説明

乗客コンベアのハンドレール清掃装置、及びハンドレール清掃装置の遠隔監視装置

【課題】清掃条件の如何に拘わらずハンドレールの表面に適切な量の清掃液を供給できる乗客コンベアのハンドレール清掃装置の提供。
【解決手段】清掃具14をハンドレール1に選択的に当接させる手段を備え、ハンドレール1の循環移動に伴って、清掃具14によってハンドレール1の表面を自動的に清掃するものにおいて、清掃具14の表面の湿潤度を測定する湿潤センサ16と、このハンドレール清掃装置2に含まれる各機器の制御を行うとともに、湿潤センサ16から出力される検出データを取り込み、記憶する制御部5とを備え、この制御部5が、湿潤センサ16から出力される検出データと、予め記憶される第1基本データとを比較する比較手段を含み、この比較手段における比較の結果、検出データが乾燥を示すデータであると判断されたときに、清掃具14を自動的に巻き取り、更新する制御を行う構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータや電動道路などの乗客コンベアに備えられ、ハンドレールの表面を自動的に清掃可能な清掃具を有する乗客コンベアのハンドレール清掃装置、及びこのハンドレール清掃装置の遠隔監視が可能なハンドレール清掃装置の遠隔監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として特許文献1に示されるものがある。この従来技術は、ハンドレールの移動状態を常に検出可能なロータリエンコーダを備え、このロータリエンコーダによって得られた情報によって帯状清掃具の一部をハンドレールの表面に当接させ、あるいは離反させる動作を行わせている。また、このハンドレール清掃装置に含まれる各機器を制御する制御部には、ディップスイッチを設け、このディップスイッチにより、ハンドレール移動時間に合わせて清掃具の当接時間を調整し、この当接時間の間、清掃具をハンドレールの表面に当接させ、当接時間の経過後に清掃具の巻き取り、更新を行わせるようにしてある。
【0003】
ところで一般に、この種の従来技術は、ハンドレールに当接可能な帯状清掃具は、清掃液を含侵させた状態でその一部が上昇下降可能な台座に搭載され、その清掃具の一部をハンドレールの表面に接触させ、このハンドレールの表面を濡らし、ハンドレールの表面の汚れを落とすことによってハンドレールの清掃を実現させている。ハンドレールの表面の湿潤度が高くなればなるほど、そのハンドレールの清掃効率を高めることができる。すなわち、清掃具にできるだけ多量の清掃液を含侵させ、ハンドレールの表面を十分に濡らすことによって、清掃効率を高めることができる。
【0004】
上述した特許文献1に示される従来技術にあっては、帯状清掃具のロール状に巻かれた部分が清掃液タンクの清掃液中に浸されており、台座に搭載されハンドレールに接触させていた清掃具の部分が一定時間ごとにハンドレールから離され、ロール状に形成された部分の一部が新たに引き出され、巻取り、更新され、新たに引き出された清掃具の部分を再びハンドレールの表面に当接させるようにして、ハンドレールの移動に伴ってこのハンドレールの表面を清掃するようになっている。
【0005】
なお従来、公衆電話回線網を用いてハンドレール清掃装置を遠隔監視する遠隔監視装置が提案されている。この従来のハンドレール清掃装置の遠隔監視装置は、複数のハンドレール清掃装置を集中監視する監視センタと、乗客コンベアの内部に取り付けられ、公衆電話回線網を介して監視センタに接続される監視手段とを備え、乗客コンベアの内部の監視手段と、監視センタとの間でデータの送受信を行わせるようにしたものである。
【特許文献1】特開2001−63953公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に示される従来技術は、予め設定された当接時間ごとにハンドレールの表面を清掃具に含侵させた清掃液で濡らしながら清掃を行い、当接時間の経過後に清掃具の更新を行うように構成されている。このような動作がハンドレール移動時間の間、繰り返される。すなわち、予め設定されたハンドレール移動時間と当接時間との関係に応じた清掃具の更新回数でハンドレールの表面の清掃を行うように構成されている。
【0007】
しかし、例えば乗客コンベアが設置される周囲の外気温度である環境温度や、ハンドレールの長さ等の各種の清掃条件によっては、上述のように予め設定されたハンドレール移動時間と当接時間の関係に相応する清掃具の更新回数が少なくて、清掃具に含侵される清掃液が不足し、ハンドレールの表面が乾いてしまうために望ましいハンドレールの清掃を実現できないことがある。
【0008】
なお、上述した特許文献1に示される従来のハンドレール清掃装置が備えられる乗客コンベアなどの内部に、ハンドレール清掃装置を監視する監視手段を設置し、この監視手段と公衆電話回線網を介して接続される監視センタを備えてハンドレール清掃装置の遠隔監視装置を構成するものにあっては、乗客コンベアの内部にハンドレール清掃装置を監視する監視手段を設ける際に、電話回線敷設作業に関連して設置工事が煩雑となり、この設置工事のために多くの時間と費用がかかる問題があった。
【0009】
本発明の乗客コンベアのハンドレール清掃装置は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、清掃条件の如何に拘わらずハンドレールの表面に適切な量の清掃液を供給できる乗客コンベアのハンドレール清掃装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明のハンドレール清掃装置の遠隔監視装置は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、比較的簡単な設置工事によって上述したハンドレール清掃装置の遠隔監視を実現できるハンドレール清掃装置の遠隔監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の乗客コンベアのハンドレール清掃装置は、無端状に連結され、循環移動するハンドレールの表面に接触可能な清掃具と、この清掃具を上記ハンドレールに選択的に当接させる手段とを備え、上記ハンドレールの循環移動に伴って、上記清掃具によって上記ハンドレールの表面を自動的に清掃し、かつ、上記清掃具を自動的に巻き取り、更新する乗客コンベアのハンドレール清掃装置において、上記清掃具の表面の湿潤度を測定する湿潤センサを備えたことを特徴としている。
【0012】
このように構成した本発明の乗客コンベアのハンドレール清掃装置は、湿潤センサによって測定される清掃具の表面の湿潤度により、この清掃具がハンドレールの表面の清掃に好適な湿潤度を維持しているかどうか管理することができる。すなわち、その湿潤度を適切に管理することにより、乗客コンベアの環境温度とか、乗客コンベアの長さ等の各種の清掃条件の如何に拘わらず、ハンドレールの表面に常に適切な量の清掃液を清掃具を介して供給し、所望のハンドレールの表面の清掃を実現できる。
【0013】
また、本発明の乗客コンベアのハンドレール清掃装置は、上記発明において、このハンドレール清掃装置に含まれる各機器の制御を行うとともに、上記湿潤センサから出力される検出データを取り込み、記憶する制御部を備え、この制御部が、上記湿潤センサから出力される検出データと、この制御部に予め記憶され、乾燥していると考えられる清掃具の湿潤度に相当する基本データとを比較する比較手段を含み、この比較手段における比較の結果、上記検出データが乾燥を示すデータであると判断されたときに、上記清掃具を自動的に巻き取り、更新する制御を行うことを特徴としている。
【0014】
また、上記目的を達成するために、本発明のハンドレール清掃装置の遠隔監視装置は、上記ハンドレール清掃装置を遠隔監視する監視センタと、上記ハンドレール清掃装置が設置される乗客コンベアに設けられ、公衆無線通信網を介して上記監視センタとの間で送受信可能なアンテナとを備えたことを特徴としている。
【0015】
このように構成した本発明のハンドレール清掃装置の遠隔監視装置は、アンテナ及び公衆無線通信網を介して、監視センタで上述のハンドレール清掃装置を遠隔監視させることができ、電話回線敷設に係る煩雑な設置工事が不要となる。すなわち、比較的簡単な設置工事によって上述したハンドレール清掃装置の遠隔監視を実現できる。
【0016】
また、本発明のハンドレール清掃装置の遠隔監視装置は、上記発明において、上記ハンドレール清掃装置に含まれる各機器の制御を行うとともに、上記ハンドレール清掃装置に備えられる湿潤センサから出力される検出データを取り込み、記憶する制御部と、この制御部と上記アンテナとに接続される通報端末装置とを備え、上記制御部は、上記湿潤センサから出力される検出データと、この制御部に予め記憶され、乾燥していると考えられる清掃具の湿潤度に相当する基本データとを比較する比較手段を含み、この比較手段における比較の結果、上記検出データが乾燥を示すデータであると判断されたときに上記清掃具を自動的に巻き取り、更新する制御と、この制御部に記憶された上記検出データを上記通報端末装置、上記アンテナ、及び上記公衆無線通信網を介して、上記監視センタに送信する制御とを行うことを特徴としている。
【0017】
また、本発明のハンドレール清掃装置の遠隔監視装置は、上記発明において、上記監視センタが、上記公衆無線通信網、上記アンテナ、及び上記通報端末装置を介して、上記ハンドレール清掃装置を遠隔制御する制御指令を上記制御部へ出力可能な手段を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の乗客コンベアのハンドレール清掃装置によれば、清掃具の湿潤度を測定する湿潤センサを備えたことにより、清掃条件の如何に拘わらずハンドレールの表面に適切な量の清掃液を供給でき、これによって清掃精度を向上させることができ、従来に比べて高い信頼性を確保できる。
【0019】
また、本発明のハンドレール清掃装置の遠隔監視装置によれば、公衆電話回線網によらず、公衆無線通信網を利用して監視センタによる監視を行うことができるので、比較的簡単な設置工事によって上述した乗客コンベアのハンドレール清掃装置の監視を実現でき、設置工事にかかる時間と費用を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下,本発明に係る乗客コンベアのハンドレール清掃装置の実施形態、及びハンドレール清掃装置の遠隔監視装置の実施形態を図に基づいて説明する。
【0021】
図1は本発明に係る乗客コンベアのハンドレール清掃装置の一実施形態、及びハンドレール清掃装置の遠隔監視装置の一実施形態を示す図、図2は本発明に係る乗客コンベアのハンドレール清掃装置の一実施形態の設置位置を説明する図である。
【0022】
これらの図1,2に示す本実施形態は、乗客コンベアのハンドレール清掃装置の一実施形態と、ハンドレール清掃装置の遠隔監視装置の一実施形態を含んでいる。
【0023】
本実施形態に係るハンドレール清掃装置2は、図2に示すように、無端状に連結され、循環移動するハンドレール1を支持する欄干3の近傍であって、例えば乗降口付近に設置されており、ハンドレール1の挿入を許容させるハンドレール入り込み口4を備えている。
【0024】
このハンドレール清掃装置2は、図1に示すように、ハンドレール1の表面に接触可能な帯状の清掃具14と、この清掃具14をハンドレール1に選択的に当接させる手段、例えば台座9、及び台座昇降機11とを備えている。
【0025】
上述した清掃具14の一端側部分、すなわち送り出し側部分は、清掃具ローラ芯15に巻かれた状態で清掃液タンク10内の清掃液に浸されており、他端側部分、すなわち巻き取り側部分は、巻取りモータ13に係着され、清掃具ロール12を形成している。この清掃具14の一端側部分と他端側部分の間の部分が、台座9によってハンドレール1の表面に当接可能に、あるいは離反可能に保持されている。
【0026】
本実施形態のハンドレール清掃装置2は特に、清掃具14の表面の湿潤度を測定する湿潤センサ16を備えている。この湿潤センサ16は、先端に設けられた同軸同心円筒の円環状電極により清掃具14の表面の水分量を検知し、そのときの円環状電極の2極間のインピーダンスの変化量を湿潤度として測定し、検出データを出力するものである。この湿潤センサ16は、例えば台座9に搭載される清掃具14の部分の直前の清掃具14の部分の表面の湿潤度を測定するように配置してある。
【0027】
また、このハンドレール清掃装置2を構成する各機器の制御を行うとともに、これらの各機器の状態が正常であるかどうかの情報信号、及び湿潤センサの測定信号、すなわち検出データが入力される制御部5を備えている。
【0028】
この制御部5は、上述した湿潤センサ16の検出データの記憶、清掃具14の全長に相応する長さの記憶、清掃具14に含まれる清掃液が不足し、この清掃具14の表面が乾燥していると考えられる湿潤度に相当する第1基本データの記憶、及び清掃具14に含まれる清掃液が過剰であると考えられる湿潤度に相当する第2基本データの記憶をそれぞれ行う記憶部と、湿潤センサ16から出力される検出データと上述した第1基本データとを比較する比較手段と、湿潤センサ16から出力される検出データと上述した第2基本データとを比較する比較手段とを含んでいる。なお、上述した第1基本データと第2基本データは、予め制御部5の記憶部に記憶される。
【0029】
この制御部5の比較手段における比較の結果、上述の検出データの湿潤度が第1基本データの湿潤度以下の値であり、その検出データが、清掃具14の表面がハンドレール1の清掃に適さない乾燥状態にあることを示すデータであると判断されたときに後述するように、制御部5によって清掃具14がハンドレール1から離され、この清掃具14の自動巻き取り、更新が実施される。なお、上述の検出データの湿潤度が第2基本データの湿潤度以上の値であり、その検出データが、清掃具14の表面がハンドレール1の清掃に適さない過剰に清掃液が含侵された状態にあることを示すデータであると判断されたときには、例えばハンドレール1の清掃が中止され、清掃具14に含侵される清掃液の量の調整が行われる。
【0030】
また、上述した制御部5は、このハンドレール清掃装置2が設置される乗客コンベアの運転、停止制御、及び制御部5への電源供給制御を行う乗客コンベア制御装置8に接続されている。
【0031】
また、本実施形態のハンドレール清掃装置2の遠隔監視装置は、例えば複数のハンドレール清掃装置2を集中的に遠隔監視可能な監視センタ19と、各ハンドレール清掃装置2に設けられ、制御部5に接続された通報端末装置6と、この通報端末装置6に接続されるアンテナ7と、このアンテナ7との間の送受信が可能な公衆無線基地局17と、この公衆無線基地局17と監視センタ18とを接続する公衆無線通信網18とを備えている。
【0032】
上述した制御部5も、この本実施形態のハンドレール清掃装置2の遠隔監視装置の構成要素に含まれるものであり、制御部5は、上述した機能を有する他に、制御部5に記憶された湿潤センサ16の検出データ、及びハンドレール清掃装置2を構成する各機器の状態に係る上述の情報信号を、通報端末装置6、アンテナ7、公衆無線基地局17、及び公衆無線通信網18を介して監視センタ19に送信する制御も行う。
【0033】
なお、監視センタ19は、公衆無線通信網18、公衆無線基地局17、アンテナ7、及び通報端末装置6を介して、各ハンドレール清掃装置2を遠隔制御する制御指令を、それぞれのハンドレール清掃装置2に備えられる制御部5へ出力可能な手段を含んでいる。
【0034】
図3は本発明に係る乗客コンベアのハンドレール清掃装置の一実施形態、及びハンドレール清掃装置の遠隔監視装置の一実施形態の動作を説明する図である。以下、この図3に基づいて、上述したハンドレール清掃装置2、及びハンドレール清掃装置2の遠隔監視装置を含む本実施形態の動作に基づいて説明する。
【0035】
はじめに例えば、監視センタ19からのハンドレール1の清掃開始の制御指令が、公衆無線通信網18、公衆無線基地局17、アンテナ7、通報端末装置6を介してハンドレール清掃装置2の制御部5に入力され、その清掃開始の制御指令に応じて制御部5は、同図3の手順S20に示すように、乗客コンベア制御装置8から入力される信号により、乗客コンベアが現在運転状態にあるかどうか判断する。この判断がイエスのときは、ここではハンドレール1の清掃は実施しない。ノーのときは、手順S21に移り、ハンドレール清掃装置2に備えられる各機器、及び制御部5の電源は正常に動作しているか判断される。
【0036】
この手順S21の判断がノーのときは、異常を生じていることになり、制御部5から通報端末装置6に異常を示す情報信号が出力され、この異常を示す情報信号がアンテナ7、公衆無線基地局17、公衆無線通信網18を介して監視センタ19に送信される。これにより、監視センタ19から指令が出され、ハンドレール清掃装置2の調整、あるいは保守のために作業者が、該当するハンドレール清掃装置2の設置場所まで派遣される。作業者は、手順S28で示すように、該当するハンドレール清掃装置2の異常を解消させる作業を実施する。
【0037】
なお、上述した手順S21の判断がイエスのときは、手順S22に移り、制御部5による巻取りモータ13の制御で清掃具14を巻き取り、更新する処理がなされる。清掃開始前にあっては、ハンドレール1から台座9が離され、これに伴って清掃具14がハンドレール1から離反した状態となっている。
【0038】
手順S22では、制御部5による巻取りモータ13の制御で清掃具14を所定長さだけ巻き取り、更新する処理が行われる。
【0039】
次に、手順S23に移り、制御部5の制御による台座昇降機11の制御で台座9を上昇させる処理がなされる。これにより、台座9上に搭載されている清掃具14の部分がハンドレール1の表面に当接される。
【0040】
次に手順S24に移り、制御部5からの信号が乗客コンベア制御装置8に出力され、この乗客コンベア制御装置8の制御によって乗客コンベアが所定の運転時間の間運転され、ハンドレール1が循環移動し、このハンドレール1の表面に当接している清掃具14の部分によってハンドレール1の表面の清掃が行われる。なお、所定の運転時間の経過後は、乗客コンベアの運転が停止され、この乗客コンベアが停止した旨の信号が、乗客コンベア制御装置8から制御部5に出力されることになる。
【0041】
上述した手順S24の処理の次は、手順S25に移り、清掃具14は、その全長に相応する一定以上の長さを巻き取った状態にあるかどうか、制御部5の記憶部に予め記憶されている清掃具14の長さに基づいて判断される。この判断がイエスであれば、制御部5から乗客コンベア制御装置8に、乗客コンベアの運転を停止させる信号が出力される。これに応じて、乗客コンベア制御装置8は乗客コンベアの運転を停止させ、このように乗客コンベアの運転が停止状態にある旨の信号が制御部5に出力される。また、制御部5は、台座昇降機11を制御して台座9を下降させ、清掃具14をハンドレール1から離反させる処理を行う。そして、手順S26に移って、制御部5から通報端末装置6に清掃具14の交換を要する旨の信号が出力され、手順S29に移る。手順S25の判断がノーの場合には手順S29に移る。
【0042】
上述の手順S26では、制御部5から出力された清掃具14の交換を要する旨の信号が、通報端末装置6からアンテナ7、公衆無線基地局17、公衆無線通信網18を介して監視センタ19に送信される。これにより監視センタ19から指令が出され、作業者が該当するハンドレール清掃装置2の清掃具14の交換のために派遣される。作業者は、該当するハンドレール清掃装置2の清掃具14を新たな清掃具14に交換する作業を行う。
【0043】
また、上述した手順S29では、湿潤センサ16で測定される検出データの湿潤度が、制御部5の記憶部に記憶されている第1基本データの湿潤度以下であるかどうか、すなわちハンドレール1に当接される清掃具14の部分の近傍の清掃具14の部分の表面が乾きすぎているかどうか判断される。この判断がイエスであれば、清掃具14が乾きすぎて清掃液が不足していることになり、手順S30に移って制御部5による台座昇降機11の制御で台座9を下降させ、それまでハンドレール1に当接していた清掃具14の部分をハンドレール1から離反させることが行われる。台座9を下降させた後は上述の手順S22に戻り、清掃具14の巻き取り、更新の処理がなされる。すなわち、引き続いてハンドレール1を清掃するための各処理が継続される。
【0044】
また、上述した手順S29の判断で、湿潤センサ16で測定される検出データの湿潤度が、制御部5の記憶部に記憶されている第1基本データの湿潤度以下ではないと判断されたとき、すなわち清掃具14の表面が乾きすぎず、清掃に適した量の清掃液が含侵された状態に維持されていると判断されたときには手順S31に移る。
【0045】
なお、同図3に示すフローチャートでは図示していないが、例えば手順S29の次に、清掃具14に清掃液が過剰に含侵されているかどうか判断する手順を設けるようにしてもよい。この場合には、他順S29の次に、湿潤センサ16で測定される検出データの湿潤度が、制御部5の記憶部に記憶されている第2基本データの湿潤度以上であるかどうか、すなわちハンドレール1に当接される清掃具14の部分に清掃液が過剰に含侵されているかどうか判断される。この判断がイエスであれば、例えば制御部5から乗客コンベア制御装置8に、乗客コンベアの運転を停止させる信号が出力される。乗客コンベア制御装置8は乗客コンベアの運転を停止させる制御を行うとともに、乗客コンベアが停止した旨の信号を制御部5に出力する。また、制御部5は、台座昇降機11を制御して台座9を下降させ、清掃具14をハンドレール1から離反させる処理を行う。さらに、制御部5から通報端末装置6に清掃具14に清掃液が異常に含侵されている旨の信号が出力される。この信号は通報端末装置6からアンテナ7、公衆無線基地局17、公衆無線通信網18を介して監視センタ19に送信される。これにより監視センタ19から指令が出され、作業者が該当するハンドレール清掃装置2の清掃液の含侵異常に対処するために派遣される。作業者は、清掃具14に含侵される清掃液がガイドレール1の清掃に適切な量となるように調整する作業を行う。上述した判断がノーであれば、手順S31に移るようにする。
【0046】
手順S31では、制御部5は乗客コンベア制御装置8から入力される信号により、この乗客コンベアが運転を停止したかどうか判断される。乗客コンベアの運転中であって、この判断がノーであれば、乗客コンベアの上述した所定の運転時間よりも少ない所定の当接時間の間、ハンドレール1の表面に清掃具14を当接させてハンドレール1の清掃を実施し、所定の当接時間の経過後に制御部5の制御による台座昇降機11の制御で台座9を下降させ、この状態において手順S22に戻り、清掃具14の巻き取り、更新の処理がなされる。
【0047】
手順S31の判断がイエスであれば、手順S32に移り、ハンドレール1の清掃終了の処理、すなわち制御部5による台座昇降機11の制御で台座9を下降させ、清掃具14をハンドレール1の表面から離反させ、清掃待機状態とする処理がなされる。このとき、制御部5から清掃終了信号が、通報端末装置6、アンテナ7、公衆無線基地局17、公衆無線通信網18を介して監視センタ19に送信される。これにより、監視センタ19はハンドレール1の表面の清掃が終了したことを確認することができる。
【0048】
以上のように構成した本実施形態の乗客コンベアのハンドレール清掃装置2によれば、湿潤センサ16によって測定される清掃具14の表面の湿潤度により、この清掃具14の表面がハンドレール1の表面の清掃に好適な湿潤度を維持しているかどうか管理することができる。すなわち、その湿潤度を適切に管理することにより、乗客コンベアの周囲の温度である環境温度とか、乗客コンベアの長さ等の各種の清掃条件の如何に拘わらず、ハンドレール1の表面に常に適切な量の清掃液を清掃具14を介して供給し、所望のハンドレール1の表面の清掃を実現できる。つまり、清掃精度を向上させることができ、高い信頼性を確保できる。
【0049】
また、本実施形態のハンドレール清掃装置2の遠隔監視装置によれば、通報端末装置6、アンテナ7、公衆無線基地局17、公衆無線通信網18を介して、監視センタ19で上述したハンドレール清掃装置2を遠隔監視させることができ、電話回線敷設のための煩雑な設置工事が不要となる。すなわち、通報端末装置6及びアンテナ7を設置する程度の比較的簡単な設置工事によってハンドレール清掃装置2の遠隔監視を実現でき、設置工事にかかる時間と費用を低減させることができる。
【0050】
なお、上述のように設置工事が比較的簡単であることから、既設の乗客コンベアに上述したハンドレール清掃装置2を設ける場合に、併せてこのハンドレール清掃装置2を監視する上述の遠隔監視装置も容易に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る乗客コンベアのハンドレール清掃装置の一実施形態、及びハンドレール清掃装置の遠隔監視装置の一実施形態を示す図である。
【図2】本発明に係る乗客コンベアのハンドレール清掃装置の一実施形態の設置位置を説明する図である。
【図3】本発明に係る乗客コンベアのハンドレール清掃装置の一実施形態、及びハンドレール清掃装置の遠隔監視装置の一実施形態の動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0052】
1 ハンドレール
2 ハンドレール清掃装置
5 制御部
6 通報端末装置
7 アンテナ
8 乗客コンベア制御装置
9 台座
10 清掃液タンク
11 台座昇降機
14 清掃具
16 湿潤センサ
17 公衆無線基地局
18 公衆無線通信網
19 監視センタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結され、循環移動するハンドレールの表面に接触可能な清掃具と、この清掃具を上記ハンドレールに選択的に当接させる手段とを備え、
上記ハンドレールの循環移動に伴って、上記清掃具によって上記ハンドレールの表面を自動的に清掃し、かつ、上記清掃具を自動的に巻き取り、更新する乗客コンベアのハンドレール清掃装置において、
上記清掃具の表面の湿潤度を測定する湿潤センサを備えたことを特徴とする乗客コンベアのハンドレール清掃装置。
【請求項2】
上記請求項1記載の乗客コンベアのハンドレール清掃装置において、
このハンドレール清掃装置に含まれる各機器の制御を行うとともに、上記湿潤センサから出力される検出データを取り込み、記憶する制御部を備え、
この制御部が、上記湿潤センサから出力される検出データと、この制御部に予め記憶され、乾燥していると考えられる清掃具の湿潤度に相当する基本データとを比較する比較手段を含み、この比較手段における比較の結果、上記検出データが乾燥を示すデータであると判断されたときに、上記清掃具を自動的に巻き取り、更新する制御を行うことを特徴とする乗客コンベアのハンドレール清掃装置。
【請求項3】
上記請求項1に記載のハンドレール清掃装置を遠隔監視する監視センタと、上記ハンドレール清掃装置が設置される乗客コンベアに設けられ、公衆無線通信網を介して上記監視センタとの間で送受信可能なアンテナとを備えたことを特徴とするハンドレール清掃装置の遠隔監視装置。
【請求項4】
上記請求項3記載のハンドレール清掃装置の遠隔監視装置において、
上記ハンドレール清掃装置に含まれる各機器の制御を行うとともに、上記ハンドレール清掃装置に備えられる湿潤センサから出力される検出データを取り込み、記憶する制御部と、
この制御部と上記アンテナとに接続される通報端末装置とを備え、
上記制御部は、上記湿潤センサから出力される検出データと、この制御部に予め記憶され、乾燥していると考えられる清掃具の湿潤度に相当する基本データとを比較する比較手段を含み、この比較手段における比較の結果、上記検出データが乾燥を示すデータであると判断されたときに上記清掃具を自動的に巻き取り、更新する制御と、この制御部に記憶された上記検出データを上記通報端末装置、上記アンテナ、及び上記公衆無線通信網を介して、上記監視センタに送信する制御とを行うことを特徴とするハンドレール清掃装置の遠隔監視装置。
【請求項5】
上記請求項4に記載のハンドレール清掃装置の遠隔監視装置において、
上記監視センタが、上記公衆無線通信網、上記アンテナ、及び上記通報端末装置を介して、上記ハンドレール清掃装置を遠隔制御する制御指令を上記制御部へ出力可能な手段を含むことを特徴とするハンドレール清掃装置の遠隔監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−314298(P2007−314298A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145518(P2006−145518)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【出願人】(391039173)株式会社ジェイアール西日本テクノス (26)
【Fターム(参考)】