説明

中空糸膜モジュールの検査方法

【課題】 中空糸膜モジュールの切断端面を撮像し、切断端面の良否を判定する際の検査精度を向上させる。検査精度が向上し誤判定を減少させることにより、再検査するモジュール数を減少させ作業性を向上させる。また、カッター摩耗の誤認を減らしカッター交換頻度を減少させる。
【解決手段】 多数本の中空糸膜からなる中空糸膜束を樹脂でポッティング処理した後、ポッティング部3に片側から切断刃を押し当て横断面方向に切断し、多数の中空糸膜の開口端と該中空糸膜開口端どうしを繋ぐポッティング樹脂部とが配置された中空糸膜モジュール切断端面を形成し、次いで、該モジュール切断端面に光を照射し反射光を受光して撮像し、該撮像に基づき切断端面の判定を行う中空糸膜モジュールの検査方法であって、撮像時に載置された中空糸膜モジュールにおいて、切断刃が押し込まれた方向と、撮影装置からモジュール切断端面への撮像方向とが所定の関係となるように、中空糸膜モジュールの載置向きを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポッティング処理後に切断することにより形成した中空糸膜モジュール切断端面の良否判定を行うための端面検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数本の中空糸膜からなる中空糸膜束を樹脂でポッティング処理した後、ポッティング部を横断面方向に切断することにより、多数の中空糸膜の開口端と該中空糸膜開口端どうしを繋ぐポッティング樹脂部とが配置された中空糸膜モジュール切断端面を形成することが行われている。このような切断端面をもつ中空糸膜モジュールは、従来から、人工透析装置や浄水器等において膜ろ過に使用されている。
【0003】
この中空糸膜モジュール切断端面に欠陥が存在すると膜ろ過性能に悪影響がでるので、切断端面の欠陥の検出するための外観検査が種々の手段で行われている。例えば、切断端面をカメラ等の撮影装置により撮影して画像データとし、データ処理により端面外観検査を行う端面検査方法・装置が知られている(例えば特許文献1、2参照)。この端面検査装置により検査する際には、中空糸膜束内の隙間をポッティング材(樹脂材)で充填、固定した後、ポッティング部をカットし、カットした端面を検査することが行われる。ポッティング部を横断面方向にカットする際には、片側からカッターを押し当て横断面方向に切断する方法が採用されるので、カッターの刃先が摩耗してなく良好な切れ味をもつ場合には、カット端面における凹凸が少なく、カット端面の検査に支障をきたすことはない。
【0004】
しかし、カット数が増えるに従い、カッターの刃先が摩耗していき切れ味が劣ってくる。刃先が摩耗したカッターを使用してカットしたカット端面と、刃先が摩耗していないカッターを使用してカットしたカット端面を比較すると、カット端面全体は、摩耗したときの方が、摩耗していないときに比べ、凹凸は大きい。凹凸が大きくなると、中空糸膜モジュール端面の中空糸膜の中空部分と各中空糸膜の隙間を充填するポッティング材のコントラストが低くなるので、中空糸膜の中空部分を正確に認識でき難くなり、不通糸(中空糸膜の端面から樹脂が中空糸膜内部に入り込み、中空部分が閉塞されている中空糸、をいう。)が存在する、と誤判定される場合が生じてくる。
【0005】
また、ポッティング材のコントラストが低い場合、ポッティング材のみからなるカット面部分にスジや縞模様が現れたとき、それを不浸透(中空糸膜どうしの間にポッティング材が浸透されていない状態、をいう。)や異物(中空糸膜モジュールのカット端面にごみや髪の毛といった異物が付着している状態、をいう。)が存在すると誤判定される場合がある。
【0006】
また、カット端面検査で不通糸や不浸透や異物という不良個所が存在すると判定されると再検査する必要があるので、誤判定が多発すると不必要な再検査数が多くなり作業効率が悪化する。さらに、不良個所の発生頻度が多くなるとカッター摩耗したと判断してカッター交換が行われるので、誤判定が多くなるほど、カッター交換頻度が多くなり生産効率が悪くなるという問題もある。
【特許文献1】特開平8-178853号公報
【特許文献2】特開2006-91007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、中空糸膜モジュール切断端面を撮像して端面の良否を判定する中空糸膜モジュール端面検査において、前記した従来技術における問題を解決し、切断端面における凹凸が大きくなった場合でも切断端面における中空糸膜の中空部分を正確に認識することができ、不通糸と誤判定される割合を減少させることであり、さらに、ポッティング部分を正確に認識することができ、不浸透や異物と誤判定される割合を減少させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る中空糸膜モジュールの検査方法は、多数本の中空糸膜からなる中空糸膜束を樹脂でポッティング処理した後、ポッティング部に片側から切断刃を押し当て横断面方向に切断し、多数の中空糸膜の開口端と該中空糸膜開口端どうしを繋ぐポッティング樹脂部とが配置された中空糸膜モジュール切断端面を形成し、次いで、該モジュール切断端面に光を照射し反射光を受光して撮像し、該撮像に基づき切断端面の判定を行う中空糸膜モジュールの検査方法であって、撮像時に載置された中空糸膜モジュールにおいて、切断刃が押し込まれた方向と、撮影装置からモジュール切断端面への撮像方向とが所定の関係となるように、中空糸膜モジュールの載置向きを制御することを特徴とする。
【0009】
切断刃が押し込まれた方向と、撮影装置からモジュール切断端面への撮像方向とを次のように制御することが好ましい。即ち、所定の関係モジュール切断端面の正面側から見て前記撮像方向が右向き方向である場合、切断刃が押し込まれた方向が、水平右向き、斜め右下向き若しくは斜め右上向きの方向、又は下向き方向であり、また、前記撮像方向が左向き方向である場合、切断刃の押し込まれた方向が、水平左向き、斜め左下向き若しくは斜め左上向きの方向、又は下向き方向であるように制御することが好ましい。
【0010】
また、切断刃が押し込まれた方向と、撮影装置からモジュール切断端面への撮像方向とが所定の関係となるようにするためには、ポッティング部を切断した時の中空糸膜モジュールの配置向きを変動させることなく、もしくは所定角度変動させて、モジュール切断端面の反射光を撮像する位置に載置すればよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明法により以下の効果を奏することができる。
(1) カット方向と撮像方向とが所定の関係となるように制御して中空糸膜モジュール端面を撮像することにより、中空糸膜モジュール端面の中空糸膜の中空部分と各中空糸膜の隙間に充填されたポッティング材とのコントラストを高くすることができ、不通糸・不浸透および異物との誤判定が生じる頻度を少なくすることが出来る。
(2) 誤判定されるモジュールが少なくなることにより再検査を要するモジュールの数が少なくなり、検査効率が上がる。
(3) また、中空糸膜モジュール端面の中空糸膜の中空部分と各中空糸膜の隙間に充填されたポッティング材とのコントラストを高くすることができるので、カッター摩耗と誤認される頻度が少なくなり、カッターの交換頻度が減少し、カッターの使用期間を長くすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の検査方法を、図1の中空糸膜モジュール検査装置を参照しながら説明する。図1は本発明の検査方法において使用される中空糸膜モジュール端面検査装置の一実施例を模式的に示す図(装置の上面図)である。
【0013】
図1に示す中空糸膜モジュール検査装置では、撮影装置(カメラ)8、画像処理装置11、操作指令装置13、検査テーブル6、テーブルコントローラー12、および光源7が所定位置に配置されている。また、前工程において多数本の中空糸膜からなる中空糸膜束を樹脂でポッティング処理して作製されたポッティング処理品は、ポッティング部をカットして中空糸膜内が空隙となっている状態で集束・固定された端面を形成するために、カッター作動範囲内の位置に運ばれてきて、ポッティング部にカッター4が片側から押し当てられ横断面方向に切断される。図1においては、カッター4が左から右へと押し込まれて切断されている。カットされてモジュール切断端面が形成された中空糸膜モジュールは、次に、移載装置5により運ばれ、検査テーブル6上に載置され、検査テープル6上を右方向に移動される。撮像される所定位置に達した時に、切断端面に向けて光源から光が照射され、切断端面で反射された光がカメラ8により撮影される。撮影された像は、画像処理装置11等によりデータ処理されて切断端面の良否判定が行われる。
【0014】
本発明においては、撮像される所定位置において、切断刃が押し込まれた方向(以下、カット方向という。)と、撮像方向(撮影装置からモジュール切断端面への方向であり、図1における撮像方向は左から右への水平方向である。)とが所定の関係となるように、中空糸膜モジュールの載置向きを制御することが重要である。そのためには、切断されたモジュールを移載装置5により検査テーブル6上へと移動する際に、モジュールがモジュール長手方向を軸にして回動しないようにすること、もしくは所定角度のみ回動させることが必要である。即ち、移載装置5の把持アームにより、モジュールを後ろ側(切断端面を前とした場合の後ろ側)から把持して検査テーブル6上へと移動させる際に、把持アームをアーム中心軸に対し回転させることなく、もしくは所定角度のみ回動させてモジュールを検査テーブル6上に載せることである。
【0015】
検査テーブル上に載せられたモジュールは、テーブルとモジュールとの接触位置が同じままで(即ち、転がることなく)、右方向へと移送されるので、撮像される所定位置において、カット方向と撮像方向とを所定の関係にすることができる。
【0016】
ここで、カット方向と撮像方向とは、以下の所定関係を満たすことが効果的である。
(A) モジュール切断端面の正面側から見て前記撮像方向が右向き方向である場合:
切断刃が押し込まれた方向が、
(a1) 水平右向き、斜め右下向き若しくは斜め右上向きの方向、又は下向き方向であること。ここで、斜め右上向き方向は、45度上向きまでの斜め右上向き方向であることが好ましい。
特に好ましくは、
(a2) 水平右向き方向、若しくは45度下向きまでの斜め右下向き方向であること。
【0017】
(B) モジュール切断端面の正面側から見て前記撮像方向が左向き方向である場合:
切断刃が押し込まれた方向が、
(b1) 水平左向き、斜め左下向き若しくは斜め左上向きの方向、又は下向き方向であること。ここで、斜め左上向きの方向は、45度上向きまでの斜め左上向き方向であることが好ましい。
特に好ましくは、
(b2) 水平左向き方向、若しくは45度下向きまでの斜め左下向き方向であること。
【0018】
撮像方向が右向き水平方向である場合における撮像方向とカット方向との関係を図2(a)に、また、撮像方向が左向き水平方向である場合における撮像方向とカット方向との関係を図2(b)に示す。図2(a)、(b)は、撮像される位置におけるモジュール切断端面を正面側から見た正面図である。
【0019】
図2(a)においては、モジュール切断端面の右側に配置されている光源7から切断端面に向けて光が照射され、切断端面で反射された光は、その左側に配置されているカメラ8に受光されて撮影される。従って、この場合の撮像方向は矢印20aで示すように水平右向き方向である。また、カット方向(前工程において切断された際に切断刃が押し込まれた方向)が、右向き水平方向である場合は矢印23で示され、45度上向きの斜め右上向き方向である場合は矢印24で示され、45度下向きの斜め右下向き方向の場合は矢印22で示され、また、下向き方向である場合は矢印21で示される。「45度上向きまでの斜め右上向き方向」とは、45度上向きの斜め右上向き方向(矢印24)から右向き水平方向(矢印23)まで(矢印23は含まない)の間の斜め右上向き方向を意味する。また、斜め右下向き方向とは、右向き水平方向(矢印23)から(矢印23は含まない)下向き方向の矢印21まで(矢印21は含まない)の間の斜め右下向き方向を意味する。
【0020】
図2(b)においては、モジュール切断端面の左側に配置されている光源7から切断端面に向けて光が照射され、切断端面で反射された光は、その右側に配置されているカメラ8により撮影される。従って、この場合の撮像方向は矢印20bで示すように水平左向き方向である。また、カット方向を示す矢印31、矢印32、矢印33、矢印34は、それぞれ、下向き方向、45度下向きの斜め左下向、左向き水平方向、45度上向きの斜め左上向き方向である。
【0021】
本発明で検査対象とする中空糸膜モジュール1は、多数本の中空糸膜2を束ねてなる中空糸膜束を樹脂でポッティング処理(封止固定)した後、ポッティング部に片側から切断刃を押し込んで横断面方向に切断し、多数の中空糸膜の開口端と該中空糸膜開口端どうしの間を埋めるポッティング樹脂部とが配置された中空糸膜モジュール切断端面を形成したものである。
【0022】
中空糸膜2としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリスルフォン系等の樹脂から製造された多孔質中空糸膜が挙げられる。ポッティング処理に用いられる樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂といったものがあげられる。樹脂でポッティング処理された後、ポッティング部の片側にカッター4を押し当て横断面方向にカットし、ポッティング先端側部分を除去する。
【0023】
カッター4としては、片側から刃を押し当てて切断するギロチン形式カッターを用いればよい。また、カッターの刃形状としては片刃および両刃があるが、中空糸膜モジュールの端面の中空糸膜の中空部分と各中空糸膜の隙間および中空糸膜と隙間を固定するポッティング材のコントラストをカット数が増えても高く保つためには両刃であることが望ましい。カッターの材質はセラミックスやタングステンカーバイトといったものがあげられる。ポッティング材充填部の余計な部分をカットした中空糸膜モジュールはカット方向を固定した状態で、移載装置5のアームで把持されて移動され、カット方向が所定となるような状態で検査テーブル6上に載置させる。移載装置5から検査テーブル6上に中空糸膜モジュール1を載せる際、図1では1つのモジュールを把持して移載する場合を示すが、複数のアームで複数のモジュールを把持して検査テーブル上に移載させてもよい(図示なし)。このように複数のモジュールを移載させると、複数のモジュールの検査時間を短縮させることができ、即ち、1本あたりの検査タクトを短縮することが出来る。
【0024】
光源7は、検査テーブル上に置かれた中空糸膜モジュールの切断端面に向けて光を照射する装置である。その照明としては、紫外線照明・深紫外線照明・可視光照明といったものがあげられる。また、光学系の方式としては散乱方式と正反射方式といったものがあげられる。可視光照明と正反射方式の組合せが、中空糸膜の中空部分とポッティング部分のコントラストを高く撮像できるので、不通糸・不浸透および異物の検出には好ましい。また、その際の照射角度αは30±3°である事が好ましい。反射光を受光するカメラ8は、
光源7から照射された光による切断端面の画像を撮影し、画像データとする。カメラとしては可視用カメラや紫外線用カメラが使用できる。
【0025】
また、所定位置にモジュールが移動してきた時にカメラによる撮影を行うためにセンサが取り付けられている(図示なし)。このセンサとしてはエリアセンサやラインセンサが用いられる。ラインセンサカメラでは撮像の際に走査時間が発生するからラインセンサカメラ方式を採用する場合は複数本同時撮像が前提である。光源7と中空糸膜モジュール1のカット端面との間の距離は140±50mmの範囲であることが望ましい。また、カメラ8と中空糸膜モジュール1のカット端面との間の距離は分解能20μm/Pixである場合は、220±50mmの範囲であることが望ましい。また、分解能40μm/Pixである場合は、361±50mmの範囲であることが望ましい。画像処理装置11には、カメラ8により撮影された画像データが伝達され、画像データに基づいて中空糸膜モジュール端面の外観検査(欠陥調査及び良否判定)が行なわれる。
【0026】
テーブルコントローラー12は、検査テーブル6上に載せられた中空糸膜モジュール1を、カメラ8で撮影するために最適な位置に移動させることを制御する装置である。中空糸膜モジュール1を撮影に最適な位置まで移動させる際には、カット方向が変動しないように、即ち、検査テーブル上でモジュール1が転がり移動しないようにする。画像処理装置11は、所定の基準値を満たした中空糸膜モジュールを合格品、満たさなかった中空糸膜モジュールを不良品と判定する。画像処理装置11で判定した結果をもとに操作指令装置13が合格品モジュールと不良品モジュールとを区分けする。
【実施例】
【0027】
<実施例1>
ポリスルホン製中空糸膜の912本を束ねた状態で樹脂によりポッティング処理した後、図1に示す中空糸膜モジュール検査装置におけるカット位置に載置した。
【0028】
カット位置において、カッター4を左から右方向へと押し込んでポッティング部を切断し、ポッティング先端部分を取り除いた。次に、移載装置5により、検査テーブル6上に移載した。カッター4が押し込まれたカット方向が、検査テーブル上においても同じカット方向となるようにした。従って、検査テーブル6に置かれたモジュールにおけるカット方向は、図2(a)における矢印23であった。このモジュールを検査テーブル6上の配置向きそのままで右方向に移動させ、所定の撮影位置に達した時に光源7からの光の反射光をカメラ8により撮影し、画像データを取得した。
【0029】
得られた画像データにおける、中空糸膜内の中空部分と中空糸膜間のポッティング材部分とのコントラストをカット面輝度として測定した。
【0030】
モジュールサンプル4本について、カット方向が図2(a)における矢印23にして測定したカット面輝度の平均値を求めた。表1に示すとおり、カット面輝度の平均値は、125.5であった。
【0031】
また、同じモジュールサンプル4本について、検査テーブル6上に置く際のカット方向を、矢印21、矢印22、矢印24、矢印25、矢印26、矢印27、矢印28とした以外は上記と同様にして切断端面での反射光を撮影し、カット面輝度を測定した。そのカット面輝度の平均値は表1に示すとおりであった。
【0032】
図2において、矢印21〜28は、角度が45度ずつ異なる向きを示すものである。
【0033】
【表1】

【0034】
表1の結果から、撮像方向と中空糸膜モジュールのカット方向との関係によってカット面輝度が異なり、撮像方向とカット方向とを所定範囲内に制御することによってカット面輝度を高くすることができることがわかる。さらに、撮像方向が図2(a)に示すように右向きである場合には、矢印22、矢印23である場合が最もカット面輝度が高くなり、矢印21、矢印24の場合が次いで高くなることがわかる。
【0035】
<実施例2>
実施例1の場合と同様にしてポッティング処理し、カットして得られた切断端面をもつ中空糸膜モジュール4本を用い、カット面輝度値が高いこと、低いことが、端面検査に与える影響について調べた。
【0036】
撮像方向を実施例1と同様、図2(a)に示す右向き方向とし、カット方向を、矢印23、矢印27として、切断端面での反射光の画像データを取得し、カット面輝度を求めた。そのカット面輝度の平均値は、表2に示すとおり、カット方向が矢印23の方が輝度値が大きかった。
【0037】
また、撮像方向とカット方向とを上記同様に制御した場合について、カット面の中空部分の見逃しした場合(中空糸が不通糸であるにも関わらず、不通糸と認識せずに正常糸と認識した場合)の本数と、過検出(中空糸が正常糸であるにもかかわらず、正常糸と認識せず不通糸と認識した場合)の本数とを数えた。その結果は表2に示すとおりであり、カット方向を矢印23としてカット面輝度が高い方が、画像データ処理においての見逃しや過検出の本数が少なくなることがわかる。よって、カット面輝度値を高くすることにより画像データ処理における測定精度が高くなり誤判定が少なくなることがわかる。
【0038】
【表2】

【0039】
<実施例3>
カッターが使用により経日的に摩耗していった場合について、カット方向が検査精度に及ぼす影響を調べた。
【0040】
実施例2と同様にして作製した切断端面をもつ中空糸膜モジュールの切断端面の撮影を、図2(a)に示す右向き方向の撮像方向で、カット方向を矢印23、矢印27として、行なった。その際、カッターの使用頻度は1日あたり、およそ14,000本とした。
【0041】
カッター使用経過日ごとに、過検出の本数と見逃しの本数とを、実施例2の場合と同様に調べた。表3に示すカッター使用日数による中空糸認識精度(中空糸912本)の結果より、カッター使用頻度が少ないときはカット方向の違いによる測定精度の差は小さく、見逃しや過検出の本数の差は小さかった。しかし、カッター使用頻度が高くなるにつれ、カット方向の違いによる見逃し、過検出の本数の差が大きくなり、測定精度への影響が大きくなることがわかる。これにより、同一カッターを長期間使用する場合は、撮影時におけるモジュールのカット方向を所定の好適な範囲内に制御することが、誤判定を抑制するために有効であることがわかる。
【0042】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明法は、浄水器用モジュールの切断端面の良否判定のための検査に適用することができる。また、人工腎臓用モジュールのような医療用中空糸膜モジュールの切断端面検査にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明法において用いる中空糸膜モジュール検査装置の一実施形態の概略を模式的に示す上面図である。
【図2(a)】中空糸膜モジュールのカット端面を撮像する時のカット方向と撮像方向との関係を示す側面図である。
【図2(b)】中空糸膜モジュールのカット端面を撮像する時のカット方向と撮像方向との関係を示す側面図である。
【符号の説明】
【0045】
1: 中空糸膜モジュール
2: 中空糸膜
3: ポッティング部
4: カッター
5: 移載装置
6: 検査テーブル
7: 光源
8: カメラ
α: 切断端面への光照射角度
11: 画像処理装置
12: テーブルコントローラー
13: 操作指令装置
20a、20b: 撮像方向
21〜28、31〜34: カット方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数本の中空糸膜からなる中空糸膜束を樹脂でポッティング処理した後、ポッティング部に片側から切断刃を押し当て横断面方向に切断し、多数の中空糸膜の開口端と該中空糸膜開口端どうしを繋ぐポッティング樹脂部とが配置された中空糸膜モジュール切断端面を形成し、次いで、該モジュール切断端面に光を照射し反射光を受光して撮像し、該撮像に基づき切断端面の判定を行う中空糸膜モジュールの検査方法であって、撮像時に載置された中空糸膜モジュールにおいて、切断刃が押し込まれた方向と、撮影装置からモジュール切断端面への撮像方向とが所定の関係となるように、中空糸膜モジュールの載置向きを制御することを特徴とする中空糸膜モジュールの検査方法。
【請求項2】
モジュール切断端面の正面側から見て前記撮像方向が右向き方向である場合、切断刃が押し込まれた方向が、水平右向き、斜め右下向き若しくは斜め右上向きの方向、又は下向き方向であり、また、前記撮像方向が左向き方向である場合、切断刃の押し込まれた方向が、水平左向き、斜め左下向き若しくは斜め左上向きの方向、又は下向き方向であることを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜モジュールの検査方法。
【請求項3】
ポッティング部を切断した時の中空糸膜モジュールの配置向きを変動させることなく、もしくは所定角度変動させて、モジュール切断端面の反射光を撮像する位置に載置することにより、前記切断刃押し込み方向と前記撮像方向とのなす角度を所定範囲内とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュールの検査方法。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【公開番号】特開2008−246378(P2008−246378A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91108(P2007−91108)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】