説明

乗客コンベア

【課題】乗客に負担を強いることなく、乗客に合わせて適切な制御を行うことができる乗客コンベアを提供する。
【解決手段】乗客が乗り口2から降り口3に移動する際に乗るステップ4と、乗り口2にいる乗客の顔画像を撮影するためのカメラ7と、ステップ4の走行を制御する制御装置9とを備える。制御装置9は、カメラ7によって撮影された顔画像から乗客が所定の弱者に該当するか否かを判定し、乗客が所定の弱者に該当する場合に、その乗客に合わせてステップ4の速度を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エスカレーターや動く歩道といった乗客コンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エスカレーターや動く歩道といった乗客コンベアでは、一般に、乗客が乗るステップの速度が、毎分20乃至40mの範囲に設定されている。ステップの速度が速いと、弱者(例えば、老人、障がい者、子供、妊婦)が乗客コンベアを利用し難くなってしまう。一方、弱者に合わせてステップの速度を遅くすると、乗客コンベアの輸送能力が著しく低下し、混雑した駅等では、乗り口に乗客が滞留してしまう。
【0003】
下記特許文献1には、ICタグを利用した乗客コンベアが開示されている。特許文献1に記載のものでは、老人等の弱者にICタグを所持してもらい、そのICタグの情報を読み取るための装置を乗客コンベアの乗り口に設置している。そして、上記読取装置でICタグの情報を読み取ると、その読み取った情報に合わせて、ステップの速度を変更している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−321601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のものであれば、乗客コンベアを利用する乗客に合わせて、ステップの速度を変更することができる。しかし、特許文献1に記載のものにおいて上記効果を奏するためには、ステップの速度の変更を希望する乗客に対し、予めICタグを配布しておかなければならない。また、ICタグを配布された乗客は、乗客コンベアを利用する際に、常にそのICタグを所持していなければならない。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、乗客に負担を強いることなく、乗客に合わせて適切な制御を行うことができる乗客コンベアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る乗客コンベアは、乗客が乗客コンベアの乗り口から降り口に移動する際に乗るステップと、乗り口にいる乗客の顔画像を撮影するためのカメラと、ステップの走行を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、カメラによって撮影された顔画像から乗客が所定の弱者に該当するか否かを判定し、乗客が所定の弱者に該当する場合に、その乗客に合わせてステップの速度を変更するものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る乗客コンベアであれば、乗客に負担を強いることなく、乗客に合わせて適切な制御を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1における乗客コンベアの全体構成を示す側面図である。
【図2】この発明の実施の形態1における乗客コンベアの要部を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1における乗客コンベアの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における乗客コンベアの全体構成を示す側面図、図2はこの発明の実施の形態1における乗客コンベアの要部を示す構成図である。
以下においては、乗客コンベアの一例として、下階から上階への移動の際に利用される上りのエスカレーターについて、具体的に説明する。下りのエスカレーターや動く歩道といった他の例については、その説明を省略する。
【0012】
図1及び図2において、1は上階及び下階に掛け渡されたエスカレーターの主枠である。主枠1は、エスカレーターの自重及び積載荷重を支持する。2はエスカレーターの乗り口(本実施の形態においては、下部乗降口)、3はエスカレーターの降り口(本実施の形態では、上部乗降口)である。
【0013】
4は乗客が乗り口2から降り口3に移動する際に乗るステップである。5はステップ4に乗降する乗客やステップ4上の乗客が掴むための移動手摺である。駆動装置6は、ステップ4や移動手摺5を駆動するためのものである。移動手摺5は、駆動装置6により、ステップ4と同期するように駆動される。駆動装置6は、例えば、降り口3の下方に形成された機械室(主枠1の内部空間)に設置される。
【0014】
乗り口2には、カメラ7及び音声装置8が設置されている。
カメラ7は、エスカレーターに乗り込もうとしている(乗り口2にいる)乗客の顔画像を撮影するためのものである。エスカレーターの乗客は、乗り口2において、ステップ4に移動する前に、カメラ7によって顔画像が撮影される。カメラ7によって乗客の顔画像が撮影されると、その顔画像の情報が、カメラ7から後述の制御装置9に対して送信される。
【0015】
音声装置8は、乗り口2や乗り口2近傍のステップ4上にいる乗客に対して音声案内を行うためのものである。なお、音声装置8は、乗り口2にいる乗客に対して所定の情報(例えば、注意喚起)を報知する手段の一例として示したものである。乗客に対して注意喚起等を行うことができれば、音声装置8以外の他の報知手段が乗り口2に備えられていても構わない。
【0016】
本エスカレーターには、降り口3にも、上記カメラ7及び音声装置8と同様の機能を有するカメラ10及び音声装置11が設置されている。音声装置11は、降り口3や降り口3近傍のステップ4上にいる乗客に対して音声案内を行うためのものである。また、カメラ10及び音声装置11は、例えば、ステップ4の走行方向が逆転され、本エスカレーターが下りとして使用される場合に、上記カメラ7及び音声装置8と同様に機能する。
【0017】
制御装置9は、本エスカレーターの各種動作を制御する機能を有している。ステップ4や移動手摺5の走行制御(駆動装置6の駆動制御)、音声装置8及び11の音声制御は、制御装置9によって行われる。
具体的に、制御装置9には、判定手段12と、動作制御手段13とが備えられている。
【0018】
判定手段12は、カメラ7によって撮影された顔画像から、乗客が所定の弱者(例えば、老人、障がい者、子供、妊婦)に該当するか否かを判定する機能を有している。判定手段12は、例えば、カメラ7が取得した顔画像の情報から乗客の年齢(或いは、年代)を特定し、上記判定を行う。そして、動作制御手段13は、乗客が所定の弱者に該当すると判定手段12によって判定されると、その乗客(の年齢や年代)に合わせた所定の制御を実施する。
【0019】
次に、図3も参照し、上記構成を有するエスカレーターの具体的な動作について説明する。図3はこの発明の実施の形態1における乗客コンベアの動作を示すフローチャートである。
【0020】
制御装置9(の動作制御手段13)では、通常時、所定の通常速度でステップ4を走行させている。また、カメラ7によって撮影された画像の情報は、制御装置9に逐一入力されている。
【0021】
制御装置9では、判定手段12により、カメラ7から読み込んだ画像に人が映っているか否かを判定する(S101)。例えば、乗客がエスカレーターを利用しようとして乗り口2に進入すると、その乗客の顔画像がカメラ7によって撮影され、その画像情報が制御装置9に送信される。カメラ7から読み込んだ画像に人が映っている場合、制御装置9では、判定手段12が、取得した顔画像の情報からその乗客の年齢を特定する(S102)。
【0022】
制御装置9には、所定の記憶手段(図示せず)に、乗客を所定の弱者と判定するための基準が設定されている。判定手段12は、S102において特定した年齢と上記基準とを比較することにより、例えば、ステップ4に乗り込もうとしている(カメラ7によって顔画像が撮影された)乗客が子供であるか、或いは、高齢者であるかを判定する(S103、S104)。
【0023】
ステップ4に乗り込もうとしている乗客が所定の弱者であると判定手段12によって判定されると、動作制御手段13は、その乗客に合わせてステップ4の速度を変更する。また、動作制御手段13は、その乗客に合わせた注意喚起等の音声案内を行う。
【0024】
例えば、ステップ4に乗り込もうとしている乗客が子供である場合(S103のYes)、動作制御手段13は、音声装置8から「手摺、ステップに挟まれないよう注意して下さい」といった内容の放送を行う(S105)。また、動作制御手段13は、駆動装置6を制御して、ステップ4を上記通常速度よりも遅い所定の速度に減速させる(S106)。
【0025】
一方、ステップ4に乗り込もうとしている乗客が高齢者である場合(S104のYes)、動作制御手段13は、音声装置8から「手摺につかまり、転倒しないよう注意して下さい」といった内容の放送を行う(S107)。また、動作制御手段13は、駆動装置6を制御して、ステップ4を上記通常速度よりも遅い所定の速度に減速させる(S106)。
【0026】
上記構成を有するエスカレーターであれば、乗客が子供や高齢者等の弱者である場合に、その乗客に合わせた適切な制御を行うことができる。例えば、乗客が子供の場合は、ステップ4の速度パターンを子供用に設定して、ステップ4への乗り込みを容易にすることができる。また、手や足(靴)が挟まれる可能性がある箇所への接近を注意するような適切な音声案内を行うこともできる。同様に、乗客が高齢者の場合は、ステップ4の速度パターンを高齢者用に設定して、ステップ4への乗り込みを容易にすることができる。また、転倒を注意するような適切な音声案内を行うことができる。
【0027】
更に、上記構成のエスカレーターであれば、乗客がエスカレーターを利用する際に乗客の生体情報(顔のパターン情報)を取得して年齢を識別するため、乗客に、所定の情報を事前登録してもらったり、ICタグをいつも所持してもらったりする必要がない。このため、乗客に負担を強いることなく、適切な制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0028】
1 主枠
2 乗り口(下部乗降口)
3 降り口(上部乗降口)
4 ステップ
5 移動手摺
6 駆動装置
7、10 カメラ
8、11 音声装置
9 制御装置
12 判定手段
13 動作制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客が乗客コンベアの乗り口から降り口に移動する際に乗るステップと、
前記乗り口にいる乗客の顔画像を撮影するためのカメラと、
前記ステップの走行を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記カメラによって撮影された顔画像から乗客が所定の弱者に該当するか否かを判定し、乗客が所定の弱者に該当する場合に、その乗客に合わせて前記ステップの速度を変更する乗客コンベア。
【請求項2】
前記制御装置は、前記カメラによって撮影された顔画像から乗客が所定の高齢者又は子供に該当するか否かを判定し、乗客が高齢者又は子供に該当する場合に、前記ステップを減速させる請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記乗り口にいる乗客に対して所定の情報を報知する報知手段と、
を更に備え、
前記制御装置は、乗客が所定の弱者に該当する場合に、その乗客に合わせた注意喚起を前記報知手段から報知させる請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−1479(P2013−1479A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132145(P2011−132145)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】