説明

丸刃を使用するシヤーカット型スリッターのラップ量調整方法および装置

【解決手段】 丸刃を使用するシヤーカット型スリッターのラップ量調整は、ナイフ交換時において交換するナイフの径を、刃先検出センサーを用いて自動的に計測し、計測したナイフ径と刃先検出センサーの刃先検出点とに基いて所望のラップ量を得るためのナイフ位置を演算で求めることによって行われる。
【効果】 丸刃を使用するシヤーカット型スリッターにおいて、交換ナイフの直径を自動的または半自動的に計測でき、また、上下刃のラップ量も自動的に調整できるので、ナイフ交換時の手間が非常に簡単化される。また、熟練した作業者でなくとも、容易にナイフ交換を問題なく行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丸刃を使用するシヤーカット型スリッターのラップ量調整方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、帯状紙や帯状フィルム等のウエブを切断する装置として丸刃を使用するシヤーカット型スリッターがある。この種のスリッターとしては、図1に略示するように下刃を椀型刃1とし、上刃を皿型刃とするものや、図2に略示するように下刃を皿型刃3とし、上刃も皿型刃4とするもの等がある。
【0003】
このような丸刃を使用するシヤーカット型スリッターのカッティング(切断)の良否を支配する要素には次の4つの要素がある。
(1)1対のナイフの接触圧(これは、図3に略示するような、下刃3と上刃4との間における矢印P方向における圧接力である)。
(2)1対のナイフ同志のトーイン角(これは、図4に略示するような、切断すべきウエブの流れ方向に対する下刃3、上刃4の傾斜角αである)。
(3)1対のナイフの間のオフセット(これは、図5に略示するような、切断すべきウエブの流れ方向における下刃3の中心と上刃4の中心とのずれβである)。
(4)1対のナイフの間のラップ量(これは、図6に略示するような、下刃3と上刃4との間の刃先の重なり量dである)。
【0004】
これら4つの要素のうち、従来からラップ量の調節は専ら目視によって行われてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラップ量が大きいと、刃先でウエブの切口を「こする」傾向が強くなり、切口が悪化するとともに、ダスト(切粉)の発生が多くなり、品質の著しい低下を招くことになる。従って、ラップ量はできるだけ小さい方が望ましいが、小さ過ぎると、ナイフの研磨精度に係る真円度、あるいは刃先強度の問題もあり、刃と刃の接触が外れ、切断不良となる障害が発生することがある。そのためにラップ量の管理は極めて重要である。例えば、製紙の場合は1.0〜1.5mmが適正と考えられている。
【0006】
また、シヤーカットに使用されるナイフの形状は、椀型刃(図1の下刃1)と皿型刃(図1の上刃2、図2の下刃3および上刃4)とがあり、椀型刃の場合は、研磨によってナイフ径が変化することはないが、皿型刃の場合は、研磨によって径が段々小さくなるので、一定の径の刃を使用することは不可能である。一般的には下刃に椀型刃、上刃に皿型刃を使用するケース(図1参照)が多いが、最近は上下皿型刃を使用するケース(図2参照)も増えている。上下皿型刃の方が切口が良好なためである。上下椀型刃のスリッターは特殊なケース以外は使用されていないのが現状である。
【0007】
従って、総てのスリッターには片方乃至両方に皿型刃が使用されていると考えてよく、そのために一定のラップ量を得るためにはナイフ交換のたびに皿型刃の直径に応じたナイフの位置調整が必要である。そのために、皿型刃を交換するたびにラップ量の調整に大変な手間を要していた。また、作業者の勘に頼っていたので、非常に熟練した技能を有した作業者を必要としていた。
【0008】
よって、本発明の目的は、このような従来の問題点を解決するため、自動的にラップ量を調整できるような、丸刃を使用するシヤーカット型スリッターのラップ量調整方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの観点によれば、丸刃を使用するシヤーカット型スリッターのラップ量調整方法において、ナイフ交換時において交換するナイフの径を、刃先検出センサーを用いて自動的に計測し、前記計測したナイフ径と前記刃先検出センサーの刃先検出点とに基いて所望のラップ量を得るためのナイフ位置を演算で求めることを特徴とするラップ量調整方法が提供される。
【0010】
本発明の別の観点によれば、丸刃を使用するシヤーカット型スリッターにおいてナイフの径を自動的に計測する方法において、当該スリッターにおける切断すべきウエブ面から、当該スリッターで使用し得る最大径のナイフの刃先径に所定の余裕値を加えた値に等しい距離だけ離れた基準点に刃先検出センサーを配置し、ナイフ交換時にナイフ刃先が前記刃先検出センサーで検出されるまでナイフを移動させ、該ナイフの移動距離と前記基準点位置とに基いてナイフ径を演算で求めることを特徴とする方法が提供される。
【0011】
本発明のさらに別の観点によれば、丸刃を使用するシヤーカット型スリッターにおいてナイフの径を自動的に計測する方法において、当該スリッターにおける切断すべきウエブ面から、当該スリッターで使用し得る最大径のナイフの刃先径に所定の余裕値を加えた値に等しい距離だけ離れた基準点に刃先検出センサーを配置し、ナイフ交換時にナイフ刃先が前記刃先検出センサーで検出されるまで該刃先検出センサーを移動させ、該刃先検出センサーの移動距離と前記基準点位置とに基いてナイフ径を演算で求めることを特徴とする方法が提供される。
【0012】
本発明のさらに別の観点によれば、丸刃を使用するシヤーカット型スリッターのラップ量調整方法において、現状のナイフ径を一旦カウンターに記憶させておき、ナイフをラップさせる方向に移動させる距離の2倍の値を前記カウンターに記憶されたカウンター値と加減算し、その値が交換するナイフ径と等しくなるところまでナイフを移動させて、ナイフ交換前のラップ量を一定に保つことを特徴とするラップ量調整方法が提供される。
【0013】
本発明のさらに別の観点によれば、丸刃を使用するシヤーカット型スリッターのラップ量調整装置において、上刃ホルダーおよび/または下刃ドライブユニットの所定の基準点位置に配置された刃先検出センサーと、交換ナイフの刃先を前記刃先検出センサーに対して移動させるためのナイフ移動手段と、該ナイフ移動手段の動作を制御するためのナイフ移動制御手段と、交換ナイフの径を演算によって求める交換ナイフ径演算手段とを備えており、前記ナイフ移動制御手段は、ナイフ交換時において前記ナイフ移動手段を制御してナイフ刃先が前記刃先検出センサーで検出されるまでナイフを移動させ、前記交換ナイフ径演算手段は、該ナイフの移動距離と前記基準点位置とに基いてナイフ径を演算で求め、前記ナイフ移動制御手段は、前記演算で求められたナイフ径に基いて前記ナイフ移動手段を制御して所望のラップ量が得られる位置へとナイフを移動させるようにすることを特徴とするラップ調整装置が提供される。
【0014】
本発明の一つの実施の形態によれば、前記刃先検出センサーは、常時閉形タッチセンサーであり、前記ナイフ移動手段は、サーボモーターを含む。
【0015】
本発明のさらに別の観点によれば、丸刃を使用するシヤーカット型スリッターのラップ量調整装置において、上刃ホルダーおよび/または下刃ドライブユニットの所定の基準点位置に配置された刃先検出センサーと、前記刃先検出センサーを交換ナイフの刃先に対して移動させるためのセンサー移動手段と、該センサー移動手段の動作を制御するためのセンサー移動制御手段と、交換ナイフの径を演算によって求める交換ナイフ径演算手段と、ナイフ移動手段とを備えており、前記センサー移動制御手段は、ナイフ交換時において前記センサー移動手段を制御してナイフ刃先が前記刃先検出センサーで検出されるまで前記刃先検出センサーを移動させ、前記交換ナイフ径演算手段は、該刃先検出センサーの移動距離と前記基準点位置とに基いてナイフ径を演算で求め、前記ナイフ移動手段は、前記演算で求められたナイフ径に基いて所望のラップ量が得られる位置へとナイフを移動させるようにすることを特徴とするラップ調整装置が提供される。
【0016】
本発明の一つの実施の形態によれば、前記刃先検出センサーは、常時閉形タッチセンサーであり、前記センサー移動手段は、前記刃先検出センサーを先端に取り付けたリニヤースケールを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、特に図7から図10を参照して、本発明の実施の形態および実施例について、本発明をより詳細に説明する。
【0018】
先ず、本発明の具体的実施例について説明する前に、本発明の基本的原理について説明しておく。ラップ量の調整を自動化するために解決すべき課題は大別して次の2つの課題がある。
(1)第一の課題は、上刃、下刃等のナイフの直径を自動的に計測すること。
(2)第二の課題は、計測した直径に基いてナイフの位置を自動的に移動させて所望のラップ量を得ること。
【0019】
本発明によれば、ナイフの直径を自動的に計測する第1の方法は、当該スリッターにおける切断すべきウエブ面から、当該スリッターで使用し得る最大径のナイフの刃先径に所定の余裕値Rを加えた値に等しい距離だけ離れた位置を基準点とし、この位置に刃先検出センサーを固定し、ナイフ交換時において、先ず刃先検出センサーで刃先が検出される位置までナイフを刃先検出センサーの方へナイフを移動させ、そのときのナイフの移動量からナイフ径を演算で求めるものである。
【0020】
また、ナイフの直径を自動的に計測する第2の方法は、当該スリッターにおける切断すべきウエブ面から、当該スリッターで使用し得る最大径のナイフの刃先径に所定の余裕値Rを加えた値に等しい距離だけ離れた位置を基準点とし、ナイフ交換時において、この位置から刃先検出センサーをナイフの刃先へ向けて移動させ、刃先検出センサーで刃先が検出される位置までの刃先検出センサーの移動量をリニヤースケール等で計測して、そのときの刃先検出センサーの移動料からナイフ径を演算で求めるものである。
【0021】
さらにまた、別の方法として、適正なラップ量を既に有するナイフの位置を基準点とし、そのときのナイフ径を距離カウンターに記憶させておき、交換するナイフ径に応じて移動させるナイフのセンター間距離の倍の値を加算または減算し、距離カウンターの値が交換するナイフ径と等しくなるところまでセンター間距離を移動させて適正なラップ量を保つ方法がある。
【0022】
次に、これらの方法を実施する本発明の具体的な実施例について説明する。図7は、本発明のラップ量調整方法を実施する本発明の一実施例としてのスリッター装置の構成を略示する正面図であり、図8は、図7のスリッター装置の構成を略示する側面図であり、図9は、図7のスリッター装置における上刃ホルダーの詳細構造を説明するための部分破断側面図である。これら図に示されるように、この実施例のスリッター装置は、主として、皿型刃である上刃10を着脱自在に取り付けるようにした上刃ホルダー30と、皿型刃である下刃20を着脱自在に取り付けるようにした下刃ドライブユニット40とを備えている。
【0023】
上刃ホルダー30は、主として、このスリッター装置の上刃ホルダー取付けアーム(図示していない)に取り付け固定される上刃ホルダー支持部31と、この上刃ホルダー支持部31に保持される縦方向ロッド32と、横方向ロッド保持部33と、この横方向ロッド保持部33に保持される横方向ロッド34と、横方向ロッド34に対して上刃10を着脱自在に取り付け固定するための上刃着脱部35と、縦方向ロッド32を脱着位置と切断作動位置との間で移動させるための縦方向脱着用エヤーシリンダー36と、横方向ロッド34を脱着位置と切断作動位置との間で移動させるための横方向脱着用エヤーシリンダー37と、上刃昇降用ギヤーボックス38と、上刃昇降用ギヤードACサーボモーター39と、上刃用タッチセンサー50と、この上刃用タッチセンサー50を上刃ホルダー支持部31に対して取り付け固定する上刃タッチセンサー支持部51とを備えている。さらに、上刃ホルダー30は、上刃昇降用ギヤードACサーボモーター39と上刃用タッチセンサー50との間に設けられる上刃昇降用モータ駆動制御装置80と、上刃昇降距離演算装置81とを備える。上刃昇降用モータ駆動制御装置80は、上刃昇降用ギヤードACサーボモーター39のための駆動源と、その作動を制御するための制御部とを含む。上刃昇降距離演算装置81は、ナイフ径等の必要なパラメータを入力することのできる入力部と、この入力部からの入力値や移動距離等の計測値等を記憶するための記憶部またはカウンターと、この記憶部またはカウンターに記憶された諸値に基いて上刃昇降距離や上刃径等を演算する演算部とを含む。
【0024】
下刃ドライブユニット40は、主として、下刃ドライブユニットベースフレーム41と、この下刃ドライブユニットベースフレーム41の上面に取り付けされて切断すべきウエブの下面を支持し案内するガイド板42と、下刃シャフト保持部43と、この下刃シャフト保持部43に保持される下刃シャフト44と、この下刃シャフト44に対して下刃20を着脱自在に取り付け固定するための下刃着脱部45と、下刃20を駆動するための下刃駆動モーター46と、下刃シャフト保持部43を下刃ドライブユニットベースフレーム41に対して縦方向にスライド可能に取り付け保持するためのリニヤーベアリング47と、下刃昇降用ギヤーボックス48と、下刃昇降用ギヤードACサーボモーター49と、下刃用タッチセンサー60と、この下刃用タッチセンサー60を下刃ドライブユニットベースフレーム41に対して取り付け固定する下刃タッチセンサー支持部61とを備えている。さらに、下刃ドライブユニット40は、下刃昇降用ギヤードACサーボモーター49と下刃用タッチセンサー60との間に設けられる下刃昇降用モータ駆動制御装置90と、下刃昇降距離演算装置91とを備える。下刃昇降用モータ駆動制御装置90は、下刃昇降用ギヤードACサーボモーター49のための駆動源と、その作動を制御するための制御部とを含む。下刃昇降距離演算装置91は、ナイフ径等の必要なパラメータを入力することのできる入力部と、この入力部からの入力値や移動距離等の計測値等を記憶するための記憶部またはカウンターと、この記憶部またはカウンターに記憶された諸値に基いて下刃昇降距離や下刃径等を演算する演算部とを含む。
【0025】
図9を参照して、上刃ホルダー30の構造についてより詳細に説明する。この図9によく示されるように、縦方向ロッド32の下端には、横方向ロッド保持部33が水平に取り付けられており、縦方向ロッド32の上端には、上刃昇降スクリュウ321が設けられている。縦方向ロッド32は、上刃ホルダー支持部31内に設けられたリニヤーベアリング311にそって縦方向に、縦方向脱着用エヤーシリンダー36または上刃昇降用ギヤードACサーボモーター39の作動に応じて、移動可能とされている。横方向ロッド34は、横方向ロッド保持部33内に設けられたリニヤーベアリング331にそって横方向に、横方向脱着用エヤーシリンダー37の作動に応じて、移動可能とされている。
【0026】
上刃昇降用ギヤーボックス38には、上刃昇降用ギヤードACサーボモーター39の駆動軸に取り付けられて駆動軸の回転に応じて回転する上刃昇降駆動ギヤー381と、この上刃昇降駆動ギヤー381と上刃昇降スクリュウ321に係合した上刃昇降ギヤー322との間に係合して上刃昇降用ギヤードACサーボモーター39による回転駆動を上刃昇降ギヤー322に伝達する上刃昇降中継ギヤー382とが設けられている。このような歯車係合のため、上刃昇降用ギヤードACサーボモーター39の作動により、上刃昇降駆動ギヤー381がいずれかの方向に回転させられると、この回転駆動は、上刃昇降中継ギヤー382を介して上刃昇降ギヤー322に伝えられ、上刃昇降ギヤー322が回転させられる。すると、上刃昇降スクリュウ321は、回転する上刃昇降ギヤー322が縦方向においては固定されているため、それらの間のネジ係合の反動として、上刃昇降ギヤー322の回転方向に応じて縦方向において上方向または下方向へと移動させられる。したがって、この上刃昇降ギヤー322が設けられた縦方向ロッド32もまた縦方向において上方向または下方向へと移動させられることになる。
【0027】
上刃用タッチセンサー50および下刃用タッチセンサー60は、前述した刃先検出センサーを構成するものであり、接触式接点形センサーである。本発明においては、好ましくは、常時閉形(B接点)センサーが使用される。常時閉形の接触式接点形センサーは、検出体がセンサー先端のコンタクトに接触しそのコンタクトを押圧すると、内部の接触していた可動接点と固定接点が離れ、閉回路が開回路となる。検出体がコンタクトから離れると、バネによって両接点は接触し、閉回路に復する。センサーは、このような動作時にオンオフ信号を出力する。このようなタッチセンサーによると、スナップアクション機構がないので極めて高い動作点の繰り返し精度が得られる(繰り返し精度0.5μm)。また、次のような利点のあるものである。電気回路が簡略化できるのでコストパフォーマンスが良い。増幅回路がないので電源電圧、温度変化、時間経過に伴うドリフトがない。接触式なので塵埃、切粉、切削油剤などの影響が少ない。接点は金系特殊合金を使用し、精度寿命が長く、信頼性が高い。接点保護回路により悪い電源環境や振動に対して高い信頼性を得やすい。PCやCNC等への入力が容易である。
【0028】
次に、前述したような構成を有するスリッター装置において、上刃10と下刃20とのラップ量を自動的に調整するための動作について説明する。
【0029】
先ず、下刃20の刃先の位置は、図7および8に示されるように、切断すべきウエブの進行ライン、すなわち、ガイド板42の上面より僅かに上になるように、ナイフの径にかかわらず常に一定でなければならない。したがって、ナイフを交換する場合には、交換するナイフの径に応じてナイフを上下に調節する必要がある。このような下刃20の位置の調節は、下刃ドライブユニット40における下刃昇降用ギヤードACサーボモーター49によって行う。すなわち、下刃昇降用ギヤードACサーボモーター49を作動させて下刃昇降用ギヤーボックス48内のギヤーを回転駆動させることにより、下刃シャフト保持部43をリニヤーベアリング47にそって上下動させて下刃シャフト44を上下に移動させることによって行う。
【0030】
一方、上刃10についても同様の調節が必要であり、このような調節は、上刃昇降用ギヤードACサーボモーター39およびこれに連結する上刃昇降用ギヤーボックス38によって上刃10の上下位置を調節することにより行われる。しかし、上刃ホルダー30については、切断すべきウエブが突然切れた場合等、瞬間的に上刃10を上げて下刃20との接触を解除する脱着機構が必要である。これは、縦方向脱着用エヤーシリンダー36および横方向脱着用エヤーシリンダー37を作動させることにより行う(これらエヤーシリンダーの駆動源は図示していない)。各脱着量は、各エヤーシリンダーのシリンダーストロークで一定とされる。
【0031】
そして、ナイフを交換するに当り上下刃のラップ量を一定に保つためには、先ず、交換するナイフの径を知る必要がある。次に、このナイフ径を自動的に計測する動作について説明する。
【0032】
先ず、上刃のナイフ径を自動的に計測する場合について説明するに、横方向脱着用エヤーシリンダー37および縦方向脱着用エヤーシリンダー36を脱着状態に作動させて、上刃10が下刃20から離れて上方に位置した状態とし、この状態にて、ナイフの交換を行う。
【0033】
前述したように、上刃ホルダー30に配置された上刃用タッチセンサー50の先端のコンタクト位置は、この脱着状態位置において、当該スリッターにおける切断すべきウエブ上面から、当該スリッターで使用し得る最大径のナイフの刃先径A1に所定の余裕値R1を加えた値に等しい距離(A1+R1)だけ離れた基準点に配されている。そして、この基準点の距離値(A1+R1)は、上刃昇降距離演算装置81の入力部により入力されてその記憶部に記憶されている。この脱着状態位置において、横方向ロッド34に上刃着脱部35にて交換ナイフ(新しいナイフ)が保持された状態において、上刃昇降用モータ駆動制御装置80の駆動源にて、その制御部による制御の下で上刃昇降用ギヤードACサーボモーター39を付勢することにより、上刃昇降用ギヤーボックス38を介して上刃昇降ギヤー322を所定方向に回転駆動させる。これにより、上刃昇降スクリュウ321が上昇させられていき、したがって、縦方向ロッド32が上昇させられ、かくして、交換ナイフ(新しい上刃10)が上昇させられていき、その刃先が上刃用タッチセンサー50の先端のコンタクトに近づいていく。こうして、交換した上刃10の刃先が上刃用タッチセンサー50の先端のコンタクトに接触して刃先検出信号が上刃用タッチセンサー50から出力されたとき、上刃昇降距離演算装置81は、上刃昇降用モータ駆動制御装置80の制御部へそのことを指示して、上刃昇降用ギヤードACサーボモーター39の付勢を停止させると共に、それまでに要した上刃昇降用ギヤードACサーボモーター39の回転数を受け取り、その記憶部に記憶させる。そして、上刃昇降距離演算装置81の演算部は、記憶部に記憶されたサーボモーター39の回転数に基いて交換ナイフの刃先の移動量を算出し、さらに、その算出された移動量と、記憶部に記憶された前述の距離値(A1+R1)とに基いて交換ナイフの直径を算出する。
【0034】
次に、下刃のナイフ径を自動的に計測する場合について説明するに、下刃着脱部45を操作して、ナイフの交換を行う。下刃ドライブユニット40に配置された下刃用タッチセンサー60の先端のコンタクト位置は、この着脱位置において、当該スリッターにおける切断すべきウエブ下面から、当該スリッターで使用し得る最大径のナイフの刃先径A2に所定の余裕値R2を加えた値に等しい距離(A2+R2)だけ離れた基準点に配されている。そして、この基準点の距離値(A2+R2)は、下刃昇降距離演算装置91の入力部により入力されてその記憶部に記憶されている。この着脱状態位置において、下刃ロッド44に下刃着脱部45にて交換ナイフ(新しいナイフ)が保持された状態において、下刃昇降用モータ駆動制御装置90の駆動源にて、その制御部による制御の下で下刃昇降用ギヤードACサーボモーター49を付勢することにより、下刃昇降用ギヤーボックス48を介して下刃シャフト保持部43をリニヤーベアリング47にそって下降させていき、したがって、下刃44が下降させられ、かくして、交換ナイフ(新しい下刃20)が下降させられていき、その刃先が下刃用タッチセンサー60の先端のコンタクトに近づいていく。こうして、交換した下刃20の刃先が下刃用タッチセンサー60の先端のコンタクトに接触して刃先検出信号が下刃用タッチセンサー60から出力されたとき、下刃昇降距離演算装置91は、下刃昇降用モータ駆動制御装置90の制御部へそのことを指示して、下刃昇降用ギヤードACサーボモーター49の付勢を停止させると共に、それまでに要した下刃昇降用ギヤードACサーボモーター49の回転数を受け取り、その記憶部に記憶させる。そして、下刃昇降距離演算装置91の演算部は、記憶部に記憶されたサーボモーター49の回転数に基いて交換ナイフの刃先の移動量を算出し、さらに、その算出された移動量と、記憶部に記憶された前述の距離値(A2+R2)とに基いて交換ナイフの直径を算出する。
【0035】
なお、前述の実施例では、交換ナイフ径を自動的に計測するのに刃先検出センサーに対して刃先を移動させていくものであったが、本発明は、これに限らず、刃先検出センサーを刃先に対して移動させる構成としても、同様に交換ナイフ径を自動的に計測することができる。図10は、そのような実施例を上刃ホルダー30に適用したものを略示する図である。上刃ホルダー30の大部分の構造は、図7から図9を参照して前述したのと同様であるので、ここでは繰り返し説明しない。
【0036】
図10の実施例では、上刃ホルダー支持部31にリニヤースケール支持部71を介してリニヤースケール70が取り付けられており、このリニヤースケール70の下端に上刃用タッチセンサー50が取り付けられている。そして、このリニヤースケール70と上刃用タッチセンサー50との間に、リニヤースケール駆動制御装置72が配置されている。
【0037】
次に、このような構成において、上刃のナイフ径を自動的に計測する場合について説明するに、横方向脱着用エヤーシリンダー37および縦方向脱着用エヤーシリンダー36を脱着状態に作動させて、上刃10が下刃20から離れて上方に位置した状態とし、この状態にて、ナイフの交換を行うのは前述した実施例におけるのと同様である。前述したように、上刃ホルダー30に配置された上刃用タッチセンサー50の先端のコンタクト位置は、この脱着状態位置において、当該スリッターにおける切断すべきウエブ上面から、当該スリッターで使用し得る最大径のナイフの刃先径A3に所定の余裕値R3を加えた値に等しい距離(A3+R3)だけ離れた基準点に配されている。この脱着状態位置において、横方向ロッド34に上刃着脱部35にて交換ナイフ(新しいナイフ)が保持された状態において、リニヤースケール駆動制御装置72にて、リニヤースケール70を駆動させ、上刃用タッチセンサー50の先端のコンタクトを交換ナイフ10の刃先に対して移動させていく。こうして、交換した上刃10の刃先に対して上刃用タッチセンサー50の先端のコンタクトが接触して刃先検出信号が上刃用タッチセンサー50から出力されたとき、リニヤースケール駆動制御装置72は、リニヤースケール70の移動を停止させる。そして、リニヤースケール70にて、その上刃用タッチセンサー50のコンタクトの移動量を読み取り、前述の距離(A3+R3)とに基いて、交換ナイフの直径を算出する。
【0038】
次に、上下刃のラップ量を所望値に自動的に調整する方法について説明するに、前述した方法でナイフ径を自動的に計測した後、下刃が椀型刃の場合は、ナイフセンターからウエブ面までの距離がナイフ径の2分の1となるように、また、皿型刃の場合は、(ナイフ径+ラップ量)×1/2になるように下刃の位置を自動調節する。この場合の基準点は、前述した刃先検出センサーの作動点を原点とすればよい。そして、このような下刃位置の調節は、前述したのと同様に下刃昇降用ギヤードACサーボモーター49を付勢制御することにより行われ得る。
【0039】
上刃については、上刃ホルダー30を一旦脱状態とし、〔(ナイフ径+ラップ量)×1/2+(脱着量)〕となるようにナイフセンターの位置を自動調節する。そして、このような上刃位置の調節は、前述したのと同様に上刃昇降用ギヤードACサーボモーター39を付勢制御することにより行われ得る。
【0040】
本発明のさらに別の方法について説明するに、交換前のラップ量を保持するだけであれば、交換前のナイフ径を、上刃昇降距離演算装置81や下刃昇降距離演算装置91のカウンターに記憶させ表示しておき、ナイフの移動量の2倍の値を、そのカウンター値から加減算するようにしておけば、その値が交換するナイフ径と等しくなるまでナイフを移動させれば、自動的に交換前のラップ量を得ることが出来る。この場合、ナイフ径は、予めノギス等のスケール等で計測する必要はあるものの、ナイフ刃をスケールを当てて計測することはさほど手間でもなく、半自動方式として推奨できる実務的な方法である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、丸刃を使用するシヤーカット型スリッターにおいて、交換ナイフの直径を自動的または半自動的に計測でき、また、上下刃のラップ量も自動的に調整できるので、ナイフ交換時の手間が非常に簡単化される。また、熟練した作業者でなくとも、容易にナイフ交換を問題なく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】椀型刃と皿型刃のシヤーカット型スリッターにおける1対のナイフの組み合わせを略示する図である。
【図2】皿型刃と皿型刃のシヤーカット型スリッターにおける1対のナイフの組み合わせを略示する図である。
【図3】1対のナイフの接触圧を説明するための概略図である。
【図4】1対のナイフ同志のトーイン角を説明するための概略図である。
【図5】1対のナイフの間のオフセットを説明するための概略図である。
【図6】1対のナイフの間のラップ量を説明するための概略図である。
【図7】本発明のラップ量調整方法を実施する本発明の一実施例としてのスリッター装置の構成を略示する正面図である。
【図8】図7のスリッター装置の構成を略示する側面図である。
【図9】図7のスリッター装置における上刃ホルダーの詳細構造を説明するための部分破断側面図である。
【図10】本発明の別の実施例としてのスリッター装置における上刃ホルダーの詳細構造を説明するための図9と同様の図である。
【符号の説明】
【0043】
10 上刃
20 下刃
30 上刃ホルダー
31 上刃ホルダー支持部
32 縦方向ロッド
33 横方向ロッド保持部
34 横方向ロッド
35 上刃着脱部
36 縦方向脱着用エヤーシリンダー
37 横方向脱着用エヤーシリンダー
38 上刃昇降用ギヤーボックス
39 上刃昇降用ギヤードACサーバモーター
40 下刃ドライブユニット
41 下刃ドライブユニットベースフレーム
42 ガイド板
43 下刃シャフト保持部
44 下刃シャフト
45 下刃着脱部
46 下刃駆動モーター
47 リニヤーベアリング
48 下刃昇降用ギヤーボックス
49 下刃昇降用ギヤードACサーボモーター
50 上刃用タッチセンサー
51 上刃用タッチセンサー支持部
60 下刃用タッチセンサー
61 下刃用タッチセンサー支持部
70 リニヤースケール
71 リニヤースケール支持部
72 リニヤースケール駆動制御装置
80 上刃昇降用モータ駆動制御装置
81 上刃昇降距離演算装置
90 下刃昇降用モータ駆動制御装置
91 下刃昇降距離演算装置
311 リニヤーベアリング
321 上刃昇降スクリュウ
322 上刃昇降ギヤー
331 リニヤーベアリング
381 上刃昇降駆動ギヤー
382 上刃昇降中継ギヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸刃を使用するシヤーカット型スリッターのラップ量調整方法において、ナイフ交換時において交換するナイフの径を、刃先検出センサーを用いて自動的に計測し、前記計測したナイフ径と前記刃先検出センサーの刃先検出点とに基いて所望のラップ量を得るためのナイフ位置を演算で求めることを特徴とするラップ量調整方法。
【請求項2】
丸刃を使用するシヤーカット型スリッターにおいてナイフの径を自動的に計測する方法において、当該スリッターにおける切断すべきウエブ面から、当該スリッターで使用し得る最大径のナイフの刃先径に所定の余裕値を加えた値に等しい距離だけ離れた基準点に刃先検出センサーを配置し、ナイフ交換時にナイフ刃先が前記刃先検出センサーで検出されるまでナイフを移動させ、該ナイフの移動距離と前記基準点位置とに基いてナイフ径を演算で求めることを特徴とする方法。
【請求項3】
丸刃を使用するシヤーカット型スリッターにおいてナイフの径を自動的に計測する方法において、当該スリッターにおける切断すべきウエブ面から、当該スリッターで使用し得る最大径のナイフの刃先径に所定の余裕値を加えた値に等しい距離だけ離れた基準点に刃先検出センサーを配置し、ナイフ交換時にナイフ刃先が前記刃先検出センサーで検出されるまで該刃先検出センサーを移動させ、該刃先検出センサーの移動距離と前記基準点位置とに基いてナイフ径を演算で求めることを特徴とする方法。
【請求項4】
丸刃を使用するシヤーカット型スリッターのラップ量調整方法において、現状のナイフ径を一旦カウンターに記憶させておき、ナイフをラップさせる方向に移動させる距離の2倍の値を前記カウンターに記憶されたカウンター値と加減算し、その値が交換するナイフ径と等しくなるところまでナイフを移動させて、ナイフ交換前のラップ量を一定に保つことを特徴とするラップ量調整方法。
【請求項5】
丸刃を使用するシヤーカット型スリッターのラップ量調整装置において、上刃ホルダーおよび/または下刃ドライブユニットの所定の基準点位置に配置された刃先検出センサーと、交換ナイフの刃先を前記刃先検出センサーに対して移動させるためのナイフ移動手段と、該ナイフ移動手段の動作を制御するためのナイフ移動制御手段と、交換ナイフの径を演算によって求める交換ナイフ径演算手段とを備えており、前記ナイフ移動制御手段は、ナイフ交換時において前記ナイフ移動手段を制御してナイフ刃先が前記刃先検出センサーで検出されるまでナイフを移動させ、前記交換ナイフ径演算手段は、該ナイフの移動距離と前記基準点位置とに基いてナイフ径を演算で求め、前記ナイフ移動制御手段は、前記演算で求められたナイフ径に基いて前記ナイフ移動手段を制御して所望のラップ量が得られる位置へとナイフを移動させるようにすることを特徴とするラップ調整装置。
【請求項6】
前記刃先検出センサーは、常時閉形タッチセンサーであり、前記ナイフ移動手段は、サーボモーターを含む請求項5に記載のラップ調整装置。
【請求項7】
丸刃を使用するシヤーカット型スリッターのラップ量調整装置において、上刃ホルダーおよび/または下刃ドライブユニットの所定の基準点位置に配置された刃先検出センサーと、前記刃先検出センサーを交換ナイフの刃先に対して移動させるためのセンサー移動手段と、該センサー移動手段の動作を制御するためのセンサー移動制御手段と、交換ナイフの径を演算によって求める交換ナイフ径演算手段と、ナイフ移動手段とを備えており、前記センサー移動制御手段は、ナイフ交換時において前記センサー移動手段を制御してナイフ刃先が前記刃先検出センサーで検出されるまで前記刃先検出センサーを移動させ、前記交換ナイフ径演算手段は、該刃先検出センサーの移動距離と前記基準点位置とに基いてナイフ径を演算で求め、前記ナイフ移動手段は、前記演算で求められたナイフ径に基いて所望のラップ量が得られる位置へとナイフを移動させるようにすることを特徴とするラップ調整装置。
【請求項8】
前記刃先検出センサーは、常時閉形タッチセンサーであり、前記センサー移動手段は、前記刃先検出センサーを先端に取り付けたリニヤースケールを含む請求項7に記載のラップ調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−38331(P2007−38331A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223925(P2005−223925)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000244028)明産株式会社 (9)
【出願人】(591257007)
【Fターム(参考)】