説明

中華生麺の製造方法

【課題】 中華生麺の製造方法において、麺線同士の付着を防止し、且つ茹で湯の濁りが少ない麺でありながら、生麺と同等な食感を有する中華生麺の製造方法を提供する。
【解決手段】 中華生麺の製造方法であって、常法により製造した中華生麺線を60〜160℃の熱風により2〜40秒間乾燥処理する。また、当該乾燥処理により中華生麺線の水分含量を、乾燥処理前の30〜35重量%から26〜33重量%となるように処理することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中華生麺の製造方法に関し、さらに詳細には、麺線同士の付着を防止し、且つ茹で湯の濁りが少ない麺でありながら、生麺と同等な食感を有する中華生麺の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生麺の製造方法としては、原料粉に練り水を加えてミキサー等で混練して麺生地とし、これを複合・圧延して所定の厚さの麺帯にし、次いで切出しロールで切出して生麺線とした後、麺線同士の付着を防止するため、打粉を麺線に散布して製品化するのが一般的である。しかしながら、この方法で製造された麺は、打粉を使用していることと、麺からの澱粉質の溶出によって、加熱調理時に茹で湯が濁ってしまうため、喫食する際、別途器に予め熱湯でスープ等を溶かしておいたものに、茹でた麺を湯切りして加える、いわゆる茹でこぼし(湯こぼし)を行う必要があり手間がかかるという問題があった。
【0003】
そこで、打粉を使用せずに生麺の茹で調理時における茹で湯の濁りを抑制する技術が従来考えられてきたが、かかる技術として、生麺の麺線表面に油をコーティングしたり、あるいは麺線表面を蒸煮により加熱処理する技術が知られている。しかしながら、これらの技術で製造した麺は、茹で湯の濁りを抑制することができるものの、前者の技術では、調理感の少ない食感となり、また後者の技術では、麺に緻密感がなく麺線表面にゴワッとした膜が張ったような食感となってしまい満足できるものではなかった。
【0004】
また、生麺を短時間茹でて部分的に糊化させ、次いで澱粉の糊化温度以上で熱風乾燥する方法により、茹で湯が濁らず、茹で上げ直後の茹で麺同等の食感を有する麺が得られる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、本発明者らの実験によると、この技術で製造した麺は、茹で湯の濁りを抑制することができるものの、麺線同士が付着し、食感もゴム的な弾力となり充分満足できるものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開昭54−95754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術における問題点を解決するものであり、麺線同士の付着を防止し、且つ茹で湯の濁りが少ない麺でありながら、生麺と同等な食感を有する中華生麺の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々の手段を用いて鋭意検討を行った。その結果、常法により得られた中華生麺線に、茹で・蒸し等のα化処理を施すのではなく、直接その中華生麺線の表面を特定温度の熱風によりごく短時間乾燥処理して、麺線表面に乾燥硬化させた膜状組織を形成させることにより、打粉を使用せずとも麺線同士の付着を防止し、且つ茹で調理時における茹で湯の濁りを抑制し、しかも、生麺と同等な食感を有する中華生麺が得られるとの結論に達した。そして、このような乾燥処理条件として、60〜160℃の熱風により2〜40秒間乾燥処理を施すこと、また、当該乾燥処理により中華生麺線の水分含量を、乾燥処理前の30〜35重量%から26〜33重量%とすることで、前記効果が達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、常法により製造した中華生麺線を60〜160℃の熱風により2〜40秒間乾燥処理することを特徴とする中華生麺の製造方法である。本発明によれば、麺線同士の付着を防止し、且つ茹で湯の濁りが少ない麺でありながら、生麺と同等な食感を有する中華生麺を得ることができる。なお、前記熱風の温度が60℃未満であると調理時の茹で湯の濁りが多くなり、逆に160℃を超えると麺線が焦げるという欠点が生じる。また、中華生麺線を80〜160℃の熱風により2〜30秒間乾燥処理すると、特に茹で調理時における茹で湯の濁りを抑制することができ特に好ましい。
【0009】
また、本発明は、前記乾燥処理前の中華生麺線の水分含量が30〜35重量%であり、乾燥処理後の中華生麺線の水分含量が26〜33重量%であることを特徴とする。本発明によれば、茹でたての生麺のような調理感のある食感を得ることができ好ましい。なお、前記乾燥処理後の水分含量が26重量%未満であると麺の食感が硬脆いものとなり、逆に33重量%を超えると麺線同士の付着が多いものとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、打粉を使用せずとも麺線同士の付着を防止し、且つ茹で調理時における茹で湯の濁りが抑制された麺を得ることができる。したがって、調理時の茹でこぼしを不要とすることが可能となる。また、本発明によれば、従来の技術では得られなかった、生麺を茹でた直後のような調理感と弾力があり、麺質も緻密感が高く、風味・食感のよい生麺と同等な食感を有する中華生麺の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を、中華生麺の製造方法に従って具体的に説明するが、本発明はそれらの記載に限定されるものではない。
【0012】
本発明の中華生麺の製造方法としては、まず、生麺製造の常法に従って、一般的に中華麺に使用されている麺原料を用いて中華生麺線を調製する。すなわち、小麦粉に必要に応じて各種澱粉等を配合して原料粉とし、当該原料粉に必要に応じて卵白、グルテン、かんすい等のアルカリ剤、食塩、色素、増粘剤等の添加剤等を水に溶解した練り水を加えるか、または、原料粉に直接添加剤等を添加し、練り水を加えてミキサーで良く混練し、麺生地を調整する。ミキサーは真空ミキサーを用いて混練すると麺の食感がよくなり好ましい。
【0013】
次いで得られた麺生地を、複合・圧延ロールを用いて複合・圧延し、所定の厚さの麺帯とする。あるいは、麺生地を真空麺帯押出機等を用いて減圧下で押出して麺帯にする方法を採用してもよい。この場合製麺性がよくなり、緻密で食感のよい麺を得ることができ好ましい。
【0014】
そしてこの麺帯を切出しロールで切出して中華生麺線とする。あるいは、これらの方法の代わりとして、エクストルーダー等を用いて前記麺生地を押出して中華生麺線としてもよい。
【0015】
次に、得られた中華生麺線を所定量カットし、以下のように中華生麺線の表面を特定温度の熱風により短時間熱風乾燥処理し、生麺線表面に乾燥硬化させた膜状組織を形成させて本発明の中華生麺とする。
【0016】
本発明における熱風乾燥処理としては、通常の熱風乾燥方法が採用でき、熱風としてはは湿度約10%以下、風速が1〜30m/秒の範囲内のものが適宜使用可能である。また本発明の熱風乾燥としては、通常の熱風乾燥装置が使用でき、例えば、棚式、流動層式、ベルトコンベヤー式等の熱風乾燥装置が使用できる。
【0017】
そして本発明においては、この中華生麺線の表面を60〜160℃の熱風により、2〜40秒間乾燥処理する。また、好ましくは、当該乾燥処理により中華生麺線の水分含量が乾燥処理前の一般的な中華生麺線の水分含量である30〜35重量%から26〜33重量%となるようにする。このような処理を施すことにより、生麺線表面に乾燥硬化させた膜状組織が形成され、生麺線同士の付着を防止し、且つ茹で湯の濁りが少ない麺でありながら、生麺と同等な食感を有する中華生麺を得ることが可能となる。また、前記熱風乾燥処理条件として、中華生麺線を80〜160℃の熱風により2〜30秒間乾燥処理すると、特に茹で調理時における茹で湯の濁りを抑制することができ特に好ましい。
【0018】
なお、本発明においてこのような乾燥処理条件としたのは、前記熱風温度が60℃未満であると調理時の茹で湯の濁りが多くなり、逆に160℃を超えると麺線が焦げるという欠点が生じるからであり、また本発明の効果を得るための乾燥時間としては、乾燥前の中華生麺線中の水分含量、麺線の形状等により異なるが、中華生麺の場合、上記熱風の温度が60〜160℃のときは、2〜40秒間であり、80〜160℃のときは2〜30秒間である。
【0019】
また、本発明における乾燥処理後の麺線の水分含量を26〜33重量%の範囲としたのは、当該乾燥処理後の水分含量が26重量%未満であると麺の食感が硬脆いものとなり、逆に33重量%を超えると麺線同士の付着が多いものとなるからである。
【0020】
このようにして製造された本発明の中華生麺は、通常、チルド状態で流通させるため、中華麺そのままか、または濃縮スープ等とともに包装され、製品化される。そして調理の際は、通常、鍋を用いて麺の茹で調理を行い、茹でこぼしをせずに茹で湯に濃縮スープ等を加えて調理してそのまま喫食することができる。
【実施例】
【0021】
本発明を実験例に基づいて、以下に具体的に説明するが、本発明は、これら実験例の開示に基づいて限定的に解釈されるべきでない。また、以下の例中、特に記載しない限り、「重量%」は「%」、「熱風乾燥処理」は「熱風処理」、「熱風乾燥処理後の麺線の水分含量」は「麺水分」と表すものとする。
【0022】
実験例1(熱風処理温度と時間の検討)
以下に示すように中華生麺を製造し、熱風処理温度がパウチ内の麺線同士の付着性、調理後の麺の食感および湯濁りに及ぼす影響を調べた。
【0023】
準強力小麦粉1kgを原料粉として、これに卵白5g、アルカリ剤(かんすい)8g、食塩10g、色素1g、アルコール製剤30g、レシチン5gを水300gに溶解して練り水として加え、ミキサーで15分間よく混練し、麺生地とした。この麺生地を圧延ロールにより順次圧延し麺厚1.4mmの麺帯とし、これを#22角刃の切出しロールで切り出して生麺線を調製し、得られた麺線をカットした(水分含量32.6%)。次いで、カットした麺線100gを表1の通りの温度と時間にて熱風処理して、パウチ(15cm×14cm)に充填し、シールし、中華生麺を作製してテスト品1〜7とした。また、対照として、熱風処理を行わずにカットした麺線100gをパウチ(15cm×14cm)に充填し、シールし、中華生麺を作製して対照品とした。
【0024】
これらの中華生麺は、1日冷蔵保存した後パウチから取り出し、まず麺線同士の付着性を確認した。次いで、この麺を500mLの沸騰した湯の中で2.5分間調理し、湯切り(湯こぼし)をせずにそのまま器に移し、官能試験を行った。官能試験は熟練したパネラー5名によって行い、麺の食感と湯濁りの状態を比較し評価した。以下、実験の評価基準については、5を標準より非常に優れている、4を標準より優れている、3を標準、2を標準より劣る、1を標準より非常に劣るとした。結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
熱風処理をしていない対照品に対し、50℃、30秒間熱風処理したテスト品1は、良好な弾力を有し麺線同士の付着がほとんどなかったものの、対照品と同様に調理後の茹で湯が白濁し粘度がやや多く問題であった。一方、60〜160℃で2〜24秒間熱風処理したテスト品2〜7は、麺線同士の付着がほとんどなく、調理後の湯の濁り・粘度についても問題なく、しかも、調理感と弾力のある生麺と同等な食感を有する麺を得ることができた。また、さらに80〜160℃で2〜16秒間熱風処理したテスト品4〜7は、特に生麺の茹で調理時における茹で湯の濁りを抑制することができ好ましいものとなった。なお、表には示していないが、本発明において、熱風温度が60℃の場合、乾燥時間の上限は40秒間であり、また熱風温度が80℃の場合、乾燥時間の上限は30秒間である(下記の表2・テスト品2)。
【0027】
実験例2(熱風処理後の麺水分の検討)
次に、実験例1で得られた結果を基に、熱風処理温度を80℃に設定し、本発明における最適な熱風処理後の麺水分を決定するため、以下に示すように中華生麺を製造し、熱風処理後の麺水分がパウチ内の麺線同士の付着性、調理後の麺の食感および湯濁りに及ぼす影響を調べた。
【0028】
準強力小麦粉1kgを原料粉として、これに卵白5g、アルカリ剤(かんすい)8g、食塩10g、色素1g、アルコール製剤30g、レシチン5gを水300gに溶解して練り水として加え、ミキサーで15分間よく混練し、麺生地とした。この麺生地を圧延ロールにより順次圧延して麺厚1.4mmの麺帯とし、これを#22角刃の切出しロールで切り出して生麺線を調製し、得られた麺線をカットした(水分含量32.6%)。次いで、カットした麺線100gを表2の通りの温度と時間にて熱風処理して、パウチ(15cm×14cm)に充填し、シールして中華生麺を作製しテスト品1〜3とした。また、対照として、熱風処理を行わずにカットした麺線100gをパウチ(15cm×14cm)に充填し、シールして中華生麺を作製し対照品とした。
【0029】
これらの中華生麺は、1日冷蔵保存した後パウチから取り出し、まず麺線同士の付着性を確認した。次いで、この麺を500mLの沸騰した湯の中で2.5分間調理し、湯切り(湯こぼし)をせずにそのまま器に移し、官能試験を行った。官能試験は、実験例1と同様に熟練したパネラー5名によって行い、麺の食感と湯濁りの状態を比較した。結果を表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
熱風処理をしていない対照品に対し熱風処理したテスト品1〜3は、麺線同士の付着がほとんどなく、調理後の湯の濁り・粘度が少なかった。また、熱風処理後の麺水分が26%〜30%となるよう処理したテスト品1と2は、さらに、良好な調理感と弾力を有し、生麺と同等な食感の麺を得ることができた。
【0032】
実験例3(本発明の麺と特許文献1の麺との比較検討)
最後に、茹で処理を施した特許文献1の麺と茹で処理を施していない本発明の麺との比較を行うため、以下に示すように中華生麺を製造し、茹で処理の有無がパウチ内の麺線同士の付着性、調理後の麺の食感および湯濁りに及ぼす影響を調べた。
【0033】
準強力小麦粉1kgを原料粉として、これに卵白5g、アルカリ剤(かんすい)8g、食塩10g、色素1g、アルコール製剤30g、レシチン5gを水300gに溶解して練り水として加え、ミキサーで15分間よく混練し、麺生地とした。この麺生地を圧延ロールにより順次圧延し麺厚1.4mmの麺帯とし、これを#22角刃の切出しロールで切り出して生麺線を調製し、得られた麺線をカットした(水分含量32.6%)。次いで、カットした麺線100gを沸騰した湯の中で30秒間茹で、その後流水中で10秒間冷却し、茹で処理麺とした。次いでこの麺を80℃、20分間熱風処理して、パウチ(15cm×14cm)に充填し、シールし、特許文献1の中華生麺を作製してテスト品とした。また、対照として、カットした麺線100gを茹で処理を行わずに80℃、16秒間熱風処理して、パウチ(15cm×14cm)に充填し、シールし、本発明品の中華生麺を作製して対照品とした。
【0034】
これらの中華生麺は、1日冷蔵保存した後パウチから取り出し、まず麺線同士の付着性を確認した。次いで、この麺を500mLの沸騰した湯の中で2.5分間調理し、湯切り(湯こぼし)をせずにそのまま器に移し、官能試験を行った。官能試験は、実験例1と同様に熟練したパネラー5名によって行い、麺の食感と湯濁りの状態を比較した。結果を表3に示す。
【0035】
【表3】

【0036】
中華生麺線を茹で処理した後、熱風処理を行ったテスト品(特許文献1)は、パウチ内の麺線が付着しており、また、食感もゴム的な弾力となり、良好な麺が得られなかった。一方、中華生麺線をそのまま熱風処理した対照品(本発明品)は、麺線同士の付着がほとんどなく、調理後の湯の濁り・粘度が少ない麺でありながら、良好な調理感と弾力のある生麺と同等な食感を有する麺を得ることができ、好ましいものとなった。






【特許請求の範囲】
【請求項1】
常法により製造した中華生麺線を60〜160℃の熱風により2〜40秒間乾燥処理することを特徴とする中華生麺の製造方法。
【請求項2】
前記乾燥処理前の中華生麺線の水分含量が30〜35重量%であり、乾燥処理後の中華生麺線の水分含量が26〜33重量%である請求項1に記載の中華生麺の製造方法。