説明

乗客コンベア

【課題】乗客コンベアの自動運転で、本体側制御部との光無線通信の光ビームの発生を最小限になるようにセンサー側制御部を構成して乗客との干渉を抑制すること。
【解決手段】人検知センサー2をもつセンサー側制御部1と、駆動制御部をもつ本体側制御部22と、を有し、乗客コンベアの運転開始と運転一時停止を行う自動運転制御方式を備え、センサー側制御部1は、人検知センサー2、マイコン3及び光伝送発光部7を有し、運転停止中に人検知センサーでの乗客検知にしたがってマイコンによって運転開始の制御信号を創出して本体側制御部に当該制御信号を光無線送信し、さらに、乗客コンベアに乗客が搭乗しているか否かを乗客検知タイミングを基にマイコンで演算して非搭乗のときに運転一時停止の制御信号を創出して光無線送信し、センサー側制御部は、乗客が搭乗している間は運転開始と運転一時停止のいずれの制御信号をも光伝送発光部から光伝送しないこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベア(例.エスカレータ)の自動運転において、乗客コンベアに乗り込む乗客の有無を人検知センサーで検知したときに、センサー側制御部から本体側制御部へ送る信号を光無線通信とした場合の自動運転制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センサーで乗客を検知してエスカレータの運転開始を行う場合の自動運転制御について、図8を用いて説明する。図8は従来技術に関する乗客コンベアの自動運転制御システムにおける運転パターンを図解する説明図である。エスカレータの乗り口に設けられた光電装置を用いた人検知センサー12で乗客を検知すると、センサー側制御部13は、検知の都度、ケーブルを通して本体側制御部14に人検知信号を送信し、本体側制御部14で人検知信号を処理することによって、エスカレータを運転開始したり、運転停止したりして制御を行っていた。
【0003】
近時、エスカレータにおける運転制御方式において、乗客コンベア側装置と管理室側との間の通信・伝送方式として、上記従来例の有線通信に代えて、無線通信を使う方式が提案されている。例えば、特許文献1に示すように、エスカレータにおける異常状態を監視するために、ビルの管理室とエスカレータ制御部との通信に無線通信を用いて情報を伝送している。
【0004】
また、コンベアにおける自動運転の機能性を向上させるための従来技術として、例えば、特許文献2に開示するように、乗客コンベアの搭乗口に近付いた利用者の複数の画像を取得し、この画像を処理し判断することでコンベアの運転の開始又は休止を制御することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−281287号公報
【特許文献2】特開2004−83207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、乗客コンベアの制御情報の伝送において無線通信を活用している。その理由は、ケーブル等で情報の伝達をする有線通信は配線工事を必要とし、配線の設置に関しては建屋側に改造工事を必要とする場合があり、特に天井と床下に乗客コンベアの制御部が分かれるような場合には乗客コンベアの通行とケーブルが交差する関係となり、建屋の構成上で乗客コンベアの近傍にケーブルを設置せざるを得ないような場合は安全性に課題が生じるおそれもあるからである。
【0007】
これに対して、無線通信は配線工事を必要とせず、どのような建屋構造にもその設置が対応し得るものとなるが、無線通信には大きく分けて電波による無線通信と光による無線通信があり、この2つの無線通信方式にはそれぞれ特徴がある。電波による無線通信は各種構造物との干渉には対応できるものの環境の変化への対応が弱く、電磁波によるノイズに影響されやすく、他の電波との干渉等の課題がある。
【0008】
一方、光による無線通信は電波による無線通信に示すような電磁波及び他の電波との干渉といった問題は無い。一般的に乗客コンベアが設置される建屋内では各種電子機器による電磁波及び他の電波(一例として、乗客が使用する携帯電話の電波)などが固有の環境を生じるケースがあり、光無線通信のほうが使いやすいと言える。また、光無線通信は使用するビームの種類が多いので、その選択により指向性の調整が可能になるメリットがある。
【0009】
電波による無線通信もアンテナ構造を工夫することにより指向性の調整は可能になるが、制御部近傍のデッドスペースによってはアンテナ構造に制限が課せられるケースがあり、確実な指向性調整は不可能になる。例示すると、複数の乗客コンベアが近隣に設置されるような場合(一例として複数の乗客コンベアを並列に設置されるような場合)があり、各乗客コンベア内の通信を他の乗客コンベアの無線通信に影響されないものにするために、無線通信としての指向性を調整する必要が出てくる。
【0010】
上述した諸課題に鑑みて、乗客コンベアにおいては各種の環境条件及び設置条件に対応するために、光無線通信を使用する方がその適用範囲は広いと言えるが、その反面、光無線通信は乗客及びその他近隣に存在する構造物との干渉により通信が途絶えるという課題がある。この点が乗客コンベアにおいて光無線通信を使用する場合の課題となる。
【0011】
本発明の目的は、乗客コンベア(例.エスカレータ)の運転開始又は運転一時停止を含む自動運転の制御の際に光無線通信を利用する場合、特に天井と床下に乗客コンベアの制御部が分かれるような場合、乗客及びその他近隣に存在する構造物との干渉を回避するために、自動運転のための制御信号の送信をできる限り少なく限定する自動運転制御システムを備えた乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は主として次のような構成を採用する。
乗客コンベアの乗降口に設けられた、人検知センサーをもつセンサー側制御部と、前記乗客コンベアの駆動制御部をもつ本体側制御部と、を有し、前記乗客コンベアの運転開始と運転一時停止を行う自動運転制御システムを備えた乗客コンベアであって、
前記センサー側制御部は、前記人検知センサー、マイコン及び光伝送発光部を有し、前記乗客コンベアの運転停止中に前記人検知センサーでの乗客検知にしたがって前記マイコンによって前記運転開始の制御信号を創出し、前記光伝送発光部を通して前記本体側制御部に当該運転開始の制御信号を光無線送信し、さらに、前記乗客コンベアに乗客が搭乗しているか否かを前記乗客検知の検知タイミングを基に前記マイコンによって演算し、前記演算の結果として非搭乗のときに前記運転一時停止の制御信号を創出し、前記光伝送発光部を通して前記本体側制御部に当該運転一時停止の制御信号を光無線送信し、前記センサー側制御部は、乗客が前記乗客コンベアに搭乗している間は、前記運転開始と前記運転一時停止のいずれの制御信号をも前記光伝送発光部から前記本体側制御部に光無線送信をせずに、運転を継続し、前記センサー側制御部における、前記人検知センサーによる乗客の検知と、前記本体側制御部への前記制御信号の伝送とは、光ビームを共通の媒体とする光無線手段を用い、前記光伝送発光部からの光ビームを受光する前記本体側制御部に設けられた光伝送受光部は、前記乗客コンベアの乗降口近傍の固定された表面部位に設置される構成とする。
【0013】
また、前記乗客コンベアにおいて、一人の乗客が前記乗客コンベアに乗ってから降りるまでの時間を時間t1としたとき、前記センサー側制御部は、前記人検知センサーで最後に乗客を検知してから前記時間t1以上の所定の時間以内に再度の乗客検知がされなかった場合には、前記運転一時停止の制御信号を光無線送信し、前記人検知センサーで最後に乗客を検知してから前記所定の時間以内に再度の乗客検知がされた場合には、前記運転一時停止の制御信号を光無線送信せず運転を継続する構成とする。さらに、前記人検知センサーは、前記乗客コンベアに乗客が乗り込む位置よりも乗客の進行方向寄りの位置に配置する構成とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、センサー側制御部にマイコンを有することで乗客の乗降に対応して運転開始と運転一時停止の制御信号を創り出して本体側制御部に送り出すことができ(すなわち、乗客の乗降に伴う検知信号の送信が不要である)、センサー側制御部からの光無線通信の送信頻度を最小限にすることができる。
【0015】
また、乗客コンベアの自動運転制御システムにおける制御信号をセンサー側制御部から光無線送信するので、乗客が持つ電波発生源の通信電波との干渉の抑制が可能となる。また、センサー側制御部における人検知センサーと制御信号を送信する伝送発光部とは、ともに光無線通信を使用しているので、温度、湿度、外部電波などの外乱ノイズへの対策が容易となる(センサー側制御部において光無線通信と電波無線通信とが混在している自動運転制御システムに比べて)。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る乗客コンベアの自動運転制御システムの構成を図解する説明図である。
【図2】本実施形態に係る乗客コンベアの自動運転制御システムにおける運転パターンを図解する説明図である。
【図3】本実施形態に係る乗客コンベアの自動運転制御システムにおける運転パターンのタイミングを示す説明図である。
【図4】本実施形態に係る乗客コンベアの自動運転制御システムで用いられるセンサー側制御部と本体側制御部のブロック構成を示す図である。
【図5】本実施形態に係る乗客コンベアの自動運転制御システムにおける運転モードの手順を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態に係る下降エスカレータ(乗客コンベアの一例)の自動運転制御システムで用いられるセンサー側制御部の配置位置を示す図である。
【図7】本実施形態に係る光伝送発光部と光伝送受光部の配置位置を示す図である。
【図8】従来技術に関する乗客コンベアの自動運転制御システムにおける運転パターンを図解する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る乗客コンベアの自動運転制御システムについて、図面を参照しながら以下説明する。ここでは、乗客コンベアの一例としてのエスカレータを取り上げて説明するが、本発明はエスカレータに限定されるものではなく、乗客コンベアの一種である動く歩道などにも適用が可能である。
【0018】
本実施形態に係る乗客コンベアの自動運転制御システムは、その詳細は後述するが、エスカレータの乗降口に設けられたセンサー側制御部と、エスカレータの駆動制御部をもつ本体側制御部とを備え、センサー側制御部から本体側制御部へエスカレータの運転開始と運転一時停止の制御信号を光無線で送信する運転制御システムを用いるものである。この構成図を図1に示す。
【0019】
図1において、人検知センサー2を内蔵するセンサー側制御部1には、センサー側マイコン3及び光伝送発光部7が内蔵されており、人検知センサー2(光を発光し、対象物からの反射光を受光する発光・受光型検知器)で乗客を検知した時はセンサー側マイコン3でその検知信号を出すタイミングを制御し、信号を発信する時は光伝送発光部7から本体側制御部21に取り付けられている光伝送受光部27に信号を送るものである。
【0020】
図1では乗客コンベアとしてエスカレータが例示されているが、上昇エスカレータと下降エスカレータとでセンサー側制御部1の設置部位が異なる。いずれの場合もエスカレータの乗り口側にセンサー側制御部1を設けるのが通常である(センサー側制御部1内の人検知センサー2がエスカレータに乗り込む乗客を検知するので)。また、本体側制御部21(図2を参照)はエスカレータの上部階のフロア下に設けるのが通常である。
【0021】
次に、本実施形態に係るエスカレータ自動運転制御システムの運転パターンについて、図2を用いて説明する。図2は人検知センサー2を乗り口側の天井に設置した場合の側面から見たエスカレータの全体図である。そして、図2は本実施形態で対象となる3つの運転パターンを示した図である。図2に示すように、パターン1とパターン2においては乗客がエスカレータに乗っているケースであり、センサー側制御部1から運転開始と運転一時停止の運転制御信号の光伝送はしない。パターン3に示されるように、エスカレータから乗客が降りた後、エスカレータに乗る乗客がいなかったときに、センサー側制御部1から本体側制御部21へ運転一時停止の信号を送信して運転を一時停止する。さらに、上述の運転パターンの詳細説明を次に示す。
【0022】
まず、人検知センサー2で最初に乗客の乗り込みを検知した時には、エスカレータの運転開始の制御信号を光無線で本体側制御部21に送信する。その後、パターン1のようにエスカレータに乗客が乗っている間は、乗客との干渉を避けるために光無線を送信しないようにすることが本実施形態の特徴の1つである。同様に、パターン2では、以前に乗った人が降りる前に次の人が乗ってきた場合は運転を継続して、この間も最後に乗ってきた人が降りるまで制御信号を送信しないようにする。パターン3では、乗客が降りたときに次の人が乗ってこない場合のときに、運転を一時停止するように、運転一時停止の制御信号をセンサー側制御部1が本体側制御部21に送信する。なお、乗客が乗ってから降りるまでの時間は、設定されているエスカレータの運行スピードおよびエスカレータの長さに基づいてセンサー側制御部1のマイコン3が計算して求める。
【0023】
次に、図2に示す運転パターンを実施するためのタイミングチャートが図3に示されており、4つのタイミングチャート1〜4で運転パターンを説明する。
【0024】
一人の乗客がエスカレータに乗ってから降りるまでの時間をt1とすると(センサー側マイコン3でt1の算出可能)、エスカレータに乗り込む乗客を検知して運転を開始した後、t1経っても次の乗客を検知しなければ運転を一時停止する(図3のタイミングチャート1)が、最後に乗客を検知してからt1以内に再度乗客を検知した場合は運転を継続し続ける(図3のタイミングチャート2を参照)。
【0025】
また、一時停止した後、次に乗客を検知したならば運転を再開するが(タイミングチャート3と4を参照)、運転を再開した後も前述したように、最後に乗客を検知してからt1経っても人を検知しなかった場合は運転を一時停止したり(タイミングチャート3を参照)、最後に乗客を検知してからt1以内に乗客を検知した場合は運転を継続する(タイミングチャート2と4を参照)。なお、図3では、運転の一時停止の閾値判断に用いる所定の時間を一人の乗客がエスカレータに乗ってから降りるまでの時間であるt1としたが、誤検知を防ぐためにt1よりも長い時間を閾値判断に用いる所定の時間に設定してもよい。
【0026】
次に、図4を用いて、本実施形態に係る乗客コンベアの自動運転制御システムで用いられるセンサー側制御部と本体側制御部のブロック構成を説明する。センサー側制御部1は、人検知センサー2、センサー側制御部マイコン3、センサー側制御部マイコン内蔵のメモリ4、センサー側制御部マイコン内蔵のCPU5、電気信号から光信号への変換部6、光伝送発光部7、入力回路8、出力回路9、から構成される。
【0027】
また、センサー側制御部1から送信される運転開始と運転一時停止等の制御信号を受信する本体側制御部21は、駆動制御部22、本体側制御部マイコン23、本体側制御部マイコン内蔵のメモリ24、本体側制御部マイコン内蔵のCPU25、光信号から電気信号への変換部26、光伝送受光部27、入力回路28、出力回路29、から構成され、センサー側制御部1からの制御信号に基づいて、駆動制御部22によってエスカレータ(乗客コンベアの一例)の運転開始と運転一時停止等の駆動を制御するものである。
【0028】
ここで、図4に示すような本実施形態の構成においては、センサー側制御部1にマイコン3を設け、このマイコン3が、マイコン3内のCPU5で一人の乗客がエスカレータに乗ってから降りるまでの時間t1を算出し、この時間t1と人検知センサー2による乗客検知信号に基づいて、上述した図3に示すような運転開始と運転一時停止の制御信号を演算して送出することが本実施形態の特徴の1つとなっている。
【0029】
上述した本実施形態の特徴について、図8に示す従来の自動運転の制御システムとの対比で説明すると、図8に示す方式では、人検知センサー12において検知した乗客検知の情報を逐次有線で本体側制御部14へ送信するものとなっていた。この場合においてはセンサー側制御部13から送信すべきか否かの判断をする必要は無く、単に人検知センサー12が乗客を検知したならばその都度信号を送るというものであった。
【0030】
これに対して、本実施形態においては、光無線通信用の光伝送を極力少なくするとともに、乗客がエスカレータに乗っている間は制御信号の送信用ビームを送信しない制御としており、さらに、センサー側制御部1において運転を開始してからの時間の積算あるいは最後に乗客を検知してからの時間の積算あるいは最後に乗客を検知した時刻、エスカレータの速度あるいは乗客が乗ってから降りるまでの標準的な時間を記憶するメモリ4を設けている。また、必要な演算や判断をセンサー側制御部1にあるマイコン3に内蔵されたCPU5及びメモリ4で実施している。
【0031】
また、本実施形態の構成においては、発光・受光型検知器である人検知センサー2と、センサー側制御部1と本体側制御部21との間の情報伝達の手段としての光伝送受光部7及び光伝送受光部27とは、光ビームを用いた無線情報伝達方式をともに使用しているので、センサー側制御部において光無線通信と電波無線通信とが混在している自動運転制御方式に比べて(人検知センサー2側では光による無線通信であり、制御部1、21同士では電波による無線通信である混在方式)、温度、湿度、外部電波、外部光などの外乱ノイズに対して統一した対策を施すことができ、ノイズ対策が容易となる。特に、エスカレータを屋外に設置する場合、電波と光による無線通信はともに、雨、霧、雪による影響を受けてそれぞれ減衰するが、その対処方法は光と電波とでは指向性等の相違によって異なることが多々あり、電波か光かの一に選定した方が対処し易い。
【0032】
換言すると、電波による無線通信では、使用する電磁波の周波数帯域は3THz以下であり、光による無線通信では、使用する電磁波の周波数帯域は3THz〜3PHzであって、電波と光では使用する周波数帯域を一般的には異にしている。上述した電波と光の混在方式では、ノイズフィルタ、各種の処理回路等の部品を電波用と光用の2つが必要とされるが、すべての通信を光で統一すれば、1つの周波数帯域規格のもので済ませることができる。さらに、電波による無線通信では他の機器への影響を防止するために指向性を狭めるための構造をもつアンテナを別に準備する必要がある。
【0033】
本実施形態における運転制御システムを実行するための制御ソフトは次のような機能を備えている。すなわち、「一人の乗客がエスカレータに乗ってから降りるまでの時間t1」は、各エスカレータの構造に応じて使い分けられるものであり、各エスカレータの速度及び工程の長さから算出され、このt1をメモリ4内に記憶させておき、図3に示すタイミングチャートに応じた運転制御が必要な時に、このt1がCPU5の判断に適用される。あるいは、このt1による閾値判断に代えて、このt1以上の長さの時間を所定の時間として記憶し、閾値判断に用いてもよい。
【0034】
次に、本実施形態に係る運転制御システムについて、図5のフローチャートを用いて説明する。本実施形態のエスカレータは自動運転であるため、運転時間になっても乗り込む乗客が無い場合は、まず待機として運転を停止している(S1及びS2)。次に、時間が経ち、人検知センサー2により乗客を検知した時に(S3)、図4に示すブロック構成図において、センサー側制御部1のマイコン3から電気信号から光信号への変換部6、光伝送の発光部7、光伝送の受光部27、光信号から電気信号への変換部26を介して本体側制御部21のマイコン23へ「運転開始」の信号を送り(S6)、エスカレータの運転を開始する(S7)。
【0035】
ここで、運転開始と同時にセンサー側のCPU5で運転開始からの時間を積算する(S5)。この積算時間とメモリ4に記憶されている上記のt1を常時比較(閾値判断)し(S9)、積算時間がt1以内に乗客を検知した場合は乗機時間の積算をリセットし、この時点から乗機時間の積算を開始し(S10)、そのまま運転を継続し(S12)、何らの制御信号も送らない(具体的には、運転一時停止の制御信号を送らない)。
【0036】
S9で、もしt1になっても(t1が経過したとき)乗客を検知しなかった場合に、図5に示すブロック構成図に示すように、センサー側制御部1のマイコン3から、電気信号から光信号への変換部6、光伝送発光部7、光伝送受光部27、光信号から電気信号への変換部26を介して本体側制御部21のマイコン23へ「運転一時停止」(運転停止)の制御信号を送り(S11)、本体側制御部21が駆動制御部22を介してエスカレータの運転を一時停止する(S14)。
【0037】
ここで、一度運転を停止した後は次に乗客を検知するまで待機するものとする(S16及びS2)。この一連の動作を連続し、エスカレータの運転終了時間になった時(S13及びS15)、一日のエスカレータ運転を全停止する(S17)。尚、S13で運転時間終了でない場合はS8に、S15で運転時間終了でない場合はS16に移る。
【0038】
次に、本実施形態に係る下降エスカレータの自動運転制御システムで用いられる人検知センサーを含むセンサー側制御部の配置位置について、図6を用いて説明する。本実施形態を示す図2並びに従来例を示す図8の配置構成から分かるように、エスカレータの本体側制御部21,14は、通常上部階の床下に取り付けられている。本実施形態を示す図2においては上昇するエスカレータの場合を示したため、乗客がエスカレータに乗り込む前あるいは乗客がエスカレータから降りた後にセンサー側制御部1からの信号を光ビームで送信すれば、乗客との干渉は極力抑制できるものとなっていた。
【0039】
しかし、下降するエスカレータの場合は図6に示すように、センサー側制御部1から送信する光ビームがエスカレータに乗り込む乗客あるいはその周囲の領域に入り込む場合があるため、センサー側制御部1からの信号を光ビームで送信したとき、乗客との干渉が頻繁に生じる危険性が出てくる。したがって、下降のエスカレータの場合には、センサー側制御部1における人検知センサー2の取り付け位置は、図6に示すように、乗客が乗り込む位置からある程度前方(乗客が乗り込む位置よりも乗客の進行方向寄りの位置)に設置することとする。なお、本体側制御部21が上述の上部階とは異なり下部階の床下に取り付けられた配置構造において、上昇エスカレータに乗客が乗り込む場合についても、図6と同様の人検知センサー2の配置が必要であり、乗客が乗り込む位置からある程度前方に人検知センサー2を設置することとする。
【0040】
また、本実施形態では光ビームの乗客との干渉だけでなく、その他の構造物との干渉を回避することも目的としている。この目的達成のために、光ビームの障害になると想定される構造物に対して光ビームが当たらないように、それぞれのエスカレータにおいて光伝送発光部7を内蔵するセンサー側制御部1と光伝送受光部27の設置位置を調整するものとなるが、どのエスカレータにおいても必ず考慮すべき点は、光伝送発光部7からの光ビームと欄干パネル30及びスカートガード31との干渉である。上述した光ビームの干渉について、図7を用いて以下説明する。
【0041】
図7は、光伝送発光部を内蔵するセンサー側制御部を、天井の構造等の理由によってエスカレータの踏段32進行方向の左右の横方向に、或る程度離れた位置(踏段32の真上の天井から横方向に離隔した位置)に設置せざるを得ない場合の配置例である。仮に、光伝送受光部27を、乗客コンベアの踏段32を間にして互いに対向するよう両側に配置された一対の欄干パネル30又はスカートガード31の内側に設置すると、光ビームが欄干パネル30又はスカートガード31に衝突し、通信が途絶えることとなる。したがって、図7に示すように光伝送受光部27は一対の欄干パネル30又はスカートガード31の外側に設置することが必須となる。
【0042】
また、図1に示したように、一対の欄干パネル30又はスカートガード31の間の上方(踏段32の上方)にセンサー側制御部1が設置される場合は、光伝送受光部27を一対の欄干パネル30又はスカートガード31の外側に設置すると、光ビームは欄干パネル30又はスカートガード31に当たるため、光伝送受光部27は一対の欄干パネル30又はスカートガード31の内側に設置するものとなる。
【0043】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る自動運転制御システムは、その動作概要を説明すると、乗客がエスカレータに乗っている間は、人検知センサーのエスカレータ本体制御部への光無線通信用ビームの発生を無くする制御方式であり、センサー側制御部から本体側制御部への制御信号を運転開始及び運転一時停止の2つとし、一人の乗客がエスカレータに乗ってから降りるまでの時間を、センサー側制御部にあるマイコンにおいてエスカレータの運転速度を基に割り出し、それにより割り出された時間内に次の乗客がエスカレータに乗り込んだ場合はセンサー側制御部から制御信号の光ビームは出さず、エスカレータは運転を継続する。
【0044】
そして、割り出された時間が経っても乗客が乗り込まなかった場合にはセンサー側制御部からエスカレータ本体制御部へ運転停止の信号を送るものである。この制御方式により、乗客がエスカレータに乗っている間は、センサー側から運転開始あるいは運転一時停止のどちらの信号をも出すこと無しにエスカレータの潤滑な自動運転制御が可能となる。
【0045】
さらに、本実施形態の機能または作用について説明すると、乗客がエスカレータに乗る直前に「運転開始」の信号をセンサー側制御部から本体側制御部へ送り、乗客が全員エスカレータから降りた時に「運転一時停止」の信号を送るものであり、乗客がエスカレータに乗っている期間中では、センサー側制御部から本体側制御部への光無線通信用の光ビームの発生を無くすることが可能となる。これにより、センサー側制御部から本体側制御部への光無線通信用ビームの発生を最小限に抑え(運転停止中の最初の運転開始の制御信号は送信必要)、乗客とエスカレータ自動運転の光無線通信用ビームの干渉を抑制することが可能となる。さらに、人検知センサーから本体制御部への信号の伝達において有線ケーブルの取り付けが困難である場合において、本実施形態係る制御方式は、特に実用性が高い。
【符号の説明】
【0046】
1 センサー側制御部
2 人検知センサー
3 センサー側制御部マイコン
4 センサー側制御部マイコン内蔵のメモリ
5 センサー側制御部マイコン内蔵のCPU
6 電気信号から光信号への変換部
7 光伝送発光部
8 入力回路
9 出力回路
12 従来の人検知センサー
13 従来のセンサー側制御部
14 従来の本体側制御部
21 本体側制御部
22 駆動制御部
23 本体側制御部マイコン
24 本体側制御部マイコン内蔵のメモリ
25 本体側制御部マイコン内蔵のCPU
26 光信号から電気信号への変換部
27 光伝送受光部
28 入力回路
29 出力回路
30 欄干パネル
31 スカートガード
32 踏段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの乗降口に設けられた、人検知センサーをもつセンサー側制御部と、前記乗客コンベアの駆動制御部をもつ本体側制御部と、を有し、前記乗客コンベアの運転開始と運転一時停止を行う自動運転制御システムを備えた乗客コンベアであって、
前記センサー側制御部は、前記人検知センサー、マイコン及び光伝送発光部を有し、前記乗客コンベアの運転停止中に前記人検知センサーでの乗客検知にしたがって前記マイコンによって前記運転開始の制御信号を創出し、前記光伝送発光部を通して前記本体側制御部に当該運転開始の制御信号を光無線送信し、さらに、前記乗客コンベアに乗客が搭乗しているか否かを前記乗客検知の検知タイミングを基に前記マイコンによって演算し、前記演算の結果として非搭乗のときに前記運転一時停止の制御信号を創出し、前記光伝送発光部を通して前記本体側制御部に当該運転一時停止の制御信号を光無線送信し、
前記センサー側制御部は、乗客が前記乗客コンベアに搭乗している間は、前記運転開始と前記運転一時停止のいずれの制御信号をも前記光伝送発光部から前記本体側制御部に光無線送信をせずに、運転を継続し、
前記センサー側制御部における、前記人検知センサーによる乗客の検知と、前記本体側制御部への前記制御信号の伝送とは、光ビームを共通の媒体とする光無線手段を用い、
前記光伝送発光部からの光ビームを受光する前記本体側制御部に設けられた光伝送受光部は、前記乗客コンベアの乗降口近傍の固定された表面部位に設置される
ことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
請求項1において、
一人の乗客が前記乗客コンベアに乗ってから降りるまでの時間を時間t1としたとき、前記センサー側制御部は、前記人検知センサーで最後に乗客を検知してから前記時間t1以上の所定の時間以内に再度の乗客検知がされなかった場合には、前記運転一時停止の制御信号を光無線送信し、前記人検知センサーで最後に乗客を検知してから前記所定の時間以内に再度の乗客検知がされた場合には、前記運転一時停止の制御信号を光無線送信せず運転を継続する
ことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記人検知センサーは、前記乗客コンベアに乗客が乗り込む位置よりも乗客の進行方向寄りの位置に配置することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項において、
前記光伝送発光部が、前記乗客コンベアの踏段を間にして互いに対向するよう両側に配置された一対の欄干パネル又はスカートガードの間の上方に設置される場合は、前記光伝送受光部を前記一対の前記欄干パネル又は前記スカートガードの内側に設置し、
前記光伝送発光部が前記一対の前記欄干パネル又は前記スカートガードの外側の上方に設置される場合は、前記光伝送受光部を前記一対の前記欄干パネル又は前記スカートガードの外側に設置する
ことを特徴とする乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−103778(P2013−103778A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246644(P2011−246644)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】