説明

乗客コンベア

【課題】本発明は、保守作業が容易で、摺動部材がハンドレールとの摩擦により磨耗した場合でも、ハンドレール内面帆布を損傷する恐れのない乗客コンベアを提供することを目的とする。
【解決手段】前記目的を達成するために本発明にかかる乗客コンベアは、無終端状に連結されて走行するステップ1と、ステップ1の側方に進行方向に沿って立設された欄干2と、欄干2の外縁に備えられたガイド本体6及び摺動部材8a,8bと、ガイド本体6及び摺動部材8a,8bによって欄干2外縁を案内されるハンドレール3とを備えた乗客コンベアにおいて、摺動部材8a,8bは弾性変形させてガイド本体6に取付けられ、摺動部材8a,8b自身の弾性力によりにガイド本体6に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エスカレーターや動く歩道などの乗客コンベア、特に乗客コンベアの欄干構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアは、乗客が乗るためのステップ、そのステップを駆動させ循環させるように構成されたレールや駆動機械などを内蔵する本体枠と、ハンドレールガイドによって案内されるハンドレール等から構成される欄干とを有している。そして、ハンドレールガイドはハンドレールフレームやハンドレールと接触する摺動部材などから構成されている。
【0003】
欄干の構成部品は、本体枠によって保持され、建屋に設置されるのが一般的である。ハンドレールフレームは、欄干のガラスパネル等の上部を挟圧する欄干パネルに締結された連結フレームに連結される。このハンドレールフレームは、ハンドレールと対向する平面部と、この平面部の中央部に設けられた溝部を有し、上部に摺動部材をビスで固定してハンドレールの走行方向に連続配置するものが知られている。また摺動部材をブラケットで抑え、ボルト固定するもの、ビスやボルトで固定するもの以外にも接着剤などで摺動部材をハンドレールフレームに固定するものもある。
【0004】
このような摺動部材は、ハンドレールと接する面が磨耗するため、材質にもよるが現在一般的に使用されている合成樹脂のもので数年に1度の交換を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−302372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術では、摺動部材の交換作業にてビス,ボルトの脱着を行うが、部品点数が多く、保守作業工数の多くの割合を占めていた。接着剤による固定方法もあるが、交換作業の際、ハンドレールフレームからの引き離しに時間がかかるため、保守作業時間で考えた場合、ビス,ボルトの脱着作業時間と大差ない時間がかかってしまう。
【0007】
また、ハンドレールと接触する摺動部材や連結部分をビス,ボルトで固定するため、摺動部材がハンドレールとの摩擦により磨耗した場合に、ビス,ボルトの頭が露出し、ハンドレール内面帆布を損傷する恐れがあった。
【0008】
本発明は前記課題に鑑みなされたものであり、保守作業が容易で、摺動部材がハンドレールとの摩擦により磨耗した場合でも、ハンドレール内面帆布を損傷する恐れのない乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために本発明にかかる乗客コンベアは、無終端状に連結されて走行するステップと、前記ステップの側方に進行方向に沿って立設された欄干と、前記欄干の外縁に備えられたガイド本体及び摺動部材と、前記ガイド本体及び前記摺動部材によって前記欄干外縁を案内されるハンドレールとを備えた乗客コンベアにおいて、前記摺動部材は弾性変形させて前記ガイド本体に取付けられ、前記摺動部材自身の弾性力により前記ガイド本体に固定されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保守作業が容易で、摺動部材がハンドレールとの摩擦により磨耗した場合でも、ハンドレール内面帆布を損傷する恐れのない乗客コンベアが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】乗客コンベアの全体の概要を示す側面図である。
【図2】欄干の概要を示す縦断面図である。
【図3】欄干のハンドレール部分を拡大した要部断面図である。
【図4】ハンドレールガイドを取付けているところを示す要部断面図である。
【図5】ハンドレールガイドを取付けたところを示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図1〜図5により説明する。
【0013】
図1は乗客コンベアの全体の概要を示す側面図である。同図に示すようにステップ1は無終端状に連結されて循環駆動できるように構成されている。また、ステップ1の側端に隣接して欄干2が立設される。欄干2の外縁部に沿って、乗客が手をのせることのできるハンドレール3が配置される。ハンドレール3も循環駆動できるように無終端状に構成されている。そしてステップ1とハンドレール3は、駆動装置4によって同一方向に同一速度で同期して駆動するよう構成されている。
【0014】
図2は欄干の概要を示す縦断面図である。欄干2は乗客コンベアから乗客が転落するのを防止するためにステップ1の駆動方向に向かって左右両側に設けられている。ハンドレール3を案内するハンドレールガイド5は欄干2の外縁部に配置される。
【0015】
図3は欄干のハンドレール部分を拡大した要部断面図である。同図に示すように本実施例におけるハンドレールガイド5は、本体枠によって下端が保持されたガラスパネル7の上端に設けられたハンドレールフレームであるガイド本体6と、ガイド本体6に設けられたハンドレール3と接触する摺動部材8から構成されている。本実施例におけるガイド本体6は、その断面においてガラスパネル7を中心とした時に、その上端に左右外方に張り出す鍔状部9が設けられている。この鍔状部9の上面はほぼ平面状となっていて、ガイド本体6中心方向側端部が鍔状部9の左右外方に張り出し部分の厚さとほぼ同じ高さの段部11となっている。そして鍔状部9の中心側下方部分がガイド本体6と接続されている。
【0016】
摺動部材8は本実施形態では2つの摺動部材8a,8bに分けられ、左右の鍔状部9にそれぞれ取付けられている。摺動部材8の形状は鍔状部9を覆うよう構成されていて、鍔状部9の左右外方突出部を覆う部分はC字状の形状、鍔状部9の上面を覆う部分は平面状となっていると共に、ガイド本体6の中心方向側の鍔状部9の段部に摺動部材8の内面が係止するように係止部12を係止させて摺動部材8で鍔状部9を覆う構成となっている。また摺動部材8のガイド本体6の中心方向側の端部もガイド本体6上面に沿うように突出片10が設けられており、段部形状となっている。
【0017】
図4はハンドレールガイドを取付けているところを示す要部断面図である。以下本実施例におけるガイド本体6への摺動部材8の取付け方について説明する。
【0018】
本実施例におけるガイド本体6への摺動部材8a,8bの取付け方としては、摺動部材8a,8bを上方向に軽く曲げ、まず摺動部材8のC字状部をガイド本体6から左右に突出した鍔状部9の部分に装着する。そして摺動部材8a,8bの係止部12が鍔状部9の段部11に係止可能な位置まで摺動部材8a,8bを挿し込む。ここで摺動部材8a,8bの係止部12を段部11に引っかけるように取付けて係止させる。
【0019】
図5はハンドレールガイドを取付けたところを示す要部断面図である。図5に示すように、摺動部材8a,8bは取付け時に弾性変形を利用して取付けられると共に、取付け後は自身の弾性力によりネジや接着剤などを使用しなくても鍔状部9に係止して固定することができる。
【0020】
なお、本実施例においては、摺動部材8の上面に溝13が設けられている。この溝13を設けることにより、摺動部材8の取付け時に弾性変形させる際の垂直方向への柔軟性を増すことができる。このため、摺動部材8のガイド本体6への取付けが容易になると共に、柔軟性を向上したことにより摺動部材8が塑性変形してしまってガイド本体6中心方向側端部が浮き上がることを低減できる。
【0021】
また摺動部材8の溝13は、ハンドレールの駆動方向に一致して設けられている。即ち溝はハンドレール3の移動する方向と平行な方向に設けられているため、ハンドレール3の内面帆布と接する長手方向において抵抗が発生し難く、ハンドレール3の内面帆布が溝13に引っかかることなく、円滑に駆動することができる。
【0022】
また、ガイド本体6から摺動部材8を取外す方法としては、摺動部材8a,8bの突出片10を上方向への持ち上げるようにして、鍔状部9の段部11に引っかからない程度曲げて摺動部材8の係止部12を段部11より外し、摺動部材8のC字状部をガイド本体6の左右に張り出した鍔状部9から引き抜くようにして取外す。このように摺動部材8に突出片10を設けることにより、上方向への曲げが容易にできる。
【0023】
なお、摺動部材8は取付けの際に弾性変形した後、元に戻り、その弾性力により鍔状部9に係止固定することができ、かつ、摩擦が少ない物性を持つ材料により成形することができる。また、図5に示すように突出片10の下面側に爪等が入る程度の微小な隙間14を設けると、取付け取外しの作業性が向上できる。
【0024】
さらに溝13は1本設ける場合には、鍔状部9の上面平面部に対応する摺動部材8の上面平面部に、2本設ける場合には、鍔状部9のガイド本体6の左右外方端部側の上部近傍と段部11の上部近傍に設けると、取付け,取外しの作業性がより向上する上、取付け時の摺動部材8の塑性変形を防止してガイド本体6中心方向側端部が浮き上がることを低減すると共に、自身の弾性力によりしっかりと摺動部材8を鍔状部9に取付け固定することが可能である。
【0025】
このように本実施形態によればハンドレールガイド5における摺動部材8の取付けにおいて、ビス,ボルトを使用せずに取付けることができるため、部品点数が低減され、取付作業や交換作業の作業工数及び作業時間が低減される。
【0026】
また、ビス,ボルトを使用しないことで、摺動部材の磨耗によって露出したビス,ボルトの頭によるハンドレール内面帆布の損傷を防止する乗客コンベアを提供できる。
【符号の説明】
【0027】
1 ステップ
2 欄干
3 ハンドレール
4 駆動装置
5 ハンドレールガイド
6 ガイド本体
7 ガラスパネル
8(8a,8b) 摺動部材
9 鍔状部
10 突出片
11 段部
12 係止部
13 溝
14 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無終端状に連結されて走行するステップと、前記ステップの側方に進行方向に沿って立設された欄干と、前記欄干の外縁に備えられたガイド本体及び摺動部材と、前記ガイド本体及び前記摺動部材によって前記欄干外縁を案内されるハンドレールとを備えた乗客コンベアにおいて、
前記摺動部材は弾性変形させて前記ガイド本体に取付けられ、前記摺動部材自身の弾性力によりに前記ガイド本体に固定されていることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
請求項1において、前記ガイド本体は、その断面において、上端の左右外方に張り出し、上面がほぼ平面状でガイド本体の中心方向側端部が段部となっている鍔状部を有し、
前記ガイド本体左右の前記鍔状部にそれぞれに前記摺動部材が取付けられ、
前記摺動部材は、前記鍔状部の左右外方突出部を覆うC字状部、前記鍔状部の上面を覆う平面状部、前記段部に係止する係止部、及び前記ガイド本体上面に沿う方向に突出する突出片が設けられていることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記摺動部材には、前記ハンドレールの駆動方向と平行な方向に溝が設けられていることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項4】
請求項3において前記溝は、前記鍔状部の上面平面部に対応する前記摺動部材の上面平面部又は前記鍔状部のガイド本体の左右に張り出した端部の上部近傍及び前記段部の上部近傍に設けたことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項5】
請求項2において、前記突出片の下面側に隙間が設けられていることを特徴とする乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−63327(P2011−63327A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212626(P2009−212626)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】