説明

中間転写ベルト及びタンデム式カラー画像形成装置

【課題】コストアップや用紙搬送性及び耐久性の低下を防止しつつ、白色画像やバサツキ画像の発生を抑制して、良好な画像を得る。
【解決手段】本発明は、像担持体に形成されたトナー像が転写され、一時的に保持される中間転写ベルト5であって、基材26と、該基材26に積層形成される弾性層27と、該弾性層を被覆する表層28と、を備え、該表層28の体積抵抗率がベルト全体の体積抵抗率よりも低いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に形成されたトナー像が転写され、一時的に保持される中間転写ベルト及びこの中間転写ベルトを備えたタンデム式カラー画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カラープリンターやカラーファクシミリなどのカラー画像形成装置では、タンデムに配列された複数の像担持体(例えば、感光体ドラム)から中間転写ベルトに各色(例えば、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色)のトナー像を一次転写した後、二次転写ローラーを用いて中間転写ベルト上のトナー像を用紙に二次転写する方式(以下、「タンデム式」と称する。)が広く採用されている。
【0003】
このような中間転写ベルトを用いたタンデム式カラー画像形成装置における課題の一つとして、二次転写時における放電によって発生する白色画像やバサツキ画像が挙げられる。このような課題に対しては、特許文献1にあるように、二次転写ローラー(特許文献1では「二次転写ロール6」)の表面にコート層(高抵抗層)を設け、放電の発生を抑制することにより対応するのが一般的である。また、特許文献2には、中間転写ベルト上のトナー帯電量をコントロールする帯電手段を備えた画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−212371号公報
【特許文献2】特許第4366128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように二次転写ローラーにコート層を設けると、コストアップや用紙搬送性及び耐久性の低下などの新たな問題が生じる。また、特許文献2のように帯電手段を設けると、その分部品点数が増加し、特許文献1の場合と同様にコストアップを招く。
【0006】
そこで、本発明は上記事情を考慮し、コストアップや用紙搬送性及び耐久性の低下を防止しつつ、白色画像やバサツキ画像の発生を抑制して、良好な画像を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の中間転写ベルトは、像担持体に形成されたトナー像が転写され、一時的に保持される中間転写ベルトであって、基材と、該基材に積層形成される弾性層と、該弾性層を被覆する表層と、を備え、該表層の体積抵抗率がベルト全体の体積抵抗率よりも低いことを特徴とする。
【0008】
このように、表層の体積抵抗率をベルト全体の体積抵抗率よりも低く抑えることで、表層上におけるトナー帯電量の上昇を抑制することができる。これに伴って、二次転写時における放電の発生を抑制して白色画像やバサツキ画像の発生を防止することが可能となり、良好な画像を得ることができる。また、二次転写ローラーにコート層を設けたり別体の帯電手段を用いたりしなくても、白色画像やバサツキ画像の発生を抑制することができるため、コストアップや搬送性及び耐久性の低下などの問題が生じない。
【0009】
本発明の中間転写ベルトは、前記表層の体積抵抗率は、8.0(logΩ・cm)以下であるのが好ましい。
【0010】
このような構成を採用することで、二次転写時における放電の発生を防止し、白色画像等の不具合の発生を抑制することが可能となる。
【0011】
本発明の中間転写ベルトは、前記ベルト全体の体積抵抗率は、8.8(logΩ・cm)以上であるのが好ましい。
【0012】
このような構成を採用することで、小パッチ(幅の小さなトナー像)を像担持体から中間転写ベルトに一次転写する際に、小パッチの周りのトナーが存在しない部分に転写電界が逃げてしまうのを防止し、一次転写性能を良好に保つことが可能となる。
【0013】
本発明の中間転写ベルトは、前記基材の体積抵抗率は、10.0(logΩ・cm)以上であるのが好ましい。
【0014】
このような構成を採用することにより、一次転写性能と二次転写性能の両方を良好に保つことが可能となる。
【0015】
本発明のタンデム式カラー画像形成装置は、上記したいずれかの中間転写ベルトを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、コストアップや用紙搬送性及び耐久性の低下を防止しつつ、白色画像やバサツキ画像の発生を抑制して、良好な画像を得ることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラープリンターの概略を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るカラープリンターにおいて、二次転写部の周辺を示す断面図である。
【図3】一次転写電流とトナー層電位の関係を示すグラフ図である。
【図4】二次転写電流とMottleの関係を示すグラフ図である。
【図5】(a)は、ベルト全体の体積抵抗率を8.8(logΩ・cm)とした場合の一次転写電流と拡散透過濃度の関係を示すグラフ図であり、(b)は、ベルト全体の体積抵抗率を7.8(logΩ・cm)とした場合の一次転写電流と拡散透過濃度の関係を示すグラフ図である。
【図6】大パッチ及び小パッチを示す説明図である。
【図7】表層の体積抵抗率とベルト全体の体積抵抗率の関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、図1を用いてタンデム式画像形成装置としてのカラープリンター1の構成の概略について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るカラープリンターの概略を示す模式図である。
【0019】
カラープリンター1は、箱型形状のプリンター本体2を備えており、プリンター本体2の下部には用紙(図示せず)を収納した給紙カセット3が設けられ、プリンター本体2の上部には排紙トレイ4が設けられている。
【0020】
プリンター本体2の上部には、中間転写ベルト5が設けられている。中間転写ベルト5の詳細については後述する。中間転写ベルト5の下方には、レーザー・スキャニング・ユニット(LSU)で構成される露光器6が配置され、中間転写ベルト5の下部に沿って4個の画像形成部7がトナーの色ごと(例えば、左側からマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色)に設けられている。中間転写ベルト5の左端には、クリーニングユニット8が設けられている。
【0021】
各画像形成部7には、像担持体としての感光体ドラム9が回転可能に設けられている。感光体ドラム9同士の間隔(ドラム間ピッチ)は、例えば、94mmである。感光体ドラム9の周囲には、帯電器10と、現像器11と、一次転写ローラー12と、クリーニング装置13と、除電器14とが、一次転写のプロセス順に配置されている。一次転写ローラー12は、例えば、金属軸とエピクロルヒドリンゴムによって外径φ15mmで形成され、その抵抗値は、1E+6Ω(1000V印加時)である。
【0022】
現像器11の下部には一対の攪拌ローラー15が設けられ、攪拌ローラー15の斜め上方には磁気ローラー16が設けられ、磁気ローラー16の斜め上方には現像ローラー17が設けられている。現像器11の上方には、各画像形成部7と対応するトナーコンテナ18が、トナーの色ごとに設けられている。
【0023】
プリンター本体2の右側には、用紙の搬送経路19が設けられている。搬送経路19の上流端には給紙部20が設けられ、搬送経路19の中流部にはレジストローラー21が設けられ、レジストローラー21よりもやや下流側には、中間転写ベルト5の右端に二次転写部22が設けられている。二次転写部22の詳細については後述する。搬送経路19の下流部には定着部23が設けられ、搬送経路19の下流端には排紙口24が設けられている。
【0024】
次に、このような構成を備えたカラープリンター1の画像形成動作について説明する。カラープリンター1に電源が投入されると、各種パラメーターが初期化され、定着部23の温度設定等の初期設定が実行される。そして、カラープリンター1に接続されたコンピューター等から画像データが入力され、印刷開始の指示がなされると、以下のようにして画像形成動作が実行される。
【0025】
まず、帯電器10によって感光体ドラム9の表面が帯電された後、露光器6からのレーザー光(矢印P参照)により感光体ドラム9に対して画像データに対応した露光が行われ、感光体ドラム9の表面に静電潜像が形成される。次に、この静電潜像を、現像器11がトナーにより対応する色のトナー像に現像する。このトナー像は、一次転写ローラー12によって中間転写ベルト5の表面に一次転写される。以上の動作を各画像形成部7が順次繰り返すことによって、中間転写ベルト5にフルカラーのトナー像が一時的に保持される。なお、感光体ドラム9上に残留したトナー及び電荷は、クリーニング装置13及び除電器14によって除去される。
【0026】
一方、給紙部20によって給紙カセット3又は手指しトレイ(図示せず)から取り出された用紙は、上記した画像形成動作とタイミングを合わせて二次転写部22へと搬送され、二次転写部22において、中間転写ベルト5上のフルカラーのトナー像が用紙に二次転写される。トナー像を二次転写された用紙は、搬送経路19を下流側へと搬送されて定着部23に進入し、この定着部23において用紙にトナー像が定着する。トナー像が定着した用紙は、排紙口24から排紙トレイ4の上に排出される。本実施形態の場合、印刷速度は、例えば30ppmである。なお、中間転写ベルト5上に残留したトナーは、クリーニングユニット8によって除去される。
【0027】
次に、主に図2を用いて、中間転写ベルト5及び二次転写部22の詳細について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係るカラープリンターにおいて、二次転写部の周辺を示す断面図である。なお、図2では、中間転写ベルト5の構成を分かり易く表示するため、中間転写ベルトを実際よりも厚く表示している。
【0028】
まず、中間転写ベルト5について詳細に説明する。中間転写ベルト5は、基材26と、この基材26に積層形成される弾性層27と、この弾性層27を被覆する表層28(コート層)と、を備えている。
【0029】
基材26は、例えば、フッ素系樹脂であるPvdf(ポリフッ化ビニリデン)によって、150μmの厚みで形成される。基材26の体積抵抗率は、好ましくは10.0(logΩ・cm)以上であり、一例として10.0(logΩ・cm)である。基材26の体積抵抗率を10.0(logΩ・cm)以上とすることで、一次転写性能及び二次転写性能の両方を良好に保つことが可能となる。この点については後述する。
【0030】
弾性層27は、例えばCR(クロロプレン)ゴムによって、250μmの厚みで形成される。基材26と弾性層27を重ね合わせた部分(以下、「基材26+弾性層27」と表記する。)の体積抵抗率は、好ましくは10.0(logΩ・cm)以上であり、一例として10.0(logΩ・cm)である。基材26+弾性層27の体積抵抗率が10.0(logΩ・cm)よりも低いと、表層28の欠陥(凹凸等)が画像に表れやすくなる。
【0031】
表層28は、トナー離型性の向上を図るために、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)によって形成される。表層28は、好ましくは数μm〜20μmの厚みで形成され、一例として5μmの厚みで形成される。表層28の体積抵抗率は、好ましくは5.0(logΩ・cm)〜8.0(logΩ・cm)であり、一例として6.0(logΩ・cm)である。表層28の体積抵抗率が5.0(logΩ・cm)よりも低いと、表層28の欠陥(凹凸等)が画像に表れやすくなる。表層28の体積抵抗率が8.0(logΩ・cm)よりも高いと、二次転写部22にて放電が発生し、白色画像等の不具合が発生する虞が有る。この点については後述する。
【0032】
中間転写ベルト5のベルト全体の体積抵抗率は、好ましくは8.8(logΩ・cm)以上とし、一例として9.7(logΩ・cm)とする。ベルト全体の体積抵抗率が8.8(logΩ・cm)よりも低いと、一次転写性能が低下し、画像不良の原因となる。この点については後述する。
【0033】
図1に示されるように、中間転写ベルト5は、無端状を成しており、プリンター本体2の右側に設けられた駆動ローラー31と、プリンター本体2の左側に設けられた従動ローラー32と、駆動ローラー31及び従動ローラー32よりもわずかに上方の内側に配置された左右一対のアイドルローラー33と、前記各一次転写ローラー12とに、テンションが掛かった状態で巻き掛けられている。本実施形態では、上記したテンションが20Nに設定されている。中間転写ベルト5は、駆動ローラー31の回転に伴って例えば線速150mm/secで図1の矢印方向に回転するように構成されている。
【0034】
次に、二次転写部22について詳細に説明する。図2に示されるように、二次転写部22には、中間転写ベルト5の右端部が巻き掛けられる前記した駆動ローラー31が設けられている。駆動ローラー31は、例えば外径φ29.4mmで形成されており、アルミニウム製の三ツ矢管によって形成されるローラー本体34と、ローラー本体34に周設される樹脂層35と、によって構成されている。ローラー本体34の表面には、例えば厚さ7μmの絶縁性アルマイト処理が施されており、ローラー本体34の体積抵抗率は、12.0(logΩ・cm)である。
【0035】
二次転写部22には、駆動ローラー31との間で中間転写ベルト5を挟むようにして二次転写ローラー36が設けられている。二次転写ローラー36と中間転写ベルト5の間には二次転写ニップ37が形成されており、この二次転写ニップ37において、中間転写ベルト5上に一時的に保持されたフルカラーのトナー像が用紙に二次転写されるように構成されている。二次転写ローラー36は、例えば、金属軸とエピクロルヒドリンゴムによって外径φ20mmで形成され、その抵抗値は、1E+7Ω(1000V印加時)である。なお、二次転写ローラー36には、コート層が設けられていない。
【0036】
以上のような構成による作用効果について、以下に説明する。
【0037】
まず、本実施形態では、中間転写ベルト5について、表層28の体積抵抗率(6.0(logΩ・cm))がベルト全体の体積抵抗率(9.7(logΩ・cm))よりも低くなっているため、表層28上におけるトナー帯電量の上昇を抑制することができる。これに伴って、二次転写部22における放電の発生を抑制して白色画像やバサツキ画像の発生を防止することが可能となり、良好な画像を得ることができる。また、二次転写ローラー36にコート層を設けたり別体の帯電手段を用いたりしなくても、白色画像やバサツキ画像の発生を抑制することができるため、コストアップや搬送性及び耐久性の低下などの問題が生じない。
【0038】
また、本実施形態では、表層28の体積抵抗率が6.0(logΩ・cm)であり、表層28の体積抵抗率を8.0(logΩ・cm)以下としている。このことによる効果について、図3及び図4を用いて説明する。
【0039】
図3は、一次転写電流とトナー層電位の関係を示すグラフ図である。この図に示されるように、一次転写電流を上昇させると、これに伴って中間転写ベルト5上のトナー層電位も上昇する。また、表層28の体積抵抗率を11.0(logΩ・cm)から8.0(logΩ・cm)、6.0(logΩ・cm)と下げていくと、これに伴って、中間転写ベルト5上のトナー層電位の上昇が抑制される。
【0040】
図4は、二次転写電流とMottleの関係を示すグラフ図である。なお、「Mottle」とは、斑状度のことであり、ベタ領域における低空間周波数領域の濃度変動を表している。具体的には、画像測定領域を、濃度変動の空間周波数にあたる小領域(412μm×412μm)に分割し、各領域の平均濃度をDijとし、Dijの標準偏差をMottleと定義する。即ち、


である。Mottleは、白点画像等の発生率の指標となる。
【0041】
前記のように、表層28の体積抵抗率を下げることで中間転写ベルト5上のトナー層電位の上昇が抑制され、結果として、図4に示されるように、Mottleの値が低下する。このことから、表層28の体積抵抗率を下げることで、白色画像等の不具合の発生を抑制できることが分かる。
【0042】
また、図4に示されるように、表層28の体積抵抗率を8.0(logΩ・cm)から6.0(logΩ・cm)まで下げても、Mottleの値にそれ程の差異が生じないのに対して、表層28の体積抵抗率を11.0(logΩ・cm)から8.0(logΩ・cm)まで下げることで、Mottleの値が飛躍的に低下している。このことから明らかな通り、本実施形態のように表層28の体積抵抗率を8.0(logΩ・cm)以下とすれば、二次転写部22における放電の発生を防止し、白色画像等の不具合の発生を抑制することが可能となる。
【0043】
また、本実施形態では、ベルト全体の体積抵抗率が9.7(logΩ・cm)であり、ベルト全体の体積抵抗率を8.8(logΩ・cm)以上としている。このことによる効果について、図5及び図6を用いて説明する。
【0044】
図5(a)は、ベルト全体の体積抵抗率を8.8(logΩ・cm)とした場合の一次転写電流と拡散透過濃度の関係を示すグラフ図であり、図5(b)は、ベルト全体の体積抵抗率を7.8(logΩ・cm)とした場合の一次転写電流と拡散透過濃度の関係を示すグラフ図である。図5(a)、図5(b)の縦軸は、シアンの色の画像形成部7における拡散透過濃度を示している。また、図5(a)、図5(b)において、大パッチ転写時とは、大パッチ(幅300mmのトナー像、図6のP1参照)を感光体ドラム9から中間転写ベルト5に一次転写した場合のことであり、小パッチ転写時とは、小パッチ(幅7mmのトナー像、図6のP2参照)を感光体ドラム9から中間転写ベルト5に一次転写した場合のことである。また、グラフの縦軸の拡散透過濃度はX−Rite社製の透過濃度計(MODEL 310TR)による測定値である。
【0045】
図5(a)、図5(b)に示されるように、大パッチ転写時には、ベルト全体の体積抵抗率が8.8(logΩ・cm)の場合とベルト全体の体積抵抗率が7.8(logΩ・cm)の場合とで拡散透過濃度に大きな違いは無い。一方で、小パッチ転写時には、ベルト全体の体積抵抗率が8.8(logΩ・cm)の場合には、ベルト全体の体積抵抗率が7.8(logΩ・cm)の場合に比べて、拡散透過濃度が遥かに大きくなっている。これは、ベルト全体の体積抵抗率を7.8(logΩ・cm)とした場合には、小パッチ転写時に、小パッチの周りのトナーが存在しない部分に転写電界が逃げてしまっていることに起因する。このことから明らかな通り、本実施形態のようにベルト全体の体積抵抗率を8.8(logΩ・cm)以上とすることで、一次転写性能を良好に保つことが可能となる。
【0046】
また、本実施形態では、基材26の体積抵抗率が10.0(logΩ・cm)であり、基材26の体積抵抗率を10.0(logΩ・cm)以上としている。このことによる効果について、以下に図7を用いて説明する。図7は、表層の体積抵抗率とベルト全体の体積抵抗率の関係を示すグラフ図である。
【0047】
図7において、点線X1は、一次転写性能を保つのに必要なベルト全体の体積抵抗率の下限値(8.8(logΩ・cm))を示し、点線X2は、二次転写性能を保つのに必要な表層28の体積抵抗率の上限値(8.0(logΩ・cm))を示している。つまり、図7において、点線X1の上側且つ点線X2の右側の領域Sが、一次転写性能及び二次転写性能の両方が良好な領域である。
【0048】
図7に示されるように、基材26の体積抵抗率が9.0(logΩ・cm)の場合には、表層28の体積抵抗率をどのように設定しても、一次転写性能と二次転写性能のいずれか一方が満足されない(領域S内に動作点がマークされない)。これに対して、基材26の体積抵抗率が10.0(logΩ・cm)の場合には、表層28の体積抵抗率を8.0以下とした場合に、一次転写性能と二次転写性能の両方が良好に保たれる(領域S内に動作点がマークされる)。このことから明らかなように、一次転写性能と二次転写性能の両方を良好に保つには、本実施形態のように基材26の体積抵抗率を10.0(logΩ・cm)以上とするのが好ましい。
【0049】
以上の如く、本実施形態の中間転写ベルト5は、表層28の体積抵抗率をベルト全体の体積抵抗率よりも低くするとともに、中間転写ベルト5を構成する各層(基材26、弾性層27、表層28)の体積抵抗率を最適化することで、中間転写ベルト5上のトナー帯電量を抑制し、結果として良好な転写画像が得られるものである。
【0050】
本実施形態では、中間転写ベルト5の基材26を、Pvdf(ポリフッ化ビニリデン)によって形成する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、例えば、ポリイミド、ポリカーボネート等の他の異なる材質によって基材26を形成しても良い。また、本実施形態では、中間転写ベルト5の弾性層27を、CRゴムによって形成する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、NBR(ニトリル)ゴム、シリコン、ウレタン等の他の異なる材質によって弾性層27を形成しても良い。また、本実施形態では、中間転写ベルト5の表層28を、PTFEによって形成する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、他の異なる材質によって表層28を形成しても良い。つまり、表層28の体積抵抗率をベルト全体の体積抵抗率よりも低くすることが可能であれば、どのような材質の組み合わせで基材26、弾性層27、表層28を形成しても構わない。
【0051】
本実施形態では、本発明の構成をカラープリンター1に適用する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、複写機、デジタル複合機、ファクシミリ等の他の画像形成装置に本発明の構成を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 カラープリンター(タンデム式画像形成装置)
5 中間転写ベルト
9 感光体ドラム(像担持体)
26 基材
27 弾性層
28 表層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に形成されたトナー像が転写され、一時的に保持される中間転写ベルトであって、
基材と、
該基材に積層形成される弾性層と、
該弾性層を被覆する表層と、を備え、
該表層の体積抵抗率がベルト全体の体積抵抗率よりも低いことを特徴とする中間転写ベルト。
【請求項2】
前記表層の体積抵抗率は、8.0(logΩ・cm)以下であることを特徴とする請求項1に記載の中間転写ベルト。
【請求項3】
前記ベルト全体の体積抵抗率は、8.8(logΩ・cm)以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の中間転写ベルト。
【請求項4】
前記基材の体積抵抗率は、10.0(logΩ・cm)以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の中間転写ベルト。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の中間転写ベルトを備えていることを特徴とするタンデム式カラー画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−50584(P2013−50584A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188538(P2011−188538)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】