説明

乗客コンベアの移動手摺の劣化診断装置

【課題】移動手摺の表面の色調の変化による劣化診断を実現させることができる乗客コンベアの移動手摺の劣化診断装置の提供。
【解決手段】本発明は、パーソナルコンピュータ10が、第1カメラ2,3の撮影画像から得られる移動手摺1の表面の色調と、予め設定された新品の移動手摺の表面の色調との偏差を抽出し、この偏差が劣化を生じていると見做される値である予め設定される閾値を超えたときには、第1カメラ2,3で撮影された撮影画像における移動手摺1の位置を特定する演算を行い、移動手摺1の特定された位置が放射線装置8の設置位置に至ったときに、移動手摺1に放射線を透過させるように放射線装置8の駆動制御部12に駆動信号を出力するとともに、第2カメラ7で撮影された放射線透過画像の表示処理制御を行い、モニタ11に放射線透過画像を表示させるものから成っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータや移動手摺などの乗客コンベアに設けられる移動手摺の劣化診断に活用され、移動手摺の表面や内部を撮影するカメラを備えた乗客コンベアの移動手摺の劣化診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアの移動手摺とは診断対象物が異なるが、診断対象物の表面や内部を撮影するカメラを備え、このカメラの撮影画像に基づいて診断対象物の劣化診断を行う装置として従来、特許文献1,2に示されるものがある。
【0003】
特許文献1に示される従来技術は、診断対象物の表面を接触式センサで走査し、診断対象物の表面の立体的な欠陥を検出するトランスジューサを備えるとともに、診断対象物の内部欠陥を検出するCCDカメラ等を備えた欠陥状態検査システムである。
【0004】
また、特許文献2に示される従来技術は、2台のCCDカメラを備え、診断対象物の摺動面をCCDカメラで撮影し、三次元座標値より表面の凹凸を判定するプレートれんが交換判定装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−300713号公報
【特許文献2】特開2010−82689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
乗客コンベアの移動手摺は、表面の色調が新品のときに比べて変化している場合には、色調の変化の度合いとその色調が変化している位置における裏面側や移動手摺の内部での劣化の進行とに密接した相関関係があることが最近の研究でわかってきた。ところが前述した特許文献1,2に示される従来技術は、表面の凹凸の検出や損傷深さの計測が可能であるものの、表面の色調の変化による診断対象物の劣化診断については考慮がなされていなかった。
【0007】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、移動手摺の表面の色調の変化による劣化診断を実現させることができる乗客コンベアの移動手摺の劣化診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明に係る乗客コンベアの移動手摺の劣化診断装置は、乗客コンベアの運転によって移動状態にある移動手摺の表面を撮影する第1カメラと、この第1カメラで撮影された撮影画像が取り込まれる画像取り込み部と、この画像取り込み部に取り込まれた撮影画像を信号処理する制御手段とを備え、前記第1カメラの撮影画像に基づいて、前記制御手段が、移動手摺の劣化を診断する乗客コンベアの移動手摺の劣化診断装置において、前記画像取り込み部に接続され、前記移動手摺の放射線透過画像を撮影する第2カメラを有する放射線装置と、前記制御手段に接続され、前記放射線装置を駆動させる駆動制御部とを備え、前記制御手段は、前記第1カメラの撮影画像から得られる前記移動手摺の表面の色調と、予め設定された新品の移動手摺の表面の色調との偏差を抽出し、この抽出された偏差が劣化を生じていると見做される値である予め設定される閾値を超えたときに、前記第1カメラで撮影された撮影画像における前記移動手摺の位置を特定する演算を行い、前記移動手摺の特定された位置が前記放射線装置の設置位置に至ったときに、前記移動手摺に放射線を透過させるように前記放射線装置の前記駆動制御部に駆動信号を出力するとともに、前記第2カメラで撮影された放射線透過画像の表示処理制御を行うものから成ることを特徴としている。
【0009】
このように構成した本発明は、移動手摺の劣化診断に際し、乗客コンベアを運転して移動手摺を移動させた状態で、第1カメラによって移動手摺の表面を撮影する。撮影画像は画像取り込み部に取り込まれ、さらに画像取り込み部から制御手段に送信される。制御手段は、第1カメラの撮影画像から得られる移動手摺の表面の色調と、予め設定された新品の移動手摺の表面の色調との偏差を抽出する。この抽出された偏差が予め設定される閾値を超えたときに、第1カメラで撮影された撮影画像における移動手摺の位置を特定する演算を行う。この演算に際しては、例えば無端状を形成する移動手摺の継ぎ目部分を基準位置として、この基準位置からの距離を求めることにより、劣化している移動手摺の位置を特定する。
【0010】
前述の状態において、移動状態にある移動手摺の特定された位置が放射線装置の設置位置に至ったときに、制御手段は、移動手摺に放射線を透過させるように放射線装置の駆動制御部に駆動信号を出力する。これにより、劣化を生じていると見做される移動手摺の位置において放射線装置から移動手摺に対して放射線が放射され、移動手摺の放射線透過画像が第2カメラで撮影される。この第2カメラの放射線透過画像は、画像取り込み部を介して制御手段に送信され、この制御手段によって放射線透過画像の表示処理制御がなされる。これにより、移動手摺の劣化位置の放射線透過画像を把握でき、移動手摺の劣化診断を正確に行うことができる。すなわち本発明は、移動手摺の表面の色調の変化による劣化診断を実現させることができる。
【0011】
また本発明は、前記発明において、前記制御手段は、前記画像取り込み部に取り込まれた前記第1カメラによる前記移動手摺の3D画像を合成する3D画像合成手段を含むことを特徴としている。
【0012】
また本発明は、前記発明において、前記制御手段は、前記3D画像合成手段で合成された3D画像に基づいて、前記移動手摺の表面の最凹部を抽出する最凹部抽出手段を含み、前記最凹部抽出手段で抽出された最凹部の削れ量が劣化を生じていると見做される値である予め設定される閾値以上のときに、前記移動手摺に放射線を透過させるように前記放射線装置の前記駆動制御部に駆動信号を出力する処理制御を行うことを特徴としている。
【0013】
また本発明は、前記発明において、前記制御手段は、前記最凹部抽出手段で抽出された最凹部の削れ量が前記予め設定される閾値よりも小さいときに、前記最凹部の色調と、予め設定された新品の移動手摺の表面の色調との偏差である最凹部色調偏差を抽出し、この最凹部色調偏差が劣化を生じていると見做される値である予め設定される閾値を超えたときに、前記移動手摺に放射線を透過させるように前記放射線装置の前記駆動制御部に駆動信号を出力する処理制御を行うことを特徴としている。
【0014】
また本発明は、前記発明において、前記制御手段は、前記最凹部色調偏差が前記予め設定された閾値以下のときに、前記移動手摺の表面の最凸部を抽出する最凸部抽出手段を含み、前記最凸部抽出手段で抽出された最凸部の膨れ量が劣化を生じていると見做される値である予め設定される閾値を超えたときに、前記移動手摺に放射線を透過させるように前記放射線装置の前記駆動制御部に駆動信号を出力する処理制御を行うことを特徴としている。
【0015】
また本発明は、前記発明において、前記制御手段は、前記最凸部抽出手段で抽出された最凸部の膨れ量が前記予め設定される閾値よりも小さいときに、前記最凸部の色調と、予め設定された新品の移動手摺の表面の色調との偏差である最凸部色調偏差を抽出し、この最凸部色調偏差が劣化を生じていると見做される値である予め設定される閾値を超えたときに、前記移動手摺に放射線を透過させるように前記放射線装置の前記駆動制御部に駆動信号を出力する処理制御を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、移動手摺の表面を撮影する第1カメラと、この第1カメラで撮影された撮影画像が取り込まれる画像取り込み部と、この画像取り込み部に取り込まれた撮影画像を信号処理する制御手段を備えるとともに、画像取り込み部に接続され、移動手摺の放射線画像を撮影する第2カメラを有する放射線装置と、制御手段に接続され、放射線装置を駆動させる駆動制御部とを備えた構成にしてある。さらに本発明は、制御手段が、第1カメラの撮影画像から得られる移動手摺の表面の色調と、予め設定された新品の移動手摺の表面の色調との偏差を抽出し、この抽出された偏差が劣化を生じていると見做される値である予め設定される閾値を超えたときに、第1カメラで撮影された撮影画像における移動手摺の位置を特定する演算を行い、移動手摺の特定された位置が放射線装置の設置位置に至ったときに、移動手摺に放射線を透過させるように放射線装置の駆動制御部に駆動信号を出力するとともに、第2カメラで撮影された放射線透過画像の表示処理制御を行うものから成る構成にしてある。この構成に伴って本発明は、移動手摺の表面の色調の変化による劣化診断を実現させることができる。これにより本発明は、移動手摺の劣化診断を従来に比べて高い精度で行うことができ、移動手摺の点検及び交換を適切な時期に実施させることができ、信頼性の高い乗客コンベアの移動手摺の劣化診断装置を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る乗客コンベアの移動手摺の劣化診断装置の構成を示す図である。
【図2】本実施形態に備えられるパーソナルコンピュータで実施される処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る乗客コンベアの移動手摺の劣化診断装置の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0019】
本実施形態は、図1に示すように、乗客コンベアの運転によって移動状態にある移動手摺1の表面を撮影する複数の第1カメラ2,3と、これらの第1カメラ2,3で撮影された撮影画像が取り込まれる画像取り込み部9と、この画像取り込み部9に取り込まれた撮影画像を信号処理する制御手段、例えばパーソナルコンピュータ10を備えている。パーソナルコンピュータ10には、このパーソナルコンピュータ10で実施される表示処理制御に応じて画像表示するモニタ11を接続してある。
【0020】
また本実施形態は、画像取り込み部9に接続され、移動手摺1の放射線透過画像を投影する第2カメラ7を有する放射線装置8と、パーソナルコンピュータ10に接続され、放射線装置8を駆動させる駆動制御部12を備えている。
【0021】
放射線装置8は、移動手摺1の裏面側に配置され、放射線例えばX線を放射する放射線発生器4と、移動手摺1の表面側に配置され、移動手摺1を透過した放射線発生器4による放射線が照射される蛍光板(シンチレーター)5と、この蛍光板5の放射線透過画像を反射させる反射鏡6とを備えており、反射鏡6で反射された放射線透過画像が第2カメラ7で撮影される。放射線装置8の全体は、遮蔽部8aによって覆われており、この遮蔽部8aによって放射線、すなわちX線の外部への漏出を防止している。
【0022】
パーソナルコンピュータ10は、基本的に、第1カメラ2,3の撮影画像から得られる移動手摺1の表面の色調と、予め設定された新品の移動手摺1の表面の色調との偏差を抽出し、この抽出した偏差が劣化を生じていると見做される値である予め設定される閾値を超えたときに、第1カメラ2,3で撮影された投影画像における移動手摺1の位置を特定する演算を行い、移動手摺1の特定された位置が放射線装置8の設置位置に至ったときに、移動手摺1に放射線を透過させるように放射線装置8の駆動制御部12に駆動信号を出力するとともに、第2カメラ7で撮影された放射線透過画像の表示処理制御を行うものから成っている。このパーソナルコンピュータ10は、画像取り込み部9に取り込まれた第1カメラ2,3による移動手摺1の3D画像を合成する3D画像合成手段を含んでいる。
【0023】
またパーソナルコンピュータ10は、3D画像合成手段で合成された3D画像に基づいて、移動手摺1の表面の最凹部を抽出する最凹部抽出手段を含んでおり、最凹部抽出手段で抽出された最凹部の削れ量が劣化していると見做される値である予め設定される閾値以上のときに、移動手摺1に放射線を透過させるように放射線装置8の駆動制御部12に駆動信号を出力する処理制御を行う。
【0024】
またパーソナルコンピュータ10は、前述した最凹部抽出手段で抽出された最凹部の削れ量が前述の予め設定される閾値よりも小さいときに、最凹部の色調と、予め設定された新品の移動手摺の表面の色調との偏差である最凹部色調偏差を抽出し、この最凹部色調偏差が劣化を生じていると見做される値である予め設定される閾値を超えたときに、移動手摺1に放射線を透過させるように放射線装置8の駆動制御部12に駆動信号を出力する処理制御を行う。
【0025】
またパーソナルコンピュータ10は、最凹部色調偏差が前述の予め設定された閾値以下のときに、移動手摺1の表面の最凸部を抽出する最凸部抽出手段を含み、最凸部抽出手段で抽出された最凸部の膨れ量が劣化を生じていると見做される値である予め設定される閾値を超えたときに、移動手摺1に放射線を透過させるように放射線装置8の駆動制御部12に駆動信号を出力する処理制御を行う。
【0026】
またパーソナルコンピュータ10は、最凸部抽出手段で抽出された最凸部の膨れ量が前述の予め設定される閾値よりも小さいときに、最凸部の色調と、予め設定された新品の移動手摺の表面の色調との偏差である最凸部色調偏差を抽出し、この最凸部色調偏差が劣化を生じていると見做される値である予め設定される閾値を超えたときに、移動手摺1に放射線を透過させるように放射線装置8の駆動制御部12に駆動信号を出力する処理制御を行う。
【0027】
このように構成された本実施形態の特徴とする処理制御は、以下のとおりである。
【0028】
すなわち、移動手摺1の劣化診断に際し、乗客コンベアを運転して移動手摺1を移動させた状態で、第1カメラ2,3によって移動手摺1の表面を撮影する。撮影画像は画像取り込み部9に取り込まれ、さらに画像取り込み部9からパーソナルコンピュータ10に送信される。パーソナルコンピュータ10は、主に、第1カメラ2,3の撮影画像から得られる移動手摺1の表面の色調と、予め設定された新品の移動手摺の表面の色調との偏差を抽出する。この抽出した偏差が劣化を生じていると見做される値である予め設定される閾値を超えたときに、そのとき第1カメラ2,3で撮影された撮影画像における移動手摺1の位置を特定する演算を行う。この演算に際しては、例えば無端状を形成する移動手摺1の継ぎ目部分を基準位置として、この基準位置からの距離を求めることにより、劣化している移動手摺1の位置を特定する。
【0029】
前述の状態において、移動状態にある移動手摺1の特定された位置が放射線装置8の設置位置に至ったときに、パーソナルコンピュータ10は、移動手摺1に放射線を透過させるように放射線装置8の駆動制御部12に駆動信号を出力する。これにより、劣化を生じていると見做される移動手摺1の特定された位置において、放射線装置8から移動手摺1に対して放射線、すなわちX線が放射され、移動手摺1の放射線透過画像が第2カメラ7で撮影される。この第2カメラ7の放射線透過画像は、画像取り込み部9を介してパーソナルコンピュータ10に送信され、このパーソナルコンピュータ10によって放射線透過画像の表示処理がなされ、モニタ11に放射線透過画像が表示される。
【0030】
本実施形態の特徴とする処理制御は以上のとおりであるが、以下にパーソナルコンピュータ10で実施される各種の処理を含めた制御の詳細について、図2を参照して説明する。
【0031】
パーソナルコンピュータ10は、第1カメラ2,3から画像取り込み部9を介して送信された撮影画像に基づき、3D画像合成手段によって第1カメラ2,3のそれぞれの動画フレームを積算して合成し、移動手摺1の3D画像を合成する(手順S1)。
【0032】
次に、パーソナルコンピュータ10は、最凹部抽出手段によって、前述の3D画像の中で最凹部がどこであるかを1断面ずつ比較して抽出する処理を行う(手順S2)。
【0033】
次に、パーソナルコンピュータ10は、抽出された最凹部が全断面の平均座標からどれくらい削れているか、すなわち削れ量を算出し、その削れ量が、劣化を生じていると見做される値である予め設定される閾値以上かどうか判定する(手順S3)。
【0034】
この判定で、削れ量が閾値以上と判定されたときには、例えば移動手摺1の継ぎ目部分からの最凹部の距離を求めることによって最凹部の位置を特定する(手順S10)。次に、この特定した最凹部の位置に、劣化フラグを立てる(手順S11)。
【0035】
移動手摺1の移動に伴って、劣化フラグの位置が放射線装置8の設置位置に至ったとき、パーソナルコンピュータ10は、駆動制御部12に駆動信号を出力し、放射線装置8の放射線発生器4から放射線、すなわちX線を移動手摺1に放射させる。移動手摺1を透過した放射線は蛍光板5、反射鏡6を介して、第2カメラ7によって放射線透過画像として撮影される。この放射線透過画像は、画像取り込み部9を介してパーソナルコンピュータ10に送信され、このパーソナルコンピュータ10で表示処理制御がなされ、モニタ11に放射線透過画像が表示される(手順S12)。
【0036】
手順S3の判定で、パーソナルコンピュータ10の最凹部抽出手段で抽出された最凹部の削れ量が予め設定される閾値よりも小さいときには、パーソナルコンピュータ10は、最凹部の色調と、予め設定される新品の移動手摺1の表面の色調との偏差である最凹部色調偏差を抽出する(手順S4)。
【0037】
次に、パーソナルコンピュータ10は、抽出された最凹部色調偏差が、劣化を生じていると見做される値である予め設定される閾値以下であるかどうか判定する(手順S5)。
【0038】
この判定で、閾値を超えていると判定されたときには、前述した手順S10、S11、S12の処理が実施され、モニタ11に放射線透過画像が表示される。
【0039】
また、手順S5の判定で、最凹部色調偏差が閾値以下と判定されたときには、パーソナルコンピュータ10は、最凸部抽出手段によって、前述の3D画像の中で最凸部がどこであるかを1断面ずつ比較して抽出する処理を行う(手順S6)。
【0040】
次に、パーソナルコンピュータ10は、抽出された最凸部が全断面の平均座標からどれくらい膨らんでいるか、すなわち膨れ量を算出し、その膨れ量が、劣化を生じていると見做される値である予め設定される閾値以上かどうか判定する(手順S7)。
【0041】
この判定で閾値以上と判定されたときには、最凸部の位置を特定し(手順S10)、前述の手順S11、S12の処理がなされ、モニタ11に放射線透過画像が表示される。
【0042】
また、手順S7の判定で、最凸部の膨れ量が閾値よりも小さいと判定されたときには、パーソナルコンピュータ10は、最凸部の色調と、予め設定される新品の移動手摺の表面の色調との偏差である最凸部色調偏差を抽出する(手順S8)。
【0043】
次に、パーソナルコンピュータ10は、抽出された最凸部色調偏差が、劣化を生じていると見做される値である予め設定される閾値以下かどうか判定する(手順S9)。
【0044】
この判定で、閾値を超えていると判定されたときには、前述した手順S10、S11、S12の処理がなされ、モニタ11に放射線透過画像が表示される。
【0045】
また、手順S9の判定で、最凸部色調偏差が閾値以下と判定されたときには、移動手摺1に劣化を生じていないと診断され、この移動手摺1の劣化診断は終了する。
【0046】
以上の構成によって移動手摺1の劣化診断を行う本実施形態によれば、移動手摺1の削れ量に基づくこの移動手摺1の劣化診断と、移動手摺1の膨れ量に基づくこの移動手摺1の劣化診断の他に、移動手摺1の表面の色調の変化による劣化診断を実施させることができる。これにより本実施形態は、移動手摺1の劣化診断を高い精度で行うことができ、移動手摺1の点検及び交換を適切な時期に実施させることができ、信頼性の高い乗客コンベアの移動手摺の劣化診断装置を提供することができる。
【0047】
また、移動手摺1の表面の色調の変化により、X線による劣化診断を絞って行うことができるので、X線を扱う作業者の安全性を向上させることができるとともにランニングコストも下げられる上、X線画像により劣化診断を行う場所が特定されていることから、X線画像を移動手摺すべてで撮影し、膨大な量のX線画像から劣化位置を特定して劣化診断を行う手順よりもより精度を高めた判断を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1 移動手摺
2 第1カメラ
3 第1カメラ
4 放射線発生器
5 蛍光板
6 反射鏡
7 第2カメラ
8 放射線装置
8a 遮蔽部
9 画像取り込み部
10 パーソナルコンピュータ(制御手段)
11 モニタ
12 駆動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの運転によって移動状態にある移動手摺の表面を撮影する第1カメラと、この第1カメラで撮影された撮影画像が取り込まれる画像取り込み部と、この画像取り込み部に取り込まれた撮影画像を信号処理する制御手段とを備え、前記第1カメラの撮影画像に基づいて、前記制御手段が、移動手摺の劣化を診断する乗客コンベアの移動手摺の劣化診断装置において、
前記画像取り込み部に接続され、前記移動手摺の放射線透過画像を撮影する第2カメラを有する放射線装置と、
前記制御手段に接続され、前記放射線装置を駆動させる駆動制御部とを備え、
前記制御手段は、
前記第1カメラの撮影画像から得られる前記移動手摺の表面の色調と、予め設定された新品の移動手摺の表面の色調との偏差を抽出し、この抽出された偏差が劣化を生じていると見做される値である予め設定される閾値を超えたときに、前記第1カメラで撮影された撮影画像における前記移動手摺の位置を特定する演算を行い、前記移動手摺の特定された位置が前記放射線装置の設置位置に至ったときに、前記移動手摺に放射線を透過させるように前記放射線装置の前記駆動制御部に駆動信号を出力するとともに、前記第2カメラで撮影された放射線透過画像の表示処理制御を行うものから成ることを特徴とする乗客コンベアの移動手摺の劣化診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乗客コンベアの移動手摺の劣化診断装置において、
前記制御手段は、前記画像取り込み部に取り込まれた前記第1カメラによる前記移動手摺の3D画像を合成する3D画像合成手段を含むことを特徴とする乗客コンベアの移動手摺の劣化診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の乗客コンベアの移動手摺の劣化診断装置において、
前記制御手段は、前記3D画像合成手段で合成された3D画像に基づいて、前記移動手摺の表面の最凹部を抽出する最凹部抽出手段を含み、前記最凹部抽出手段で抽出された最凹部の削れ量が劣化を生じていると見做される値である予め設定される閾値以上のときに、前記移動手摺に放射線を透過させるように前記放射線装置の前記駆動制御部に駆動信号を出力する処理制御を行うことを特徴とする乗客コンベアの移動手摺の劣化診断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の乗客コンベアの移動手摺の劣化診断装置において、
前記制御手段は、前記最凹部抽出手段で抽出された最凹部の削れ量が前記予め設定される閾値よりも小さいときに、前記最凹部の色調と、予め設定された新品の移動手摺の表面の色調との偏差である最凹部色調偏差を抽出し、この最凹部色調偏差が劣化を生じていると見做される値である予め設定される閾値を超えたときに、前記移動手摺に放射線を透過させるように前記放射線装置の前記駆動制御部に駆動信号を出力する処理制御を行うことを特徴とする乗客コンベアの移動手摺の劣化診断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の乗客コンベアの移動手摺の劣化診断装置において、
前記制御手段は、前記最凹部色調偏差が前記予め設定された閾値以下のときに、前記移動手摺の表面の最凸部を抽出する最凸部抽出手段を含み、前記最凸部抽出手段で抽出された最凸部の膨れ量が劣化を生じていると見做される値である予め設定される閾値を超えたときに、前記移動手摺に放射線を透過させるように前記放射線装置の前記駆動制御部に駆動信号を出力する処理制御を行うことを特徴とする乗客コンベアの移動手摺の劣化診断装置。
【請求項6】
請求項5に記載の乗客コンベアの移動手摺の劣化診断装置において、
前記制御手段は、前記最凸部抽出手段で抽出された最凸部の膨れ量が前記予め設定される閾値よりも小さいときに、前記最凸部の色調と、予め設定された新品の移動手摺の表面の色調との偏差である最凸部色調偏差を抽出し、この最凸部色調偏差が劣化を生じていると見做される値である予め設定される閾値を超えたときに、前記移動手摺に放射線を透過させるように前記放射線装置の前記駆動制御部に駆動信号を出力する処理制御を行うことを特徴とする乗客コンベアの移動手摺の劣化診断装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−49560(P2013−49560A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189379(P2011−189379)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】