説明

乳酸バイオセンシング・ストリップ

本発明は、作業電極と基準電極を含む乳酸バイオセンシング・ストリップを提供するものであって、前記二つの電極は電気的に絶縁されたベースサポートにデポジットされ、作業電極は酵素乳酸オキシダーゼとエレクトロン・メディエーターを無機グラファイト・マトリックスに固定して形成され、グラファイト層は銀層にデポジットされ、基準電極は塩化銀を別の銀層にデポジットして形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸溶液を測定するための乳酸バイオセンシング・ストリップに関する。
発明の背景
【0002】
医師は、本人の検査と臨床検査室の結果に基づいて重症医療患者における生物学的な分析物の存在及び濃度を決定する。臨床検査室は良く管理された質の高い環境で大量の検査と分析をサポートする多様な自動化されたシステムを完備している。しかし、臨床検査室は外傷や多臓器失調/疾患患者を適切に治療するために必要な早急な結果を迅速に提供できない。
【0003】
早急な検査結果を求める臨床的なニーズに応えて、患者のベッドサイドで信頼できる自動化された分析機器を用いて検査するためのいくつかのテクノロジーが生まれ手いる、例えば、電気化学バイオセンサー、光学蛍光センサー、凝固検査システム用の常磁性粒子、及び化学及び免疫化学検査のためのマイクロマシン装置、などである。これらのテクノロジーによって、多項目化学検査を迅速に実行することが可能になり、検査装置の校正などの従来の障害にも対処できるようになっている。
【0004】
これらの検査は次のように分類できる:1)in vitro検査、これはベッドサイドで行われる;2)ex vivo又はpara vivo検査、これは手首サイドで行われる;及び3)in vivo検査、これは患者の体内で行われる。これらの検査は、人件費の減少、血液識別及び輸送エラーの減少、及び患者の併発症の減少、などでコスト効率及び節約に間接的に寄与する。
【0005】
In vitro又はベッドサイド装置は、普通、集中治療室:手術室;緊急処置部門(ER);介入部門;一般患者医療部門;及び外来外科及び救急治療室;などの病院のいくつかの部門で用いられる。In vitro診断検査は、臨床検査室と同様な多様な診断検査を行う。普通、In vitro診断検査システムは患者にオンラインで結合されず、血液採取のためのオペレーターを必要とする。
【0006】
診断マーケットにおける診断検査の主要カテゴリーには、動脈血ガス、血液化学、血中グルコース、凝固、薬物乱用検査、ヘモグロビン、ヘマトクリット、感染症、及び治療薬モニタリング、などがある。その他のカテゴリーとしては、がんマーカー、心臓マーカー、コレステロール検査、免疫診断、感染症検出、乳酸、及び血栓溶解モニタリング、が含まれる。
【0007】
Ex vivo診断はオンラインの実時間検査のための外部センサーを用い、血液をほとんど全く失わない。普通、サンプルの血液は血液接触を最小にする閉じたシステムで流れる。Ex vivoシステムは、in vivoセンサーに関連した問題、例えば血栓、不正確さ、校正のドリフト、及びいったん患者の中に入ると再校正できない、などの問題を最小にする。US Pat. No. 5,505,828はex vivoシステムの例を開示している。
【0008】
In vivo 診断は、きわめて重症な不安定な患者の治療に大きな可能性を有する。多くの会社がin vivoセンサーを開発しているが、これまでのところ技術的なハードルがin vivoセンサーの普通の商業的利用を阻んでいる。
【0009】
Ex vivo及びin vivo診断はオンラインシステムであるから、臨床又はin vitro検査で起こるような品質管理及び情報統合エラーを減らすことができる。品質管理エラーは普通、計器や装置のエラーや故障ではなく、オペレーターのエラーである。エラーの例としては、不適切な検体の量、不正確な校正、劣化した検査ストリップの使用、不十分な検証、計器の整備不十分、検査手順のタイミングの悪さ、及び間違った材料の使用、などがあげられる。臨床情報システムの統合によってベッドサイドで集められた検査データを直接患者記録に記入できるようになる。これは患者管理プロセスの効率を向上させ、検査室情報システムと臨床情報システムの統合を可能にし、すべてのタイプの患者情報の“継ぎ目のない”流れを実現する。
【0010】
乳酸は炭水化物の代謝の副産物であり、解糖の産物(ピルビン酸)が好気性(aerobic)条件下で、すなわち、細胞中の酸素欠乏条件で、乳酸に変換される。したがって、乳酸の検査は、呼吸失調、心臓の病気、労働疾患(labor deseases)、などで重要である。ヒトの血液中の乳酸の正常な濃度は1.7から2.7 mMという範囲にある。
【0011】
乳酸の測定の手順は、例えば、いろいろな化学的及び物理的な手法を用いる。従来の分析はヒトの血液中の乳酸の化学的処理を用いて、分光測光で測定できる着色した生成物に変換するもので、検査する血液を酵素すなわち乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)と反応させるという方法である。このプロセスで、NADHの形成によって340 nmでの吸収が測定される。これは血液中にもともと存在する乳酸の測定となる。
【0012】
米国特許第6,117,290号明細書は、オンライン乳酸センサー装置を開示している。このセンサー装置は乳酸センサー、検査サンプルを採取するカテーテル、及び乳酸センサーとカテーテルの間で流体連通する第一の流体フローラインを含む。このセンサー装置はまた、センサー校正源と凝固防止溶液、及びセンサー校正源と凝固防止溶液と乳酸センサーを流体的に連通させる第二の流体フローラインを含む。
【0013】
実際には、血液サンプルについてこのような検出手順を用いるのには少し難点がある。この方法の欠点は、特異性の欠如、標準化の困難、大量の血液が必要なこと、及び不安定で腐食性の試薬の使用、などがあげられる。このような方法はまた、光学的検出が必要であり、金と時間がかかる。さらに、サンプルを調製しなければならない。もう一つの欠点は、従来の方法による乳酸レベルの測定は検査室で資格ある職員が行わなければならない、ということである。
【0014】
はElectrochimica Acta Vol. 46, 723-729 (2000)に電気化学的に調製されたポリピロール・ポリビニル・スルホン酸複合フィルムへの乳酸デヒドロゲナーゼの固定を開示している。報告された応答時間は約40秒、貯蔵寿命は冷蔵条件下で約2週間である。別の開示では(Asha Chaubey et al. Analytical Chimica Acta Vol. 49, 98-103, 2000)、導電性ポリアニリン・フィルムへの乳酸デヒドロゲナーゼの固定が開示されている。0.1 mMから1 mMまでの乳酸濃度で応答の線形性が示され、貯蔵寿命は冷蔵条件下で約3週間である。貯蔵寿命がもっと長く、応答時間がもっと短いセンサーを得ることが好ましい。
【0015】
したがって、測定の効率と精度を低下させることなく、従来技術の欠点を解決する乳酸バイオセンシング・ストリップを提供することは重要である。
発明の目的
【0016】
本発明の主たる目的は、水性媒質中の乳酸の測定のための新しい乳酸バイオセンシング・ストリップを提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、水性媒質中の乳酸の評価を迅速かつ正確に行う乳酸バイオセンシング・ストリップを提供することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、コストが安く、非医学専門家(non-medical person)でも使用できる乳酸バイオセンシング・ストリップを提供することである。
【0019】
本発明のその他の目的は、血液サンプルの複雑な(elaborate)予備処理を必要とせずに行うことができる分析(assay)、である。
【0020】
本発明のもう一つの目的は、75%という高い活性(activity)を有する乳酸バイオセンシング・ストリップを提供することである。
【0021】
本発明のさらにもう一つの目的は、その場で読取値(reading)を得ることができる乳酸バイオセンシング・ストリップを提供することである。
発明の要約
【0022】
乳酸バイオセンシング・ストリップは従来の方法に比べていろいろな利点、例えば速い応答、サイズが小さい利便性、応答の特異性、サンプル調製の必要がないこと、低コスト、及び測定の高い感度、などの利点がある。従来の方法と比べたこのセンサーの主たる利点は、普通の人にもできるサンプル操作である。
【0023】
本発明は、サンプルにおける乳酸の分析で使用する乳酸バイオセンシング・ストリップを提供し、このセンサーは導電性物質のドライストリップ・センサーであって、少なくとも:
i. 外側表面、
ii. スクリーン印刷された基準電極、及び
iii. スクリーン印刷された作業電極、
を有する。
【0024】
したがって、本発明は、作業電極と基準電極を含む乳酸バイオセンシング・ストリップを提供し、上記二つの電極は電気的に絶縁されたベースサポートにデポジットされ、ここで、作業電極は無機グラファイト・マトリックスに酵素乳酸オキシダーゼとエレクトロン・メディエーターを固定して形成され、上記グラファイト層は銀層にデポジットされ、基準電極は別の銀層に塩化銀をデポジットして形成される。
【0025】
別の実施の形態では、バイオセンシング・ストリップはさらに以下のものを含む:
i. 電気的に絶縁されたベースサポート(1)、
ii. それにデポジットされた第一及び第二の一対の銀層(2)、前記二つの層の間の適当なスペースで分離されている、
iii. 一対のグラファイト層、前記一対のグラファイト層の各々はそれぞれ一つの銀層にデポジットされ、前記それぞれの銀層(2)と電気的に結合される、
iv. 該第一の銀層はそのグラファイト層で完全に覆われる、
v. 該第二の銀層は、その中央がそのグラファイト層で部分的に覆われ、結合する端子と作業ゾーン領域を覆われない状態で残す、
vi. 前記第二の銀電極層の覆われない作業ゾーンに塩化銀(4)をデポジットする、
vii. 該第一の銀層を覆うグラファイト層の作業ゾーンに乳酸オキシダーゼをメディエーターと共にデポジットする(5)、
viii.基準電極を形成する前記銀/塩化銀層(4)と作業電極を形成する酵素とメディエーターの層(5)は前記サポート(1)に支持される、
ix. 基準電極(4)と作業電極(5)の作業ゾーンを親水性の幕で覆う。
【0026】
本発明のある実施の形態では、用いられる電気的に絶縁されたベースサポートはポリ塩化ビニルで作られる。
【0027】
本発明のある実施の形態では、銀層の間の距離は0.5から1 mmまでの範囲にある。
【0028】
本発明の別の実施の形態では、各銀層の厚さは15から25ミクロンの範囲にある。
【0029】
本発明の別の実施の形態では、エレクトロン・メディエーター層はフェリシアン化カリウム又はフェロセンの層を含む。
【0030】
本発明の別の実施の形態では、親水性の膜はナイロン又はポリエステルで作られる。
【0031】
本発明の別の実施の形態では、電極の作業ゾーン領域は分析物サンプルを小出しする(dispense)ために用いられる標的領域である。
【0032】
本発明の別の実施の形態では、電極の結合端子ゾーン領域は電極を電位計に結合するのに用いられる領域である。
【0033】
本発明の乳酸バイオセンシング・ストリップは、75%の活性を示し、乳酸検出の応答時間は30から40秒の範囲にある。本発明のストリップの貯蔵寿命は冷蔵条件下で約4ヶ月である。周辺条件下(25乃至30 ℃)では、バイオセンシング・ストリップの貯蔵寿命は約2ヶ月であると見られる。本発明のストリップは使い捨て可能である。
発明の詳細な説明
【0034】
図1に示されているように、本発明は、電極アセンブリ(2)、(3)、(4)、及び(5)を支持する電気的に絶縁されたベースサポート(1)を含む。電極アセンブリは、二つの電極システム、銀層とその上にデポジットされたグラファイト層、及び無機マトリックスに吸着された酵素とメディエーターの層から成る作業電極システム(2)、(3)、及び(5)、を含む。他の電極アセンブリは、銀層に部分的にグラファイト層がデポジットされ、その上に銀/塩化銀層がデポジットされた基準電極から成る。図1は、電極の支持基板を含むPVCシート(i)を示す。導電性銀トラッキング(ii)は、センサーを読取装置に結合するための導電性銀トラッキング(iii)の表面に導電性グラファイト層をスクリーン印刷したものである。標的領域は、トラッキングの端にスクリーン印刷で塗布された作業電極(iv)と基準電極(v)から成る。印刷された電極の上に絶縁層が塗布されて保護になっている。全体に一つ以上の情報(legend)をコーティングすることができる。導電性グラファイトのトラックは銀のトラックと基準電極の全長まで延びていない。
【0035】
バイオセンシング・ストリップの校正を行うために、乳酸溶液を1から8 mMまでの濃度で用いたときの電流をこのストリップを用いて検出した。各濃度で測定された電流が図2にプロットされた。図2で、曲線(1)は1 mM乳酸溶液に対する反応曲線、曲線(2)は2 mM乳酸溶液に対する反応曲線、曲線(3)は4 mM乳酸溶液に対する反応曲線、曲線(4)は6 mM乳酸溶液に対する反応曲線、そして曲線(5)は8 mM乳酸溶液に対する反応曲線である。これは、濃度が1から8 mMまでの範囲にあるならば、本発明のバイオセンシング・ストリップを用いて被験者における血液サンプル中の乳酸を測定することができることを示している。安定な電流値に達するまでの応答時間で表したこのシステムの感度は、電流の時間変化を分析して決定された。これは、標準テスト溶液の一滴をストリップに付着させてから電流が漸近的に安定した値に達するまでの電流測定によって行われた。電流は30乃至40秒で安定な値に達することが認められた。
【0036】
貯蔵寿命特性は、いろいろな時間貯蔵されたストリップで既知の濃度の乳酸による電流を測定して決定した。データは図4に示されている。図4で、曲線(1)は冷蔵条件(4℃)で貯蔵されたストリップに関するもの、曲線(2)は25〜30℃で貯蔵されたストリップに関するものである。
【0037】
本発明はまた、乳酸センサー・ストリップを製造するプロセスを提供する。このプロセスは、第一及び第二の電極を基板上に形成するものであって、前記電極における前記電極の各々の銀層を塗布し、前記第二の電極の操作ゾーンでグラファイト層を塩化銀に塗布し、第一の電極の作業ゾーンのグラファイト層にメディエーターと酵素を塗布することによって形成する。外側の親水性の膜が前記第一の電極のゾーンに塗布される。銀層及びグラファイト層は好ましくはスクリーン印刷工程によって塗布される。
【0038】
本発明の主な特徴は、センサーが乾式ストリップ・センサーであるということである。同じような試薬の混合物を湿式センサー・システムで用いた場合は、所望する範囲の検出可能な乳酸濃度で良い結果が得られないことが認められた。
【0039】
本発明は電極アセンブリを支持する基板を含み、前記電極アセンブリは二つの電極システム、一つの作業電極と基準電極としてのもう一つの電極、が前記基板上に支持され互いに間隔をあけて配置される。乳酸センシング・ストリップは、第一又は作業電極と第二又は基準電極を支持する基板を含み、前記電極は互いに感覚をあけて配置される。
【0040】
第一の電極は作業電極であって、操作ゾーンを通って作業ゾーンへ延びる端末を有する。第二の電極は基準電極であって、操作ゾーンを通って作業ゾーンへ延びる端末を有する。どちらの場合も、それぞれの端末は前記第一及び第二の電極のベース導電性層とは異なる物質で作られる。
【0041】
商業的に入手された乳酸オキシダーゼが、リン酸バッファーと混合され、その溶液の適当な量が予め印刷された作業電極に注入される。この溶液が許容温度で放置乾燥された後、以下が続く:
i. 導電性トラッキングの印刷
ii. 基準電極の印刷
iii. 作業電極の印刷
iv. 電極上に膜を固定。
【0042】
作業電極と基準電極はそれぞれ操作ゾーンと作業ゾーンに沿って銀材料のベース導電性層を含む。グラファイト層が作業電極の銀層にデポジットされ、端末まで延びる;グラファイト層が基準電極の操作ゾーンにデポジットされ、端末まで延びる。Ag/AgClが基準電極の標的領域にデポジットされる。作業電極は、メディエーター化合物と乳酸オキシダーゼ酵素を担持する導電性表面を含む。この酵素活動が起こると、メディエーター化合物は電子を酵素から電極へ移動させる。前記電極の作業ゾーンに親水性の膜を設けなければならない。表面活性剤は、血液のリポタンパク質錯体を分解するように働き、すると乳酸が乳酸オキシダーゼによって酸化されてピルビン酸になると思われる。メディエーター化合物は電極で電気化学的に還元されて電極で測定できるほどの電流を生じ、この電流が乳酸オキシダーゼの活動に、したがってサンプルに存在する乳酸の量に関係している。この電流は次の一連の結合した反応によって発生される
L-乳酸 + LOD (ox) --------ピルビン酸 + LOD (red)
LOD (red) + Me (ox) ---------LOD (ox) + Me (re)
【0043】
酸化還元メディエーターは、ベース電極で酸化され、電流は乳酸濃度に比例する。電流は、従来の任意の電子システムで測定できる。
【0044】
以下の実施例は、説明のために例示されるものであり、本発明の範囲を制限すると解すべきでない。
【0045】
実施例1
メディエーターとグラファイトのペーストの調製
100 mgのグラファイト粉末とポリビニル・ピロリドン(結合剤)を0.01 Mフェリシアン化カリウム(メディエーター)とエチレングリコール・モノブチル・エーテル中で混合してスクリーン印刷可能な作業電極グラファイト・ペーストを調製した。
【0046】
実施例2
ドライ・ストリップの調製
商業的に入手した2 Uの乳酸オキシダーゼを含む乳酸オキシダーゼ溶液(2 μL)をメディエーターを混合したグラファイト電極ストリップに物理的に吸着させ、一晩保持して25℃で乾燥させた。ドライ・ストリップ電極は親水性のナイロン膜で覆った。膜を貼り付ける前に、蒸留水中10%の表面活性剤(Tween 80)溶液にしばらく入れて、次に乾燥した膜をストリップに固定した。
【0047】
実施例3
乳酸標準乳酸溶液の調製
0.1 Mリン酸バッファー中にストック乳酸溶液10 mMを調製した。このストック溶液をリン酸バッファーで希釈して2 mM, 4 mM, 6 mM, 及び8 mMの標準溶液を調製した。
【0048】
実施例4
酵素ストック溶液の調製
酵素乳酸オキシダーゼ15 mgを100 μLのリン酸バッファーに溶解して5 U/μLの濃度にして、作業用の酵素溶液を得た。このストック溶液をさらに1 U/μLに希釈した。
【0049】
実施例5
メディエーター混合グラファイト・ドライ・ストリップへの酵素の固定
2 Uの乳酸オキシダーゼを含む2μLの酵素溶液をメディエーター混合グラファイト電極ストリップに吸着させ、一晩保持して25℃で乾燥させた。前記ドライ・ストリップ電極を親水性ナイロン膜で覆った。膜を貼付する前に、蒸留水中10%の表面活性剤(Tween 80
)溶液にしばらく入れて、次に乾燥した膜をストリップに固定した。
【0050】
実施例6
酵素活性
乳酸オキシダーゼの活性を調べるSigmaプロトコルを用いて乳酸オキシダーゼの活性を評価した。基本原理は、乳酸オキシダーゼがl-乳酸をピルビン酸とH2O2に変換するということである。H2O2はその後4-アミノアンチピリン(4AAP)とジメチルアニリン(DMA)の存在下で着色した色素に変換される。
LOD
L-乳酸 + O2 → ピルビン酸 + H2O2
LOD
2 H2O2 + 4-AAP + DMA → キノンジイミン色素 + H2O
【0051】
温度=37℃及びpH = 6.5という最適条件で色素は565 nmで,光路(light path)1 cmで吸収する。
【0052】
固定された酵素の活性は次の式で計算された:
U cm-2 = AV/εts
ここで、Aは、インキュベーションの前と後の吸収率の差であり、
Vは、全体積であり、
εは、565 nmでのキノンジイミン色素のミリモル消光係数(35.33),
tは、反応時間(10分)であり、
Sは、酵素電極の表面積である。
作業グラファイト・ストリップでの固定されたLODの酵素活性は75%であることが見出された。
【0053】
実施例7
電流計による応答研究
作業電極としてグラファイトに固定された酵素(LOD)とAG/AgCl基準電極を含む乳酸バイオセンシング・ストリップを、バイアス電圧0.4 Vで分極した電位計の入力に結合し、乳酸(1-8 mM)に対する電流計校正応答が測定された(図2)。8 mMという乳酸溶液で60 μAの最大電流が得られ、それより上では電流の顕著な変化は認められなかった。乳酸溶液(1-8 mM)に対する反応時間は、乳酸の各濃度で40秒であることが見出された(図3)。結果は、5%以内で再現性があることが見出された。電流計測定には以下の原理が関わっていた:
乳酸 + LOD(ox) → ピルビン酸 + LOD (red)
LOD (red) + Fe3+ → LOD(ox) + Fe2+
0.4 V
Fe2+ → Fe3+
【0054】
本発明の利点
1. この乳酸バイオセンシング・ストリップはサンプル中の乳酸の速やかな評価を与える。
2. 冷蔵条件下でサンプルの貯蔵寿命は4ヶ月である。
3. 1から8 mMまでの乳酸濃度でストリップの応答は線形である。
4. ストリップは環境に害を及ぼさずに使い捨てできる。
5. ストリップは正式の医学トレーニングを受けていない人でも容易に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のバイオセンシング・ストリップの概略図である。
【図2】標準乳酸テスト・サンプルに対する本発明のバイオセンシング・ストリップの応答曲線である。
【図3】実験室で作成された標準乳酸テスト・サンプルに対するセンサーの校正曲線である。
【図4】本発明の乳酸ストリップの貯蔵寿命安定性特性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業電極と基準電極を含む乳酸バイオセンシング・ストリップであって、前記二つの電極は電気的に絶縁されたベースサポートにデポジットされ、該作業電極は酵素乳酸オキシダーゼとエレクトロン・メディエーターを無機グラファイト・マトリックスに固定して形成され、該グラファイト層は銀層にデポジットされ、基準電極は塩化銀を別の銀層にデポジットして形成される乳酸バイオセンシング・ストリップ。
【請求項2】
さらに:
電気的に絶縁されたベースサポート(1)、
それにデポジットされた一対の第一及び第二の銀層(2)、前記二つの層はその間の適当なスペースで隔離される、
一対のグラファイト層、前記一対のグラファイト層の各々はそれぞれ一つの銀層にデポジットされて前記それぞれの銀層(2)と電気的に結合され、
該第一の銀層はそのグラファイト層によって完全に覆われ、
該第二の銀層はその中央で部分的にそのグラファイト層によって覆われて結合端末と作業ゾーン領域を覆われないで残し、
前記銀電極層の覆われない作業ゾーンには塩化銀(4)がデポジットされる、
乳酸オキシダーゼがメディエーターと共に該第一の銀層を覆うグラファイト層の該作業ゾーンにデポジットされる(5)、
基準電極を形成する前記銀/塩化銀層(4)と作業電極を形成する酵素とメディエーターの層(5)は前記サポート(1)に支持され、該基準電極(4)の作業ゾーンと作業電極(5)は親水性の膜で覆われる、
を備えて成る請求項1に記載の乳酸バイオセンシング・ストリップ。
【請求項3】
用いられる電気的に絶縁されたベースサポートがポリ塩化ビニルから作られることを特徴とする請求項1に記載の乳酸バイオセンシング・ストリップ。
【請求項4】
銀層間の距離は0.5乃至1 mmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の乳酸バイオセンシング・ストリップ。
【請求項5】
各銀層の厚さが15乃至25ミクロンの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の乳酸バイオセンシング・ストリップ。
【請求項6】
用いられる該エレクトロン・メディエーターがフェリシアン化カリウム又はフェロセンから選択されることを特徴とする請求項1に記載の乳酸バイオセンシング・ストリップ。
【請求項7】
用いられる該親水性の膜がナイロン又はポリエステルから作られることを特徴とする請求項1に記載の乳酸バイオセンシング・ストリップ。
【請求項8】
電極の該作業ゾーンが分析物サンプルを小出しするのに用いられる標的領域であることを特徴とする請求項1に記載の乳酸バイオセンシング・ストリップ。
【請求項9】
該ストリップにおける該酵素乳酸オキシダーゼの活性が70-80%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の乳酸バイオセンシング・ストリップ。
【請求項10】
乳酸検出の応答時間が30 から40 秒間での範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の乳酸バイオセンシング・ストリップ。
【請求項11】
乳酸濃度に対する電流計測の線形応答が2〜8 mMの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の乳酸バイオセンシング・ストリップ。
【請求項12】
該バイオセンシング・ストリップの貯蔵寿命が冷蔵条件下で約4ヶ月であることを特徴とする請求項1に記載の乳酸バイオセンシング・ストリップ。
【請求項13】
該バイオセンシング・ストリップの貯蔵寿命が20〜30℃の範囲の温度で約2ヶ月であることを特徴とする請求項1に記載の乳酸バイオセンシング・ストリップ。
【請求項14】
該ストリップが使い捨てできることを特徴とする請求項1に記載の乳酸バイオセンシング・ストリップ。
【請求項15】
電極の結合端子が電極を電位計に結合するために用いる領域であることを特徴とする請求項1に記載の乳酸バイオセンシング・ストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−512572(P2006−512572A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563410(P2004−563410)
【出願日】平成14年12月31日(2002.12.31)
【国際出願番号】PCT/IB2002/005679
【国際公開番号】WO2004/058993
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(595059872)カウンシル オブ サイエンティフィク アンド インダストリアル リサーチ (81)
【Fターム(参考)】