説明

乗り物用物入れ装置

【課題】インナーリッドと、アウターリッドとの何れか一方から他方に向けて突設したリブの確実な溶着を可能とした乗り物用物入れ装置を提供する。
【解決手段】インナーリッド3とアウターリッド2との何れか一方の部材の端部の裏面には、突き合わす方向に延在した第1リブ6を形成すると共に該第1リブ6の自由端部12の奥側には、立ちはだかる奥壁13を形成してなり、インナーリッド3とアウターリッド2との何れか他方の部材の端部の裏面から所定寸法離間した部位には、前記第1リブ6の自由端部12及び奥壁13に夫々振動溶着する第2リブ7が突設してなり、該第2リブ7は、奥壁13に対して概略90度をなすノーマル線14に対して加圧方向を更に振ってなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や鉄道、航空機、船舶などの乗り物用物入れ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の乗り物、特に自動車用物入れ装置としては、中空状に形成されてなる小物収納用のボックスには、該小物を出し入れするための開口が形成されてなり、該開口を閉成したり開成したりすることが可能なリッドが、ボックスに配されてなる。該リッドは、インナーリッドと、アウターリッドとを層状に配し、共に合成樹脂材よりなり、前記インナーリッドと、前記アウターリッドとの何れか一方から他方に向けてリブを突設し、該リブの軸心方向に押圧しながら所定の方向に振動して、該リブの先端部及び側方部が前記他方に摩擦熱により溶着する(先行技術文献。)ものが、従来技術として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−294971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来技術は、何れか一方に突設した前記リブの側方部が溶着する予定の前記他方の部分の形状によっては、前記リブの側方部と接しにくく、加圧が確実にならないおそれがある、という課題がある。
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、前記インナーリッドと、前記アウターリッドとの何れか一方から他方に向けて突設した前記リブの確実な溶着を可能とした乗り物用物入れ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1は、開口を有するボックスと、該ボックスの開口を開閉自在となるように前記ボックスに配されてなるリッドとよりなり、該リッドは、インナーリッド及びアウターリッドを重ね合わせて、双方の端部を突き合わせてシェル状をなす乗り物用物入れ装置であって、前記インナーリッドとアウターリッドとの何れか一方の部材の端部の裏面には、前記突き合わす方向に延在した第1リブを形成すると共に該第1リブの自由端部の奥側には、立ちはだかる奥壁を形成してなり、前記インナーリッドとアウターリッドとの何れか他方の部材の端部の裏面から所定寸法離間した部位には、前記第1リブの自由端部及び前記奥壁に夫々振動溶着する第2リブが突設してなり、該第2リブは、前記奥壁に対して概略90度をなすノーマル線に対して加圧方向を更に振ってなることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2は、請求項1記載の前記第2リブの加圧時の振り角度は、前記ノーマル線に対して15〜30度、望ましくは15度であることを特徴とする。
【0008】
更に、本発明の請求項3は、請求項1又は請求項2記載の前記第1リブの自由端部と隣接する前記第1リブの自由端部とは、架橋部材で結合支持してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、前記インナーリッドとアウターリッドとの何れか一方の部材の端部の裏面には、突き合わす方向に延在した第1リブを形成すると共に該第1リブの自由端部の奥側には、立ちはだかる奥壁を形成してなり、前記インナーリッドとアウターリッドとの何れか他方の部材の端部の裏面から所定寸法離間した部位には、前記第1リブの自由端部及び前記奥壁に夫々振動溶着する第2リブが突設してなり、該第2リブは、前記奥壁に対して概略90度をなすノーマル線に対して加圧方向を更に振ってなるため、前記奥壁に対向した前記第2リブの自由端部と、前記第1リブの自由端部に対向した前記第2リブの側面部との二箇所が確実に溶着できるので、前記インナーリッドとアウターリッドとの溶着強度が増大する、という効果を奏する。また、前記第1リブの自由端部と、前記第2リブの側面部とが当接することで、前記インナーリッドとアウターリッドとのずれが防止されるので、位置合わせが容易に出来、見映えが向上する。
【0010】
また、請求項2記載の発明によれば、前記第2リブの加圧時の振り角度は、前記ノーマル線に対して15〜30度、望ましくは15度であるため、振動溶着時の加圧力が確実に加わり、溶着強度が増すことになる、という効果を奏する。
【0011】
更に、請求項3記載の発明によれば、前記第1リブの自由端部と隣接する前記第1リブの自由端部とは、架橋部材で結合支持してなるため、前記第1リブが倒れ込んだり、熱変形が生じない、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係るリッドを上方から見た状態を示す斜視図。
【図2】図1のSA−SA線に沿った断面図及び該断面に続く斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明において、インナーリッドと、アウターリッドとの何れか一方から他方に向けて突設したリブの確実な溶着を可能とした乗り物用物入れ装置を提供するという目的を、開口を有するボックスと、該ボックスの開口を開閉自在となるように前記ボックスに配されてなるリッドとよりなり、該リッドは、インナーリッド及びアウターリッドを重ね合わせて、双方の端部を突き合わせてシェル状をなす乗り物用物入れ装置であって、前記インナーリッドとアウターリッドとの何れか一方の部材の端部の裏面には、前記突き合わす方向に延在した第1リブを形成すると共に該第1リブの自由端部の奥側には、立ちはだかる奥壁を形成してなり、前記インナーリッドとアウターリッドとの何れか他方の部材の端部の裏面から所定寸法離間した部位には、前記第1リブの自由端部及び前記奥壁に夫々振動溶着する第2リブが突設してなり、該第2リブは、前記奥壁に対して概略90度をなすノーマル線に対して加圧方向を更に振ってなることで、実現した。以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例1に係る構造を、図1〜図2を用いて説明する。この実施例1の自動車用物入れ装置のリッド1は、図1に示すように、下側のヒンジにより図示しないボックスに配されて、ボックスの開口を開閉可能としている。
【0015】
前記自動車用物入れ装置のリッド1は、「一方の部材」であるインナーリッド3及び「他方の部材」であるアウターリッド2を重ね合わせて、双方の端部2a,3aを突き合わせてシェル状をなす。
【0016】
前記アウターリッド2の上端部2aには、段下がり部5が形成されてなり、該段下がり部5を覆うように、前記インナーリッド3の端部3aが配される。
【0017】
前記段下がり部5の裏面には、前記インナーリッド3の端部3aと突き合わす方向、つまり、図2では上側から下側に延在した第1リブ6を形成すると共に該第1リブ6の自由端部に架橋部材12が架橋して、あたかも複数の収納部8が形成されているような状態を呈している。
【0018】
前記第1リブ6の奥側、即ち、前記アウターリッド2の端部2aから、斜めに落ち込んだ部材11には、立ちはだかる奥壁13を形成してなる。後述する第2リブ7の板厚にほぼ等しい奥壁13の上下寸法の下端部からは、ほぼ水平に延在したフランジ部10が形成されてなる。
【0019】
前記インナーリッド3の端部3aの裏面から所定寸法離間した部位には、前記第1リブ6の自由端部の架橋部材12及び前記奥壁13に夫々振動溶着する第2リブ7が突設してなる。該第2リブ7は、前記奥壁13の面に対して概略90度をなすノーマル線14に対して加圧方向Pを更に振ってなる。符号9は、前記第2リブ7の倒れを防止するリブである。符号4は、前記アウターリッド2の表面を覆うポリ塩化ビニルなどの表皮である。
【0020】
より詳細に説明すると、前記第2リブ7の加圧時の振り角度θは、前記ノーマル線14に対して15〜30度、望ましくは15度である。即ち、前記ノーマル線14は、前記奥壁13の面に対して概略90度であり、仮に、前記奥壁13の面が、一つの円弧であれば、円弧の中心点とを結ぶ線であり、仮に、前記奥壁13の面が、直線性の平面であれば、まさにその面に直角な線であるから、その線に対して15〜30度、望ましくは15度振った角度から加圧することで、奥壁13にも架橋部材12にも共に加圧する関係にあることになる。
【0021】
次に、この実施例1の作用を説明する。
【0022】
実施例1によれば、前記アウターリッド2の端部2aの裏面には、突き合わす方向に延在した第1リブ6を形成すると共に該第1リブ6の自由端部である架橋部材12の奥側には、立ちはだかる奥壁13を形成してなり、前記インナーリッド3の端部3aの裏面から所定寸法離間した部位には、前記第1リブ6の自由端部である架橋部材12及び前記奥壁13に夫々振動溶着する第2リブ7が突設してなり、該第2リブ7は、前記奥壁13に対して概略90度をなすノーマル線14に対して加圧方向Pを更に15度振ってなる、即ち、前記奥壁13に対して105度振ってなるため、前記奥壁13に対向した前記第2リブ7の自由端部7aと、前記第1リブ6の自由端部である架橋部材12に対向した前記第2リブ7の側面部7bとの二箇所が確実に溶着できるので、前記インナーリッド3とアウターリッド2との溶着強度が増大する、という効果を奏する。
【0023】
また、前記第1リブ6の自由端部である架橋部材12と、前記第2リブ7の側面部7bとが当接することで、前記インナーリッド3とアウターリッド2とのずれが防止されるので、位置合わせが容易に出来、見映えが向上する。
【0024】
また、前記第2リブ7の加圧時の振り角度θは、前記ノーマル線14に対して15〜30度、望ましくは15度であるため、振動溶着時の加圧力が確実に加わり、溶着強度が増すことになる、という効果を奏する。
【0025】
更に、前記第1リブ6の自由端部と、隣接する前記第1リブ6の自由端部とは、架橋部材12で結合支持してなるため、前記第1リブ6が倒れ込んだり、熱変形が生じない、という効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、以上の実施例では、自動車用物入れ装置のリッド1を例にして説明したが、自動車用だけでなく、航空機、船舶、鉄道などあらゆる乗り物の物入れ装置に適用されるものである。
【0027】
本発明は、以上の実施例では、第1リブは他方の部材であるアウターリッドに形成され、第2リブは一方の部材であるインナーリッドに形成されてなることを例にして説明したが、これに限定されることはなく、第1リブが一方の部材であるインナーリッドに形成されてなり、第2リブが他方の部材であるアウターリッドに形成されてなるものでも良い。
【符号の説明】
【0028】
1 自動車用物入れ装置のリッド
2 「他方の部材」であるアウターリッド
2a アウターリッドの端部
3 「一方の部材」であるインナーリッド
3a インナーリッドの端部
6 第1リブ
7 第2リブ
7a 第2リブの自由端部
7b 第2リブの側面部
12 第1リブの自由端部である架橋部材
13 奥壁
14 ノーマル線
P 加圧方向
θ 第2リブの加圧時の振り角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有するボックスと、該ボックスの開口を開閉自在となるように前記ボックスに配されてなるリッドとよりなり、該リッドは、インナーリッド及びアウターリッドを重ね合わせて、双方の端部を突き合わせてシェル状をなす乗り物用物入れ装置であって、
前記インナーリッドとアウターリッドとの何れか一方の部材の端部の裏面には、前記突き合わす方向に延在した第1リブを形成すると共に該第1リブの自由端部の奥側には、立ちはだかる奥壁を形成してなり、
前記インナーリッドとアウターリッドとの何れか他方の部材の端部の裏面から所定寸法離間した部位には、前記第1リブの自由端部及び前記奥壁に夫々振動溶着する第2リブが突設してなり、
該第2リブは、前記奥壁に対して概略90度をなすノーマル線に対して加圧方向を更に振ってなることを特徴とする乗り物用物入れ装置。
【請求項2】
請求項1記載の乗り物用物入れ装置であって、
前記第2リブの加圧時の振り角度は、前記ノーマル線に対して15〜30度、望ましくは15度であることを特徴とする乗り物用物入れ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の乗り物用物入れ装置であって、
前記第1リブの自由端部と隣接する前記第1リブの自由端部とは、架橋部材で結合支持してなることを特徴とする乗り物用物入れ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−93403(P2011−93403A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248433(P2009−248433)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】