膜モジュールの概略図である。
【図8】本発明モジュールの端面概略図である。
【図9】本発明モジュールの端面概略図である。
【図10】本発明モジュールの端面概略図である。
【図11】本発明モジュールの実施形態概略図である。
【図12】疎水性中空糸膜を親水性中空糸膜に混ぜる前の状態の概略図である。
【図13】本発明モジュールの側面概略図一例である。
【図14】本発明モジュールの側面概略図一例である。
【図15】本発明モジュールの側面概略図一例である。
【図16】モジュールを組み込んだ浄水器カートリッジ概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
本実施形態の中空糸膜モジュールは図11に示すような、複数本の中空糸膜を束ねてU字状に折り曲げた中空糸膜束11を筒状ケース3にポッティング材4で固定したものである。ここで中空糸膜束11は親水性中空糸膜1と疎水性中空糸膜2を混在させたものからなり、中空糸膜束11が筒状ケース3に非拘束状態で配置され、モジュール端面6において中空糸膜束11の最外周の中空糸膜がすべて親水性中空糸膜1となるよう配置する。
【0024】
「中空糸膜束11が筒状ケース3に非拘束状態で配置されている」とは、中空糸膜束11が筒状ケース3にシート5などで拘束されることなく配置されている状態をいう。すなわち、中空糸膜束11と筒状ケース3の間にシート5が介在することがあってもよいが、シート5などによって中空糸膜束11が拘束されていない状態で配置されている状態をいう。
【0025】
本発明の中空糸膜モジュールを製造する方法を説明する。親水性中空糸膜1と疎水性中空糸膜2を混在させた後、U字状にした中空糸膜束11をシート5にて覆い、筒状ケース3に充填後、シート5のみを取り除き、ポッティング材4で中空糸膜束11の開口端部を筒状ケース3の開口部に固定する。
【0026】
親水性中空糸膜1と疎水性中空糸膜2を混ぜる方法としては、まず図12のように複数本の親水性中空糸膜束1を平らにし、その中央部に疎水性中空糸膜2を置き、疎水性中空糸膜2を親水性中空糸膜1の束で包み込む方法や、親水性中空糸膜1の束が凹形になるようくぼみを作り、くぼみ部分に疎水性中空糸膜2を配置し、包み込む方法があるが、作業の簡便性から前者のほうが好ましい。
【0027】
後の工程にてシート5を取り除くためには、シート5で覆われない中空糸膜束11の開口端部を把持する必要がある。そこで、把持する中空糸膜束11開口端部をシート5で覆わずに残し、残りの部分をシート5で覆うことが好ましい。
【0028】
シート5を取り除く方法としては、図3に示すような、吸引器具21を用いる方法がある。中空糸膜束11の開口端部を把持部22で固定しながら、エアによる吸引でシート5を筒状ケース3から抜き取り、中空糸膜束11のみを筒状ケース3内に残す。把持部22で中空糸膜開口端部を把持した上で、直接手で抜き取ってもよい。
【0029】
中空糸膜モジュール内に中空糸膜束11を拘束する形で覆っているシート5を残さず、中空糸膜束の密集が生じないことで、中空糸膜が有効利用され、モジュール中の水の流れが良くなる傾向にあり、濁りろ過能力は向上する。
【0030】
親水性中空糸膜1としては、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンを原料ポリマーとすることが好ましく、更に好ましくは生物学的特性、耐熱性、耐薬品性等に優れており、浄水器用として好適であるポリスルホンが良い。
【0031】
親水性中空糸膜1の孔径は、10μm以下であると好ましく、さらに好ましくは2μm以下である。さらに微小な固体を除去する場合には、孔径0.1μm以下のものを用いると、より微小な濁り成分を除去できるという点で好ましい。
【0032】
疎水性中空糸膜2としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホンなどを原料ポリマーとすることが好ましく、更に好ましくは極性が最も低く最も疎水性であるポリエチレンが好ましい。
【0033】
ポッティング材4は、筒状ケース3と中空糸膜束11との間並びに中空糸膜間を封止することが出来ればよく、流動性を有する主剤と硬化剤とを混合して反応、硬化させる二液混合型のエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などが中空糸膜モジュールを製造する上で取り扱いやすく、好ましい。
【0034】
U字状とした中空糸膜束11を覆い、その後の工程で引き抜くシート5としては、中空糸膜を損傷させないよう、摩擦抵抗の少ない不織布が好ましい。
【0035】
中空糸膜モジュール中の疎水性中空糸膜2は外側から見えないよう、親水性中空糸膜1内部に配し、またモジュール端面6においては中空糸膜束11の最外周の中空糸膜が全て親水性中空糸膜1であって、疎水性中空糸膜2でない。図12に示すように、親水性中空糸膜1の束を5〜10cm程度の幅になるよう平らにして、その上に疎水性中空糸膜2を数本置き、疎水性中空糸膜2を親水性中空糸膜1の束で包み込んでから、U字状とすることで、図9のように、モジュール端面6において筒状ケース3の内半径をrとしたときに、疎水性中空糸膜2の端部を筒状ケース3の端面における筒状ケース3の中心から半径0.9rで描かれる領域7の内側に配置することができる。これによって、疎水性中空糸膜2が把持部22から外れなくなる。把持部22から外れる可能性をさらに低くするため、親水性中空糸膜1の束の厚みを1cm以上とした上で、疎水性中空糸膜2を数本置き、疎水性中空糸膜2を親水性中空糸膜1の束で包み込んでから、U字状とすることで、0.7rで描かれる円周領域内に配置させることができ、そして、シート5を取り除く際、中空糸膜束11を把持する時に疎水性中空糸膜2のみが外れ、疎水性中空糸膜2がシート5と共に浮き上がるといった不良がなく、中空糸膜モジュールが安定して製造可能となる。シート5を取り除くので、中空糸膜束11の密集を防ぎ、水の通りがよく、濁りろ過能力が高くかつ滞留空気を排出することが可能な中空糸膜モジュールとすることができる。
【0036】
中空糸膜モジュールの側面において疎水性中空糸膜2の一部が中空糸膜束11の最外周に位置する場合については、中空糸膜束11の最外周に位置している部分の疎水性中空糸膜2の長さが筒状ケース3の長さの25%以下であると、シート5を取り除く際に疎水性中空糸膜2がシート5と一緒に引き抜かれる確率が低くなる。
【0037】
さらに10%以下であると引き抜かれる確率が極めて低くなる。中空糸膜モジュールの側面において疎水性中空糸膜2の一部が中空糸膜束11の最外周に位置する長さが筒状ケース3の25%以下であるという状態は図13、図14、図15に示すような形をいう。図13のようにポッティング材4付近で一箇所のみ疎水性中空糸膜2と筒状ケース3が接触可能な場合、図14のようにU字上の山付近一箇所のみ疎水性中空糸膜2と筒状ケース3が接触している場合、図15のように2箇所で疎水性中空糸膜2と筒状ケース3とが接触している場合など、本発明はいずれの形態も含む。
【0038】
疎水性中空糸膜2の膜面積の割合は、親水性中空糸膜1に対して0.05%〜5%であることが好ましい。疎水性中空糸膜2の割合を0.05%以上とすることで、滞留空気を排出する能力を発揮することができる。また5%以下とすることで、親水性中空糸膜の膜面積を十分に有することができ、ろ過能力を維持することができる。疎水性中空糸膜2の割合が0.05〜0.5%であるとさらに好ましい。
【0039】
ここで膜面積とは、中空糸膜の接水部分の外表面の面積を算出したものであり、ポッティング材4で接着固定された部分は含まない。
【0040】
本発明の中空糸膜モジュールは蛇口直結型、据置型、ポット型、アンダーシンク型など種々形態の浄水器用カートリッジに適用することが可能である。活性炭やゼオライト、無機イオン交換体、イオン交換樹脂、キレート樹脂等の吸着剤と併用して用いることが好ましく、トリハロメタンや鉛などの有害物を除去するもの、細菌の増殖抑制のために銀や銅などの抗菌剤を添着したもの、水道水中の塩素を除去するものなどが好ましく用いられる。
【0041】
上記形態の浄水器用カートリッジを装着した浄水器として用いることも可能であり、上記のような吸着剤と併用せずに、本発明の中空糸膜モジュールのみを搭載した浄水器として用いることも可能である。
【0042】
以下に実施例を記載して本発明をより具体的に説明する。疎水性中空糸膜の浮き上がり不良は モジュール中の親水性中空糸膜束に対して2mm以上浮き上がった場合を不良としてカウントした。
【0043】
浄水器カートリッジの濁りろ過能力試験はJIS S 3201:2004(家庭用浄水器試験方法)に示される方法に沿って実施した。
【実施例】
【0044】
[実施例1]
親水性中空糸膜としてポリスルホン中空糸膜(平均外径=0.46mm)を、疎水性中空糸膜としてポリエチレン中空糸膜(平均外径=0.65mm)を用い、図12に示すように親水性中空糸膜888本を約5cmの幅になるように平らにし、疎水性中空糸膜2〜5本をその上に配置し、親水性中空糸膜内側に包むように混ぜ、U字化を行い、シートとして用いる不織布で中空糸膜束を包み、円筒状の筒状ケース(内径=26.5mm、長さ=86.5mm)内に挿入した。挿入後、中空糸膜束の開口端部を把持し、中空糸膜束を包む不織布を取り除き、ポリウレタン樹脂にて開口端部を固定し、中空糸膜モジュールとした。100個製作して疎水性中空糸膜の浮き上がり不良発生率を確認したところ、表1に示す通り、0%となり比較例1に対して大幅に改善できた。本モジュール端面における疎水性中空糸膜の配置は表2に示す通りの分布となり、いずれも筒状ケースの円の中心から半径0.9rで描かれる円周領域内に配置されていた。中空糸膜モジュールの側面において疎水性中空糸膜の一部が中空糸膜束の最外周に位置する長さの筒状ケース長に対する割合は表3に示す通りであり、全て25%以下であった。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
[比較例1]
親水性中空糸膜としてポリスルホン中空糸膜(平均外径=0.46mm)を、疎水性中空糸膜としてポリエチレン中空糸膜(平均外径=0.65mm)を用い、親水性中空糸膜888本に疎水性中空糸膜2〜5本を混ぜる際に、疎水性中空糸膜の配置を考慮せずに混ぜ、U字化を行い、不織布で中空糸膜束を包み、円筒状の筒状ケース(内径=26.5mm、長さ=86.5mm)内に挿入する。挿入後、中空糸膜束の開口端部を把持し、中空糸膜束を包む不織布を取り除き、ポリウレタン樹脂にて開口端部を固定し、中空糸膜モジュールとした。100個製作して疎水性中空糸膜の浮き上がり不良発生率を確認したところ、30%となった。また、本モジュール端面における疎水性中空糸膜の配置は表2に示す通りの分布となり、筒状ケースの円の中心から半径0.9rで描かれる円周領域外に配置されることで、不良率が上昇する。中空糸膜モジュールの側面において疎水性中空糸膜の一部が中空糸膜の最外周に位置する長さの筒状ケース長に対する割合は表3に示す通りであり、25%以上となる場合から浮き上がり不良が確認できた。
[実施例2]
親水性中空糸膜としてポリスルホン中空糸膜(平均外径=0.46mm)を、疎水性中空糸膜としてポリエチレン中空糸膜(平均外径=0.65mm)を用い、図12に示すように親水性中空糸膜888本に疎水性中空糸膜2〜5本を親水性中空糸膜内側に包むように混ぜ、U字化を行い、不織布で中空糸膜束を包み、円筒状の筒状ケース(内径=26.5mm、長さ=86.5mm)内に挿入する。挿入後、中空糸膜束の開口端部を把持し、中空糸膜束を包む不織布を取り除き、ポリウレタン樹脂にて開口端部を固定し、中空糸膜モジュールとした。開口部内径が53.7mm、高さが97.5mmの円筒形の本体容器に、本中空糸膜モジュールを挿入し、粒径が48メッシュ〜100メッシュの範囲である活性炭38.5gを充填し、図16に示す形状の浄水器用カートリッジとした。図16中、符号31は中空糸膜モジュールを、32は活性炭充填部を、33はカートリッジ本体容器を示している。本カートリッジでJIS S 3201「家庭用浄水器試験方法」に基づき、表示ろ過流量を2.0L/minとし、濁りろ過能力試験を実施した。その結果、表示ろ過流量の1/2まで低下するまでの総ろ過水量は5250Lであり、中空糸膜モジュールに不織布を含む場合と比較してろ過能力が向上した。
[比較例2]
親水性中空糸膜としてポリスルホン中空糸膜(平均外径=0.46mm)を、疎水性中空糸膜としてポリエチレン中空糸膜(平均外径=0.65mm)を用い、図12に示すように親水性中空糸膜888本に疎水性中空糸膜2〜5本を親水性中空糸膜内側に包むように混ぜ、U字化を行い、不織布で中空糸膜束を包み、円筒状の筒状ケース(内径=26.5mm、長さ=86.5mm)内に挿入する。挿入後、中空糸膜束を包む不織布を取り除かず存在させたまま、ポリウレタン樹脂にて開口端部を固定し、モジュールとした。開口部内径が53.7mm、高さが97.5mmの円筒形の本体容器に、本中空糸膜モジュールを挿入し、粒径が48メッシュ〜100メッシュの範囲である活性炭38.5gを充填し、浄水器用カートリッジとした。本カートリッジでJIS S 3201「家庭用浄水器試験方法」に基づき、表示ろ過流量を2.0L/minとし、濁りろ過能力試験を実施した。その結果、表示ろ過流量の1/2まで低下するまでの総ろ過水量は3450Lであった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、蛇口直結型、据置型、ポット型、アンダーシンク型など浄水器全般に応用することができるが、これらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0050】
1 親水性中空糸膜
2 疎水性中空糸膜
3 筒状ケース
4 ポッティング材
5 シート
6 中空糸膜モジュール端面
7 筒状ケース端面において半径0.9rで描かれる領域
8 筒状ケース端面において半径rで描かれる領域
9 中空糸膜胴体部における筒状ケースの内径
10 筒状ケース端面において所定の半径で描かれる領域
11 中空糸膜束
21 吸引器具
22 中空糸膜束把持部
31 中空糸膜モジュール
32 活性炭充填部
33 カートリッジ本体容器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空糸膜束をU字状に筒状ケースに充填し、ポッティング材で前記中空糸膜束の開口端部を前記筒状ケースの開口部に固定した中空糸膜モジュールであって、前記中空糸膜束は親水性中空糸膜に疎水性中空糸膜を混在させたものであり、前記中空糸膜束が非拘束状態で前記筒状ケースに収納され、前記筒状ケースの端面において前記中空糸膜束の最外周の中空糸膜がすべて前記親水性中空糸膜であることを特徴とする中空糸膜モジュール。
【請求項2】
前記筒状ケースの内半径をrとしたときに、前記疎水性中空糸膜の端部の位置が前記筒状ケースの端面における前記筒状ケースの円の中心から半径0.9rで描かれる円周領域内に配置されることを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項3】
中空糸膜束をU字状に筒状ケースに充填し、ポッティング材で前記中空糸膜束の開口端部を前記筒状ケースの開口部に固定した中空糸膜モジュールであって、前記中空糸膜束は親水性中空糸膜に疎水性中空糸膜を混在させたものであり、前記中空糸膜束が非拘束状態で前記筒状ケースに収納され、前記中空糸膜モジュールの側面において前記疎水性中空糸膜が前記中空糸膜束の最外周に位置している部分の長さが前記筒状ケースの長さの25%以下であることを特徴とする中空糸膜モジュール。
【請求項4】
前記親水性中空糸膜の膜面積に対する前記疎水性中空糸膜の膜面積の割合が0.05〜5%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
【請求項5】
中空糸膜束をU字状にした後、前記中空糸膜束をシートで全周覆い、前記シートに包んだ状態で筒状ケースに充填後、ポッティング材で前記中空糸膜束の開口端部を前記筒状ケースの開口部に固定する中空糸膜モジュールの製造方法であって、前記中空糸膜束として親水性中空糸膜に疎水性中空糸膜を混在させたものを用い、前記疎水性中空糸膜を前記親水性中空糸膜の束の内側に包み込み、前記中空糸膜束とした後U字状にし、前記筒状ケースに前記中空糸膜束を充填後に、前記シートを取り除くことを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の中空糸膜モジュールを搭載した浄水器用カートリッジ。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の中空糸膜モジュールを搭載した浄水器。
【請求項8】
請求項6に記載の浄水器用カートリッジを装着した浄水器。
【請求項1】
中空糸膜束をU字状に筒状ケースに充填し、ポッティング材で前記中空糸膜束の開口端部を前記筒状ケースの開口部に固定した中空糸膜モジュールであって、前記中空糸膜束は親水性中空糸膜に疎水性中空糸膜を混在させたものであり、前記中空糸膜束が非拘束状態で前記筒状ケースに収納され、前記筒状ケースの端面において前記中空糸膜束の最外周の中空糸膜がすべて前記親水性中空糸膜であることを特徴とする中空糸膜モジュール。
【請求項2】
前記筒状ケースの内半径をrとしたときに、前記疎水性中空糸膜の端部の位置が前記筒状ケースの端面における前記筒状ケースの円の中心から半径0.9rで描かれる円周領域内に配置されることを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項3】
中空糸膜束をU字状に筒状ケースに充填し、ポッティング材で前記中空糸膜束の開口端部を前記筒状ケースの開口部に固定した中空糸膜モジュールであって、前記中空糸膜束は親水性中空糸膜に疎水性中空糸膜を混在させたものであり、前記中空糸膜束が非拘束状態で前記筒状ケースに収納され、前記中空糸膜モジュールの側面において前記疎水性中空糸膜が前記中空糸膜束の最外周に位置している部分の長さが前記筒状ケースの長さの25%以下であることを特徴とする中空糸膜モジュール。
【請求項4】
前記親水性中空糸膜の膜面積に対する前記疎水性中空糸膜の膜面積の割合が0.05〜5%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
【請求項5】
中空糸膜束をU字状にした後、前記中空糸膜束をシートで全周覆い、前記シートに包んだ状態で筒状ケースに充填後、ポッティング材で前記中空糸膜束の開口端部を前記筒状ケースの開口部に固定する中空糸膜モジュールの製造方法であって、前記中空糸膜束として親水性中空糸膜に疎水性中空糸膜を混在させたものを用い、前記疎水性中空糸膜を前記親水性中空糸膜の束の内側に包み込み、前記中空糸膜束とした後U字状にし、前記筒状ケースに前記中空糸膜束を充填後に、前記シートを取り除くことを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の中空糸膜モジュールを搭載した浄水器用カートリッジ。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の中空糸膜モジュールを搭載した浄水器。
【請求項8】
請求項6に記載の浄水器用カートリッジを装着した浄水器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−72900(P2011−72900A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226402(P2009−226402)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
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