説明

乳化食品組成物

【課題】簡便に摂取およびチューブを介した投与が可能であり、かつ胃内部で半固形化させることで胃食道逆流の防止、また満腹感促進が可能な乳化食品組成物を提供する。
【解決手段】少なくともタンパク質、脂質、糖質、増粘剤が配合されることで、胃に入るまでは流動性を有しているが、胃内部で半固形化する乳化食品組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃食道逆流防止効果や満腹感促進効果を有する乳化食品組成物、特に胃に入るまでは流動性を有し、胃内部で半固形化することを特徴とする乳化食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、栄養バランスを考慮した栄養機能食品は食事の代わりとして簡便に摂取できる携帯食やダイエット食品としてだけでなく、高齢者や傷病、障害により経口摂取に困難をきたすものが栄養を摂取するための流動食などとしても利用されている。
【0003】
高齢者や傷病、障害により経口摂取が困難な者が栄養を摂取するための方法として経管栄養投与法が医学的に注目され、近年流動食の需要が増加している。ただ経管栄養投与法の大きな問題点として、投与した流動食の胃から食道への逆流があり、それにより食道炎や肺炎、窒息を誘発し死に至る可能性もある。
【0004】
これら問題点を解決する方法として、あらかじめ増粘された市販の半固形化栄養剤を使用する方法、あるいは通常の流動食に寒天、卵白、ゼラチンなどを添加し、プリンや茶碗蒸し程度に半固形化させた後にシリンジなどで投与する方法などのように投与前に半固形化されたものを使用する方法が報告されている(例えば、特許文献1参照)。また、流動食の投与前、または後に、嘔吐予防食品として、ローメトキシルペクチンなどの増粘剤を含む溶液を別に投与し、胃内で前記嘔吐予防食品中の増粘剤と流動食成分が混合されることにより粘度を上昇させる方法も報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、例えば特許文献1に記載の方法では、投与に際して調理が必要なこと、さらには半固形化した流動食を押し出すのに力が必要で、また経管投与時にチューブを通りにくいことから、看護師あるいは介護者の手間と時間を要し、更に衛生面でも問題があった。また、特許文献2に記載の方法では、流動食とは別に嘔吐予防食品を投与する必要があり、流動食のみの投与と比較して時間がかかるため、被投与者の負担や座位保持による褥創の悪化を生じやすいという問題に加え、投与の操作が煩雑で手間がかかる、といった問題があった。そこで、手間が要らず、衛生的かつ短時間で投与が可能であり、胃食道逆流や下痢などを抑制することができる流動食が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−26844号公報
【特許文献2】特許第3633942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、簡便に摂取およびチューブを介した投与が可能であり、かつ胃内部で半固形化させることで胃食道逆流の防止、また満腹感促進が可能な乳化食品組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、少なくともタンパク質、脂質、糖質、増粘剤を配合されており、胃に入るまでは流動性を有しているが、胃内部で半固形化しうる乳化食品組成物を調製しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明に係る乳化食品組成物は少なくともタンパク質、脂質、糖質、増粘剤からなり、これら栄養成分を適正な濃度で配合することで胃に入るまでは流動性を有し、胃内部では半固形化することを特徴とする。ここで、乳化食品組成物の「半固形化」とは、流動性を低下させる、もしくは流動性を失わせることであり、具体的には、例えばヨーグルトのように非常に粘度の高い流体や、プリンや茶碗蒸しのように一定の形状を保持する状態のことである。
【0010】
本発明の乳化食品組成物においては、エネルギー密度が0.1kcal/g以上3.0kcal/g以下であることが好ましい。これにより胃に入るまでは流動性を保持し、胃内部で乳化食品組成物を効果的に半固形化させることができる。ここで、乳化食品組成物の「エネルギー密度」とは、乳化食品組成物の重量当りの摂取可能なエネルギー量のことである。つまり「3.0kcal/g」とは乳化食品組成物を1g摂取することで3.0kcalのエネルギーを得られることを表す。
【0011】
本発明の乳化食品組成物においては、エネルギー密度が0.5kcal/g以上1.0kcal/g未満の場合、配合されるタンパク質含量が0.1g/100kcal以上11.5g/100kcal以下であることが好ましい。これにより胃内部で乳化食品組成物を効果的に半固形化させることができる。ここで、乳化食品組成物の「g/100kcal」の単位は、乳化食品組成物100kcal当りに含まれる栄養成分の含量を表す。
【0012】
本発明の乳化食品組成物においては、エネルギー密度が1.0kcal/g以上1.5kcal/g未満の場合、配合されるタンパク質含量が0.1g/100kcal以上11.4g/100kcal以下であることが好ましい。これにより胃内部で乳化食品組成物を効果的に半固形化させることができる。
【0013】
本発明の乳化食品組成物においては、エネルギー密度が1.5kcal/g以上2.0kcal/g未満の場合、配合されるタンパク質含量が0.1g/100kcal以上4.9g/100kcal以下であることが好ましい。これにより胃内部で乳化食品組成物を効果的に半固形化させることができる。
【0014】
本発明の乳化食品組成物においては、エネルギー密度が2.0kcal/g以上3.0kcal/g未満の場合、配合されるタンパク質含量が0.1g/100kcal以上4.7g/100kcal以下であることが好ましい。これにより胃内部で乳化食品組成物を効果的に半固形化させることができる。
【0015】
本発明の乳化食品組成物に配合される増粘剤は、酸性でゲル化する増粘剤であることが好ましい。これにより乳化食品組成物を胃内部で良好に半固形化させることができる。
【0016】
本発明の乳化食品組成物に配合される増粘剤は、ジェランガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸塩、およびペクチンの群より選ばれる少なくとも1種が配合されていることが好ましい。これにより乳化食品組成物を胃内部で効果的に半固形化させることができる。
【0017】
本発明の乳化食品組成物に配合される増粘剤は、固形分換算で0.01〜20重量%添加されることが好ましい。特にジェランガムを使用する場合は0.05〜5.0重量%、カラギーナンを使用する場合は0.05〜10.0重量%、アルギン酸またはアルギン酸塩を使用する場合は0.05〜10.0重量%、ペクチンを使用する場合は0.05〜10.0重量%添加されることが好ましい。増粘剤を前記の範囲で添加することで、乳化食品組成物を胃内部で効果的に半固形化させることができる。
本発明の乳化食品組成物においては、胃に入るまでのpHが3.0以上であることが好ましい。これにより、胃に入るまでは流動性を低粘度で保持する。
【0018】
本発明の乳化食品組成物においては、胃内部で胃酸と混ざり合った後のpHが6.0以下であることが好ましい。これにより食品組成物が胃内部で効果的に半固形化する。
【0019】
本発明の乳化食品組成物においては、摂取または投与された後、胃内部で半固形化するが、腸内で再度崩壊することが好ましい。これにより食品組成物の栄養組成分が問題なく吸収される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の乳化食品組成物を流動食として用いれば、胃に入るまでは流動性を有しているため、流動食を寒天やトロミ剤などで半固形化して投与する場合のように押し出す力も不要なことから、看護師や介護者などの手間や時間がかからず、またチューブ内を容易に胃まで通過させることができることから、経鼻チューブや胃瘻カテーテルなどを介した経管投与が容易である。また胃内部で半固形化し胃食道逆流を防止することから流動食とは別に嘔吐予防食品を投与する場合のような手間や時間、さらにはコストがかからないため、被投与者の座位保持による褥瘡の悪化や費用の負担を軽減することができる。更に増粘剤を含まない通常の液体流動食と比較して、投与後の食品組成物の胃から排出される速度がゆるやかになるため下痢も防止することができる。
【0021】
以上のように、本発明によれば、経口で摂取する場合はのど越しが良く摂取することが可能で有り、更にチューブを介した投与では手間がかからず、簡便に投与が可能である。更に、胃内部で半固形化させることで胃食道逆流の防止や満腹感促進の効果を有する乳化食品組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明は、少なくともタンパク質、脂質、糖質、および増粘剤が配合された乳化食品組成物である。ただし、この乳化食品組成物には、その他の栄養成分、例えばビタミン、ミネラル、または微量元素等が含まれていても、含まれていなくてもよい。前記食品組成物にミネラル類を添加する場合、ミネラル類の種類は特に限定されないが、不溶性のミネラル類、もしくはミネラル類を中性領域では不溶で、酸性領域では溶解するようなカプセル化などコーティングした形態で添加することが好ましい。これにより胃に入るまでの流動性をより低粘度に抑えることができる。
【0024】
本発明の乳化食品組成物の用途は特に限定されない。乳化食品組成物は、胃に入るまでは流動性を有し、胃内部で半固形化することから、投与が簡便である上に胃食道逆流の抑制効果が期待できるため、経口はもちろんのこと、経鼻胃管チューブや胃瘻カテーテルを通じても投与される流動食、介護食、医療食として使用することができる。
【0025】
また、乳化食品組成物は、携帯食・ダイエット食品等として用いることもできる。この乳化食品組成物は、胃に入るまでは流動性を有していることから、のど越しが良い。そのため、摂取した際にボソボソ感があるため嚥下しにくい上、食感が悪く、更に摂取する場合に水分を欲する感覚に襲われやすい固形食と比較して、この乳化食品組成物は手軽に摂取することができる。
【0026】
また、この乳化食品組成物は、胃内部で半固形化することから、ゼリー状の携帯食、ダイエット食品では得にくい満腹感を得ることができる。また、この乳化食品組成物は、のど越しがよいことから、嚥下・咀嚼困難者用の食品として用いることも可能である。
【0027】
本発明の乳化食品組成物においては、胃に入るまで流動性を有していれば、特に流動性の程度は限定されない。ただし、乳化食品組成物は、経鼻胃管チューブまたは胃瘻カテーテル等のチューブを、容易に通過するだけの流動性を保持しているものが好ましい。その中でも、乳化食品組成物は、粘度5000cP未満のものが好ましく、粘度3000cP以下のものがより好ましく、粘度1000cP以下のものが更に好ましく、粘度500cP以下のものが特に好ましい。なお、cP(センチポアズ)とは粘度を表す単位であり、1cP=1mPa・sである。
【0028】
本発明の乳化食品組成物おいては、胃内部で半固形化するが、半固形化の程度については特に限定されない。ただし、満腹感を促進したり、胃食道逆流を防止したりする観点からは、乳化食品組成物は、流動性を失い、一定の形状を保持する状態、あるいは重力に抗してその形態を保つ硬さが好ましく、具体的には、プリンまたは茶碗蒸し程度の固さであることが好ましい。また半固形化度は固さや粘度で表すことができる。半固形化した際の固さは0.3N/m以上が好ましく、0.5N/m以上がより好ましく、0.7N/m以上が更に好ましく、1.0N/m以上が特に好ましい。また半固形化した際の粘度は5000cP以上が好ましく、10000cP以上がより好ましく、15000cP以上が更に好ましく、20000cP以上が特に好ましい。
【0029】
本発明の乳化食品組成物のpHは、特に限定されない。ただし、胃に入るまでの流動性を低粘度に抑える観点からは、乳化食品組成物は、pH3.0以上が好ましく、pH4.0以上がより好ましく、pH5.0以上が更に好ましく、pH5.5以上がより更に好ましく、pH6.0が特に好ましい。なお、本発明での胃に入るまでとは、胃内で胃酸に接触する前のことをさす。
【0030】
本発明の乳化食品組成物の胃内部でのpHは、特に限定されない。ただし、胃内部で良好に半固形化させる観点からは、乳化食品組成物は、胃内部でpH6.0以下になるものが好ましく、pH5.5以下になるものがより好ましく、pH5.0以下になるものが更に好ましく、pH4.5以下になるものが特に好ましい。なお、本発明での胃内部とは胃内で胃酸に接触する状態のことをさす。
【0031】
本発明の乳化食品組成物のエネルギー密度は、特に限定されない。ただし、胃内部で良好に半固形化させる観点からは、乳化食品組成物は、上限は3.0kcal/g以下であることが好ましく、2.0kcal/g以下であることがより好ましく、1.5kcal/g以下であることが更に好ましく、1.0kcal/g以下であることが特に好ましい。下限は0.1kcal/g以上が好ましく、0.2kcal/g以上がより好ましく、0.5kcal/g以上が特に好ましい。
【0032】
本発明の乳化食品組成物においては、腸内での状態は特に限定されない。ただし腸内で栄養成分が問題なく吸収される観点からは、胃内部で半固形化した乳化食品組成物は、腸内で崩壊した方が好ましい。特に、乳化食品組成物は、人工腸液で3時間以内に崩壊した方が好ましく、2時間以内に崩壊した方がより好ましく、1時間以内に崩壊した方が更に好ましい。
【0033】
本発明における乳化食品組成物のタンパク質の種類は、特に限定されない。例えば、乳原料由来のタンパク質、大豆原料由来のタンパク質、小麦原料由来のタンパク質、エンドウ原料由来のタンパク質、または卵由来のタンパク質でも構わない。
【0034】
ただし、胃内部で良好に半固形化させる観点からは、乳化食品組成物のタンパク質の種類は、乳原料由来のタンパク質の方が好ましい。乳原料由来のタンパク質は他のタンパク質と比較して乳化力が高い。そのため、胃内部でも乳化が崩れにくく、乳化食品組成物が胃酸に接触した場合に良好に半固形化する。また、胃に入るまでの流動性を低粘度に抑える観点からは、タンパク質原料のCa含量が2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることが更に好ましく、0.8%以下であることが特に好ましい。
【0035】
本発明における乳化食品組成物のタンパク質含量は、特に限定されない。ただしタンパク質含量を11.5g/100kcal以下の割合で配合されたものが好ましく、10.0g/100kcal以下の割合で配合されたものがより好ましく、8.5g/100kcal以下の割合で配合されたものが更に好ましく、5.0g/100kcal以下の割合で配合されたものが特に好ましい。
【0036】
また、エネルギー密度が0.5kcal/g以上1.0kcal/g未満の場合、タンパク質含量の上限が11.5g/100kcal以下の割合で配合されたものがより好ましく、8.5g/100kcal以下の割合で配合されたものが更に好ましい。また下限は0.1g/100kcal以上の割合で配合されたものが好ましく、1.5g/100kcal以上の割合で配合されたものがより好ましく、2.5g/100kcal以上の割合で配合されたものが更に好ましく、3.0g/100kcal以上の割合で配合されたものが特に好ましい。
【0037】
特に、このエネルギー密度の範囲で、増粘剤としてジェランガムを使用する場合は、タンパク質含量は0.1g/100kcal以上11.5g/100kcal以下が好ましく、1.5g/100kcal以上8.5g/100kcal以下がより好ましい。増粘剤としてアルギン酸を使用する場合は、タンパク質含量は3.0g/100kcal以上11.5g/100kcal以下が好ましく、3.0g/100kcal以上8.5g/100kcal以下がより好ましい。増粘剤としてカラギーナンを使用する場合は、タンパク質含量は1.5g/100kcal以上11.5g/100kcal以下が好ましく、4.7g/100kcal以上11.5g/100kcal以下がより好ましい。増粘剤としてペクチンを使用する場合は、タンパク質含量は1.5g/100kcal以上11.5g/100kcal以下が好ましく、2.5g/100kcal以上8.5g/100kcal以下がより好ましい。
【0038】
エネルギー密度が1.0kcal/g以上1.5kcal/g未満の場合、タンパク質含量の上限が11.4gg/100kcal以下の割合で配合されたものがより好ましく、8.5g/100kcal以下の割合で配合されたものが更に好ましく、4.7g/100kcal以下の割合で配合されたものが特に好ましい。また下限は0.1g/100kcal以上の割合で配合されたものが好ましく、1.5g/100kcal以上の割合で配合されたものがより好ましく、3.5g/100kcal以上の割合で配合されたものが更に好ましい。
【0039】
特に、このエネルギー密度の範囲で、増粘剤としてジェランガムを使用する場合は、タンパク質含量は0.1g/100kcal以上11.4g/100kcal以下が好ましく、0.1g/100kcal以上3.0g/100kcal以下がより好ましい。増粘剤としてアルギン酸を使用する場合は、タンパク質含量は1.5g/100kcal以上8.5g/100kcal以下が好ましく、3.0g/100kcal以上4.7g/100kcal以下がより好ましい。増粘剤としてカラギーナンを使用する場合は、タンパク質含量は0.2g/100kcal以上11.4g/100kcal以下が好ましく、1.5g/100kcal以上8.5g/100kcal以下がより好ましい。増粘剤としてペクチンを使用する場合は、タンパク質含量は1.5g/100kcal以上8.5g/100kcal以下が好ましく、1.5g/100kcal以上3.0g/100kcal以下がより好ましい。
【0040】
エネルギー密度が1.5kcal/g以上2.0kcal/g未満の場合、タンパク質含量の上限が5.0g/100kcal未満の割合で配合されたものがより好ましく、4.7g/100kcal以下の割合で配合されたものが更に好ましく、3.0g/100kcal以下の割合で配合されたものが特に好ましい。また下限は0.1g/100kcal以上の割合で配合されたものが好ましく、1.5g/100kcal以上の割合で配合されたものがより好ましい。
【0041】
特に、このエネルギー密度の範囲で増粘剤としてジェランガムを使用する場合は、タンパク質含量は0.1g/100kcal以上3.0g/100kcal以下が好ましく、0.1g/100kcal以上2.5g/100kcal以下がより好ましい。増粘剤としてアルギン酸を使用する場合は、タンパク質含量は1.5g/100kcal以上4.9g/100kcal以下が好ましい。増粘剤としてカラギーナンを使用する場合は、タンパク質含量は0.1g/100kcal以上4.7g/100kcal以下が好ましく、1.5g/100kcal以上4.7g/100kcal以下がより好ましい。増粘剤としてペクチンを使用する場合は、タンパク質含量は1.5g/100kcal以上3.0g/100kcal以下が好ましく、1.5g/100kcal以上2.5g/100kcal以下がより好ましい。
【0042】
エネルギー密度が2.0kcal/g以上3.0kcal/g以下の場合、タンパク質含量の上限が5.0g/100kcal未満の割合で配合されたものがより好ましく、3.0g/100kcal以下の割合で配合されたものが更に好ましい。また下限は0.1g/100kcal以上の割合で配合されたものが好ましく、1.5g/100kcal以上の割合で配合されたものがより好ましい。
【0043】
特に、このエネルギー密度の範囲で増粘剤としてジェランガムを使用する場合は、タンパク質含量は0.1g/100kcal以上1.5g/100kcal以下が好ましく、0.1g/100kcal以上0.2g/100kcal以下がより好ましい。増粘剤としてアルギン酸を使用する場合は、タンパク質含量は3.0g/100kcal以上4.7g/100kcal以下が好ましい。増粘剤としてカラギーナンを使用する場合は、タンパク質含量は0.1g/100kcal以上3.0g/100kcal以下が好ましく、1.5g/100kcal程度がより好ましい。増粘剤としてペクチンを使用する場合は、タンパク質含量は1.5g/100kcal以上3.0g/100kcal以下が好ましく、1.5g/100kcal程度がより好ましい。
【0044】
本発明における乳化食品組成物の脂質の種類は、特に限定されない。脂質の種類は、動物由来の脂質、植物由来の脂質どちらでも構わない。また、両者を一定の割合で組み合わせても構わない。例えば、本発明における油脂としては、大豆油、コーン油、パーム油、サフラワー油、魚油、またはナタネ油などの天然の油脂の他、炭素数6〜12程度の中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、ドコサヘキサエン酸、またはエイコサペンタエン酸などの脂質を使用できるが、特にこれらには限定されない。また、これら数種類の脂質を組み合わせて使用してもよい。また添加量についても、特に限定されない。ただし、胃内部で良好に半固形化させる観点からは、脂質は9.0g/100kcal以下であることが好ましい。
【0045】
本発明における乳化食品組成物の糖質の種類は、特に限定されない。例えば、本発明に用いる糖質としては、グルコースなどの単糖類、ショ糖などの二糖類、フラクトオリゴ糖などのオリゴ糖、またはデキストリンなどの多糖類などが使用できるが、特にこれらには限定されない。また、これら数種類の糖質を組み合わせて使用してもよい。また、糖質の添加量は、特に限定されない。ただし、胃内部で良好に半固形化させる観点からは、糖質は20.0g/100kcal以下であることが好ましい。
【0046】
本発明における乳化食品組成物の増粘剤の種類は、乳化食品組成物を胃内部で半固形化させるものであれば、特に限定されない。ただし、増粘剤としては、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アラビアガム、コラーゲン、ゼラチン、カードランおよびポリガンマグルタミン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。それらの中でも、胃内部で乳化食品組成物を良好に半固形化させる観点からは、酸性でゲル化する増粘剤が好ましい。また、それらの中でもジェランガム、カラギーナン、ペクチン、カードラン、アルギン酸、またはアルギン酸塩が好ましい。さらに、それらの中でも、胃に入るまでは流動性を保持し、胃内部で食品組成物を良好に半固形化させる観点からは、ジェランガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸塩、またはペクチンがより好ましく、アルギン酸、アルギン酸塩、またはカラギーナンは更に好ましく、アルギン酸、アルギン酸塩が特に好ましい。
【0047】
前記ジェランガムは、シュードモナス エロデア(Pseudomonas elodea)の発酵によって産生される、グルコース、グルクロン酸、グルコース、およびラムノースの4糖の繰返し単位から構成される直鎖状の多糖類である。ただし、ジェランガムの中でも、胃内部で効果的に食品組成物を半固形化させる観点からは、脱アシル型ジェランガムが好ましい。
【0048】
前記カラギーナンとは、紅藻類から抽出される、ガラクトースとアンヒドガラクトースとを成分とする多糖類の硫酸エステルの塩類のことである。ただし、カラギーナンの中でも、胃内部で効果的に食品組成物を半固形化させる観点からは、カッパカラギーナンが好ましい。
【0049】
前記ペクチンは、エステル化度が50%以上のハイメトキシルペクチン、またはエステル化度が50%未満のローメトキシルペクチン、あるいは両者の混合物のことである。ペクチンとしては、例えば、レモン、ライム、オレンジ、グレープフルーツ等の柑橘ペクチン、またはリンゴペクチンが挙げられる。ペクチンの種類は、特に限定されない。ただし、胃内部で効果的に食品組成物を半固形化させる観点からは、ペクチンの種類は、ローメトキシルペクチンであることが好ましい。
【0050】
前記のアルギン酸またはアルギン酸塩は、海草から抽出して得られる親水コロイド性多糖類をいう。アルギン酸またはアルギン酸塩の中でも、胃に入るまでの流動性を低粘度に抑える観点からは、アルギン酸またはアルギン酸塩の1重量%水溶液(20℃)での粘度が、900cP以下のものが好ましく、600cP以下のものがより好ましく、400cP以下のものが更に好ましく、200cP以下のものが特に好ましい。
【0051】
前記寒天は、特に限定されるものではなく、一般に紅藻類から抽出して得られる、アガロースとアガロペクチンとを含有する多糖類のことである。寒天の種類としては、特に限定されるものではなく、物性の特徴として、高ゼリー強度、低ゼリー強度、易溶性、高粘度、および低粘度品等があり、何れを使用してもかまわない。
【0052】
前記キサンタンガムは、キサンゾモナス コンペストリス(Xanthomonas compestris)がグルコースなどを発酵して蓄積する多糖類である。
【0053】
前記ローカストビーンガムは、マメ科植物であるローカストツリーの種子から得られる天然性の水溶性ガムである。
【0054】
前記アラビアガムは、マメ科アカシア樹脂を乾燥して得られる多糖類である。
【0055】
前記コラーゲンは、哺乳類の真皮組織などを構成する繊維状タンパクで、加水分解されたものも含む。
【0056】
前記ゼラチンは、コラーゲンを分解・精製して製造されるものである。
【0057】
前記ポリガンマグルタミン酸は、微生物Bacillus属の食用微生物(Bacillus subtilis chungkookjang)などが産生する、食べても無害な陰イオン性の高分子である。
【0058】
前記カードランは、β―1,3−グルコース結合を主体とする多糖類であり、例えば、Alcaligenes属またはAgrobacterium属の菌が生産する多糖類が挙げられる。
【0059】
本発明において、増粘剤の添加量は、増粘剤の種類によって、適正量が変わるが、概ね、食品組成物に対して固形分換算で0.01〜20重量%が好ましい。0.01重量%より少ないと、胃中での増粘が不充分で、胃から食道へ逆流する場合がある。一方、20重量%より多いと、胃が重く感じられ、不快感を催す場合がある。ただし、乳化食品組成物を胃内部で効果的に半固形化させる観点からは、増粘剤を0.05%〜10重量%添加することがより好ましい。
【0060】
また、増粘剤としてジェランガムを用いる場合、下限として0.05重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましく、0.2重量%以上が更に好ましい。また上限として5.0重量%以下が好ましく、3.0重量%以下がより好ましく、1.5重量%以下が更に好ましく、1.0重量%以下が特に好ましい。
【0061】
増粘剤としてカラギーナンを用いる場合、下限として0.05重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましく、0.2重量%以上が更に好ましい。また上限として10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、3.0重量%以下が更に好ましく、1.0重量%以下が特に好ましい。
【0062】
増粘剤としてアルギン酸またはアルギン酸塩を用いる場合、下限として0.05重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましく、0.2重量%以上が更に好ましい。また上限として10重量%以下が好ましく、5.0重量%以下がより好ましく、3.0重量%以下が更に好ましく、1.0重量%以下が特に好ましい。
【0063】
増粘剤としてペクチンを用いる場合、下限として0.05重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましく、0.2重量%以上が更に好ましい。また上限として10重量%以下が好ましく、8.0重量%以下がより好ましく、5.0重量%以下が更に好ましく、3.0重量%以下が特に好ましい。
【0064】
本発明における乳化食品組成物のミネラル類の種類は、特に限定されない。ただし、胃に入るまでの流動性を低粘度に抑える観点からは、価数が2以上の金属イオンを含む塩類は不溶性の化合物を使用することが好ましい。更に、価数が2以上の金属イオンの中でも、カルシウムイオンとマグネシウムイオンとを含む塩類は不溶性の化合物、例えば、クエン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウム、酸化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、または水酸化マグネシウムを使用することがより好ましい。また、乳化食品組成物におけるミネラル類の濃度は、本発明の効果を阻止しない範囲で、適宜決定すればよい。
【0065】
本発明における乳化食品組成物には、乳化剤を使用することができる。使用する乳化剤の種類は、特に限定されない。乳化剤としては、例えばレシチン、リゾレシチン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、またはプロピレングリコール脂肪酸エステルがあり、単独で使用することもできるが、これらを組み合わせて使用することもできる。
また、乳化食品組成物における乳化剤の濃度は、本発明の効果を阻止しない範囲で適宜決定すればよい。
【0066】
本発明における乳化食品組成物には、香料、果汁、機能性素材、食物繊維、または消泡剤を使用することができる。香料、果汁、または機能性素材については、特に種類は限定されない。
【0067】
前記食物繊維としては、前記増粘剤以外の食物繊維を添加することができる。例えば、セルロース、小麦ふすま、大豆食物繊維、またはコーンファイバーの不溶性の食物繊維を添加することもできる。
【0068】
また、乳化食品組成物における食物繊維の濃度は、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜決定すればよい。
【実施例】
【0069】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、この実施例に何ら限定されるものではない。なお、使用する増粘剤は、市場の供給者から購入し使用することができる。
【実施例1】
【0070】
ジェランガムを含有した乳化食品組成物の調製
(1)乳化食品組成物の作成
下記の表1に示した各栄養組成の原料を用意した。
【0071】
【表1】

【0072】
* カゼインナトリウム、ナタネ油、デキストリンは下記の表2のとおりで、12種類の栄養組成の割合で栄養組成物を作製した。
【0073】
【表2】

【0074】
上記の原料をミキサーで混合後、高圧ホモジナイザー(Rannie2000型 APV社製使用)で圧力(1回目20MPa、2回目48MPa)にて均質化した。均質化した乳化食品組成物は加熱殺菌(121℃、1分)した。
【0075】
(2)増粘剤を含有する乳化食品組成物の作成
作成した各乳化食品組成物のエネルギー密度を0.5〜2.0kcal/gに調製した。次に調製した前記食品組成物にジェランガムを0.3重量%の割合で添加し、80℃まで加温し溶解させた。ジェランガムは三栄源エフ・エフ・アイ株式会社のゲルアップ(登録商標)K−S(F)を使用した。増粘剤溶解後、20℃まで前記食品組成物を冷却した。冷却後、前記食品組成物の流動性を確認した。
【0076】
(3)半固形化試験
スクリューキャップ式のチューブ(50ml容量)に、日本薬局方の崩壊試験法に基づいて作製された人工胃液(pH1.2、塩化ナトリウム2.0g/L、塩酸7.0ml/L)6mlを分注した。これに前記増粘剤含有乳化食品組成物を各10ml加え、乳化食品組成物の半固形化程度を確認した。
【0077】
前記試験の評価結果を表3〜4に示す。尚、表中、「●」は、増粘剤を添加した乳化食品組成物を20℃に冷却後、経腸栄養剤投与用のチューブを容易に通過させることができる程度の流動性を保持していること、「▲」は、前記組成物を20℃に冷却後、増粘したものの経腸栄養剤投与用のチューブを容易に通過させることができる程度の流動性を保持していること、「■」は、前記組成物を20℃に冷却後、固形化し流動性を失ったこと、「○」は、前記組成物を人工胃液に添加するとプリン状に半固形化したこと、「△」は、前記組成物を人工胃液に添加するとヨーグルト状に半固形化したこと、「×」は前記組成物を人工胃液に添加すると半固形化しなかったことを表す。
【0078】
表3〜4に示したとおり、乳化食品組成物のエネルギー密度を0.5kcal/gに調製した場合はタンパク質含量が1.5g/100kcal以上11.5g/100kcal以下の範囲内である組成物において、1.0kcal/gに調製した場合はタンパク質含量が4.0g/100kcal未満の範囲内である組成物において、1.5kcal/gに調製した場合はタンパク質含量が3.0g/100kcal未満の範囲内である組成物において、2.0kcal/gに調製した場合はタンパク質含量が1.5g/100kcal未満の範囲内である組成物において、人工胃液に添加するまでは経腸栄養剤投与用のチューブを容易に通過させることができる程度の流動性を保持しており、更に人工胃液に添加すると栄養組成物はプリン状に半固形化した。
【0079】
すなわち、増粘剤としてジェランガムを用い、上記のような栄養組成を調整することで、胃に入るまでは流動性を有し、胃内部で半固形化するため、摂取や投与が容易で更に満腹感が得られる、もしくは胃食道逆流を防止することができる。
【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【実施例2】
【0082】
カラギーナンを含有した乳化食品組成物の調製
(1)乳化食品組成物の作成
下記の表5に示した各栄養組成の原料を用意した。
【0083】
【表5】

【0084】
* カゼインナトリウム、ナタネ油、デキストリンは下記の表6のとおり、9種類の栄養組成の割合で栄養組成物を作製した。
【0085】
【表6】

【0086】
上記の原料をミキサーで混合後、高圧ホモジナイザー(Rannie2000型 APV社製使用)で圧力(1回目20MPa、2回目48MPa)にて均質化した。均質化した乳化食品組成物は加熱殺菌(121℃、1分)した。
【0087】
(2)増粘剤を含有する乳化食品組成物の作成
作成した各乳化食品組成物のエネルギー密度を0.5〜2.0kcal/gに調製した。次に調製した前記食品組成物にカラギーナンを0.2重量%の割合で添加し、80℃まで加温し溶解させた。カラギーナンは三栄源エフ・エフ・アイ株式会社のカラギニンCSM−2(F)を使用した。増粘剤溶解後、20℃まで前記食品組成物を冷却した。冷却後、前記食品組成物の流動性を確認した。
【0088】
(3)半固形化試験
スクリューキャップ式のチューブ(50ml容量)に、日本薬局方の崩壊試験法に基づいて作製された人工胃液(pH1.2、塩化ナトリウム2.0g/L、塩酸7.0ml/L)6mlを分注した。これに前記増粘剤含有乳化食品組成物を各10ml加え、乳化食品組成物の半固形化程度を確認した。
【0089】
前記試験の評価結果を表7〜8に示す。尚、表中、「●」は、増粘剤を添加した乳化食品組成物を20℃に冷却後、経腸栄養剤投与用のチューブを容易に通過させることができる程度の流動性を保持していること、「▲」は、前記組成物を20℃に冷却後、増粘したものの経腸栄養剤投与用のチューブを容易に通過させることができる程度の流動性を保持していること、「■」は、前記組成物を20℃に冷却後、固形化し流動性を失ったこと、「○」は、前記組成物を人工胃液に添加するとプリン状に半固形化したこと、「△」は、前記組成物を人工胃液に添加するとヨーグルト状に半固形化したこと、「×」は前記組成物を人工胃液に添加すると半固形化しなかったことを表す。
【0090】
表7〜8に示したとおり、乳化食品組成物のエネルギー密度を0.5kcal/gに調製した場合はタンパク質含量が1.5g/100kcal以上の範囲内である組成物において、1.0kcal/gに調製した場合はタンパク質含量が1.5g/100kcal以上11.5g/100kcal未満の範囲内である組成物において、1.5kcal/gに調製した場合はタンパク質含量が1.5g/100kcal以上8.2g/100kcal未満の範囲内である組成物において、2.0kcal/gに調製した場合はタンパク質含量が0.1g/100kcal以上4.7g/100kcal未満の範囲内である組成物において、人工胃液に添加するまでは経腸栄養剤投与用のチューブを容易に通過させることができる程度の流動性を保持しており、更に人工胃液に添加すると栄養組成物はプリン状に半固形化した。
【0091】
すなわち、増粘剤としてカラギーナンを用い、上記のような栄養組成を調整することで、胃に入るまでは流動性を有し、胃内部で半固形化するため、摂取や投与が容易で更に満腹感が得られる、もしくは胃食道逆流を防止することができる。
【0092】
【表7】

【0093】
【表8】

【実施例3】
【0094】
アルギン酸ナトリウムを含有した乳化食品組成物の調製
(1)乳化食品組成物の作成
下記の表9に示した各栄養組成の原料を用意した。
【0095】
【表9】

【0096】
* カゼインナトリウム、ナタネ油、デキストリンは下記の表10のとおり、9種類の栄養組成の割合で栄養組成物を作製した。
【0097】
【表10】

【0098】
上記の原料をミキサーで混合後、高圧ホモジナイザー(Rannie2000型 APV社製使用)で圧力(1回目20MPa、2回目48MPa)にて均質化した。均質化した乳化食品組成物は加熱殺菌(121℃、1分)した。
【0099】
(2)増粘剤を含有する乳化食品組成物の作成
作成した各乳化食品組成物のエネルギー密度を0.5〜2.0kcal/gに調製した。次に調製した前記食品組成物にアルギン酸ナトリウムを0.5重量%の割合で添加し、80℃まで加温し溶解させた。アルギン酸ナトリウムは株式会社キミカのキミカアルギンIL−2を使用した。増粘剤溶解後、20℃まで前記食品組成物を冷却した。冷却後、前記食品組成物の流動性を確認した。
【0100】
(3)半固形化試験
スクリューキャップ式のチューブ(50ml容量)に、日本薬局方の崩壊試験法に基づいて作製された人工胃液(pH1.2、塩化ナトリウム2.0g/L、塩酸7.0ml/L)6mlを分注した。これに前記増粘剤含有乳化食品組成物を各10ml加え、乳化食品組成物の半固形化程度を確認した。
前記試験の評価結果を表11〜12に示す。尚、表中、「●」は、増粘剤を添加した乳化食品組成物を20℃に冷却後、経腸栄養剤投与用のチューブを容易に通過させることができる程度の流動性を保持していること、「▲」は、前記組成物を20℃に冷却後、増粘したものの経腸栄養剤投与用のチューブを容易に通過させることができる程度の流動性を保持していること、「■」は、前記組成物を20℃に冷却後、固形化し流動性を失ったこと、「○」は、前記組成物を人工胃液に添加するとプリン状に半固形化したこと、「△」は、前記組成物を人工胃液に添加するとヨーグルト状に半固形化したこと、「×」は前記組成物を人工胃液に添加すると半固形化しなかったことを表す。
表11〜12に示したとおり、乳化食品組成物のエネルギー密度を0.5kcal/gに調製した場合はタンパク質含量が3.0g/100kcal以上11.5g/100kcal以下の範囲内である組成物において、1.0kcal/gに調製した場合はタンパク質含量が3.0g/100kcal以上11.5g/100kcal未満の範囲内である組成物において、人工胃液に添加するまでは経腸栄養剤投与用のチューブを容易に通過させることができる程度の流動性を保持しており、更に人工胃液に添加すると栄養組成物はプリン状に半固形化した。
【0101】
すなわち、増粘剤としてアルギン酸ナトリウムを用い、上記のような栄養組成を調整することで、胃に入るまでは流動性を有し、胃内部で半固形化するため、摂取や投与が容易で更に満腹感が得られる、もしくは胃食道逆流を防止することができる。
【0102】
【表11】

【0103】
【表12】

【実施例4】
【0104】
ペクチンを含有した乳化食品組成物の調製
(1)乳化食品組成物の作成
下記の表13に示した各栄養組成の原料を用意した。
【0105】
【表13】

【0106】
・ カゼインナトリウム、ナタネ油、デキストリンは下記の表14のとおり、10種類の栄養組成の割合で栄養組成物を作製した。
【0107】
【表14】

【0108】
上記の原料をミキサーで混合後、高圧ホモジナイザー(Rannie2000型 APV社製使用)で圧力(1回目20MPa、2回目48MPa)にて均質化した。均質化した乳化食品組成物は加熱殺菌(121℃、1分)した。
【0109】
(2)増粘剤を含有する乳化食品組成物の作成
作成した各乳化食品組成物のエネルギー密度を0.5〜2.0kcal/gに調製した。次に調製した前記食品組成物にペクチンを1.5重量%の割合で添加し、80℃まで加温し溶解させた。ペクチンは三晶株式会社のGENU pectin type LM−5CSJを使用した。増粘剤溶解後、20℃まで前記食品組成物を冷却した。冷却後、前記食品組成物の流動性を確認した。
【0110】
(3)半固形化試験
スクリューキャップ式のチューブ(50ml容量)に、日本薬局方の崩壊試験法に基づいて作製された人工胃液(pH1.2、塩化ナトリウム2.0g/L、塩酸7.0ml/L)6mlを分注した。これに前記増粘剤含有乳化食品組成物を各10ml加え、乳化食品組成物の半固形化程度を確認した。
【0111】
前記試験の評価結果を表15〜16に示す。尚、表中、「●」は、増粘剤を添加した乳化食品組成物を20℃に冷却後、経腸栄養剤投与用のチューブを容易に通過させることができる程度の流動性を保持していること、「▲」は、前記組成物を20℃に冷却後、増粘したものの経腸栄養剤投与用のチューブを容易に通過させることができる程度の流動性を保持していること、「■」は、前記組成物を20℃に冷却後、固形化し流動性を失ったこと、「○」は、前記組成物を人工胃液に添加するとプリン状に半固形化したこと、「△」は、前記組成物を人工胃液に添加するとヨーグルト状に半固形化したこと、「×」は前記組成物を人工胃液に添加すると半固形化しなかったことを表す。
【0112】
表15〜16に示したとおり、乳化食品組成物のエネルギー密度を0.5kcal/gに調製した場合はタンパク質含量が2.5g/100kcal以上11.5/100kcal以下の範囲内である組成物において、1.0kcal/gに調製した場合はタンパク質含量が1.5g/100kcal以上11.5g/100kcal未満の範囲内である組成物において、1.5kcal/gに調製した場合はタンパク質含量が1.5g/100kcal以上3.0g/100kcal未満の範囲内である組成物において、2.0kcal/gに調製した場合はタンパク質含量が1.5g/100kcal以上3.0g/100kcal未満の範囲内である組成物において、人工胃液に添加するまでは経腸栄養剤投与用のチューブを容易に通過させることができる程度の流動性を保持しており、更に人工胃液に添加すると栄養組成物はプリン状に半固形化した。
【0113】
すなわち、増粘剤としてペクチンを用い、上記のような栄養組成を調整することで、胃に入るまでは流動性を有し、胃内部で半固形化するため、摂取や投与が容易で更に満腹感が得られる、もしくは胃食道逆流を防止することができる。
【0114】
【表15】

【0115】
【表16】

【実施例5】
【0116】
乳化食品組成物のpHの測定
(1)乳化食品組成物の作成
下記の表17に示した各栄養組成の原料を用意した。
【0117】
【表17】

【0118】
* カゼインナトリウム、ナタネ油、デキストリンは下記の表18のとおり、12種類の栄養組成の割合で栄養組成物を作製した。
【0119】
【表18】

【0120】
上記の原料をミキサーで混合後、高圧ホモジナイザー(Rannie2000型 APV社製使用)で圧力(1回目20MPa、2回目48MPa)にて均質化した。均質化した乳化食品組成物は加熱殺菌(121℃、1分)した。殺菌後、胃酸添加前の乳化食品組成物のpHを測定した。
【0121】
スクリューキャップ式のチューブ(50ml容量)に、日本薬局方の崩壊試験法に基づいて作製された人工胃液(pH1.2、塩化ナトリウム2.0g/L、塩酸7.0ml/L)6mlを分注した。よく混合し、胃酸添加後の乳化食品組成物のpHを測定した。
【0122】
前記試験の評価結果を表19〜21に示す。尚、表中、「○」は、ジェランガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、ペクチンのいずれかの増粘剤を添加した場合、人工胃液添加前までは流動性を有し、人工胃液添加後に半固形化したこと、「×」は、ジェランガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、ペクチンのいずれかの増粘剤を添加した場合、人工胃液添加前までに流動性を失ったもしくは、人工胃液添加後に半固形化しなかったことを表す。
【0123】
表19に示したとおり、人工胃液添加前までの乳化食品組成物のpHは6.0以上であった。また、表20〜21に示したとおり、人工胃液添加前までは流動性を有し人工胃液を添加した後、半固形化する乳化食品組成物のpHは6.0以下であった。
【0124】
すなわち、人工胃液添加前まではpHが6.0以上であり、更に人工胃液添加後のpHが6.0以下になるような乳化食品組成物を調製することで、胃に入るまでは流動性を有し、胃内部で半固形化するため、摂取や投与が容易で更に満腹感が得られる、もしくは胃食道逆流を防止することができる。
【0125】
【表19】

【0126】
【表20】

【0127】
【表21】

【実施例6】
【0128】
腸内での半固形化した乳化食品組成物の崩壊実験 (1)栄養組成物の作成
下記の表22に示した各栄養組成の原料を用意した。
【0129】
【表22】

【0130】
【表23】

【0131】
【表24】

【0132】
【表25】

【0133】
上記の原料をミキサーで混合後、高圧ホモジナイザー(Rannie2000型 APV社製使用)で圧力(1回目20MPa、2回目50MPa)にて均質化した。均質化した乳化栄養組成物は加熱殺菌(121℃、20分)した。
【0134】
(2)乳化食品組成物の半固形化
スクリューキャップ式のチューブ(50ml容量)に、37℃に加温した日本薬局方の崩壊試験法に基づいて作製された人工胃液(pH1.2、塩化ナトリウム2.0g/L、塩酸7.0ml/L)20mlを分注した。これに前記食品組成物を10ml加え、前記食品組成物を半固形化した。半固形化した前記食品組成物を40メッシュのふるいを用いて、ろ過により採取した。
【0135】
(3)崩壊試験
スクリューキャップ式のチューブ(15ml容量)に、37℃に加温した日本薬局方の崩壊試験法に基づいて作製された人工腸液(pH6.8、0.2mol リン酸二水素カリウム250ml/L、0.2mol水酸化ナトリウム118ml/L)10mlを分注した。これに半固形化した食品組成物を1.5g加えた。比較試験として人工胃液を10ml分注し、これに半固形化した食品組成物を1.5g加えた。
【0136】
崩壊試験は(1)37℃、1時間静置保存、(2)37℃、1時間、10rpm振とう(ハイブリオーブンMHS−2000)の二条件で行った。
【0137】
前記試験の評価結果を表26に示す。尚、表中、「○」は、半固形化した食品組成物がほぼすべて崩壊したこと、「△」は、半固形化した食品組成物が一部崩壊したこと、「×」は半固形化した食品組成物が崩壊しなかったことを表す。
【0138】
表26に示したとおり、人工腸液に添加した半固形化した食品組成物は静置保存した場合においても、振とうした場合においても崩壊した。
【0139】
すなわちこの食品組成物は胃内部では半固形化するが、腸内では再度崩壊するため、栄養成分は問題なく吸収されると考えられる。
【0140】
【表26】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも蛋白質、脂質、糖質および増粘剤が配合されており、胃に入るまでは流動性を有しているが、胃内部で半固形化する乳化食品組成物。
【請求項2】
エネルギー密度が0.1kcal/g以上3.0kcal/g以下である請求項1に記載の乳化食品組成物。
【請求項3】
エネルギー密度が0.5kcal/g以上1.0kcal/g未満の場合、タンパク質含量が0.1g/100kcal以上11.5g/100kcal以下である請求項1〜2のいずれかに記載の乳化食品組成物。
【請求項4】
エネルギー密度が1.0kcal/g以上1.5kcal/g未満の場合、タンパク質含量が0.1g/100kcal以上11.4g/100kcal以下である請求項1〜2のいずれかに記載の乳化食品組成物。
【請求項5】
エネルギー密度が1.5kcal/g以上2.0kcal/g未満の場合、タンパク質含量が0.1g/100kcal以上4.9g/100kcal以下である請求項1〜2のいずれかに記載の乳化食品組成物。
【請求項6】
エネルギー密度が2.0kcal/g以上3.0kcal/g未満の場合、タンパク質含量が0.1g/100kcal以上4.7g/100kcal以下である請求項1〜2のいずれかに記載の乳化食品組成物。
【請求項7】
前記増粘剤が、酸性でゲル化する増粘剤である請求項1〜6のいずれかに記載の乳化食品組成物。
【請求項8】
前記増粘剤が、ジェランガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸塩、およびペクチンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれか1項に記載の乳化食品組成物。
【請求項9】
前記増粘剤を固形分換算で0.01〜20重量%含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の乳化食品組成物。
【請求項10】
前記増粘剤がジェランガムであって、固形分換算で0.05〜5.0重量%である請求項1〜9のいずれか1項に記載の乳化食品組成物。
【請求項11】
前記増粘剤がカラギーナンであって、固形分換算で0.05〜10.0重量%である請求項1〜9のいずれか1項に記載の乳化食品組成物。
【請求項12】
前記増粘剤がアルギン酸またはアルギン酸塩であって、固形分換算で0.05〜10.0重量%である請求項1〜9のいずれか1項に記載の乳化食品組成物。
【請求項13】
前記増粘剤がペクチンであって、固形分換算で0.05〜10.0重量%である請求項1〜9のいずれか1項に記載の乳化食品組成物。
【請求項14】
胃に入るまでのpHが3.0以上である請求項1〜13のいずれか1項に記載の乳化食品組成物。
【請求項15】
胃内部で胃酸と混ざり合った後のpHが6.0以下である請求項1〜14のいずれか1項に記載の乳化食品組成物。
【請求項16】
摂取または投与された後、胃内部で半固形化するが、腸内で再度崩壊することを特徴する請求項1〜15のいずれか1項に記載の乳化食品組成物。

【公開番号】特開2011−147444(P2011−147444A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285355(P2010−285355)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】