説明

乗用型農作業機における操縦コラム装置

【課題】操縦座席5の前部に,操縦ハンドル8と操縦コラム9とを設け,前記操縦コラムの上面におけるメータパネル16に各種の計器17等を取付ける一方,エンジン10におけるラジエータ22を冷却するための大気空気を,前記操縦コラム内に取り入れたのち前記ラジエータに送風するように構成して成る乗用型農作業機において,前記各種の計器17等を,前記冷却用大気空気に同伴する塵埃・水滴から保護する。
【解決手段】前記メータパネル16の裏面に,前記各種の計器17等の裏側を密閉するボックス25を設け,このボックスに,前記操縦コラム内への連通孔26と,この連通孔に対する防塵用のフィルタ27とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,各種の農作業機のうち作業者が搭乗して操縦するようにした芝刈機又はトラクター等の乗用型農作業機において,その操縦座席の前方に,各種計器類を取付けるために配設される操縦コラム装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,芝刈機又はトラクター等の乗用型農作業機においては,例えば,特許文献1内に記載されているように,操縦座席の前方に,操縦ハンドルと操縦コラムとを設け,前記操縦コラムの上面におけるメータパネルに各種の計器,スイッチ及びランプ類を取付ける一方,エンジンにおけるラジエータを冷却するための大気空気を,前記操縦コラム内に一旦取り入れたのち前記ラジエータに送風するという構成にしている。
【特許文献1】特開平2002−337755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の操縦コラム装置は,前記したように,操縦コラムの上面におけるメータパネルに各種の計器,スイッチ及びランプ類を取付ける一方,エンジンにおけるラジエータを冷却するための大気空気を,前記操縦コラム内に一旦取り入れたのち前記ラジエータに吸い込ませるという構成であることにより,前記操縦コラムの上面におけるメータパネルに取付けた各種計器,スイッチ及びランプ類の裏側が,前記ラジエータに対する冷却用の大気空気に直接曝されて,これに前記冷却用の大気空気に同伴している塵埃及び水滴が付着することになるから,前記各種の計器,スイッチ及びランプ類に漏電等のような故障及び不良の発生率が高いばかりか,前記各種計器,スイッチ及びランプ類における耐久性を低下するおそれが大きいという問題があった。
【0004】
本発明は,これらの問題を解消した操縦コラム装置を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この技術的課題を達成するため本発明は,
「操縦座席の前部に,操縦ハンドルと操縦コラムとを設け,前記操縦コラムの上面におけるメータパネルに各種の計器,スイッチ又はランプを取付ける一方,エンジンにおけるラジエータを冷却するための大気空気を,前記操縦コラム内に取り入れたのち前記ラジエータに送風するように構成して成る乗用型農作業機において,
前記メータパネルの裏面に,前記各種の計器,スイッチ又はランプの裏側を密閉するボックスを設け,このボックスに,前記操縦コラム内への連通孔と,この連通孔に対する防塵用のフィルタとを設ける。」
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
前記メータパネルに取付けた各種の計器,スイッチ又はランプの裏側は,前記メータパネルの裏面に設けたボックスにて前記操縦コラムの内部と隔離されているので,前記各種の計器,スイッチ又はランプの裏側に,前記操縦コラムの内部に導入される冷却用大気空気に同伴している塵埃及び水滴が付着することを確実に回避することができる。
【0007】
一方,前記ボックス内における空気は,温度の変化等により,連通孔を介して出入りするから,前記ボックス内における圧力が変化することを防止できるが,この際に,前記ボックス内に塵埃及び水滴が前記連通孔を介して侵入することを,当該連通孔に対して設けた防塵用フィルタにて確実に阻止できるから,前記各種の計器,スイッチ又はランプに漏電等のような故障及び不良が発生することを,前記メータパネル及びボックス等に前記した圧力変化による変形及び破損を招来することなく,確実に低減できるばかりか,前記各種の計器,スイッチ又はランプにおける耐久性を向上できる。
【0008】
この場合において,請求項2に記載したように,前記ボックスの裏蓋を開閉自在に構成することにより,前記メータパネルに対する各種の計器,スイッチ又はランプの取付け,及び,前記各種の計器,スイッチ又はランプへの配線及びハーネス等を接続することの作業性を向上できる利点がある。
【0009】
また,請求項3に記載したように,前記連通孔を複数個にして,ボックス内における圧力変化をより確実に低減する一方,前記防塵用フィルタを,前記連通孔に対して共通する一つの防塵用フィルタに構成することにより,前記連通孔を複数個にしながらも,これに対する防塵用フィルタを設けることの構成を簡単にできる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下,本発明の実施の形態を,乗用型の芝刈機に適用した場合の図面について説明する。
【0011】
この芝刈機1は,図1及び図2に示すように,左右一対の前車輪3と,同じく左右一対の後車輪4とで支持された機体フレーム2を備え,この機体フレーム2における後部上面には,作業者が搭乗する操縦座席5と,この操縦座席5の回り及び前記両後車輪4の上方を覆うようにしたリヤカウル6とが設けられ,前記リヤカウル6には,前記操縦座席5における足元の部分に作業者に対するステップ床台7が,左右方向に延びるように一体に設けられ,作業者はこのステップ床台7に乗った状態で前記操縦座席5に着座するように構成されている。
【0012】
また,前記機体フレーム2には,前記操縦座席5の前方の部位に,チルト式の操縦ハンドル8と操縦コラム9とが設けられ,これらより前方の部位に,前記車輪4,5及び後述する刈取装置13を駆動する水冷式のエンジン10及びこのエンジン10の前面及び左右両側面を覆うフロントカウル11が設けられ,前記エンジン10の上半分は,開閉自在なボンネット12にて覆われている。
【0013】
前記機体フレーム2における下面のうち両前車輪4と,両後車輪5との間の部位には,前進走行するときに地面に植立する芝草を刈り取るようにした刈取装置13が設けられ,この刈取装置13にて刈り取った芝草は,前記両後車輪4の間に後方に延びるように配設したダクト14を介して,前記機体フレーム2の後部に取付けた集草ボックス15内に捕集され,この集草ボックス15内に捕集された芝草は,集草ボックス15を回転することによってこの集草ボックス15から排出するように構成されている。
【0014】
前記操縦コラム9は,前記ステップ床台7から立ち上がるように中空状に構成され,その上面におけるメータパネル16には,各種の計器17及びランプ18が,当該メータパネル16の裏面に突出するように取付けられている。
【0015】
また,前記ステップ床台7のうち前記操縦コラム9の側方の部位には,アクセルペタル19,ブレーキペタル20及びクラッチペタル等の各種の操縦操作具が設けられており,また,前記ボンネット12内のエンジン室12aは,前記操縦コラム9内に連通している。
【0016】
前記ボンネット12内のうち前記エンジン10と,前記操縦ハンドル8との間には,前記エンジン10側の面に通風フアン21を備えたラジエータ22が配設されているとともに,前記ボンネット12内を前記ラジエータ22より前方のエンジン室12aと前記操縦コラム9内とを区画するための区画板23が設けられており,前記通風フアン21を,前記エンジン10にて回転駆動することにより,大気空気を,前記操縦コラム9内に,当該操縦コラム9に設けた通気孔9a又は前記操縦ハンドル8における軸が当該操縦コラム9を貫通する部分等から取り入れ,この操縦コラム9内から前記ラジエータ22を通過したのち前記エンジン室12a内に送風するように構成している。
【0017】
そして,前記操縦コラム9のメータパネル16における裏面側には,開閉自在に構成した裏蓋24にて密封構造にして成るボックス25を設けて,このボックス25内に,前記メータパネル16に取付けた各種の計器17及びランプ18の裏側をのぞませる。
【0018】
また,裏蓋24には,前記ボックス25内と前記操縦コラム9の内部との連通孔26の複数個を穿設する一方,前記裏蓋24の表面には,例えば,多孔質のスポンジ等にて構成される一枚の防塵用フィルタ27を,当該フィルタ27にて前記各連通孔26を同時に塞ぐように貼設して設ける。
【0019】
なお,前記操縦コラム9内における底部を仕切り板28にて塞ぐことにより,前記ステップ床台7の上面側において塵埃が少ない状態になっている大気空気を,前記操縦コラム9内に取り入れるように構成している。
【0020】
この構成において,前記芝刈機1による芝刈り作業は,当該芝刈機1をその刈取装置13を駆動した状態で前進走行することによって行われる。
【0021】
この芝刈り作業に際して,地面からは,刈り取った芝草の細片や,土砂等の塵埃が多量に舞い上がることになるが,前記芝刈機1のうちステップ床台7の上面側においては,前記したように地面から舞い上がる塵埃が少ない状態になっており,そして,前記ステップ床台7の上面側において塵埃の少ない状態になっている大気空気は,前記操縦コラム9内に取り入れられ,この操縦コラム9内から前記ラジエータ22に送風される。
【0022】
前記操縦コラム9におけるメータパネル16に取付けた各種計器17及びランプ18の裏側は,前記メータパネル16の裏面に設けたボックス25及びその裏蓋24にて前記操縦コラム9の内部と隔離されているので,前記各種計器17及びランプ18の裏側に,前記操縦コラム9の内部に導入される冷却用大気空気に同伴している塵埃及び水滴が付着することを確実に回避することができる。
【0023】
一方,前記ボックス25内における空気は,温度の変化等により,各連通孔26を介して出入りするから,前記ボックス25内の圧力が変化することを防止できるが,この際に,前記ボックス25内に塵埃及び水滴が前記連通孔26を介して侵入することを,当該連通孔26に対して設けた防塵用フィルタ27にて確実に阻止できる。
【0024】
なお,前記実施の形態は,地面から多量の塵埃を舞い上げる芝刈機に適用した場合であったが,本発明は,これに限らず,トラクター等のようにその他の乗用型農作業機に対しても適用できることはいうまでもない。
【0025】
また,前記操縦コラム9におけるメータパネル16には,前記したように,各種の計器17及びランプ18を取付けることに代えて,各種の計器17,各種のランプ18及び各種のスイッチのうちいずれか一つ又は複数を取付けるように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】芝刈機の側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図2のIII −III 視拡大断面図である。
【図4】操縦コラムの要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 芝刈機
2 機体フレーム
3 前車輪
4 後車輪
5 操縦座席
7 ステップ床台
8 操縦ハンドル
9 操縦コラム
10 エンジン
12 ボンネット
13 刈取装置
21 通風フアン
22 ラジエータ
23 区画板
24 裏蓋
25 ボックス
26 連通孔
27 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦座席の前部に,操縦ハンドルと操縦コラムとを設け,前記操縦コラムの上面におけるメータパネルに各種の計器,スイッチ又はランプを取付ける一方,エンジンにおけるラジエータを冷却するための大気空気を,前記操縦コラム内に取り入れたのち前記ラジエータに送風するように構成して成る乗用型農作業機において,
前記メータパネルの裏面に,前記各種の計器,スイッチ又はランプの裏側を密閉するボックスを設け,このボックスに,前記操縦コラム内への連通孔と,この連通孔に対する防塵用のフィルタとを設けることを特徴とする乗用型農作業機における操縦コラム装置。
【請求項2】
前記請求項1の記載において,前記ボックスの裏蓋を開閉自在に構成することを特徴とする乗用型農作業機における操縦コラム装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2の記載において,前記連通孔を複数個にする一方,前記防塵用フィルタを,前記連通孔に対して共通する一つの防塵用フィルタに構成することを特徴とする乗用型農作業機における操縦コラム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−313985(P2007−313985A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−144280(P2006−144280)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】