説明

乗客コンベアの手摺温度調整装置

【課題】屋外に設置された乗客コンベアにおいて、真夏等の日差しの強いときであっても、乗客に異臭による不快感や、引火する恐れからくる不安感を感じさせることなく移動手摺の温度を適切な温度に調整することのできる乗客コンベアの手摺温度調整装置を得る。
【解決手段】移動手摺13の裏面に所定範囲に渡って冷気を送風する冷却装置25と、移動手摺13と同じ材質で構成され移動手摺13の周辺に同じ環境条件下で設置された擬似切片20と、擬似切片20に埋設された温度検出器21と、温度検出器21の検出した温度が所定作動温度に達すると、冷却装置25を運転させる制御手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、屋外に設置されたエスカレーター、動く歩道等の乗客コンベアに設けられる乗客コンベアの手摺温度調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋外に設置された乗客コンベアにおいては、真夏等の日差しが強いときには移動手摺が太陽光線により熱せられ表面温度が約55℃以上になることがしばしば見受けられた。このため乗客は移動手摺を掴むことが困難となっていた。そのために、乗客は移動手摺を掴むことなく乗客コンベアを利用することになり、安全上の問題があった。
【0003】
このため、屋外用乗客コンベアには、ハンドレールの表面を冷却させる冷却装置と、ハンドレールの表面の温度が所定温度以上に達しない間は冷却装置を作動させず、かつ、ハンドレールの表面の温度が所定温度以上に達すると冷却装置を作動させる温度スイッチとが設けられている。冷却装置は、アルコールをハンドレールの表面に吹き付けるアルコール吹付装置と、ハンドレールの表面に吹き付けたアルコールの気化を促進させるファン装置とからなる。アルコール吹付装置は、アルコールタンクと圧縮機と、圧縮機から圧縮空気をノズルに導く第1ホースと、アルコールタンクからアルコールをノズルに導く第2ホースとが設けられている。ノズルに導かれたアルコールは、圧縮空気の作用で、ノズルの先端で霧状になってハンドレールの表面に吹き付けられるようにしてある。温度スイッチは、乗客コンベアの上部機械室の出入口と、乗客コンベアの下部機械室側の出入口との、それぞれに設けられており、ハンドレールの表面温度が所定温度以上、たとえば40℃になると作動して冷却装置のアルコール吹付装置を作動させるように、アルコール吹付装置と電気的に接続されている。ファン装置は、ノズルの左右に位置して配設されており、ハンドレールの表面に吹き付けられたアルコールの気化を促進するように、強い風をハンドレールの表面に吹き付けるようにしている。ファン装置は、シロッコファン構造としてある。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−68663(第2−3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の乗客コンベアの移動手摺温度調整装置では、ハンドレールの表面に噴霧したアルコールの気化熱を利用した冷却装置であったため、気化したアルコールの異臭によって乗客が不快感を感じることがあった。また、乗客コンベアの主枠内に気化したアルコールが充満し、乗客コンベアの運転コントローラ内にある電磁接触器の動作時に発生するアーク火花等によって引火する恐れがあった。そのため、乗客に不安感を感じさせるものであった。
【0006】
この発明は上述のような問題を解決するためになされたもので、屋外に設置された乗客コンベアにおいて、真夏等の日差しの強いときであっても、乗客に異臭による不快感や、引火する恐れからくる不安感を感じさせることなく移動手摺の温度を適切な温度に調整することのできる乗客コンベアの手摺温度調整装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る乗客コンベアの手摺温度調整装置においては、屋外に設置された乗客コンベアにおいて、移動手摺の表面に所定範囲に渡って冷気を送風する冷却装置と、移動手摺と同じ材質で構成され移動手摺の周辺に同じ環境条件下で設置された擬似切片と、擬似切片に埋設された温度検出器と、温度検出器の検出した温度が所定温度に達すると、冷却装置を作動させる制御装置とを備えている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、移動手摺の温度上昇をほぼ直接的に捉えることにより移動手摺を冷却することができる。このため、乗客は真夏等の日差し強いときでも移動手摺を掴むことができるので安全性が向上する。また異臭による不快感や、引火する恐れからくる不安感を感じることなく、安心して乗客コンベアを利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る乗客コンベアの手摺温度調整装置を示す全体図である。図2はこの発明の実施の形態1に係る乗客コンベアの移動手摺の往路の断面図である。図3はこの発明の実施の形態1に係る乗客コンベアの移動手摺の復路の断面図である。図4はこの発明の実施の形態1に係る乗客コンベアの移動手摺の往路の要部斜視図(一部断面図)である。図5はこの発明の実施の形態1に係る乗客コンベアの移動手摺の復路の要部斜視図(一部断面図)である。図6はこの発明の実施の形態1に係る乗客コンベアの移動手摺温度調整装置における送風管の詳細図である。図7はこの発明の実施の形態1に係る乗客コンベアの手摺温度調整装置における温度調整動作を説明するフローチャートである。なお、図7では、ステップ100〜ステップ112を便宜上S100〜S112と示している。
【0010】
図1〜図6において、乗客コンベア1には、一方の乗降口2から他方の乗降口3にかけて主枠4が架設され、主枠4の上部には乗客コンベアの運転/停止を制御する運転コントローラ5が設けられている。また主枠4には、無端状に連結され往復移動する複数の踏段6が支持されている。この踏段6の両側部に立設された一対の欄干7は、踏段6上の空間に臨んだ内側板8、内側板8の上部に配置されたデッキボード9、及びデッキボード9上に固定された案内レール10、欄干7の基部内に支持部材11により支持された案内レール12を有している。欄干7の周辺には案内レール10を往路、案内レール12を復路として、踏段6と同期して往復移動する無端状に接続された移動手摺13が設けられている。移動手摺13は、ほぼ全周に渡り案内レール10と案内レール12により支持されている。
【0011】
移動手摺13の往路である案内レール10の上面には、溝部14が全長に渡り設けられている。この溝部14には、所定の間隔をおいて複数の案内ローラ15が設けられ、移動手摺を移動方向に案内している。案内レール10と移動手摺13との間には隙間16が形成される。移動手摺13の復路である案内レール12は、移動手摺13を吊り下げた状態で支持しており、案内レール12と移動手摺13との間には隙間17が形成される。案内レール10と案内レール12には複数箇所に隙間16と隙間17に至る通風穴18がそれぞれ設けられ、この各通風穴18には口金19が取付られている。
【0012】
擬似切片20は、移動手摺13と同じ材料で構成された擬似の移動手摺であり、擬似切片20の内部には温度検出器である熱伝対により構成された温度センサ21が埋め込まれている。擬似切片20は移動手摺13と等しく日差し、気温等の影響を受けるようにデッキボード7に埋め込まれ固定されている。
【0013】
噴霧装置22は、給水管(図示せず)より取り込んだ水を、圧縮機により加圧し、欄干6の基部内の復路を通過する移動手摺13の下方に配置された配水管23を通して、配水管23の先端に接続されたノズル24から、復路を通過する移動手摺13の表面に噴霧するものである。
【0014】
冷暖房装置25は、例えばヒートポンプから構成されており、作動することにより発生する冷気を、欄干6の基部内の復路を通過する移動手摺13の下方に配置された送風管26と送風管27を通して、送風管26と送風管27各々の先端に接続されたエアノズル28とエアノズル29の絞りよって風圧を上げ、復路を通過する移動手摺13に向けて吹き付け、噴霧装置22により噴霧された移動手摺13の表面の水滴を気化させるものである。
【0015】
また、冷暖房装置25は、作動することにより発生する冷気を、欄干6の基部内の案内レール10と案内レール12の複数の通風穴18に取付けられた口金19に分岐して接続された送風管30を通して、移動手摺13の裏面に形成される隙間16と隙間17に送風するものである。
【0016】
電磁バルブ31と電磁バルブ32及び電磁バルブ33はそれぞれ送風管26と送風管27及び送風管30の開閉をおこなうものである。
【0017】
冷暖房装置コントローラ34は、CPU、メモリ等を備えたマイクロコンピュータにより構成され、温度センサ21が検知する擬似切片20の温度に基づいて、噴霧装置22と冷暖房装置25の作動/停止や、電磁バルブ31と電磁バルブ32及び電磁バルブ33の開/閉を制御する制御手段を構成している。
【0018】
次に、この乗客コンベアの移動手摺温度調整装置における移動手摺の温度調整動作について図7のフローに基づいて説明する。
屋外に設置された乗客コンベア1の移動手摺13は真夏等に強い日差しを受けると、その温度は急激に上昇する。また、移動手摺13と同じ材質で構成された擬似切片20は、温度が上昇する要因となる日差し、外気温等を移動手摺13と同等に受けるデッキボード9上に埋め込み固定されているから、移動手摺13の温度が上昇すれば擬似切片20の温度も同期して上昇するため、擬似切片20の内部に埋め込まれた温度センサ21によって、移動手摺13の温度を近似的に測定することができる。
【0019】
まず、冷暖房装置コントローラ34は、温度センサ21が40℃(作動温度)以上の温度を検出したか否かを判断する(ステップ100)。そして、温度センサ21が40℃(作動温度)以上の温度を検出していると判断すると、冷暖房装置コントローラ34は、運転コントローラ5から送信される運転信号がONかOFFかによって乗客コンベア1が運転中であるか否かを判断する(ステップ101)。そして、乗客コンベア1が運転中であると判断すると、冷暖房装置コントローラ34は、冷暖房装置25を作動し冷房運転を開始させる(ステップ102)。すなわち、温度センサ21が40℃(作動温度)以上の温度を検出し、かつ、乗客コンベア1が運転していることが、移動手摺13の冷却動作を開始する条件となる。
【0020】
ついで、冷暖房装置コントローラ34は電磁バルブ33を開く(ステップ103)。その結果、冷暖房装置25より発生した冷気が、送風管30を通して案内レール10と案内レール12のそれぞれの通風穴18より隙間16と隙間17に送風され、移動手摺13を裏面より冷却する。
【0021】
ついで、冷暖房装置コントローラ34は、乗客コンベア1の運転方向がUP方向か否かを判断する(ステップ104)。そして運転方向がUP方向であると判断すると、冷暖房装置コントローラ34は電磁バルブ31を開く(ステップ105)。その結果、冷暖房装置25より発生する冷気が、送風管26を通して、送風管26の先端に接続されたエアノズル28から、複路を通過する移動手摺13の表面に吹き付けられる。一方、運転方向がUP方向ではないと判断すると、冷暖房装置コントローラ34は電磁バルブ32を開く(ステップ106)。その結果、冷暖房装置25より発生する冷気が、送風管27を通して、送風管27の先端に接続されたエアノズル29から、複路を通過する移動手摺13の表面に吹き付けられる。
【0022】
ついで、冷暖房装置コントローラ34は噴霧装置22を作動させる(ステップ107)。その結果、噴霧装置22は給水管より取り込んだ水を、圧縮機により加圧し配水管23を通して、配水管23の先端に接続されたノズル24から、復路を通過する移動手摺13の表面に噴霧する。その結果、移動手摺13に付着した水滴は、乗客コンベア1の運転方向に応じてエアノズル28またはエアノズル29より吹き付けられる冷気によって気化され、移動手摺13の表面を冷却する。
【0023】
そして、日差しの低下、外気温の低下等によって温度センサ21が36℃(停止温度)以下の温度を検出したことを冷暖房装置コントローラ34が認識する(ステップ108)と、冷暖房装置コントローラ34は噴霧装置22を停止させる(ステップ109)。ついで、冷暖房装置コントローラ34は電磁バルブ31若しくは電磁バルブ32を閉じる(ステップ110)。その結果、移動手摺13の表面からの噴霧による冷却動作が終了する。
【0024】
ついで、冷暖房装置コントローラ34は、冷暖房装置25を停止し冷房運転を停止させ(ステップ111)、電磁バルブ33を閉じる(ステップ112)。その結果、移動手摺13の裏面からの冷気による冷却動作が終了する。
【0025】
なお、冷暖房コントローラ34は、温度センサ21が36℃(停止温度)以下の温度を検出しなくても、安全装置の動作等によって乗客コンベア1が停止し運転コントローラ5より送信される運転信号OFFを検出すると、直ちに噴霧装置22と冷暖房装置25を停止させ冷却動作を終了させる。
【0026】
このように、この実施の形態1によれば、移動手摺の温度上昇を的確に捉えて移動手摺の裏面に冷気を送風し冷却すると共に、移動手摺の表面に噴霧した水滴を冷気を吹き付け気化し冷却するので、移動手摺の温度が40℃以上に上昇することを抑制できる。そのため乗客は熱さを感じることなく移動手摺を掴むことができるので安全性が向上する。
【0027】
また、気化した水と冷気はほとんど無臭であり、引火の恐れもないので乗客は不快感や不安感を感じることなく安心して乗客コンベアを利用することができる。
【0028】
実施の形態2.
図8はこの発明の実施の形態2に係る乗客コンベアの手摺温度調整装置における温度調整動作を説明するフローチャートである。なお、図8では、ステップ200〜ステップ213を便宜上S200〜S213と示している。
【0029】
この実施の形態2の乗客コンベアの手摺温度調整装置における移動手摺の温度調整動作について図8のフローに基づいて説明する。
まず、冷暖房装置コントローラ34は、温度センサ21が40℃(作動温度)以上の温度を検出したか否かを判断する(ステップ200)。そして、温度センサ21が40℃(作動温度)以上の温度を検出していると判断すると、冷暖房装置コントローラ34は、運転コントローラ5から送信される運転信号がONかOFFかによって乗客コンベア1が運転中であるか否かを判断する(ステップ201)。そして、乗客コンベア1が運転中であると判断すると、冷暖房装置コントローラ34は、冷暖房装置25を作動し冷房運転を開始させる(ステップ202)。すなわち、温度センサ21が40℃(作動温度)以上の温度を検出し、かつ、乗客コンベア1が運転していることが、移動手摺13の冷却動作を開始する条件となる。
【0030】
ついで、冷暖房装置コントローラ34は電磁バルブ33を開く(ステップ203)。その結果、冷暖房装置25より発生する冷気が、送風管30を通して案内レール10と案内レール12のそれぞれの通風穴18より隙間16と隙間17に送風され、移動手摺13を裏面より冷却する。
【0031】
ついで、冷暖房装置コントローラ34は、乗客コンベア1の運転方向がUP方向か否かを判断する(ステップ204)。そして、運転方向がUP方向であると判断すると、冷暖房装置コントローラ34は電磁バルブ31を開く(ステップ205)。その結果、冷暖房装置25より発生する冷気が送風管26を通して、送風管26の先端に接続されたエアノズル28から、往路を通過する移動手摺13の表面に吹き付けられる。一方、運転方向がUP方向でないと判断すると、冷暖房装置コントローラ34は電磁バルブ32を開く(ステップ206)。その結果、冷暖房装置25より発生する冷気が送風管27を通して、送風管27の先端に接続されたエアノズル29から、往路を通過する移動手摺13の表面に吹き付けられる。
【0032】
ついで、冷暖房装置コントローラ34は、噴霧装置22を作動させる(ステップ207)。その結果、噴霧装置22に給水管より取り込んだ水を、圧縮機により加圧し配水管23を通して、配水管23の先端に接続されたノズル24から、往路を通過する移動手摺13の表面に噴霧する。また移動手摺13に付着した水滴は、乗客コンベア1の運転方向に応じてエアノズル28またはエアノズル29より吹き付けられる冷気によって気化され、移動手摺13の表面を冷却する。
【0033】
そして、日差しの低下、外気温の低下等によって温度センサ21が40℃(作動温度)より2℃低下した38℃以下の温度を検出したことを冷暖房装置コントローラ34が認識する(ステップ208)と、冷暖房装置コントローラ34は、噴霧装置22を停止させる(ステップ209)。ついで、冷暖房装置コントローラ34は、電磁バルブ31若しくは電磁バルブ32を閉じる(ステップ210)。その結果、移動手摺13の表面からの噴霧による冷却動作が終了する。
【0034】
そして、更なる日差しの低下、外気温の低下等によって温度センサ21が36℃(停止温度)以下の温度を検出したことを冷暖房装置コントローラ34が認識する(ステップ211)と、冷暖房装置コントローラ34は、冷暖房装置25を停止し冷房運転を停止させ(ステップ212)、電磁バルブ33を閉じる(ステップ213)。その結果、移動手摺13の裏面からの冷気による冷却動作が終了する。
【0035】
なお、冷暖房コントローラ34は、温度センサ21が36℃(停止温度)以下の停止温度を検出しなくても、安全装置の動作等によって乗客コンベア1が停止し運転コントローラ5より送信される運転信号OFFを検出すると、直ちに噴霧装置22と冷暖房装置25を停止させ冷却動作を終了させる。
【0036】
このように、この発明の実施の形態2によれば上記実施の形態1の効果に加え、停止温度に至る前に噴霧装置を停止させるので、省電力化が図られる。
【0037】
実施の形態3.
図9はこの発明の実施の形態3に係る乗客コンベアの手摺温度調整装置における温度調整動作を説明するフローチャートである。なお、図9では、ステップ300〜ステップ307を便宜上S300〜S307と示している。
【0038】
この実施の形態3の乗客コンベアの手摺温度調整装置における移動手摺の温度調整動作について図9のフローに基づいて説明する。
まず、冷暖房装置コントローラ34は温度センサ21が5℃(作動温度)以下を検出しているか否かを判断する(ステップ300)。そして、温度センサ21が5℃(作動温度)以下を検出していると判断すると、冷暖房装置コントローラ34は、運転コントローラ5から送信される運転信号がONかOFFかによって乗客コンベア1が運転中であるか否かを判断する(ステップ301)。
【0039】
そして、乗客コンベア1が運転中であると判断すると、乗客が通勤や通学等で頻繁に乗客コンベア1を利用する頻繁利用時間帯が予め設定されたタイマーを備えた冷暖房装置コントローラ34は、頻繁利用時間帯であるか否かを判断する(ステップ302)。そして、頻繁利用時間帯であると判断すると、冷暖房装置コントローラ34は、冷暖房装置25を作動し暖房運転を開始させる(ステップ303)。すなわち、温度センサ21が5℃以下の温度を検出し、かつ、乗客コンベア1が運転していることと、頻繁利用時間帯であることが、移動手摺13の加温動作を開始する条件となる。
【0040】
ついで、冷暖房装置コントローラ34は電磁バルブ33を開く(ステップ304)。その結果、冷暖房装置25より発生する暖気が、送風管30を通して案内レール10と案内レール12のそれぞれの通風穴18より隙間16と隙間17に送風され、移動手摺13を裏面より温める。
【0041】
そして、外気温の上昇等によって温度センサ21が8℃(停止温度)以上の温度を検出したことを冷暖房装置コントローラ34が認識する(ステップ305)と、冷暖房装置コントローラ34は、冷暖房装置25を停止し暖房運転を停止させ(ステップ306)、電磁バルブ33を閉じる(ステップ307)。その結果、移動手摺13の加温動作が終了する。
【0042】
なお、冷暖房コントローラ34は、温度センサ21が8℃(停止温度)以上の停止温度を検出しなくても、安全装置の動作等によって乗客コンベア1が停止し運転コントローラ5より送信される運転信号OFFを検出した場合と、頻繁利用時間帯を過ぎたことを冷暖房コントローラ34が認識した場合には、直ちに冷暖房装置25を停止させ加温動作を終了させる。
【0043】
このように、この実施の形態3によれば、移動手摺の裏面に暖気を送風することにより加熱するので、移動手摺の温度が低下する厳冬時期においても移動手摺の温度が5℃以下に低下することを抑制できる。そのため乗客が冷たさを感じることなく移動手摺を掴むことができるので安全性が向上する。
【0044】
また、乗客が頻繁に利用する時間帯に限定して移動手摺の加熱動作を実施するので省電力化が図られる。
【0045】
なお、この実施形態3においては、移動手摺裏面13の裏面に暖気を送風する加温動作ついて説明したが、これに加え、加温動作時に電磁バルブ31と電磁バルブ32を開き、冷暖房装置25から発生する暖気をエアノズル28とエアノズル29から移動手摺13の表面に吹き付けることにより、厳冬時期に移動手摺13の表面に付着する霜や露の乾燥除去を促すことが可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の実施の形態1に係る乗客コンベアの手摺温度調整装置を示す全体図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る乗客コンベアの移動手摺の往路の断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る乗客コンベアの移動手摺の復路の断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る乗客コンベアの移動手摺の往路の斜視図(一部断面図)である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る乗客コンベアの移動手摺の復路の斜視図(一部断面図)である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る乗客コンベアの移動手摺の送風管の詳細図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係る乗客コンベアの手摺温度調整装置における温度調整動作を説明するフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態2に係る乗客コンベアの手摺温度調整装置における温度調整動作を説明するフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態3に係る乗客コンベアの手摺温度調整装置における温度調整動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
5 運転コントローラ、 10 案内レール、12 案内レール、13 移動手摺、18 通風穴、20 擬似切片、21 温度センサ、22 噴霧装置、23 配水管、24 ノズル、25 冷暖房装置、26 送風管、27 送風管、28 エアノズル、29 エアノズル、30 送風管、31 電磁バルブ、32 電磁バルブ、33 電磁バルブ、34 冷暖房装置コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設置された乗客コンベアにおいて、移動手摺の裏面に所定範囲に渡って冷気を送風する冷却装置と、移動手摺と同じ材質で構成され移動手摺の周辺に同じ環境条件下で設置された擬似切片と、前記擬似切片に埋設された温度検出器と、前記温度検出器の検出した温度が所定温度に達すると前記冷却装置を作動させる制御手段とを備えたことを特徴とする乗客コンベアの手摺温度調整装置。
【請求項2】
移動手摺の表面に向かって水を噴霧する噴霧装置と、前記温度検出器の検出した温度が所定温度に達すると前記噴霧装置を運転させる制御手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの手摺温度調整装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記冷却装置及び前記噴霧装置が作動しているときに前記温度検出器の検出した温度が低下し第1の所定温度に達すると噴霧装置を停止させ、前記温度検出器の検出した温度が前記第1の所定温度より低い第2の所定温度に達すると前記冷却装置を停止させることを特徴とする請求項2に記載の乗客コンベアの手摺温度調整装置。
【請求項4】
前記冷却装置は、ヒートポンプから構成され冷房運転と暖房運転の切換ができる冷却装置であることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗客コンベアの手摺温度調整装置。
【請求項5】
前記制御手段は、設定した時間帯に応じて前記冷却装置と前記噴霧装置を作動させるタイマー機能が付加された制御手段であることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗客コンベアの手摺温度調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−347669(P2006−347669A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−174171(P2005−174171)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】