説明

乳房画像撮影装置

【課題】フェイスガードを備えた乳房画像撮影装置において、フェイスガードの位置を被検者の顔の位置に維持して被検者の体勢を安定な状態とするとともに、さらに無駄にフェイスガードを動かすことなく、より簡易な構成によって使いやすさ、耐久性などを向上する。
【解決手段】アーム部13に対して被検者の顔に放射線が照射されるのを防ぐための遮蔽部材21を設け、遮蔽部材21に被検者の顔が当接している場合にはアーム部13に対して遮蔽部材21を相対的に移動可能に支持し、遮蔽部材21に被検者の顔が当接していない場合にはアーム部13に対して遮蔽部材21を固定して支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の乳房に対して互いに異なる2つの撮影方向からそれぞれ放射線を照射することによって撮影方向毎の放射線画像を検出する乳房画像撮影装置に関するものであり、特に、被検者の顔に放射線が照射されるのを防止するフェイスガードを備えた乳房画像撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の画像を組み合わせて表示することにより、視差を利用して立体視できることが知られている。このような立体視できる画像(以下、立体視画像またはステレオ画像という)は、同一の被写体を異なる方向から撮影して取得された互いに視差のある複数の画像に基づいて生成される。
【0003】
そして、このような立体視画像の生成は、デジタルカメラやテレビなどの分野だけでなく、放射線画像撮影の分野においても利用されている。すなわち、被検者に対して互いに異なる方向から放射線を照射し、その被検者を透過した放射線を放射線画像検出器によりそれぞれ検出して互いに視差のある複数の放射線画像を取得し、これらの放射線画像に基づいて立体視画像を生成することが行われている。そして、このように立体視画像を生成することによって奥行感のある放射線画像を観察することができ、より診断に適した放射線画像を観察することができる。このような立体視画像を生成する放射線画像撮影装置の一つとしてマンモグラフィ撮影装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−231054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、乳房画像を撮影するマンモグラフィ撮影装置においては、被検者の上方に設置された放射線源ユニットから乳房に向けて放射線の照射が行われるが、放射線源ユニットから射出された放射線が被検者の顔に照射されるのを防止するため、たとえば、放射線源ユニットに対してフェイスガードが設置されている。
【0006】
そして、乳房を固定され無理な体勢を強いられた被検者は、上述したフェイスガードに頭部を密着させることで安定した体勢を維持していることが多い。
【0007】
しかしながら、上述したような互いに異なる撮影方向から放射線を照射して立体視画像を撮影するマンモグラフィ撮影装置においては、放射線源ユニットを被検者からみて左右方向に移動させる必要があるため、放射線源ユニットの移動にともなってフェイスガードが被検者の顔の位置から離れた位置に移動することになり、被検者が姿勢を維持できず不安定な状態になるおそれがあり危険である。
【0008】
そこで、特許文献1においては、フェイスガードが被検者の顔の位置で留まるように放射線源ユニットの移動方向とは逆の方向にフェイスガードが移動するようにフェイスガードの駆動手段を設けることが提案されている。この駆動手段としては、たとえばフェイスガードを摺動させる電動式ローラや電動式歯車などが提案されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の装置のように放射線源ユニットの移動にともなって必ずフェイスガードを移動させるようにしたのでは、たとえば、放射線画像の撮影を行わないメンテナンス時やキャリブレーション時などにもフェイスガードが無駄に動くことになって邪魔になったりするとともに、耐久性の観点からもあまり好ましくない。
【0010】
また、特許文献1においては、フェイスガードを移動可能とするために電動式ローラや電動式歯車を設けるようにしているが、フェイスガードを移動可能とするための機構はより簡易な構成であることがコストの観点からも望ましい。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑み、フェイスガードを備えた乳房画像撮影装置において、フェイスガードの位置を被検者の顔の位置に維持して被検者の体勢を安定な状態とするとともに、さらに無駄にフェイスガードを動かすことなく、より簡易な構成によって使いやすさ、耐久性などを向上することができる乳房画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の乳房画像撮影装置は、放射線源を被検者の前方で左右方向に移動させるアーム部を備え、該アーム部による放射線源の移動によって被検者の乳房の上方の互いに異なる撮影方向からそれぞれ放射線を照射する放射線照射部と、該放射線照射部の放射線の照射による撮影方向毎の放射線画像を検出する放射線画像検出器とを備えた乳房画像撮影装置において、アーム部に対して被検者の顔に放射線が照射されるのを防ぐための遮蔽部材が設けられ、遮蔽部材が、遮蔽部材に被検者の顔が当接している場合にはアーム部に対して相対的に移動可能に支持され、遮蔽部材に被検者の顔が当接していない場合にはアーム部に対して固定して支持されるように構成されたものであることを特徴とする。
【0013】
また、上記本発明の乳房画像撮影装置においては、所定の部材に係合することによって遮蔽部材の移動を規制する係止部を設け、その係止部を、遮蔽部材に被検者の顔が当接している場合には上記部材に係合せず、遮蔽部材に被検者の顔が当接していない場合には上記部材に係合するものとできる。
【0014】
また、遮蔽部材に被検者の顔が接触していることを検出するセンサ部と、センサ部による検出結果に応じて、係止部を駆動する係止部駆動部とを設けることができる。
【0015】
また、係止部を、遮蔽部材に被検者の顔の当接することにより生じた力によって部材への係合が解除されるものとできる。
【0016】
また、遮蔽部材へ被検者の顔が当接しているか否かに応じて伸縮する弾性部材を設け、係止部を、弾性部材の伸縮によって上記部材へ係合したり、該係合が解除されたりするものとできる。
【0017】
また、遮蔽部材を、該遮蔽部材に被検者の顔が当接している間は該被検者の顔の位置から動かないものとできる。
【0018】
また、係止部と係合する溝を有する溝形成部材をアーム部に対して固定して設置することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の乳房画像撮影装置によれば、アーム部に対して被検者の顔に放射線が照射されるのを防ぐための遮蔽部材を設け、遮蔽部材に被検者の顔が当接している場合にはアーム部に対して遮蔽部材を相対的に移動可能に支持し、遮蔽部材に被検者の顔が当接していない場合にはアーム部に対して遮蔽部材を固定して支持するようにしたので、遮蔽部材に被検者の顔が当接している場合、すなわち放射線画像の撮影中においては、遮蔽部材の位置を被検者の顔の位置に維持して被検者の体勢を安定な状態とすることができ、一方、遮蔽部材に被検者の顔が当接していない場合、すなわち放射線画像の撮影を行っていないメンテナンス時やキャリブレーション時には、無駄にフェイスガードを動かさないので、使いやすさや耐久性を向上させることができる。
【0020】
また、上記本発明の乳房画像撮影装置において、所定の部材に係合することによって遮蔽部材の移動を規制する係止部を設け、遮蔽部材に被検者の顔が当接している場合には係止部が上記部材に係合せず、遮蔽部材に被検者の顔が当接していない場合には係止部が上記部材に係合するものとした場合には、より簡易な構成で遮蔽部材の移動を規制することができ、コストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の乳房画像撮影装置の一実施形態を用いた乳房画像撮影表示システムの概略構成図
【図2】図1に示す乳房画像撮影表示システムにおいて放射線源ユニットを移動させた状態を示す図
【図3】放射線源ユニットの移動とフェイスガードの位置との関係の一例を示す図
【図4】フェイスガードの移動を規制するための具体的な構成の一例を示す図
【図5】図1に示す乳房画像撮影表示システムのコンピュータ内部の概略構成を示すブロック図
【図6】本発明の乳房画像撮影装置の一実施形態を用いた乳房画像撮影表示システムの作用を説明するためのフローチャート
【図7】フェイスガードの移動を規制するための具体的な構成のその他の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の乳房画像撮影装置の一実施形態を用いた乳房画像撮影表示システムについて説明する。図1は、本実施形態の乳房画像撮影表示システム全体の概略構成を示す図である。
【0023】
本実施形態の乳房画像撮影表示システム1は、図1に示すように、乳房画像撮影装置10と、乳房画像撮影装置10に接続されたコンピュータ2と、コンピュータ2に接続されたモニタ3および入力部4とを備えている。
【0024】
乳房画像撮影装置10は、図1に示すように、基台11と、基台11に対し上下方向(Z方向)に移動可能であり、かつ回転可能な回転軸12と、回転軸12により基台11と連結されたアーム部13を備えている。図2には、図1の右方向から見たアーム部13を示している。
【0025】
アーム部13はアルファベットのCの形をしており、その一端には乳房が設置される撮影台14が、その他端には撮影台14と対向するように放射線源ユニット16が取り付けられている。アーム部13の上下方向の移動は、基台11に組み込まれたアームコントローラ31により制御される。
【0026】
撮影台14の内部には、フラットパネルディテクタ等の放射線画像検出器15と、放射線画像検出器15からの電荷信号の読み出しなどを制御する検出器コントローラ33が備えられている。
【0027】
また、撮影台14の内部には、放射線画像検出器15から読み出された電荷信号を電圧信号に変換するチャージアンプや、チャージアンプから出力された電圧信号をサンプリングする相関2重サンプリング回路や、電圧信号をデジタル信号に変換するAD変換部などが設けられた回路基板なども設置されている。
【0028】
放射線画像検出器15は、放射線画像の記録と読出しを繰り返して行うことができるものであり、放射線の照射を直接受けて電荷を発生する、いわゆる直接型の放射線画像検出器を用いてもよいし、放射線を一旦可視光に変換し、その可視光を電荷信号に変換する、いわゆる間接型の放射線画像検出器を用いるようにしてもよい。また、放射線画像信号の読出方式としては、TFT(thin film transistor)スイッチをオン・オフされることによって放射線画像信号が読みだされる、いわゆるTFT読出方式のものや、読取光を照射することによって放射線画像信号が読み出される、いわゆる光読出方式のものを用いることができるが、これに限らずその他のものを用いるようにしてもよい。
【0029】
放射線源ユニット16の中には放射線源17と放射線源コントローラ32とが収納されている。放射線源コントローラ32は、放射線源17から放射線を照射するタイミングと、放射線源17における放射線発生条件(管電流、時間、管電圧等)を制御するものである。
【0030】
また、アーム部13の中央部には、撮影台14の上方に配置され、乳房を押さえつけて圧迫する圧迫板18と、その圧迫板18を支持する支持部20と、支持部20を上下方向に移動させる移動機構19が設けられている。圧迫板18の位置、圧迫圧は、圧迫板コントローラ34により制御される。
【0031】
また、放射線源ユニット16の被検者M側の面には、被検者Mの顔や首に放射線が照射されるのを防ぐためのフェイスガード21が支持部材22を介して設けられている。フェイスガード21は放射線を吸収する鉛や銅などの部材を用いて形成された板状のものであり、放射線画像の撮影は、このフェイスガード21に被検者Mの顔が押し当てられた状態で行われる。このようにフェイスガード21に被検者Mの顔を押し当てることによって、上述したよう被検者Mの被曝を防止することができるとともに、被検者Mの体勢を安定した状態にすることができる。なお、フェイスガード21の材料としては、鉛含有のガラスや樹脂(アクリル樹脂など)なども用いることができ、これらの材料を用いた場合には、フェイスガード21を透明にすることができるので、被検者Mが安心感を持つことができるという効果がある。
【0032】
ここで、本実施形態の乳房画像撮影装置10は、被検者Mの乳房を互いに異なる2つの撮影方向から撮影するステレオ撮影を行うものである。そして、このステレオ撮影を行う際、図2に示すように、アーム部13が回転軸12を中心として回転し、これにより被検者Mの前方で放射線源ユニット16が左右方向に移動するが、このときフェイスガード21も放射線源ユニット16と連動して左右方向に移動したのでは、上述したようにフェイスガード21には被検者Mの顔が押し当てられた状態なので、被検者Mの体勢が不安定となってしまう。
【0033】
そこで、本実施形態の乳房画像撮影装置10においては、放射線源ユニット16が左右方向に移動したとしてもフェイスガード21の位置が変わらないようにしている。すなわち、放射線源ユニット16に対してフェイスガード21が相対的に移動可能なように構成されている。
【0034】
一方、上述したように放射線画像の撮影を行う際には、フェイスガード21を放射線源ユニット16に対して相対的に移動させる必要があるが、放射線画像の撮影を行っていない間にまでフェイスガード21が移動したのでは無駄にフェイスガード21が移動することになるので、上述したように使いやすさや耐久性の観点から好ましくない。
【0035】
そこで、本実施形態の乳房画像撮影装置10は、放射線画像の撮影を行う場合、すなわち被検者Mの顔がフェイスガード21に当接している場合には、フェイスガード21が放射線源ユニット16に対して相対的に移動可能に構成されるとともに、放射線画像の撮影を行わない場合、すなわち被検者Mの顔がフェイスガード21に当接していない場合にはフェイスガード21が放射線源ユニット16に対して固定されるように構成されている。その具体的な構成を以下に説明する。
【0036】
まず、図3に示すように、放射線源ユニット16の筐体のフェイスガード21の取り付け面には、フェイスガード21の位置が固定された状態で放射線源ユニット16が移動可能なように、フェイスガード21を支持する支持部材22が通過するための開口16aが形成されている。
【0037】
そして、フェイスガード21を支持する支持部材22は、放射線源ユニット16の内部において、放射線源ユニット16に移動に応じて放射線源ユニット16に対して移動可能に設置されている。
【0038】
また、放射線源ユニット16内には、図4に示すような円弧形状のレール部材16bと、溝形成部材16cとが支持部材22を上下で挟むような状態で固定して設置されている。そして、フェイスガード21の支持部材22は、レール部材16b上を摺動しながら移動するものである。溝形成部材16cには、図4に示すように、支持部材22側の面に溝16dが形成されている。なお、支持部材22は、レール部材16b上を自由に移動できるように構成されており、支持部材22を動かすための駆動手段などは特に設けられていない。
【0039】
また、フェイスガード21には、図3に示すように、フェイスガード21に被検者Mの顔が接触したことを検出する接触センサ部21aが設けられている。接触センサ部21aとしては、たとえば圧電素子を用いたセンサなどを利用することができる。
【0040】
そして、フェイスガード21の支持部材22には、図4に示すように、上述した接触センサ部21aによる検出結果に基づいて、支持部材22から突出したり、支持部材22に埋入したりする係止部23が設けられている。この係止部23は、支持部材22から突出した際には、支持部材22の上側に設けられた溝形成部材16cの溝16dに係合し、支持部材22に埋入した際には溝形成部材16cの溝16dに係合しないような長さで形成されている。なお、この係止部23の動作については、後で詳述する。
【0041】
図1に示すコンピュータ2は、中央処理装置(CPU)および半導体メモリやハードディスクやSSD等のストレージデバイスなどを備えており、これらのハードウェアによって、図5に示すような制御部40、放射線画像記憶部41、表示制御部42およびフェイスガード移動制御部43が構成されている。
【0042】
制御部40は、各種のコントローラ31〜34に対して所定の制御信号を出力し、システム全体の制御を行うものである。具体的な制御方法については後で詳述する。
【0043】
放射線画像記憶部41は、互いに異なる2つの撮影方向からの撮影によって放射線画像検出器15によって検出された2枚の放射線画像信号を記憶するものである。
【0044】
表示制御部42は、放射線画像記憶部41から読み出された放射線画像信号に対して所定の信号処理を施した後、モニタ3に乳房のステレオ画像を表示させるものである。
【0045】
なお、図5に示す係止部駆動部35は、図4に示した係止部23を駆動するものであり、放射線源ユニット16内に設けられるものである。そして、フェイスガード移動制御部43からの制御信号に基づいて係止部23を駆動するものである。係止部駆動部35としては、既知のアクチュエーターを用いることができる。
【0046】
図1に示す入力部4は、たとえば、キーボードやマウスなどのポインティングデバイスから構成されるものであり、撮影者による撮影条件や撮影開始指示の入力などを受け付けるものである。
【0047】
図1に示すモニタ3は、コンピュータ2から出力された2つの放射線画像信号を用いてステレオ画像を表示可能なように構成されたものである。ステレオ画像を表示する構成としては、たとえば、2つの画面を用いて2つの放射線画像信号に基づく放射線画像をそれぞれ表示させて、これらをハーフミラーや偏光グラスなどを用いることで一方の放射線画像は観察者の右目に入射させ、他方の放射線画像は観察者の左目に入射させることによってステレオ画像を表示する構成を採用することができる。または、たとえば、2つの放射線画像を所定の視差量だけずらして重ね合わせて表示し、これを偏光グラスで観察することでステレオ画像を生成する構成としてもよいし、もしくはパララックスバリア方式およびレンチキュラー方式のように、2つの放射線画像を立体視可能な3D液晶に表示することによってステレオ画像を生成する構成としてもよい。
【0048】
次に、本実施形態の乳房画像撮影表示システムの作用について、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0049】
まず、撮影台14の上に被検者Mの乳房が設置され、圧迫板18により乳房が所定の圧力によって圧迫されるとともに(S10)、被検者Mの頭部がフェイスガード21に対して押し当てられて設置される(S12)。
【0050】
ここで、上述したように被検者Mの頭部がフェイスガード21に対して押し当てられる前においては、図4の上図に示すように、フェイスガード21を支持する支持部材22から係止部23が矢印A方向に突出することによって溝形成部材16cの溝16dと係合した状態となっており、これによって支持部材22およびフェイスガード21が放射線源ユニット16に対して固定された状態となっている。
【0051】
そして、上述したように被検者Mの頭部がフェイスガード21に対して押し当てられると、フェイスガード21に設けられた接触センサ部21aによって被検者Mの顔が接触したことが検出され(S14)、その顔の接触を示す検出信号がコンピュータ2のフェイスガード移動制御部43に出力される。
【0052】
フェイスガード移動制御部43は、顔の接触を示す検出信号が入力されると、これに応じて係止部駆動部35を駆動させ、図4の下図に示すように係止部23を矢印B方向に移動させてフェイスガード21の支持部材22内に埋入させる。この係止部23の解除によって支持部材22が移動可能に支持されるようになる(S16)。
【0053】
次に、撮影者によって入力部4を用いて撮影開始の指示があると、ステレオ画像を構成する2枚の放射線画像のうちの1枚目の放射線画像の撮影が行われる(S18)。
【0054】
具体的には、まず、制御部40が、予め設定されたステレオ画像の撮影のための撮影角度θを読み出し、その読み出した撮影角度θの情報をアームコントローラ31に出力する。なお、本実施形態においては、このときの撮影角度θの情報としてθ=0°とθ=4°が予め記憶されているものとするが、これに限らず、撮影者によって入力部4において任意の撮影角度を設定可能である。
【0055】
そして、アームコントローラ31において、制御部40から出力された撮影角度θ=0°とθ=4°の情報が受け付けられ、アームコントローラ31は、まず、θ=0°の情報に基づいて、図2に示すようにアーム部13が撮影台14に対して垂直な方向となるように制御信号を出力する。
【0056】
そして、このアームコントローラ31から出力された制御信号に応じてアーム部13が、撮影台14に対して垂直な方向となった状態において、制御部40は、放射線源コントローラ32および検出器コントローラ33に対して放射線の照射と放射線画像信号の読出しを行うよう制御信号を出力する。この制御信号に応じて、放射線源17から放射線が射出され、乳房を0°方向から撮影した放射線画像が放射線画像検出器15によって検出され、検出器コントローラ33によって放射線画像信号が読み出され、その放射線画像信号に対して所定の信号処理が施された後、コンピュータ2の放射線画像記憶部41に記憶される(S20)。
【0057】
次に、ステレオ画像を構成する2枚の放射線画像のうちの2枚目の放射線画像の撮影が行われる。
【0058】
具体的には、アームコントローラ31は、図2に示すように、アーム部13を撮影台14に垂直な方向に対して+θ°回転するよう制御信号を出力する。すなわち、本実施形態においては、アーム部13を撮影台14に垂直な方向に対して4°回転するよう制御信号を出力する。
【0059】
アーム部13は、アームコントローラ31から出力された制御信号に基づいて4°の方向に移動し、これにより放射線源ユニット16も4°の方向に移動する(S22)。このとき上述したようにフェイスガード21の支持部材22は放射線源ユニット16に対して移動可能な状態で支持されているので、図4の下図に示すように、放射線源ユニット16に固定設置されたレール部材16bおよび溝形成部材16cは放射線源ユニット16と連動して矢印C方向に移動するが、フェイスガード21の支持部材22は放射線源ユニット16に連動して動くことはない。したがって、このときフェイスガード21も放射線源ユニット16に連動して動くことなく、フェイスガード21に対して被検者Mの顔が押し当てられた状態が維持され、被検者Mの体勢も維持される。
【0060】
そして、アームコントローラ31から出力された制御信号に応じてアーム部13が4°回転した状態において、制御部40は、放射線源コントローラ32および検出器コントローラ33に対して放射線の照射と放射線画像信号の読出しを行うよう制御信号を出力する。そして、この制御信号に応じて、放射線源17から放射線が射出され、乳房を4°方向から撮影した放射線画像が放射線画像検出器15によって検出され、検出器コントローラ33によって放射線画像信号が読み出され、所定の信号処理が施された後、コンピュータ2の放射線画像記憶部41に記憶される(S24、S26)。
【0061】
そして、放射線画像記憶部41に記憶された2枚の放射線画像信号が読み出され、表示制御部42においてこれらの放射線画像信号に対して所定の処理が施された後、モニタ3に出力され、モニタ3において、右目用放射線画像と左目用放射線画像とがそれぞれ表示されて乳房のステレオ画像が表示される(S28)。
【0062】
そして、上述したようなステレオ画像の撮影が終了すると、アーム部13が再び0°の方向に戻された後、圧迫板18による乳房の圧迫が解除されるとともに、被検者Mの頭部もフェイスガード21から離される。これによりフェイスガード21に設けられた接触センサ部21aによってフェイスガード21に被検者Mの顔が接触していないことが検出され、その非接触を示す検出信号がコンピュータ2のフェイスガード移動制御部43に出力される(S30)。
【0063】
フェイスガード移動制御部43は、非接触を示す検出信号が入力されると、これに応じて係止部駆動部35を駆動させ、図4の上図に示すように係止部23を矢印A方向に移動させてフェイスガード21の支持部材22から突出させる。そして、支持部材22から突出した係止部23が溝形成部材16cに係合することによって支持部材22が放射線源ユニット16に固定され、これによりフェイスガード21が放射線源ユニット16に固定される(S32)。
【0064】
また、上記実施形態においては、フェイスガード21に顔が当接したことを接触センサ部21aによって検出し、その検出結果に基づいてフェイスガード21の移動を制御するようにしたが、必ずしも顔の当接を検出するものを設ける必要はなく、機械的な構成によってフェイスガード21の移動を制御するようにしてもよい。
【0065】
具体的には、たとえば、図7に示すように、フェイスガード50に対して支持部材51とその支持部材51に接続されたバネ部材52と係止部53とを設けるとともに、放射線源ユニット16内にレール部材60と溝形成部材61とをフェイスガード50に対して垂直方向に平行に並べて固定設置する。
【0066】
レール部材60と溝形成部材61とは、放射線源ユニット16の移動経路に応じた円弧形状で形成されており、溝形成部材61のフェイスガード50側とは反対側の面に縦方向の溝が形成されている。
【0067】
支持部材51は、柱部51aと板部51bとから構成されている。柱部51aの先端は半球形状で形成されており、レール部材60上を摺動可能に形成されている。板部51bにはバネ部材52が接続されており、このバネ部材52がフェイスガード50を付勢するように構成されている。
【0068】
そして、フェイスガード50には収容部50aが形成されており、この収容部50a内に支部部材51の板部51bとバネ部材52が収容されている。収容部50aの面50bには穴50cが形成されており、この穴50cを支持部材51の柱部51aが貫入するように構成されている。そして、上述したように支持部材51の板部51bに接続されたバネ部材52によってフェイスガード50が板部51bから離れる方向に付勢されるが、収容部50aの面50bと支部部材51の板部51bとが当接することによってフェイスガード50と板部51bとの間が所定距離となるように構成されている。
【0069】
さらに、フェイスガード50には、被検者Mの顔が接触する面50d側とは反対側に向かって伸びる部材50eが形成されており、この部材50eの先端に係止部53が形成されている。そして、フェイスガード50がバネ部材52によって付勢されることによって部材50eおよび係止部53も一体的に付勢され、これにより係止部53が溝形成部材61の溝に係合するように構成されている。
【0070】
そして、図7の下図に示すように、被検者Mの顔がフェイスガード50の押し当てられると、この押し当てられた力によってバネ部材52が縮み、これによりフェイスガード50と部材50eと係止部53とが図7の左方向、すなわち係止部53が溝形成部材61から離れる方向に一体的に移動する。そして、この移動によって係止部53と溝形成部材61の溝との係合が解除され、フェイスガード50が放射線源ユニット16に対して相対的に移動可能となるように構成されている。なお、この構成においても、係止部53と溝形成部材61の溝との係合が解除された際、フェイスガード50は自由に移動可能なように支持されており、フェイスガード50を移動させるための駆動手段などは特に設けられていないものとする。
【0071】
そして、再び、被検者Mの顔がフェイスガード50から離れると図7の上図に示す状態となり、溝形成部材61に係止部53が係合することによってフェイスガード50が放射線源ユニット16に固定されるように構成されている。
【0072】
なお、上述した機械的な構成においてはバネ部材52を用いるようにしたが、その他の弾性部材を用いるようにしてもよく、たとえば、伸縮するゴム部材などを用いるようにしてもよい。
【0073】
また、上述したような機械的な構成に限らず、要は、被検者Mの顔がフェイスガードに当接している間はフェイスガードが放射線源ユニットに対して相対的に移動可能とし、被検者Mの顔がフェイスガードに当接していない間はフェイスガードが放射線源ユニットに対して固定される構成であれば、その他の如何なる機械的な構成を採用するようにしてもよい。
【0074】
また、上記実施形態は、本発明の乳房画像撮影装置を、乳房のステレオ画像の撮影装置に適用したものであるが、これに限らず、被検者の前方を左右方向に放射線源を移動させることにより複数の撮影方向から放射線画像の撮影を行う装置であればその他の装置にも適用可能であり、たとえば、このような装置としてトモシンセシス撮影装置がある。
【0075】
また、上記実施形態においては、フェイスガード21に顔が当接しているか否かに応じてフェイスガード21のアーム部13に対する移動を制御するようにしたが、これに限らず、たとえば、放射線源17の電源のオン・オフに応じてフェイスガード21のアーム部13に対する移動を制御するようにしてもよい。
【0076】
すなわち、放射線源17の電源がオフ状態であるということは、放射線画像の非撮影時であり、このときはフェイスガード21がアーム部13に対して固定された状態であることが望ましい。したがって、放射線源17の電源がオフ状態である情報をフェイスガード移動制御部43が取得し、その情報に基づいてフェイスガード21がアーム部13に対して固定されるように制御するようにしてもよい。なお、このときアーム部13自体は、種々の調整等を行うために移動可能である。
【0077】
一方、放射線源17の電源がオン状態であるということは、放射線画像の撮影時であり、このときはフェイスガード21がアーム部13に対して移動可能の支持された状態であることが望ましい。したがって、放射線源17の電源がオン状態である情報をフェイスガード移動制御部43が取得し、その情報に基づいてフェイスガード21がアーム部13に対して移動可能に支持されるように制御するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 乳房画像撮影表示システム
2 コンピュータ
3 モニタ
4 入力部
10 乳房画像撮影装置
13 アーム部
14 撮影台
15 放射線画像検出器
16 放射線源ユニット
16a 開口
16b レール部材
16c 溝形成部材
16d 溝
17 放射線源
18 圧迫板
21 フェイスガード
21a 接触センサ部
22 支持部材
23 係止部
43 フェイスガード移動制御部
50 フェイスガード
50a 収容部
50c 穴
51 支持部材
51a 柱部
51b 板部
52 バネ部材
53 係止部
60 レール部材
61 溝形成部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源を被検者の前方で左右方向に移動させるアーム部を備え、該アーム部による前記放射線源の移動によって前記被検者の乳房の上方の互いに異なる撮影方向からそれぞれ放射線を照射する放射線照射部と、該放射線照射部の前記放射線の照射による前記撮影方向毎の放射線画像を検出する放射線画像検出器とを備えた乳房画像撮影装置において、
前記アーム部に対して前記被検者の顔に前記放射線が照射されるのを防ぐための遮蔽部材が設けられ、
前記遮蔽部材が、前記遮蔽部材に前記被検者の顔が当接している場合には前記アーム部に対して相対的に移動可能に支持され、前記遮蔽部材に前記被検者の顔が当接していない場合には前記アーム部に対して固定して支持されるように構成されたものであることを特徴とする乳房画像撮影装置。
【請求項2】
所定の部材に係合することによって前記遮蔽部材の移動を規制する係止部を備え、
該係止部が、前記遮蔽部材に前記被検者の顔が当接している場合には前記部材に係合せず、前記遮蔽部材に前記被検者の顔が当接していない場合には前記部材に係合するものであることを特徴とする請求項1記載の乳房画像撮影装置。
【請求項3】
前記遮蔽部材に前記被検者の顔が接触していることを検出するセンサ部と、
該センサ部による検出結果に応じて、前記係止部を駆動する係止部駆動部とを備えたことを特徴とする請求項2記載の乳房画像撮影装置。
【請求項4】
前記係止部が、前記遮蔽部材に前記被検者の顔の当接することにより生じた力によって前記部材への係合が解除されるものであることを特徴とする請求項2記載の乳房画像撮影装置。
【請求項5】
前記遮蔽部材へ前記被検者の顔が当接しているか否かに応じて伸縮する弾性部材を備え、
前記係止部が、前記弾性部材の伸縮によって前記部材へ係合したり、該係合が解除されたりするものであることを特徴とする請求項4記載の乳房画像撮影装置。
【請求項6】
前記遮蔽部材が、該遮蔽部材に前記被検者の顔が当接している間は該被検者の顔の位置から動かないものであることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の乳房画像撮影装置。
【請求項7】
前記係止部と係合する溝を有する溝形成部材が前記アーム部に対して固定して設置されていることを特徴とする請求項2から5いずれか1項記載の乳房画像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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