説明

乳化液体の製造方法

【課題】 液晶転相乳化法により、ヘアリンス、柔軟剤、クリーム、ローション等のO/W型エマルジョンタイプの乳化液体を製造する乳化液体の製造方法を提供する。
【解決手段】 油相に水相を添加して液晶構造体を形成させた後、該液晶構造体に更に水相を添加混合して転相させることによって、上記油相を分散質とするO/W型エマルジョンタイプの乳化液体を製造する方法において、予め油相全量に対して5〜45重量%の水溶性溶媒を油相に添加し、水溶性高分子を油相に分散して、かつ、液晶構造体の形成時に0.5〜70(kW/m3・分)の攪拌エネルギーで混合することを特徴とする乳化液体の製造方法。
【効果】 水溶性高分子を油相に分散して液晶形成を行う場合においても、水溶性高分子への水分吸着を抑制し、良好な乳化液体を製造することができる。また、油相に水溶性高分子を分散することで、別に水溶性高分子の分散槽を設ける必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶転相乳化法により、ヘアリンス、柔軟剤、クリーム、ローション等のO/W型エマルジョンタイプの乳化液体を製造する乳化液体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、油相に水相を添加して液晶構造体を形成させた後、該液晶構造体に更にエマルジョン形成用の水相を添加混合して転相させる液晶転相乳化法により、上記油相を分散質とするO/W型エマルジョンタイプの乳化液体を製造する方法が行われている。
【0003】
例えば、エマルジョン形成用水相として、疎水基を有するセルロースポリマー又はカルボキシルビニルポリマーを上記エマルジョン形成用水相全体に対して0.1重量%以上含む水性溶液を用いる製造方法(例えば、特許文献1参照)や、油相に水溶性高分子を添加して転相乳化を行う方法、並びに、この乳化の際に、油相が水相の粘度の2倍以上の粘度を有する油相である乳化方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1は、油相に水溶性高分子を分散させた系で液晶形成を行うものではなく、また、上記特許文献2は液晶を形成する方法ではなく、且つ、何れの文献も高分子の水溶液を用いており、分散系ではない点からも、本発明とは技術思想が全く異なるものである。
【0005】
このように、水溶性高分子を油相に分散して液晶形成を行う製造方法は、先行技術には見当たらないが、現実には、乳化装置は構造が複雑なことから、粉体で添加するのは内部構造物に付着して均一な組成物が得られないという課題がある。
一方、従来の水溶液として添加するには多量の水を要し、組成の制約となる他、大容量の調製槽が別に必要になるなどの課題があり、更に、非水系の分散媒に分散して乳化以降に添加するには、分散液を添加する際に再度乳化操作が必要となるなどの課題がある。
従って、水溶性高分子を用いる乳化液体の製造においては、理想的には、非水系の成分である「油相」に分散させるのが効率的であるが、本願発明の対象である「液晶転相乳化法」では、液晶形成時に水溶性高分子が存在すると、添加した水が高分子に吸収され、良好な液晶が形成されず、転相の時点で不十分な乳化状態になり、良好な乳化液体が得られない点等に課題がある。
【特許文献1】特開平10−180085号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開平11−156172号公報(請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、上記従来技術の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、水溶性高分子を油相に分散して液晶形成を行う場合において、水溶性高分子の存在下でも、水溶性高分子への水分吸着を抑制し、良好な乳化液体を製造する乳化液体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来の課題等について鋭意検討した結果、油相に水相を添加して液晶構造体を形成させた後、該液晶構造体に更に水相を添加混合して転相させることによって、上記油相を分散質とするO/W型エマルジョンタイプの乳化液体を製造する方法において、予め油相全量に対して特定量となる水溶性溶媒を油相に添加し、水溶性高分子を油相に分散して、かつ、液晶構造体の形成時に特定範囲となる攪拌エネルギーで混合することにより、上記目的の乳化液体の製造方法が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明の乳化液体の製造方法は、油相に水相を添加して液晶構造体を形成させた後、該液晶構造体に更に水相を添加混合して転相させることによって、上記油相を分散質とするO/W型エマルジョンタイプの乳化液体を製造する方法において、予め油相全量に対して5〜45重量%の水溶性溶媒を油相に添加し、水溶性高分子を油相に分散して、かつ、液晶構造体の形成時に0.5〜70(kW/m3・分)の攪拌エネルギーで混合することを特徴とする。
なお、本発明で規定する「乳化液体」とは、連続相である液体中に、連続相に不溶な物質が微細な粒子となって分散している液体をいう。本発明では、連続相は水溶性液体であり、分散粒子は油溶性物質であり、例えば、ヘアリンスや柔軟剤、クリーム、ローションなどが挙げられる。
また、「液晶」とは、室温(25℃)において、偏光顕微鏡(400倍)で観察し、光る部分(十字ニコル)が密集して観察されるものをいう。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水溶性高分子を油相に分散して液晶形成を行う場合においても、水溶性高分子への水分吸着を抑制し、良好な乳化液体を製造することができる乳化液体の製造方法が提供される。また、本発明では、油相に水溶性高分子を分散することで、別に水溶性高分子の分散槽を設ける必要がないという点でも利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の乳化液体の製造方法は、油相に水相を添加して液晶構造体を形成させた後、該液晶構造体に更に水相を添加混合して転相させることによって、上記油相を分散質とするO/W型エマルジョンタイプの乳化液体を製造する方法において、予め油相全量に対して5〜45重量%の水溶性溶媒を油相に添加し、水溶性高分子を油相に分散して、かつ、液晶構造体の形成時に0.5〜70(kW/m3・分)の攪拌エネルギーで混合することを特徴とするものである。
【0010】
本発明において、「油相」とは、乳化液体の種類、目的に応じた各種油性成分からなるものであり、水への溶解度が、20℃の水100gに0.5g以下であって、且つ、融点が100℃以下である有機化合物を1種又は2種以上含む混合物をいう。
用いることができる油性成分としては、例えば、シリコーンなどの合成油、流動パラフィンなどの鉱油、ホホバ油、オリーブ油などの植物油、ラノリン、スクワランなどの動物油、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸などの脂肪酸や脂肪酸エステルなどが挙げられる。
前記シリコーンとしては、例えば、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、フェニルポリシロキサン、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチル(アミノプロピル)シロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体などの1種又は2種以上の混合物が挙げられる。なお、粘度が100万〜1500万mm2/sの高重合度シリコーンは、他の油性成分に溶解し難いので、液晶構造体形成後に添加することが好ましい。
また、本発明の油相には、必要に応じて、カチオン活性剤やノニオン活性剤などの界面活性剤、エタノールや多価アルコールなどの溶媒、油溶性の酸化防止剤や防腐剤・香料・色素・UV吸収剤を本発明の効果を損なわない範囲で含むことができる。
【0011】
用いる油性成分の量は、その種類、乳化液体の用途などにより適宜規定することができるが、乳化液体全量に対して、好ましくは、0.5〜20質量%(以下、単に「%」という)、更に好ましくは、1〜15%とすることが望ましい。この油性成分の量が0.5%未満であると、油性成分含有の効果が充分でなく、一方、20%を越えると、液晶構造体及びエマルジョン形成が困難となる場合がある。
【0012】
本発明において、水溶性溶媒は、水溶性高分子への水分取り込みを一時的に抑制し、良好な液晶を形成するために用いるものであり、予め油相全量に対して5〜45%を油相に添加するものである。
用いることができる水溶性溶媒としては、水と任意に相互溶解する溶媒であれば特に限定されず、例えば、エタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールなどが挙げられる。
この水溶性溶媒の添加量が、油相全量に対して5%未満であると、水溶性高分子への水分取り込み抑制ができないため、目的の効果を発揮することができず、一方、45%を越えても、効果は変わらず、油相量が増えるだけとなり、好ましくない。
好ましい水溶性溶媒の添加量は、更なる本発明の効果の点から、油相全量に対して10〜45%とすることが望ましい。
【0013】
本発明の水相は、液晶構造体を形成させる水相と、該液晶構造体を転相させてO/W型エマルジョンを形成させる水相があり、両者は同一の組成物であっても、異なる組成物であってもよい。
本発明において、「水相」とは、水、または、必要に応じて、乳化剤や水溶性高分子、エタノールや多価アルコールなどの水溶性溶媒、無機塩類、水溶性有機塩類、色素などの水溶性物質を溶解した水溶液をいう。
用いる水相の全量は、その種類、乳化液体の用途などにより適宜規定することができるが、油相の量に対して、好ましくは2〜20倍、より好ましくは5〜15倍とすることが望ましい。この水相の量が2倍未満であると、良好なO/W型エマルジョンが得られない場合があり、一方、20倍を超えても転相乳化の効果は変わらない。
【0014】
液晶構造体を形成させる際に用いる水相の使用量は、油相の組成、乳化液体の用途、目的等で適宜選定できが、油相の量に対して、好ましくは、0.3〜5倍、より好ましくは、0.5〜4倍とすることが望ましい。この水相の量が0.3倍未満又は5倍を越えると、何れも液晶構造体の形成が不十分となり、良好なエマルジョンが得られない場合がある。
【0015】
本発明の水溶性高分子は、油相に粉末で添加し分散させるものである。本発明において、「水溶性高分子」とは、水への溶解度が、40℃の水100gに0.5g以上溶解する高分子をいう。
用いることができる水溶性高分子としては、水や水溶性溶媒に溶解する上記特性となる高分子であれば特に限定されず、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシビニルポリマーなどか挙げられる。
この水溶性高分子の添加量は、油相全量に対して0超過〜35%を油相に添加することが好ましく、更に好ましくは、1〜30%とすることが望ましい。
この水溶性高分子の添加量が0%であると、乳化液体の所望の物性が得られなかったり、安定性が不良となる場合がある他、本発明の意義が失われることとなる。一方、35%を超えると、油相中の固形物濃度が高くなって、油相の物性が不良となり、好ましくない。
【0016】
本発明では、上記構成の油相に、予め油相全量に対して5〜45%の水溶性溶媒を添加すると共に、水溶性高分子を添加して油相に分散せしめ、液晶構造体の形成時に0.5〜70(kW/m3・分)の攪拌エネルギーで混合することが必要であり、次いで、該液晶構造体に更に水相を添加混合して転相させることによって、上記油相を分散質とするO/W型エマルジョンタイプの乳化液体を製造するものである。
なお、本発明で規定する「攪拌エネルギー」とは、攪拌動力P/V〔KW/m3〕×攪拌時間(分)であり、下記式(I)で表される。
【数1】

【0017】
この液晶構造体形成時の攪拌エネルギーを0.5〜70kW/m3・分とすることにより、水溶性高分子への水分取り込みを抑制し、良好な液晶を形成することができ、目的の良好な乳化液体を得ることができる。
好ましくは、更なる良好な乳化液体を製造する点から、攪拌エネルギーを1〜50kW/m3・分、更に好ましくは、1〜30kW/m3・分とすることが望ましい。
この攪拌エネルギーが0.5kW/m3・分未満であると、混合不良となり、液晶構造体の形成が不十分となり、一方、70kW/m3・分超過では、水溶性高分子への水分の取り込み抑制ができないこととなり、好ましくない。
【0018】
この攪拌エネルギーによって、液晶構造体を形成するものであるが、この工程で液晶構造体が形成されたか否かは、液晶構造体が形成された場合、系の粘度が10〜100Pa・sと高くなると共に、偏光顕微鏡(400倍)で観察すれば、光る部分(十字ニコル)が密集して観察されることにより、確認することができる。
また、この液晶構造体を形成する装置としては、特に制限されず、公知の撹拌装置を使用することができ、例えば、パドル、アンカー、リボン等の一般的な全体混合翼のみで攪拌することができ、また、液晶構造体の粘度が高いことを考慮すると、掻き取り機を備えた装置が好ましい。なお、後述するように、該液晶構造体を形成させた後、エマルジョンに転相する際に、例えば、ホモミキサー、ディスパなどの剪断力の強い装置を併用することが好ましいことから、両者を兼ね備えた装置がより好適である。図1は、本発明の乳化液体製造に用いられる乳化装置であり、1は乳化槽、2はアンカー型攪拌機、3はホモミキサー、4は真空装置を示すものである。
本発明において使用される撹拌槽は、温度コントロール機能を備えたものが望ましく、温度コントロール機能としては、具体的には、外部熱交換によるリサイクルライン、コイル、槽外側のジャケット等が挙げられるが、熱効率を考えるとこれらの中でもジャケットを用いることが好ましい。
【0019】
上記液晶構造体形成時における混合(攪拌)温度(品温)は、油相の種類や組成によって適宜選定されるが、好ましくは、45〜90℃、より好ましくは、50〜85℃である。
混合温度が45℃未満であると、油相が固化したり、液晶構造体が形成されない場合があり、90℃を超えて高すぎると、混合物中の水分蒸発が激しくなって組成のバランスが崩れたり、液晶構造体が形成されない場合がある。
【0020】
本発明は、上記により液晶構造体を調製した後、該液晶構造体に更に水相を添加混合して転相させることによって、上記油相を分散質とするO/W型エマルジョンタイプの乳化液体が製造される。
この工程における水相の添加方法は特に制限されず、例えば、上記液晶構造体中に水相の全量を一括で添加しても、少量ずつ分割して添加してもよい。
【0021】
また、この工程における混合装置は、上記油相を分散質とするO/W型エマルジョンタイプの乳化液体が得られる混合であればよく、上記液晶構造体と同様の攪拌装置が使用できるが、高粘度の液晶構造体を効率よく水相中に分散することを考慮すると、例えば、ホモミキサー、ディスパなどの剪断力の強い装置を併用することが好ましい。この際の攪拌条件は、上記攪拌エネルギーに限定されず、通常の使用範囲にて行うことができ、攪拌翼の周速を1m/s以上、より好ましくは、2〜25m/sとして分散すると好適である。
【0022】
上記工程における混合(攪拌)温度(品温)は、特に制限されるものではなく、適宜選定することができるが、好ましくは、40〜90℃、より好ましくは、45〜85℃とすると好適である。混合温度が40℃未満であると、油相が均一に分散される前に固化して不均一な粒子ができる場合があり、また、90℃を超えて高すぎると、水分蒸発が激しくなって組成のバランスが崩れたり、また、後工程での冷却に長時間を要して効率が悪い。
更に、上記工程の混合(攪拌)時間も上記油相を分散質とするO/W型エマルジョンタイプの乳化液体が得られる混合であれば、特に制限されるものではなく、適宜選定することができるが、少なくとも1分以上、特に2〜60分混合することが望ましい。混合時間が1分未満であると、均一な乳化液体が得られない場合があり、また、60分を超えて長くしても、それ以上の混合効果が得られず、作業効率上望ましくない場合がある。
【0023】
このように構成される本発明では、油相に水相を添加して液晶構造体を形成させた後、該液晶構造体に更に水相を添加混合して転相させることによって、上記油相を分散質とするO/W型エマルジョンタイプの乳化液体を製造する方法において、予め油相全量に対して5〜45重量%の水溶性溶媒を油相に添加し、水溶性高分子を油相に分散して、かつ、液晶構造体の形成時に0.5〜70(kW/m3・分)の攪拌エネルギーで混合することにより、水溶性高分子を油相に分散して液晶形成を行う場合においても、水溶性高分子の膨潤を抑制し、水溶性高分子への水分吸着を抑制し、良好な乳化液体を製造することができるものとなる。本発明では、水溶性高分子を分散するための別の分散媒及び分散槽を必要とすることなく、製造できるので製造効率に優れ、コスト的にも優れたものである。
また、粘度が100万〜1500万mm2/sの高重合度シリコーンは、液晶構造体形成後に添加することにより、簡潔な製造工程で配合でき、使用するシリコーン重合度の制約もなくなり、乳化液体の性能向上も可能となった。
【0024】
また、本発明の製造方法によって得られる乳化液体は、エマルジョン形成後、本発明の効果を損なわない範囲で、更に種々の成分を添加することができる。
本発明の乳化液体は、水溶性高分子を油相に分散して液晶形成を行う場合においても、水溶性高分子への水分吸着を抑制し、液晶転相乳化法により、良好な乳化液体を効率よく製造することができるものであり、例えば、ヘアリンス、柔軟剤、クリーム、ローション等のO/W型エマルジョンタイプの乳化液体として好適に使用することができる。
【実施例】
【0025】
次に、実施例及び比較例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記実施例に限定されものでない。
【0026】
〔実施例1〜5及び比較例1〜4〕
<リンスの製造方法>
各実施例及び比較例共に、まず下記の油性成分を均一に混合溶解して80℃に調整した後、ヒドロキシエチルセルロースを6.0部添加し、混合分散した。
ステアリルアルコール 35.0部
塩化アルキルトリメチルアンモニウム(80%品) 22.5部
ジイソステアリン酸ポリグリセリル 5.0部
モノステアリン酸ポリエチレングリコール 3.0部
上記混合分散液に、各実施例及び比較例について、それぞれ下記表1及び表2に示した水溶性溶媒(エタノール又はプロピレングリコール)を、同じく下記表1及び表2に示した量添加し、均一に混合分散して油相とした。
混合条件:汎用のパドル攪拌槽を用い、80℃に調整した油相成分を回転数100rpmで攪拌しながら、ヒドロキシセルロースを添加し、10分間、混合分散した後、所定量の水溶性溶媒を添加して、更に5分間混合した。
【0027】
上記油相を図1に示す乳化装置(容量2kL)に投入し、80℃に調整してから、80℃の精製水を100部添加し、混合して液晶を形成した。この時の各実施例及び比較例における攪拌エネルギー(攪拌動力と混合時間)を下記表1及び表2に示す。得られた液晶の状態を下記評価基準で評価した。この結果を下記表1及び表2に示す。また、攪拌エネルギーを算出するためのデータを下記表3に示す。
次いで、シリコンオイルミックス(メチルポリシロキン23:高重合メチルポリシロキサン:3:高重合ジメチルシロキサン・メチル(アミノプロピル)シロキサン共重合体4:ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体2の混合物)を12.5部添加して30分混合後、80℃の精製水を480部添加して10分混合し、O/Wエマルジョンに転相させた。
この転相物に、全体の液量が951部となるように精製水を添加して希釈混合しながら冷却を行い、50℃の時点で、アルギニン溶液30部(精製水23部、アルギニン3部、70%グリコール酸4部の混合物)及びアモジメチコンエマルジョン40%溶液12.5部を添加し、更に40℃まで冷却して香料を6.5部添加、15分混合してリンスを製造した。
混合条件:(1)シリコーン混合は、パドル35rpm。
(2)転相(精製水添加)は、パドル35rpm、ホモミキサー2000rpm。
得られた乳化液体の乳化状態及び物性を下記評価基準で評価した。これらの結果を下記表1及び表2に示す。
【0028】
〔液晶状態の評価方法〕
偏光顕微鏡(400倍)による観察で、下記評価基準により官能評価した。
評価基準:
○:整然と液晶が形成されている状態。
×:油性成分中に水性成分が分散状態となって、液晶が殆ど形成されていない状態。
【0029】
〔乳化状態の評価方法〕
偏光顕微鏡(400倍)による観察で、下記評価基準により官能評価した。
評価基準:
○:水性成分中に油性成分が均一な粒子となって分散状態している状態。
×:油性成分の粗大な粒子が存在したり、不均一な状態で分散している状態。
【0030】
〔乳化物性の評価方法〕
乳毛液体の物性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:所定の液体粘度(80℃において、液体粘度が5Pa・s以下程度)で、液体の輸送や製品の損なわない物性であるもの。
×:ゲル化状態で、輸送が困難であったり、使用性に問題のある物性のもの。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
上記表1及び表2の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜5は、本発明範囲外となる比較例1〜4に較べ、液晶状態、乳化液体の乳化状態及び物性の全てに優れていることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例及び比較例に使用した乳化装置の模式図である。
【符号の説明】
【0036】
1 乳化槽
2 アンカー型攪拌機
3 ホモミキサー
4 真空装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
油相に水相を添加して液晶構造体を形成させた後、該液晶構造体に更に水相を添加混合して転相させることによって、上記油相を分散質とするO/W型エマルジョンタイプの乳化液体を製造する方法において、予め油相全量に対して5〜45重量%の水溶性溶媒を油相に添加し、水溶性高分子を油相に分散して、かつ、液晶構造体の形成時に0.5〜70(kW/m3・分)の攪拌エネルギーで混合することを特徴とする乳化液体の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2007−161683(P2007−161683A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362872(P2005−362872)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】