説明

中空糸膜モジュール検査装置

【課題】
本発明の課題は、異なった素材による中空糸膜を用いた場合、白色の原料または透明度の高い原料のいずれの原料を使用した場合でも、リング型照明の射出角度および位置を任意に切り替えることで、高精度に糸乱れ欠点の検査を行うことができる中空糸膜モジュールの検査装置を提供することである。
【解決手段】
中空糸膜モジュールへ光を照射する射出角度の異なる2つの照射口を持つリング型照明と、前記リング型照明の前記2つの照射口にそれぞれ接続される2つの照明光源と、前記照明光源の動作を制御する照明切り替え手段と、前記リング型照明の内側に前記中空糸膜モジュールを所定の挿入幅にて調節しつつ挿入させる移動手段と、光が照射された前記中空糸膜モジュールからの散乱光を受光する撮像手段と、前記撮像手段で得られた画像を処理する欠陥判別手段と、前記モジュールを搬送させる手段とを有する中空糸膜モジュール検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工透析機、下排水処理装置、浄水器等に用いることができる中空糸膜モジュールの端面に発生する欠陥を検出するための中空糸膜モジュールの検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中空糸膜モジュールはよく知られているように、たとえば、両端が開放された容器に両端が開放された中空糸膜(中空の半透膜)の糸束を収容し、糸束の両端部において容器と中空糸との隙間を樹脂で封止してなるものである。樹脂による封止は、容器と糸束との間の空間に樹脂を流し込み樹脂を各中空糸の周りに浸透させることによって行うが、その際、糸束から逸れた中空糸が発生することがあり、その逸れた中空糸の端部が、中空糸膜モジュールの端部においてOリングなどによりふさがれる領域に現れることで、中空糸の片側が閉塞されてしまう。たとえば人工腎臓の場合、片側の端部が閉塞されることで、逆側の開放されている端部から流入する血液が残る懸念がある。このような欠陥を糸乱れというが、糸乱れが発生している中空糸膜モジュールは、前記のような理由から、不良品として排出する必要がある。 例えば、特許文献1に記載されている中空糸膜モジュール検査装置は、一つの種類の中空糸膜、たとえばポリスルホンなどの白色の素材を主原料とした中空糸膜を使用した中空糸膜モジュールの検査を行うための構成であり、中空糸膜モジュールの良否の判定は、リング型照明によりモジュール端部の正面から光を照射し、その散乱光をCCDカメラにて撮像し、糸束から逸れた中空糸の有無を検出することで行っている。
【0003】
そのため別の素材を用いた中空糸膜、たとえばポリメチルメタクリレートのような透明度の高い素材を主原料とした中空糸膜を用いた中空糸膜モジュールを検査する場合、前述の方法のようにモジュール正面から光を当てると、中空糸膜は透明であるため多くの光が透過してしまい、撮像することができず、糸乱れ欠陥の検出は不可能であった。このため白色の素材を主原料とした中空糸膜のモジュールの検査工程においては、透明度の高い素材を主原料とした中空糸膜のモジュールについては目視で全数検査を行っているのが現状であった。

【特許文献1】特開2004−113894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上記のような従来の技術における問題点を解決し、異なった素材による中空糸膜を用いた場合、すなわち白色の原料または透明度の高い原料のいずれの原料を使用した場合でも、リング型照明の射出角度および位置を任意に切り替えることで、高精度に糸乱れ欠点の検査を行うことができる中空糸膜モジュールの検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
中空糸膜モジュールへ光を照射する射出角度の異なる2つの照射口を持つリング型照明と、前記リング型照明の前記2つの照射口にそれぞれ接続される2つの照明光源と、前記照明光源の動作を制御する照明切り替え手段と、前記リング型照明の内側に前記中空糸膜モジュールを所定の挿入幅にて調節しつつ挿入させる移動手段と、光が照射された前記中空糸膜モジュールからの散乱光を受光する撮像手段と、前記撮像手段で得られた画像を処理する欠陥判別手段と、前記モジュールを搬送させる手段とを有する中空糸膜モジュール検査装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る中空糸膜モジュール検査装置、中空糸膜モジュールの検査若しくは製造方法によれば、複数の照射口をもつリング型照明を用い、中空糸膜モジュールへの挿入幅および照射口を切り替えることで、白色の素材を主原料とした中空糸膜を用いた中空糸膜モジュール、透明度の高い素材を主原料とした中空糸膜を用いた中空糸膜モジュールのいずれも精度よく検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施態様に係る中空糸膜モジュール検査装置の全体構成図である。
【図2】リング型照明の正面からの外観図(a)とその断面図(b)である。
【図3】白色の素材を主原料とした中空糸膜を使用した中空糸膜モジュールの検査時の、リング型照明の挿入時の構成例を示す全体図(a)と端部図(b)である。
【図4】白色の素材を主原料とした中空糸膜を使用した中空糸膜モジュールの検査時の、モジュール前面から照射される光の代表的な経路を示す模式図である。
【図5】透明度の高い素材を主原料とした中空糸膜を使用した中空糸膜モジュールの検査時の、モジュール前面から照射される光の代表的な経路を示す模式図である。
【図6】透明度の高い素材を主原料とした中空糸膜を使用した中空糸膜モジュールの検査時の、リング型照明の挿入時の構成例を示す全体図(a)と端部図(b)である。
【図7】透明度の高い素材を主原料とした中空糸膜を使用した中空糸膜モジュールの検査時の、モジュール側面から照射される光の代表的な経路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施態様に係る中空糸膜モジュール検査装置の全体構成を示している。図1において、Mは中空糸膜モジュール、1はモジュール搬送手段、2は撮像手段、3は操作指令手段、4は欠陥判別手段、5は表示装置をそれぞれ示している。前工程から供給される中空糸膜モジュールMは、モジュール搬入手段101により支持手段102に設置される。モジュールMが設置された後、照明移動手段203によりリング型照明202が中空糸膜モジュールMへ挿入され、照射口切り替え手段204により照明光源A205あるいは照明光源B206が切り替えられる。これらの照明光源からの照射光はリング型照明202の照射口A207あるいは照射口B208を通して中空糸膜モジュールMへ照射され、中空糸膜モジュールMからの散乱光を撮像装置201が受光し、撮像画像を得る。
【0010】
ここで、撮像装置201はエリアセンサカメラであることが好ましい。
【0011】
撮像された画像に基づいて、欠陥判別手段5を用いて欠陥を判別する。判別結果を元に、モジュール搬出手段103を用いて良品モジュールのみを選択的に次工程へ搬出する。
【0012】
本発明におけるリング型照明とは図2(b)の202に示すように、中央が空洞を有し、出射角度の違う2つの照射口A207および照射口B208を有し、照射領域が円形である照明を言う。なお、2つの照射口A207および照射口B208は、リング型照明の内部を通る光ファイバを通じて、照射口A207は照明光源A205に、照射口B208は照明光源B206に接続されている。なお、中空糸膜モジュールに使用される中空糸膜素材がポリスルホンのような白色の素材である場合、中空糸膜モジュールの端面の正面側より光を照射することで、中空糸膜モジュール端面の中空糸膜が光をよく散乱し、散乱光を効率よく撮像装置で得ることができる。そのためポリスルホンの中空糸膜を使用した中空糸膜モジュールMの検査を行う際は、図3に示すように照明移動手段203によりリング型照明202移動し、照射口A207を中空糸膜モジュールMの正面へ調整し、光源切り替え手段204により、リング型照明202の照射口A207に接続された照明光源A205からの照射光の中空糸膜モジュールMによる散乱光を撮像手段201が受光する。このとき中空糸膜がポリスルホンのように白色である場合、図4のように中空糸膜モジュール内各部の中空糸表面で光が散乱し、撮像手段201には撮像のために十分な光量が与えられる。
【0013】
一方で、中空糸膜モジュールに使用される中空糸膜素材がポリメチルメタクリレートのような透明度の高い素材である場合、図5のように中空糸膜モジュール端面の前面から光を照射した場合には、中空糸膜は光を透過もしくは反射してしまうため、撮像に十分な散乱光が得られず、精度のよい検査が行えない。そこで図6のようにリング型照明202を照明移動手段203により調整しつつ移動させることにより、リング型照明202の内側に中空糸膜モジュールMが所定の挿入幅にて挿入され、さらに光源切り替え手段204により、リング型照明202の照射口B208に接続された照明光源B206からの照射光を側面部より中空糸膜モジュールMへ照射することで、図7のように糸束側面からの多重反射光やそれによる散乱光を得ることができ、糸束および、糸乱れ欠陥を起こしている中空糸膜の撮像のために十分な光量が得られ、撮像装置201により欠陥画像を撮像することができる。
【0014】
撮像された画像を元に、欠陥判別手段4により、良品不良品の判別を行い、コンベヤやロボットのようなマテハン機器であるモジュール搬出手段104が不良品を工程から排出し、良品のみを次工程へ供給することで後工程での部品ロスが少なくなり生産性を向上できる。
【符号の説明】
【0015】
M:中空糸膜モジュール
1:モジュール搬送手段
2:撮像手段
3:操作指令手段
4:欠陥判別手段
5:表示装置
101:モジュール搬入手段
102:モジュール支持手段
103:モジュール走査手段
104:モジュール搬出手段
202:リング型照明
203:照明移動手段
204:照射口切り替え手段
205:照明光源A
206:照明光源B
207:照射口A
208:照射口B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空糸膜モジュールへ光を照射する射出角度の異なる2つの照射口を持つリング型照明と、前記リング型照明の前記2つの照射口にそれぞれ接続される2つの照明光源と、前記照明光源の動作を制御する照明切り替え手段と、前記リング型照明の内側に前記中空糸膜モジュールを所定の挿入幅にて調節しつつ挿入させる移動手段と、光が照射された前記中空糸膜モジュールからの散乱光を受光する撮像手段と、前記撮像手段で得られた画像を処理する欠陥判別手段と、前記モジュールを搬送させる手段とを有する中空糸膜モジュール検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−176368(P2012−176368A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41399(P2011−41399)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】