説明

中綴じにおける針金良否判別装置

【課題】本の内部にて針金が正常に綴じていない不良を検知することができる中綴じにおける針金良否判別装置を提供すること。
【解決手段】中綴じにおける針金良否判別装置は、本Pを開いた状態で搬送する本搬送手段4と、搬送される本Pの上端位置を制御する上端位置制御手段5と、本Pの針金3を磁化する針金磁化手段1と、所定位置を通過する本Pを検知する本検知手段4と、本Pが検知されているときに当該本Pの針金3の磁界強度を検出する磁界強度検出手段2と、磁界強度検出手段2により検出される前記磁界強度が正常範囲内であるかにより良否判定を行う良否判定手段6と、を具備する。磁界強度検出手段2は、本Pの内部に位置する針金6の磁界強度を検出する複数組の磁界強度検出装置を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中綴じ機で丁合い又は針金綴じされた本の針金綴じ不良を検査する為の中綴じ針金良否判別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
まず中綴じ工程について説明する。中綴じ機では印刷された折丁を仕様書に指定された編成順に重ね合わせる。次に重ねられた折丁は針金で綴じ合わされ、断裁機構によって不要な三方部分を切り落とされる。
【0003】
この綴じ合わせ工程においては、針金を折丁の背部に向かって送り出し、貫いた針金を折り曲げて綴じる手法が一般的に多く用いられるが、針金の送り出し、折り曲げが不十分な場合、本の内側にて針金が綴じきらない不良、針金が傾いて打たれた不良、また針金が背部中心より外れた位置で綴じてしまう不良が発生することがある。この明細書においては、本とは、折丁を含むものである。
【0004】
従来より、針金不良検査装置として特許文献1に記載のものが知られている。この針金不良検査装置は、順次移送される各折丁の所定位置を針金綴込みした針金体を強磁性体の鉄鋼製とし、所定の磁気エネルギーを有する磁石の磁界内に針金体を位置せしめることにより磁気誘導したのち、刷本の移送路に対置した磁気センサーにより針金体の残留磁気を検知することにより、刷本に綴り込んだ針金体の有無を検知するというものである。この従来技術では、針金体の有無を検知することは可能であるが、本の内部にて綴じきらず立っている針金体を検知することができないという問題がある。
【0005】
本の内部にて針金の綴じ足が立っている場合、その針金の綴じ足が人の手を傷つける事故の原因となりえることがあり、重大な不良である。このような針金綴じ不良の流出を防止する為に、作業員が一部ずつ本を開いて目視する検査工程が必要であり、多大な時間と費用を要している。また、作業員による目視検査では、人的な作業ミスにより針金綴じ足不良が流出してしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−31774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、中綴じ工程において、本の内側にて針金が綴じきらない不良、針金が傾いて打たれた不良、針金が本の背部中心より外れた位置に打たれた不良を検知することができる、針金良否判別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
所定の方向に搬送されている中綴じの本の針金綴じ不良を検知する針金良否判別装置であって、
前記本を開いた状態で搬送する本搬送手段と、
搬送される前記本の上端位置を制御する上端位置制御手段と、
前記本の背部に打たれている針金を磁化する針金磁化手段と、
前記本搬送手段上の所定位置を通過する前記本を検知する本検知手段と、
前記本検知手段により前記本が検知されている時に当該本の針金の磁界強度を検出する磁界強度検出手段と、
前記磁界強度の値を所定の閾値と比較して正常な範囲内に収まっているかどうかの良否判定を行う良否判定手段と、を具備し、
前記磁界強度検出手段は2つの磁界検出装置を備え、前記2つの磁界検出装置は互いに所定距離だけ離間しており、かつ、前記本の内側の、前記本の背部から等距離になる位置に配置されていることを特徴とする中綴じにおける針金良否判別装置、としたものである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記磁界強度検出手段を複数組備えていることを特徴とする、請求項1記載の中綴じにおける針金良否判別装置、としたものである。

【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、本の針金を磁化し所定位置を通過する前記本を検知して、前記本が検知されている時に複数組具備された磁界強度検出装置が前記本の内部に位置する前記針金の下部方向かつ搬送方向の磁界強度とを組み合わせて検出することにより、本の内部にて針金が綴じきらない不良及び針金が傾いて打たれた不良、針金が本の背部中心より外れた位置に打たれたかを検知することができる。
【0011】
また、本発明によれば、本の内部にて針金が綴じきらない不良及び針金が傾いて打たれた不良、針金が本の背部中心より外れた位置に打たれた不良を検知することができるため、その針金の綴じ足が人の手を傷つける事故の原因となりえる重大不良の流出を防止することができ、人が一部ずつ本を開いて行う目視検査工程を省略することができ、また、検査時間の短縮と検査に必要な費用の削減を実現することができる。

【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係わる中綴じ針金不良検査装置の概略を示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係わる中綴じ針金不良検査装置の概略を示す側面図である。
【図3】(A)は正常な綴足の形状の針金と、本発明の実施形態1に係る磁界強度検出装置の位置関係を示す模式図であり、(B)は片方の綴足が不良形状である針金と、本発明の実施形態1に係る磁界強度検出装置の位置関係を示す模式図であり、(C)は折丁の背部からずれた位置に針金が打たれている不良品と、本発明の実施形態1に係る磁界強度検出装置の位置関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面基づいて詳細に説明する。
【0014】
(実施形態1)
本発明の実施形態1の中綴じ針金不良検査装置について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る中綴じ針金不良検査装置の概略を示す正面図である。また図2は、本発明の実施形態1に係る中綴じ針金不良検査装置の概略を示す側面図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態1に係る中綴じ針金不良検査装置は、本搬送手段7と、上端位置制御手段5と、針金磁化手段1と、本検知手段4と、磁界強度検出手段2と、良否判定手段6とを具備している。本搬送手段7は、搬送チェーン7a、7bを具備している。上端位置制御手段5は、上端位置制御部材5a、5bを具備している。磁界強度検出手段2は、複数組において検知することにより、針金からの距離・傾きの検知精度を向上させることが可能である。例えば図1及び図2においては磁界強度検出装置2a、2bを具備している。
【0016】
本搬送手段7は、本Pを開いた状態で搬送方向Aへ搬送する。本搬送手段7は、搬送チェーン7a、7bを具備している。詳細には、開いた本Pは、針金3で綴じられた背を上に、小口を下にして本文の間に折り丁保持部材8a、8bが挿入され、本Pは折り丁保持部材8a、8bで保持される。折り丁保持部材8a、8bの内側には搬送チェーン7a、7bが連結されており、搬送チェーン7a、7bの移動により本Pは折り丁保持部材8a、8bと共に搬送方向Aの下流側に向けて搬送される。
【0017】
上端位置制御手段5は、搬送される本の上端位置を制御する。上端位置制御手段5は、本の上部に設置されている上端位置制御部材5a、5bを具備している。上端位置制御部材5a、5bは、搬送される本Pの上端を下向きに一定圧力でおさえる。また、上端位置制御手段5は、幅方向Bの中央ほど幅が狭い構造をしており、磁界強度検出装置2a、2bの真下を針金が通過するように、針金搬送位置を矯正する。またその際に上端位置制御手段5は、本Pの上端に位置する針金3との間に隙間を生まない形状のものを使用することで針金3を正確に磁界強度検出手段2で検知できる。さらに、本Pの上端位置を制御する手段5は幅方向の中心を軸にして本の搬送方向に沿って回転するようなローラ構造をしており、本との摩擦を小さくして、擦れ傷が付くのを抑えることができる。
【0018】
針金磁化手段1は、本Pの針金3を磁化する。本検知手段4は、所定位置を通過する本Pを検知する。磁界強度検出装置2a、2bは、本検知手段4により本Pが検知されているときに本Pの針金3の磁界強度を検出する。また、磁界強度検出装置2a、2bは、本Pの針金3に対し下下向き方向の垂直成分、搬送方向の水平成分の、両方の指向性の磁界を検出可能なものである。
【0019】
良否判定手段6は、本検知手段4及び磁界強度検出装置2a、2bに接続されている。良否判定手段6は、本検知手段4により本Pが検知されているときに、磁界強度検出装置2a、2bにより検出される磁界強度が正常範囲内であるかにより良否判定を行う。針金磁化手段1および磁界強度検出装置2a、2bは、折り丁保持部材8a、8bの内側に配置される。磁界強度検出装置2a、2bは互いに所定距離だけ離間しており、かつ、本Pの背部に対して等距離になるような位置に配置されている。
【0020】
本搬送手段7は、搬送チェーン7a、7bと、折り丁保持部材8a、8bを具備し、折り丁保持部材8a、8bにより本Pを開いた状態で搬送チェーン7a、7bにより搬送方向Aへ搬送する。なお、図2において符号9は折り丁保持部材8a、8bに設けられた位置決め部材を示し、この位置決め部材9は、折り丁保持部材8a、8bと共に移動する。
【0021】
本実施形態1の中綴じ針金不良検査装置が中綴じ製本機上の本Pの搬送経路上に設置され、かつ、中綴じ製本機が本搬送手段7のような構成の搬送手段を有し、本Pが上記のような状態で搬送されている場合には、中綴じ製本機の本搬送手段を本搬送手段7として利用することも可能である。中綴じ製本機の本搬送手段7においては、搬送チェーン7a、7bは、一般にギャザリングチェーンで構成されている。
【0022】
針金磁化手段1は、例えば、永久磁石、電磁石等で構成されている。磁界強度検出手段2(2a、2b)は、例えば、ホール素子、磁気インピーダンス素子、フラックスゲート素子又はMR素子等で構成されている。磁界強度検出手段2(2a、2b)は、本Pの搬送方向前方の辺B0と平行な方向の磁界成分を感度良く検出できるように配置されている。
【0023】
この本発明の実施形態1に係る中綴じ針金不良検査装置においては、以下のようにして針金3の綴じ足不良を検知することができる。ただし、図2においては、本Pは折り丁保持部材8a、8bにより開かれた状態で搬送されているものとする。
【0024】
搬送方向Aの向きに搬送されている本Pの搬送方向Aの前方の辺B0が本検知手段4に達すると、本検知手段4は本Pを検知する。本検知手段4が本Pを検知しているときに、磁界強度検出装置2a、2bは連続的に磁界強度を検出する。
【0025】
ここで、良否判定手段6による針金3の綴足形状の良否判定動作について説明する。図3(A)は針金3の正常な綴足の形状を示した模式図である。図3(B)は針金3の片方の綴足が不良形状のものを示す模式図である。図3(C)は針金3が折丁の背部から外れた位置に打たれた不良品を示す模式図である。
【0026】
図3(A)の針金3の正常品を検査した場合、磁界強度検出装置2a、2bには均等な磁界強度のピーク値が伝わる。磁界強度検出装置2a、2bそれぞれの磁界強度値を差分で評価する事により、正確な判断を行うことができる。
【0027】
図3(B)の針金3の綴足不良品を計測した場合には磁界強度検出装置2a、2bと針金3との間の距離が短くなるため、下向きの磁界強度のピーク値は、図3(A)の針金3の正常品を検査した場合よりもが大きくなる。また同様に、搬送方向の磁界強度のピーク値も、正常品の場合より大きくなる。これらの磁界強度のピーク値とあらかじめ設定する閾値を用いて、良否判定手段6は、
(磁界強度検出装置2a、2bが検出する各々の磁界強度のピーク値の差分)>閾値
であるか否かを組み合わせることによって、針金3の両足の綴不良を判別することができる。
【0028】
また、図3(C)の針金3が折丁の背部より外れた位置に打たれている不良品を計測した場合も、同様に、磁界強度検出手段2a、2bと針金3との間の距離が短くなるため、下向きの磁界強度のピーク値が、図3(A)の針金3の正常品を検査した場合よりも大きくなる。また同様に、搬送方向の磁界強度のピーク値も、正常品より大きくなる。
【0029】
これらの磁界強度のピーク値とあらかじめ設定する閾値を用いて、良否判定手段6は、
(磁界強度検出装置2a、2bが検出する各々の磁界強度のピーク値の差分)>閾値
であるか否かを組み合わせることによって、針金3の両足の綴不良を判別することができる。
【0030】
図2においては、磁界強度検出手段2がひと組(磁界強度検出装置2a、2b)の場合を示しているが、磁界強度検出手段2を複数組設置して、針金3の綴足不良の検出精度を向上させることも可能である。その際、各磁界強度検出手段ごとに良否判定手段6を設置しても良いし、一つの良否判定手段6で全ての磁界強度検出手段からの磁界強度の値を受信するようにしてもよい。
【0031】
良否判定手段6により不良と判断された本Pは、不良伝達手段または排出手段(図示せず)により正常品の搬送経路から排出される。

【符号の説明】
【0032】
1・・・針金磁化手段
2・・・磁界強度検出手段
2a、2b・・・磁界強度検出装置
3、3a、3b・・・針金
4・・・本検知手段
5・・・上端位置制御手段
6・・・良否判定手段
7a、7b・・・搬送チェーン
8a、8b・・・折り丁保持部材
9・・・位置決め部材
P・・・本

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に搬送されている中綴じの本の針金綴じ不良を検知する針金良否判別装置であって、
前記本を開いた状態で搬送する本搬送手段と、
搬送される前記本の上端位置を制御する上端位置制御手段と、
前記本の背部に打たれている針金を磁化する針金磁化手段と、
前記本搬送手段上の所定位置を通過する前記本を検知する本検知手段と、
前記本検知手段により前記本が検知されている時に当該本の針金の磁界強度を検出する磁界強度検出手段と、
前記磁界強度の値を所定の閾値と比較して正常な範囲内に収まっているかどうかの良否判定を行う良否判定手段と、を具備し、
前記磁界強度検出手段は2つの磁界検出装置を備え、前記2つの磁界検出装置は互いに所定距離だけ離間しており、かつ、前記本の内側の、前記本の背部から等距離になる位置に配置されていることを特徴とする中綴じにおける針金良否判別装置。
【請求項2】
前記磁界強度検出手段を複数組備えていることを特徴とする、請求項1記載の中綴じにおける針金良否判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−68478(P2011−68478A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222693(P2009−222693)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】