説明

乳化剤形の皮膚外用剤

【課題】 アルギン酸の多価アルコールエステルを含有する乳化剤形の皮膚外用剤において、アルギン酸塩フリーの剤形を提供する。
【解決手段】 アルギン酸の多価アルコールエステルであって、エステル化度が70%以上であり、1%水溶液に於ける粘度が、20℃の測定条件において、100mPascal秒以下であるものを、皮膚外用剤全量に対して2〜5質量%程度、乳化形態の皮膚外用剤に含有させる。前記アルギン酸の多価アルコールエステルとしては、アルギン酸プロピレングリコールエステルが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関し、更に詳細には、アルギン酸の多価アルコールエステルを用いた乳化剤形の皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
乳化組成物は、水性成分と油性成分が、連続相と乳化粒子に分かれて含有される為、油溶性成分の担体としても、水溶性成分の担体としても好適である為、複数の有効成分を含有する、化粧料や皮膚外用医薬などの分野で有用な製剤として使用されている。この様な乳化組成物は、成分としては、主として親水性成分、油性成分及び界面活性剤から構成されている。中でも界面活性剤は、互いには混じらない親水性成分と油性成分とを均一な分散状態に分散させるには必須の成分である。界面活性剤としては、石けんやアルキル硫酸エステル塩などのアニオン界面活性剤やポリオキシエチレン付加型、或いは多価アルコールの部分エステル型の非イオン界面活性剤が、皮膚外用剤の分野では広く使用されている。この内、アニオン界面活性剤には、一時刺激性の面で改善すべきがあり、非イオン界面活性剤では、経時的なホルマリン発生の面で改善すべき点があった。更に、生分解されにくい特性から、環境科学的には、「持続可能な発展」の京都議定書の主旨とは相容れない面があり、改善される余地を残している。この為、界面活性剤を使用しない乳化系の開発が、皮膚外用剤の分野では長年の課題となっていた。この様な背景から、本発明者らは、アルギン酸の塩、アルギン酸の多価アルコールのエステル及び塩を用いることにより、界面活性剤フリーの水中油乳化系が具現化出来ることを見出した。(例えば、特許文献1を参照)この技術においては、アルギン酸の塩を必須成分として用いているが、この成分の持っている被膜性が、化粧膜をフレーキングさせたりする場合が存し、その改良が望まれるようになっていた。又、陰イオン性の物質が存する場合には、カルシウムイオン等のアルギン酸の対イオンと不溶体を形成する場合も存し、その意味で、応用範囲に限度が存している技術と言える。言い換えれば、アルギン酸の多価アルコールエステルを含有する乳化剤形の皮膚外用剤において、アルギン酸塩フリーのものの開発が望まれていたと言える。
【0003】
一方、アルギン酸の多価アルコールエステルとしては、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸グリセリンなどが知られており、乳化剤形などで使用されているが、(例えば、特許文献1或いは特許文献2を参照)アルギン酸の多価アルコールエステルであって、エステル化度が70%以上であり、1%水溶液に於ける粘度が、20℃の測定条件において、100mPascal秒以下であるものを皮膚外用剤全量に対して2〜5質量%含有する乳化剤形の皮膚外用剤は全く知られていないし、かかる構成を取ることにより、アルギン酸の塩を使用せずに、微細な乳化粒子の乳化系が得られることも全く知られていない。
【0004】
【特許文献1】特開2004−196728号公報
【特許文献2】再表01/93812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、アルギン酸の多価アルコールエステルを含有する乳化剤形の皮膚外用剤において、アルギン酸塩フリーの剤形を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、アルギン酸の多価アルコールエステルを含有する乳化剤形の皮膚外用剤において、アルギン酸塩フリーの剤形を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、アルギン酸の多価アルコールエステルであって、エステル化度が70%以上であり、1%水溶液に於ける粘度が、20℃の測定条件において、100mPascal秒以下であるものを皮膚外用剤全量に対して2〜5質量%含有する乳化剤形の皮膚外用剤がその様な特性を備えていることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
(1)アルギン酸の多価アルコールエステルであって、エステル化度が70%以上であり、1%水溶液に於ける粘度が、20℃の測定条件において、100mPascal秒以下であるものを皮膚外用剤全量に対して2〜5質量%含有することを特徴とする、乳化剤形の皮膚外用剤。
(2)前記アルギン酸の多価アルコールエステルが、アルギン酸プロピレングリコールエステルであることを特徴とする、(1)に記載の乳化剤形の皮膚外用剤。
(3)前記アルギン酸の多価アルコールエステルの含有量が、1〜5質量%であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の乳化剤形の皮膚外用剤。
(4)水中油乳化剤形であることを特徴とする、(1)〜(3)何れか1項に記載の乳化剤形の皮膚外用剤。
(5)実質的に界面活性剤を含有しないことを特徴とする、(1)〜(4)何れか1項に記載の乳化剤形の皮膚外用剤。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(1)本発明の乳化組成物の必須成分であるアルギン酸の多価アルコールエステル
本発明の乳化組成物は、アルギン酸の多価アルコールのエステルを必須成分として含有する。ここで、アルギン酸の多価アルコールのエステルを構成する多価アルコールとしては、皮膚外用剤などで使用されているものであれば特段の限定なく使用することが出来、炭素数2〜4のものが好ましく、エーテル結合を持たないものが好ましい。具体的には、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール、エチレングリコール等が好ましく例示でき、中でも親水性と親油性のバランスから、プロピレングリコールが特に好ましく例示できる。これらのアルギン酸の多価アルコールのエステルは何れも既知化合物であり、その製造方法は既に知られている。かかるアルギン酸の多価アルコールのエステルの製造法としては、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸の塩と、対応する多価アルコールのモノハロゲン化物を、アルカリ存在下反応させることが例示できる。例えば、アルギン酸プロピレングリコール エステルであれば、アルギン酸ナトリウムと1−クロル−2−プロパノールを含水アルコール中で炭酸カリウムなどを存在させて反応させればよいし、アルギン酸グリセリルエステルであれば、前記の反応の1−クロル−ープロパノールを1−クロル−2,3−プロパンジオールに代えて同様に処理すれば製造することが出来る。本発明の皮膚外用剤で使用できるアルギン酸の多価アルコールエステルとしては、の特性を有するものが使用できる。
【0008】
(アルギン酸の多価アルコールエステルの特性)
1)エステル化度が70%以上、より好ましくは80%以上であること。
2)1%水溶液の水溶液の20℃における粘度がB型粘度計で1号ローターでの測定で、10〜100mPascal・秒、より好ましくは10〜30mPascal・秒であること。
【0009】
この様な特性を有するアルギン酸の多価アルコールエステルの中には既に市販されているものが存し、これを購入して利用することも出来る。この様なアルギン酸の多価アルコールエステルとしては、株式会社キミカから販売されている、「キミロイドLLV」(1%水溶液、20℃の粘度が10〜30mPascal・秒で、エステル化度80%)、「キミロイドNLS−K」(1%水溶液、20℃の粘度が30〜60mPascal・秒で、エステル化度80%)、「キミロイドLV」(1%水溶液、20℃の粘度が60〜100mPascal・秒で、エステル化度80%)等が好ましく例示できる。これらの内、特に好ましいものは、「キミロイドLLV」である。これらは唯一種を含有させることも出来るし、二種以上を組み合わせて含有させることも出来る。かかるアルギン酸の多価アルコールエステルの好ましい含有量は、下限値としては、総量で、化粧料全量に対して2〜3質量%であり、上限値としては、4〜5質量%である。これは少なすぎると、乳化が出来ない場合が存し、多すぎると硬度が大きくなりすぎるなどして、使用性が損なわれるためである。
【0010】
(2)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、前記必須成分を含有し、乳化剤形であることを特徴とする。かかる乳化剤形に於ける乳化の形態としては、外相に水相が存する乳化剤形が好ましく、この様な形態の単純エマルション、複合エマルションの何れもが適用可能であるが、単純エマルションである、O/W乳化剤形(水中油乳化剤形)が特に好ましく例示できる。本発明の、皮膚外用剤では、その開発主旨から、界面活性剤の含有量は出来る限り低減することが好ましく、少なくとも環境負荷の少ない0.5質量以下であることが好ましく、界面活性剤フリーであることがより好ましい。又、フレーキングなどの使用性の面から、アルギン酸塩も極力少なくすることが好ましく、0.05質量%以下であることが好ましく、アルギン酸塩フリーであることがより好ましい。
【0011】
本発明の皮膚外用剤においては、前記の成分以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキシレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸,ローカストビーンガム,サクシノグルカン,カロニン酸,キチン,キトサン、カルボキシメチルキチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等の増粘剤、表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類、表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩,ビタミンB6トリパルミテート,ビタミンB6ジオクタノエート,ビタミンB2又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α−トコフェロール,β−トコフェロール,γ−トコフェロール,ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類などが好ましく例示できる。特に、本発明の皮膚外用剤において、含有することが好ましい成分としては、多価アルコールが例示でき、中でも、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールなどの抗菌性多価アルコールが好ましく例示できる。これらは唯一種含有することも出来るし、二種以上を組み合わせて含有することも出来る。かかる多価アルコールの好ましい含有量は、総量で、皮膚外用剤全量に対して、1〜10質量%であり、より好ましくは3〜8質量%である。本発明の皮膚外用剤は、これらの成分を常法に従って処理することにより製造することが出来る。
【0012】
本発明の皮膚外用剤は、皮膚に外用で投与されるものであれば特段の限定無く適用することが出来る。この様な皮膚外用剤としては、例えば、皮膚外用医薬、化粧料或いは皮膚外用雑貨などが好適に例示できる。特に好ましいものは化粧料である。これは、化粧料は使用反復回数が多く本発明の効果がより効果的に発揮できるためである。
【0013】
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0014】
以下に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である化粧料1を製造した。即ち、イの成分を良く攪拌し、ロの成分と合わせ、一様に分散させ、これを80℃に加温し、これに予め80℃に加温しておいたハを攪拌下徐々に加え、ホモジナイザー処理をし、攪拌冷却し、本発明の皮膚外用剤である化粧料1を得た。
【0015】
イ)
アルギン酸プロピレングリコールエステル
(「キミロイドNLS−K」) 2 質量%
1,3−ブタンジオール 5 質量%
ロ)
水 77 質量%
アスコルビン酸−2−グルコシド 1 質量%
ハ)
スクワラン 15 質量%
【0016】
(比較例1)
化粧料1と同様に、下記処方に従って、比較例1の化粧料を製造しようとしたが、乳化が困難であった。
【0017】
イ)
アルギン酸プロピレングリコールエステル
(「キミロイドNLS−K」) 1.5質量%
1,3−ブタンジオール 5 質量%
ロ)
水 77.5質量%
アスコルビン酸−2−グルコシド 1 質量%
ハ)
スクワラン 15 質量%
【0018】
(比較例2)
化粧料1と同様に、下記処方に従って、比較例2の化粧料を製造した。
【0019】
イ)
アルギン酸プロピレングリコールエステル
(「キミロイドNLS−K」) 1.5質量%
アルギン酸ナトリウム 0.1質量%
1,3−ブタンジオール 5 質量%
ロ)
水 77.3質量%
アスコルビン酸−2−グルコシド 1 質量%
1%塩化カルシウム水溶液 0.1質量%
ハ)
スクワラン 15 質量%
【0020】
(試験例1)
化粧料1と比較例2の化粧料とを用いて、低温保存試験を行った。即ち、これらの化粧料を5℃で3ヶ月保存した後、0.1gを取り、標準黒色板上に、ドクターブレードを用いて20ミルに延展し、3cm×3cmあたりのブツの発生個数を計数した。化粧料1は0であるのに対し、比較例2は12個であった。これより、本発明の皮膚外用剤は安定性に優れることが判る。
【0021】
(試験例2)
化粧料1と比較例2の化粧料とを用いて、高温保存試験を行った。即ち、これらの化粧料を50℃で3週間保存し、性状を観察した。比較例2においては、離水が明確に観察されたが、化粧料1は僅かにしか離水は見られなかった。これより、本発明の化粧料は、従来のアルギン酸塩−アルギン酸多価アルコールエステル乳化系の安定性を更に高めている製剤であると判断できる。
【実施例2】
【0022】
化粧料1と同様に、下記に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である、化粧料2(水中油乳化化粧料)を作成した。このものは、試験例1と同様の保存試験でブツの出現は認めず、試験例2の保存試験では全く離水を認めなかった。
【0023】
イ)
アルギン酸プロピレングリコールエステル
(「キミロイドNLS−K」) 3 質量%
1,3−ブタンジオール 5 質量%
ロ)
水 76 質量%
アスコルビン酸−2−グルコシド 1 質量%
ハ)
スクワラン 15 質量%
【実施例3】
【0024】
化粧料1と同様に、下記に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である、化粧料3(水中油乳化化粧料)を作成した。このものは、試験例1と同様の保存試験でブツの出現は認めず、試験例2の保存試験では全く離水を認めなかった。これより、アルギン酸の多価アルコールエステルとしては、1%水溶液の20℃における粘度が30mPascal・秒以下のものが好ましいことが判る。
【0025】
イ)
アルギン酸プロピレングリコールエステル
(「キミロイドLLV」) 2 質量%
1,3−ブタンジオール 5 質量%
ロ)
水 77 質量%
アスコルビン酸−2−グルコシド 1 質量%
ハ)
スクワラン 15 質量%
【実施例4】
【0026】
化粧料1と同様に、下記に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である、化粧料4(水中油乳化化粧料)を作成した。このものは、試験例1と同様の保存試験でブツの出現は認めず、試験例2の保存試験では全く離水を認めなかった。これより、本発明の皮膚外用剤においては、炭化水素のみならずシリコーンのような非極性油も乳化可能であることが判る。
【0027】
イ)
アルギン酸プロピレングリコールエステル
(「キミロイドLLV」) 2 質量%
1,3−ブタンジオール 5 質量%
ロ)
水 77 質量%
アスコルビン酸−2−グルコシド 1 質量%
ハ)
ジメチコン(1000mPascal・秒) 15 質量%
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、安定な界面活性剤フリーの乳化化粧料に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギン酸の多価アルコールエステルであって、エステル化度が70%以上であり、1%水溶液に於ける粘度が、20℃の測定条件において、100mPascal秒以下であるものを皮膚外用剤全量に対して2〜5質量%含有することを特徴とする、乳化剤形の皮膚外用剤。
【請求項2】
前記アルギン酸の多価アルコールエステルが、アルギン酸プロピレングリコールエステルであることを特徴とする、請求項1に記載の乳化剤形の皮膚外用剤。
【請求項3】
前記アルギン酸の多価アルコールエステルの含有量が、1〜5質量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の乳化剤形の皮膚外用剤。
【請求項4】
水中油乳化剤形であることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項に記載の乳化剤形の皮膚外用剤。
【請求項5】
実質的に界面活性剤を含有しないことを特徴とする、請求項1〜4何れか1項に記載の乳化剤形の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2006−76898(P2006−76898A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260348(P2004−260348)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【出願人】(300068030)株式会社キミカ (3)
【Fターム(参考)】