説明

乗客コンベア

【課題】乗降口に雪が付着したり、その雪の水分が広がるようなときに、それを速やかに除去し、乗降板の上を滑りにくい乾燥状態に保って、乗客の転倒を的確に防止することができる乗客コンベアを提供する。
【解決手段】無端走行する乗客搬送用のステップ列2と、このステップ列2に対して乗客が乗降するための乗降口5と、この乗降口5に設けられた乗客踏み込み用の乗降板7と、乗降口5の周辺の外気温度を検出する温度センサ17と、乗降板7に設けられた面状ヒータ12と、乗降板7の上に向けて空気を送風することが可能な送風ファンとを備え、温度センサ17が所定の設定温度以下の温度を検出したときに、その検出信号に基づいて面状ヒータ12及び送風ファンが駆動され、面状ヒータ12で乗降板7が加熱されるとともに、吹出し口20から乗降板7の上に空気が送風される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エスカレータや動く歩道等の乗客を搬送する乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアとしての例えばエスカレータは、建屋の下階と上階との間に亘って据え付けられ、その端部の乗降口を通って乗客が乗り降りする。乗降口の床部には、乗客が踏み込むための金属製の乗降板が設けられている。
【0003】
ところで、例えば建屋の出入口の近くに、或いは屋外に設置されるようなエスカレータにあっては、そのエスカレータの乗降板の上に冬期降雪時の雪が吹き込んで付着したり、或いはエスカレータを利用しようとする乗客の靴や傘を介して雪が付着し、またその雪の水分が広がってしまうことがある。このように乗降板の上に雪が付着したり水分が広がったりすると、乗客の足元が滑りやすくなり、転倒等の危険が増してしまう。
【0004】
特開平10−316349号公報には、エスカレータの乗降口に雪検知器を設け、乗降口に雪が堆積したときに、それを雪検知器で検知してエスカレータを休止させる安全装置が開示されている。
【特許文献1】特開平10−316349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開平10−316349号公報のように、エスカレータの乗降口に雪が堆積したときにそれを雪検知器で検知してエスカレータを休止させる手段では、乗降板の上に雪が付着する程度のときや、その雪が解けて水分が広がる程度のときには、それを検知することができない。したがって、乗降板の上に雪が付着したり水分が広がり、乗降板の上が滑りやすくなって転倒の恐れが生じてしまう。
【0006】
この発明はこのような点に着目してなされたもので、その目的とするところは、乗降板の上に雪が付着したり、その雪の水分が広がるようなときに、それを速やかに除去し、乗降板の上を滑りにくい乾燥状態に保って、乗客の転倒を的確に防止することができる乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、請求項1の発明は、無端走行する乗客搬送用のステップ列と、前記ステップ列に対して乗客が乗降するための乗降口と、前記乗降口に設けられた乗客踏み込み用の乗降板と、前記乗降口の周辺の外気温度を検出する温度検出手段と、前記乗降板を加熱することが可能な加熱手段と、前記乗降板の上に向けて空気を送風することが可能な送風手段と、前記温度検出手段が所定の設定温度以下の温度を検出するときに、その検出信号に基づいて前記加熱手段及び前記送風手段を駆動する制御を行なう制御手段とを具備することを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、前記乗降口には、前記ステップ列と同期して無端走行する手すりベルトの進入ガイド用のインレット部材が設けられ、前記送風手段は、前記インレット部材に形成された吹出し口と、前記インレット部材の内部に前記吹出し口に対向して設けられた送風ファンとで構成され、前記送風ファンが回転することで、前記吹出し口から前記乗降板の上に向けて空気を送風することを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、前記加熱手段が、前記乗降板の下面に設けられた面状ヒータで構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
この発明の乗客コンベアによれば、乗降板の上に雪が付着したり、その雪の水分が広がるようなときに、それを速やかに除去し、乗降板の上を滑りにくい乾燥状態に保って、乗客の転倒を的確に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1には、乗客コンベアの一例であるエスカレータの全体の構成を示してある。このエスカレータは、建屋の下階と上階との間に亘って据え付けられたトラス1と、このトラス1に組み込まれて無端走行する乗客搬送用のステップ列2と、このステップ列2の両側に配置するようにトラス1に取り付けられた欄干3とを備えている。
【0013】
欄干3の周縁には無端状の手すりベルト4が装着され、この手すりベルト4がステップ列2と同期して無端走行する。欄干3の下部には建屋の上下階の乗降口5間に亘って延びるように、乗客の足元を保護するためのスカート部6が設けられ、また上下階の各乗降口5には乗客誘導用の乗降板7が設けられている。そして例えば上階の乗降板7の下方には、エスカレータの運転を制御する制御手段としての制御盤8が設けられている。
【0014】
欄干3の周縁に沿って走行する手すりベルト4はその走行に応じて順次スカート部6内に進入する。すなわち手すりベルト4は、エスカレータの上昇運転時には上階の乗降口5側におけるスカート部6の端部からその内側に進入し、下降運転時には下階の乗降口5側におけるスカート部6の端部からその内側に進入する。
【0015】
そして手すりベルト4が進入するスカート部6の両端部には、その進入ガイド用のインレット部材9が設けられ、このインレット部材9を通して手すりベルト4がスカート部6内に進入する。
【0016】
図2には、エスカレータの下階側における乗降口5の外観を拡大して示してある。乗降口5の乗降板7にはその下面に加熱手段として面状ヒータ12が取り付けられている。また、スカート部6の側面には操作盤13が設けられ、こ操作盤13にアップダウン運転キー14、ブザー・停止キー15、照明キー16などと共に、乗降口5の周辺の外気温度を検出する温度検出手段としての温度センサ17が配設されている。
【0017】
乗降板7の両側に設けられた各インレット部材9の正面部にはそれぞれ吹出し口20が形成され、これら吹出し口20の開口面にルーバー20aが設けられている。図3にはインレット部材9の断面構造を示してあり、各インレット部材9の内部にはそれぞれ吸気ダクト21が設けられ、これら吸気ダクト21の一端部が吹出し口20に接続されている。吸気ダクト21の内部には、送風手段としての送風ファン22が吹出し口20と対向して設けられ、この送風ファン22が回転することにより、吸気ダクト21を通して吸い込まれた空気が吹出し口20から乗降板7の上面部に向けて送風される。
【0018】
なお、図3は下階の乗降口5の部分の構造を示しているが、上階の乗降口5の部分においても同様の構造となっている。
【0019】
図4には、電気回路の構成を示してあり、制御盤8には、その入力部に温度センサ17が接続され、出力部にヒータ駆動回路24を介して面状ヒータ12が、ファン駆動回路25を介して送風ファン22がそれぞれ接続されている。
【0020】
次に、この実施形態の作用について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
【0021】
エスカレータは制御盤8による制御で運転される(S1)。エスカレータの運転中には、温度センサ17により乗降口5の周辺の外気温度が検出され、その検出信号が制御盤8に送られる。そして制御盤8により、その検出温度が所定の設定温度、例えば5℃以下であるか否かが判断される(S2)。
【0022】
乗降口5の周辺の外気温度が5℃以下のような場合には、降雪時に乗降口5に雪が吹き込んだり、乗客の靴や傘を介して雪が持ち込まれたりして乗降板7に雪が付着する可能性が高い。
【0023】
S2で、乗降口5の周辺の外気温度が5℃以下であると判断されたときには、制御盤8による制御でヒータ駆動回路24を介して乗降板7の下面の面状ヒータ12が駆動されて発熱する(S3)。さらに、ファン駆動回路25を介して送風ファン22が駆動されて回転する(S4)。
【0024】
そして、面状ヒータ12により乗降板7が適度に加熱され、また各インレット部材9の吹出し口20から送風ファン22の回転で乗降板7の上に向けて空気が吹きかけられる。
【0025】
したがって、乗降板7の上に雪が付着する場合に、面状ヒータ12の熱でその雪が速やかに融かされ、またその融かされた雪の水分が吹出し口20から吹出される空気により速やかに蒸発して乗降板7の上面が乾燥状態に保たれる。このため、乗客が乗降板7の上に足を踏み込んでエスカレータに乗ろうとするとき、或いは降りようとするときに足を滑らすようなことがなく、安全にかつ安心して乗降することができる。
【0026】
S2で、乗降口5の周辺の外気温度が5℃を超えると判断されたとき、すなわち乗降板7の上に雪が付着している可能性のないときには、面状ヒータ12及び送風ファン22は駆動されない。したがって、面状ヒータ12及び送風ファン22に対する無駄な通電を避けることができる。
なお、この発明はエスカレータに適用する場合に限らず、動く歩道等の乗客コンベアにおいても同様に適用することができる。
【0027】
以上説明したように、この発明によれば、乗降口に雪が付着したり、その雪の水分が広がるようなときに、それを速やかに除去し、乗降板の上を滑りにくい乾燥状態に保って、乗客の転倒を的確に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の一実施形態に係る乗客コンベアを示す側面図。
【図2】その乗客コンベアの乗降口を拡大して示す斜視図。
【図3】その乗降口の要部の断面図。
【図4】電気回路の構成を示すブロック図。
【図5】作用を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0029】
1…トラス
2…ステップ列
3…欄干
4…手すりベルト
5…乗降口
6…スカート部
7…乗降板
8…制御盤
9…インレット部材
12…面状ヒータ
13…操作盤
17…温度センサ
20…吹出し口
20a…ルーバー
21…吸気ダクト
22…送風ファン
24…ヒータ駆動回路
25…ファン駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端走行する乗客搬送用のステップ列と、
前記ステップ列に対して乗客が乗降するための乗降口と、
前記乗降口に設けられた乗客踏み込み用の乗降板と、
前記乗降口の周辺の外気温度を検出する温度検出手段と、
前記乗降板を加熱することが可能な加熱手段と、
前記乗降板の上に向けて空気を送風することが可能な送風手段と、
前記温度検出手段が所定の設定温度以下の温度を検出するときに、その検出信号に基づいて前記加熱手段及び前記送風手段を駆動する制御を行なう制御手段と、
を具備することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記乗降口には、前記ステップ列と同期して無端走行する手すりベルトの進入ガイド用のインレット部材が設けられ、前記送風手段は、前記インレット部材に形成された吹出し口と、前記インレット部材の内部に前記吹出し口に対向して設けられた送風ファンとで構成され、前記送風ファンが回転することで、前記吹出し口から前記乗降板の上に向けて空気を送風することを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記加熱手段は、前記乗降板の下面に設けられた面状ヒータで構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗客コンベア。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−24023(P2010−24023A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189987(P2008−189987)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】