説明

乗客コンベア

【課題】欄干装置を省スペースで配置でき、限定されていた欄干照明の光の方向を任意で設計可能となり、欄干照明カバーが容易に取り付けられ、内面パネルの構成に無関係に欄干照明が配置できる乗客コンベアを提供することにある。
【解決手段】乗客コンベアは、無端状に連結されて走行する複数の踏段と、踏段走行方向に沿って立設された欄干と、欄干の上部に取り付けられる欄干照明装置を支持するデッキとを具備した乗客コンベアにおいて、前記デッキは、欄干に固定された固定側デッキ3と固定側デッキ3に取り付けられる非固定側カバー4とからなり、非固定側カバー4は透光性であって、固定側デッキ3に対して水平方向に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エスカレータや電動道路等の乗客コンベアにおいて、欄干照明を備える乗客コンベアが知られており、この従来の乗客コンベアの欄干照明としては、照光が下方に向けられたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−56290号公報
【特許文献2】実開平2−2388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の乗客コンベアにおける欄干照明装置は、欄干デッキの外側下面に配置され、更にその下面側に欄干照明カバーが覆い取り付けられていたため、設置スペースが広大となる構成であり、欄干照明カバーの取付作業も欄干の外側から下方へ腕を巻き返す作業があり作業性が悪くなる。
【0005】
また、照明光の方向も限定されており、欄干照明は内面パネルの構成がガラスパネルタイプの取付は可能であったが、不透明タイプ例えばステンレスパネルタイプへの取り付けはできない問題がある。
【0006】
本発明の実施形態は、上記問題点を鑑みて、欄干装置を省スペースで配置でき、限定されていた欄干照明の光の方向を任意で設計可能となり、欄干照明カバーが容易に取り付けられ、内面パネルの構成に無関係に欄干照明が配置できる乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る乗客コンベアは、無端状に連結されて走行する複数の踏段と、踏段走行方向に沿って立設された欄干と、欄干の上部に取り付けられる欄干照明装置を支持するデッキとを具備した乗客コンベアにおいて、前記デッキは、欄干に固定された固定側デッキと固定側デッキに取り付けられる非固定側カバーとからなり、非固定側カバーは透光性であって、固定側デッキに対して水平方向に取り付けられていることを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る乗客コンベアの欄干要部縦断面図である。
【図2】図1の要部拡大断面図である。
【図3】図2において、固定側デッキから非固定側カバーを取り外した状態を表す要部拡大縦断面図である。
【図4】非固定側カバーに遮光材を配置した状態を表し、(a)は要部拡大縦断面図であり、(b)は手摺の一部を切欠して表した平面図である。
【図5】図1に示す欄干装置を備えた乗客コンベアの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施例に係る乗客コンベアについて、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0010】
図1において、1は乗客コンベアの欄干の一部を構成する内面パネルを示し、該内面パネル1は、ガラスパネル又はステンレスパネルで形成され、走行移動する踏段2の両側に踏段2の走行方向と平行に立設されている。そして、図2に示すように、この内面パネル1の上部には、その内側から外側かけて内面パネル1を跨ぐように、かつ、内面パネル1の全長にわたって固定側デッキ3が取り付けられている。また、内面パネル1の上部外側において該固定側デッキ3に対して水平方向に、かつ、固定側デッキ3の全長にわたって非固定側カバー4が取り付けられている。これら固定側デッキ3と非固定側カバー4とにより欄干照明装置を支持するデッキが構成される。該欄干照明装置(図示せず)は、固定側デッキ3に取付金具を介して設置され、非固定側カバー4の内部に配置される。
【0011】
上記固定側デッキ3は、図3に示すように、その内部側を構成する肉厚の支持フレーム3bと支持フレーム3bを覆う形態をなす薄板状の主フレーム3cとから構成される。前記支持フレーム3bは、内面パネル1を跨ぐ形状をなし、内面パネル1の外側下部側には嵌合凹部3aを奥部に形成した挿入溝が設けられている。前記主フレーム3cは、支持フレーム3bを内面パネル内側から外側にかけて覆う形態をなし、主フレーム3cには、内面パネル1の外側上部側に位置し、カバー保持金具5を備えた突出端3dを有している。該カバー保持金具5は、固定側デッキ3の上部内面に、接着、溶着又は締結部品により複数箇所に固定配置されている。
【0012】
上記非固定側カバー4は、図3に示すように、踏段進行方向に任意の長さで固定側デッキ3に分割配置されるものであって、透光性の材料から構成されており、断面コの字型の形態をなす。すなわち、非固定側カバー4は、一般的には樹脂やガラス等の透光できる材質で断面コの字型に構成されているので、非固定側カバー4の内部に照明装置を配置することにより3方向に光を照射することができる。そして、非固定側カバー4の上部側には、カバー上面段付き端部4bが形成されており、下部側には、先端に嵌合凸部4aを設けた取付端部を有している。
【0013】
上記のように、固定側デッキ3及び非固定側カバー4を構成したことにより、固定側デッキ3の突出端3d及びカバー保持金具5と、非固定側カバー4のカバー上面段付き端部4bとにより上部取付手段が構成される。すなわち、固定側デッキ3の突出端3dとカバー保持金具5とにより非固定側カバー4のカバー上面段付き端部4bが挟み込まれて、固定側デッキ3の上部に非固定側カバー4の上部が保持されることになる。
【0014】
なお、非固定側カバー4におけるカバー上面段付き端部4bは、固定側デッキ3の突出端3dの厚み分だけ肉薄にした段差が形成されており、固定側デッキ3に非固定側カバー4のカバー上面段付き端部4bを挟み込んだときに、固定側デッキ表面と非固定側カバー表面との境界に段差が生じないようになっている。そのため、美観が向上すると共にフラットな面となるので、装飾しやすい利点がある。
【0015】
また、固定側デッキ3において嵌合凹部3aを奥部に形成した挿入溝と非固定側カバー4において嵌合凸部4aを設けた取付端部とにより下部取付手段が構成される。すなわち、非固定側カバー4の取付端部を固定側デッキ3の挿入溝に差し込み、非固定側カバー4の下面にある嵌合凸部4aを固定側デッキ3の外側下部の嵌合凹部3aに噛み合わさせると固定側デッキ3の下部に非固定側カバー4の下部が固定され、容易に非固定側カバー4が脱落しないこととなる。
【0016】
以上のように構成したことにより、図2に示すように、固定側デッキに対して非固定側カバー4が取り付けられることになる。また、図3に示すように、非固定側カバー4を固定側デッキ3から分離させることができる。すなわち、非固定側カバー4の下面を持ち上げることで、非固定側カバー4の下面にある嵌合凸部4aと固定側デッキ3の外側下部における嵌合凹部3aとの噛み合いが外れ、水平方向に固定側デッキ3と反対側に非固定側カバー4を押し出すことで、非固定側カバー4のカバー上面段付き端部4bが固定側デッキ3のカバー保持金具5から引き抜くことができる。このように、本実施例に係る乗客コンベアは、欄干照明装置において、容易に非固定側カバーを取り外し及び取り付けすることができ、作業性が向上する。
【0017】
図4(a)(b)は非固定側カバー4に遮光材6を設けた状態を示す。遮光材6を設けることで、任意の方向に照射できる利点がある。また、遮光材6に多種形状の穴を設けることで、任意の形の光が容易に創作でき、装飾効果を向上させることができる。本実施例においては、丸、三角、四角の切り抜き部分を設けた接着テープ状の遮光材6を示したが、切り抜き部分の形状は、これに限られるものではなく、例えばシーズンやイベントなどに応じた種々の形状や、情報伝達手段として機能する文字の切り抜きであってもよい。遮光材そのものとしても接着テープ状の遮光材に限られるものではなく、例えば塗装などによる遮光材であってもよい。
【0018】
図5は、非固定側カバー4の配置範囲を示す。上階インレット7aから下階インレット7bにかけて、固定側デッキ3が設けられ、その範囲において非固定側カバー4が配置できる。また、非固定側カバー4は、踏段走行方向に分割されて、部分的に着脱が可能になっている。したがって、補修、点検又は部品取替などのメンテナンス時に部分的に非固定側カバー4を取り外して作業を行うことができるので便利である。
【0019】
以上説明したように本発明の実施形態の乗客コンベアによれば、デッキを分割で構成することで、省スペースで欄干照明装置を配置できる。また、任意に照射方向が設定でき、任意で光の形も構成できる。さらに、内面パネルの構成に無関係に、欄干照明が配置でき、取付作業性が向上する。
【0020】
なお、上記実施の形態は乗客コンベアとして説明したが、基本構成が乗客コンベアと同じで踏段間に段差を生じない動く歩道についても本発明が適用できることはもちろんである。
【符号の説明】
【0021】
1・・・・内面パネル 2・・・・踏段
3・・・・固定側デッキ 3a・・・固定側デッキ下部の嵌合凹部
3b・・・支持フレーム 3c・・・主フレーム
3d・・・固定側デッキ上部の突出端
4・・・・非固定側カバー 4a・・・非固定側カバー下部の嵌合凸部
4b・・・カバー上面段付き端部 5・・・・カバー保持金具
6・・・・遮光材 7a・・・上階インレット
7b・・・下階インレット 8・・・・手摺ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結されて走行する複数の踏段と、踏段走行方向に沿って立設された欄干と、欄干の上部に取り付けられる欄干照明装置を支持するデッキとを具備した乗客コンベアにおいて、
前記デッキは、欄干に固定された固定側デッキと固定側デッキに取り付けられる非固定側カバーとからなり、非固定側カバーは透光性であって、固定側デッキに対して水平方向に取り付けられていることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
固定側デッキは、非固定側カバーを挟み込みにより保持するカバー保持金具を有することを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
非固定側カバーは、照明光が複数方向に透光するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
非固定側カバーは、固定側デッキに対する取付部において、固定側デッキ表面と非固定側カバー表面との境界に段差が生じないように、固定側デッキの厚み分だけ肉薄にした段付き端部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
固定側デッキと非固定側カバーとは、双方が取り付けられるための上部取付手段と下部取付手段とを備え、各取付手段により固定側デッキに非固定側カバーが保持されるように構成され、上部取付手段においては、固定側デッキは、非固定側カバーの端部を挟み込みにより保持するカバー保持金具を備え、下部取付手段においては、非固定側カバーは、その取付端部に上下方向に突出する嵌合凸部を備え、固定側デッキは非固定側カバーの取付端部を挿入する挿入溝を備えると共に、非固定側カバーの嵌合凸部が嵌入される嵌合凹部を備えてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【請求項6】
非固定側カバーに遮光材を取り付けられてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【請求項7】
非固定側カバーは、踏段走行方向に分割されて、部分的に着脱が可能であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【請求項8】
欄干照明装置及びこれを支持するデッキは、乗客コンベアの先端及び/又は後端の湾曲部に至っていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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