説明

乗客コンベア

【課題】本発明の、内デッキカバーに衣服等の引っ掛かりのない安全性の高い乗客コンベアを提供することにある。
【解決手段】本発明は、傾斜部材17を移動手摺7が反転する反転部に沿って延在し、延在した下端部17Eを、内デッキカバー14に面一となるように連結したのである。
以上のように、傾斜部材17の延在端を内デッキカバー14に面一となるように連結したので、両者間に段差はなくなり、したがって、段差のために内デッキカバー14に乗客の衣服等が引っ掛かることをなくすことが出来、安全性を高めた乗客コンベアを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエスカレーターや電動道路等の乗客コンベアに係り、特に、左右の欄干に左右の移動手摺の間隔よりも広い間隔の凹部を形成した乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
左右の移動手摺の間隔よりも広い間隔の凹部を欄干に形成した乗客コンベアは、例えば特許文献1に示すように、既に提案されている。
【0003】
【特許文献1】W02003/048021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の乗客コンベアにおいては、欄干に凹部を形成しているために、乗客は手荷物などがこの凹部内にある状態で移動できるので、手荷物によって踏段上の乗り位置を占有することがなくなる。また、欄干の終端部では凹部に連なって傾斜部材が手摺枠まで設けられているので、凹部に位置する手荷物はその傾斜部材によって案内されるので、欄干の終端部に激突させることなく欄干外に誘導することが出来る。
【0005】
しかしながら、上記構成の欄干によれば、欄干終端において前記傾斜部材を移動手摺が方向転換する反転部に沿って延在した下端を、内デッキカバーの下方に位置させているので、内デッキカバーと傾斜部材との間に、少なくとも内デッキカバーの厚さ分の段差が生じ、この段差に移動中の乗客の衣服や手荷物などが引っ掛かって損傷させる虞があった。このような問題を解決するために、内デッキカバーと傾斜部材との段差に詰め物を詰めて段差を解消することも一考であるが、長期使用のうちに詰め物が脱落する可能性もあり、信頼性に欠ける問題がある。
【0006】
本発明の目的は、内デッキカバーに衣服等の引っ掛かりのない安全性の高い乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、傾斜部材を移動手摺が反転する反転部に沿って延在して内デッキカバーに面一となるように連結したのである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、傾斜部材を内デッキカバーに面一となるように連結したので、両者間に段差はなくなり、したがって、段差のために内デッキカバーに乗客の衣服等が引っ掛かることをなくすことが出来、安全性を高めた乗客コンベアを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明による乗客コンベアの一実施の形態を、図1〜図4に示すエスカレーターに基づいて説明する。
【0010】
一般に、エスカレーター1は、上階床2と下階床3とに跨って支持された枠体4と、踏板を有し無端状に連結された複数の踏段5と、これら踏段5の移動方向両側の前記枠体4上に立設された欄干6と、この欄干6の周縁に案内されて移動する移動手摺7と、前記踏段5への乗り降りを行う上部乗降床8及び下部乗降床9とを有している。
【0011】
前記欄干6は、枠体4に固定されて立設された複数の支柱10と、これら支柱10に支持された欄干パネル11と、前記支柱10の上端部に固定され前記移動手摺7の移動を案内する手摺枠12と、手摺枠12の外側に設けられた外デッキカバー13と、前記欄干パネル11の下部を覆う内デッキカバー14と、内デッキカバー14の下方に垂直に連なり前記踏段5と枠体4側を仕切るスカートガード15とを有している。
【0012】
さらに、前記欄干6は、欄干パネル11が移動手摺7よりも外側(反踏段5側)に位置させている。その結果、手摺枠12に対して欄干パネル11が外側に変位するが、この変位によって手摺枠12と欄干パネル11との間に生じた段差部に、傾斜部材16を設置している。この傾斜部材16は、欄干パネル11と同じ材質で形成しても異種材料で形成してもよいが、摩擦抵抗が小さい材料で形成することが望ましい。
【0013】
このように欄干パネル11を変位させることで、傾斜部材16−欄干パネル11−内デッキカバー14とで、移動手摺7よりも外側に張り出す凹部が形成される。
【0014】
一方、欄干6の終端部においては、前記傾斜部材16に連なる傾斜部材17を移動手摺7が方向転換する反転部に沿って延在し、その延在された下端部17Eは、面一となるように前記内デッキカバー14に連結されている。
【0015】
尚、内デッキカバー14と傾斜部材17の欄干パネル11からの踏段5側への張り出し寸法W1,W2は、当然ながら欄干パネル11の張り出し寸法W1のほうが傾斜部材17の張り出し寸法W2よりも大きい。そこで、傾斜部材17の下端部17Eの踏段5側への張り出し寸法W3を、欄干パネル11の張り出し寸法W1に合わせて大きく形成し、張り出し寸法W2とW3との間に傾斜辺17Kを形成して、段差を緩和している。
【0016】
このように本実施の形態においては、傾斜部材16に連なる傾斜部材17を、移動手摺7が方向転換する反転部に沿って延在し、その延在された下端部17Eを、面一となるように内デッキカバー14に連結したので、内デッキカバー14と傾斜部材17との間に、内デッキカバー14の厚さ分の段差が発生することはなくなる。その結果、移動する乗客の衣服等が内デッキカバー14の端部に引っ掛かるような不都合は解消される。
【0017】
さらに、傾斜部材17の下端部17Eにおける張り出し寸法W2とW3との差分を、傾斜辺17Kを形成することで緩和しているので、ここに移動する乗客の衣服等が引っ掛かるような不都合は発生しない。
【0018】
ところで、移動手摺7が方向転換する反転部に沿って延在する傾斜部材17の内側には、欄干パネル11と面一となる端部欄干パネル18が位置するが、製造上や強度上あるいは材料の歩留まりを考慮すると、傾斜部材17と端部欄干パネル18とを一体的に形成することが望ましい。
【0019】
ところで以上説明の実施の形態は、乗客コンベアとして、エスカレーターを説明したが、エスカレーターに限らず、踏板に段差が生じない電動道路にも適用できるのは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による乗客コンベアの一実施の形態を示すエスカレーターの概略側面図。
【図2】図1のエスカレーターの上階床側の欄干終端部を示す拡大図。
【図3】図2のA−A線に沿う拡大縦断面図。
【図4】図2のB−B線に沿う拡大横断面図。
【符号の説明】
【0021】
1…エスカレーター、2…上階床、3…下階床、4…枠体、5…踏段、6…欄干、7…移動手摺、8…上部乗降床、9…下部乗降床、10…支柱、11…欄干パネル、12…手摺枠、13…外デッキカバー、14…内デッキカバー、15…スカートガード、16,17…傾斜部材、17E…下端部、18…端部欄干パネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結された複数の踏段の進行方向両側に立設された欄干と、この欄干が、支柱と、この支柱に支持された欄干パネルと、この欄干パネルの下部を覆う内デッキカバーと、前記支柱の先端部に支持された手摺枠と、この手摺枠に案内されて移動する移動手摺とを備え、前記欄干パネルを前記移動手摺よりも外側に位置させると共に、前記欄干パネルと前記手摺枠との間を塞ぐ傾斜部材を設けた乗客コンベアにおいて、前記傾斜部材を前記移動手摺が反転する反転部に沿って延在して前記内デッキカバーに面一となるように連結したことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
無端状に連結された複数の踏段の進行方向両側に立設された欄干と、この欄干が、支柱と、この支柱に支持された欄干パネルと、この欄干パネルの下部を覆う内デッキカバーと、前記支柱の先端部に支持された手摺枠と、この手摺枠に案内されて移動する移動手摺とを備え、前記欄干パネルを前記移動手摺よりも外側に位置させると共に、前記欄干パネルと前記手摺枠との間を塞ぐ傾斜部材を設けた乗客コンベアにおいて、前記傾斜部材を前記移動手摺が反転する反転部に沿って延在して面一となるように前記内デッキカバーに連結し、前記移動手摺が反転する反転部に沿って延在する前記傾斜部材とその内側に位置する欄干パネルとを一体に構成したことを特徴とする乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−297050(P2008−297050A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143613(P2007−143613)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000232944)日立水戸エンジニアリング株式会社 (227)
【Fターム(参考)】