説明

乳白色無機顔料

【課題】安価で、しかも水または浴湯での良好な分散性を得ることのできる乳白色無機顔料を提供する。
【解決手段】白色無機顔料とショ糖脂肪酸エステルとアニオン性界面活性剤、または白色無機顔料とショ糖脂肪酸エステルとアニオン性界面活性剤と非イオン水溶性高分子化合物からなり、白色無機顔料の含有量を90〜99質量%にした乳白色無機顔料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴剤や水分散性化粧料に配合される乳白色無機顔料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、白色の無機顔料は、そのまま水や浴湯に分散させようとしてもうまく分散しない。そのため浴用剤や化粧料に配合される乳白色無機顔料は、浴湯での分散性を向上させるために無機顔料とHLB値を選択した界面活性剤とを混合処理するか、あるいは表面処理して用いられている。
【0003】
また、十分な分散性を得るためには多量の界面活性剤を配合しなければならない(特許文献1,2参照)。しかしながら、界面活性剤を多く配合すると、得られる乳白色無機顔料はやわらかくなり、アトマイザーのような一般的な粉砕機を用いての解砕が困難になるため、冷送風装置などを備えた特殊な粉砕機を用いなければならない。このように特殊な粉砕機を用いると、コストアップが避けられず、生産性の向上を図ることが困難になるという問題点がある。
【0004】
さらに、こうして得られた乳白色無機顔料は、入浴剤製造工程等において界面活性剤が容易に剥離してしまい、水や浴湯における分散性を損なうことがある。一方、界面活性剤の含有量を10質量%以下にした場合には、一般的な粉砕機を用いての解砕が可能であるが、水や浴湯における分散性が良くないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−342520号公報
【特許文献2】特開2001−181177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述のような問題点を解決するためになされたもので、安価で、しかも水または浴湯での良好な分散性を得ることのできる乳白色無機顔料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために、界面活性剤にショ糖脂肪酸エステルを用いるとともに、アニオン性界面活性剤を組み合わせて、またはアニオン性界面活性剤と非イオン水溶性高分子化合物とを組み合わせて配合することにより、優れた生産性と水また浴湯での分散性とを両立することのできる乳白色無機顔料を見出した。
【0008】
要するに、第1発明による乳白色無機顔料は、
白色無機顔料とショ糖脂肪酸エステルとアニオン性界面活性剤からなる乳白色無機顔料であって、前記白色無機顔料の含有量が90〜99質量%であることを特徴とするものである。
また、第2発明による乳白色無機顔料は、
白色無機顔料とショ糖脂肪酸エステルとアニオン性界面活性剤と非イオン水溶性高分子化合物からなる乳白色無機顔料であって、前記白色無機顔料の含有量が90〜99質量%であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
第1発明および第2発明に係る乳白色無機顔料によれば、界面活性剤にショ糖脂肪酸エステルとアニオン性界面活性剤、またはショ糖脂肪酸エステルとアニオン性界面活性剤と非イオン水溶性高分子化合物とが用いられており、白色無機顔料の含有量が高いので、水または浴湯での良好な分散性を得ることができる。また、この乳白色無機顔料は一般的な粉砕機を用いて解砕することが可能であるので、生産性を向上させることができ、安価に提供することができる。
【0010】
ここで、白色無機顔料の含有量が99質量%を超えていれば、すなわち界面活性剤の含有量が1質量%未満であれば、十分な分散性を得ることができない。一方、白色無機顔料の含有量が90質量%未満であれば、すなわち界面活性剤の含有量が10質量%を超えていれば、アトマイザーのような一般的な粉砕機を用いての解砕が困難になり、生産性の向上が図れない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明による乳白色無機顔料の実施の形態について説明する。
【0012】
本発明による乳白色無機顔料を得るには、ヘンシェルミキサー、レディゲミキサー、ナウタミキサー等の混合機が使用される。これらのミキサー内で、白色無機顔料と、この白色無機顔料の配合量が90〜99質量%となるように調整された界面活性剤を溶解させた溶液とを混合し、加熱もしくは必要に応じて減圧加熱して溶剤を除去することにより、乳白色無機顔料を得ることがきる。その後、乾燥させてアトマイザーのような一般的な解砕機を用いて水また浴湯での良好な分散性を有する乳白色無機顔料を得ることができる。
【0013】
本発明によって得られた乳白色無機顔料は、一般的な粉砕機を用いての解砕が可能であるので生産性が向上し安価である。しかも、水また浴湯での良好な分散性を得ることが可能となる。しかし、白色無機顔料の含有量が99質量%より多ければ、すなわち界面活性剤の含有量が1質量%より少なければ十分な分散性を得ることができない。一方、白色無機顔料の含有量が90質量%より少なければ、すなわち界面活性剤の含量が10質量%より多ければアトマイザーのような一般的な粉砕機を用いての解砕が困難になり生産性が十分でない。
【0014】
本発明に用いられる界面活性剤を溶解させる溶媒としては、水、アルコール、アセトン、酢酸エチル等の極性溶媒が用いられる。
【0015】
本発明に用いられる白色無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、硫酸バリウム、ゼオライト等が挙げられる。
【0016】
本発明に用いられるショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステルおよびこれらのショ糖混合エステル等が挙げられる。これらのショ糖脂肪酸エステルのHLB値は、求める分散挙動にあわせて選択することができる。好ましくはHLB値が10以上でショ糖脂肪酸エステルあることが、水また浴湯での良好な分散性を付与するのに有効である。
【0017】
本発明に用いられる非イオン水溶性高分子化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。なお、これら非イオン水溶性高分子化合物の分子量は分散挙動の調整に用いることができ、適時選択することが可能である。
【0018】
本発明に用いられるアニオン性界面活性剤としては、エチレンオキサイド4モル付加のポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム(以下、POE(4)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等と記す。)、POE(10)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム、POE(5)セチルエーテルリン酸ナトリウム、POE(8)オレイルエーテルリン酸ナトリウム等が挙げられる。なお、これらアニオン性活性剤のHLB値は分散挙動の調整に用いることができ、適時選択することが可能である。
【実施例】
【0019】
以下、本発明による乳白色無機顔料の具体的実施例について説明する。
【0020】
(実施例1)
ヘンシェルミキサーに酸化チタン1900gを投入し、ショ糖ステアリン酸エステル20gと分子量6000のポリエチレングリコール20gとPOE(4)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム60gをイソプロピルアルコール250gに加熱溶解させた溶液を入れ、20分攪拌した。さらに、ヘンシェルミキサーを80℃に加温し槽内を減圧してイソプロピルアルコールを除去した。その後内容物を取り出して80℃で乾燥させ、アトマイザー粉砕を行い酸化チタン含有95質量%の乳白色酸化チタンを得た。
【0021】
(実施例2)
実施例1において、ショ糖ステアリン酸エステルを30g、分子量6000のポリエチレングリコールを10gに変更した以外は、同様にして酸化チタン含有95質量%の乳白色酸化チタンを得た。
【0022】
(実施例3)
ヘンシェルミキサーに酸化チタン1900gを投入し、ポリエチレングリコールを使用せず、ショ糖ステアリン酸エステル40gとPOE(4)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム60gのみをイソプロピルアルコール250gに加熱溶解させた溶液を入れ、20分攪拌した。さらに、ヘンシェルミキサーを80℃に加温し槽内を減圧してイソプロピルアルコールを除去した。その後内容物を取り出して80℃で乾燥させ、アトマイザー粉砕を行い酸化チタン含有95質量%の乳白色酸化チタンを得た。
【0023】
(実施例4)
ヘンシェルミキサーに酸化チタン1850gを投入し、ショ糖ステアリン酸エステル40gと分子量6000のポリエチレングリコール40gとPOE(4)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム70gをイソプロピルアルコール250gに加熱溶解させた溶液を入れ、20分攪拌した。さらに、ヘンシェルミキサーを80℃に加温し槽内を減圧してイソプロピルアルコールを除去した。その後内容物を取り出して80℃で乾燥させ、アトマイザー粉砕を行い酸化チタン含有92.5質量%の乳白色酸化チタンを得た。
【0024】
(実施例5)
ヘンシェルミキサーに酸化チタン1850gを投入し、ショ糖パルミチン酸エステル50gと分子量6000のポリエチレングリコール50gとPOE(4)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム50gをイソプロピルアルコール250gに加熱溶解させた溶液を入れ、20分攪拌した。さらに、ヘンシェルミキサーを80℃に加温し槽内を減圧してイソプロピルアルコールを除去した。その後内容物を取り出して80℃で乾燥し、アトマイザー粉砕を行い酸化チタン含有92.5質量%の乳白色酸化チタンを得た。
【0025】
(比較例1)
ヘンシェルミキサーに酸化チタン1900gを投入し、ショ糖ステアリン酸エステル100gのみをイソプロピルアルコール250gに加熱溶解させた溶液を入れ、20分攪拌した。さらにヘンシェルミキサーを80℃に加温し槽内を減圧してイソプロピルアルコールを除去した。その後内容物を取り出して80℃で乾燥し、アトマイザー粉砕を行い酸化チタン含有95質量%の乳白色酸化チタンを得た。
【0026】
(比較例2)
ヘンシェルミキサーに酸化チタン1700gを投入し、ショ糖ステアリン酸エステル60gと分子量6000のポリエチレングリコール60gとPOE(4)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム180gをイソプロピルアルコール250gに加熱溶解させた溶液を入れ、20分攪拌した。さらに、ヘンシェルミキサーを80℃に加温し槽内を減圧してイソプロピルアルコールを除去した。その後内容物を取り出して80℃で乾燥し、アトマイザー粉砕により酸化チタン含有85質量%の乳白色酸化チタンを得ようとしたが粉砕前の混合物が目詰まりを起こし粉砕不可能となり製造を中止した。
【0027】
(比較例3)
ヘンシェルミキサーに酸化チタン1900gを投入し、POE(4)ラウリルエーテルリン酸ナトリウムを使用せずショ糖ステアリン酸エステル50gと分子量6000のポリエチレングリコール50gのみをイソプロピルアルコール250gに加熱溶解させた溶液を入れ、20分攪拌した。さらに、ヘンシェルミキサーを80℃に加温し槽内を減圧してイソプロピルアルコールを除去した。その後内容物を取り出して80℃で乾燥し、アトマイザー粉砕を行い酸化チタン含量95質量%の乳白色酸化チタンを得た。
【0028】
前記実施例1〜5および比較例1〜3で得られた乳白色酸化チタン顔料の分散の評価を行った。
<評価方法>
前記実施例1〜5および比較例1〜3で得られた乳白色酸化チタン顔料0.14gを40℃の湯20リットルに分散させた。その分散液の波長550nmにおける透過度T%を測定し、分散の指標にて表1および表2にまとめた。また、目視での濁り評価を以下のように行った。
◎:非常に濁りがよい
○:濁りがよい
△:やや濁っている
×:濁らない
【0029】
【表1】

【表2】

【0030】
表1および表2から明らかなように、実施例1〜5により得られた乳白色酸化チタンは透過度の試験および目視での濁り評価より40℃の湯中で良い分散性を示しているのに対し、比較例1〜3で得られた乳白色酸化チタンは、生産に困難を来したり、40℃の湯中でのほとんど分散せず性能に問題があった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明による乳白色無機顔料は、水や浴湯に良好に分散させることができるとともに、一般に用いられる製造装置で生産可能であるので、入浴剤や水分散性化粧料に配合して好適な乳白色無機顔料である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色無機顔料とショ糖脂肪酸エステルとアニオン性界面活性剤からなる乳白色無機顔料であって、前記白色無機顔料の含有量が90〜99質量%であることを特徴とする乳白色無機顔料。
【請求項2】
白色無機顔料とショ糖脂肪酸エステルとアニオン性界面活性剤と非イオン水溶性高分子化合物からなる乳白色無機顔料であって、前記白色無機顔料の含有量が90〜99質量%であることを特徴とする乳白色無機顔料。

【公開番号】特開2011−111395(P2011−111395A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266927(P2009−266927)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(391015373)大東化成工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】