説明

乳酸発酵飼料の製造方法

【課題】
固体培養基の加熱殺菌、冷却、乳酸菌の投入、発酵を一貫して行うとともに、高温下での乳酸菌の投入を行うことにより、乳酸発酵飼料を24時間以内で製造することができるようにして、家畜を健康的に肥育でき、かつ、肉質の等級向上にも効果がある乳酸発酵飼料を毎日安定して給餌することができる乳酸発酵飼料の製造方法を提供する。
【解決手段】
攪拌容器2内にて被攪拌物を攪拌する際に容器内乃至被攪拌物に対し高温蒸気を噴射できる攪拌装置1に投入して高温蒸気によって固体培養基内の雑菌を死滅させた後、高温蒸気の噴射を停止し、攪拌容器内における前記固体培養基の温度を所定の乳酸菌投入温度まで冷却してから、攪拌容器内に乳酸菌を投入し、攪拌手段によって乳酸菌と固体培養基とを均一混合し、次いで、攪拌容器内を乳酸菌の培養に適する温度に調整してこの容器内にて固体培養基を乳酸発酵させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体培養基に乳酸菌を添加し、乳酸発酵させて製造する乳酸発酵飼料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1乃至特許文献3に示されるように、おから、コーンコブ、焼酎粕、ビール粕、デンプン粕およびフスマ、小麦胚芽、コーンミール等の固体培養基に乳酸菌を添加して製造する乳酸発酵飼料がある。
【0003】
この乳酸発酵飼料は、例えば、雑菌を完全に死滅できる100℃以上の高温にて、あるいは65〜70℃で30分以上殺菌した固体培養基を、乳酸菌の培養温度(例えば、一般的には35〜40℃程度)まで冷却して乳酸菌を添加し、この培養温度に維持した状態で所定時間かけて乳酸発酵させて製造しており、乳酸発行により得た飼料は、抗生物質の投与が不要で肉質の非常に良好な食肉が得られることが知られている。
【0004】
しかしながら、乳酸菌は普通高温下では死滅してしまうため、殺菌により高温になっている固体培養基の温度を約40℃以下まで冷却させてからでないと乳酸菌を添加することができないため、固体培養基の冷却にかかる時間(固体培養基の量により異なる)が、飼料製造上、時間のロスとなっていた。
【0005】
そして、乳酸菌を添加した固体培養基はサイレージ内に収容して2〜3か月かけて乳酸発酵させるのが普通であり、このため、前記廃菌床の殺菌処理にかかる時間を含めると乳酸発酵飼料の製造には長期間を要するものであった。
【0006】
また、発酵室等の乳酸発酵に適した温度環境内で乳酸発酵させた場合でも、乳酸発酵が完了するまでは少なくとも24時間を超える時間がかかるため、固体培養基の殺菌処理にかかる時間を含めると乳酸発酵飼料の製造には少なくとも2日以上の日数を要し、飼料の生産効率が決して良いとは言えなかった。
【0007】
さらに、固体培養基の滅菌処理、乳酸菌の混合や発酵の作業を別々の装置で行うため、工程の移行に時間を要していた。
【0008】
したがって、乳酸発酵飼料が、毎日すなわち1日単位で規則的に製造することができない、管理が煩雑である等の問題によって高額な飼料となるため、乳酸発酵飼料の給餌によって牛や豚等の家畜を健康的に肥育でき、かつ、肉質の等級向上にも効果があるということが認知されてはいても、乳酸発酵飼料の普及は進まないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平2−65748号公報(第1〜4頁)
【特許文献2】特許第2543756号公報(第1〜3頁)
【特許文献3】特開2009−11227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的とするところは、固体培養基の加熱殺菌、冷却、乳酸菌の投入、発酵を一貫して行うとともに、高温下での乳酸菌の投入を行うことにより、乳酸発酵飼料を24時間以内で製造することができるようにして、牛、豚や鶏等の家畜を健康的に肥育でき、かつ、肉質の等級向上にも効果がある乳酸発酵飼料を毎日安定して給餌することができる乳酸発酵飼料の製造方法を提供できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明に係る乳酸発酵飼料の製造方法は、固体培養基を、攪拌容器内にて被攪拌物を攪拌する際に容器内乃至被攪拌物に対し少なくとも高温蒸気を噴射できる攪拌装置に投入して高温蒸気によって固体培養基内の雑菌を死滅させた後、高温蒸気の噴射を停止し、攪拌容器内における前記固体培養基の温度を所定の乳酸菌投入温度まで冷却してから、攪拌容器内に乳酸菌を投入し、攪拌手段によって乳酸菌と固体培養基とを均一混合し、次いで、攪拌容器内を乳酸菌の培養に適する温度に調整してこの容器内にて固体培養基を乳酸発酵させ、前記乳酸菌投入温度を、投入する乳酸菌の発酵又は生存温度よりも5〜10℃高い温度に設定してなるものとしてある。
【0012】
また、前記固体培養基を冷却する際に、固体培養基を攪拌するものとしてある。
【0013】
また、前記固体培養基を冷却する際に、冷却用の気体を攪拌容器内乃至固体培養基に対し噴射するものとしてある。
【0014】
また、前記培養温度を、適温に調整した気体を攪拌容器内乃至固体培養基に対し噴射することによって調整するものとしてある。
【0015】
また、前記培養温度を、攪拌装置に備える過熱手段によって攪拌容器の少なくとも下方部分を加熱することによって調整するものとしてある。
【0016】
また、前記固体培養基に乳酸菌を投入する前および/または乳酸菌投与後における乳酸発酵前にpH調整剤を添加するものとしてある。
【0017】
また、前記固体培養基が、家畜が食することができるきのこを収穫した後の廃菌床とするものとしてある。
【0018】
また、前記攪拌装置は、攪拌手段が、回転軸と、この回転軸の周囲に同軸の遠心方向に突設した攪拌羽根より構成されており、回転軸は、少なくとも底部内面が内側に湾曲する攪拌容器内における底部内面の湾曲方向に対し直交し、攪拌羽根の先端が底部の湾曲面を通過する際にこの攪拌羽根の先端と湾曲面との間に小なる隙間を有し湾曲面に沿って通過できるように設けられ、かつ、外部から供給される固体培養基内の雑菌を死滅させるための高温蒸気を回転軸乃至攪拌羽根より噴射できるように構成されたものとしてある。
【0019】
また、前記攪拌容器内の上方に、高温蒸気をこの容器内の下方に向けて噴射する複数の噴射口が設けられたものとしてある。
【0020】
また、前記高温蒸気を供給する外部の気体供給装置が、供給する気体の温度を任意に調整できるように構成されたものとしてある。
【0021】
また、前記攪拌容器の少なくとも下方部分を加熱できる加熱手段が設けられたものとしてある。
【0022】
また、前記加熱手段が、外部から供給される高温蒸気を熱源にして構成されたものとしてある。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る乳酸発酵飼料の製造方法によれば、固体培養基の滅菌処理から乳酸発酵まで一連の作業を所定の攪拌装置内で一貫して行えるようにしているので、次工程に移行する際の時間的ロスをゼロに等しくできる。
【0024】
また、家畜に普通の飼料を与えて肥育している時には、必要に応じて乳酸菌を直接投与する場合もあって、しかしながらこの乳酸菌の直接投与で投与できる量が少量であり、また、コストが高くなるが、乳酸菌を添加した飼料を発酵させることで乳酸菌を増加させ、この乳酸発酵飼料で肥育を行うことによって乳酸菌を直接投与していた時の乳酸菌量よりも非常に多い量(例えば100〜1000倍程度:10〜10cfu/g)の生きた乳酸菌を摂取させることができ、また、乳酸菌の投与に関わるコストを削減できる。
【0025】
よって、本発明により乳酸菌濃度が高い乳酸発酵飼料を1日単位で規則的に製造できる製造方法を確立できたことで、同乳酸発酵飼料を毎日規則正しく給餌でき、牛、豚や鶏等の食肉用の家畜における肉質等級が向上し、かつ高濃度の旨み成分(イノシン酸)を有する家畜の肥育を、従来に比して格段に低コストに実現することが可能になった。
【0026】
また、乳酸菌濃度が高い乳酸発酵飼料を給餌することによって、従来、普通の飼料を与えている時に家畜の健康維持(例えば、子牛や子豚の下痢等の各疾患予防)のために併用していた抗生物質の投与を不要にすることが可能となるので、生産者は抗生物質の投与に係る費用を節約でき、また、消費者にとっては美味しい肉を安全に食することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る乳酸発酵飼料の製造方法を示す工程図。
【図2】本乳酸発酵飼料の製造に用いる攪拌装置の一例を示す側面図。
【図3】図2に示した攪拌装置のA−A断面図。
【図4】本乳酸発酵飼料の製造に用いる攪拌装置の一例を示す側面図。
【図5】攪拌羽根とこの攪拌羽根を回転させる回転軸の一部拡大図。
【図6】攪拌羽根とこの攪拌羽根を回転させる回転軸の一部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る乳酸発酵飼料の製造方法を、添付図面に基づいて説明する。
また本実施例では、固体培養基として、家畜が食することのできるきのこを培養、収穫した後の廃菌床を用いて説明する。
【0029】
図1は、本乳酸発酵飼料の製造方法を示した工程図であり、また、符号を付した所定の工程説明における枠外右側に記した説明は、廃菌床を乳酸発酵して乳酸発酵飼料にする際に用いる乳酸菌に、ラクトバチルス・ファーメンタム キリシマ1R(Lactobacillus fermentum kirishima1R)(寄託番号:NITE AP−784)(以下、キリシマ1Rと称す)を用いて製造する場合の指示であって、工程の説明は、キリシマ1Rを用いた場合の説明にしている。
【0030】
前記キリシマ1Rは近年発見された耐酸性、耐熱性の優れた高温性乳酸菌(発酵又は生存温度:35〜55℃)の一つであって、一般的な乳酸菌より5〜10℃高い温度で発酵させることができ、さらに従来の乳酸菌と比して強力な抗菌作用、免疫刺激作用があり、家畜の死亡率の低下および下痢等の各疾患予防が期待できるものである。
【0031】
乳酸発酵飼料の製造は、先ず、攪拌装置の攪拌容器内に、廃菌床を投入する(図1中のS1)。
【0032】
次に、攪拌容器内の廃菌床を攪拌手段で攪拌しながら、例えば食用石灰や重曹等をpH調整剤として投入することによってpHを5.5〜6.0程度に調整し、この廃菌床に外部より供給する100℃以上の高温蒸気を所定の時間(処理量により0.5〜2時間程度)吹き付け、廃菌床内の雑菌を死滅させる(図1中のS2)。
【0033】
前記殺菌の際、この高温蒸気を利用することによって、従来の例えば熱風を利用したものと比して、廃菌床の温度の上昇が早く、殺菌に必要な温度である100℃に達し十分に殺菌できる。
【0034】
次に、高温蒸気の噴射を停止し、攪拌容器内における廃菌床の温度を、50℃未満になる時点まで冷却(処理量により0.5〜1.5時間程度)する(図1中のS3)。
【0035】
なお、冷却にはフィルタによって塵埃、雑菌を除去した空気を外部から、あるいは高温蒸気を噴射した経路から供給したり、あるいは撹拌手段の駆動によって容器内の空気と接触させたりする空冷方式や、冷却水を撹拌容器まわりに供給して冷却する水冷方式など適宜の方式を採用することができる。
【0036】
次に、攪拌容器内に高温性乳酸菌を投入し(図1中のS4)、攪拌手段によって廃菌床と高温性乳酸菌とを均一に混合する(図1中のS5)。
【0037】
その後、攪拌容器内を高温性乳酸菌の培養に適する温度に維持しつつ、前記PH調整剤の添加によって所要のpH値に調整し、廃菌床を培養(20時間程度)する(図1中のS6)。
【0038】
なお、攪拌容器内を高温性乳酸菌の培養に適する温度に調整する際は(図1中のS6)、攪拌装置に備える加熱手段(例えば、外部から供給する高温蒸気を利用するヒータ)によって攪拌容器の少なくとも下方部分を加熱して行う場合がある。
【0039】
所要の発酵時間(培養時間)が経過したら、廃菌床の発酵を水素イオン指数(pH)/菌数(10cfu/g程度)/匂い等によって確認する(図1中のS7)。
【0040】
攪拌容器内から乳酸発酵飼料を取り出し(図1中のS8)、適宜の篩がけを行うことによって粒径の調整および異物の除去を行い、乳酸発酵飼料が完成(最長でほぼ23.5時間)する(図1中のS9)。
【0041】
完成した乳酸発酵飼料は速やかに合成樹脂シート製袋などの所要の密封容器に封入し、外部からの雑菌の混入を防止する。
【0042】
なお、この容器への封入の際においてもさらに篩がけを行うのが好適であり、また飼料を与える家畜によっては、例えば鶏用の餌とする場合にはペレット化などを行う場合もある。
【0043】
図2は、前述した乳酸発酵飼料を製造する際に適する攪拌装置の具体例を示していて、攪拌装置1は、少なくとも廃菌床の滅菌処理から乳酸発酵飼料の完成まで一連の作業が行われる攪拌容器2と、攪拌容器2内に設けた攪拌手段たる回転軸3および回転軸3に取り付けた螺旋状の攪拌羽根4と、回転軸3を回転させる駆動手段たるモータ5および駆動ベルト6より構成されていて、かつ外部には、少なくとも高温蒸気(過熱蒸気を利用のがより好適である)を発生できてこの高温蒸気を攪拌装置1に供給する気体供給装置7を設けていて、また、高温蒸気は回転軸3の噴射口8より攪拌容器2内に噴射される(図5参照)。
【0044】
そして回転軸3は、図3に示すように、攪拌容器2内における底部内面9の湾曲方向に対し直交し、攪拌羽根4の先端が底部内面9の湾曲面を通過する際にこの攪拌羽根4の先端と底部内面9の湾曲面との間に小なる隙間を有し、底部内面9の湾曲面に沿って通過できるように設けられている。
【0045】
また、図4に示すように、攪拌容器2内の上方に気体供給装置7より供給される高温蒸気を、攪拌容器2内の下方に向けて噴射する複数の噴射口10を設けている場合もある。
【0046】
また、図4に示すように、攪拌容器2の少なくとも下方部分には、気体供給装置7より供給される高温蒸気を熱源にする加熱手段たるヒータ11を設けている場合もある。
【0047】
また、気体供給装置7は、供給する気体の温度を任意に調整できるように構成されている場合がある。
【0048】
また、高温蒸気は、図6に示すように、回転軸3の噴射口8とともに攪拌羽根4の噴射口12より噴射される場合がある。
【0049】
なお、実施例にて使用した撹拌装置における図中の符号13は、被処理物たる廃菌床を投入するための投入口、符号14は、完成した乳酸発酵飼料を取り出すための取り出し口、符号15は、気体供給装置7から攪拌装置1に気体を供給するための気体供給管、符号16は、気体を案内するための案内路である。
【0050】
そして、本製造方法により製造した乳酸発酵飼料を用いて家畜(豚/牛)を肥育し、肉に含まれる旨み成分たるイノシン酸の含有量を測定した結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
表1に示したように、肉の旨味成分であるイノシン酸が大幅に増加することが確認された。
【0053】
また、一般配合肥育飼料100%と、一般配合肥育飼料80%に本製造方法により製造した乳酸発酵飼料を20%の割合で混合した混合肥育飼料を用いて黒毛和種牛をそれぞれ4頭(個体No.1〜4、5〜8)を肥育し、これら牛の肉質評価を行った結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
表2に示したように、前記混合肥育飼料で肥育した牛(個体No.5〜8)が、前記一般配合肥育飼料で肥育した牛(個体No.1〜4)に対し、最も重要視される格付けが向上することが確認された。
【0056】
なお、本実施例では固体培養基として廃菌床を用いたが、おから、コーンコブ、焼酎粕、ビール粕、デンプン粕、フスマ、小麦胚芽、コーンミール等を用いてもよい。
【0057】
さらに、具体的な製造例を以下に挙げる。
なお、以下の説明において原材料の配合割合として記述する「部」は「重量部」を示すものとする。
【0058】
[製造例1]
エリンギ廃菌床60部、フスマ20部、焼酎粕10部及びナタネ粕10部を攪拌容器に入れ、攪拌しながら上記所定の方法で100℃の高温蒸気を噴射した。固体培養基の温度が100℃に到達後、30分間さらに噴射し、温度を100℃に維持した。その後、攪拌容器外部から冷却水を循環するとともに蒸気噴射から除菌した空気噴射に切り替え、固体培養基を35℃まで冷却した。
【0059】
次にキリシマ1R乳酸菌を固体培養基の乳酸菌の菌数が10cfu/gのオーダーになるように添加後、固体培養基を35℃に保ち20時間培養してやや酸っぱい匂いの10cfu/gオーダーの良好な乳酸発酵飼料を得た。
【0060】
[製造例2]
ブナシメジ廃菌床60部、フスマ20部、デンプン粕10部及びコーンミール10部を攪拌容器に入れ、攪拌しながら上記所定の方法で100℃の高温蒸気を噴射した。固体培養基の温度が100℃に到達後、30分間さらに噴射し、温度を100℃に維持した。その後、攪拌容器外部から冷却水を循環するとともに蒸気噴射から除菌した空気噴射に切り替え、固体培養基を35℃まで冷却した。
【0061】
次にペディオコッカス・ペントサセウス キリシマ1C(Pediococcus pentosaseus kirishima1C)(寄託番号:NITE AP−787)(以下、キリシマ1Cと称す)を固体培養基の乳酸菌の菌数が10cfu/gのオーダーとなるように添加後、固体培養基を35℃に保ち20時間培養してやや酸っぱい匂いの10cfu/gオーダーの良好な乳酸発酵飼料を得た。
【0062】
[製造例3]
エノキタケ廃菌床60部、フスマ20部、デンプン粕10部、コーンコブ10部及び重曹1部を攪拌容器に入れ、攪拌しながら上記所定の方法で100℃の高温蒸気を噴射した。固体培養基の温度が100℃に到達後、30分間さらに噴射し、温度を100℃に維持した。その後、攪拌容器外部から冷却水を循環するとともに蒸気噴射から除菌した空気噴射に切り替え、固体培養基を35℃まで冷却した。
【0063】
次にキリシマ1R及びキリシマ1C乳酸菌を固体培養基の乳酸菌の菌数が10cfu/gのオーダーになるように添加後、固体培養基を35℃に保ち20時間培養して、キリシマ1Rが10cfu/gのオーダー、キリシマ1Cが10cfu/gオーダーのやや酸っぱい良好な乳酸発酵飼料を得た。
【0064】
[製造例4]
オカラ40部、フスマ20部、デンプン粕10部、ダイズミール10部、コーンコブ10部及び重曹1部を攪拌容器に入れ、攪拌しながら上記所定の方法で100℃の高温蒸気を噴射した。固体培養基の温度が100℃に到達後、30分間さらに噴射し、温度を100℃に維持した。その後、攪拌容器外部から冷却水を循環するとともに蒸気噴射から除菌した空気噴射に切り替え、固体培養基を35℃まで冷却した。
【0065】
次にキリシマ1R及びキリシマ1C乳酸菌を固体培養基の乳酸菌の菌数が10cfu/gのオーダーになるように添加後、固体培養基を35℃に保ち20時間培養して、キリシマ1Rが10cfu/gのオーダー、キリシマ1Cが10cfu/gオーダーのやや酸っぱい良好な乳酸発酵飼料を得た。
【0066】
なお、上述した製造例3、4ではヘテロ型発酵を行うキリシマ1Rとホモ型発酵を行うキリシマ1Cを混合して使用しており、ヘテロ型発酵による食欲増進効果とホモ型発酵による増殖効率の向上により、畜産現場において一層好適な良質の飼料の製造を実現できる。
【符号の説明】
【0067】
1 攪拌装置
2 攪拌容器
3 回転軸
4 攪拌羽根
5 モータ
6 駆動ベルト
7 気体供給装置
8 噴射口
9 底部内面
10 噴射口
11 ヒータ
12 噴射口
13 投入口
14 排出口
15 気体供給管
16 案内路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体培養基を、攪拌容器内にて被攪拌物を攪拌する際に容器内乃至被攪拌物に対し少なくとも高温蒸気を噴射できる攪拌装置に投入して高温蒸気によって固体培養基内の雑菌を死滅させた後、高温蒸気の噴射を停止し、攪拌容器内における前記固体培養基の温度を所定の乳酸菌投入温度まで冷却してから、攪拌容器内に乳酸菌を投入し、攪拌手段によって乳酸菌と固体培養基とを均一混合し、次いで、攪拌容器内を乳酸菌の培養に適する温度に調整してこの容器内にて固体培養基を乳酸発酵させ、前記乳酸菌投入温度を、投入する乳酸菌の発酵又は生存温度よりも5〜10℃高い温度に設定してなる乳酸発酵飼料の製造方法。
【請求項2】
前記固体培養基を冷却する際に、固体培養基を攪拌する請求項1に記載の乳酸発酵飼料の製造方法。
【請求項3】
前記固体培養基を冷却する際に、冷却用の気体を攪拌容器内乃至固体培養基に対し噴射する請求項1に記載の乳酸発酵飼料の製造方法。
【請求項4】
前記培養温度を、適温に調整した気体を攪拌容器内乃至固体培養基に対し噴射することによって調整する請求項1に記載の乳酸発酵飼料の製造方法。
【請求項5】
前記培養温度を、攪拌装置に備える過熱手段によって攪拌容器の少なくとも下方部分を加熱することによって調整する請求項1に記載の乳酸発酵飼料の製造方法。
【請求項6】
前記固体培養基に乳酸菌を投入する前および/または乳酸菌投与後における乳酸発酵前にpH調整剤を添加する請求項1に記載の乳酸発酵飼料の製造方法。
【請求項7】
前記固体培養基が、家畜が食することができるきのこを収穫した後の廃菌床である請求項1に記載の乳酸発酵飼料の製造方法。
【請求項8】
前記攪拌装置は、攪拌手段が、回転軸と、この回転軸の周囲に同軸の遠心方向に突設した攪拌羽根より構成されており、回転軸は、少なくとも底部内面が内側に湾曲する攪拌容器内における底部内面の湾曲方向に対し直交し、攪拌羽根の先端が底部の湾曲面を通過する際にこの攪拌羽根の先端と湾曲面との間に小なる隙間を有し湾曲面に沿って通過できるように設けられ、かつ、外部から供給される固体培養基内の雑菌を死滅させるための高温蒸気を回転軸乃至攪拌羽根より噴射できるように構成されてなる請求項1に記載の乳酸発酵飼料の製造方法。
【請求項9】
前記攪拌容器内の上方に、高温蒸気をこの容器内の下方に向けて噴射する複数の噴射口が設けられてなる請求項8に記載の乳酸発酵飼料の製造方法。
【請求項10】
前記高温蒸気を供給する外部の気体供給装置が、供給する気体の温度を任意に調整できるように構成されてなる請求項8に記載の乳酸発酵飼料の製造方法。
【請求項11】
前記攪拌容器の少なくとも下方部分を加熱できる加熱手段が設けられてなる請求項8に記載の乳酸発酵飼料の製造方法。
【請求項12】
前記加熱手段が、外部から供給される高温蒸気を熱源にして構成されてなる請求項8に記載の乳酸発酵飼料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−234649(P2011−234649A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107554(P2010−107554)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(502128442)株式会社鎌田工業 (8)
【出願人】(390027454)協全商事株式会社 (13)
【Fターム(参考)】