説明

乗客コンベヤの乗降口装置

【課題】櫛板を床板に確実に固定することができる乗客コンベヤの乗降口装置を得る。
【解決手段】床板6と、床板6に設けられた櫛板7とを備え、櫛板7は、フック部10bを含んだ爪部10を有し、床板6には、フック部10bと係合される切欠き部13aを含み爪部10が挿入される凹部13が形成されている。床板6は、床板6に対する櫛板7の上方への移動を規制する当接板15を有している。床板6には、フック部10bを押圧することによりフック部10bと切欠き部13aとの係合を解除する操作部材が挿入される貫通孔6aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、踏板の溝部と係合する乗客コンベヤの乗降口装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床板と、貫通孔が形成され床板に設けられた櫛板と、櫛板の貫通孔に挿入され、さらに、床板に螺着されることにより櫛板を床板に固定するねじとを備えたエスカレータの乗降口装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−288791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ねじが緩んだ場合には、床板に対して櫛板が所定の位置よりも上方に移動可能となり、乗降口装置を通る利用者が、所定の位置よりも上方に移動した櫛板により躓いてしまう恐れがあるという問題点があった。
【0005】
この発明は、櫛板を床板に確実に固定することができる乗客コンベヤの乗降口装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る乗客コンベヤの乗降口装置は、床板と、前記床板に設けられた櫛板とを備え、前記床板および前記櫛板の何れか一方は、フック部を含んだ爪部を有し、他方には、前記フック部と係合される被係合部を含み前記爪部が挿入される凹部が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る乗客コンベヤの乗降口装置によれば、床板と、床板に設けられた櫛板とを備え、床板および櫛板の何れか一方は、フック部を含んだ爪部を有し、他方には、フック部と係合される被係合部を含み爪部が挿入される凹部が形成されているので、ねじを用いることなく櫛板を床板に固定することができる。その結果、櫛板を床板に確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエスカレータの要部を示す平面図である。
【図2】図1の乗降口装置を示す平面図である。
【図3】図2の櫛板を示す斜視図である。
【図4】図2の床板を示す斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る櫛板を示す斜視図である。
【図6】図5の櫛板が取り付けられる床板を示す斜視図である。
【図7】この発明の実施の形態3に係る櫛板を示す斜視図である。
【図8】図7の櫛板が取り付けられる床板を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の各実施の形態を図に基づいて説明するが、各図において、同一または相当の部材、部位については、同一符号を付して説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るエスカレータ(乗客コンベヤ)の要部を示す平面図である。図において、エスカレータは、循環移動する踏段1と、踏段1の幅方向外側に配置された一対の欄干2と、各欄干2に設けられ、踏段1と連動して循環移動する一対の移動手摺3と、乗客が踏段1に乗り降りするための乗降口装置(乗客コンベヤの乗降口装置)4とを備えている。
【0011】
踏段1は、踏面に溝5aが形成された踏板5を有している。溝5aは、踏段1の移動方向に延びて形成されている。
【0012】
図2は図1の乗降口装置4を示す平面図である。図において、乗降口装置4は、床板6と、床板6に設けられた複数枚の櫛板7とを備えている。櫛板7は、床板6の幅方向に並べて配置されている。
【0013】
図3は図2の櫛板7を示す斜視図である。図において、櫛板7は、櫛板7の幅方向に延びた基部8と、基部8の側面に設けられた櫛部9と、基部8の反櫛部9側に設けられた一対の爪部10と、爪部10よりも下方に設けられた鍵板11と、基部8と鍵板11とを連結する連結部12とを有している。
【0014】
櫛部9は、櫛板7が床板6(図2)に取り付けられた場合に踏板5の溝5a(図2)と係合するように形成されている。爪部10は、櫛板7の幅方向についての基部8の両端部に配置されている。爪部10は、基部8から反櫛部9側に突出した爪部本体10aと、爪部本体10aの先端部に設けられ爪部本体10aから上方に突出したフック部10bとを有している。鍵板11は、爪部本体10aの下面に対向するように配置されている。
【0015】
図4は図2の床板6を示す斜視図である。図において、床板6には、爪部10(図2)が挿入される凹部13と、凹部13よりも下方に設けられ鍵板11(図2)が挿入される溝14とが形成されている。床板6は、凹部13と溝14との間に形成された当接板(規制部)15を有している。当接板15は、床板6に凹部13および溝14を形成することにより形成される。凹部13は、フック部10bに係合される切欠き部(被係合部)13aを有している。床板6には、床板6の上面から凹部13まで貫通した貫通孔(挿入孔)6aが形成されている。
【0016】
貫通孔6aは、櫛板7が床板6に取り付けられた場合に、貫通孔6aを通して爪部10が床板6の上方から見えるように配置されている。
【0017】
フック部10bが切欠き部13aに係合することにより、櫛板7は、爪部10が凹部13から引き抜かれる方向への床板6に対する移動が規制される。
【0018】
櫛板7は、床板6の当接板15が櫛板7の鍵板11の上面に当接することにより、床板6に対する上方への移動が規制される。
【0019】
櫛板7を床板6に取り付ける場合には、櫛板7の爪部10を床板6の凹部13に挿入して、櫛板7のフック部10bを床板6の切欠き部13aに係合させる。このとき、床板6の溝14に櫛板7の鍵板11を挿入する。これにより、櫛板7が床板6に固定される。
【0020】
櫛板7を床板6から取り外す場合には、貫通孔6aに操作棒(操作部材)を挿入し、操作棒を用いて凹部13内にある爪部10を下方に押圧する。これにより、フック部10bと切欠き部13aとの係合が解除される。フック部10bと切欠き部13aとの係合が解除された状態で、床板6の凹部13から櫛板7の爪部10が引き抜かれる方向に櫛板7を床板6に対して移動させる。これにより、櫛板7が床板6から取り外される。
【0021】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係る乗降口装置4によれば、床板6と、床板6に設けられた櫛板7とを備え、櫛板7は、フック部10bを含んだ爪部10を有し、床板6には、フック部10bと係合される切欠き部13aを含み爪部10が挿入される凹部13が形成されているので、ねじを用いることなく櫛板7を床板6に固定することができる。その結果、櫛板7を床板6に確実に固定することができる。また、ねじを用いることなく、櫛板7を床板6に固定することができるので、櫛板7を床板6に取り付ける作業効率を向上させることができる。
【0022】
また、床板6は、床板6に対する櫛板7の上方への移動を規制する当接板15を有しているので、櫛板7が床板6に取り付けられた場合に、櫛板7が床板6に対して上方へ移動することが規制される。これにより、乗降口装置4を通過する利用者が櫛板7により躓いてしまうことを防止することができる。
【0023】
また、床板6には、爪部10を下方に押圧することによりフック部10bと切欠き部13aとの係合を解除する操作棒が挿入される貫通孔6aが形成されているので、貫通孔6aに操作棒を挿入して、操作棒を用いて凹部13内にある爪部10を下方に押圧することにより、フック部10bと切欠き部13aとの係合を容易に解除することができる。これにより、床板6から櫛板7を容易に取り外すことができる。
【0024】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2に係る櫛板7を示す斜視図である。図において、櫛板7は、爪部10が、櫛板7の幅方向に延びて形成されている。フック部10bは、櫛板7の幅方向に延びて形成されている。
【0025】
図6は図5の櫛板7が取り付けられる床板6を示す斜視図である。図において、床板6は、凹部13が、床板6の幅方向に延びて形成されている。切欠き部13aは、床板6の幅方向に延びて形成されている。貫通孔6aは、床板6の幅方向に延びて形成されている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0026】
以上説明したように、この発明の実施の形態2に係る乗降口装置4によれば、櫛板7のフック部10bは、櫛板7の幅方向に延びて形成されているので、フック部10bの切欠き部13aに係合する面積が大きくなる。これにより、櫛板7の床板6への固定を強固にすることができる。
【0027】
なお、各上記実施の形態では、櫛板7が鍵板11を有し、床板6には鍵板11が挿入される溝14が形成された構成について説明したが、爪部10が凹部13に挿入されることにより、床板6に対する櫛板7の上方への移動が規制される場合には、櫛板7が鍵板11を有さず、床板6には溝14が形成されない構成であってもよい。
【0028】
実施の形態3.
図7はこの発明の実施の形態3に係る櫛板7を示す斜視図、図8は図7の櫛板7が取り付けられる床板6を示す斜視図である。図において、櫛板7の基部8の反櫛部9側の部分には、凹部16と、凹部16よりも下方に設けられた溝17とが形成されている。櫛板7は、櫛板7に溝17が形成されることにより形成された鍵板18を有している。凹部16は、切欠き部(被係合部)16aを有している。櫛板7には、櫛板7の上面から凹部16まで貫通した貫通孔(挿入孔)7aが形成されている。
【0029】
床板6は、床板本体19と、床板本体19から突出し凹部16に挿入される爪部20と、爪部20よりも下方に設けられ溝17に挿入される当接板(規制部)21とを有している。爪部20は、爪部本体20aと、爪部本体20aの先端部に設けられ切欠き部16aに係合するフック部20bを有している。当接板21は、爪部本体20aの下面に対向するように配置されている。
【0030】
貫通孔7aは、櫛板7が床板6に取り付けられた場合に、貫通孔7aを通じて爪部20が櫛板7の上方から見えるように配置されている。
【0031】
フック部20bが切欠き部16aに係合することにより、櫛板7は、爪部20が凹部16から引き抜かれる方向への床板6に対する移動が規制される。
【0032】
櫛板7は、床板6の当接板21が櫛板7の鍵板18の上面に当接することにより、床板6に対する上方への移動が規制される。その他の構成は、実施の形態1と同様である。なお、実施の形態2に記載のように、フック部20bが床板6の幅方向に延びた構成であってもよい。この場合、切欠き部16aは、フック部20bの形状に合わせて、床板6の幅方向に延びる構成となる。
【0033】
櫛板7を床板6に取り付ける場合には、床板6の爪部20を櫛板7の凹部16に挿入して、床板6のフック部20bを櫛板7の切欠き部16aに係合させる。このとき、櫛板7の溝17に床板6の当接板21を挿入する。これにより、櫛板7が床板6に固定される。
【0034】
櫛板7を床板6から取り外す場合には、貫通孔7aに操作棒(操作部材)を挿入し、操作棒を用いて凹部16内にある爪部20を下方に押圧する。これにより、フック部20bと切欠き部16aとの係合が解除される。フック部20bと切欠き部16aとの係合が解除された状態で、櫛板7の凹部16から床板6の爪部20が引き抜かれる方向に櫛板7を床板6に対して移動させる。これにより、櫛板7が床板6から取り外される。
【0035】
以上説明したように、この発明の実施の形態3に係る乗降口装置4によれば、床板6と、床板6に設けられた櫛板7とを備え、床板6は、フック部20bを含んだ爪部20を有し、櫛板7には、フック部20bと係合される切欠き部16aを含み爪部20が挿入される凹部16が形成されているので、ねじを用いることなく櫛板7を床板6に固定することができる。その結果、櫛板7を床板6に確実に固定することができる。また、ねじを用いることなく、櫛板7を床板6に固定することができるので、櫛板7を床板6に取り付ける作業効率を向上させることができる。
【0036】
なお、上記実施の形態3では、床板6が鍵板18を有し、櫛板7には鍵板18が挿入される溝17が形成された構成について説明したが、爪部20が凹部16に挿入されることにより、床板6に対する櫛板7の上方への移動が規制される場合には、床板6が鍵板18を有さず、櫛板7には溝17が形成されない構成であってもよい。
【0037】
また、各上記実施の形態では、乗客コンベヤとして、エスカレータを例に説明したが、動く歩道であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 踏段、2 欄干、3 移動手摺、4 乗降口装置(乗客コンベヤの乗降口装置)、5 踏板、5a 溝、6 床板、6a 貫通孔(挿入孔)、7 櫛板、7a 貫通孔(挿入孔)、8 基部、9 櫛部、10 爪部、10a 爪部本体、10b フック部、11 鍵板、12 連結部、13 凹部、13a 切欠き部(被係合部)、14 溝、15 当接板(規制部)、16 凹部、16a 切欠き部(被係合部)、17 溝、18 鍵板、19 床板本体、20 爪部、20a 爪部本体、20b フック部、21 当接板(規制部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床板と、
前記床板に設けられた櫛板とを備え、
前記床板および前記櫛板の何れか一方は、フック部を含んだ爪部を有し、
他方には、前記フック部に係合される被係合部を含み前記爪部が挿入される凹部が形成されていることを特徴とする乗客コンベヤの乗降口装置。
【請求項2】
前記床板は、前記床板に対する前記櫛板の上方への移動を規制する規制部を有していることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベヤの乗降口装置。
【請求項3】
前記他方には、前記爪部を押圧することにより前記フック部と前記被係合部との係合を解除する操作部材が挿入される挿入孔が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗客コンベヤの乗降口装置。
【請求項4】
前記フック部は、前記床板の幅方向に延びて形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の乗客コンベヤの乗降口装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−140241(P2012−140241A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1228(P2011−1228)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】