説明

乗り物用ヒータマット

【課題】容易に着脱ができ、また取り付け時において非接触給電部の位置決めが容易に行なえる車載用ヒータマットを提供すること。
【解決手段】自動車に供えられた非接触給電コイル21から電力を受電する非接触受電コイル12と、非接触受電コイル12で受電した電力を熱に変換しマットを加温する電熱線13と、を備えた車載用の車載用ヒータマット10において、車載用ヒータマット2の形状を自動車の床面隆起部の形状に対応づけたことにより、マット装着時の位置決めが容易に行なうことができる。また、位置ずれを防止することにより非接触給電時の給電効率の低下を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物用ヒータマットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗り物用の暖房器具として、特許文献1に記載されたカーシートヒータがある。
【0003】
図8は、このカーシートヒータの構成図である。図8に示すように、この発明のカーシートヒータは自動車の座席シートに取り付けられ、シガレットライター用コンセントから電源を受けケーシングを加温する。これにより、コンパクトに、安価に製作でき、使用感良好で、持ち運びが容易で簡易に使用でき、ランニングコストが安価に済む簡易可搬型暖シートを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−128025号公報
【特許文献2】特開平9−229379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乗り物用マットは、通常利用者が靴をはいたまま利用するため屋外の土埃や泥により頻繁に汚される。その都度、利用者が掃除をする必要があるので、取り外しと取り付けが容易であることが望ましい。
【0006】
しかし、特許文献1の暖房発明を乗り物用ヒータマットに転用しても、電源部がシガレットライター用コンセントに接続されるため、乗り物用ヒータマットの配線取り外しに手間がかかるという課題が残る。
【0007】
電源接続部の配線をなくす手段としては、特許文献2に非接触給電方式を用いた方法が一般的に知られているが、乗り物用マットは設置される乗り物床面が凹凸形状であることが多く、引用文献2の形態を転用することが難しい。また、非接触給電方式では給電部と受電部との位置決めが給電効率に大きく影響するため、精度の良い位置決め形態が求められる。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、非接触給電方式で電力を受電することができる乗り物用ヒータマットを提供する。また、容易に着脱が可能で、取り付け時において非接触受電部の位置決めおよび保持が容易に行なえる乗り物用ヒータマットを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の乗り物用ヒータマットは、マット形状を乗り物の床面隆起部の凹凸形状に対応づけたことを特徴としたものである。
【0010】
これによって、利用者がマットを設置する際に位置決めを行わなくとも所定の位置に設置することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の乗り物用ヒータマットは、マットの位置決めを容易に行なうことができ、非接
触給電部の電力転送を効率よく行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における車載用ヒータマットの概略図
【図2】本発明の実施の形態1における車載用ヒータマット形状の概略図
【図3】本発明の実施の形態1におけるいす移動用レールに対応付けた車載用ヒータマット形状の概略図
【図4】本発明の実施の形態2における非接触受電コイル共有方法の概略図
【図5】本発明の実施の形態2における車載用ヒータマットの断面図
【図6】本発明の実施の形態2におけるずれ防止用磁石の配置図
【図7】本発明の実施の形態3における電源制御システムの概略図
【図8】従来のカーシートヒータの概略図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、自動車に供えられた非接触給電部から電力を受電する非接触受電部と、非接触受電部で受電した電力を熱に変換しマットを加温する加温部と、を備えた車載用の車載用ヒータマットにおいて、車載用ヒータマットの形状を自動車の床面隆起部の形状に対応づけたことで、マット装着時の位置決めが容易になり、着脱が容易な車載用ヒータマットが実現できる。また、マットのずれによる非接触給電の給電効率の低下を防止し、効率的な非接触給電を実現できる。
【0014】
第2の発明は、車載用ヒータマットの形状の一部を、自動車の座席位置調節用レール間の距離に対応づけたことで、マットの位置決め精度を向上させることができる。
【0015】
第3の発明は、非接触受電部をマットの外周の一部に配置させたことで、マット中への電熱線の配線引き回しを容易に行なうことができる。
【0016】
第4の発明は、マット裏面の摩擦係数が0.8以上とすることで、使用中のマットのずれをいっそう抑制することができる。
【0017】
第5の発明は、マット裏面に磁石を配置させたことで、ある一定範囲に置かれたマットを磁力によって所定の位置まで移動させ保持することができる。
【0018】
第6の発明は、非接触給電部と非接触受電部とのずれ量を検出するずれ検出部と、電源を制御する電源制御部と、を備え、ずれ量が所定値を超えたとき、電源制御部が自動車からの給電を止めることで、自動車の無駄な電力消費を防ぐことができる。
【0019】
第7の発明は、乗り物に備えられた非接触給電部から電力を受電する非接触受電部と、非接触受電部で受電した電力を熱に変換しマットを加温する加温部と、を備えた乗り物用ヒータマットにおいて、ヒータマットの形状を乗り物の床面隆起部の形状に対応付けたことで、マット装着時の位置決めが容易になり、着脱が容易な乗り物用ヒータマットが実現できる。また、マットのずれによる非接触給電部の給電効率の低下を防止し、効率的な非接触給電を実現できる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、車載用ヒータマットを例として、図面を参照しながら説明する。なお本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
本発明の車載用ヒータマット10の構成を、図1を用いて説明する。
【0022】
図1において、車載用ヒータマット10は、不織布シート11と、不織布シート11上に配置された渦巻状の非接触受電コイル12と、シート内部に配線された電熱線13と、を備えている。一方、自動車は、非接触給電コイル21と、自動車の駆動用バッテリー22と、駆動用バッテリー22からの電力を変換するインバータ23と、を備えている。
【0023】
以下に、車載用ヒータマットと自動車とのそれぞれにおける実施の形態について説明する。
【0024】
自動車の駆動用バッテリー22の電力を変換するインバータ23は、非接触給電コイル21に電流を流すことで、非接触給電コイル21はそのコイルの周囲に磁束を発生する。この磁束変化により電磁誘導が起き、非接触受電コイル12で起電力が発生する。なお、渦巻状の非接触給電コイル21の裏側にシート状のフェライト24を一体に接着することで磁束は透磁率の高いフェライト内部に集中し、その下の自動車床面20には到達しない。自動車床面20を含む外装は通常鉄で作られており磁場にさらされると渦電流が発生し誘導過熱されてしまうがフェライト24を設置することでそれを抑制することができる。つまり、電力の無駄がない車載用ヒータマット10を提供することができる。この非接触方式の給電により利用者はコネクタの配線といった煩雑な作業をする必要がなく、極めて容易に車載用ヒータマット10を設置することができる。
【0025】
非接触受電コイル12から受電した電力は、電熱線13で熱に変換され車載用ヒータマット10の表面が加温される。なお、本実施の形態では電熱線13で加温を行う形態をとっているが、電熱線13の代わりに面状PTCヒータで加温を行う形態としても良い。また、放熱された熱が効率的に利用者の足に伝わるよう、車載用ヒータマット10の裏面側には断熱材14を配することが望ましい。
【0026】
また、車載用ヒータマット10は、丸洗いができるように防水性のある部材で構成されても良いし、外部と接続された電線を有しないため樹脂等のように防水性のある部材でマットの周囲を包む形態をとっても良い。これにより、靴に付着した土、砂、埃などを容易に洗い流すことができるため、掃除・メンテナンスをする際の利便性が増す。
【0027】
次に、上記の車載用ヒータマット10の設置方法について図2を用いて説明する。
【0028】
車載用ヒータマット10は、図2に示されるように自動車の床面隆起部20aの形状に対応する形状を備えている。これにより、利用者は床面隆起部20aに対応させて車載用ヒータマット10を置くだけで非接触給電コイル21と非接触受電コイル12を重ね合わせることができるので、容易に車載用ヒータマット10の取り付けができる。また、図2のように車載用ヒータマット10の上下左右端部において、床面隆起部20aと車載用ヒータマットの端部が接触するように車載用ヒータマット10の寸法を合わせておけば、マットが水平方向に移動することを抑制する役割を床面隆起部20aが果たす。これにより、マットのずれを防止することができるため、非接触給電効率の低下を抑制し、効率的な給電効率を実現できる。
【0029】
また、固定具を用いなくともマットのずれを抑制することが可能なため、取り付け及び取り外しが容易な車載用ヒータマット10を実現することができる。さらに、表面に突起形状等のない車載用ヒータマット10を実現できるため、利用者が裸足で車載用ヒータマット10を利用しても安全に利用することができる。なお、図2では非接触受電コイル12を車載用ヒータマット10の外周の一部に配置した。これにより、電熱線の配線引き回しが容易になる。さらに、足で踏まれる等の外力により非接触受電コイル12が変形し、電力転送効率が低下することを防ぐことができる。
【0030】
また、図3に自動車の座席下のいす移動用レール25に対応した形状を備えた車載用ヒータマット10を示す。
【0031】
通常マットを設置する自動車の床面はフロアカーペットで覆われており、その上に車載用ヒータマットを設置すると、フロアカーペットのたるみ等の変形によりマットが所定位置よりずれたりフロアカーペットとの間に空間が生じたりして、正常な位置決めが行われない恐れがある。しかし、本実施例のようにレール間に車載用ヒータマットを挿入する形態では、レールは自動車の車体に対して固定されているため、精度の良い位置決めを行うことができる。なお、車載用ヒータマットとレールとの形状の対応付けは上記の形態のみに限らず、レールの外側にマットを配置しても良いし、レールの周囲をマットで取り囲む形態をとっても良い。
【0032】
(実施の形態2)
図4を用いて、車載用ヒータマット10の裏面に突起形状10aを設けた構成について説明する。この構成により自動車との床面との間で滑りが起きにくくなり、利用者が足を置いた際にも位置づれがおきるのを抑制することができる。なお、突起形状10aに限らず、ゴムのような摩擦係数が高い部材を用いても同様の効果を奏することができる。一般に自動車床面20に対してマット裏面の摩擦係数が0.8以上となるような部材を選択すると外力に対してのずれをいっそう抑制することができる。
【0033】
図5にマットの裏面にマット静止用磁石15を配置した形態を示す。これと同等の形状の車載磁石26を自動車床面2にも配置しておくと、車載用ヒータマット10が少しずれても磁石同士の磁力により車載用ヒータマット10が移動され、所定位置で車載用ヒータマット10を保持・静止させることができる。このとき、非接触給電コイル21及び非接触受電コイル12の近傍に配置すると両者のずれ量を最小に抑えることができるため、効率の良い電力転送を実現できる。また、磁石の配置方法は、本実施の形態に限るものではなく、複数点の箇所で接続しても良い。なお、磁石の斥力を利用してマットのずれを抑制する形態をとっても良い。
【0034】
また、一定値以上の磁力が働いていると緑色を示し、一定値以下の磁力になると赤色を示す機構を車載用ヒータマット10に備えておけばマットの位置ずれが発生した際にその状態を利用者に容易に示すことができるので車載用ヒータマット10の利便性が増す。
【0035】
(実施の形態3)
図6に、ずれ検出部31を備えた車載用ヒータマット10を示す。実施の形態1と形態が同じ部品の符号は実施の形態1と同じ符号を使用する。
【0036】
ずれ検出部31は、図7に示すようにマット磁石32とタイマー33とタイマー初期化装置34と電源制御部35と無線送信部36を備えている。ずれ検出部31のマット磁石32は図7のように、自動車に備えられた車載磁石26と引き合うことで通電状態を維持する機構を備えている。そして、車載用ヒートマット10がずれることにより磁力が働かなくなると、電源制御部35はタイマー初期化装置34にタイマーの値を初期化させた後、タイマー33を作動させる。そして、電源制御部35は作動したタイマー33の設定値が所定値以上となると無線送信部36を用いて自動車の無線受信部へ信号を送信させ、非接触給電コイル21の電源を切るよう制御させる。これにより、マットの設置が正常に行われていない際に自動車の無駄な電力消費を防ぐことができる。
【0037】
本実施の形態では、タイマー33、タイマー初期化装置34、電源制御部35はずれ検出部31に含まれている形態をとっているが、ずれ検出部31の外側に配置しても良いし、自動車に搭載する形態をとっても良い。また、自動車に搭載する形態をとれば、無線送
信部36を構成せずに有線で非接触給電コイルの21の電源を切ることも可能となる。
【0038】
なお、ずれ検出部31は実施の形態1に記載の車載用ヒータマット10と同様に防水性のある部材で構成されても良いし、防水性のある部材でマットの周囲を包む形態をとっても良い。これにより、マットの水洗いが可能であるという効果が失われることはない。
【0039】
またなお、ずれ検出部31としては本実施の形態に限られることは無く、インバータ23に内蔵された電流検出器により、非接触給電コイル21に流れる電流をインバータ23自身がモニタしてもよい。そのとき、非接触受電コイル12がずれたり外れたりした場合、電力が伝えられなくなり、その結果非接触給電コイル21に流れる電流が小さくなることを検出して、非接触給電コイル21の電源を切るよう制御させ、同様の効果を得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明は、マット装着時の位置決めが容易になり、着脱が容易な車載用ヒータマットを実現できる。また自動車に限らず、船舶や航空機等の他の乗り物における床面ヒータマットにも利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 車載用ヒータマット
10a 突起形状
11 不織布シート
12 非接触受電コイル
13 電熱線
14 断熱材
15 マット静止用磁石
20 自動車床面
20a 床面隆起部
21 非接触給電コイル
22 駆動用バッテリー
23 インバータ
24 フェライト
25 いす移動用レール
26 車載磁石
31 ずれ検出部
32 マット磁石
33 タイマー
34 タイマー初期化装置
35 電源制御部
36 無線送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に備えられた非接触給電部から電力を受電する非接触受電部と、
前記非接触受電部で受電した電力を熱に変換しマットを加温する加温部と、を備え、
前記自動車の床面隆起部の形状に対応づけた形状を有する車載用ヒータマット。
【請求項2】
前記車載用ヒータマットの形状の一部を、前記自動車の座席位置調節用レール間の距離に対応づけたことを特徴とする請求項1に記載の車載用ヒータマット。
【請求項3】
前記非接触受電部をマットの外周の一部に配置させたことを特徴とする請求項1または2に記載の車載用ヒータマット。
【請求項4】
マット裏面の摩擦係数が0.8以上であることを特徴とした請求項1または2に記載の車載用ヒータマット。
【請求項5】
マット裏面に磁石を配置させたことを特徴とした請求項1または2記載の車載用ヒータマット。
【請求項6】
前記非接触給電部と前記非接触受電部とのずれ量を検出するずれ検出部と、電源を制御する電源制御部と、を備え、
前記ずれ量が所定値を超えたとき、前記電源制御部は自動車からの給電を止めるよう制御を行う請求項1または2記載の車載用ヒータマット。
【請求項7】
乗り物に備えられた非接触給電部から電力を受電する非接触受電部と、
前記非接触受電部で受電した電力を熱に変換しマットを加温する加温部と、を備え、
前記乗り物の床面隆起部の形状に対応付けた形状を有する乗り物用ヒータマット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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