説明

乗客コンベア監視装置及び遠隔監視システム

【課題】比較的簡素な構成で乗客コンベア稼動音を効率よく集音し、集音した乗客コンベア稼動音を音質劣化などを生じさせることなく、遠隔地の監視センタなどに適切に送信できるようにする。
【解決手段】無端状に連結された多数のステップ1の少なくとも1つに移動集音装置10を設置し、この動集音装置10によりエスカレータの全行程に亘ってエスカレータ稼動音を集音して、その音信号を無線受信装置20を介して制御装置40に入力する。制御装置40の監視データファイル生成部41は、位置検知装置30からの位置検知信号を基準に1周分のエスカレータ稼動音の音信号を監視用音声データとして蓄積し、この1周分の監視用音声データを、エスカレータの運行データと関連付けてファイル化して、監視データファイルを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアを監視する乗客コンベア監視装置及び遠隔監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアは、チェーンにより無端状に連結された多数のステップを、トラス内部に配設されたガイドレールに沿ってモータ駆動により循環移動させることで、ステップに搭乗した乗客を一方の乗降口から他方の乗降口へと搬送する構造である。このような構造の乗客コンベアでは、長期に亘る稼動による用品の磨耗や据え付け調整状態の経年劣化、或いは異物の混入や乗客によるいたずらなどに起因して、例えば可動部分のこすれや乗り上げなどといった異常が発生することがあり、このような異常は、音として現われることが多々ある。
【0003】
例えば、モータの回転力をチェーンに伝達してステップを駆動するための駆動スプロケットの軸や従動スプロケットの軸、各ステップに取り付けられているローラ部分には、通常、機構的に寿命のあるベアリングを使用しているが、これらのベアリングに破損が生じれば異音が発生する。また、各ステップに設けられているコロ(ローラ)に磨耗が生じれば異音が発生する。また、ステップの移動をガイドするガイドレールに経年劣化によるボルトの弛みが生じたり、異物が挟まったりした場合には、ステップが通過するたびに異音が発生する。また、ステップの踏面外周に装着されたデマケーションコムの取り付け状態が不良でステップ両側のスカートガードパネルなどと干渉すると異音が発生する。また、多数のステップを連結しているチェーンに経年劣化により伸びが生じると異音が発生する。その他、様々な要因により乗客コンベアに何らかの異常が発生していると、その異常は、乗客コンベア稼動時に異音として現われることが多い。
【0004】
乗客コンベアから異音が発生しているという客先からの連絡を受けて保守員が対応する場合、通常、保守員が現場に赴いて実際に乗客コンベアを稼動させながら異音を確認し、その異音がどの部分で発生しているかを特定して、異音の発生要因となっている部品の交換や調整作業などを行うようにしている。このため、乗客コンベアのサービスを停止させる時間が長くなり、利用者に多大な迷惑をかけてしまうことが多い。また、保守員が現場で異音の発生要因を特定する際にも、現場に赴いた保守員の熟練度によってその正確性や迅速性において差が生じることも多く、保守員の熟練度によってはさらに長時間のサービス停止を余儀なくされる場合もあった。
【0005】
このような背景のもと、例えば特許文献1では、トラス内部に複数のマイクを配置し、これらのマイクで集音した乗客コンベア稼動音を音信号として記憶装置に記憶させておき、遠隔地にある監視センタから乗客コンベア稼動音の再生要求があると、記憶装置から音信号を出力して電話回線経由で監視センタに送信し、監視センタに設けられたスピーカから乗客コンベア稼動音を出力させるようにすることが提案されている。この特許文献1にて開示される技術を利用すれば、遠隔地の監視センタで異音を確認して対策を検討することができ、現場での作業性の向上を図ることができると考えられる。
【特許文献1】特開平11−335056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1にて開示される技術では、マイクで集音した乗客コンベア稼動音を音信号として電話回線経由で遠隔地にある監視センタに送信するようにしているため、電話回線の通信状態に応じて音信号の音質劣化が生じたり、異音の診断に必要とされる周波数成分が電話回線フィルタにより遮断されたりする場合もあり、特に遠隔地の監視センタで乗客コンベア稼動音の解析を行う場合には不都合があった。
【0007】
本発明は、以上のような従来技術の問題点を解決すべく創案されたものであって、比較的簡素な構成で乗客コンベア稼動音を効率よく集音し、集音した乗客コンベア稼動音を音質劣化などを生じさせることなく、遠隔地の監視センタなどに適切に送信することが可能な乗客コンベアの監視装置及び遠隔監視システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る乗客コンベアの監視装置は、ガイドレールに沿って循環移動する多数のステップのうちの少なくとも1つに設置され、当該ステップと共に循環移動して乗客コンベア稼動音を集音し、集音した乗客コンベア稼動音を無線信号として発信する移動集音手段と、ステップの外部に設置され、移動集音手段から発信された無線信号を受信して音信号として出力する無線受信手段と、多数のステップの移動経路における所定の基準位置に設置され、移動集音手段が設置されたステップが基準位置を通過するタイミングで位置検知信号を出力する位置検知手段と、無線受信手段から出力された音信号と、位置検知手段から出力された位置検知信号とが入力される制御手段とを備える。そして、制御手段が、位置検知手段から位置検知信号が出力されたタイミングを基準として無線受信手段から出力された音信号を入力し、当該音信号を乗客コンベア監視用音声データに変換し、当該乗客コンベア監視用音声データを、音信号を入力している間の乗客コンベアの運行状態を示す運行データと関連付けてファイル化して監視データファイルを生成する監視データファイル生成部を有する構成とされる。
【0009】
また、本発明に係る乗客コンベア監視システムは、ガイドレールに沿って循環移動する多数のステップのうちの少なくとも1つに設置され、当該ステップと共に循環移動して乗客コンベア稼動音を集音し、集音した乗客コンベア稼動音を無線信号として発信する移動集音装置と、ステップの外部に設置され、移動集音装置から発信された無線信号を受信して音信号として出力する無線受信装置と、多数のステップの移動経路における所定の基準位置に設置され、移動集音装置が設置されたステップが基準位置を通過するタイミングで位置検知信号を出力する位置検知装置と、位置検知装置から位置検知信号が出力されたタイミングを基準として無線受信装置から出力された音信号を入力し、当該音信号を乗客コンベア監視用音声データに変換し、当該乗客コンベア監視用音声データを、音信号を入力している間の乗客コンベアの運行状態を示す運行データと関連付けてファイル化して監視データファイルを生成し、生成した監視データファイルをデータ通信回線経由で送信する制御装置と、監視対象の乗客コンベアから離れた遠隔地に設置され、制御装置からデータ通信回線経由で送信された監視データファイルを受信して、当該監視データファイルに基づく処理を行う遠隔監視装置とを備えて構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡素な構成で乗客コンベア稼動音を効率よく集音し、集音した乗客コンベア稼動音を音質劣化などを生じさせることなく、遠隔地の監視センタなどに適切に送ることができ、異音発生を伴う乗客コンベアの異常を遠隔地において適切に検証して迅速な対応を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の各実施形態では、多数のステップが上下階に亘って斜めに移動するエスカレータを監視対象とする場合を例示するが、勿論、本発明は、多数のステップが連続して水平方向に移動する動く歩道を監視対象とする場合にも有効に適用可能である。
【0012】
(第1実施形態)
図1は本発明を適用したエスカレータ監視装置の全体構成を概略的に示す模式図であり、図2は当該エスカレータ監視装置を構成する各構成要素の機能的な繋がりを示すブロック図である。
【0013】
監視対象となるエスカレータは、図1に示すように、例えば建物の上階と下階との間に傾斜して設置され、隙間なく連結された多数のステップ1を上階側の乗降口と下階側の乗降口との間で循環移動させることで、ステップ1上に搭乗した乗客を搬送するものである。多数のステップ1は、無端状のチェーン2によって連結されており、建物の床下に設置されたトラス3内に配置されている。トラス3の内部には、上階側及び下階側のそれぞれにスプロケット4a,4bが配置されており、これら上階側のスプロケット4aと下階側のスプロケット4bとの間にチェーン2が巻き掛けられている。上階側のスプロケット4aと下階側のスプロケット4bの何れか一方(図1に示す例では上階側のスプロケット4a)は、モータや減速機などを有する駆動装置5に連結されている。そして、駆動装置5の駆動によりこのスプロケット4a(またはスプロケット4b)が回転し、スプロケット4a(またはスプロケット4b)に噛み合うチェーン2に駆動力が伝達されることで、チェーン2によって連結された多数のステップ1が、図示しないガイドレールに沿って上階側の乗降口と下階側の乗降口との間を循環移動する構造となっている。
【0014】
トラス3の上部には、ステップ1の左右両側面と対向するように一対のスカートガード6がステップ1の移動方向に沿って設置されており、このスカートガード6上にそれぞれ欄干7が立設されている。また、欄干7の周囲にはベルト状のハンドレール8が装着されている。ハンドレール8は、ステップ1上に搭乗している乗客が把持する手摺であり、例えば上述した駆動装置5の駆動力が伝達されることで、ステップ1の移動と同期して欄干7の周囲を周回する。
【0015】
本実施形態のエスカレータ監視装置は、図1及び図2に示すように、監視対象のエスカレータにおける多数のステップ1のうちの少なくとも1つに設置された移動集音装置10と、監視対象のエスカレータ設置現場におけるステップ1外部の任意の場所に設置された無線受信装置20と、多数のステップ1の移動経路における所定の基準位置に設置された位置検知装置30と、無線受信装置20及び位置検知装置30に接続された制御装置40とを備えて構成される。
【0016】
移動集音装置10は、監視対象のエスカレータが稼動している際にステップ1と共に循環移動しながらエスカレータ稼動音を集音するものである。この移動集音装置10は、例えば図2に示すように、音を音声信号に変換して出力する集音部11と、集音部11が出力した音声信号を無線信号に変換して発信する無線送信部12と、集音部11及び無線送信部12に対して電源を供給する電源供給部13とを有している。このような構成の移動集音装置10では、エスカレータの稼動時に電源供給部13から集音部11と無線送信部12とに電源が供給されると、エスカレータの稼動に伴い発生する稼動音が集音部11によって音信号に変換され、この音信号が無線送信部12によって無線信号に変換されて発信される。ここで、移動集音装置10はステップ1と共に循環移動しているので、ステップ1の移動経路における各地点で集音されたエスカレータ稼動音が、無線信号として発信される。つまり、この移動集音装置10によってステップ1の移動経路の全行程に亘るエスカレータ稼動音が集音され、無線信号として発信される。この移動集音装置10から発信された無線信号は、無線受信装置20によって受信される。なお、図1では移動集音装置10が1つのステップ1のみに設置された様子を図示しているが、移動集音装置10は2以上のステップ1に設置されていてもよい。
【0017】
無線受信装置20は、移動集音装置10によって集音され無線信号として発信されたエスカレータ稼動音を受信して音信号に復元し、出力するものである。この無線受信装置20は信号伝送ケーブルにより制御装置40に接続されており、無線受信装置20から出力された音信号は、制御装置40に入力される。
【0018】
位置検知装置30は、多数のステップ1の移動経路における所定の基準位置(図1に示す例では、上階側の水平部)に設置され、移動集音装置10が設置されたステップ1がこの基準位置を通過するタイミングで位置検知信号を出力するものである。この位置検知装置30は、例えば、移動集音装置10が設置されたステップ1に取り付けられた金属板などの当該ステップ1を識別するための部材に対して感応する近接センサ、或いは光電センサ等を用いて構成され、これらのセンサで金属板などの識別部材の通過を検知したタイミング、すなわち移動集音装置10が設置されたステップ1が所定の基準位置を通過したタイミングで、位置検知信号を出力する。この位置検知装置30は信号伝送ケーブルにより制御装置40に接続されており、位置検知装置30から出力された位置検知信号は、制御装置40に入力される。
【0019】
制御装置40は、監視対象のエスカレータの異常を検出及び検証するための各種の処理を実行するものであり、特に本実施形態のエスカレータ監視装置における特徴事項として、この制御装置40に、エスカレータ稼動音の音声データをファイル化する監視データファイル生成部41が設けられている。なお、この制御装置40は、監視対象のエスカレータの運行を制御するための制御装置における一機能として実現されていていもよいし、個別の制御装置として実現されていてもよい。
【0020】
制御装置40には、上述したように、無線受信装置20から出力されたエスカレータ稼動音の音信号と、位置検知装置30から出力された位置検知信号が入力される。制御装置40の監視データファイル生成部41は、位置検知装置30から位置検知信号が出力されたタイミングを基準として無線受信装置20から出力された音信号を入力し、当該音信号を監視用音声データに変換するとともに、当該監視用音声データを、無線受信装置20からの音信号を入力している間のエスカレータの運行状態を示す運行データと関連付けてファイル化して監視データファイルを生成する。
【0021】
図3は、制御装置40の監視データファイル生成部41が監視データファイルを生成する動作の一例を説明する図である。
【0022】
監視データファイル生成部41は、位置検知装置30からの位置検知信号が入力されると、無線受信装置20からの音信号、すなわちステップ1とともに循環移動している移動集音装置10で集音されたエスカレータ稼動音の音信号の入力を開始し、入力した音信号を監視用音声データに変換しながら、当該監視用音声データを一時保管メモリに随時書き込んでいく。位置検知装置30は、移動集音装置10が設置されたステップ1が基準位置を通過するたびに位置検知信号を出力するので、移動集音装置10が設置されたステップ1が1周して、1周分の監視用音声データが一時保管メモリに蓄積された時点で、位置検知装置30から新たに位置検知信号が出力される。監視データファイル生成部41は、位置検知装置30から新たに出力された位置検知信号が入力されると、監視用音声データの蓄積を終了する。これにより、一時保管メモリには、移動集音装置10が設けられたステップ1が基準位置を通過してから当該基準位置に戻るまでの1周分の監視用音声データが蓄積された状態となる。
【0023】
監視データファイル生成部41は、一時保管メモリに1周分の監視用音声データが蓄積されると、この監視用音声データの識別ができるように、エスカレータの管理番号、JOBの名称、号機番号と、監視用音声データの元となる音信号を入力していたときのエスカレータの運行状況を示す運行データ、具体的には、エスカレータが上昇運転しているのか下降運転しているのか、速度の切り替えがある場合は高速、中速、低速などの速度信号といった情報を合わせてファイル化し、監視データファイルを生成する。なお、これらの運行データは、例えばエスカレータの運行制御を行う制御装置からのエスカレータ運転信号を入力することで取得できる。
【0024】
以上のように、本実施形態のエスカレータ監視装置においては、ステップ1に設置された移動集音装置10によりエスカレータの全行程に亘ってエスカレータ稼動音が集音され、その音信号が無線受信装置20を介して制御装置40に入力される。そして、制御装置40の監視データファイル生成部41が、位置検知装置30からの位置検知信号を基準に1周分のエスカレータ稼動音の音信号を監視用音声データとして蓄積し、この1周分の監視用音声データを、エスカレータの運行データと関連付けてファイル化して、監視データファイルを生成するようにしている。したがって、このエスカレータ監視装置によれば、監視対象のエスカレータの稼動音を、データの劣化が生じにくく且つ解析し易い形式とすることができ、例えば遠隔地の監視センタなどでエスカレータ稼動音の解析を行う場合においても、エスカレータ稼動音を監視センタに適切に送付することができるので、異音発生を伴うエスカレータの異常の検出及び検証を遠隔地にて適切に行うことが可能となる。また、エスカレータ設置現場で異常の検出及び検証を行う場合でも、エスカレータ稼動音を解析し易い監視データファイルとして取得することができるので、異常の検出及び検証の作業を簡便に行うことが可能となる。
【0025】
また、このエスカレータ監視装置は、ステップ1とともに循環移動する移動集音装置10によりエスカレータの全行程に亘る稼動音が集音される構成であるので、複数の集音装置(マイク)を分散して配置してこれら複数の集音装置でエスカレータ稼動音を集音するものに比べて構成を簡素化しながら、エスカレータ稼動音を効率よく集音することができ、複数の集音装置を分散配置してエスカレータ稼動音を集音するようにした場合に懸念される問題、すなわち、集音装置の取り付け作業が非常に煩雑で作業に多大な時間を要するといった問題や、監視データとしての音声データが集音装置の個数分になることによる処理負荷の増加、音声処理回路の大型化などを招くといった問題を有効に回避することができる。
【0026】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、監視対象のエスカレータを遠隔地の監視センタで監視するエスカレータ遠隔監視システムへの適用例である。
【0027】
図4は、第2実施形態のエスカレータ遠隔監視システムを構成する各構成要素の機能的な繋がりを示すブロック図である。本実施形態のエスカレータ遠隔監視システムにおいて、エスカレータ設置現場側のエスカレータ監視装置の構成は、基本的には上述した第1実施形態と同様であるが、制御装置40にデータ送受信部42が付加されている点が第1実施形態とは異なる。また、本実施形態のエスカレータ遠隔監視システムでは、エスカレータ設置現場側のエスカレータ監視装置を構成する制御装置40と、遠隔地の監視センタに設置された遠隔監視装置50とが、データ通信回線DTを介して通信可能に接続されている。なお、図4中、第1実施形態と共通の構成要素については同一の符号を付している。
【0028】
制御装置40のデータ送受信部42は、データ通信回線DTに接続してこのデータ通信回線DT経由でデータ通信を行うためのものであり、特に、監視データファイル生成部41で生成された監視データファイルを、データ通信回線DTを介して遠隔地の監視センタに設置された遠隔監視装置50に送信する機能を有している。
【0029】
遠隔監視装置50は、エスカレータ設置現場の制御装置40からデータ通信回線DT経由で送信された監視データファイルを受信して、その監視データファイルに含まれる監視用音声データに基づいて、監視対象のエスカレータの異常を検出するための処理を行うものである。
【0030】
ここで、遠隔地の監視センタに設置された遠隔監視装置50を用いて監視対象のエスカレータの異常を検出及び検証する際の動作の一例について説明する。
【0031】
遠隔地の監視センタで監視データファイルを取得する場合、例えば、まず、監視センタに設置された遠隔監視装置50からエスカレータ設置現場の制御装置40に対して、データ通信回線DT経由で監視データファイルの送付指令を送信する。この指令を受けた制御装置40は、第1実施形態で説明したように、移動集音装置10で集音されたエスカレータ稼動音の監視用音声データを監視データファイル生成部41にてファイル化して監視データファイルを生成し、この監視データファイルを、データ送受信部42からデータ通信回線DT経由で監視センタの遠隔監視装置50に送信する。なお、エスカレータ稼動音の集音及びファイル化は遠隔監視装置50からの送付指令への応答というかたちではなく、予め定めた所定の時刻に行うようにして、制御装置40から遠隔監視装置50への監視データファイルの送信を定期的に行うようにしてもよい。
【0032】
遠隔監視装置50は、制御装置40からデータ通信回線DT経由で監視データファイルが送信されると、この監視データファイルをロードして、所定のデータベースなどに保存する。そして、エスカレータの異常を検出及び検証する際には、例えば、データベースなどに保存された監視データファイルの監視用音声データを再生して、図示しないスピーカからエスカレータ稼動音を出力させる。このとき、監視用音声データは監視対象のエスカレータのステップ1が1周する分のデータ単位でファイル化されており、また、その監視用音声データの開始と終了はステップ1の移動経路における所定の基準位置を基準としているため、監視用音声データとともにファイル化された運行データやエスカレータの識別情報等に基づいて、移動集音装置10が設置されたステップ1の位置を図示しないモニタに表示しながら、このステップ1の位置と同期させてエスカレータ稼動音をスピーカから出力させるようにすれば、エスカレータに生じた異常を直感的に検出及び検証することができ、状況確認を適切且つ簡便に行うことができる。
【0033】
以上のように、本実施形態のエスカレータ遠隔監視システムにおいては、監視対象のエスカレータの稼動音を監視データファイルの形式でデータ通信回線DT経由で遠隔地の監視センタに設置された遠隔監視装置50に送信するようにしているので、エスカレータ稼動音を劣化させることなく確実に遠隔監視装置50に送付することができ、異音発生を伴うエスカレータの異常の検出及び検証を遠隔地にて適切に行うことが可能となる。
【0034】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態で説明したエスカレータ遠隔監視システムの変形例である。
【0035】
図5は、第3実施形態のエスカレータ遠隔監視システムを構成する各構成要素の機能的な繋がりを示すブロック図である。本実施形態のエスカレータ遠隔監視システムでは、エスカレータ設置現場側の制御装置40に異常判定部43が付加されている。その他の構成は第2実施形態と共通である。なお、図5中、第2実施形態と共通の構成要素については同一の符号を付している。
【0036】
遠隔地の監視センタでエスカレータの監視を行う場合、通常は、多数のエスカレータを監視対象としている。このため、エスカレータに異常が発生している可能性の有無にかかわらず、監視対象となる全てのエスカレータから監視データファイルを取得して異常の検出及び検証を行うようにすると、遠隔監視装置50の処理負荷が増大して処理が間に合わなくなり、監視サービスを満足に提供できなくなることも想定される。そこで、本実施形態のエスカレータ遠隔監視システムでは、エスカレータ設置現場側の制御装置40に異常判定部43を設け、この異常判定部43で異常ありと判定されたときに、制御装置40から監視センタの遠隔監視装置50へと監視データファイルが送信されるようにしている。
【0037】
制御装置40の異常判定部43は、エスカレータの正常時に移動集音装置10を用いて予め採取したエスカレータ稼動音の音声データを正常時音声データとして保持している。そして、無線受信装置20からの音信号、すなわち移動集音装置10で集音されたエスカレータ稼動音の音信号が監視データファイル生成部41に入力されて、監視用音声データとして一時保管メモリに書き込まれると、この監視用音声データと正常時音声データとを比較することで、監視対象のエスカレータにおける異常の有無を判定する。
【0038】
図6は、制御装置40の異常判定部43が監視対象のエスカレータにおける異常の有無を判定する処理の具体例を説明する図である。
【0039】
制御装置40の異常判定部43は、例えば図6に示すように、正常時音声データと監視用音声データとを、まず、周波数分析器にそれぞれ入力する。そして、正常時音声データを周波数分析器で周波数分析した結果と、監視用音声データを周波数分析器で周波数分析した結果とを比較器に入力し、監視用音声データと正常時音声データとの間で、所定の異常判定閾値を超える周波数分析結果の差が生じている部分が検出された場合に、監視対象のエスカレータに異常が発生していると判定する。つまり、監視用音声データと正常時音声データとの各周波数成分ごとの差分を求めて、異常判定閾値を超える差分が生じている周波数成分があれば、監視対象のエスカレータに異常が発生していると判定する。なお、異常判定部43による異常有無の判定の手法は、この図6に示した例に限定されるものではなく、例えば、監視用音声データと正常時音声データとの間で所定の異常判定閾値を超える音圧レベルの差が生じている部分が検出された場合に、監視対象のエスカレータに異常が発生していると判定するなど、他の判定手法を採用してもよい。
【0040】
本実施形態のエスカレータ遠隔監視システムでは、制御装置40の異常判定部43により異常ありと判定された場合に、制御装置40の監視データファイル生成部41で生成された監視データファイルが、例えば異常を知らせる情報とともに、データ送受信部42からデータ通信回線DTを介して遠隔地の監視センタに設置された遠隔監視装置50に送信される。これにより、遠隔地の監視センタ側では、エスカレータ設置現場での一次判定により異常ありと判定されたエスカレータのみを対象として、エスカレータ稼動音の再生またはデータ解析により詳細な異常の検出及び検証を行うことができ、監視センタの遠隔監視装置50における処理負荷を低減させて、効率よく監視サービスを提供することが可能となる。
【0041】
ところで、以上のように、エスカレータ設置現場側の制御装置40に設けた異常判定部43で監視対象のエスカレータにおける異常有無の一次判定を行う構成とした場合、一次判定の精度を良好に維持するために、判定を行うためのデータやプログラム等を変更することが求められる場合もある。このような場合に、保守員がエスカレータ設置現場に出役して変更作業を行うようにしたのでは、保守員に多大な負担がかかることになる。そこで、制御装置40の異常判定部43での一次判定に必要なデータやプログラム等の変更は、監視センタに設けられた遠隔監視装置50から制御装置40に対してデータ通信回線DT経由で制御データを送信し、この制御データに基づいて実行されるようにすることが望ましい。
【0042】
具体的には、例えば、監視用音声データとの対比に使用する正常時音声データを最新のデータに更新することが求められる場合、監視センタの遠隔監視装置50からエスカレータ設置現場の制御装置40に対して、正常時音声データの更新を指示する制御データが送られる。制御装置40の異常判定部43は、遠隔監視装置50からこのような制御データが送られてくると、例えば、正常時音声データを新たに採取する、或いは、事前に採取して遠隔装置50側のデータベースなどに保存しておいた最新の正常時音声データを読み出すなどの手法で最新の正常時音声データを取得し、正常時音声データを最新のデータに更新する。そして、以降の異常判定には、この最新の正常時音声データを使用する。
【0043】
また、例えば、異常判定部43での判定に用いる異常判定閾値が過剰に低い値に設定されているために異常ありの判定結果が頻繁に出力されている場合など、異常判定閾値を適切な値に変更することが求められる場合には、監視センタの遠隔監視装置50からエスカレータ設置現場の制御装置40に対して、異常判定閾値の変更を指示する制御データが送られる。制御装置40の異常判定部43は、遠隔監視装置50からこのような制御データが送られてくると、この制御データに基づいて異常判定閾値を変更し、以降の異常判定にはこの変更した異常判定閾値を用いる。
【0044】
また、例えば、異常判定部43で実行される判定プログラムにバグがあり、判定プログラムの修正を行うことが求まれる場合には、監視センタの遠隔監視装置50からエスカレータ設置現場の制御装置40に対して、判定プログラムの書き換えを指示する制御データが送られる。制御装置40の異常判定部43は、遠隔監視装置50からこのような制御データが送られてくると、この制御データに基づいて修正プログラムを取得して判定プログラムを書き換え、以降の異常判定にはこの新たな判定プログラムを用いる。
【0045】
以上のように、制御装置40の異常判定部43での判定に必要なデータやプログラム等の変更を、遠隔監視装置50から制御装置40に対してデータ通信回線DT経由で送られる制御データに基づいて実行するようにすれば、エスカレータ設置現場に保守員が出向いて変更作業を行わなくても遠隔地での操作で変更できるので、保守員の負担を大幅に軽減できるとともに、現場ごとに最適な判定の調整が可能となる。
【0046】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態で説明したエスカレータ監視装置の変形例である。
【0047】
図7は、第4実施形態のエスカレータ監視装置の全体構成を概略的に示す模式図である。本実施形態のエスカレータ監視装置の構成は、基本的には上述した第1実施形態と同様であるが、位置検知装置30が設置されている位置、すなわち監視用音声データの開始及び終了の基準となる基準位置が第1実施形態とは異なっている。
【0048】
監視対象のエスカレータにおいて、駆動装置5やスプロケット4aなどが配置されているトラス3の上階側、スプロケット4bなどが配置されているトラス3の下階側、中間部ではスカートガード6や図示しないコムなどが配置されてステップ1との接触が起きやすく、ガイドレールの破損や異物による音が発生しやすい往路側は、異音の発生箇所となる可能性が高い。このため、このような場所を基準位置に設定して位置検知装置30を設置すると、監視用音声データの切れ目で異音が途切れ、正確な異常の検出及び検証が行えなくなることも想定される。
【0049】
これを回避するため、本実施形態のエスカレータ監視装置では、図7に示すように、監視音用声データの開始と終了の基準となる基準位置、すなわち、位置検知装置30の設置位置をステップ1の循環経路における帰還側中間部としている。この帰還側中間部は、異音の発生箇所となる可能性が低く、監視用音声データの開始と終了の基準となる基準位置に設定しても影響は少ないと考えられる。
【0050】
以上のように、本実施形態のエスカレータ監視装置では、異音の発生箇所となる可能性が低い帰還側中間部を基準位置として設定し、この帰還側中間部に位置検知装置30を設置するようにしているので、監視用音声データの切れ目で異音が途切れるといった不都合を有効に回避することができる。
【0051】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態で説明したエスカレータ監視装置の変形例である。
【0052】
図8は、第5実施形態のエスカレータ監視装置の全体構成を概略的に示す模式図である。本実施形態のエスカレータ監視装置では、ステップ1の循環経路における複数の位置を基準位置として設定し、各基準位置にそれぞれ位置検知装置30を設置するようにしている。その他の構成は第1実施形態と共通である。
【0053】
エスカレータは基本的には一定速度での運転であるが、動力の電圧変動やエスカレータに加わる負荷の状況によっては、ステップ1の移動速度に多少の変動が生じる場合もある。このとき、監視用音声データの開始及び終了の基準となる基準位置が1箇所のみであると、監視用音声データと移動集音装置10が設置されたステップ1の位置との対応付けにずれが生じて、監視用音声データから異常発生箇所を正確に判定することが難しくなることも想定される。
【0054】
そこで、本実施形態のエスカレータ監視装置では、図8に示すように、ステップ1の循環経路における複数の箇所(図8に示す例では4箇所)に基準位置を設定して、各基準位置にそれぞれ位置検知装置30(30a〜30d)を設置し、移動集音装置10が設置されたステップ1が各基準位置を通過するたびに、各位置検知装置30a〜30dから位置検知信号が出力されるようにすることで、監視用音声データと移動集音装置10が設置されたステップ1の位置との対応付けを精度よく行えるようにしている。
【0055】
図9は、本実施形態のエスカレータ監視装置において、制御装置40の監視データファイル生成部41が監視データファイルを生成する動作の一例を説明する図である。この図9に示す監視データファイル生成部41の動作において、図3を用いて説明した第1実施形態と異なるところは、位置検知装置30a〜30bから監視データファイル生成部41に対して位置検知信号が順次入力され、これに合わせて1周分の監視用音声データを細分化してファイル化している点にある。
【0056】
エスカレータが上昇運転しているものとすると、制御装置40の監視データファイル生成部41には、位置検知装置30aからの位置検知信号と、位置検知装置30bからの位置検知信号と、位置検知装置30cからの位置検知信号と、位置検知装置30dからの位置検知信号とが、この順で順次入力される。
【0057】
監視データファイル生成部41は、位置検知装置30aからの位置検知信号が入力されると、無線受信装置20から出力された音信号の入力を開始し、一時保管メモリの「監視用音声データ1」のアドレスに、トラス3の上階側付近で集音されたエスカレータ稼動音の音声データを書き込んでいく。その後、位置検知装置30bからの位置検知信号が入力されると、音声データを書き込む領域を「監視用音声データ1」から「監視用音声データ2」に変更し、「監視用音声データ2」のアドレスに帰還側中間部で集音されたエスカレータ稼動音の音声データを書き込んでいく。その後、位置検知装置30cからの位置検知信号が入力されると、音声データを書き込む領域を「監視用音声データ2」から「監視用音声データ3」に変更し、「監視用音声データ3」のアドレスにトラス3の下階側付近で集音されたエスカレータ稼動音の音声データを書き込んでいく。さらに、位置検知装置30dからの位置検知信号が入力されると、音声データを書き込む領域を「監視用音声データ3」から「監視用音声データ4」に変更し、「監視用音声データ4」のアドレスに往路側中間部で集音されたエスカレータ稼動音の音声データを書き込んでいく。そして、位置検知装置30aからの位置検知信号が再度入力されると、監視用音声データの書き込みを終了する。このように一時保管メモリに書き込まれた1周分の監視用音声データは、細分化されたデータ単位で個別に扱えるようにファイル化され、監視データファイルが生成される。
【0058】
以上のように、本実施形態のエスカレータ監視装置では、複数の基準位置に位置検知装置30a〜30dを各々設置し、移動集音装置10が設置されたステップ1が各基準位置を通過するたびに、各位置検知装置30a〜30dから位置検知信号が出力されるようにしているので、1周分の監視用音声データを細分化したかたちでファイル化することができ、監視用音声データと移動集音装置10が設置されたステップ1の位置との対応付けを精度よく行って異常の検証をより適切に行うことができる。
【0059】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態で説明したエスカレータ監視装置の変形例である。
【0060】
図10は、第6実施形態のエスカレータ監視装置における移動集音装置10の構成を示すブロック図である。本実施形態のエスカレータ監視装置では、移動集音装置10に、当該移動集音装置10が設置されたステップ1の移動エネルギを利用して発電する発電部14が設けられている。その他の構成は第1実施形態と共通である。なお、図410中、第1実施形態と共通の構成要素については同一の符号を付している。
【0061】
移動集音装置10は、第1実施形態で説明したように、電源供給部13により集音部11及び無線送信部12に対して電源を供給しているが、電源供給部13にバッテリを用いている場合、バッテリ切れが生じると集音部11及び無線送信部12が作動せずに、エスカレータ稼動音の集音ができなくなる。
【0062】
そこで、本実施形態のエスカレータ監視装置では、図10に示すように、移動集音装置10に発電部14を付加して、この発電部14が発電した電力で電源供給部13のバッテリを随時充電することによって、集音部11及び無線送信部12に対して常に電源供給を行えるようにしている。
【0063】
発電部14は、例えば、移動集音装置10が設置されたステップ1が移動する際の後輪1aの回転を電力に変換する構成とされる。この発電部14は電力供給部13に電気的に接続されており、発電部14で発電された電力は電源供給部13に供給されてバッテリに充電される。
【0064】
以上のように、本実施形態のエスカレータ監視装置では、移動集音装置10に発電部14を付加して電源供給部13のバッテリを充電できるようにし、電源供給部13から集音部11及び無線送信部12に対して常に電源供給を行えるようにしているので、電源供給部13のバッテリ切れによってエスカレータ稼動音の集音ができなくなるといった不都合を未然に回避することができる。
【0065】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態で説明したエスカレータ監視装置の変形例である。
【0066】
図11は、第7実施形態のエスカレータ監視装置を構成する各構成要素の機能的な繋がりを示すブロック図である。本実施形態のエスカレータ監視装置では、監視対象のエスカレータのトラス3内部に、エスカレータ稼動音を固定された状態で集音する固定集音装置60を少なくとも1つ設置して、制御装置40に対して、移動集音装置10で集音されたエスカレータ稼動音の音信号のほかに、固定集音装置60で集音されたエスカレータ稼動音の音信号も入力できるようにしている。また、本実施形態のエスカレータ監視装置では、制御装置40に音信号入力切替部44を付加し、移動集音装置10で集音され無線受信装置20から出力されたエスカレータ稼動音の音信号の入力と、固定集音装置60から出力されたエスカレータ稼動音の音信号の入力とが選択的に切り替えられるようにしている。その他の構成は第1実施形態と共通である。なお、図11中、第1実施形態と共通の構成要素については同一の符号を付している。
【0067】
移動集音装置10はステップ1とともに循環移動しながらエスカレータ稼動音を集音するので、特定の箇所に異常が発生した場合に、移動集音装置10でその異音を集音できるのは、当該移動集音装置10が設置されたステップ1が異常発生箇所を通過するときのみである。このため、異常発生箇所を特定するには移動集音装置10で集音されたエスカレータ稼動音のみで十分であるが、その異常の原因などを分析するには、異常発生箇所で集中的にエスカレータ稼動音を集音することが求められる場合もある。
【0068】
そこで、本実施形態のエスカレータ監視装置では、少なくとも1つの固定集音装置60をエスカレータのトラス3内で異常が発生しやすい箇所に設置して、この固定集音装置60で集音されたエスカレータ稼動音も制御装置40に入力できるようにしている。そして、固定集音装置60の設置箇所近傍で異常が発生していると想定される場合には、制御装置40の音信号入力切替部44が、制御装置40に入力される音信号を固定集音装置60で集音されたエスカレータ稼動音の音信号に切り替えて、監視データファイル生成部41が、この固定集音装置60で集音されたエスカレータ稼動音の音声データをファイル化して監視データファイルを生成するようにしている。
【0069】
固定集音装置60は、例えば、駆動装置5やスプロケット4aなどが配置されているトラス3の上階側等、異音を伴う異常が発生しやすい箇所に設置され、この設置箇所で固定で集音したエスカレータ稼動音の音信号を出力する。また、この固定集音装置60は、信号伝送ケーブルにより制御装置40に接続されており、固定集音装置60から出力されたエスカレータ稼動音の音信号は、制御装置40に入力される。
【0070】
制御装置40の音信号入力切替部44は、例えば音信号の選択を指示する選択信号などに基づいて入力回路の切り替えを行い、移動集音装置10で集音され無線受信装置20から出力されたエスカレータ稼動音の音信号の入力と、固定集音装置60から出力されたエスカレータ稼動音の音信号の入力とを選択的に切り替える。また、この音信号入力切替部44により固定集音装置60から出力された音信号の入力が選択されたときは、制御装置40の監視データファイル生成部41は、固定集音装置60からの音信号を監視用音声データに変換してファイル化し、監視データファイルを生成する。
【0071】
図12は、本実施形態のエスカレータ監視装置において、制御装置40の監視データファイル生成部41が監視データファイルを生成する動作の一例を説明する図である。この図12に示すように、監視データファイル生成部41は、移動集音装置10或いは固定集音装置60で集音され、選択的に入力されたエスカレータ稼動音の音信号を監視用音声データに変換して一時保管メモリに書き込み、これをエスカレータの運行データなどとともにファイル化して監視データファイルを生成する。このとき、監視用音声データとしてファイル化したエスカレータ稼動音が移動集音装置10と固定集音装置60のどちらで集音したものであるかを識別できるようにするために、集音装置識別データを監視用音声データに添付してファイル化する。
【0072】
以上のように、本実施形態のエスカレータ監視装置では、少なくとも1つの固定集音装置60をエスカレータのトラス3内で異常が発生しやすい箇所に設置して、固定集音装置60の設置箇所近傍で異常が発生していると想定される場合には、制御装置40の音信号入力切替部44が、制御装置40に入力される音信号を固定集音装置60で集音されたエスカレータ稼動音の音信号に切り替え、監視データファイル生成部41が、この固定集音装置60で集音されたエスカレータ稼動音を用いて監視データファイルを生成できるようにしている。したがって、本実施形態のエスカレータ監視装置では、異常発生箇所近傍に設置されている固定集音装置60で集音されたエスカレータ稼動音を解析することで、異常の原因の分析などをより詳細に行うことができる。
【0073】
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態で説明したエスカレータ監視装置の変形例である。
【0074】
図13は、第8実施形態のエスカレータ監視装置を構成する各構成要素の機能的な繋がりを示すブロック図である。本実施形態のエスカレータ監視装置では、移動集音装置10が設置されたステップ1に、当該ステップ1とともに循環移動しながらトラス3内の映像を撮影し、撮影した映像を無線信号として発信する映像撮影装置70を設置している。また、映像撮影装置70の撮影方向を照明する照明装置80と、映像撮影装置70から発信された無線信号を受信して映像信号に復元し、制御装置40に対して出力する無線受信装置90とが設けられている。その他の構成は第1実施形態と共通である。なお、図13中、第1実施形態と共通の構成要素については同一の符号を付している。
【0075】
エスカレータ稼動音をもとに異常の検出及び検証を行う場合、そのエスカレータ稼動音を集音した際のトラス3内部の様子を映像として確認できれば、異常の検出及び検証をより効率的に行えると考えられる。そこで、本実施形態のエスカレータ監視装置では、移動集音装置10とともに映像撮影装置70をステップ1に設置して、移動集音装置10でエスカレータ稼動音を集音した際のトラス3内部の映像を映像撮影装置70で撮影し、このトラス3内部を撮影した映像信号を無線受信装置90を介して制御装置40に入力できるようにしている。そして、制御装置40でこれらエスカレータ稼動音の音声データとトラス3内の映像データとを関連付けてファイル化し、監視データファイルを生成するようにしている。また、映像撮影装置70が撮影対象とするトラス3内は暗いので、このトラス3内の少なくとも映像撮影装置70が撮影する方向を照明装置80で照明するようにしている。
【0076】
なお、照明装置80は、移動集音装置10や映像撮影装置70とともにステップ1に設置されて、ステップ1とともに移動しながら映像撮影装置70の撮影方向を照明する構成とされていてもよいし、トラス3内に固定で設置されてトラス3内の全体を照明する構成とされていてもよい。また、無線受信装置90は、移動集音装置10からの無線信号を受信する無線受信装置20と同様に、移動集音装置10及び映像撮影装置70が設置されたステップ1外部の任意の場所に設置されるが、移動集音装置10からの無線信号を受信する無線受信装置20と一体あるいは共通の構成とされていてもよい。さらに、映像撮影装置70への電源供給は、専用の電源供給部を設けてここから行うようにしてもよいし、移動集音装置10の電源供給部13から映像撮影装置70に対して電源が供給されるようにしてもよい。
【0077】
図14は、本実施形態のエスカレータ監視装置において、制御装置40の監視データファイル生成部41が監視データファイルを生成する動作の一例を説明する図である。図14に示すように、監視データファイル生成部41は、位置検知装置30からの位置検知信号が入力されると、無線受信装置20からの音信号、すなわち移動集音装置10で集音されたエスカレータ稼動音の音信号と、無線受信装置90からの映像信号、すなわち映像撮影装置70で撮影された映像信号の入力を開始する。そして、入力した音信号を監視用音声データに変換するとともに、入力した映像信号を監視用映像データに変換しながら、これら監視用音声データと監視用映像データとを、互いの時間軸を対応付けたかたちで一時保管メモリに随時書き込んでいく。その後、移動集音装置10及び映像撮影装置70が設置されたステップ1が1周して、位置検知装置30から新たに位置検知信号が出力されると、監視データファイル生成部41は、監視用音声データ及び監視用映像データの蓄積を終了する。これにより、一時保管メモリには、移動集音装置10が設けられたステップ1が基準位置を通過してから当該基準位置に戻るまでの1周分の監視用音声データと監視用映像データとが、互いの時間軸を対応付けたかたちで蓄積された状態となる。監視データファイル生成部41は、一時保管メモリに1周分の監視用音声データ及び監視用映像データが蓄積されると、この1周分の監視用音声データ及び監視用映像データをエスカレータの運行データなどとともにファイル化して、監視データファイルを生成する。
【0078】
以上のように、本実施形態のエスカレータ監視装置では、エスカレータ稼動音の音声データとトラス3内の映像データとを関連付けてファイル化して監視データファイルを生成するようにしているので、エスカレータ稼動音を集音した際のトラス3内部の様子を映像として確認することができ、異常の検出及び検証をより効率的に行うことが可能となる。
【0079】
(第9実施形態)
次に、本発明の第9実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態で説明したエスカレータ監視装置の変形例である。
【0080】
図15は、第9実施形態のエスカレータ監視装置を構成する各構成要素の機能的な繋がりを示すブロック図である。本実施形態のエスカレータ監視装置では、移動集音装置10が設置されたステップ1に、当該ステップ1とともに循環移動しながらステップ1に加わる振動量を検出し、検出結果を無線信号として発信する振動検出装置100を設置している。また、ステップ1外部の任意の位置に、振動検出装置100から発信された無線信号を受信して振動信号に復元し、制御装置40に対して出力する無線受信装置110が設けられている。その他の構成は第1実施形態と共通である。なお、図15中、第1実施形態と共通の構成要素については同一の符号を付している。
【0081】
エスカレータ稼動音をもとに異常の検出及び検証を行う場合、ステップ1の走行異常音は振動とともに発生する場合が多いので、そのエスカレータ稼動音を集音した際のステップ1の挙動を確認できれば、外乱音との区別が容易となり、異常の検出及び検証をより効率的に行えると考えられる。そこで、本実施形態のエスカレータ監視装置では、移動集音装置10とともに振動検出装置100をステップ1に設置して、移動集音装置10でエスカレータ稼動音を集音した際のステップ1の振動量を振動検出装置100で検出し、その検出結果(振動信号)を無線受信装置110を介して制御装置40に入力できるようにしている。そして、制御装置40でこれらエスカレータ稼動音の音声データとステップ1の振動データとを関連付けてファイル化し、監視データファイルを生成するようにしている。
【0082】
なお、無線受信装置100は、移動集音装置10からの無線信号を受信する無線受信装置20と同様に、移動集音装置10及び振動検出装置100が設置されたステップ1外部の任意の場所に設置されるが、移動集音装置10からの無線信号を受信する無線受信装置20と一体あるいは共通の構成とされていてもよい。また、振動検出装置100への電源供給は、専用の電源供給部を設けてここから行うようにしてもよいし、移動集音装置10の電源供給部13から振動検出装置100に対して電源が供給されるようにしてもよい。
【0083】
図16は、本実施形態のエスカレータ監視装置において、制御装置40の監視データファイル生成部41が監視データファイルを生成する動作の一例を説明する図である。図16に示すように、監視データファイル生成部41は、位置検知装置30からの位置検知信号が入力されると、無線受信装置20からの音信号、すなわち移動集音装置10で集音されたエスカレータ稼動音の音信号と、無線受信装置110からの振動信号、すなわち振動検出装置100で検出されたステップ1の振動検出結果の入力を開始する。そして、入力した音信号を監視用音声データに変換するとともに、入力した振動信号を監視用振動データに変換しながら、これら監視用音声データと監視用振動データとを、互いの時間軸を対応付けたかたちで一時保管メモリに随時書き込んでいく。その後、移動集音装置10及び振動検出装置100が設置されたステップ1が1周して、位置検知装置30から新たに位置検知信号が出力されると、監視データファイル生成部41は、監視用音声データ及び監視用振動データの蓄積を終了する。これにより、一時保管メモリには、移動集音装置10が設けられたステップ1が基準位置を通過してから当該基準位置に戻るまでの1周分の監視用音声データと監視用振動データとが、互いの時間軸を対応付けたかたちで蓄積された状態となる。監視データファイル生成部41は、一時保管メモリに1周分の監視用音声データ及び監視用振動データが蓄積されると、この1周分の監視用音声データ及び監視用振動データをエスカレータの運行データなどとともにファイル化して、監視データファイルを生成する。
【0084】
以上のように、本実施形態のエスカレータ監視装置では、エスカレータ稼動音の音声データとステップ1の振動データとを関連付けてファイル化して監視データファイルを生成するようにしているので、ステップ1の走行異常音と外乱音との区別が容易となり、異常の検出及び検証をより効率的に行うことが可能となる。
【0085】
(第10実施形態)
次に、本発明の第10実施形態について説明する。本実施形態は、第3実施形態で説明したエスカレータ遠隔監視システムの変形例である。
【0086】
図17は、第10実施形態のエスカレータ遠隔監視システムを構成する各構成要素の機能的な繋がりを示すブロック図である。本実施形態のエスカレータ遠隔監視システムでは、第9実施形態と同様、移動集音装置10が設置されたステップ1に、当該ステップ1とともに循環移動しながらステップ1に加わる振動量を検出し、検出結果を無線信号として発信する振動検出装置100を設置している。また、ステップ1外部の任意の位置に、振動検出装置100から発信された無線信号を受信して振動信号に復元し、制御装置40に対して出力する無線受信装置110が設けられている。その他の構成は第3実施形態と共通である。なお、図17中、第3実施形態と共通の構成要素については同一の符号を付している。
【0087】
第9実施形態で説明したように、ステップ1の走行異常音は振動とともに発生する場合が多く、エスカレータ稼動音をステップ1の振動の状況と合わせて検証できれば、走行異常音と外乱音との区別が容易となる。したがって、第3実施形態のように、エスカレータ設置現場側の制御装置40の異常判定部43で異常有無の一次判定を行う構成とした場合においても、第9実施形態と同様にエスカレータ稼動音を集音した際のステップ1の振動を検出して、音声データと合わせて振動データも用いて一次判定を行うようにすれば、一次判定の判定精度をより高めることができると考えられる。
【0088】
そこで、本実施形態のエスカレータ遠隔監視システムでは、移動集音装置10とともに振動検出装置100をステップ1に設置して、移動集音装置10でエスカレータ稼動音を集音した際のステップ1の振動量を振動検出装置100で検出し、その検出結果(振動信号)を無線受信装置110を介して制御装置40に入力できるようにしている。そして、制御装置40の異常判定部が、エスカレータ稼動音の音声データとステップ1の振動データとを用いて異常有無の一次判定を行うようにしている。
【0089】
本実施形態のエスカレータ遠隔監視システムにおいて、制御装置40の異常判定部43は、正常時音声データに加えて、正常時振動データも保持している。正常時振動データは、エスカレータの正常時に振動検出装置100を用いて予め採取したステップ1の振動データである。そして、無線受信装置20からエスカレータ稼動音の音信号が監視データファイル生成部41に入力されて監視用音声データとして一時保管メモリに書き込まれるとともに、無線受信装置110から振動信号が監視データファイル生成部41に入力されて監視用振動データとして一時保管メモリに書き込まれると、監視用音声データと正常時音声データとの比較と合わせて、監視用振動データと正常時振動データとの比較も行い、これらの比較結果を総合的に判断することで、監視対象のエスカレータにおける異常の有無を判定する。
【0090】
図18は、制御装置40の異常判定部43が監視対象のエスカレータにおける異常の有無を判定する処理の具体例を説明する図である。
【0091】
制御装置40の異常判定部43は、例えば図18に示すように、正常時音声データと監視用音声データ、正常時振動データと監視用振動データとを、それぞれ周波数分析器に入力する。次に、正常時音声データを周波数分析器で周波数分析した結果と、監視用音声データを周波数分析器で周波数分析した結果とを比較器に入力し、これらの差分が所定の異常判定閾値を超えているかどうかを確認するとともに、正常時振動データを周波数分析器で周波数分析した結果と、監視用振動データを周波数分析器で周波数分析した結果とを比較器に入力し、これらの差分が所定の異常判定閾値を超えているかどうかを確認する。そして、正常時音声データと監視用音声データとの差分と、正常時振動データと監視用振動データとの差分の双方が所定の異常判定閾値を超えている場合に、監視対象のエスカレータに異常が発生していると判定する。なお、異常判定部43による異常有無の判定の手法は、この図6に示した例に限定されるものではなく、例えば、正常時音声データと監視用音声データとの音圧レベルの差分と、正常時振動データと監視用振動データとの振動レベルの差分の双方が所定の異常判定閾値を超えている場合に、監視対象のエスカレータに異常が発生していると判定するなど、他の判定手法を採用してもよい。
【0092】
以上のように、本実施形態のエスカレータ遠隔監視システムでは、エスカレータ稼動音の音声データとステップ1の振動データとの双方を用いて、制御装置40の異常判定部43で監視対象のエスカレータにおける異常有無の一次判定を行うようにしているので、一次判定の判定精度を高めて正確な判定を行うことができる。また、制御装置40の異常判定部43により異常ありと判定された場合に、制御装置40の監視データファイル生成部41で生成された監視データファイルを遠隔地の監視センタに設置された遠隔監視装置50に送信するようにしているので、監視センタの遠隔監視装置50における処理負荷を低減させて、効率よく監視サービスを提供することが可能となる。
【0093】
以上、本発明を適用したエスカレータ監視システムの具体例として第1乃至第10の実施形態を例示して具体的に説明したが、本発明の技術的範囲は、以上の各実施形態の説明で開示した技術事項に限定されるものではなく、以上の開示内容をもとに一般的な技術常識も鑑みて当然に導かれる変形例、応用例も含まれるものである。例えば、上述した各実施形態では、エスカレータ設置現場に設置されている監視対象のエスカレータの台数が1台である場合を想定して説明したが、通常は、複数号機が並列あるいは直列に設置されていることが多い。これら複数号機のエスカレータを監視対象とする場合には、各号機それぞれに移動集音装置10(第8実施形態ではさらに映像撮影装置70、第9実施形態及び第10実施形態ではさらに振動検出装置100)を設置し、各号機の移動集音装置10から、発信元を識別できる識別信号を付加した無線信号を発信させるようにすれば、無線受信装置20や制御装置40については共通化することができ、構成を簡素化することができる。また、複数号機が隣接して並列設置されている場合には、代表的な1つの号機のみに移動集音装置10を設置し、この移動集音装置10で集音されたエスカレータ稼動音をもとに、隣接して設置されている号機の異常を推定するといった手法を採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明を適用した監視システムの全体構成を概略的に示す模式図。
【図2】第1実施形態のエスカレータ監視装置を構成する各構成要素の機能的な繋がりを示すブロック図。
【図3】第1実施形態のエスカレータ監視装置において、制御装置の監視データファイル生成部が監視データファイルを生成する動作の一例を説明する図。
【図4】第2実施形態のエスカレータ遠隔監視システムを構成する各構成要素の機能的な繋がりを示すブロック図。
【図5】第3実施形態のエスカレータ遠隔監視システムを構成する各構成要素の機能的な繋がりを示すブロック図。
【図6】第3実施形態のエスカレータ遠隔監視システムにおいて、制御装置の異常判定部が監視対象のエスカレータにおける異常の有無を判定する処理の具体例を説明する図。
【図7】第4実施形態のエスカレータ監視装置の全体構成を概略的に示す模式図。
【図8】第5実施形態のエスカレータ監視装置の全体構成を概略的に示す模式図。
【図9】第5実施形態のエスカレータ監視装置において、制御装置の監視データファイル生成部が監視データファイルを生成する動作の一例を説明する図。
【図10】第6実施形態のエスカレータ監視装置における移動集音装置の構成を示すブロック図。
【図11】第7実施形態のエスカレータ監視装置を構成する各構成要素の機能的な繋がりを示すブロック図。
【図12】第7実施形態のエスカレータ監視装置において、制御装置の監視データファイル生成部が監視データファイルを生成する動作の一例を説明する図。
【図13】第8実施形態のエスカレータ監視装置を構成する各構成要素の機能的な繋がりを示すブロック図。
【図14】第8実施形態のエスカレータ監視装置において、制御装置の監視データファイル生成部が監視データファイルを生成する動作の一例を説明する図。
【図15】第9実施形態のエスカレータ監視装置を構成する各構成要素の機能的な繋がりを示すブロック図。
【図16】第9実施形態のエスカレータ監視装置において、制御装置の監視データファイル生成部が監視データファイルを生成する動作の一例を説明する図。
【図17】第10実施形態のエスカレータ遠隔監視システムを構成する各構成要素の機能的な繋がりを示すブロック図。
【図18】第10実施形態のエスカレータ遠隔監視システムにおいて、制御装置の異常判定部が監視対象のエスカレータにおける異常の有無を判定する処理の具体例を説明する図。
【符号の説明】
【0095】
1 ステップ
10 移動集音装置
11 集音部
12 無線送信部
13 電源供給部
14 発電部
20 無線受信装置
30(30a〜30d) 位置検知装置
40 制御装置
41 監視データファイル生成部
42 データ送受信部
43 異常判定部
44 音信号入力切替部
50 遠隔監視装置
60 固定集音装置
70 映像撮影装置
80 照明装置
90 無線受信装置
100 振動検出装置
110 無線受信装置
DT データ通信回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結された多数のステップをガイドレールに沿って循環移動させてステップに搭乗した乗客を搬送する乗客コンベアの監視装置であって、
前記多数のステップのうちの少なくとも1つに設置され、当該ステップとともに循環移動して乗客コンベア稼動音を集音し、集音した乗客コンベア稼動音を無線信号として発信する移動集音手段と、
前記ステップの外部に設置され、前記移動集音手段から発信された無線信号を受信して音信号として出力する無線受信手段と、
前記多数のステップの移動経路における所定の基準位置に設置され、前記移動集音手段が設置されたステップが前記基準位置を通過するタイミングで位置検知信号を出力する位置検知手段と、
前記無線受信手段から出力された音信号と、前記位置検知手段から出力された位置検知信号とが入力される制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記位置検知手段から位置検知信号が出力されたタイミングを基準として前記無線受信手段から出力された音信号を入力し、当該音信号を乗客コンベア監視用音声データに変換し、当該乗客コンベア監視用音声データを、前記音信号を入力している間の乗客コンベアの運行状態を示す運行データと関連付けてファイル化して監視データファイルを生成する監視データファイル生成部を有すること
を特徴とする乗客コンベア監視装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記監視データファイル生成部で生成された監視データファイルをデータ通信回線を介して遠隔地に設置された遠隔監視装置に送信するデータ送信部をさらに有すること
を特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア監視装置。
【請求項3】
前記制御手段は、乗客コンベアの正常時に前記移動集音手段を用いて予め採取した上客コンベア稼動音の音声データを正常時音声データとして保持し、前記監視データファイル生成部で音信号から変換された乗客コンベア監視用音声データと前記正常時音声データとを比較して、乗客コンベアにおける異常の有無を判定する異常判定部をさらに有すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の乗客コンベア監視装置。
【請求項4】
前記制御手段のデータ送信部は、前記異常判定部により異常ありと判定されたときに、前記監視データファイル生成部で生成された監視データファイルを前記遠隔監視装置に送信すること
を特徴とする請求項3に記載の乗客コンベア監視装置。
【請求項5】
前記制御手段は、遠隔地に設置された遠隔監視装置からデータ通信回線を介して送信された制御データを受信するデータ受信部をさらに有し、
前記制御手段の異常判定部は、前記データ受信部により前記遠隔監視装置からの制御データが受信されたときに、当該制御データに基づいて、前記正常時音声データ、異常の有無の判定基準、異常の有無の判定プログラムのうちの少なくとも1つを変更すること
を特徴とする請求項3又は4に記載の乗客コンベア監視装置。
【請求項6】
前記位置検知手段は、前記多数のステップの移動経路における帰還側中間部に設置され、前記移動集音手段が設置されたステップが前記帰還側中間部を通過するタイミングで前記位置検知信号を出力すること
を特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の乗客コンベア監視装置。
【請求項7】
前記位置検知手段は、前記多数のステップの移動経路における複数の基準位置に設置され、前記移動集音手段が設置されたステップが各基準位置を通過するたびに、前記位置検知信号を出力すること
を特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の乗客コンベア監視装置。
【請求項8】
前記移動集音手段は、当該移動集音手段が設置されたステップの移動エネルギを利用して発電する発電部を有すること
を特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の乗客コンベア監視装置。
【請求項9】
乗客コンベアのトラス内に固定された状態で設置され、当該設置位置にて乗客コンベア稼動音を集音し、集音した乗客コンベア稼動音を音信号として出力する固定集音手段をさらに備えること
を特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の乗客コンベア監視装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記無線受信手段から出力された音信号の入力と、前記固定集音手段から出力された音信号の入力とを選択的に切り替える入力切替部をさらに有し、
前記制御手段の監視データファイル生成部は、前記入力切替部により前記固定集音手段から出力された音信号の入力が選択されたときは、前記無線受信手段から出力された音信号に代えて前記固定集音手段から出力された音信号を用いて、前記監視データファイルを生成すること
を特徴とする請求項9に記載の乗客コンベア監視装置。
【請求項11】
前記移動集音手段が設置されたステップに前記移動集音手段とともに設置され、当該ステップとともに循環移動して映像を撮影し、撮影した映像を無線信号として発信するする映像撮影手段と、
前記映像撮影手段の撮影方向を照明する照明手段と、
前記ステップの外部に設置され、前記映像撮影手段から発信された無線信号を受信して映像信号として出力する第2無線受信手段とをさらに備え、
前記制御手段の監視データファイル生成部は、前記無線受信手段から出力された音信号とともに前記第2無線受信手段から出力された映像信号を入力し、当該映像信号を乗客コンベア監視用映像データに変換し、当該乗客コンベア監視用映像データを、前記乗客コンベア監視用音声データとともに前記運行データと関連付けてファイル化して監視データファイルを生成すること
を特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の乗客コンベア監視装置。
【請求項12】
前記移動集音手段が設置されたステップに前記移動集音手段とともに設置され、当該ステップとともに循環移動して当該ステップに加わる振動量を検出し、検出結果を無線信号として発信するする振動検出手段と、
前記ステップの外部に設置され、前記振動検出手段から発信された無線信号を受信して振動検出信号として出力する第3無線受信手段とをさらに備え、
前記制御手段の監視データファイル生成部は、前記無線受信手段から出力された音信号とともに前記第3無線受信手段から出力された振動検出信号を入力し、当該振動検出信号を乗客コンベア監視用振動データに変換し、当該乗客コンベア監視用振動データを、前記乗客コンベア監視用音声データとともに前記運行データと関連付けてファイル化して監視データファイルを生成すること
を特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の乗客コンベア監視装置。
【請求項13】
前記移動集音手段が設置されたステップに前記移動集音手段とともに設置され、当該ステップとともに循環移動して当該ステップに加わる振動量を検出し、検出結果を無線信号として発信するする振動検出手段と、
前記ステップの外部に設置され、前記振動検出手段から発信された無線信号を受信して振動検出信号として出力する第3無線受信手段とをさらに備え、
前記制御手段の監視データファイル生成部は、前記無線受信手段から出力された音信号とともに前記第3無線受信手段から出力された振動検出信号を入力して、当該振動検出信号を乗客コンベア監視用振動データに変換し、
前記制御手段の異常判定部は、乗客コンベアの正常時に前記振動検出手段を用いて予め採取した振動データを正常時振動データとして保持し、前記監視データファイル生成部で振動検出信号から変換された乗客コンベア監視用振動データと前記正常時振動データとの比較結果と、前記乗客コンベア監視用音声データと前記正常時音声データとの比較結果との双方に基づいて、乗客コンベアにおける異常発生の有無を判定すること
を特徴とする請求項3に記載の乗客コンベア監視装置。
【請求項14】
無端状に連結された多数のステップをガイドレールに沿って循環移動させてステップに搭乗した乗客を搬送する乗客コンベアの遠隔監視システムであって、
前記多数のステップのうちの少なくとも1つに設置され、当該ステップとともに循環移動して乗客コンベア稼動音を集音し、集音した乗客コンベア稼動音を無線信号として発信する移動集音装置と、
前記ステップの外部に設置され、前記移動集音装置から発信された無線信号を受信して音信号として出力する無線受信装置と、
前記多数のステップの移動経路における所定の基準位置に設置され、前記移動集音装置が設置されたステップが前記基準位置を通過するタイミングで位置検知信号を出力する位置検知装置と、
前記位置検知装置から位置検知信号が出力されたタイミングを基準として前記無線受信装置から出力された音信号を入力し、当該音信号を乗客コンベア監視用音声データに変換し、当該乗客コンベア監視用音声データを、前記音信号を入力している間の乗客コンベアの運行状態を示す運行データと関連付けてファイル化して監視データファイルを生成し、生成した監視データファイルをデータ通信回線経由で送信する制御装置と、
監視対象の乗客コンベアから離れた遠隔地に設置され、前記制御装置からデータ通信回線経由で送信された監視データファイルを受信して、当該監視データファイルに基づく処理を行う遠隔監視装置とを備えること
を特徴とする乗客コンベアの遠隔監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−12891(P2009−12891A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174240(P2007−174240)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】