説明

乗客コンベア

【課題】本発明は、溶接を行うことなく枠体を組立てることができ、さらにリニューアル時の解体においても枠体の分解を容易に行いえる乗客コンベアを提供することにある。
【解決手段】本発明は、建築構造物に設置された枠体2を、間隔をあけて左右に対向する側板9A,9Bとこの側板の底部を連結する底板9Cとを板材を折り曲げて形成した断面U字状部材と、前記左右の側板9A,9Bの間隔を保持する横桁部材11,12とで構成すると共に、前記断面U字状部材と横桁部材11,12とをねじ締結により連結したのである。
上記構成とすることで、枠体2を溶接を用いずに枠体を組立てることができ、その結果、枠体2の分解時には、ねじ締結を解くだけで環境へ負荷をかけずに容易に枠体を分解できるので、リニューアル作業時間を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエスカレーターや電動道路等の乗客コンベアに係り、特に、その枠体を工夫した乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、乗客コンベアの枠体は、上弦材と下弦材との間を縦部材や斜め部材で連結して構成した左右の側枠体と、これら左右の側枠体を連結する横桁部材とでトラス構造を形成している。しかしながら、トラス構造の枠体は、多くの部品を溶接により連結しているために、溶接熱により連結部材に変形が生じ易く、その変形の修正に多くに時間と労力を費やしていた。
【0003】
そこで、溶接箇所を少なくして溶接熱による変形を抑制するために、例えば特許文献1の図5に示すように、側枠体を鋼板で成形し、これに横桁部材を溶接して連結することが既に提案されている。
【0004】
【特許文献1】実公昭58−42373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の構成によれば、溶接箇所は減少するものの、溶接による部品の連結を行っているので、依然として溶接熱による部品の変形は存在し、その変形の修正作業が必要となる問題がある。
【0006】
さらに、溶接により部品の連結を行っているので、リニューアル時の枠体の解体作業に、溶接箇所をガスバーナなどで溶断して分解しなければならず、リニューアル作業時間を多大なものとするほか、ガスバーナによる溶断作業のために環境への負荷が高いものとなっていた。
【0007】
本発明の目的は、溶接を行うことなく枠体を組立てることができ、さらにリニューアル時の解体においても枠体の分解を容易に行いえる乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために、建築構造物に設置された枠体と、この枠体に構成部材を設置した乗客コンベアにおいて、前記枠体を、間隔をあけて左右に対向する側板とこの側板の底部を連結する底板とを板材を折り曲げて形成した断面U字状部材と、前記左右の側板の間隔を保持する横桁部材とで構成すると共に、前記断面U字状部材と横桁部材とをねじ締結により連結したのである。
【0009】
上記のように板材を折り曲げた断面U字状部材を用いることで、上弦材と下弦材との間に溶接により縦部材や斜め部材を連結して形成した側枠体を省略することができ、また、断面U字状部材の左右の側板に横桁部材をねじ締結によって連結することで、溶接を用いずに枠体を組立てることができる。その結果、枠体の分解時には、ねじ締結を解くだけで環境へ負荷をかけずに容易に枠体を分解できるので、リニューアル作業時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明によれば、溶接を行うことなく枠体を組立てることができ、さらにリニューアル時の解体においても枠体の分解を容易に行いえる乗客コンベアを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明による乗客コンベアの一実施の形態を、図1〜図3に示すエスカレーターに基づいて説明する。
【0012】
エスカレーター1は、建築構造物の上階床USと下階床DSに縣架された枠体2と、この枠体2の長手方向両端の上部に設置した乗降床3A,3Bと、前記枠体2内において前記乗降床3A,3B間を無端状に連結されて循環移動する複数の踏段4と、前記枠体2内に設置され前記複数の踏段4を循環駆動する駆動装置5と、前記踏段4の幅方向両側に対向する前記枠体2に立設した左右の欄干6A,6Bと、この欄干6A,6Bの周縁を前駆踏段4の移動速度に同期して案内移動される移動手摺7とを有している。
【0013】
前記枠体2は、階床高さが短い特殊なエスカレーターにおいては、全長が連続して構成されたものでも製作可能であるが、通常の標準的なエスカレーターにおいては、輸送時や建築構造物内への搬入を考慮して、上部水平枠体2A、中間傾斜枠体2B,2C、下部水平枠体2Dのように複数に分割されている。そして隣接する上部水平枠体2Aと中間傾斜枠体2B、中間傾斜枠体2B,2C、中間傾斜枠体2Cと下部水平枠体2Dは、夫々連結部材8A〜8Cによって連結されている。
【0014】
ところで、分割された各枠体2A〜2Dの基本構成は略同じ構成であるので、中間傾斜枠体2Cに基づいて詳細な枠体構造を説明する。
【0015】
中間傾斜枠体2Cである断面U字状部材ユニットは、間隔をあけて対向する左右の側板9A,9Bとこれら側板9A,9Bの下端部を連結する底板9Cとを板材を折り曲げて形成した断面U字状部材と、この断面U字状部材の側板9A,9Bの対向間隔を保持するために側板9A,9Bに跨って連結した横桁部材11とを有する。
【0016】
前記左右の側板9A,9Bの上端部には、互いに対向する方向に折り曲げて形成した上面部10A,10Bがあり、この折り曲げられた上面部10A,10Bを強度部材として利用したり、構成部品の取り付け座として利用したりしている。
【0017】
また、前記横桁部材11は、板材を断面L型に折り曲げて形成され、往路側の踏段4Aと帰路側の踏段4Bとの間の空間を利用して前記左右の側板9A,9Bにねじ締結によって連結されている。そして、断面U字状部材の底板9Cにも、補強部材として、板材を断面L型に折り曲げて形成した横桁部材12がねじ締結によって固定されている。
【0018】
一方、前記横桁部材11の位置で、左右の側板9A,9Bの互いに対向する板面に、その高さ方向に亘って、板材によって形成されたレール支持部材13A,13Bが位置し、上面部10A,10B、側板9A,9B、底板9C、横桁部材11に対してねじ締結によって固定されている。これらレール支持部材13A,13Bには、往路側の踏段4Aの前輪4Fと後輪4Rとを案内する往路側レール14Aをねじ締結により固定する取り付け部15Aと、帰路側の踏段4Bの後輪4Rを案内する帰路側レール14Bをねじ締結により固定する取り付け面15Bと、帰路側の踏段4Bの前輪4Fを案内する帰路側レール14Cをねじ締結により固定する取り付け面15Cが折り曲げによって形成されている。また、レール支持部材13A,13Bの取り付け部15Aよりも高位置には、後述するスカートガード16をねじ締結によって固定する取り付け面15Dも折り曲げによって形成されている。
【0019】
前記断面U字状部材の上面部10A,10Bには、夫々ブラケット16A,16Bがねじ締結によって支持されており、このブラケット16A,16Bを利用して前記欄干6A,6Bが固定されると共に、欄干6A,6Bの下部を覆う内デッキカバー17A,17B及び外デッキカバー18A,18Bがねじ締結によって固定されている。前記スカートガード16の上端部もこのブラケット16A,16Bにねじ締結によって固定されている。
【0020】
一方、前記レール支持部材13A,13Bの下方には、取り付け面15Dが折り曲げて形成されており、この取り付け面15Dに、前記底板9C上の横桁部材12に底部を支持させたオイルパン19がねじ締結によって固定されている。
【0021】
このような中間傾斜枠体(断面U字状部材ユニット)2Cの構成を、上部水平枠体2A、中間傾斜枠体2B、下部水平枠体2Dにも適用すると共に、例えば図3に示すように、連結部材片8B1,8B2で挟み込んでねじ締結により中間傾斜枠体2B,2Cを連結するのと同様な構成で、これらを断面U字状部材の表裏から連結部材8A〜8Cに連結して枠体2を構成している。
【0022】
このように構成することで、溶接を用いずに枠体2を組立てることができるので、溶接による部品の熱変形はなく、特に、往路側レール14A、帰路側レール14B,14Cを精度よく固定することができる。また、リニューアル時の分解の際は、ねじ締結を解くことでガスバーナなどによる溶断を行うことなく枠体2を分解することができるので、火災の危険性も環境への負荷も無くすことができる。
【0023】
ところで、上記実施の形態は、断面U字状部材ユニットである上部水平枠体2A、中間傾斜枠体2B,2C、下部水平枠体2Dを、断面U字状部材とレール支持部材13A,13B及び横桁部材11,12を用いて構成したものである。しかし、特に、精度よい組立作業が要求されるのは、往路側レール14A、帰路側レール14B,14Cの位置決め作業に時間を費やす中間傾斜枠体2B,2Cである。そのために、板材を折り曲げて断面U字状部材を形成するのは、中間傾斜枠体2B,2Cのみとし、多少組立分解に作業時間を費やすが、上部水平枠体2Aと下部水平枠体2Dはトラス構造の枠体ユニットとしてもよい。
【0024】
また、上記実施の形態においては乗客コンベアとしてエスカレーターを一例に説明したが、傾斜配置の電動道路や水平配置の電動道路にも本発明が適用できるのは云うまでもない。
【0025】
さらに、上記実施の形態において、断面U字状部材ユニットとは、少なくとも断面U字状部材と横桁部材11とを有したものであるが、これら以外にレール支持部材13A,13Bやその他の構成部品を付加して断面U字状部材ユニットとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による乗客コンベアの一実施の形態であるエスカレーターを示す外力側面図。
【図2】図1のA−A線に沿う縦断拡大図。
【図3】図1のB−B線に沿う一部拡大図。
【符号の説明】
【0027】
1…エスカレーター、US…上階床、DS…下階床、2…枠体、2A…上部水平枠体、、2B,2C…中間傾斜枠体、2D…下部水平枠体、3A,3B…乗降床、4(4A,4B)…踏段、4F…前輪、4R…後輪、5…駆動装置、6A,6B…欄干、7…移動手摺、8A〜8C…連結部材、8A1,8A2…連結部材片、9A,9B…側板、9C…底板、10A,10B…上面部、11,12…横桁部材、13A,13B…レール支持部材、14A…往路側レール、14B,14C…帰路側レール、15A〜15D…取り付け面、16…スカートガード、16A,16B…ブラケット、17A,17B…内デッキカバー、18A,18B…外デッキカバー、19…オイルパン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造物に設置された枠体と、この枠体に構成部材を設置した乗客コンベアにおいて、前記枠体を、間隔をあけて左右に対向する側板とこの側板の底部を連結する底板とを板材を折り曲げて形成した断面U字状部材と、前記左右の側板の間隔を保持する横桁部材とで構成すると共に、前記断面U字状部材と横桁部材とをねじ締結により連結したことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
建築構造物に設置された枠体と、この枠体に構成部材を設置した乗客コンベアにおいて、前記枠体を、間隔をあけて左右に対向する側板とこの側板の下部を連結する底板とを板材を折り曲げて形成した断面U字状部材と、この断面U字状部材の対向する側板に夫々固定されるレール支持部材と、前記左右の側板の間隔を保持する横桁部材とで構成すると共に、前記断面U字状部材とレール支持部材と横桁部材とをねじ締結により連結したことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項3】
前記左右の側板の上部端を、互いに対向する方向に折り曲げられて強度部材としたことを特徴とする請求項1又は2記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記横桁部材は、複数設けられ、その一部は往路側レールと帰路側レールとの間において前記断面U字状部材に連結され、残りは帰路側レールよりも下方において前記断面U字状部材に連結されていることを特徴とする請求項2又は3記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記横桁部材は、複数設けられ、その一部は往路側レールと帰路側レールとの間において前記断面U字状部材に連結されると共に前記レール支持部材に連結され、残りは帰路側レールよりも下方において前記断面U字状部材に連結されていることを特徴とする請求項2又は3記載の乗客コンベア。
【請求項6】
建築構造物に設置された枠体と、この枠体に構成部材を設置した乗客コンベアにおいて、前記枠体を、間隔をあけて左右に対向する側板とこの側板の底部を連結する底板とを折り曲げて形成し前記枠体の長手方向に複数に分割した断面U字状部材ユニットと、これら断面U字状部材ユニットを連結する連結部材と、前記左右の側板の間隔を保持する横桁部材とで構成すると共に、前記断面U字状部材ユニットと連結部材との間及び前記断面U字状部材ユニットと横桁部材との間をねじ締結により連結したことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項7】
建築構造物に設置された枠体と、この枠体に構成部材を設置した乗客コンベアにおいて、前記枠体を、間隔をあけて左右に対向する側板とこの側板の底部を連結する底板とを板材を折り曲げて形成し前記枠体の長手方向に複数に分割した断面U字状部材ユニットと、隣接する断面U字状部材ユニットを連結する連結部材と、前記断面U字状部材ユニットの対向する側板に夫々固定されるレール支持部材と、前記左右の側板の間隔を保持する横桁部材とで構成すると共に、前記断面U字状部材ユニットと連結部材との間、前記断面U字状部材ユニットとレール支持部材との間及び前記断面U字状部材ユニットと横桁部材との間をねじ締結により連結したことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項8】
建築構造物に設置された枠体と、この枠体に構成部材を設置した乗客コンベアにおいて、前記枠体を、長手方向両端に位置するトラス構造の枠体ユニットと、このトラス構造の枠体ユニットの間に位置する断面U字状部材ユニットと、これらトラス構造の枠体ユニットと断面U字状部材ユニットを連結する連結部材とで構成し、前記断面U字状部材ユニットを、間隔をあけて左右に対向する側板とこの側板の底部を連結する底板とを板材を折り曲げて形成した断面U字状部材と、この断面U字状部材ユニットの対向する側板に夫々固定されるレール支持部材と、前記左右の側板の間隔を保持する横桁部材とで構成すると共に、前記断面U字状部材ユニットとトラス構造の枠体ユニットと連結部材との間、前記断面U字状部材ユニットとレール支持部材との間及び前記断面U字状部材ユニットと横桁部材との間をねじ締結により連結したことを特徴とする乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−100418(P2010−100418A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275035(P2008−275035)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】