説明

乗用草刈機

【課題】乗用草刈機の草刈取幅を拡縮するために、メインカッターを有するモーアデッキの横側に、外側へ張出可能のサイドカッターを設ける形態では、このサイドカッターの刈取傾斜角度を変えることが多く、この伝動構成が煩雑化して、コスト高となる。
【解決手段】モーアデッキ1の一側部に沿う前後位置に、メインカッター2側から連動のカウンタプーリ3と、刈取面傾斜角を変更可能のサイドカッター4の入力プーリ5とを設け、これら前後両プーリ3,5間をベルト6掛け連動することを特徴とする乗用草刈機の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モーアデッキの一側部に出退可能のサイドカッターを有した乗用草刈機に関し、サイドカッターの伝動構成を簡単化するものである。
【背景技術】
【0002】
モーアデッキの一側部に出退可能のサイドカッターを設ける技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【特許文献1】特開2005−198524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
乗用草刈機の草刈取幅を拡縮するために、メインカッターを有するモーアデッキの横側に、外側へ張出可能のサイドカッターを設ける形態では、このサイドカッターの刈取傾斜角度を変えることが多く、この伝動構成が煩雑化して、コスト高となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、モーアデッキ1の一側部に沿う前後位置に、メインカッター2側から連動のカウンタプーリ3と、刈取面傾斜角を変更可能のサイドカッター4の入力プーリ5とを設け、これら前後両プーリ3,5間をベルト6掛け連動することを特徴とする乗用草刈機の構成とする。刈取時はメインカッター2の回転によって、モーアデッキ1の直下に案内される芝草を刈取ることができる。刈取幅を広くするときは、サイドカッター4を入力軸5側部の周りに外方へ回動して外方へ張出させる。このとき、サイドカッター4は、この入力プーリ5部の周りに上下に起伏回動して、刈取面の傾斜角度を変更することができる。これら刈取時の伝動は、モーアデッキ1のメインカッター2側からカウンタプーリ3を介して、モーアデッキ1横端部に沿う前後方向にわたって掛け渡されるベルト6によって入力プーリ5が伝動されて、サイドカッター4が伝動回動される。サイドカッター4は、前記入力プーリ5部の周りに刈取面傾斜角度が変更、調節されるが、カウンタプーリ3との間に掛け渡されるベルト6の捻れによって伝動状態を維持できる。
【0005】
請求項2に記載の発明は、前記サイドカッター4の一定以上の起立回動Dによって、このサイドカッター4の伝動クラッチ8を切るように連動することを特徴とする。前記のようにサイドカッター4を起立状態に回動し又は収納姿勢とするときは、このサイドカッター4の一定以上の起立回動によって、前記カウンタ軸3からサイドカッター4への伝動の伝動クラッチ8が切りに作動されて、このサイドカッター4の伝動が切りになる。又、このサイドカッター4の刈取面起立角度が一定位置以下の場合は、伝動クラッチ8が入りの状態にあって、傾斜地面に沿った刈取姿勢でブレード7を回転して、芝草の刈取を行うことができる。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明は、サイドカッター4の刈取面傾斜角を一定角以内で変更しても、カウンタプーリ3と入力プーリ5の間に掛け渡されるベルト6の捻れによって伝動状態が維持されるため、伝動構成を簡単にして、安価にすることができ、しかもサイドカッター4の刈取面傾斜角の変更を円滑に、容易に行うことができる。又、前後方向のベルト6の捻れはプーリ3,5からのベルト6外れを防止することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、サイドカッター4を傾斜回動することによって、モーアデッキ1による刈取進行位置横側の傾斜地面の芝草を、このサイドカッター4によって刈取ることができ、このサイドカッター4の起立角度を一定以上に大きくすると、これに連動して伝動クラッチ8が自動的に切りになって、サイドブレード7の回転が停止される。このため、サイドカッター4の起立回動Dが大きくなることによってサイドブレード7が露出状態となっても、この伝動回転の自動停止によって安全を図ることができる。しかも、このサイドカッター4の起立回動Dによって収納姿勢にしても、モーアデッキ1側のメインカッター2の伝動は行わせることができるため、メインカッター2による刈取作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図例に基づいて、モーアデッキ1は、小形四輪走行形態の車体9の腹部に装着し、車体9後部に搭載のエンジン10からベルト11、メインテンションクラッチ19等の連動機構を介して、このモーアデッキ1のブレード軸12を伝動回転し、このブレード軸12下端のメインブレード13を回転して芝草の刈取を行うことができる。車体9の前部には左右一対の前輪14を配置して、ステアリングハンドル15によって操向することができる。又、車体9の後部には左右一対の後輪16を配置して、前記エンジン10によって駆動して走行することができる。車体9の中央部のステップフロア17後部には運転席18を設けて乗用操作形態の草刈機を構成する。サイドカッター4は、複数のサイドブレード7を配置してこのモーアデッキ1の一側(左側)に出退可能に設ける。
【0009】
ここにおいて、この乗用草刈機の構成は、モーアデッキ1の一側部に沿う前後位置に、メインカッター2側から連動のカウンタプーリ3と、刈取面傾斜角を変車可能のサイドカッター4の入力プーリ5とを設け、これら前後両プーリ3,5間をベルト6掛け連動することを特徴とする。刈取時はメインカッター2の回転によって、モーアデッキ1の直下に案内される芝草を刈取ることができる。刈取幅を広くするときは、サイドカッター4を入力プーリ5の入力軸26周りに外方へ回動Eして外方へ張出させる。このとき、サイドカッター4は、支持軸24部の周りに上下に起伏回動Cして、刈取面の傾斜角度を変更することができる。これら刈取時の伝動は、モーアデッキ1のメインカッター2側からカウンタプーリ3を介して、モーアデッキ1横端部に沿う前後方向にわたって掛け渡されるベルト6によって入力プーリ5が伝動されて、サイドカッター4が伝動回動される。サイドカッター4は、前記入力プーリ5部の周りに刈取面傾斜角度が変更、調節されるが、カウンタプーリ3との間に掛け渡されるベルト6の捻れによって伝動状態を維持できる。
【0010】
又、前記サイドカッター4の一定以上の起立回動Dによって、このサイドカッター4の伝動クラッチ8を切るように連動することを特徴とする。前記のようにサイドカッター4を起立状態に回動し又は収納姿勢Sとするときは、このサイドカッターの一定以上の起立回動によって、前記カウンタ軸3からサイドカッター4への伝動の伝動クラッチ8が切りに作動されて、このサイドカッター4の伝動が切りになる。又、このサイドカッター4の刈取面起立角度が一定位置以下の場合は、伝動クラッチ8が入りの状態にあって、傾斜地面に沿った刈取姿勢でブレード7を回転して、芝草の刈取を行うことができる。
【0011】
又、前記サイドカッター4は、モーアデッキ1の一側面に沿わせ刈取面を起立させた状態で収納可能に構成してある。サイドカッター4をモーアデッキ1の横側へ張出して刈取幅を拡張するときは、このサイドカッター4の各ブレード7の回転面が刈取地面に沿うように接近して回転する。このサイドカッター4を前記入力プーリ5部の周りに回動して収納姿勢Sとするときは、このサイドカッター4をモーアデッキ1の横側面に沿わせるように接近させ刈取地面に沿う状態から起立状態に回動させる。このサイドカッター4の収納姿勢Sでは、このサイドカッター4の伝動を切りにするが、モーアデッキ1のメインカッター2のみ伝動して刈取作業を行うことができ、又、このメインカッター2の伝動を切りにして刈取作業を停止することができる。
【0012】
前記モーアデッキ1は、中央部のブレード軸12にメインブレード13を設けて、前記エンジン10側からベルト11、メインクラッチ19を介して伝動する。このメインブレード13の回転によって刈取られる芝草は、このモーアデッキ1右側の排出口20から外側方へ排出される。サイドカッター4は、小回転径のサイドブレード7(7L,7M,7R)が複数のブレード軸21(21L,21M,21R)により軸装され、三連形態に構成されている。各ブレード軸21を軸装するサイドデッキ22の基端部には、このブレード軸21R上に一体の入力プーリ5の入力軸26を設け、この入力軸26の周りに回動可能のデッキアーム39を設ける。このデッキアーム39をモーアデッキ1の左側前部の支持ブラケット23に対して、前進方向Fに沿う支持軸24の周りに上下方向に起伏回動C,D可能に軸支する。このサイドカッター4の各サイドブレード7は、モーアデッキ1側のブレード7Rが最前位に配置されて、メインブレード13の回転域の前側に一部重合するように設定している。これによってメインブレード13とサイドブレード7Rとの間の芝草刈残しを少なくするように設定している。又、このサイドカッター4における左右各サイドブレード7L,7M,7Rは、このブレード軸21L,21M,21Rを前後偏倚させて、回転域を相互に前後に重合させて、各サイドブレード7L,7M,7R間の芝草刈残しを少なくするように構成している。
【0013】
前記モーアデッキ1の左側後部には、このモーアデッキ1部に支持させるカウンタ軸27を立設し、このカウンタ軸27の周りに回転自在のカウンタプーリ3を設け、前記メインブレード13のブレード軸12のメインプーリ25との間をVベルト28を掛け渡して連動する。前記サイドカッター4の起伏回動C,D支持軸24は、このカウンタ軸3から前方に略機体進行方Fに沿って延びる直線L上に沿って設け、この支持軸24の周りにサイドカッター4を起伏回動Cさせて、このサイドカッター4の刈取面をモーアデッキ1横側の傾斜地面に沿わせて接近させることができる。前記サイドカッター4の右端ブレード軸21R上の入力軸26上端部に入力プーリ5を設け、この入力プーリ5と後方のカウンタプーリ3との間に、Vベルト6を掛け渡して、テンションプーリ29を張圧させて伝動する構成としている。この入力軸26から各ブレード軸21M,21Lへの連動は、各軸21R,21M,21Lに固定のプーリ30R,30M,30L間にわたってVベルト31を掛け渡して、各プーリ30R,30M間や、プーリ30M,30L間にはテンションプーリ32,33を張圧させて、連動構成し、入力プーリ5の回転によってベルト31を介して各サイドブレード7を同方向へ回転して刈取作用を行うことができる構成としている。
【0014】
このようなサイドカッター4は、前記メインブレード13のブレード軸12の回転によって、Vベルト28,6,及び31を介して伝動回転されるが、このブレード軸12上のメインプーリ25と、カウンタ軸27上のカウンタプーリ3との間に掛け渡されるテンションクラッチプーリからなる伝動クラッチ8が設けられて、このテンションアーム34を運転席18横のクラッチレバー35で操作することによって、ワイヤー36連動等によって伝動クラッチ8を入り切り操作することができる。尚、これらサイドカッター4のクラッチ機構は、カウンタプーリ3と入力プーリ5との間に掛け渡されるベルト6のテンションプーリ29を入切させることも可能である。又、図4のように、この伝動クラッチ8を操作するクラッチレバー35には、前記サイドデッキ22のアーム37に連結のワイヤー38を連結して、このサイドカッター4のサイドデッキ22が一定角以上に起立回動Dされることによって、ワイヤー38を介してクラッチレバー35がクラッチ入り位置Aから切り位置Bへ回動して、前記伝動クラッチ8を切り、サイドカッター4の伝動を停止するように構成している。
【0015】
このサイドカッター4は、サイドデッキフレーム22の基部に、前記入力プーリ5を有する入力軸26の周りに前後回動E可能のデッキアーム39を設け、このデッキアーム39を前記支持ブラケット23上の支持軸24の周りに上下回動C,D可能に支持させる。このデッキアーム39は、サイドデッキフレーム22に対して入力軸26の周りに回動E可能であると共に、ガスダンパーやスプリング等によってサイドカッター4が刈取姿勢Kとなるよう付勢してある。すなわち、サイドカッター4が刈取姿勢K状態で前進刈取作業中に、サイドカッター4前方に樹木や石等の障害物が接触すると、ガスダンパーやスプリングの付勢力に打ち勝ってサイドカッター4は入力軸26周りに後方へ退避するよう構成されている。又、支持軸24回りの上下回動C,Dは、この回動位置をラック機構、乃至停止ピン機構等によって固定可能に構成されてある。この刈取姿勢Kからサイドカッター4をモーアデッキ1側へ回動Eさせ、モーアデッキ1の外側端に沿わせた状態で、固定ピン乃至フック等により固定させることによって姿勢Nとすることができる。又、姿勢Nから支持軸24周りに上方へ大きく起立回動Dさせて、収納姿勢Sに起立させることができる。
この収納姿勢Sのサイドカッター4は、モーアデッキ1の横側面上に沿って起立状態となるため、モーアデッキ1よりも高く上昇して、横外側への張出を小さくするものであるから、モーアデッキ1による刈取作業を制限し難い。
【0016】
このようにサイドカッター1を入力プーリ5の入力軸26の周りに内外側へ回動するときは、カウンタプーリ3とこの入力プーリ5との間の伝動ベルト6の張設状態は殆ど変わらない。又、サイドカッター4を支持軸24の周りに上下に回動Cするときは、このサイドカッター4の入力軸26がデッキアーム39を介して支持軸24の周りに回動するが、この支持軸24の軸芯方向が略前後方向Lのカウンタプーリ3の方向に向けて設定されているため、入力プーリ5が支持軸24周りに上下移動するが、これらカウンタプーリ3と入力プーリ5とのベルト6張設間隔は略一定に維持されている。このため、ベルト6は捻れた状態となって、テンションプーリ29による張圧力の吸収を受けながらサイドカッター4の伝動回転を維持することができる。又、このサイドカッター4を刈取姿勢Kから刈取傾斜回動Cを経て、それ以上に大きく回動Dしたり、モーアデッキ1の横側面に沿わせて起立回動Dして収納姿勢Sにまで大きく回動するときは、この伝動ベルト6の捻れ角度も大きくなって伝動できない状態となるが、このときは、サイドカッター4の伝動は不要であるから、伝動クラッチ8を切りにすることができる。
【0017】
又、このようにサイドカッター4が刈取姿勢Kから刈取傾斜回動Cを経て、それ以上に大きく回動Dしたり、収納姿勢Sに大きく回動することによって、ワイヤー38を介して入り位置Aにあるクラッチレバー35を切り位置Bへ回動して、伝動クラッチ8を切りにし、サイドカッター4の伝動を切りにする。
【0018】
前記モーアデッキ1の後端部には、リヤカバー40を設けて、メインブレード13の回転によって飛散される草や、石礫等を受けて、後方への飛散を防止する。このリヤカバー40の後側部には、車体9のリヤアクスルハウジング41部に吊り下げて取付けるリヤゴムカバー42を設ける。このリヤゴムカバー42は、該リヤカバー40よりも下方に位置させて、下縁部を前後揺動自在に設定している。メインブレード13を回転状態のままで車体9を後退させると、このリヤゴムカバー42が接地して前側へ揺動されることがでるが、前側のリヤカバー40の下縁に受け止められても、メインブレード13の回転接触を受けることは少なく、このメインブレード13による切断損傷を受け難い構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】乗用草刈機の平面図。
【図2】サイドカッター部の背面図。
【図3】サイドカッター部の平面図。
【図4】乗用草刈機の側面図。
【図5】伝動クラッチの連動機構図。
【符号の説明】
【0020】
1 モーアデッキ
2 メインカッター
3 カウンタプーリ
4 サイドカッター
5 入力プーリ
6 ベルト
8 伝動クラッチ
9 車体
14 前輪
15 後輪
D 回動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の前輪(14)及び後輪(15)を懸架する車体(9)の腹部にメインカッター(2)と、該メインカッター(2)のモーアデッキ(1)から一側方へ向け出退自在のサイドカッター(4)を備えた乗用草刈機において、モーアデッキ(1)の一側部に沿う前後位置に、メインカッター(2)側から連動のカウンタプーリ(3)と、刈取面傾斜角を変更可能のサイドカッタ−(4)の入力プーリ(5)とを設け、これら前後両プーリ(3),(5)間をベルト(6)掛け連動することを特徴とする乗用草刈機。
【請求項2】
前記サイドカッター(4)の一定以上の起立回動Dによって、このサイドカッター(4)の伝動クラッチ(8)を切るように連動することを特徴とする請求項1、又は2に記載の乗用草刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−136236(P2009−136236A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318083(P2007−318083)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000144980)株式会社アテックス (111)
【Fターム(参考)】