説明

乳がんにおけるER状態の弁別特性

本発明は、エストロゲン受容体発現が陽性および陰性である集団の識別に適した遺伝子発現プロファイルまたはパターンの同定と使用に関する。該遺伝子発現プロファイルは核酸発現、タンパク質発現または他発現形式のいずれでも表わされ、乳がん細胞および組織の研究および/または診断ならびに乳がん患者の生存率を含む予後の研究および/または決定に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、本明細書にその全体が参考文献として援用されている2003年3月4日提出の米国仮特許出願第60/451,942号の優先権の利益を主張する。
本発明は、乳がん患者の生存率に関連する遺伝子発現プロファイルまたはパターンの同定と使用に関する。本発明は特に、エストロゲン受容体発現が陽性および陰性である集団の識別に使用することができる遺伝子の同一性を提供する。該遺伝子発現プロファイルは核酸発現、タンパク質発現またはその他の発現形式のいずれで表わされようが、乳がん細胞および組織の研究および/または診断ならびに患者の予後の研究および/または決定に使用される。該プロファイルはまた診断または予後の方法に使用してもよい。
【背景技術】
【0002】
乳がんは女性の間で断然発症率が高いがんである。毎年、米国と全世界で、それぞれ18万人と100万人の女性が乳がんと診断されている。乳がんは50〜55歳の年齢層の女性では第1位の死因であり、また西半球の女性の間では最も発症率が高い予防不能の悪性腫瘍である。米国では推定216万7,000人の女性が乳がんを患っている[National Cancer Institute, Surveillance Epidemiology and End Results (NCI SEER) program, Cancer Statistics Review (CSR), ww-seer.ims.nci.nih.gov/Publications/CSR1973 (1998)]。米・国立がん研究所(NCI)のある報告書は1995〜1997年のがん罹患率をもとに、米国で女性が生涯に乳がんを発症する割合を8人に1人(約12.8%)と推定している(NCI-SEER出版物SEER Cancer Statistics Review 1973-1997)。乳がんは米国では皮膚がんに次いで女性の間で発症率の高いがんである。米国では2001年に推定25万1,000の新規乳がん症例が診断される見込みである。そのうち19万2,200症例は女性の進行(浸潤)乳がん(前年比5%増)、4万6,400症例は女性の初期(非浸潤)乳がん(前年比9%増)、また約1,500症例は男性乳がんとなる見込みである(Cancer Facts & Figures 2001, American Cancer Society)。2001年には推定4万600人の乳がん死が見込まれる(内訳は女性が4万300人、男性が400人)。乳がんは女性のがん死の原因としては肺がんに次ぎ第2位である。乳がんと診断された女性の86%近くは5年後もなお生存しそうであるが、10年後にはそのうち24%が乳がんで死亡し、また20年後には半分近く(47%)が乳がんで死亡していよう。
【0003】
女性は誰でも乳がんになる危険がある。70%の乳がんは年齢以外の危険因子をもたない女性で発症する(U.S. General Accounting Office, Breast Cancer, 1971-1991: Prevention, Treatment and Research. GAO/PEMD-92-12, 1991)。家族歴と関連があるのは5〜10%の乳がんにすぎない[Henderson IC, Breast Cancer in : Murphy GP, Lawrence WL, Lenhard RE (Eds). Clinical Oncology, Atlanta, GA: American Cancer Society;1995: 198-219]。
【0004】
各乳房には15〜20の腺葉があり、各腺葉内には多数の小葉がある。小葉の末端には乳汁を産生する何十もの小さな腺房がある。これらの腺葉、小葉および腺房はみな乳管という細い管で連絡しあっている。乳管は乳輪という黒ずんだ皮膚領域の中心にある乳首につながっている。小葉と乳管の回りは脂肪がとり囲んでいる。乳房内には筋肉は存在せず、筋肉は乳房の下にあって肋骨を覆っている。各乳房には血管とリンパ管も走っている。リンパ管はリンパという無色の液体を運搬し、またリンパ節につながっている。乳房近くの腋窩(腋の下)、鎖骨上および胸郭にはリンパ節の集まりが見られる。
【0005】
乳房の腫瘍には良性と悪性がある。良性腫瘍はがん性ではないので、他の身体部位に拡大することがないし、命を脅かすものでもない。切除が可能であり、ほとんどの場合、再発しない。悪性腫瘍はがん性であり、近くの組織や臓器に浸潤し、それらを破壊する可能性がある。悪性腫瘍細胞は血流またはリンパ系に侵入し転移する可能性がある。乳がん細胞は、乳房外に転移すると、しばしば腋の下のリンパ節(腋窩リンパ節)に認められる。これらのリンパ節でがん細胞が認められときは、がんはすでに他のリンパ節または臓器たとえば骨、肝臓、肺などに拡大している可能性がある。
【0006】
主要かつ活発な研究では重点が早期発見、治療、予防に置かれてきた。前がん性およびがん性の乳管上皮細胞の有無の検査などもそうした重点の1つである。乳管上皮細胞については、たとえば細胞形態学、タンパク質マーカー、核酸マーカー、染色体異常、生化学マーカー、およびがん細胞または前がん細胞の存在を示唆するような他の特徴的な変化の有無を分析する。これは乳がんで報告されている種々の分子変異の解明につながり、現にいくつかの分子変異についてはヒト乳房臨床標本で十分に解明されてきた。分子変異の例はステロイド(エストロゲンおよびプロゲステロン)受容体の存在/不存在、HER-2発現/増殖(Mark, HF et al.「in situハイブリダイゼーションで蛍光法により検出される病期I〜IV乳がんにおけるHER-2/neu遺伝子増幅」Genet Med; 1(3):98-103, 1999)、(細胞周期のG0を除く各段階に存在し、腫瘍細胞増殖マーカーとして使用される)Ki-67、および(がん遺伝子、がん抑制遺伝子、血管新生マーカーなどを含む)予後マーカーたとえばp53、p27、カテプシンD、pS2、多剤耐性(MDR)遺伝子およびCD31などである。
【0007】
エストロゲン受容体(ER)状態は予後および治療計画に関連付けられているため、特に重要である。一般的に言えば、生検でER陽性と判明した乳がん患者は延命期待が高まるが、ER陰性患者は予後が不良であるため、外科的治療後ただちに化学療法を行うなど、より積極的な治療を受けることになる。
【0008】
本明細書中の文献の引用はそれらが関連公知技術であることを承認するものではない。文献の日付または内容に関する表明または表示はすべて出願人が入手した情報に依拠しており、文献の日付または内容の正しさを何ら承認するものではない。
【発明の開示】
【0009】
発明の要約
本発明は、乳がん標本中のエストロゲン受容体(ER)陽性または陰性細胞との相関が認められる(従って両細胞の弁別が可能である)遺伝子発現パターン(またはプロファイルまたは「特性」)の同定と使用に関する。従って、該パターンは、乳がん標本のER状態検定の補足になるかまたは既知ER状態検定の代用となる可能性がある。従って、該パターンは、診断または予後方法に、あるいは乳がん診断後の、または診断に続く外科的切除後の、治療方針決定のための臨床検査に使用することができる。
【0010】
該パターンはまた、薬剤及び治療方法を特定するための治療的努力の焦点をなす可能性のある遺伝子の同一性を提供するが、かかる努力は乳がんの重症度を緩和する、乳がんを克服する確率を高める、および/または乳がん再発または転移の確率を小さくする、薬剤および治療方法の発見を目的とする。かかる薬剤および方法は、細胞を悪性度の低い状態または患者の予後改善につながるような状態に回復させるべく、該パターンを構成する1以上の遺伝子の発現を増加または減少させるために使用することができる。該パターンはまた、乳がん治療で改変または調節されることになる細胞機構または経路ならびにかかる機構または経路の構成部分の特定にも使用されよう。
【0011】
本発明は、ER状態に関連する発現パターンを検査することにより、乳がん試料のER状態の非主観的な同定手段を提供する。従って、主観的な解釈が必要であり、ER状態および乳がんの状態と予後に関するより正確な評価がもたらされる。さらに、該発現パターンは他の手段では検査しにくい小さなリンパ節陰性腫瘍を検査する手段としても使用可能である。
【0012】
該発現パターンは、ER陽性またはER陰性の乳がんをかなり正確に弁別することができる1つまたは複数の遺伝子を含む。該遺伝子(複数)は、乳がんのER状態と相関し、その発現レベルが乳がん細胞のER状態の決定につながるものとして同定される。本発明は従って一態様では、乳がんを患うまたは乳がんが疑われる対象者の乳がんのER状態を決定する方法を提供する。そうした方法の提供は、該対象者に由来する細胞込み試料について、乳がん細胞のER状態と相関するものとして本明細書で開示する1以上の遺伝子の発現を検定することによる。
【0013】
本発明の遺伝子発現パターンは乳がん生検に由来する多数のER陽性/陰性試料における遺伝子発現の解析により同定する。ある試料の総合的な遺伝子発現パターンは多数の遺伝子に対応するmRNAの発現レベルを定量して、ER陽性またはER陰性試料との正または負の相関が認められる遺伝子を同定することによって得られる。
【0014】
ER状態との相関が大きい遺伝子のプロファイルは、乳がんを患うまたは乳がんが疑われる対象者に由来する試料を検定し該試料が所属する乳がんのER状態を同定するために使用してもよい。これは直接的なER発現検定法と組み合わせて行ってもよいし、分離して行ってもよい。そうした検定法は、判明したER状態に基づいて該対象者への治療的処置を決定するための方法の一部として用いてもよい。本発明はまた、他の情報と組み合せてER状態を判別し、もって乳がん診断治療時により詳しい情報が得られるようにするという利便性に道を開く。
【0015】
相関遺伝子はER状態を正確に同定する能力を高めるために単独で、または組み合せて、かなりの精度で使用することができる。従って、本発明は分子発現の表現型をER発現と、ひいては生理学的(細胞)状態と、相関させるための手段を提供する。この相関はまた細胞状態を分子的に診断および/または監視する方法を提供する。相関遺伝子(複数)の追加の用途は、細胞と組織の分類;診断および/または予後決定;及び治療法の決定および/または変更である。
【0016】
本発明に使用する検定法は、本明細書で開示する配列の発現レベルに関連した手段を、該検定法が該配列の発現を定量的または定性的に反映する限りで、利用してもよい。しかし、定量的検定手段を選好するのが好ましい。弁別能を付与するものは、個別遺伝子の発現を関連性ありとする同定であって、実際の発現レベルの定量に使用される検定法の種類ではない。本発明に使用する検定法は、本明細書で開示する特定個別遺伝子の同定特徴を、該検定法が該遺伝子発現を定量的または定性的に反映する限りで、利用してもよい。同定特徴の非限定的な例は、独自の核酸配列であってコード化に使用されるもの(DNA)または発現に使用されるもの(RNA)、該遺伝子、または該遺伝子によってコードされるタンパク質に対して特異的なエピトープ、または該タンパク質の活性などである。代替手段の例は、発現レベルの上昇を指示する核酸増幅の検出、および発現レベルの低下を指示する核酸の不活性化、欠失およびメチル化の検出である。言い換えると、本発明は次のものの1以上の態様を検定することにより実施することができる: 開示配列(複数)の発現を支えるDNA鋳型; 該配列(複数)を発現させるための中間体として使用されるRNA; または該配列(複数)によって発現されるタンパク質産物およびそうした産物のタンパク質分解断片。従って、本発明の実施にはそうしたDNA、RNAおよびタンパク質性分子の存在、量、安定性または分解(速度を含む)の検出が利用できる。従って、求められるのはER陽性および陰性標本を弁別するために必要な遺伝子(複数)の同一性と発現検定用の適正な細胞含有試料に尽きる。
【0017】
一態様では、本発明は不純細胞から切り離したまたは他の方法で分離または精製した単一または均質細胞集団の包括的または純包括的な遺伝子発現を解析することにより、単純な生検では不可能なような遺伝子発現パターンの同定を可能にする。多数の遺伝子の発現は、異なる患者に由来する細胞の間でも同じ患者の試料に由来する細胞の間でも変動するため、多数の個別遺伝子の発現を分析すればER陽性および陰性標本に関する最良の弁別能が得られる。
【0018】
別の態様では、ER陽性および陰性試料を弁別しうる遺伝子(複数)を使用して、未知の乳がん細胞(複数)試料のER状態を同定する。該試料は非侵襲的手段で分離するのが好ましい。該未知試料中の該遺伝子(複数)の発現を測定し、ER陽性および/または陰性試料に由来する基準遺伝子発現データ中の該遺伝子(複数)の発現と比較する。あるいは、該発現レベルを、正常または非がん性細胞中の、好ましくは同じ試料または患者に由来するそうした細胞中の、発現レベルと比較してもよい。本発明の、定量的PCRを利用する実施態様では、該発現レベルを同じ試料中の基準遺伝子の発現レベルと比較してもよいし、また発現レベル比を使用してもよい。本発明は、過小発現配列の発現レベルの過大発現配列の発現レベルに対する比を、ER陽性またはER陰性状態の指標として提供する。比を使用すれば正常または非がん性細胞との比較を少なくすることができる。
【0019】
本発明によりもたらされる1つの利点は、同定される遺伝子に、または乳がんが疑われる細胞のER状態の同定を目的としたその後の遺伝子発現解析に、影響を及ぼしかねないような不純な非乳がん細胞(浸潤リンパン球または他の免疫系細胞など)が混入しないことである。生検を利用して遺伝子発現プロファイルを生成させる場合には、そうした不純細胞が混入する。
【0020】
本発明は主にヒト乳がんとの関連で開示しているが、乳がんを発症する可能性がある任意の他動物の乳がんとの関連で実施することもできる。本発明の適用に好ましい動物は哺乳動物特に農業生産上重要な動物(非限定的な例はウシ、ヒツジ、ウマ、その他「家畜」)およびペットとして重要な動物(非限定的な例はイヌ、ネコなど)である。
【0021】
具体的実施態様の詳細な説明
本明細書で使用の用語の定義:
遺伝子発現「パターン」または「プロファイル」または「特性」は、ER陽性および陰性細胞の間の遺伝子の相対的な発現であって、ER陽性および陰性細胞の弁別能との相関を示すものをいう。
【0022】
「遺伝子」は、離散的産物をRNA、タンパク質のいずれであれコードするポリヌクレオチドである。当然、複数のポリヌクレオチドが個別産物をコードしうる場合もある。この用語は同じ産物をコードする遺伝子の対立遺伝子および多形、または染色体上の位置や有糸分裂時の組み換え能に基づく、機能的に関連した(機能の獲得、喪失、変調を含む)そのアナログを包含する。
【0023】
「配列」または「遺伝子配列」は離散的配列のヌクレオチド塩基からなる核酸分子またはポリヌクレオチドである。この用語は離散的産物をRNA、タンパク質のいずれであれコードする塩基配列(すなわちコード領域)ならびに「コード領域」に先行または後続する塩基配列を包含する。後者の非限定的な例は遺伝子の5’および3’非翻訳領域などである。当然、複数のポリヌクレオチドが個別産物をコードしうる場合もある。また当然、開示配列の対立遺伝子や多形が存在し、該開示配列、対立遺伝子または多形の発現レベルを同定するために本発明の実施に使用される場合もある。対立遺伝子または多形の同定は1つには染色体上の位置や有糸分裂時の組み換え能に基づく。
【0024】
「相関する」、「相関」またはそれと同等の用語は、1以上の遺伝子の発現と乳がん細胞および/または乳がん患者のER状態との関連をいう。遺伝子は発現レベルに上下があっても、なおER状態との、従って乳がん患者の生存率または転帰との相関を示す場合もある。本発明は、遺伝子配列の発現の増加または減少とER陽性または陰性状態との相関を提供する。この増加と減少は非正常細胞と正常細胞の発現比として容易に表示されよう。その場合、比1は差異が存在しないことを示し、比2および0.5は非正常細胞の正常細胞に対する発現がそれぞれ2倍、2分の1であることを示す。発現レベルは後述の定量法で容易に求められる。
【0025】
たとえば遺伝子発現の増加は次の比で示すことができる: 約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、約10、約15、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約150、約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、約900または約1000。比2は100%(2倍)の発現増加にあたる。遺伝子発現の減少は次の比で示すことができる: 約0.9、約0.8、約0.7、約0.6、約0.5、約0.4、約0.3、約0.2、約0.1、約0.05、約0.01、約0.005、約0.001、約0.0005、約0.0001、約0.00005、約0.00001、約0.000005または約0.000001。
【0026】
任意の表現型については、ER状態と相関関係にある高発現レベルの遺伝子配列の発現の、ER状態と相関関係にある低発現レベルの遺伝子配列の発現に対する比もまた、該表現型の指標として使用することができる。非限定的な一例として、ER陽性状態はER陽性細胞中で過剰発現する遺伝子配列の発現の増加ともER陽性細胞中で過小発現する遺伝子配列の発現の減少とも相関する可能性がある。従って、ER陽性細胞中の過小発現配列の発現レベルの過剰発現配列の発現レベルに対する比をER状態の指標として使用してもよい。ER陰性細胞中での発現に差異のある遺伝子配列を含む比を使用してもよい。
【0027】
「ポリヌクレオチド」はリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドのいずれかのヌクレオチドの、任意の長さの重合体である。この用語は分子の一次構造を指すだけであり、従って一本鎖および二本鎖のDNA、RNAを包含する。この用語はまた、非修飾体のポリヌクレオチドだけでなく、技術上周知の標識、メチル化、「キャップ」、アナログによる1以上の天然ヌクレオチドの置換およびインターヌクレオチド部修飾(非荷電結合たとえばホスホロチオエート結合やホスホロジチオエート結合など)を含む既知タイプの修飾体をも包含する。
【0028】
「増幅する」は広義で使用し、DNAまたはRNAポリメラーゼを用いて酵素的に製造することができる増幅産物の創出を意味する。本明細書で用いる「増幅」は、一般に所期配列特に試料の所期配列の複数のコピーを製造することをいう。「複数のコピー」は2以上のコピーを意味する。「コピー」は鋳型配列に対する完全な配列相同性または同一性を必ずしも意味しない。
【0029】
「対応する」は、ある核酸分子が別の核酸分子に対して相当量の配列同一性を有することを意味する。「相当量」は少なくとも95%、通常少なくとも98%、特に少なくとも99%を意味し、また配列同一性はBLASTアルゴリズムを使用してAltschul et al. (1990), J. Mol. Biol. 215:403-410に記載の要領で(公開デフォルト値すなわちw=4、t=17を使用して)求める。mRNAを増幅する方法は一般に公知であり、例として逆転写PCR(RT-PCR)法や米国特許出願第10/062,857号(2001年10月25日提出)明細書、米国仮出願第60/298,847号(2001年6月15日提出)および同第60/257,801号(2000年12月22日提出)の各明細書で開示されている方法があるが、以上の明細書はすべて参考文献として本明細書にその全体が組み込まれる。使用可能と思われるもう1つの方法は定量的PCR(Q-PCR)法である。あるいは、当該分野で公知の方法によってRNAを直接、対応するcDNAとして標識してもよい。
【0030】
「マイクロアレイ」は、ガラス、プラスチック、または合成膜などを非限定的な例とする固相担体上に、好ましくは離散的な、規定面積の領域を線状配列または2次元配列したものである。マイクロアレイ上の離散的領域の密度は、単一固相担体の表面上で検出することになる固定化ポリヌクレオチドの総数によって決まり、好ましくは少なくとも約50個/cm2、より好ましくは少なくとも約100個/cm2、さらになお好ましくは少なくとも約500個/cm2であるが、ただし約1000個/cm2以下であるのが好ましい。マイクロアレイに含まれる固定化ポリヌクレオチドの総数は約500未満、約1000未満、約1500未満、約2000未満、約2500未満または約3000未満であるのが好ましい。本明細書用いるDNAマイクロアレイは、試料に由来する増幅体またはクローン体ポリヌクレオチドとのハイブリダイズに使用される、チップまたは他表面上に配列させたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドである。マイクロアレイ上の各特定プライマー群の位置が既知であるため、試料ポリヌクレオチドの同一性はマイクロアレイ上の特定位置への結合を基に決定することができる。
【0031】
本発明は過大または過小発現する遺伝子の同定に依拠するため、本発明の一実施態様は、試料細胞のmRNAまたはその増幅体またはクローン体の、特定遺伝子配列に特有のポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションによる発現の測定を必要とする。このタイプの好ましいポリヌクレオチドは、他の遺伝子配列では見られない少なくとも約20、少なくとも約22、少なくとも約24、少なくとも約26、少なくとも約28、少なくとも約30または少なくとも約32の連続塩基対の遺伝子配列を含む。前文中の用語「約」は記載値からの1の増減をいう。さらになお好ましいのは、他の遺伝子配列では見られない少なくとも約50、少なくとも約100、少なくとも約150、少なくとも約200、少なくとも約250、少なくとも約300、少なくとも約350または少なくとも約400の連続塩基対の遺伝子配列を含むポリヌクレオチドである。前文中の用語「約」は記載数値からの10%の増減をいう。そうしたポリヌクレオチドはまた、本明細書で開示する遺伝子の配列またはその特有部分とハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド・プローブともいう。好ましくは、該配列は遺伝子によってコードされるmRNAの配列、そうしたmRNAに対応するcDNAの配列、および/またはそうした配列の増幅体の配列である。本発明の好ましい実施態様では、該ポリヌクレオチド・プローブはアレイ上、他デバイス上、または該プローブを局在させるスポット内に固定化される。
【0032】
本発明の別の実施態様では、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)やその変法、特に限定されないがたとえば定量PCR法(Q-PCR法)、逆転写PCR法(RT-PCR法)およびリアルタイムPCR法(標本中の各配列に対応するmRNAコピーの初期量を測定する手段としてのそれを含む)、随意にリアルタイムRT-PCR法またはリアルタイムQ-PCR法などの方法によって開示配列の全部または一部を増幅し検出する。そうした方法では、開示配列に対して部分的に相補的である1つまたは2つのプライマーを、核酸合成の増幅に使用することになろう。新規合成核酸は随意に標識し、直接、または本発明のポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを介して検出されるようにする。新規合成核酸は、本発明のポリヌクレオチド(を含む配列)と、ハイブリダイゼーションを可能にするような条件下で、接触させることができる。発現した核酸の発現を検出する方法としては他に、RNAseプロテクション法(液相ハイブリダイゼーションなど)や細胞のin situハイブリダイゼーションがある。
【0033】
あるいは、また別の実施態様では、遺伝子の発現を対象細胞試料中の発現タンパク質の解析によって測定してもよい。その解析には該細胞試料中のまたは対象者の体液中の個別遺伝子産物(タンパク質)またはそのタンパク質分解断片の1以上のエピトープに対して特異的である1以上の抗体を使用する。細胞試料は、細胞表面マーカーに対する標識抗体の使用とそれに続く蛍光活性化細胞選別法(FACS)などにより対象者の血液から濃縮した乳がん上皮細胞試料でもよい。そうした抗体は標識して、遺伝子産物への結合後の検出が容易に行えるようにするのが好ましい。本発明の実施への使用に好適である検出方法の非限定的な例は、細胞を含む試料または組織に関する免疫組織化学法、細胞を含む組織または血液試料の抗体サンドイッチ法を含む酵素関連免疫吸着検定法(ELISA法)、質量分析、および免疫PCR法などである。
【0034】
用語「標識」は、標識分子の存在を示す検出可能シグナルを生み出しうる組成物をいう。好適な標識の例は、放射性同位体、ヌクレオチド発色団、酵素、基質、蛍光分子、化学発光部分、磁性粒子、生物発光部分などである。従って、標識は、顕微鏡的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的な手段によって検出しうる任意の組成物である。
【0035】
「担体」はビーズ、粒子、ディップスティック、繊維、フィルター、薄膜などのような通常の担体、およびスライドガラスなどのようなシランまたはシリケート担体をいう。
【0036】
本明細書用いる「乳房組織試料」または「乳房細胞試料」は、乳がんを患っているまたは発症する危険があると疑われる個体から分離した乳房組織または体液の試料をいう。そうした試料は(培養細胞と対比される)一次分離物であり、その回収には任意の非侵襲的手段たとえば乳管洗浄法、細針吸引法、針生検、米国特許第6,328,709号明細書で開示されている装置と方法、または他の任意好適な公知手段を用いてよい。あるいは、外科生検などの侵襲的方法で「試料」を回収してもよい。本発明の標本はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本でもよい。
【0037】
「発現」および「遺伝子発現」は核酸素材の転写および/または翻訳を包含する。
【0038】
本明細書で用いる「含む」とその同族語は包含的な意味で使用しており、「包含する」やその同族語と同等の意味をもつ。
【0039】
ある事象たとえばハイブリダイゼーション、鎖延長などが生起することを「可能にする」条件またはある事象の生起に「好適な」条件とは、そうした事象の生起を妨げないような条件である。従って、これらの条件は該事象を許容し、増進し、促進し、および/または導く。技術上周知であり本明細書で開示してもいるそうした条件は、たとえばヌクレオチド配列の性質、温度、および緩衝条件などに依存する。これらの条件はまた、所期事象の種類たとえばハイブリダイゼーション、切断、鎖延長または転写に依存する。
【0040】
本明細書用いる配列「変異」は、本明細書で開示する対象遺伝子の配列を基準配列と比較した任意の変異をいう。配列変異の例は置換、欠失または挿入などの機構による配列中の単一ヌクレオチドの変化または複数のヌクレオチドの変化などである。一塩基多型(SNP)もまた本明細書でいう配列変異である。本発明は相対的な遺伝子発現レベルに依拠するため、本発明の実施に際しては本明細書で開示する遺伝子の非コード領域の変異を検定してもよい。
【0041】
「検出」は、遺伝子発現およびその変化の直接および間接検出を含む任意の検出手段を包含する。たとえば「検出可能な程度に、より少ない」産物の観測は直接、間接いずれでもよいし、またこの用語は何らかの減少を(検出可能シグナルの不存在を含めて)示す。同様にして、「検出可能な程度に、より多い」産物は直接、間接いずれで観測されるにせよ、何らかの増加を示す。
【0042】
開示配列の発現の増加および減少は、正常細胞中の発現に対する増減率または倍数変化を基に次のように定義される。増加は、正常細胞中の発現レベルに対する10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180または200%の増加でもよい。あるいは倍数変化は、正常細胞中の発現レベルの1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5または10倍でもよい。減少は、正常細胞中の発現レベルに対する10、20、30、40、50、55、60、65、70、75、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、99または100%の減少でもよい。
【0043】
本明細書で使用する諸々の専門および学術用語の意味は、特に断らない限り、当業者が一般に理解している意味と同じである。
【0044】
具体的実施態様
本発明は、ER陽性または陰性である乳がん細胞を、好ましくはERα陽性または陰性である乳がん細胞を、弁別するような遺伝子発現パターン(またはプロファイルまたは「特性」)の同定と使用に関する。総合的な遺伝子発現パターンは人により、がんにより、またがん細胞により異なるため、ER陽性および陰性細胞中で発現または過小発現する遺伝子の間の相関はER状態の同定を可能にする。ER状態は乳がん患者の治療処置の決定因子として使用されてきた。たとえばER陽性状態はタモキシフェンや他の選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERMs)による治療への感受性の指標として使用されてきた。
【0045】
本発明は、本明細書で開示する遺伝子の任意の部分集合を使用して実施してもよい。以下の実施例で開示するように、乳がん生検細胞中の遺伝子の発現を使用して、ER陽性および陰性の乳がん細胞を弁別することができる何千もの遺伝子を同定した。この同定には、例えば100〜1000細胞のレーザー・キャプチャー・マイクロダイセクション(LCM)などのマイクロダイセクション法によって随意に分離される種々の均質乳がん細胞集団を使用する。
【0046】
ER陽性および陰性細胞に発現差ありと同定された遺伝子は、t検定などのような標準統計解析法で解析して、発現差の有意性に値を割り当てる。その有意性が特定の閾値を超える遺伝子は、ER状態を基にして乳がんを区別するためのパターンに含める。
【0047】
乳がん細胞中の他遺伝子の発現は、乳がんにおけるER状態に関する情報を提供し、もってER状態の弁別に資することが相対的に不可能であろう。
【0048】
本発明の実施に際して遺伝子の発現レベル(の上昇または低下)を測定するには、当該分野で周知の任意の方法を使用してよい。本発明の好ましい一実施態様では、同定され本明細書で開示される遺伝子にハイブリダイズするRNAの検出に基づく発現を使用する。これは当該分野で周知又は等価と認められるRNA検出法、もしくは増幅+検出法、例えば特に限定されないが逆転写PCR法、米国特許出願第10/062,857号(2001年10月25日提出)明細書、米国仮出願第60/298,847号(2001年6月15日提出)および第60/257,801号(2000年12月22日提出)の各明細書で開示されている方法、およびRNA安定化または不安定化配列の存在または不存在の検出方法などによって行うのが容易である。
【0049】
あるいは、DNA状態の検出に基づく発現を用いてもよい。ER状態と相関して発現が減少した遺伝子については、同定される遺伝子のDNAのメチル化または欠失を検出してもよい。これは定量PCR法(Q-PCR法)を非限定的に含む当該分野で周知のPCR系の方法によって行うのが容易である。逆にER状態と相関して発現が増加した遺伝子については、同定される遺伝子のDNAの増幅を検出してもよい。これは当該分野で周知のPCR系の方法、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法および化学発色ハイブリダイゼーション(CISH)法によって行うのが容易である。
【0050】
タンパク質レベルまたは活性の存在、上昇または低下の検出に基づく発現を使用してもよい。検出には当該分野で周知の、かつ該タンパク質の検出に好適と認められている任意の免疫組織化学(IHC)的な方法、血液ベースの方法(特に分泌タンパク質の場合)、(該タンパク質に対する自己抗体を含む)抗体ベースの方法、(がんからの)剥落細胞ベースの方法、質量分析ベースの方法、および(標識リガンドの使用を含む)画像ベースの方法を使用してもよい。抗体ベースと画像ベースの方法は、がん細胞の由来が不明の場合に、(乳管洗浄や細針吸引などのような)非侵襲的方法で得られた細胞の使用によりがんと診断された後のがんの定位にも有効である。標識抗体またはリガンドは患者体内のがん腫(複数)の定位に使用してもよい。
【0051】
発現の定量に核酸系の検定法を使用する好ましい実施態様では、本明細書で開示する1以上の遺伝子配列の、例えばアレイとしての固相基板を含む固相担体への固定化もしくはビーズへの固定化、または当該分野で周知のビーズベース技術を使用する。あるいは、当該分野で周知の溶液ベースの検査法を使用してもよい。固定化遺伝子(複数)は、該遺伝子(複数)に対応するDNAまたはRNAとハイブリダイズしうるような、該遺伝子(複数)に固有の(または他の形で特有の)ポリヌクレオチドの形をとってもよい。これらのポリヌクレオチドは、該遺伝子(複数)の完全長配列でもよいし、また(該配列の5’または3’末端からの削除による完全長配列より1ヌクレオチド短い技術上周知の配列を上限とする)短い部分配列であって、該遺伝子(複数)に対応するDNAまたはRNAとのハイブリダイゼーションに影響が及ばないように(ミスマッチまたは非相補塩基対の挿入などによる)切断を最適に最小化した部分配列でもよい。好ましくは、使用するポリヌクレオチドは、3’末端に由来し、長さはたとえば遺伝子または発現配列のポリアデニル化シグナルまたはポリアデニル化部位から約350、約300、約250、約200、約150、約100または約50ヌクレオチドである。開示遺伝子に対する変異を含むポリヌクレオチドもまた、該変異の存在が検出可能なシグナルを生成させるハイブリダイゼーションをなお可能にする限りで、使用してよい。
【0052】
あるいは、遺伝子の3’末端に由来するそうした配列の定量PCR法(Q-PCR法)などの方法による増幅を使用して該配列の発現レベルを定量してもよい。そうした方法によって出したCt値を使用して、本明細書に開示するような発現レベル比を出してもよい。
【0053】
固定化遺伝子は試料乳がん細胞(複数)から調製した核酸試料の状態の判定に使用し、以って該細胞のER状態を同定してもよいし、あるいは該細胞(複数)にすでに割り当てられている状態を再確認してもよい。本発明を限定することなく、そうした細胞は乳がんが疑われている患者または乳がん発症の危険がある患者に由来してもよい。固定化ポリヌクレオチド(複数)に求められるのは、標本由来の対応する核酸分子と、随意にストリンジェントな条件下で、特異的にハイブリダイズするに足ることだけである。単一の相関遺伝子配列だけでもER状態を十分な精度で区別しうるが、本明細書で開示する遺伝子を2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上または11以上を組み合せて使用して、方法の精度を高めるようにしてもよい。本発明は特に、本明細書の図表中で開示する遺伝子のうち2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上または11以上の選択による、乳がん試料がER陽性、陰性のいずれであるかを同定するための部分集合としての使用を考慮する。
【0054】
もちろん後掲の表1または表2に記載の遺伝子のうち15以上、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、100以上、150以上、200以上、250以上、300以上、350以上、400以上、450以上、500以上、600以上、700以上、800以上、900以上、1000以上また全部を使用してもよい。さらにER陽性およびER陰性を同定する遺伝子を一緒に使用して、試験試料のER陽性またはER陰性としての鑑別同定を可能にするようにしてもよい。
【0055】
1つまたは少数の遺伝子だけを解析する実施態様では、好適なプライマーの使用により試料乳がん細胞に由来する核酸を選択的に増幅して、解析対象の遺伝子だけが増幅されることにより、乳房細胞中で発現する他遺伝子からの不純化バックグラウンドシグナルが少なくなるようにしてもよい。あるいは、また多数の遺伝子を解析するような場合またはごく少数の(または1つの)細胞を使用する場合には、標本に由来する核酸を広範囲に増幅してから固定化ポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションさせてもよい。もちろん当該分野で周知の方法により、RNAまたはそれに対応するcDNAを増幅せずに直接標識し使用してもよい。
【0056】
本発明は、本明細書で開示する遺伝子配列内に存在する固有配列を使用して実施するのが好ましい。開示遺伝子配列の固有性は、各遺伝子に特有の、他遺伝子にはない、配列の一部分または全体をいう。そうした固有配列には、遺伝子の3’非翻訳部分に見られる配列も含まれる。本発明の実施にとって好ましい固有配列は、各遺伝子の共通配列に寄与し、結果的に該固有配列がいくつかの個体に存在する多型に対して特異的であるよりは、多様な個体における発現の検出に役立つようになる配列である。あるいは個体または小集団に固有の配列を使用してもよい。好ましい固有配列は本明細書で開示するような本発明のポリヌクレオチドの長さであるのが好ましい。
【0057】
本発明の特に好ましい実施態様では、開示遺伝子配列の3’非翻訳および/または非コード領域に存在する配列をもつポリヌクレオチドを使用して乳房細胞中の発現レベルを検出する。そうしたポリヌクレオチドは随意に、開示配列のコード領域の3’部分に見られる配列を含んでもよい。コード領域と3’非コード領域に由来する配列の組み合わせを含むポリヌクレオチドは、異種配列を介在させない連続配列(複数)であるのが好ましい。
【0058】
あるいは、本発明の実施には、乳房細胞中の遺伝子配列の5’非翻訳および/または非コード領域に存在する配列をもつポリヌクレオチドを使用してその発現レベルを検出するようにしてもよい。そうしたポリヌクレオチドは随意にコード領域の5’部分に見られる配列を含んでもよい。コード領域と5’非コード領域に由来する配列の組み合わせを含むポリヌクレオチドは、異種配列を介在させない連続配列であるのが好ましい。本発明はまた、開示配列のコード領域に存在する配列を用いて実施してもよい。
【0059】
好ましいポリヌクレオチドは3’または5’非翻訳および/または非コード領域に由来する配列を含むが、該配列は少なくとも約16個、少なくとも約18個、少なくとも約20個、少なくとも約22個、少なくとも約24個、少なくとも約26個、少なくとも約28個、少なくとも約30個、少なくとも約32個、少なくとも約34個、少なくとも約36個、少なくとも約38個、少なくとも約40個、少なくとも約42個、少なくとも約44個または少なくとも約46個の連続ヌクレオチドからなる。前文中の用語「約」は記載値からの1の増減をいう。さらになお好ましいのは、少なくともまたは約50個、少なくともまたは約100個、少なくともまたは約150個、少なくともまたは約200個、少なくともまたは約250個、少なくともまたは約300個、少なくともまたは約350個または少なくともまたは約400個の連続ヌクレオチドからなる配列を含むポリヌクレオチドである。前文中の用語「約」は記載値からの10%の増減をいう。
【0060】
本発明のポリヌクレオチドに見られような前記コード領域の3’または5’末端に由来する配列は、コード領域の長さによって必然的に限定される場合を除いて、前記のように同じ長さである。あるコード領域の3’末端は、該コード領域の3’側半分までの配列を含んでもよい。逆に言えば、あるコード領域の5’末端は該コード領域の5’側半分までの配列を含んでもよい。もちろん前記配列を、またはその一部分を含むコード領域およびポリヌクレオチドを、丸ごと使用してもよい。
【0061】
3’非翻訳および/または非コード領域に由来する配列とコード領域の関連3’末端とを組み合わせたポリヌクレオチドは、少なくともまたは約100個、少なくともまたは約150個、少なくともまたは約200個、少なくともまたは約250個、少なくともまたは約300個、少なくともまたは約350個または少なくともまたは約400個の連続ヌクレオチドであるのが好ましい。好ましくは、使用ポリヌクレオチドは遺伝子の3’末端に由来し、たとえば遺伝子または発現配列のポリアデニル化シグナルまたはポリアデニル化部位から約350、約300、約250、約200、約150、約100または約50ヌクレオチド以内などである。開示配列に対する変異を含むポリヌクレオチドもまた、該変異の存在が検出可能なシグナルを生成させるハイブリダイゼーションをなお可能にする限りで、使用してもよい。
【0062】
本発明の別の実施態様では、開示配列の5’および/または3’末端に由来するヌクレオチドの欠失を含むポリヌクレオチドを使用してもよい。欠失は好ましくは5’および/または3’末端に由来する1〜5、5〜10、10〜15、15〜20、20〜25、25〜30、30〜35、35〜40、40〜45、45〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜100、100〜125、125〜150、150〜175または175〜200ヌクレオチドの欠失であるが、欠失の範囲は開示配列の長さや発現レベルの検出にポリヌクレオチドを使えるようにするという課題によって必然的に限定されよう。
【0063】
開示配列の3’末端に由来する本発明の他ポリヌクレオチドの例は定量PCR用のプライマーおよび随意プローブのポリヌクレオチドなどである。好ましくは、該プライマーおよびプローブは遺伝子または発現配列のポリアデニル化シグナルまたはポリアデニル化部位から約350、約300、約250、約200、約150、約100または約50ヌクレオチド未満の領域を増幅するものである。
【0064】
本発明のさらに別の実施態様では、開示配列の3’末端を含む部分を含むポリヌクレオチドを使用してもよい。そうしたポリヌクレオチドは開示配列の3’末端に由来する少なくともまたは約50個、少なくともまたは約100個、少なくともまたは約150個、少なくともまたは約200個、少なくともまたは約250個、少なくともまたは約300個、少なくともまたは約350個または少なくとも約400個の連続ヌクレオチドを含むであろう。
【0065】
前記の検定の実施態様は多種多様な形で、患者由来の乳がん細胞におけるER状態の同定または検出に使用してよい。多くの場合、これは一次検診としてのマンモグラフィーまたは健康診断をすでに受けている患者に関する二次検診に当たる。一次の結果が陽性ならば、その後の針生検、乳管洗浄、細針吸入または他の類似の方法によって前記の検査実施態様に使用する試料を確保する。本発明は、乳房細胞試料の調製を目的とした非侵襲的プロトコールたとえば乳管洗浄または細針吸入と組み合せると特に有用である。
【0066】
本発明は、ER陽性および陰性乳がん細胞を弁別(または線引き)するための客観的な判定基準を、離散的な遺伝子集合の遺伝子発現プロファイルという形で提供する。
【0067】
本発明の一実施態様では、乳がん細胞試料の分離および解析を次の要領で行う:
(1) 乳管洗浄等の非侵襲的方法により患者から試料を採取する。
(2) 試料を調製し、顕微鏡スライド上にコートする。留意すべきは、乳管洗浄の結果として前述の要領による細胞診の対象となる細胞群が得られることである。
(3) 病理検査または画像解析ソフトウェアで当該試料をスキャンし、非正常および/または異型細胞の存在を調べる。
(4) 非正常および/または異型細胞が観測されたら、それらの細胞を(たとえばLCMなどのようなマイクロダイセクションにより)回収する。
(5) 当該回収細胞からRNAを抽出する。
(6) RNAを精製、増幅および標識する。
(7) ER状態の弁別との相関が本明細書で確認される遺伝子のポリヌクレオチドを含むマイクロアレイと標識核酸をハイブリダイゼーション条件下に接触させてハイブリダイゼーションを起こさせ、次いでプロセッシングとスキャニングにより、細胞中の該遺伝子の発現レベルを弁別する各スポットの(細胞中の一般遺伝子発現に対応する対照に対する相対的な)強度パターンを獲得する。
(8) 該強度パターンをER陽性および陰性乳がん細胞の既知試料中の(同じ対照に対する相対的な)遺伝子発現パターンとの比較によって解析する。
【0068】
前記方法の具体的な実施例では一次検査の後に入管洗浄を行い、観測し、非正常および/または異型細胞を回収して解析に回す。既知パターンとの比較たとえば開示の遺伝子およびパターンに基づくモデルによって可能となるような比較により、細胞をER陽性または陰性として同定する。
【0069】
あるいは、試料は非正常および/または異型細胞だけでなく正常細胞についても回収を可能にしてもよい。これら2試料の各々に対応する遺伝子発現パターンを互いに比較するだけでなく、基準データセットに基づくモデルと正常、モデルと個別異常の各比較も行う。このアプローチは非正常および/または異型細胞だけを解析するアプローチよりも著しく有力である可能性がある。試料由来の非正常および/または異型細胞の状態を決定するために、正常細胞や正常細胞と非正常および/または異型細胞との差異に由来する情報を著しく多く利用するからである。
【0070】
本発明を使用すれば、熟練した医師は、以前ならば固形組織生検による診断を受けていたであろう患者について、非侵襲的標本に基づき治療計画を処方することができる。
【0071】
これは、触診可能な病変の検出後に乳房細胞の細針吸引または針生検が続くような場合にも当てはまる。細胞はプレーティング後に病理学者または自動画像システムによる精査を受け、前述のようにして解析用の細胞が選別される。
【0072】
ただし、本発明は固形組織生検と併用してもよい。たとえば固形組織を回収し、視覚化用に調製し、続いて本明細書で開示する1以上の遺伝子の発現の判別により乳がんにおけるER状態を決定するようにしてもよい。好ましい一手段は、ポリヌクレオチドまたはタンパク質とのin situハイブリダイゼーションの使用による該遺伝子の発現を検定するためのプローブの同定である。
【0073】
代替方法として、固形組織生検によって分子を抽出し、続いて1以上の遺伝子の発現を解析してもよい。この方法によれば、非正常および/または異型と疑われる細胞だけの視覚化と回収を不要にすることができる。もちろんこの方法は、非正常および/または異型と疑われる細胞だけを回収して、解析用分子の抽出に使用するように変更してもよい。その場合には、視覚化と選別は遺伝子発現解析の前提条件となろう。
【0074】
前記の方法のさらなる変更態様では、正常細胞と非正常および/または異型と疑われる細胞の両方を回収し、使用して、遺伝子発現解析のための分子を抽出する。その方法、利点および結果は、非侵襲的な標本採取法を使用する限り、前述のとおりである。
【0075】
本明細書で同定される遺伝子は、試料中の同定遺伝子の発現に基づいて、未知の乳腺細胞試料の乳がんER状態を予測することができるモデルを作製するために使用することができる。
【0076】
試料に由来する遺伝子の発現の検出は、本明細書で開示する遺伝子の発現について遺伝子発現とER陽性または陰性状態との相関を検定しうる単一マイクロアレイを使用して行ってもよい。
【0077】
本発明の他の使用例は、乳がん細胞試料のER陽性または陰性状態を同定し、さらなる研究調査に役立てるようにすることである。これは、遺伝子または分子レベルの客観的な基準に基づくER陽性または陰性状態の同定を必要とするような数多くの場面で特に有利である。
【0078】
本発明の方法に使用する材料は、周知の方法で生み出されるキットの作製に適するのが理想である。本発明は従って、開示遺伝子の発現を検出して乳がん細胞のER状態を同定するための試薬を含むキットを提供する。そうしたキットは随意に、該試薬に識別のための説明または表示、あるいは本発明の方法への使用に関する説明を添えて含む。そうしたキットは、該方法に使用する種々の試薬のうち各々1以上の(通常は濃縮)試薬を入れた容器を、たとえば既製マイクロアレイ、緩衝液、好適なヌクレオチド三リン酸(たとえばdATP、dCTP、dGTPおよびdTTP; またはrATP、rCTP、rGTPおよびrUTP)、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、および本発明の1以上のプライマー複合体(たとえば好適な長さのポリ(T)またはランダムプライマーを、RNAポリメラーゼに対して反応性のプロモーターに結合したもの)と共に含む。説明書一式も含めるのが普通であろう。
【0079】
本発明によって提供される方法は全自動化または半自動化してもよい。本発明の諸々の態様はまた、本質的に開示遺伝子の部分集合からなり、ER状態の同定に無関係の素材は除外されるようにして実施してもよい。
【0080】
本発明はまた、1以上の開示遺伝子の遺伝子産物の、該遺伝子産物の発現または活性を増加または減少させるような医薬品の同定への使用を可能にする。そうした医薬品を同定する方法は好ましくは、遺伝子産物の発現または活性を、ER陽性または陰性細胞で見られるレベルとは対照的な、より正常なレベルへと復帰させるような医薬品の同定に使用する。ER陰性状態の患者の予後不良を考えると最も好ましいのはER陰性細胞の常態への復帰である。
【0081】
そうした方法は、ER陽性または陰性細胞中で過剰発現する遺伝子によってコードされる遺伝子産物の発現または活性を減少させる医薬品の同定に使用してもよい。あるいは、そうした方法は、ER陽性または陰性細胞中で過小発現する遺伝子によってコードされる遺伝子産物の発現または活性を増加させる医薬品の同定に使用してもよい。
【0082】
後記の表は本発明の遺伝子を示す。たとえば表1および表3はESR1(エストロゲン受容体アルファー)遺伝子を含む。本発明の文脈で使用する「クローンID」は各遺伝子のIMAGEコンソーシアムのクローンID番号をいい、それらの配列は参考文献としてその全体が本明細書に組み込まれる。というのは、そうした配列情報は、同コンソーシアム(image.llnl.gov)から本願提出日に閲覧した状態のまま入手できるからである。本発明および本明細書に収めた表との関連で使用する「遺伝子ID」は、各遺伝子の配列のGenBankアクセッション番号をいい、それらの配列は参考文献としてその全体が本明細書に組み込まれる。というのは、そうした配列情報はGenBankから本願提出日に閲覧した状態のまま入手できるからである。
【0083】
P値は後記の実施例で開示する要領で割り当てられた値をいう。「xx」を2桁の数とする「E-xx」という表示はべき指数の値の代替表記であり、従って「E-xx」は10-xxである。たとえば「E-xx」の左側の数字と組み合せると、表示される値は左側の数字×10-xxとなる。染色体上の位置は遺伝子の帰属先とされているヒト染色体上の遺伝子座をいう。遺伝子名は遺伝子がコード/発現するものの簡単な名前である。
【0084】
表5は本明細書で開示する例示的な配列に関する、対応GenBankアクセッション番号、クローンID番号、Unigene(クラスター)ID番号の非限定例である。従って、本発明の配列はこれらの名前のいずれで識別してもよい。本明細書で開示する配列に関する他の対応番号(GenBankアクセッション番号、クローンID番号および/またはUnigene(クラスター)ID番号)の識別は、公開情報源を使用して簡単に、過度の実験に俟つことなく、行うことができる。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
【表5】

【0090】
【表6】

【0091】
【表7】

【0092】
【表8】

【0093】
【表9】

【0094】
【表10】

【0095】
【表11】

【0096】
【表12】

【0097】
【表13】

【0098】
【表14】

【0099】
【表15】

【0100】
【表16】

【0101】
【表17】

【0102】
【表18】

【0103】
【表19】

【0104】
【表20】

【0105】
【表21】

【0106】
【表22】

【0107】
【表23】

【0108】
【表24】

【0109】
【表25】

【0110】
【表26】

【0111】
【表27】

【0112】
【表28】

【0113】
【表29】

【0114】
【表30】

【0115】
【表31】

【0116】
【表32】

【0117】
【表33】

【0118】
【表34】

【0119】
【表35】

【0120】
【表36】

【0121】
【表37】

【0122】
【表38】

【0123】
【表39】

【0124】
【表40】

【0125】
【表41】

【0126】
【表42】

【0127】
【表43】

【0128】
【表44】

【0129】
【表45】

【0130】
【表46】

【0131】
【表47】

【0132】
【表48】

【0133】
【表49】

【0134】
【表50】

【0135】
【表51】

【0136】
【表52】

【0137】
【表53】

【0138】
【表54】

【0139】
【表55】

【0140】
【表56】

【0141】
【表57】

【0142】
【表58】

【0143】
【表59】

【0144】
【表60】

【0145】
【表61】

【0146】
【表62】

【0147】
【表63】

【0148】
【表64】

【0149】
【表65】

【0150】
【表66】

【0151】
【表67】

【0152】
【表68】

【0153】
【表69】

【0154】
【表70】

【0155】
【表71】

【0156】
【表72】

【0157】
【表73】

【0158】
【表74】

【0159】
【表75】

【0160】
【表76】

【0161】
【表77】

【0162】
【表78】

【0163】
【表79】

【0164】
【表80】

【0165】
【表81】

【0166】
【表82】

【0167】
【表83】

【0168】
【表84】

【0169】
【表85】

【0170】
【表86】

【0171】
【表87】

【0172】
【表88】

【0173】
【表89】

【0174】
【表90】

【0175】
【表91】

【0176】
【表92】

【0177】
【表93】

【0178】
【表94】

【0179】
【表95】

【0180】
【表96】

【0181】
【表97】

【0182】
【表98】

【0183】
【表99】

【0184】
【表100】

【0185】
【表101】

【0186】
【表102】

【0187】
【表103】

【0188】
【表104】

【0189】
【表105】

【0190】
【表106】

【0191】
【表107】

【0192】
【表108】

【0193】
【表109】

【0194】
【表110】

【0195】
【表111】

【0196】
【表112】

【0197】
【表113】

【0198】
【表114】

【0199】
【表115】

【0200】
【表116】

【0201】
【表117】

【0202】
【表118】

【0203】
【表119】

【0204】
【表120】

【0205】
【表121】

【0206】
【表122】

【0207】
【表123】

【0208】
【表124】

【0209】
【表125】

【0210】
【表126】

【0211】
【表127】

【0212】
【表128】

【0213】
【表129】

【0214】
【表130】

【0215】
【表131】

【0216】
【表132】

【0217】
【表133】

【0218】
【表134】

【0219】
【表135】

【0220】
【表136】

【0221】
【表137】

【0222】
【表138】

【0223】
【表139】

【0224】
【表140】

【0225】
【表141】

【0226】
【表142】

【0227】
【表143】

【0228】
【表144】

【0229】
【表145】

【0230】
【表146】

【0231】
【表147】

【0232】
【表148】

【0233】
【表149】

【0234】
【表150】

【0235】
【表151】

【0236】
【表152】

【0237】
【表153】

【0238】
【表154】

【0239】
【表155】

【0240】
【表156】

【0241】
【表157】

【0242】
【表158】

【0243】
【表159】

【0244】
【表160】

【0245】
【表161】

【0246】
【表162】

【0247】
【表163】

【0248】
【表164】

【0249】
【表165】

【0250】
【表166】

【0251】
【表167】

【0252】
【表168】

【0253】
【表169】

【0254】
【表170】

【0255】
【表171】

【0256】
【表172】

【0257】
【表173】

【0258】
【表174】

【0259】
【表175】

【0260】
【表176】

【0261】
【表177】

【0262】
【表178】

【0263】
【表179】

【0264】
【表180】

【0265】
【表181】

【0266】
【表182】

【0267】
【表183】

【0268】
【表184】

【0269】
【表185】

【0270】
【表186】

【0271】
【表187】

【0272】
【表188】

【0273】
【表189】

【0274】
【表190】

【0275】
【表191】

【0276】
【表192】

【0277】
【表193】

【0278】
【表194】

【0279】
【表195】

【0280】
【表196】

【0281】
以上、本発明を一通り説明したが、その理解は以下の実施例を参照することによりさらに深まろう。ただし、以下の実施例はあくまでも説明が目的であって、特に断らない限り、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0282】
実施例I: 臨床標本の収集と臨床病理学的パラメーター
86人の患者について発現プロファイルを解析し、うち57人について臨床経過を、特に全生存期間を、追跡した。次の表3は患者86人全員についてのバイオマーカー状態のまとめである。
【0283】
【表197】

【0284】
エストロゲン受容体(ER)状態プロファイルは次のステップを介して得た。
(i) 患者生検集合を、各患者のER状態(ER陽性とER陰性)に関する予備知見に基づき2群に分けた;
(ii) 各遺伝子について標準t検定を行い、ER-/+に発現差のある遺伝子を同定した;
(iii) Benjamini-Hochberg誤発見率補正法でP値を修正し、p<0.05である全遺伝子を包摂するようにした。
【0285】
この実施例を患者86人の階層的クラスター形成に用いた。ER弁別特性に対応する遺伝子の数は合計3105であった。結果は表1および2に示すとおりである。
【0286】
実施例II:
ER+/-状態との相関を示す遺伝子を同定するために、実施例Iと同様の方法で、247人の患者に由来する凍結乳がん試料の発現プロファイリングを行った。この解析によりER+/-状態との相関を示す2608遺伝子が同定された。その結果は表3および4に示すとおりである。
【0287】
本明細書で引用した諸々の文献は特許および特許出願の明細書、それに出版物を含めて、個別、一括の区別なく、参照をもってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0288】
本発明の説明は以上をもって尽きるが、本発明が広範囲の同等パラメーター、濃度および条件の下で、本発明の意図と範囲から逸脱することなく、また過度な実験に俟つことなく、実施しうることは言うまでもない。
【0289】
本発明はその具体的な実施態様との関連で説明したが、実施態様の変更は当然可能である。本願は、一般に本発明の原理に従う限り周知または慣用の範囲内での開示からの逸脱を含めて、本発明の変更、使用または改変をカバーするものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表1、2、3または4に掲げるうちの1以上の遺伝子の核酸分子にハイブリダイズすることができかつ該遺伝子のポリアデニル化部位から350ヌクレオチドの範囲内の配列を含むポリヌクレオチドプローブを含むアレイであって、該プローブは乳がんを患うまたは乳がんが疑われる対象者の細胞に由来する核酸にハイブリダイズする、前記アレイ。
【請求項2】
表1、2、3または4の11以上の遺伝子を含む、請求項1に記載のアレイ。
【請求項3】
表1、2、3または4のすべての遺伝子を含む、請求項2に記載のアレイ。
【請求項4】
前記細胞が乳がんを患うヒト対象者またはその種の対象者に由来する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアレイ。
【請求項5】
1以上の乳がん細胞に由来する前記核酸をmRNA増幅法で製造する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアレイ。
【請求項6】
1以上の乳がん細胞に由来する前記核酸がcDNAである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアレイ。
【請求項7】
前記細胞が対象者に由来する組織切片中に存在するかまたは該切片からマイクロダイセクションされる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアレイ。
【請求項8】
表1または3の1以上の遺伝子および/または表2または4の1以上の遺伝子の発現について試料を検定するステップを含む、対象者に由来する試料中の乳がん細胞のER状態を判定する方法。
【請求項9】
前記検定が、前記試料から場合により標識されたRNAを製造するステップ、及び場合により該RNAを場合により標識されたcDNAに変換するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記RNAを標識せず定量的PCR法に使用する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記検定がアレイを使用するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記試料が、乳管洗浄、細針吸引またはFFPEによる乳腺組織試料である、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記試料をマイクロダイセクションして、乳がん細胞であるかまたは乳がん細胞であることが疑われる1以上の細胞を分離する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ER状態の指標としての表1または3の遺伝子の発現の表2または4の遺伝子の発現に対する比を決定するステップをさらに含む、請求項8〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
乳がん患者の乳がん細胞について表1、2、3および/または4に掲げるうちの1以上の遺伝子の発現を検定した後に該患者をER陽性またはER陰性として識別するステップ、および
かかるER状態の細胞をもつ患者に好適な処置法を選定するステップ
を含む、該患者の治療的処置法を決定する方法。
【請求項16】
前記検定が、前記標本から場合により標識されたRNAを製造するステップ及び場合により該RNAを場合により標識されたcDNAに変換するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記RNAを標識せず定量的PCR法に使用する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記検定がアレイを使用するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記試料が、乳管洗浄、細針吸引またはFFPEによる乳腺組織試料である、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記試料をマイクロダイセクションして、乳がん細胞であるかまたは乳がん細胞であることが疑われる1以上の細胞を分離する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記検定が、ER状態の指標としての表1または3の遺伝子の発現の表2または4の遺伝子の発現に対する比を決定するステップを含む、請求項15〜20のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2006−519620(P2006−519620A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509162(P2006−509162)
【出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/006736
【国際公開番号】WO2004/079014
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(505333366)アークチュラス バイオサイエンス,インコーポレイティド (6)
【Fターム(参考)】