説明

乗用型作業車

【課題】運転操縦部において、開閉用シャッターを駆動移動操作が可能であり、かつ、PTO用クラッチが入り状態で開閉用シャッターが開閉操作されることを阻止することができる乗用型作業車を提供する。
【解決手段】運転操縦部7を備えた走行機体にモーア4を装備し、モーアデッキ9に刈芝を放出する放出口9Aと放出口9Aを閉塞する開閉用シャッター15を備えている。運転操縦部7に開閉用切換操作レバー19を設け、開閉用切換操作レバー19によって、開閉用シャッター15を開状態と閉状態とに切り換えるべく構成してある。モーア4への伝動を入切するPTO用クラッチ36が入り状態にある場合には、開閉用切換操作レバー19による開閉用シャッター15の切換操作を牽制する牽制手段32を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転操縦部を備えた走行機体にモーアを装備し、前記モーアを、刈取りブレードと前記刈取りブレードを収納したモーアデッキとで構成し、前記モーアデッキに刈芝を放出する放出口と、前記放出口を閉塞する開閉用シャッターとを備えている乗用型作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型作業車では例えば特許文献1に開示されているように、開閉用シャッターとしてのスライドカバー(公報内番号:37)の後端部にロック金具としてのラッチ(公報内番号:46)を設け、放出口としての排出口(公報内番号:7b)の前後端位置にロック受け具としてのフック(公報内番号:44)を設け、ラッチとフックとでロック機構を構成していた。
【0003】
これにより、人為的にスライドカバーを移動させて排出口を閉塞した状態で、ラッチをフックに係合してロック作用を施していた。
【0004】
【特許文献1】特開2008−99610号公報(段落番号〔0051〕〔0052〕、図4,5,8,9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した構成においては、スライドカバーの移動を行う場合には、その度に運転座席を降りてスライドカバーの設置位置まで出向かなければならず、排出口から刈芝を放出するディスチャージ作業形態と排出口から刈芝を放出しないマルチング作業形態とを切り換える作業負担が大きなものになる可能性があり、改善の余地が残っていた。
【0006】
本発明の目的は、運転操縦部から開閉用シャッター設置位置まで出向くことなく、運転操縦部において、開閉用シャッターを駆動移動操作が可能であり、かつ、PTO用クラッチが入り状態で開閉用シャッターが開閉操作されることを阻止することができる乗用型作業車を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(構成)
請求項1に係る本発明の特徴構成は、前記運転操縦部に開閉用切換操作具を設け、前記開閉用シャッターと前記開閉用切換操作具とを連係し、前記開閉用切換操作具への切換操作によって、前記開閉用シャッターを開状態と閉状態とに切り換えるべく構成し、
前記モーアへの伝動を入切するPTO用クラッチを設け、前記PTO用クラッチが切り状態にある場合には、前記開閉用切換操作具による前記開閉用シャッターの切換操作を許容し、前記PTO用クラッチが入り状態にある場合には、前記開閉用切換操作具による前記開閉用シャッターの切換操作を牽制する牽制手段を備えている点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0008】
(作用)
運転操縦部に開閉用切換操作具を設け、前記開閉用シャッターと前記開閉用切換操作具とを連係する構成を採用することによって、開閉用切換操作具を操作することによって、開閉用シャッターを移動させて、放出口の開閉状態を切り換えることができる。
【0009】
ただし、運転操縦部から開閉用切換操作具の操作が可能であるので、モーアが刈取り作動中に開閉用切換操作具を操作できるとすると、開閉用シャッターを開閉いずれかの状態に設定してディスチャージ作業又はマルチング作業を行っていた状態が切り換わり、作業者の意図と反することとなる。
【0010】
そこで、本願発明においては、PTO用クラッチが入り状態にある場合には、前記開閉用切換操作具による前記開閉用シャッターの切換操作を牽制する牽制手段を備えて、モーアが刈取り作業中であれば、開閉用シャッターの開閉操作を牽制することとした。
【0011】
(発明の効果)
開閉用シャッターと連係された開閉用切換操作具を運転操縦部に設けるだけで、開閉用シャッターの設置位置まで出向くことなく、運転操縦部に居ながら開閉用シャッターの操作が可能である。
これによって、ディスチャージ作業形態とマルチング作業形態とを切り換える作業負担を軽減しながら、刈取り作業中においては、ディスチャージ作業形態とマルチング作業形態とが切り換わることを防止できる乗用型作業車を提供できるに至った。
【0012】
(構成)
請求項2に係る本発明の特徴構成は、請求項1に係る発明において、前記牽制手段が、前記PTO用クラッチが切り状態に切り換ってから所定時間経過しない間は、前記開閉用シャッターへの切換操作を牽制すべく作動する点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0013】
(作用効果)
請求項1においてPTO用クラッチが切り状態に切り換わると、前記開閉用シャッターの開閉操作が可能である。
しかし、PTO用クラッチが切り操作された直後においては、モーアの作動が完全には停止されていないこともある。
そこで、本願発明においては、PTO用クラッチが切り状態に切り換ってから所定時間経過しない間は、前記開閉用シャッターへの切換操作を牽制すべく、前記した牽制手段を働かせることとした。このような構成によって、モーアが停止しない状態での開閉用シャッターの開閉操作を阻止することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
〔第1実施形態〕
図1に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2によって支持された機体フレーム3の中央下部にモーア4が支持され、機体フレーム3の後部上部に運転座席5を設ける運転操縦部7が設けられ、機体の前部にエンジン6が支持されて、乗用型作業車の一例である乗用型草刈り機が構成されている。
【0015】
モーア4の構成について説明する。図2に示すように、モーア4は、左右の刈取りブレード8と刈取りブレード8を収納支持するモーアデッキ9とを装備している。モーアデッキ9の上面に、刈取りブレード8を駆動する駆動プーリ10と、エンジン6からの動力伝達を受ける入力プーリ11と、その他のテンションプーリ12とを配置して取り付けてある。
【0016】
入力プーリ11とエンジン6の出力プーリ6Aとに亘って伝動ベルト13を架設して、エンジン6からの動力をモーア4に導入してある。モーアデッキ9の上面に設けた入力プーリ11、各駆動プーリ10、テンションプーリ12とに亘って無端ベルト14が巡らされており、左右の刈取りブレード8を回転駆動すべく構成してある。
【0017】
刈取りブレード8の駆動構造について説明する。図3に示すように、モーアデッキ9の駆動プーリ10の設置部位に回転ボス部41を取付固定し、回転ボス部41内にベアリング42を介して駆動軸43が回転自在に支持してある。回転ボス部41の外側には、細断された刈芝を案内するガイド44が設けてある。回転ボス部41から上方に突出する駆動軸43の突出端には駆動プーリ10が取付固定してあり、ガイド44より下方に突出する下端には刈取りブレード8が取付固定してある。刈取りブレード8は一側辺に刈刃8aと先端に起風片8bを形成している。
【0018】
図2〜図4に示すように、モーアデッキ9の右側端には放出口9Aが設けてあり、放出口9Aを通してモーアデッキ9内から刈芝を放出すべく構成してある。放出口9Aに対しては開閉用シャッター15が設けてあり、放出口9Aを開放して刈芝を放出するサイドディスチャージ作業形態と放出口9Aを閉塞して刈草を細かく細断するマルチング作業形態とに切り換えるべく構成してある。
【0019】
また、放出口9Aの上方には、放出ガイド16が横向き軸芯X周りに上下揺動可能にかつトーションバネ16Aによって下向きに付勢され、モーアデッキ9の上方に立ち上がる退避姿勢とモーアデッキ9の右横側方に張り出す作用姿勢とに切換え可能に構成してある。
【0020】
次に、開閉用シャッター15の放出口9Aを開放する開状態と閉塞する閉状態とに切り換える構造について説明する。図3に示すように、開閉用シャッター15は、モーアデッキ9の側面に沿った円弧状部分とその円弧状部分の上方に位置する天井部分とをドーム状に一体形成したものである。
【0021】
図1〜図6に示すように、開閉用シャッター15と右側刈取りブレード8の回動軸芯Yとに亘って駆動機構17が架設されている。駆動機構17は、刈取りブレード8を支持した回転ボス部41に外遊嵌されて回転自在な駆動アーム17Aと、開閉用シャッター15の天井部分に取り付けてあるブラケット17Bと、駆動アーム17Aとブラケット17Bとを連結する板バネ17Cとで構成してある。そして、駆動アーム17Aを回動軸芯Y周りで回転駆動することによって、開閉用シャッター15を開状態と閉状態とに切り換えることができる。板バネ17Cによって開閉用シャッター15の移動時の振れや振動等を吸収して、開閉用シャッター15の円滑な移動を可能にしている。
【0022】
開閉用シャッター15は、駆動アーム17とともに、図2及び図4に示すように放出口9Aを覆う閉状態と、図5に示すように、放出口9Aより離れてモーアデッキ9の後面側に移動して放出口9Aを開放する開姿勢とに切り換えることができる。
【0023】
開閉用シャッター15の開閉駆動構造について説明する。図1及び図6に示すように、運転座席5の横側方の後輪フェンダー18に、開閉用切換操作具19としての開閉用切換操作レバー19を設けてある。開閉用切換操作レバー19は、フレーム部19Aに握り部19Bを備え、横向き軸芯周りで上下揺動自在に設けてある。
【0024】
一方、開閉用シャッター15に連結された駆動アーム17Aと板バネ17Cとの連結位置に、レリーズワイヤ20のインナーワイヤ20Aの一端20aを連結してあり、レリーズワイヤ20のインナーワイヤ20Aの他端20bを開閉用切換操作レバー19に連結してある。レリーズワイヤ20は、駆動アーム17と開閉用切換操作レバー19とを連結するインナーワイヤ20Aとそれを保持するアウターワイヤ20Bとで構成する。
【0025】
開閉用シャッター15に対するロック構造について説明する。図2、図4〜図6に示すように、開閉用シャッター15におけるモーアデッキ9の前側に対応する前端部に、ロック金具21が設けてある。
図8及び図10に示すように、ロック金具21は、開閉用シャッター15に設けた上下ブラケット15Cに亘って水平揺動自在に片持ち支持されたロックレバー21Aと、ロックレバー21Aの中間部に上下軸芯周りに水平揺動自在に支持されたロック係止片21Bと、ロック係止片21Bをロック解除方向に付勢する付勢ゴム板21Cとで構成してある。
【0026】
一方、前記した放出口9Aの縁部における前端部に、図5、図7及び図8に示すように、ロック受け具22が設けてある。ロック受け具22は、モーアデッキ9を支持する前ゲージ輪23の支持ブラケット24から延出されており、ロック係止片21Bの先端係止部を係止する係止孔22Aを設けてある。
【0027】
以上のような構成によって、開閉用シャッター15を閉じ状態に切換え、ロック係止片21Bを係止孔22Aに係合させることによって、開閉用シャッター15の移動を規制し、開閉用シャッター15を閉状態に維持することができる。
ここに、ロック金具21とロック受け具22とで、開閉用シャッター15をロックするロック機構Rを構成する。
【0028】
ロック機構Rに対する操作構造について説明する。図1及び図6に示すように、ロック機構Rを切換え操作するロック切換操作具としてのロック切換操作レバー25を、開閉用切換操作レバー19に近接する状態で設ける。ロック切換操作レバー25とロックレバー21A、及び、ロック係止片21Bとをレリーズワイヤ26で夫々連係する。
【0029】
ロック金具21の詳細な操作は次のように行われる。図7(a)及び図8(a)に示すように、ロック係止片21Bは、開閉用シャッター15を閉じ側に移動させる際には、付勢ゴム21Cによって開き姿勢にある。つまり、ロック係止片21Bには、内側面に付勢ゴム板21Cが装着されており、ロック係止片21Bを開閉用シャッター15から離れる方向に付勢している。このような構成によって、開閉用シャッター15を閉じ状態に切換移動させる際に、ロック係止片21Bが放出口9Aの縁部に不測に引っ掛かり、ロック操作が行い難くなることを抑制できる。
【0030】
開閉用シャッター15が閉塞位置に至ると、ロック操作レバー25を操作して、ロック係止片21Bをロック受け具22側に揺動させて、図7(b)に示すように、ロック係止片21Bをロック受け具22の係止孔22Aに係止させる。ロックレバー21Aもレリーズワイヤ26によって引き操作されるが、ロックレバー21Aにはストローク吸収バネ27がレリーズワイヤ26とロックレバー21Aの受止片との間に設けてあるので、ロックレバー21Aの位置は僅かにロック係止片21Bとともに揺動するだけである。
【0031】
図7(b)に示す状態から、更に、ロック操作レバー25を操作すると、今度は、ストローク吸収バネ27の吸収ストロークが限界に達し、図7(c)に示すように、ロックレバー21Aを開閉用シャッター15に近づく状態(ロック係止片21Bから離れる状態)に僅かに水平揺動させることによって、ロックがかかる。つまり、ロックレバー21Aを開閉用シャッター15に近づく方向に操作すると、ロック係止片21Bと係止孔22Aとの係合部位aと、ロックレバー21Aの揺動支点bとを結んだ直線Pの延長線を越えて、ロック係止片21Bのロックレバー21Aに対する揺動支点cが開閉用シャッター15側に近づく。
このことによって、ロック係止片21Bのロックレバー21Aに対する揺動支点cがデッドポイントを越えることとなって、ロック状態が維持される。
【0032】
〔第2実施形態〕
第1実施形態においては、開閉用シャッター15とロック機構Rとを機械的連係手段によって連係して、開閉用切換操作レバー19とロック切換操作レバー25とで操作する構成について説明した。
ここでは、開閉用シャッター15と開閉用切換操作レバー19とを連係する手段として、電気的に連係する手段について説明する。
【0033】
図11に示すように、電気的に連係する手段は、開閉用シャッター15を駆動する開閉用アクチュエータ30と、開閉用切換操作レバー19の切換操作位置を検出する操作位置検出手段31と、操作位置検出手段31からの検出情報に基づいて開閉用アクチュエータ30を駆動制御する制御手段32とで構成している。
開閉用アクチュエータ30としては、駆動アーム17の揺動軸芯位置に設けた駆動ギヤ機構30Aとその駆動ギヤ機構30Aを駆動する駆動モータ30Bとで構成してある。
【0034】
開閉用シャッター15を閉状態にロックする構成として、係合用ロックピン33と係合用ロックピン33を係合する係合用孔34Aとで構成する。図示してはいないが、係合用ロックピン33をスライド移動自在に放出口9Aの縁部近傍に配置し、係合用孔34Aを形成するブラケット34を開閉用シャッター15の開閉用シャッター15に取り付けて構成する。
係合用ロックピン33をロック用アクチュエータ35によってスライド駆動すべく構成し、前記制御手段32を通してロック用アクチュエータ35を駆動制御すべく構成してある。
【0035】
図11に示すように、開閉用切換操作レバー19は、機体前後方向に沿って移動するシャッター開閉用切換経路dと、その開閉用切換経路dの両端部において直交する方向へ移動するロック機構用切換経路eとに沿って、操作可能に構成してある。
開閉用切換操作レバー19の切換操作位置を検出する操作位置検出手段31としては、開閉用シャッター15が、シャッター開閉用切換経路dでの移動状態を検出するシャッター検出センサ31Aと、ロック機構用切換経路eでの移動状態を検出するロック用検出センサ31Bとで構成する。
【0036】
以上のような構成によって、開閉用切換操作レバー19をシャッター開閉用切換経路dに沿って移動操作すると、その状態をシャッター検出センサ31Bが検出し、検出結果が制御手段32を通して駆動モータ30Bに伝達されて、開閉用シャッター15が開閉駆動される。同様に、開閉用切換操作レバー19をロック機構用切換経路eに沿って移動操作すると、その状態をロック用検出センサ31Aが検出し、ロック機構Rが操作される。
このような構成によって、開閉用シャッター15、及び、ロック機構Rが運転操縦部7に居ながら切換操作が可能である。
【0037】
PTO用クラッチ36の操作系について説明する。図11に示すように、PTO用クラッチ36をアクチュエータ37で入切駆動可能に構成するとともに、PTO用クラッチ36を入切操作するクラッチ操作レバー38を設ける。
クラッチ操作レバー38の基端部には、クラッチ操作レバー38が入り操作位置にあるか又は切り操作位置にあるかを検出するクラッチ操作位置検出センサ39を設けてある。
このクラッチ操作位置検出センサ39の検出結果に基づいて制御手段32がアクチュエータ37を駆動制御して、PTO用クラッチ36を入り状態と切り状態とに切り換える。
【0038】
そして、クラッチ操作位置検出センサ39がPTO用クラッチ36の入り状態を検出している場合には、開閉用アクチュエータ30の作動が規制される。つまり、PTO用クラッチ36が入り状態でモーア4の刈取りブレード8が作動している場合には、モーアデッキ9の放出口9Aを開閉する開閉用シャッター15の作動は牽制されることとなる。
【0039】
さらに、タイマー40が設けてあり、PTO用クラッチ36が切り操作されて、そのことがクラッチ操作位置検出センサ39によって検出されてから、タイマー40の作動を開始させて、所定時間経過した後に、開閉用シャッター15の作動が許容されるように構成してある。このようなタイマー40の導入によって、PTO用クラッチ36が切り操作されても、慣性のために少し送れて切り状態に移行する刈取りブレード8の作動特性に対応した制御構成を採ることができた。
【0040】
〔第3実施形態〕
クラッチ操作レバー38と開閉用切換操作レバー19との間に形成される機械的な牽制手段について説明する。尚、ここでは、ロック機構Rに対するロック切換操作レバー25については省略してある。図3及び図6に示すように、開閉用切換操作レバー19と開閉用シャッター15との連係関係は第1実施形態又は第2実施形態を採用する。クラッチ操作レバー38の設置状態を第1実施形態又は第2実施形態と異なる状態に設置する。
【0041】
つまり、図12に示すように、クラッチ操作レバー38のクラッチ入り位置からクラッチ切り位置までのクラッチ用切換経路fと開閉用切換操作レバー19のシャッター開閉用切換経路dとをT字を形成するように配置する。そして、クラッチ用切換経路fのクラッチ入り位置に近接する位置にシャッター開閉用切換経路dを配置し、シャッター開閉用切換経路dから離れた位置に、クラッチ用切換経路fのクラッチ切り位置を配置する。
【0042】
クラッチ操作レバー38には、開閉用切換操作レバー19のシャッター開閉用切換経路dに向けて延出された牽制具38Aが設けてある。牽制具38Aは、クラッチ操作レバー38から開閉用切換操作レバー19に向けて延出された基端棒状部38aと、基端棒状部38aの先端に一体形成されている先端棒状部38bで構成してある。先端棒状部38bは、開閉用切換操作レバー19のシャッター開閉用切換経路dに沿った直線状に形成してあり、牽制具38Aは十字形状を呈している。先端棒状部38bのシャッター開閉用切換経路dに沿った全長は、開閉用切換操作レバー19の開位置と閉位置との間に収まる長さに形成されている。
【0043】
以上のような構成によって、牽制が次のようにして行われる。図12(a)に示すように、クラッチ操作レバー38をクラッチ入り位置に操作すると、クラッチ操作レバー38から延出された牽制具38Aの先端棒状部38bがシャッター開閉用切換経路d内に入り込み、開き位置又は閉じ位置に位置する開閉用切換操作レバー19が先端棒状部38bの先端部に当接して、反対側の閉じ位置又は開き位置に移動することが牽制される。
【0044】
図12(b)に示すように、クラッチ操作レバー38をクラッチ切り位置に操作すると、クラッチ操作レバー38から延出された牽制具38Aの先端棒状部38bがシャッター開閉用切換経路d内から退出する。これによって、開閉用切換操作レバー19がシャッター開閉用切換経路dに沿った移動が可能になり、開閉用シャッター15の開閉操作が可能になる。ここに、牽制具38Aを、PTO用クラッチ36が入り状態にある場合に、開閉用切換操作具19による開閉用シャッター15の切換操作を牽制する牽制手段と称する。
【0045】
〔別実施形態〕
(1) 開閉用切換操作具として開閉用切換操作レバー19について記載したが、ペダルでもよく、或いは、開閉用切換スイッチであってもよい。
(2) 開閉用切換操作具の設置位置としては、必ずしも、運転座席5の近傍に配置する必要はなく、運転操縦部7において操作できる位置に設置されていればよい。
(3) 開閉用シャッター15と開閉用切換操作具19とを連係する手段として採用される機械的連係手段として、レリーズワイヤ20を利用したものを記載したが、その他、リック機構やギヤ構造などを組み合わせて利用してもよい。
(4) 開閉用シャッター15と開閉用切換操作具19とを連係する手段として採用される機械的連係手段として、レリーズワイヤ20を利用したものを記載したが、開閉用シャッター15を開状態か又は閉状態に付勢する付勢手段を導入し、レリーズワイヤ20はその付勢手段の付勢力に抗して閉状態か又は開状態に操作するだけのものであってもよい。
(5) 開閉用シャッター15に対する開閉用アクチュエータ30としては、液圧シリンダ、電動シリンダ、ラックギヤ等適宜選択することが可能である。
(6) 前記開閉用切換操作具19の切換操作位置を検出する操作位置検出手段としては、ポテンショメータ等のアナログセンサ、或いは、ロータリーエンコーダで代表されるデジタルセンサを使用可能である。
(7) ロック機構Rを切換操作する開閉用切換操作具19又はロック切換操作具25との連係は、機械的連係機構又は電気的連係機構が採用できる。
(8) ロック機構Rとしては、開閉用シャッター15の閉状態をロックする場合の構成について説明したが、開閉用シャッター15の開状態をロックするものを設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】乗用型草刈り機の全体側面図
【図2】モーアの平面図
【図3】モーアの縦断背面図
【図4】開閉用シャッターと開閉用切換操作レバーとのワイヤ連係、及び、ロック機構とロック切換操作レバーとのワイヤ連係状態を示す平面図
【図5】開閉用シャッターを開姿勢に切り換えた状態を示す平面図
【図6】開閉用シャッターと開閉用切換操作レバーとの連係、及び、ロック機構とロック切換操作レバーとの連係を示す平面図
【図7】(a)開閉用シャッターを閉じ状態に移行させる途中の状態におけるロック機構を示す平面図、(b)開閉用シャッターを閉じ状態に切換え、ロック機構のロック係止片を係止孔に係合させた状態を示す平面図、(c)開閉用シャッターを閉じ状態に切換え、ロック機構のロックレバーでロック状態を現出した状態を示す平面図
【図8】(a)開閉用シャッターを閉じ状態に移行させる途中の状態におけるロック機構を示す平面図、(b)開閉用シャッターを閉じ状態に切換え、ロック機構のロックレバーでロック状態を現出した状態を示す平面図
【図9】付勢ゴムを示す平面図
【図10】ロック機構を示す斜視図
【図11】開閉用シャッターとロック機構とを操作する、第2実施形態を示す構成図
【図12】クラッチ操作レバーから開閉用切換操作レバーに向けて牽制具を延出した状態を示し、(a)はPTO用クラッチを入り状態に切換え、牽制具を開閉用切換操作レバーのシャッター開閉用切換経路内に臨ませた状態を示す機能図、(b)はPTO用クラッチを切り状態に切換え、牽制具を開閉用切換操作レバーのシャッター開閉用切換経路から退出させた状態を示す機能図
【符号の説明】
【0047】
4 モーア
7 運転操縦部
8 刈取りブレード
9 モーアデッキ
9A 放出口
15 開閉用シャッター
19 開閉用切換操作レバー(開閉用切換操作具)
30 開閉用アクチュエータ(牽制手段)
32 制御手段(牽制手段)
36 PTO用クラッチ
38A 牽制具(牽制手段)
39 クラッチ操作位置検出センサ(牽制手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転操縦部を備えた走行機体にモーアを装備し、前記モーアを、刈取りブレードと前記刈取りブレードを収納したモーアデッキとで構成し、前記モーアデッキに刈芝を放出する放出口と、前記放出口を閉塞する開閉用シャッターとを備えている乗用型作業車であって、
前記運転操縦部に開閉用切換操作具を設け、前記開閉用シャッターと前記開閉用切換操作具とを連係し、前記開閉用切換操作具への切換操作によって、前記開閉用シャッターを開状態と閉状態とに切り換えるべく構成し、
前記モーアへの伝動を入切するPTO用クラッチを設け、前記PTO用クラッチが切り状態にある場合には、前記開閉用切換操作具による前記開閉用シャッターの切換操作を許容し、前記PTO用クラッチが入り状態にある場合には、前記開閉用切換操作具による前記開閉用シャッターの切換操作を牽制する牽制手段を備えている乗用型作業車。
【請求項2】
前記牽制手段が、前記PTO用クラッチが切り状態に切り換ってから所定時間経過しない間は、前記開閉用シャッターへの切換操作を牽制すべく作動する請求項1記載の乗用型作業車。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−35491(P2010−35491A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202305(P2008−202305)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】