説明

中継接続ユニット

【課題】中継接続ユニットのネットワークマネジメント機能をハードウェア化した場合に仕様変更を可能にする。
【解決手段】電子制御ユニット30を夫々接続しているバス31間に介在させてネットワーク32を形成し、異なるバス31に属する前記電子制御ユニット30間で送受信するメッセージを中継する車載用の中継接続ユニット10であって、前記中継接続ユニット10のネットワークマネジメント処理回路11と、前記ネットワークマネジメント処理回路11に保有したネットワークマネジメント機能の仕様条件及び機能間の状態遷移条件のうちで変更可能性のある条件を、パラメータ化して記憶する記憶手段とを備え、前記ネットワークマネジメント処理回路11は、前記中継接続ユニット10の起動時に、前記記憶手段から前記パラメータを読み出し、該パラメータを用いてネットワークマネジメント機能を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継接続ユニットに関し、詳しくは、中継接続ユニットのネットワークマネジメント機能の仕様変更を可能にするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される機器を制御する電子制御ユニット(ECU)を多重通信用のバス同士を中継接続ユニット(ゲートウェイ)を介して接続してネットワークを構築し、異なるバスに属するECU間で送受信されるメッセージを該中継接続ユニットで中継する車載用通信システムが採用されている。
近年では、車両の高機能化および高性能化に伴って車両に搭載される機器が増加しており、中継接続ユニットが中継するメッセージの数も急増している。中継接続ユニットに多数のメッセージが送信された場合には、全てのメッセージを即座に中継処理することができず、中継待ちのメッセージが中継接続ユニット内に滞留することになり、メッセージの中継に遅延が生じてしまう。このため、中継接続ユニットは中継処理を高速に行うことが望まれている。
【0003】
そこで、特開2006−352235号公報(特許文献1)では、中継接続ユニットの中継処理をCPUのソフトウェアによらずにハードウェアにより行う構成が提案されている。中継接続ユニットは中継処理として、メッセージの中継先を特定する宛先検索処理と、メッセージの固定長セルのスイッチングを行うスイッチング処理を行っているが、特許文献1ではCPUで宛先検索処理とスイッチング処理を行うのではなく、ハードウェア化されたサーチエンジンとセルフルーティングモジュールにおいて宛先検索処理とスイッチング処理を行っている。
このため、CPUの処理性能がメッセージの中継速度に影響しなくなり、CPUの処理性能が原因で生じるメッセージの中継遅延の発生を低減することができる。
【0004】
一方、前述した車載用通信システムには、各ECUと中継接続ユニットにネットワークマネジメント機能を備えている場合がある。ネットワークマネジメント機能とは、バスに接続されたECUと中継接続ユニットが互いにリングメッセージを送受信して、ECUの初期化やネットワークの起動、ネットワーク設定、ECUやネットワークの動作状態の検知や処理及び信号送信、ECU等のパラメータの読み込みや設定などの処理を行う機能であり、該ネットワークマネジメント機能によりECUと中継接続ユニットの間の通信の安全性と信頼性を確保している。
これらネットワークマネジメント機能の処理には、タイマ値、エラーカウンタ閾値等のパラメータの仕様を用いている。
【0005】
しかし、該ネットワークマネジメント機能を特許文献1のようにハードウェアで構成した場合、各処理に用いるパラメータ等の仕様もハードウェア内に組み込まれる。このため、仕様を変更する場合には、ハードウェア構成そのものを変更しなければならず、仕様の変更が困難であるという問題がある。
また、これらの仕様は自動車の車種ごとに異なるため、車種毎にネットワークマネジメント機能をハードウェアで構成しなければならず、ハードウェア化されたネットワークマネジメント機能を共用化できないという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2006−352235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、中継接続ユニットのネットワークマネジメント機能の仕様変更を可能にすると共に、ハードウェア化されたネットワークマネジメント機能を車種によらず共用化することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、電子制御ユニットを夫々接続しているバス間に介在させてネットワークを形成し、異なるバスに属する前記電子制御ユニット間で送受信するメッセージを中継する車載用の中継接続ユニットであって、
ネットワークマネジメント機能を実行するネットワークマネジメント処理回路と、
前記ネットワークマネジメント処理回路に保有したネットワークマネジメント機能の仕様条件及び機能間の状態遷移条件のうちで変更可能性のある条件を、パラメータ化して記憶する記憶手段を備え、
前記ネットワークマネジメント処理回路は、起動時に前記記憶手段から前記パラメータを読み出し、該パラメータを用いてネットワークマネジメント機能を実行するものであることを特徴とする車載用の中継接続ユニットを提供している。
【0009】
ネットワークマネジメント処理回路は所定のパラメータ(仕様)を用いて処理を行っている。該パラメータはネットワークマネジメント処理回路内に設けるのではなく、ネットワークマネジメント処理回路とは別体として設けた記憶手段に予め記憶させており、中継接続ユニットの起動時にネットワークマネジメント処理回路が記憶手段からパラメータを読み出している。
このように、該パラメータは記憶手段に記憶されているので、パラメータを変更させたい場合には記憶手段のパラメータを書き直すだけでよく、容易にパラメータの変更を行うことができる。
【0010】
前記ネットワークマネジメント処理回路は、集積回路で形成し、前記記憶手段は書き換え可能な不揮発性メモリで形成し、
前記記憶手段で記憶するパラメータは、遷移条件に対応した遷移先、自中継接続ユニットのID、タイマ値、エラーカウンタ閾値、スリープ制御のいずれかを含んでいることが好ましい。
【0011】
ネットワークマネジメント処理回路は集積回路(IC)からなるハードウェアで形成する一方、自動車の車種毎に異なるパラメータ(仕様)は記憶手段から読み込んでいるので、ネットワークマネジメント処理回路は仕様によらずハードウェア化することができ、ハードウェア化されたネットワークマネジメント処理回路を自動車の車種によらず共用化することができる。
またネットワークマネジメント処理回路をCPUのソフトウェアで形成せず、コントローラの回路からなるハードウェアで形成することで、CPUの処理性能によってメッセージの中継に遅延が生じることを防ぐことができる。また、CPUは同時に1つの処理しか行うことができないが、ネットワークマネジメント処理回路をハードウェアで構成することで同時に2以上の処理を並行して行うことが可能となり、中継接続ユニットの処理速度を上げることができる。
【0012】
ネットワークマネジメント処理回路を形成する集積回路(Integrated Circuit)は、ネットワークマネジメント機能のために設計製造されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってもよい。また、内部の回路構成が変更可能な集積回路であるFPGA(Field Programmable Gate Array)であってもよい。
該ASIC又はFPGAには、ネットワークマネジメント処理機能だけでなく、不揮発性メモリからパラメータを読み込む処理、中継処理、ダイアグ処理、メインループ処理等、中継接続ユニットの動作のための処理機能を備えていてもよい。
さらに、記憶手段を書き換え可能な不揮発性メモリとすることで、遷移先等のパラメータを仕様変更に応じて書き換えることができる。
【0013】
前記ネットワークマネジメント処理回路は、前記バスを介して接続した電子制御ユニットにリングメッセージを送信し、通信エラー検出あるいは/および前記スリープ制御を行っていることが好ましい。
前記ネットワークマネジメント処理回路は、書き換え可能な不揮発性メモリから読み出したパラメータを用いてリングメッセージを送信することで、通信エラー検出を行うことができ、また、ウェイクアップモードから省電力モードに中継接続ユニットを遷移させるスリープ制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
前述したように、本発明の車載用の中継接続ユニットによれば、ネットワークマネジメント処理回路が用いるパラメータ(仕様)を、ネットワークマネジメント処理回路内に設けるのではなく、ネットワークマネジメント処理回路とは別体に設けた記憶手段に予め記憶させているので、パラメータを変更させたい場合には記憶手段のパラメータを書き直すだけでよく、容易にパラメータの変更を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図3は本発明の第1実施形態を示す。
本発明の車載用の中継接続ユニット10は、電子制御ユニット(ECU)30を夫々接続しているバス31間に介在させてネットワーク32を形成し、異なるバス31に属する前記ECU30間で送受信するメッセージを中継するものである。
本実施形態では、中継接続ユニット10を2本のバス31A、31Bの間に介在させてネットワーク32を形成すると共に、2本のバス31A、31Bに夫々2つのECU30−1、30−2を接続している。通信プロトコルはCANである。
【0016】
図1に示すように、中継接続ユニット10は同一基板上に、中継接続ユニット用LSI40と、電源41と、EEPROM12と、ドライバ42と、コネクタ43を備えている。
中継接続ユニット用LSI40(Large scale Integrated Circuit)は集積回路(IC)であり、中継接続ユニット10用に設計されたASICでハードウェアとして構成している。中継接続ユニット用LSI40は後述するネットワークマネジメント処理回路11、中継処理等15等を備えて中継接続ユニット10を動作させるLSIである。
電源41は集積回路であるLSIで構成し、中継接続ユニット用LSI40と接続して、中継接続ユニット用LSI40を駆動するための電力を供給している。
ドライバ42A、42Bも集積回路であるLSIで構成し、各バス31毎に設けてコネクタ43を介して各バス31と接続している。また、中継接続ユニット用LSI40と接続しており、中継接続ユニット用LSI40が送受信するメッセージをバス31へ送信またはバス31から受信するために、メッセージを構成するデータ信号の電位を調節している。
【0017】
記憶手段を構成する書き換え可能な不揮発性メモリであるEEPROM12は、中継接続ユニット用LSI40と接続しており、ネットワークマネジメント処理回路11に保有したネットワークマネジメント機能の仕様条件及び機能間の状態遷移条件のうちで変更可能性のある条件をパラメータ化して記憶している。また中継処理回路15、送受信回路14で用いる条件もパラメータ化して記憶している。
【0018】
図2はパラメータの例を示し、ネットワークマネジメント機能に関するデータとして、遷移条件に対応した遷移先、自中継接続ユニットのID、タイマ値、エラーカウンタ閾値、スリープ制御を記憶している。
例えば、タイマ値としてネットワークマネジメント処理回路11が送信するリングメッセージRの最大送信間隔Tmaxや標準送信間隔Ttyp等の時間を示すパラメータを記憶しており、例えばTtyp=70msec、Tmax=220msecとしている。また、エラーカウンタ閾値はネットワークマネジメント処理回路11が中継接続ユニット10をエラー状態に遷移させるエラー検知数の閾値であり、rx_limitは4に、tx_limitは8に設定している。スリープ制御はオンオフで示されており、スリープ制御のパラメータは中継接続ユニットに接続されたバス31の構成から必要性を判断し、必要な場合にのみEEPROM12に記憶している。また、自中継接続ユニット10のIDとして例えば10を記憶している。
【0019】
さらに、EEPROM12には、中継処理回路15が用いるパラメータであるメッセージの中継先を記載したルーティングテーブルを記憶している。ルーティングテーブルは中継するメッセージのIDが163種類である。
また、送受信回路14が用いるパラメータである通信速度も記憶しており、CANの速度上限を1Mbpsとしている。
なお、記憶手段を構成する書き換え可能な不揮発性メモリはEEPROM12に限定されず、マスクROMやフラッシュメモリであってもよい。
【0020】
中継接続ユニット用LSI40は、ネットワークマネジメント処理回路11と、EEPROM12のパラメータを読み込むEEPROM処理回路13と、送受信回路14と、中継処理回路15と、ダイアグ処理回路16と、メインループ受信回路17と、パラメタ処理回路18とを備えている。
EEPROM処理回路13はEEPROM12と接続するためのインターフェースであり、EEPROM12に記憶されたパラメータを読み込んでいる。
パラメタ処理回路18はEEPROM処理回路13と接続すると共に、ネットワークマネジメント処理回路11、中継処理回路15、送受信回路14と接続しており、EEPROM処理回路13から読み込んだパラメータをネットワークマネジメント処理回路11、中継処理回路15、送受信回路14に送信している。
【0021】
ネットワークマネジメント処理回路11はEEPROM処理回路13がEEPROM12から読み出したパラメータをパラメタ処理回路18を介して受け取っている。また、中継処理回路15と接続している。
ネットワークマネジメント処理回路11は、各ECU30と中継接続ユニット10の通信の安全性と信頼性を確保するものであり、具体的には、各ECU30とリングメッセージRの送受信を行うことで、ECU30の初期化やネットワーク32の起動、ネットワーク32の設定、ECU30やネットワーク32の動作状態の検知や処理及び信号送信、ECU30等のパラメータの読み込みや設定などの処理を行っている。EEPROM処理回路13を介して読み込んだパラメータはこれらの処理に用いる。
なお、リングメッセージRとは、中継接続ユニット10の中継処理回路15が送受信するメッセージのうち、特にネットワークマネジメント処理回路11に送信され、ネットワークマネジメント処理回路11が使用するメッセージをいう。
【0022】
メインループ受信回路17は電源41と接続していると共に、ネットワークマネジメント処理回路11、ダイアグ処理回路16、中継処理回路15、パラメタ処理回路18、送受信回路14と接続しており、中継接続ユニット10に電源41が投入された場合には、メインループ受信回路17はネットワークマネジメント処理回路11、ダイアグ処理回路16、中継処理回路15、パラメタ処理回路18、送受信回路14にウェイクアップ信号を出力して、各回路をウェイクアップさせている。
【0023】
中継処理回路15は各バス31と接続された送受信回路14と接続しており、EEPROM12に記憶したルーティングテーブルを用いてメッセージの中継処理を行っている。
ダイアグ処理回路16は、中継接続ユニット10に図示しないダイアグノーシスが接続された場合に、ダイアグノーシスとのデータの送受信を行っている。
送受信回路14は各バス31A、31B毎に設けており、EEPROM12に記憶した通信速度のパラメータを用いてバス31とのメッセージの送受信を行っている。
【0024】
図3は中継接続ユニット10に電源41を投入した場合にネットワークマネジメント処理回路11がEEPROM12からパラメータを読み込む動作を示すシーケンス図である。
ステップS11では、中継接続ユニット10のメインループ受信回路17に電源41を投入すると、メインループ受信回路17がウェイクアップする。
ステップS12では、メインループ受信回路17が、ネットワークマネジメント処理回路11及びパラメタ処理回路18、送受信回路14A、14B、中継処理回路15、ダイアグ処理回路16にウェイクアップ信号を送信する。ウェイクアップ信号を受信した各回路はウェイクアップし、初期化処理を行っている。
【0025】
ステップS13では、パラメタ処理回路18はウェイクアップ後に、EEPROM処理回路13にウェイクアップ信号を出して、EEPROM処理回路13をウェイクアップさせている。
ステップS14では、EEPROM処理回路13はEEPROM12のパラメータを読み出す。
ステップS15では、EEPROM処理回路13はパラメタ処理回路18にパラメータを出力する。
【0026】
ステップS16では、パラメタ処理回路18はネットワークマネジメント処理回路11にパラメータを出力している。なお、EEPROM処理回路13はEEPROM12のパラメータを読み出してからネットワークマネジメント処理回路11のパラメタ処理回路18がパラメータを読み込む時間は、ネットワークマネジメント処理回路11がウェイクアップ後初期化するまでの時間に比べて十分に短いため、パラメータの読み込みにかかる時間のために中継接続ユニット10の動作が遅延することはない。
また、パラメタ処理回路18は、読み出したパラメータのうち中継処理回路15にルーティングテーブルを出力している。さらに、送受信回路14A、14Bに通信速度を出力している。
ステップS17では、パラメタ処理回路18はメインループ受信回路17にパラメータの読み取りの完了を通知する。
ステップS18では、メインループ受信回路17は、ネットワークマネジメント処理回路11、送受信回路14A、14B、中継処理回路15、ダイアグ処理回路16に起動信号を送信し、各回路を動作可能な起動状態にさせている。
【0027】
前記構成とすることで、ネットワークマネジメント処理回路11が用いるパラメータはEEPROM12に記憶されているので、パラメータを変更させたい場合にはEEPROM12のパラメータを書き直すだけでよく、容易にパラメータの変更を行うことができる。
また、ネットワークマネジメント処理回路11は集積回路(IC)からなるハードウェアで形成する一方、自動車の車種毎に異なるパラメータ(仕様)はEEPROM12から読み込んでいるので、ネットワークマネジメント処理回路11は仕様によらずハードウェア化することができ、ハードウェア化されたネットワークマネジメント処理回路11を自動車の車種によらず共用化することができる。
【0028】
図4乃至図6は本発明の第2実施形態を示す。
第2実施形態は、EEPROM12からパラメータを読み込んだ第1実施形態の中継接続ユニット10のネットワークマネジメント処理回路11の動作を示している。
中継接続ユニット10に加え、バス32と接続したECU30も、夫々ネットワークマネジメント処理回路(図示せず)を備えており、図4に示すように、中継接続ユニット10とECU30A−1、30A−2のネットワークマネジメント処理回路11は、互いにリングメッセージRを送受信している。
【0029】
なお、該ECU30のネットワークマネジメント処理回路はCPUとソフトウェアで構成されているが、ハードウェアで構成していてもよい。
また、中継接続ユニットとバス32Bを介して接続されたECU30B−1、30B−2ともECU30A−1、30A−2と同様にリングメッセージRを送受信している。
【0030】
図5はリングメッセージRのフレームの構成を示している。
ネットワークマネジメント処理回路11が実行するネットワークマネジメント機能は、リングメッセージRのフレームのうち、データフィールド46の上位8ビットを、送信元の中継接続ユニット10またはECU30のIDを格納する送信元格納部43、続く8ビットを、送信先の中継接続ユニット10またはECU30のIDを格納する送信先格納部44と定めている。データフィールド46の残りの下位ビットは、ネットワークマネジメント機能毎に所定のデータを格納するデータ部45としている。
また、リングメッセージRはネットワークマネジメント処理回路11の機能ごとにメッセージのアービトレーションフィールド41に記載する識別子が定められている。
コントロールフィールド42にはデータフィールド46のデータ長が格納されている。
【0031】
中継接続ユニット10のネットワークマネジメント処理回路11は、EEPROM12から自中継接続ユニット10のIDを読み込んでいる。また、各ECU30及び中継接続ユニット10のネットワークマネジメント処理回路11は、ネットワークマネジメント処理回路11の機能の一つであるID検出の機能により、リングメッセージRの送信先のIDを相互に保有する。
詳細には、中継接続ユニット10の起動時において、各ECU30及び中継接続ユニット10は前記リングメッセージRの送信元格納部43と送信先格納部44の両方に自らのIDを格納してバス31に送信する。各ECU30及び中継接続ユニット10は他の各ECU30又は中継接続ユニット10からリングメッセージRを受信すると、該リングメッセージRから自らのIDよりも大きい値を持つIDを読み出して記憶する。以後、各ECU30及び中継接続ユニット10は、自分宛のリングメッセージRを受信した場合に、自らのIDの次に値が大きいIDのECU30又は中継接続ユニット10を送信先としてリングメッセージRを送信する。
【0032】
さらに、ネットワークマネジメント処理回路11はEEPROM12から通信速度のパラメータとスリープ制御のパラメータを読み出している。また、バス31上に流れるリングメッセージRの最大送信間隔Tmax、リングメッセージRを受信してから他のECU30又は中継接続ユニット10に送信するまでの標準送信間隔Ttyp、ネットワークマネジメント処理回路11に備えたカウンタ(図示せず)の制限値であるrx_limit、tx_limitもEEPROM12から読み出している。
【0033】
本実施形態では、ネットワークマネジメント処理回路11が行うネットワークマネジメント機能として、通信エラー検出機能及びスリープ制御である状態遷移監視機能について説明する。
まず、通信エラー検出機能について説明する。通信エラー検出機能はリングメッセージRを互いに送受信することで、各ECU30及び中継接続ユニット10がメッセージを送信できない、もしくはメッセージの送信に遅延が生じるなどの通信異常状態にあることを検知する機能である。
【0034】
本実施形態では、中継接続ユニット10は、EEPROM12からIDを読み出た自中継接続ユニット10のIDを10とすると共に、ECU30A−1のIDを20、ECU30A−2のIDを30としている。また、通信エラー検知機能のための識別子は200hとする。
このとき、中継接続ユニット10のネットワークマネジメント処理回路11は、図4のR1に示すように、リングメッセージRのデータフィールド46の送信元格納部43にID10を格納し、送信先としてECU30A−1を示すID20を送信先格納部44に格納する。データ部45には何も格納しない。また、アービトレーションフィールド41に通信エラー検知のための識別子200hを格納する。
【0035】
中継接続ユニット10のネットワークマネジメント処理回路11がリングメッセージRA1をバス31Aに送信すると、ECU30A−1、ECU30A−2は該リングメッセージRを受信する。ECU30A−1、ECU30A−2のネットワークマネジメント処理回路11はリングメッセージRA1のデータフィールド46の送信先格納部44に自身のIDが格納されているか否かを判定する。リングメッセージRA1の送信先のIDは20であるため、ECU30A−1はリングメッセージRA1が自分宛であると判断し、ECU30A−1はリングメッセージRA1を受信する。
【0036】
リングメッセージRA1を受信したECU30A−1は、データフィールド46の送信元格納部43に自身のID20を格納すると共に、送信先格納部44にECU30A−2のIDである30を格納してリングメッセージRA2とし、EEPROM12から読み込んだ標準送信間隔Ttypの期間の経過後にリングメッセージRA2をバス31Aに送信する。
ECU30A−2はリングメッセージRA2が自分宛であると判断してリングメッセージRA2を受信する。
【0037】
リングメッセージRA2を受信したECU30A−2は、データフィールド46の送信元格納部43に自身のID30を格納し送信先格納部44に中継接続ユニット10のIDである10を格納してリングメッセージRA3とし、標準送信間隔Ttypの期間の経過後にバス31Aに送信する。
【0038】
中継接続ユニット10はリングメッセージRA3を受信してリングメッセージRA3が自分宛であると判断する。中継接続ユニット10のネットワークマネジメント処理回路11は、リングメッセージRA3を受信することで、通信エラー検出機能の識別子200hを有するリングメッセージRが各ECU30を1周して中継接続ユニット10に戻ってきたことを検知する。
このように、リングメッセージRAは中継接続ユニット10、ECU30A−1及びECU30A−2の間で送受信される。
【0039】
通信エラー検出はリングメッセージRAを用いて行う。通信エラー検出では、自分宛のリングメッセージRAと自分宛でないリングメッセージRAを区別せず、自分宛または自分宛のいずれかのリングメッセージRAを受信してから次に受信するまでの時間間隔で通信エラーを検出する。
中継接続ユニット10のネットワークマネジメント処理回路11がリングメッセージRA3を受信してから次にリングメッセージRAを受信するまでに最大送信間隔Tmaxが経過すると、中継接続ユニット10はリセット状態に遷移してネットワークマネジメント処理回路11に備えたカウンタが+1される。その後、ノーマル状態に遷移して、再びリングメッセージRを送信する。再びリングメッセージRAが最大送信間隔Tmax以上受信できない場合は、リセット状態に遷移してカウンタが+1される。これを繰り返してカウンタがrx_limitの値より大きくなった場合には、中継接続ユニット10がエラー状態にあると認識する。例えば、rx_limitは4としている。
また、中継接続ユニットのネットワークマネジメント処理回路11がリングメッセージRを送信できない場合も、リセット状態に遷移してカウンタが+1された後、ノーマル状態に遷移する。これを繰り返してカウンタがtx_limitの値より大きくなった場合は、中継接続ユニット10がエラー状態にあると認識する。例えば、tx_limitは8としている。
なお、中継接続ユニット10だけでなく、ECU30A−1、ECU30A−2においても同様の通信エラー検出を行っている。
【0040】
次に、スリープ制御である状態遷移監視機能について説明する。
状態遷移とは、例えばECU30や中継接続ユニット10をウェイクアップ状態(通常動作状態)の高電力消費状態からスリープ状態の低電力消費状態(省電力モード)へ遷移させることであり、状態遷移監視機能とは、ネットワークマネジメント処理回路11がリングメッセージRを用いてバス31に接続されたECU30と中継接続ユニット10のウェイクアップ状態とスリープ状態を切り替える機能である。
【0041】
中継接続ユニット10及びECU30がウェイクアップ状態からスリープ状態になる場合について説明する。
中継接続ユニット10のネットワークマネジメント処理回路11は、EEPROM12のパラメータからスリープ制御がオンとなっていることを予め読み出しており、状態遷移監視機能を動作させることを認識している。
ネットワークマネジメント処理回路11が中継接続ユニット10自身がスリープ状態に移行可能であると判断した場合には、中継接続ユニット10のネットワークマネジメント処理回路11は、図6に示すようにリングメッセージRB1を送信する。リングメッセージRB1のデータフィールド46の送信元格納部43にID10を格納し、送信先格納部44にECU30A−1を示すID20を格納する。データ部45にはスリープind信号がオンであることを格納する。また、アービトレーションフィールド41にスリープ制御のリングメッセージRであることを示す識別子123hを格納する。
中継接続ユニット10はリングメッセージRB1の送信後、ウェイクアップ状態からスリープ可能状態に遷移する。なお、スリープ可能状態とは、ECU30または中継接続ユニット10がウェイクアップ状態であるが、スリープ状態となることができる状態をいう。
【0042】
通信エラー検知機能の場合と同様に、リングメッセージRB1を受信したECU30A−1はリングメッセージRB2をECU30A−2に向けて送信する。このとき、ECU30A−1がスリープ状態に遷移可能である場合には、リングメッセージRB2のデータ部45にはスリープind信号のオンを格納する。リングメッセージRB2の送信後、ECU30A−1はウェイクアップ状態からスリープ可能状態に遷移する。
【0043】
リングメッセージRB2を受信したECU30A−2はリングメッセージRB3を中継接続ユニット10に向けて送信する。このとき、ECU30A−2がスリープ状態に遷移可能である場合には、リングメッセージRB3のデータ部45にはスリープind信号のオンを格納する。リングメッセージRB3の送信後、ECU30A−2はウェイクアップ状態からスリープ可能状態に遷移する。
【0044】
中継接続ユニット10のネットワークマネジメント処理回路11は、返ってきたリングメッセージRBによりネットワーク32のECU30全てがスリープ可能状態であることを検知した場合には、スリープack信号がオンであることをリングメッセージRC1のデータ部45に格納して送信する。送信後、所定時間経過後に中継接続ユニット10はスリープ状態に遷移する。同様に、該リングメッセージRC2、RC3を受信したECU30A−1、30A−2も、スリープack信号のオンを格納したリングメッセージRの送信後、所定時間経過後にスリープ状態に遷移する。
【0045】
このように、EEPROM12に記憶されたパラメータを用いることで、ネットワークマネジメント処理回路11はネットワークマネジメント機能を実行することができる。
なお、他の構成および作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明である中継接続ユニットの第1実施形態を示す構成図である。
【図2】EEPROMに記憶されたパラメータを示す図である。
【図3】中継接続ユニットの動作を示すシーケンス図である。
【図4】第2実施形態の通信エラー検出機能の実行時のリングメッセージの流れを示す説明図である。
【図5】リングメッセージの構成図である。
【図6】状態遷移監視機能の実行時のリングメッセージの流れを示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
10 中継接続ユニット
11 ネットワークマネジメント処理回路
12 EEPROM
13 EEPROM処理回路
14 送受信回路
15 中継処理回路
16 ダイアグ処理回路
17 メインループ受信回路
18 パラメタ処理回路
30 電子制御ユニット(ECU)
31 バス
32 ネットワーク
41 アービトレーションフィールド
43 送信元格納部
44 送信先格納部
45 データ部
46 データフィールド
R、RA、RB リングメッセージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子制御ユニットを夫々接続しているバス間に介在させてネットワークを形成し、異なるバスに属する前記電子制御ユニット間で送受信するメッセージを中継する車載用の中継接続ユニットであって、
ネットワークマネジメント機能を実行するネットワークマネジメント処理回路と、
前記ネットワークマネジメント処理回路に保有したネットワークマネジメント機能の仕様条件及び機能間の状態遷移条件のうちで変更可能性のある条件を、パラメータ化して記憶する記憶手段を備え、
前記ネットワークマネジメント処理回路は、起動時に前記記憶手段から前記パラメータを読み出し、該パラメータを用いてネットワークマネジメント機能を実行するものであることを特徴とする車載用の中継接続ユニット。
【請求項2】
前記ネットワークマネジメント処理回路は、集積回路で形成し、前記記憶手段は書き換え可能な不揮発性メモリで形成し、
前記記憶手段で記憶するパラメータは、遷移条件に対応した遷移先、自中継接続ユニットのID、タイマ値、エラーカウンタ閾値、スリープ制御のいずれかを含んでいる請求項1に記載の車載用中継接続ユニット。
【請求項3】
前記ネットワークマネジメント処理回路は、前記バスを介して接続した電子制御ユニットにリングメッセージを送信し、通信エラー検出あるいは/および前記スリープ制御を行っている請求項1または請求項2に記載の車載用中継接続ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−312024(P2008−312024A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159094(P2007−159094)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】