説明

丸形バーグラフ表示器およびその描画方法

【課題】丸形バーグラフを表示する場合にグラフィックコントローラ等の処理の負担を増やすことなく、高精度で指示誤差の小さい計器を実現する。
【解決手段】表示するバーグラフの最大指示値に対応する最大表示領域の全体を予め定めた複数のN個の小領域に区分して、小領域のそれぞれに対応した二次元ビットマップのN個の表示パターンデータを予め用意し、前記N個の表示パターンデータの中から表示対象の指示値に対応して(Z≦N)であるZ個の表示パターンデータを選択し、選択された前記Z個の表示パターンデータを予め割り当てられた表示座標の領域に貼り付け(S12)、前記Z個の表示パターンデータの合成によって表示されるバーグラフの指示値と、表示対象指示値との指示誤差に相当する誤差領域を検出し、前記誤差領域に対して補正描画処理(S14〜S17)を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の計器等の表示に利用可能な丸形バーグラフ表示器およびその描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な計器において指示値を表示するためにバーグラフ表示器が用いられている。バーグラフの表示形態については、直線形状の表示パターンや、曲線状の表示パターンや、丸形すなわち円弧状の表示パターンが用いられる。つまり、指示すべき数値の大きさを表示状態のバーの長さによって表現する。また、指針を有する一般的なアナログ計器の指針が指し示す位置と同じ位置を、表示状態のバーの先端位置の変化により表現できるので、指針の代わりにバーグラフ表示を用いることができる。
【0003】
車両用のメータユニットにバーグラフ表示を採用した従来技術として、例えば特許文献1に開示された技術が知られている。特許文献1においては、直線形状の表示パターンのをバーグラフ表示を採用した燃料計や、円弧状の表示パターンのバーグラフ表示と指針の表示とを組み合わせたスピードメータなどが開示されている。
【0004】
また、特許文献2の車両用計器においては、エンジン回転計の計器内の指針の近傍に扇形状のレーダイメージをグラフィック表示するための技術を開示している。また、円弧状の目盛りの最小位置から最大位置までの指示範囲を一定の間隔(100回転/min)で81個の扇形状部S1〜S81に分割し、各々の扇形状部に独立したパレット番号を割り当てている。すなわち、それぞれのパレット番号にカラーデータを書き込むことにより、扇形状部毎に表示色を切り替えてその位置にレーダイメージをグラフィック表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−75025号公報
【特許文献2】特開2003−137007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では液晶表示器等の表示デバイスの技術の進歩によって画素数の多い表示器を比較的容易に利用できるようになっている。画素数の多い表示器を用いてグラフィック表示を行う場合には、高精細な画像パターンを描画できるので、例えば円弧状のバーグラフをグラフィック表示する場合であっても、表示すべき指示値と実際の表示位置との誤差が小さい計器を実現することが可能である。
【0007】
しかしながら、高解像度の画像パターンを表示するためには、膨大な数の画素のそれぞれに対する表示オンオフや表示色の切り替えを行う必要があるので、それを処理するグラフィックコントローラの負担が大きくなり、装置コストが上昇するのは避けられない。
【0008】
特に、円弧状のバーグラフをグラフィック表示する場合には、曲線的なパターンを扱うことになるので、非常に複雑な計算が必要になり、この処理を膨大な数の画素のそれぞれに適用することになるのでグラフィックコントローラの負担が非常に大きい。もしも、能力の小さいグラフィックコントローラを用いると、処理対象の全ての画素を描画するまでの所要時間が長くなるので、表示の更新周期が長くなるのは避けられない。その結果、車速やエンジン回転数などの測定値が急速に変化した場合に、表示される指示値の追従が測定値の変化に対して遅延することになる。
【0009】
従って、グラフィックコントローラの処理の負担を減らすために、例えば特許文献2に開示されている技術と同様に、円弧状のバーグラフの指示範囲を一定の間隔毎に区切り、区切られた多数の扇形状の領域毎にグラフィックパターンの描画処理を施すことが想定できる。しかし、その場合には表示デバイスの画素数が多い場合であっても、扇形状の領域の区切り単位でしか指示位置を切り替えできなくなる。
【0010】
例えば、車速を表示するスピードメータを円弧状のバーグラフで表示する場合に、5km/h毎に区切って多数の扇形状の領域を割り当て、扇形状の領域毎にグラフィックの描画処理を行うと、実際の車速の測定値が57km/hであっても、55km/h又は60km/hの位置しか指示できない。従って、測定値と指示値との間に大きな誤差が発生してしまう。
【0011】
また、円弧状のバーグラフで正しい位置を指示させるために、例えばグラフィックパターンの表示位置や表示角度を変更しようとすると、膨大な数の画素のそれぞれについて、複雑な計算を伴う座標変換処理を行わざるを得ず、グラフィックコントローラの処理の負担が大きくなる。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、丸形バーグラフを表示する場合に、グラフィックコントローラ等の処理の負担を増やすことなく、高精度で指示誤差の小さい計器を実現することが可能な丸形バーグラフ表示器およびその描画方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明に係る丸形バーグラフ表示器の描画方法は、下記(1)〜(4)を特徴としている。
(1) 表示画素の集合によりグラフィック表示が可能な丸形、または楕円形のグラフィック表示領域の少なくとも一部分を利用して、表示対象の指示値に対応したバーグラフを表示する丸形バーグラフ表示器の描画方法であって、
表示するバーグラフの最大指示値に対応する最大表示領域の全体を予め定めた複数のN個の小領域に区分して、前記N個の小領域のそれぞれに対応した二次元ビットマップのN個の表示パターンデータを予め用意し、
前記N個の表示パターンデータの中から表示対象の指示値に対応して(Z≦N)であるZ個の表示パターンデータを選択し、
選択された前記Z個の表示パターンデータを、それぞれに予め割り当てられた表示座標の領域に貼り付け、
前記Z個の表示パターンデータの合成によって表示されるバーグラフの指示値と、表示対象指示値との指示誤差に相当する誤差領域を検出し、前記誤差領域に対して補正描画処理を施す
こと。
(2) 前記(1)に記載の丸形バーグラフ表示器の描画方法であって、
前記補正描画処理においては、3つの頂点を有する三角形状パターンの二次元ビットマップデータを、前記誤差領域に対応する1つ又は2つの三角形状領域にそれぞれ書き込む
こと。
(3) 前記(1)に記載の丸形バーグラフ表示器の描画方法であって、
前記N個の表示パターンデータの全てについて、扇形状の表示パターンが内部に含まれる矩形パターンを用いる
こと。
(4) 前記(3)に記載の丸形バーグラフ表示器の描画方法であって、
前記扇形状の表示パターンは予め定めた表示色の属性データを有し、前記表示パターン以外の前記矩形パターンの領域は透明色の属性データを有する
こと。
【0014】
上記(1)の構成の丸形バーグラフ表示器の描画方法によれば、予め用意されたZ個の表示パターンデータを選択して予め割り当てられた表示座標の領域に貼り付けるだけなので、回転などの複雑な計算処理を行う必要がない。また、Z個の表示パターンデータの合成によって表示されるバーグラフの指示値と、表示対象指示値との指示誤差に相当する誤差領域の大きさはバーグラフ全体に比べて小さいので、前記補正描画処理の負担も比較的小さい。
上記(2)の構成の丸形バーグラフ表示器の描画方法によれば、前記誤差領域に対する描画処理についても、形状が単純な三角形状パターンの領域について処理を施すだけなので、複雑な計算が不要であり、処理能力の小さいグラフィックコントローラを用いる場合であっても短時間で処理できる。
上記(3)の構成の丸形バーグラフ表示器の描画方法によれば、最も形状が単純な矩形パターンを貼り付けるだけなので処理が極めて単純であり、扇形状パターンを構成する画素の数が非常に多い場合であっても短時間で描画処理できる。
上記(4)の構成の丸形バーグラフ表示器の描画方法によれば、複数の矩形パターンを一部分が重なり合うように貼り付ける場合であっても、透明色の属性データの領域が前記扇形状の表示パターンを上書きすることがない。従って、非常に単純な処理だけで丸形バーグラフを描画できる。
【0015】
前述した目的を達成するために、本発明に係る丸形バーグラフ表示器は、下記(5)を特徴としている。
(5) 表示画素の集合によりグラフィック表示が可能な丸形、または楕円形のグラフィック表示領域の少なくとも一部分を利用して、表示対象の指示値に対応したバーグラフを表示する丸形バーグラフ表示器であって、
表示するバーグラフの最大指示値に対応する最大表示領域の全体を予め定めた複数のN個の小領域に区分する場合の、前記N個の小領域のそれぞれに対応した二次元ビットマップのN個の表示パターンデータを予め保持する小領域パターンデータ保持部と、
前記N個の表示パターンデータの中から表示対象の指示値に対応して(Z≦N)であるZ個の表示パターンデータを選択し、選択された前記Z個の表示パターンデータを、それぞれに予め割り当てられた表示座標の領域に貼り付け、前記Z個の表示パターンデータの合成によって表示されるバーグラフの指示値と、表示対象指示値との指示誤差に相当する誤差領域を検出し、前記誤差領域に対して補正描画処理を施す描画処理部と
を備えること。
【0016】
上記(5)の構成の丸形バーグラフ表示器によれば、予め用意されたZ個の表示パターンデータを選択して予め割り当てられた表示座標の領域に貼り付けるだけなので、回転などの複雑な計算処理を行う必要がない。また、Z個の表示パターンデータの合成によって表示されるバーグラフの指示値と、表示対象指示値との指示誤差に相当する誤差領域の大きさはバーグラフ全体に比べて小さいので、前記補正描画処理の負担も比較的小さい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の丸形バーグラフ表示器およびその描画方法によれば、グラフィックコントローラ等の処理の負担を増やすことなく、高精度で指示誤差の小さい計器を実現することが可能である。
【0018】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態の丸形バーグラフを表示するための主要な処理に関する手順を表すフローチャートである。
【図2】本発明の実施形態の丸形バーグラフを表示するために用いる要素データのレイアウトおよび表示形態の具体例を示す模式図である。
【図3】車両用グラフィックメータのハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【図4】複数の要素データとこれらの組み合わせにより表示される丸形バーグラフの具体例を示す模式図である。
【図5】丸形バーグラフを表示するための制御で用いるテーブルの構成の具体例を示す模式図である。
【図6】複数の要素データの組み合わせで表示される丸形バーグラフの指示誤差を低減するための処理を表す模式図である。
【図7】表示される丸形バーグラフの指示誤差を低減するための処理の変形例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の丸形バーグラフ表示器およびその描画方法に関する具体的な実施の形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0021】
本実施形態で丸形バーグラフを表示するための主要な処理に関する処理手順が図1に示されている。図1に示した処理手順の描画方法は、例えば図3に示すような装置の表示制御に適用することができる。図3においては、車両の計器板に搭載されるグラフィックメータのハードウェアの構成例が示されている。
【0022】
図3に示すグラフィックメータは、グラフィックディスプレイ10、GDC(グラフィックディスプレイコントローラ)11、マイクロコンピュータ(CPU)12、メモリ(RAM)13、メモリ(ROM)14、外部信号入出力回路15、アナログ表示部21、22、モータドライバ23、24、及びインジケータランプ25、26を備えている。なお、GDC11、マイクロコンピュータ12、メモリ(RAM)13、メモリ(ROM)14等は一体として構成することも可能である。
【0023】
グラフィックディスプレイ10は、例えば液晶表示デバイス等で構成され、横方向及び縦方向に一定のピッチで並べて配置された多数の表示素子を有している。各々の表示素子は個別に表示色や濃淡を制御することができ、1つの表示素子を用いて1つの画素を表示できる。多数の画素の集合について表示を制御することで、所望の形状の2次元パターンを表示することができる。
【0024】
GDC11は、メモリ13上に事前に用意した表示用データに基づいて表示画像のビットマップデータを作成する機能や、表示画像のビットマップデータからグラフィックディスプレイ10の表示に必要な画像信号や同期信号を生成する機能を有している。
【0025】
マイクロコンピュータ12は、メモリ(ROM)14上に予め用意したプログラムを実行することにより、このグラフィックメータの表示制御に必要な機能を実現する。このプログラムには、丸形バーグラフの表示制御に必要な図1に示した処理の内容も含まれている。
【0026】
メモリ(RAM)13は、データの読み出し及び書き込みが自在な半導体記憶装置である。メモリ13上には、グラフィックディスプレイ10の画面上に表示される画像のビットマップデータを保持するためのビデオRAMの記憶領域や、GDC11及びマイクロコンピュータ12が使用する一時的なデータを保持するための記憶領域が備わっている。
【0027】
メモリ(ROM)14は、マイクロコンピュータ12が実行すべきプログラムのデータや、様々な制御においてマイクロコンピュータ12やGDC11が使用する様々な定数データを予め保持している。メモリ14が保持する定数データの中には、表示される丸形バーグラフパターンの元になる複数の要素データも含まれている。
【0028】
外部信号入出力回路15は、例えば車速の信号、エンジン回転数の信号、燃料残量の信号、冷却水温度の信号のように車両側から入力される様々な信号を処理してマイクロコンピュータ12に与えたり、マイクロコンピュータ12が出力する各種信号を車両側に出力するための信号処理を行う。
【0029】
アナログ表示部21、22は、それぞれ物理的に移動可能な指針および目盛りを有するアナログ計器として利用される表示部であり、指針を駆動するために電気モータを内蔵している。なお、グラフィックディスプレイ10上で全ての計器を表示できるような場合には、アナログ表示部21、22の搭載は省略することもできる。
【0030】
モータドライバ23、24は、マイクロコンピュータ12の制御に従ってそれぞれアナログ表示部21、22の電気モータを駆動して指針の指示する位置を調整する。
【0031】
インジケータランプ25、26は、所定のドライバを介してマイクロコンピュータ12と接続されており、マイクロコンピュータ12の制御により点灯/消灯の状態が切り替わる。インジケータランプ25、26を個別に点灯することで、様々な警告表示を行うことができる。
【0032】
本実施形態で丸形バーグラフを表示するために用いる要素データのレイアウトおよび表示形態の具体例が図2に示されている。この例では、丸形の計器をバーグラフで表示するために、図2に示すようなN個の要素データE1、E2、E3、・・・、ENを2次元固定パターンのビットマップデータとしてメモリ(ROM)14上に予め用意してある。
【0033】
すなわち、丸形の表示範囲の最小値位置から最大値位置までを一定の間隔、例えば指示方向の角度の10度毎に分割してN個の小領域を形成してあり、N個の小領域のそれぞれの形状(扇形に近い形状)に対応するN個の要素データE1〜ENが用意してある。
【0034】
これらの要素データのそれぞれは、例えば図4に示す要素データE2のように、4つの頂点(P21〜P24)を有する矩形パターンの形状をなし、横方向及び縦方向に並んだ多数の表示画素に相当するビットマップデータで構成されている。また、この矩形パターンの輪郭の辺の内側に接するように、扇形状の表示パターン51が形成してある。扇形状の表示パターン51は、バーグラフの表示に用いる所定の表示色の属性データを有している。また、扇形状の表示パターン51以外の背景領域52は、表示に影響を及ぼさない透明色の属性データを有している。
【0035】
図2に示すように、例えば、N個の要素データE1〜ENの1番目から4番目までの4個の要素データE1〜E4を取り出してこれらを所定の位置に並べると、上段側に示された丸形のバーグラフB1を表示することができる。同様に、1番目から13番目までの13個の要素データE1〜E13を取り出してこれらを所定の位置に並べると、上段側に示された丸形のバーグラフB2を表示することができ、1番目からN番目までのN個全ての要素データE1〜ENを取り出してこれらを所定の位置に並べると、上段側に示された丸形のバーグラフB3を表示することができる。
【0036】
但し、図2に示すように要素データE1〜ENの一部分又は全部を単純に並べることにより表示されるバーグラフ(B1〜B3)だけでは正確な指示値を表示することができない。例えば、N個の要素データE1〜ENに対応する小領域の分割間隔が10度毎である場合には、最小値位置から40度や50度の方向であれば正しい指示値をバーグラフ先端位置で指示できるが、最小値位置から41度〜49度の方向のような中間位置を正しく指示することはできない。例えば分割間隔を1度毎のように小さくすれば指示位置の誤差は小さくなるが、用意すべき要素データの数が増えるし、描画処理の負担も増える。従って、図1に示す処理手順には、バーグラフの指示位置の誤差を減らすための処理も含まれている。
【0037】
本実施形態では、丸形バーグラフを表示する制御のために、例えば図5に示すようなテーブルを利用する。このテーブルの内容は、定数データとしてメモリ(ROM)14上に予め用意してある。
【0038】
図5に示す例では、前述の要素データE1〜ENに対応するバー要素の番号(1〜N)と、バー要素の画像(ビットマップデータ)の所在を表す情報(AP1〜APN)と、バー要素の矩形パターンの各頂点を特定可能な情報(DP1〜DPN)と、貼り付け位置の座標((x1,y1)〜(xN,yN))とがテーブルの内容に含まれている。
【0039】
図5に示す情報AP1、AP2、AP3、・・・のそれぞれは、該当する要素データ(E1〜ENのいずれか)が存在するアドレスや、それを表すファイル名などに相当する。また、情報DP1、DP2、DP3、・・・のそれぞれは、該当する矩形パターンの大きさなどを表す情報である。貼り付け位置の座標(x1,y1)は、矩形パターンの基準点に対応する貼り付け先の座標を表す。
【0040】
例えば、図4に示す要素データE1の表示内容は、4つの頂点P11、P12、P13、P14を有する矩形パターンの輪郭に内接する扇形状のパターンなので、4つの頂点P11、P12、P13、P14を特定できればその中の扇形状のパターンも特定できる。従って、具体例としては、矩形パターンの基準点が特定の頂点P11であることを表す情報や、頂点P11−P14間の距離を表す情報や、頂点P11−P12間の距離を表す情報を情報DP1に含めることが想定される。
【0041】
次に、図1に示す処理手順について説明する。
ステップS11では、マイクロコンピュータ12が表示対象の最新の指示値を入力し、この指示値をバーグラフで指示するために必要な画像(要素データE1〜EN)の枚数Zを算出する。
【0042】
例えば、要素データE1〜ENが10度毎に分割されたN個の小領域に対応する場合に、表示最小値に対する指示値の方向の角度θ1が35度の場合であれば、35度方向又はそれを超える方向を指示するために、枚数Zを4に決定する。つまり(10×Z≧ θ1)の関係を満たすようにZを決定する。
【0043】
ステップS12、13では、マイクロコンピュータ12がステップS11で決定した枚数Zに対応する全ての画像を、グラフィックディスプレイ10の表示画面に対応する2次元表示座標が割り当てられたRAM(13)上の領域に書き込み、基本的な丸形バーグラフを描画する。
【0044】
例えば、枚数Zが4の場合には、図2に示すように4枚分の要素データE1、E2、E3、E4の内容を順番にコピー元のメモリ(ROM)14から取り出して、貼り付け先であるビデオRAM上の指定された位置にそれぞれ貼り付ける。これにより、図2に示す丸形のバーグラフB1が表示される。
【0045】
図4に示す具体例について、図5に示したテーブルの内容を使用する場合を想定して説明する。図4の例では、各要素データE1、E2、E3の矩形パターンの基準点がそれぞれ頂点P12、P22、P32になっている。
【0046】
最初の要素データE1を貼り付ける時には、1番目のバー要素の貼り付け先の位置として座標(x1,y1)がテーブルで指定されているので、この要素データE1の矩形パターンの基準点(P12)が貼り付け先の座標(x1,y1)と一致するように、P11、P12、P13、P14の4頂点で表される矩形パターン全体のビットマップデータを貼り付ける。
【0047】
同様に、2番目の要素データE2を貼り付ける時には、このバー要素の貼り付け先の位置として座標(x2,y2)が指定されているので、この要素データE2の矩形パターンの基準点(P22)が貼り付け先の座標(x2,y2)と一致するように、P21、P22、P23、P24の4頂点で表される矩形パターン全体のビットマップデータを貼り付ける。
【0048】
同様に、3番目の要素データE3を貼り付ける時には、このバー要素の貼り付け先の位置として座標(x3,y3)が指定されているので、この要素データE3の矩形パターンの基準点(P32)が貼り付け先の座標(x3,y3)と一致するように、P31、P32、P33、P34の4頂点で表される矩形パターン全体のビットマップデータを貼り付ける。
【0049】
なお、連続的な形状のバーグラフを表示するためには、図4に示す例のように互いに隣接する矩形形状の要素データE1と要素データE2とを一部分が重なり合うように配置する必要がある。この場合、要素データE1の画像を書き込んだ後で、次の要素データE2の画像を書き込むことになるので、重なり合う領域については要素データE1の画像を要素データE2の画像によって上書きすることになる。
【0050】
しかし、各要素データの背景領域52は、表示に影響を及ぼさない透明色の属性データを有しているので、データを上書きすることはない。つまり、1番目の要素データE1の表示パターン51の画像の上に2番目の要素データE2の背景領域52を書き込んでも、要素データE1の表示パターン51が上書きされて消えることはない。
【0051】
従って、図4に示す例では、要素データE1の扇形状の表示パターン51と、要素データE2の扇形状の表示パターン51と、要素データE3の扇形状の表示パターン51とが組み合わされた結果として、所定の表示属性の色で描画された丸形バーグラフB10が現れている。
【0052】
一方、図1のステップS14以降では、表示されるバーグラフの指示値と、表示対象指示値との指示誤差を減らすための補正描画処理をマイクロコンピュータ12が行う。すなわち、ステップS13までの処理によって表示される図4の丸形バーグラフB10のような表示によって正しく指示可能な指示値の方向は、予め定めた分割単位(例えば10度)毎に限定され、指示誤差が発生することになる。
【0053】
ステップS14では、補正描画処理を行う必要があるか否かをマイクロコンピュータ12が識別する。例えば、バーグラフの領域分割単位の角度がθo(例えば10度)である場合に、表示最小値に対するバーグラフB10先端方向の角度(θo×Z)と、本来の指示値の方向の角度θ1とを比較する。そして、これらが一致する場合は補正描画処理を行う必要はないので処理を終了し、一致しない場合は補正描画処理を行う必要があるとみなしてステップS15に進む。
【0054】
図4に示したバーグラフB10の一部分の詳細が図6に示されている。図6においては、表示最小値(一般的には0)の方向をA1で表し、バーグラフB10の先端である要素データE3の表示パターン51の辺51aの方向をA3で表し、本来の指示値の方向をA2で表してある。また、表示の中心座標をOで表してある。つまり、表示最小値の方向A1と指示値の方向A2との角度θ1は、(θo×Z)よりも小さいので、バーグラフB10の先端の領域が指示値の方向A2よりも上側にはみ出して描画されている。従って、正しい指示値の方向A2と一致する線分51bの位置からはみ出している表示パターン51の領域を消去すれば、先端(51aに相当)が正しい指示値を指示するバーグラフを表示できる。
【0055】
図1のステップS15では、表示対象の指示値と予め割り当てられた目盛り上の各数値の位置関係とに基づき、この指示値の方向A2を表す回転角度θ1をマイクロコンピュータ12が算出する。更に、図6に示す2つの点P7、P8の座標を算出する。
【0056】
点P7は、例えば要素データE3の表示パターン51の頂点P35におけるバーグラフ外周の円弧との接線と指示値の方向A2との交点の座標として決定される。なお、頂点P35の座標は頂点P31−P34を結ぶ辺と辺51aとの交点として求めることができる。点P8は、例えば要素データE3の頂点P33−P34を結ぶ辺と、指示値の方向A2との交点の座標として決定される。
【0057】
図1のステップS16では、3つの頂点P7、P8、Pn6(n=Z)で表される三角形パターンの領域の内側の表示を消去する。なお、頂点Pn6は、図6における頂点P36に相当する。この頂点P36の座標は、頂点P33−P34を結ぶ辺と辺51aとの交点として求めることができる。実際には、表示が消去された状態の背景色と同じ色のデータでP7、P8、Pn6の三角形パターンの領域全体を上書きすることで、この領域の表示パターン51の表示を部分的に消去することができる。
【0058】
図1のステップS17では、3つの頂点P7、Pn5、Pn6(n=Z)で表される三角形パターンの領域の内側の表示を消去する。なお、頂点Pn5及びPn6は、それぞれ図6における頂点P35及びP36に相当する。この頂点P35の座標は、頂点P31−P34を結ぶ辺と辺51aとの交点として求めることができる。実際には、表示が消去された状態の背景色と同じ色のデータでP7、Pn5、Pn6の三角形パターンの領域全体を上書きすることで、この領域の表示パターン51の表示を部分的に消去することができる。
【0059】
つまり、図1に示す処理を実行することにより、予め用意された要素データE1〜ENの中からZ枚の画像を選択し、これらをビデオRAM上の指定された位置にそれぞれ貼り付けて図4に示すような丸形バーグラフB10を表示した後、正しい指示値の位置(51b)から余分にはみ出している領域を、2つの三角形パターンの描画により消去することができる。
【0060】
従って、パターンを回転させるような高度な処理を行う必要はなく、膨大な数の画素を組み合わせて高品質なバーグラフを表示する場合であっても、単純なビットマップデータの貼り付けだけで正確な指示値を指示する丸形バーグラフを描画できる。また、バーグラフのはみ出した領域を消去する処理についても、最も単純な形状である三角形パターンの描画なので、この処理にかかる負担は極めて小さい。
【0061】
表示される丸形バーグラフの指示誤差を低減するための処理の変形例が図7に示されている。前述の処理においては、正しい指示値の位置(51b)から余分にはみ出しているバーグラフの領域を2つの三角形パターンの描画により消去しているが、図7に示す処理においては単一の三角形パターンTR1だけで消去するように変更してある。
【0062】
すなわち、正しい指示値の方向A2やその角度θ1、バーグラフの中心座標O、はみ出している領域の先端の方向A3やその角度(θo×Z)、丸形バーグラフの外周の半径(r)等が既知であるので、これらに基づいて消去に必要な三角形パターンTR1の3つの頂点を特定できる。例えば、1番目の頂点をバーグラフの中心座標Oに定め、1番目の頂点から2番目の頂点までの距離および1番目の頂点から3番目の頂点までの距離を(Rp>r)の条件を満たす定数Rpで定めれば、指示値の方向A2と一致する2番目の頂点の座標およびはみ出している領域の先端の方向A3と一致する3番目の頂点の座標も特定できる。
【0063】
なお、図7に示した三角形パターンTR1の各頂点の座標や、図6に示した2つの三角形パターンの各頂点の座標を得るための処理については、予め定めた定数を用いることにより計算を省略することもできる。その場合は、様々な指示値のそれぞれについて、消去すべき三角形パターンの各頂点の座標を表す定数を保持するテーブルを予め用意しておけばよい。
【0064】
なお、丸形バーグラフを描画するための図1に示した処理については、基本的にはマイクロコンピュータ12が実行するプログラムによって実現することが想定されるが、一部分の処理についてはGDC11側で処理することも考えられる。例えば、はみ出している領域を消去するための三角形パターンを描画する際には、三角形パターンの各頂点の座標と描画色を表す命令コードをマイクロコンピュータ12側で生成し、この命令コードをGDC11側が読み取り、その結果に基づいてGDC11側で描画処理を実行することが想定される。
【0065】
いずれにしても、本発明においては矩形や三角形のように非常に単純な形状パターンのビットマップデータを貼り付けるだけで丸形バーグラフを描画することができる。しかも、指示値の最小値から最大値までの表示範囲の分割数(N)が少ない場合であっても、正しい指示値の位置を指示する丸形バーグラフを描画できる。従って、膨大な数の画素を制御して高品質の丸形バーグラフを表示する場合であっても、高性能のグラフィックコントローラ等を用いることなしに短時間で描画処理を実行でき、表示の更新周期を短くすることができる。
【0066】
なお、図1に示した処理においては、Z枚の画像の合成によって、指示値と同じかそれを超える範囲を指示するバーグラフを表示するように、ステップS11で(θo×Z≧ θ1)の関係を満たすようにZを決定し、はみ出したバーグラフの領域を消去するように処理している。一方、例えば(θo×Z≦ θ1)の関係を満たすようにZを決定し、本来の指示値に対して不足するバーグラフの領域を追加的に描画するように処理することも考えられる。しかし、その場合には綺麗な曲線状のパターンを描画するために複雑な計算等の処理が必要になるので、前述の処理の方が優れている。
【0067】
以上のように、本発明の丸形バーグラフ表示器およびその描画方法は、例えば車両の計器板等に搭載されるスピードメータ、タコメータなどの各種計器を丸形バーグラフで表示する場合に適用することが想定できる。表示するバーグラフの形状については、円弧状等の丸形に限らず、楕円形やこれに類似した形状にすることも可能である。
【符号の説明】
【0068】
10 グラフィックディスプレイ
11 GDC
12 マイクロコンピュータ
13 メモリ(RAM)
14 メモリ(ROM)
15 外部信号入出力回路
21,22 アナログ表示部
23,24 モータドライバ
25,26 インジケータランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画素の集合によりグラフィック表示が可能な丸形、または楕円形のグラフィック表示領域の少なくとも一部分を利用して、表示対象の指示値に対応したバーグラフを表示する丸形バーグラフ表示器の描画方法であって、
表示するバーグラフの最大指示値に対応する最大表示領域の全体を予め定めた複数のN個の小領域に区分して、前記N個の小領域のそれぞれに対応した二次元ビットマップのN個の表示パターンデータを予め用意し、
前記N個の表示パターンデータの中から表示対象の指示値に対応して(Z≦N)であるZ個の表示パターンデータを選択し、
選択された前記Z個の表示パターンデータを、それぞれに予め割り当てられた表示座標の領域に貼り付け、
前記Z個の表示パターンデータの合成によって表示されるバーグラフの指示値と、表示対象指示値との指示誤差に相当する誤差領域を検出し、前記誤差領域に対して補正描画処理を施す
ことを特徴とする丸形バーグラフ表示器の描画方法。
【請求項2】
前記補正描画処理においては、3つの頂点を有する三角形状パターンの二次元ビットマップデータを、前記誤差領域に対応する1つ又は2つの三角形状領域にそれぞれ書き込む
ことを特徴とする請求項1に記載の丸形バーグラフ表示器の描画方法。
【請求項3】
前記N個の表示パターンデータの全てについて、扇形状の表示パターンが内部に含まれる矩形パターンを用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の丸形バーグラフ表示器の描画方法。
【請求項4】
前記扇形状の表示パターンは予め定めた表示色の属性データを有し、前記表示パターン以外の前記矩形パターンの領域は透明色の属性データを有する
ことを特徴とする請求項3に記載の丸形バーグラフ表示器の描画方法。
【請求項5】
表示画素の集合によりグラフィック表示が可能な丸形、または楕円形のグラフィック表示領域の少なくとも一部分を利用して、表示対象の指示値に対応したバーグラフを表示する丸形バーグラフ表示器であって、
表示するバーグラフの最大指示値に対応する最大表示領域の全体を予め定めた複数のN個の小領域に区分する場合の、前記N個の小領域のそれぞれに対応した二次元ビットマップのN個の表示パターンデータを予め保持する小領域パターンデータ保持部と、
前記N個の表示パターンデータの中から表示対象の指示値に対応して(Z≦N)であるZ個の表示パターンデータを選択し、選択された前記Z個の表示パターンデータを、それぞれに予め割り当てられた表示座標の領域に貼り付け、前記Z個の表示パターンデータの合成によって表示されるバーグラフの指示値と、表示対象指示値との指示誤差に相当する誤差領域を検出し、前記誤差領域に対して補正描画処理を施す描画処理部と
を備えることを特徴とする丸形バーグラフ表示器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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